今回からは前期ルネサンスの画家たちをご紹介いたします。ルネサンス絵画の特徴についてはこちらをご参照ください。

 3分で読むルネサンスのはじまり
 3分で読むルネッサンス絵画の特徴1 ー遠近法ー
 3分で読むルネサンス絵画の特徴2 ープロポーションと理想の美ー
 3分で読むルネサンス絵画の特徴3 ー解剖学の発達と人体表現ー
 3分で読むルネサンス絵画の特徴4 ー油彩画の確立と4大技法ー
 3分で読むルネサンス絵画の特徴5 ーパトロンの台頭と画題の変化ー


 絵画ルネサンスの時代区分 

 イタリアのフィレンツェで発生したルネサンスは西ヨーロッパに広がり、300年ほど続きます。ルネサンス期の絵画ではこの間を4つの時代に区分しています。

 ・前期ルネサンスProto-Renaissance 1300–1400)
 ・初期ルネサンスEarly Renaissance 1400–1490頃)
 ・盛期ルネサンスHigh Renaissance 1490頃–1527)
 ・マニエルスム期(後期ルネサンス)( Mannerism 1527–1600)

 前期ルネサンスの画家たち1 ーフィレンツェから前期ルネサンスへー

 今回のページに出てくる画家は以下の通りです。
・チマブーエCimabue 12401302
・ジョット・ディ・ボンドーネGiotto di Bondone 12671337
・ピエトロ・カヴァリーニPietro Cavallini, 1250〜1330)
・マーゾ・ディ・バンMaso di Banco, ? 〜1348
タッデオ・ガッディTaddeo Gaddi, 1300〜1366
・オルカーニャOrcagna/Andrea di Cione di Arcangelo 1308〜1368)
・フランチェスコ・トライニFrancesco Traini 活動時期:1321〜1336)
・アルティキエーロ(Altichiero da Verona 1330〜1390)
・アンドレア・ボナイウート(Andrea Bounaiuti 1346〜1379)


1)フィレンツェから前期ルネサンスへ


 13世紀のイタリア絵画は、クリスチャン・ビザンティン様式の流れを汲むゴシック(Italo-ビザンティン)が主流でした。ビザンティン美術とは、古代ギリシア・ローマの美術を継承し、取り込んだ美術体系であり、5〜10世紀に東ローマ帝国で発達しました。

 当時、画家のコミッションのほとんどは宗教画であり、巨大な祭壇画なども制作されていました。この頃の絵画は古代のイコンのスタイルを踏襲し、その形式がディテールまで厳密に決められていました。
 とは言え、この時代の作品も大変美しく、前衛的とさえ言えそうなものもあります。
(下図1〜2枚目:Guido da Siena ~1200~、3〜5枚目:Coppo di Marcovaldo 1225〜1276)
Enthroned Madonna of Guido of Siena, c. 1270-80
Annunciation, 1262-1279
Coppo di Marcovaldo, Crocifisso di San Gimignano,
Coppo di Marcovaldo, Giudizio Universale (Inferno)
Coppo di Marcovaldo3
 このころのイタリアでは、フィレンツェやシエナなど複数の自治都市が繁栄し始めていました。ルネサンスの美術史家ヴァザーリによれば、絵画ルネサンスの先鞭を切ったのは、フィレンツェの画家ジョット・ディ・ボンドーネGiotto di Bondone 12671337)(下図)です。その後、前期ルネサンス期の絵画はフィレンツェとシエナを軸に発展していきます。
ジョット
 羊飼いの少年であったジョット少年は、フィレンツェの画家チマブーエCimabue 12401302)に弟子入りし、時代を大きく変革する画家へと成長を遂げていきます。
(下図 チマブーエの作品 すでに遠近法の片鱗が見て取れる作品があります。)
Cimabue1
Cimabue2
Cimabue3
 1280年、ジョットの所属するチマブーエの工房は、アッシジの聖フランチェスコ聖堂のフレスコ画を制作しました(下図)。この制作にはジョットとともにローマ出身のピエトロ・カヴァリーニPietro Cavallini, 1250〜1330)も参加していました。
Basilica of St. Francis, Assisi
Basilica of St. Francis, Assisi2
Basilica of Assisi
 さらに、ジョットは
1305年、スクロヴェーニ礼拝堂
のフレスコ画を完成させます(下図)。現在、この二つの教会はルネサンスの幕開けを担った教会として知られています。
Scrovegni Chapel Frescoes0
Scrovegni Chapel Frescoes1
Scrovegni Chapel Frescoes2
Scrovegni Chapel Frescoes3
Scrovegni Chapel Frescoes4
 先述のチマブーエの作品と比較すれば明らかなように、ジョットの絵画の特徴は、遠近法を用いた建物、地に足のついた立体的で情感豊かな人物たち、着衣の質感などにあり、彼の自然を手本にした表現は同世代の画家の作品から際立っていました。
 
