今日は下の絵の描き方を順を追って説明します。ネガティブ・ペイントの手法自体は、水彩画だけでなく、アクリル、油彩、日本画すべてにおいて使える手法ですので、アクリルや油彩の方も興味があれば試してみてください。
ネガティブ・ペイントでは、必ず前景(手前側)から奥に向かって描き進めます(「落ち葉 I」の葉っぱのときもそうでしたね。いちばん上にある葉っぱから描き始め、下層の葉っぱへと進みます)。
上の絵では、ポジティブ・ペイントだと樹木の枝などを描きたくなりますが、ネガティブ・ペイントでは枝を描くことはしません。枝と枝の間を描きます。さらに、それをレイヤー構造(層構造)にすることによって画面に遠近感を出します。
第1層目:
最初に水彩紙に自分の好きな色を塗ります。もちろん1色である必要はありません。この色で絵の雰囲気が決まります。たとえば、上の絵も色相を変えればポップな感じにも出来ますし、下のように薄暗い森にも出来ます。最初の塗りが絵の雰囲気を決定すると言っても過言ではありません。
水彩なので、wet on wetの手法を用いて複数の色の滲みと混ざりを楽しみましょう。
第2層目:
画面が完全に乾いたら(水彩の場合は半日くらい放置するかドライヤーで乾かしましょう)、一番手前の樹々の枝の間を塗ります。ネガティブ・ペイントは手前からです。これを間違えるとわけのわからないものが出来上がります。枝の間を塗る場合は、必ず枝と枝のつながりを意識してください。そうでないと樹に見えません。
また、最初から濃い色を塗ってはいけません。第3層目では、第2層目で塗った色の中にさらに色を重ねて行くので、少し薄めの色で塗ってください(たとえば、この絵の場合、いきなり第2層目を真っ黒で塗ると3層目が困まったことになります)。
第3層目:
第1層目と第2層目で一番手前の樹が出来上がりました。第3層目では、手前から2番目の樹々を描き込むことになります。ただし、この場合も樹や枝を描くのではありません。あくまでも樹々の間の空間を描き込みます。描き込む前に画面を完全に乾かしてください(もちろん半乾きで滲みを楽しむこともできますので、いろいろ試してみてください)。
色は先ほど(第2層目)で用いたものよりも濃い色を使います。
第4層目:
第4層目でももちろん樹を描いてもかまいません。そうするとこの絵よりも深い森を描くことができます。さらに5層、6層と同様に進めれば、深くて複雑な森が出来上がります。
ただ、ケンプ流では、第4−5層で明るい色を使い、森や枝葉の向こう側を表現します。この技法がケンプ流ネガティブ・ペインティングの真骨頂です。
この絵でも第4層目は樹々の向こう側の開けた草原になります。通常、透明水彩では白を使いません。白い部分は画用紙をそのまま残します。しかし、ネガティブ・ペイントでは最初から白いところを残すことは不可能なので、あとから塗ります。
まず、完全に第3層で塗った絵の具を乾かしてください。ケンプさんのオリジナルはアクリル画であるため、第3層の絵の具の上に4層目を塗っても下の絵の具が溶け出ることはありませんが、水彩の場合はよく乾かさないと下の絵の具が溶け出します。第3層の絵の具が溶け出すときれいな白にならず、森をぬけた向こう側(「抜け」)が暗くなってしまいます。
さらに、白い絵の具(白に限らず最後の明るい部分)はガッシュ(不透明水彩)を使いましょう。そうでないと、第3層の黒い色が透けてしまうため、きれいな「抜け」がつくれません。きれいな抜けが作れないときには、ガッシュが乾いてから再度ガッシュを塗り重ねてください。
いかがでしょうか?ケンプさんの多くの作品はこの手法で描かれています。彼女のこの手法の作品はすべてアクリル画ですが、水彩に取り入れることで新たな表現の可能性が生まれると思います。
この手順さえ理解してしまえば、ケンプさんの作品の描き方はすべて理解できます。次回は作成方法という視点から彼女の作品を見てみましょう。
