昨日はサロメについてでした。絵画ではもう一人、生首と描かれる女性にユディトがいます。今回は英傑ユディトと魔女メディアの猛女伝説です。

 ユディト 

 ユディトは、旧約聖書もしくは、旧約聖書外典の「ユディト記」に出てくる女傑です。美しく、信心深いユディトは、ベトリアという小さな街で平和に暮らしていました。

 そんなある日、ネブカドネザル王が納めるアッシリアの軍隊がベトリアに侵攻し、街を包囲してしまいました。俵料攻めにあったベトリアの住民は、あっさり降伏しようとしますが、ユディトが降伏に反対し、人々を鼓舞します。美しいユディトに言われれば、男たるもの降伏するわけにはまいりません。みんなで飢えと渇きに耐えていました。

 そんな中、ユディトは一計を案じ、アッシリア軍の将軍であるホロフェルネスに面会を求めました。ユディトは、ホロフェルネスに、ベトリアは神の恩寵を失ったと訴え、自ら軍の侵攻を手助けすることを提案しました。
 喜んだホロフェルネスは、スケベ心も手伝って、ユディトと祝宴をあげます。ユディトは、すっかり酔いが回り、寝込んでしまったホロフェルネスを押さえつけ、その首を切り落としました。
 将軍を失ったアッシリア軍は動揺し、潰走してしまいました。その後、ユディトはベトリアで幸せな一生を送りました。

 では、ユディトとサロメを見比べましょう。
まずは、ボッティッチェリのユディトです。怖いですね。
 ユディト2ベッティチェリ
 一方、サロメは昨日お見せしたとおり、下のような感じです。料理を持って走る店員さんといった風情
 サロメ20 ボッティッチェリ1488
次はクラナッハを見てみましょう。まったく同じ構図で、人物もそっくりです。ただ剣の有無だけです。
 ユディト3クラーナハ サロメ11ルーカス・クラナ1530
 さらにカラヴァッジオです。ユディトは明らかに腰が引けてしまってます。手つきもはじめて生魚をさばく女の子のようです。右側の将軍の顔と左側のユディトのポーズの間にギャップがありすぎます。
 下のサロメは、ヨハネの首をもらったはいいけど、気味が悪いわ、といったところでしょう。サロメが美人でないので、絵としては単に暗い絵になっていますが、ユディトほど不自然ではありません。
 ユディト1からバッジョ
 サロメ4
 今度はクリムトです。左が「ユディトI」でユディト、右が「ユディトII」でサロメということになっていますが・・・。ユディトIは女傑の香りはまったくありません。白い歯を見せて微笑む中年の女性です。オペラ歌手かな、といったところ。
 右のユディトIIもかなりの年齢でしょう。とてもサロメのイメージではありません。妖艶というより不気味さしか感じません。「ダナエ」くらいの色気がほしいですね。
 グスタフ・クリムト 1 サロメ14

 メディア 


メデイア2 メディアは、ギリシア神話に出てくる魔女。
 モローの項で書いたように、イオルコス王であるペリアースは、イアソンに
「黄金の羊毛を持ち帰ったら、王位を譲ってやろう」
と持ちかけます。そこで、イアソンは仲間を集め、アルゴ号に乗って、黄金の羊毛を手に入れる冒険に出ました。

 黄金の羊毛は、コルキスの王、アイエテスが持っていましたが、羊毛を手放すのが嫌なアイエテスは、
「火を噴く牛を手なずけたら黄金の羊毛をやろう」だの、「竜を退治してくれたらあげてもいいかな」などと、次々と難問を出しました。
 イアソンは困ってしまいましたが、そんなか、アイエテスの娘である魔女、メディアがイアソンに一目惚れし、火傷を防ぐ薬や竜を眠らせる薬などを与えてイアソンを助けました。お蔭でイアソンは黄金の羊毛を手にすることが出来ました。

 黄金の羊毛を手にした二人は、メディアの幼い弟、アプシュルトスを連れ、アルゴ号で一路イオルコスへと出向します。
 羊毛と子供を奪われたアイエテスは追っ手を差し向けました。このままでは、追っ手に追いつかれると思ったメディアは、弟のアプシュルトスを殺し、バラバラにすると海に投げ捨てました。追っ手が、アプシュルトスの亡骸を集めている間にイオルコスへと逃げ帰りました。

 イアソンとアルゴ号の一行は、黄金の羊毛を持って華々しく凱旋帰国しましたが、ペリアースはいっこうに王位をイアソンに譲る気配がありません。
 そのことをイアソンに愚痴られたメディアは、老婆に変身し、ペリアースに面会しました。
「ペリアース王、あなたに若返りの秘方をお教えしましょう」
 老婆の姿のメディアはそういうと、もとのメディアの姿に戻りました。王はビックリです。
 さらに、メディアは、ペリアースの娘たちを集めると、羊を八つ裂きにして鍋に放り込み、子羊にしてみせました。すっかりメディアを信じた娘たちは、ペリアース王を若返らせようと切り刻んで鍋で煮殺してしまいました。

 さて、ペリアース王を殺害したメディアとイアソンはイオルコスにいられなくなり、コリントスへと逃れます。
 二人はコリントスで幸せに暮らしていましたが、そんな折り、コリントス王から、イアソンにメデイアと別れ、自分の娘であるグラウケと結婚しないかと持ちかけられました。
 イアソンにとって、これは絶好のチャンスです。王位継承者となって大金と権力を手にすることが出来ます。イアソンは二つ返事で承諾しました。

  問題はメディアです。メディアは、イアソンとグラウケの結婚に烈火の如く怒りますが、イアソンに「この結婚は、愛のためではなく、金のためだよ。きみと子供たち(実際には7人の子供がいたようですが、エウリペデスの作品では2人になっています)を幸せにするためにあえて結婚するのだよ」と説かれて態度を軟化させます。
 さらにメディアはコリントス王から子供を連れて国を出て行くように迫られました。メディアは、一日の猶予をもらいます。猶予をもらうと、メディアはアテナイのアイゲウス王に亡命の打診をします。

 アイゲウス王から受け入れ許諾の返事を受けたメディアは、花嫁衣装をつくり、子供たちにグラウケに持っていくよう頼みます。子供たちが花嫁衣装を持っていくと、グラウケは喜んで袖を通しました。その途端、花嫁衣装が炎に包まれ、そばにいたコリントス王もろとも焼け死んでしまいました。
 メデイアは、帰ってきた子供たちを惨殺し、イアソンからすべてを奪うと、竜車に乗りコリントスを後にしました。

 アテナイに到着したメディアは、アイゲウス王と結婚し、王の息子であるテセウスを毒殺しようとしました。しかし、失敗したためテセウスによって追放されてしまいました。

 フレデリック・サンズの作品(一番上)がもっともメデイアらしさが出ていますね。
 メデイア メデイア3 メデイア4
  メディアは魔女で不死であるため、もちろん今もどこかで生きているのです・・・あなたの彼女かもしれませんねぇ・・・。東京は今晩から台風直撃です。心配だなあ。

象徴主義目次へ戻る
   総目次に戻るにはここをクリック! 
Sponsored Link