 ジョットはルネサンスの先駆けとなり、多くの同世代とそれに続く画家たちに影響を与えました。
ジョットと彼に続く自然主義の画家たちを「フィレンツェ派」と呼びます。

 ジョットの写実的な絵画は、同門であるピエトロ・カヴァリーニの影響が大きいと考えられています。カヴァリーニの作品には、装飾性と立体感がみごとに融合した傑作「最後の審判(1293)」(下図)があります。このフレスコ画はサンタ・チェチーリア・イン・トラステヴェレ教会に描かれています。
サンタ・チェチーリア・イン・トラステヴェレ教会
El juicio Final1
El juicio Final2
El juicio Final3
 ジョットは多くの弟子を輩出し、後の画家たちにも多大な影響を与えました。この時期のフィレンツェ派には以下のような画家たちが含まれています。


・マーゾ・ディ・バン
Maso di Banco, ? 〜1348
 マーゾはジョットの最も卓越した弟子であったと言われています。美しい遠近法と大変洗練された画面がその特徴です(下図 でもキリストの顔はちょっとシュール)。

Maso di Banco1
Maso di Banco2
Maso di Banco3

タッデオ・ガッディTaddeo Gaddi, 1300〜1366
 サンタクローチェ聖堂(下図1枚目)にある「羊飼いへの天使の知らせ」は夜の場面は特に美しい作品です。この手法はイルミネーション効果として知られ流ようになりました(下図2枚目)。下図4枚目を見てわかるように、タッデオは人物の表情の描写に大変優れた画家です。
サンタ・クローチェ聖堂
Taddeo Gaddi2
Taddeo Gaddi1
Taddeo Gaddi3

・オルカーニャ
Orcagna/Andrea di Cione di Arcangelo 1308〜1368)(下図1)
 ジョットの弟子であるオルカーニャは、画家であると同時に彫刻家でもありました。彼の作品は、師であるジョットよりもゴシック性が強く、ゴシックの装飾性とルネサンス様式の融合が見て取れます。彼の作品はは同時代の多くの画家に影響を与えました。

 下図2枚目からオルカーニャの作品です。5枚目のオルサンミケーレ教会のタベルナクルはオルカーニャの彫刻作品でゴシック彫刻の傑作と言われています。6枚目以降はフレスコ画「死の勝利」です。この頃は黒死病と呼ばれたペストが猛威をふるい、人口の3分の1が死滅しました。このため、多くの人々が死に直面し、贖罪を求めていました。
Orcagna0
Orcagna1
Orcagna3
Orcagna2
Orcagna4
Orcagna5
Orcagna7
Orcagna6

・フランチェスコ・トライニ
Francesco Traini 活動時期:1321〜1336
 オルカーニャの弟子で後継者のイタリアの画家ですが、彼のサインのある作品は1つしかないため、彼のものとされる作品の多くは学者の推測の域を出ていません。
 その一つはピサにある墓地コンポサント・モニュメンターレ(下図1)の「死の勝利」(下図2)ですが、こちらは第2次世界大戦で被災し、悲惨な有様です。この作品はブオナミーコ・ブファルマッコ(Buonamico Buffalmacco 1315〜1336)の作品であるとも言われています。
Francesco Traini0
Francesco Traini2

・アルティキエーロ
(Altichiero da Verona 1330〜1390)
 ジョットの後継者の一人で、ヴェローナとパドヴァで活躍しました。ヴェロネーゼ派の創始者の一人に数えられています。衣服の質感などの細かい描写に大変秀でています(下図)。
Altichiero3
Altichiero
Altichiero2
Altichiero4

・アンドレア・ボナイウート(
Andrea Bounaiuti 1346〜1379)
 アンドレアはジョットとオルカーニャの影響を受け、サンタ・マリア・ノヴェッラのスペイン聖堂のフレスコ画を描き上げました(下図)。
Andrea di Bonaiuto
Andrea Bonaiuti1
Andrea di Bonaiuto2
Andrea di Bonaiuto3
Bonaiuto 5
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