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ネガティブ・ペイントでは、必ず前景(手前側)から奥に向かって描き進めます(「落ち葉 I」の葉っぱのときもそうでしたね。いちばん上にある葉っぱから描き始め、下層の葉っぱへと進みます)。
上の絵では、ポジティブ・ペイントだと樹木の枝などを描きたくなりますが、ネガティブ・ペイントでは枝を描くことはしません。枝と枝の間を描きます。さらに、それをレイヤー構造(層構造)にすることによって画面に遠近感を出します。
第1層目:
最初に水彩紙に自分の好きな色を塗ります。もちろん1色である必要はありません。この色で絵の雰囲気が決まります。たとえば、上の絵も色相を変えればポップな感じにも出来ますし、下のように薄暗い森にも出来ます。最初の塗りが絵の雰囲気を決定すると言っても過言ではありません。
水彩なので、wet on wetの手法を用いて複数の色の滲みと混ざりを楽しみましょう。
第2層目:
画面が完全に乾いたら(水彩の場合は半日くらい放置するかドライヤーで乾かしましょう)、一番手前の樹々の枝の間を塗ります。ネガティブ・ペイントは手前からです。これを間違えるとわけのわからないものが出来上がります。枝の間を塗る場合は、必ず枝と枝のつながりを意識してください。そうでないと樹に見えません。
また、最初から濃い色を塗ってはいけません。第3層目では、第2層目で塗った色の中にさらに色を重ねて行くので、少し薄めの色で塗ってください(たとえば、この絵の場合、いきなり第2層目を真っ黒で塗ると3層目が困まったことになります)。
第3層目:
第1層目と第2層目で一番手前の樹が出来上がりました。第3層目では、手前から2番目の樹々を描き込むことになります。ただし、この場合も樹や枝を描くのではありません。あくまでも樹々の間の空間を描き込みます。描き込む前に画面を完全に乾かしてください(もちろん半乾きで滲みを楽しむこともできますので、いろいろ試してみてください)。
色は先ほど(第2層目)で用いたものよりも濃い色を使います。
第4層目:
第4層目でももちろん樹を描いてもかまいません。そうするとこの絵よりも深い森を描くことができます。さらに5層、6層と同様に進めれば、深くて複雑な森が出来上がります。
ただ、ケンプ流では、第4−5層で明るい色を使い、森や枝葉の向こう側を表現します。この技法がケンプ流ネガティブ・ペインティングの真骨頂です。
この絵でも第4層目は樹々の向こう側の開けた草原になります。通常、透明水彩では白を使いません。白い部分は画用紙をそのまま残します。しかし、ネガティブ・ペイントでは最初から白いところを残すことは不可能なので、あとから塗ります。
まず、完全に第3層で塗った絵の具を乾かしてください。ケンプさんのオリジナルはアクリル画であるため、第3層の絵の具の上に4層目を塗っても下の絵の具が溶け出ることはありませんが、水彩の場合はよく乾かさないと下の絵の具が溶け出します。第3層の絵の具が溶け出すときれいな白にならず、森をぬけた向こう側(「抜け」)が暗くなってしまいます。
さらに、白い絵の具(白に限らず最後の明るい部分)はガッシュ(不透明水彩)を使いましょう。そうでないと、第3層の黒い色が透けてしまうため、きれいな「抜け」がつくれません。きれいな抜けが作れないときには、ガッシュが乾いてから再度ガッシュを塗り重ねてください。
いかがでしょうか?ケンプさんの多くの作品はこの手法で描かれています。彼女のこの手法の作品はすべてアクリル画ですが、水彩に取り入れることで新たな表現の可能性が生まれると思います。
この手順さえ理解してしまえば、ケンプさんの作品の描き方はすべて理解できます。次回は作成方法という視点から彼女の作品を見てみましょう。
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