シュールレアリスムの系譜(1) シュールレアリスムの歴史と手法 ダダからシュールレアリスムへ

 
シュールレアリスムの系譜(2) シュールレアリスムの主要画家リストと詳細記事へのリンク・リスト



さて、今回はジョルジュ・デ・キリコ(1888−1978)の第2回目です。
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 キリコはギリシアに生まれ、ドイツで教育を受け、その後パリで画家として活動します。
 キリコは、哲学者のフリードリッヒ・ニーチェや画家のマックス・クリンガーの影響を受け、日常の裏に存在する謎や不安、憂鬱などを表現する「形而上絵画」を完成させました。

 1915年、第一次世界大戦でイタリア軍として戦いますが、神経衰弱になってしまいます。
 その後、イタリアで知り合ったカイロ・カッラ、ジョルジョ・モランディ とともに「形而上派」を形成しました。形而上派はアンドレ・ブルトンが率いるシュールレアリスムへとつながっていきます。

・詳しくは第1回目をどうぞ。

 3分でわかるジョルジュ・デ・キリコ 形而上絵画とは? 




 キリコはニーチェに影響され形而上絵画を描くようになったと手記に書き残しています。しかしながら、キリコの絵からニーチェの思想は感じられません。そこがキリコの良いところです。

 ニーチェは弱者である大衆が大嫌いです。ツァラトゥストラは大衆などさっさと死ねばいいと言っています(こんなに直接的ではないけれど)。民主主義なんかもってのほかです。

 ニーチェによれば、道徳や同情、哀れみなど世の中の美徳と思われていることはすべて根底に「ルサンチマン(ねたみやひがみ)」があります。同情や思いやりは弱者の最低の行為です。

 極論ですね。私も、権利を振りかざす弱者や、エセ正義を振りかざし、自分の人気のために弱者におもねる人は好きではありません。しかし、すべての美徳の裏にルサンチマンがあるとは思えません。

 一方、ルサンマンから解放され、「永劫回帰」の無意味な人生を自分の法則を持って生きられるのがニーチェの目指す「超人」です。 

 最近、私がこれこそ「超人」かもしれない、と思っているのはうちのネコです。

 彼女は私が病気で苦しそうにしていても一切同情しません。さらに神の存在や永劫回帰もまったく気にしません。好きなことはとことんやり、嫌いなことは一切目もくれないという、まさに自分の法則で生ている「超猫」です。

 くだらない?でも、こんな思想でもニーチェの謎掛けのような文章を読むと奥が深く思えてしまうんです。

 哲学者がわかりにくい文章を描く理由の一つは「なにか奥が深そうだぞ」と思わせるところにあります。キリコも難解な文章に謎めいたものを感じたのかもしれません。ちなみに、キリコも自分の絵に対して「深い」という表現を使います。



 ニーチェは若い頃から天才だと褒めそやされ、20代前半でバーゼル大学の教授になりますが、病弱であったため、職を続けることが出来ませんでした。さらに、最初の著作「悲劇の誕生」も罵声を浴び、学会からも追放されてしまいます。

 ニーチェは、周りの無能な人々のルサンチマンのせいで自分が失脚したと思ったのでしょう。当然、今度はニーチェがルサンチマンを抱くことになります。
 ニーチェは自分のルサンチマンを原動力としてルサンチマンを否定する思想を生み出したのです。

 ニーチェの思想は既存の道徳の枠組みを破壊し、人間に優劣をつけるものです。当然のことながら、トロツキーが指摘しているように怠け者や犯罪者には都合の良い思想です。したがって、人気が出ました。

 「自分は超人である。下々のもととは違うのだ。だから働かない」とか「超人の私が一般大衆の上に立つのは当然である」とか「豚のような大衆など、この世からすべて抹殺し、選ばれた超人の世界をつくろう」など、なんでもこじつけることができます。
 ナチスを支えた思想であることもうなずけるでしょう?

 さて、今回は古典回帰をしたキリコからです。さらに晩年は形而上絵画に戻ります。若い頃の作品は昨日のページをどうぞ。有名な作品はすべて20代に描かれたものです。

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 次回は印象派、そのつぎはダダ、そしてシュールレアリスムかな。

 
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