1:2012/05/06(日) 21:30:37.11 ID:
ドラゴンボールのザーボンさんとけいおん! のクロスですよ。

百合有り。と言うか多々有り。

まったりと完成させていくです。

平沢唯


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2:2012/05/06(日) 21:33:07.47 ID:
……ここは一体どこだ。

気が付いたら、私は見慣れない森林に立っていた。

木々が深く、いくら周りを見渡しても先は確認出来ない。

上空からわずかに日が射し込んでいるのを見ると、少なくとも夜ではない様だが……

ザーボン(いや、それよりも……)


3:2012/05/06(日) 21:36:32.40 ID:
私はあの時──ベジータに殺されたはずだ。無様に、惨めに。

思い出すと、怒りと悔しさと羞恥と恐怖……

様々な感情が込み上げてくるが、まったく状況がわからないこの場でそれを爆発させる訳にはいかない。

ザーボン「…………」

何とか気を静めると、私は自分の体を調べる。

──特に異常は無い。怪我もなければ、いつものフリーザ軍の戦闘服も汚れ一つ無かった。

もちろん、カチューシャと自慢の髪の毛も乱れは見受けられない。

ただ唯一、スカウターは見当たらなかったが……


5:2012/05/06(日) 21:38:22.07 ID:
ザーボン「一体何だと言うのだ……」

考えれば考えるほどわからない。

しかし、いつまでもこうしている訳にもいくまい。

ザーボン(スカウターが無いのは面倒だな)

心の中で舌打ちをし、私は辺りの気配を慎重に探りながら空へ飛び立った。

まずは現状の確認だ。


ザーボン(ふむ……? 私が居たのは山だったのか)


7:2012/05/06(日) 21:40:17.00 ID:
上空から地面を見下ろした私の目に飛び込んで来たのは、紛れもなく、青々とした山だった。

空は快晴。遠くには海も見える。

その手前には……町、だろうか。

様々な建物が集結しているだけでなく、道を歩く生き物の姿が見える。

私はそこへ行ってみる事にした。


8:2012/05/06(日) 21:42:26.64 ID:

ザーボン「…………」

トッ……

ここがどこなのかも、町(だろう)を歩く生き物もどういう存在かわからない。

私は何の気配も無い、裏通りと思わしき場所に着地した。

……少なくとも、ここはナメック星ではない様だが……

もちろん、惑星フリーザでもない。


9:2012/05/06(日) 21:45:12.47 ID:
ザーボン(……ふむ。歩いている生き物は、私と似た容姿をしているな)

建物の影からその動きを見た所、特別戦闘に長けた民族とも思えない。

……まあ、広い宇宙には戦闘力をコントロール出来る種族も居るから油断は出来んが……

ザーボン(──このままいつまでも、じっとしている訳にはいかんか)

そう決断し、私は裏通りから出て行った。


ザワザワ……

まず知るべき事は、ここが……この星が一体どこで、どう言う場所かという事。


10:2012/05/06(日) 21:47:13.70 ID:
私には宇宙で幅広く使われている言語、約数千種の心得がある。

街中の探索で成果が得られないなら、その辺の者に直接聞いて見ても良いだろう。

幸いな事に、この星の生き物は私と容姿のタイプに違いは無い。

その為、そちらの問題で怪しまれる事は無いと思われる。


11:2012/05/06(日) 21:48:53.36 ID:
もっとも、この星の民族がとても好戦的かつ実力も相応にあるのなら、話を聞けば良いなどと悠長に言ってはおられんだろうが……


「うわ、あの人カッコ良い……」
「素敵……だけど、コスプレ?」


通行人達の言葉が耳に届く。

どうやら、私の噂をしている様だが……


12:2012/05/06(日) 21:52:49.87 ID:
美しき私の容姿を称える言葉はあって当然として、『コスプレ』とはなんだ?

この言葉に対する知識は私には無い。

とすると、この星特有の言葉か。

様々な惑星で使われる、いわば『宇宙の共通言語』の一つを主に使うが、
この中にその惑星特有の言葉を混ぜて会話をする民族というのは、別にめずらしくない。


13:2012/05/06(日) 21:54:30.04 ID:
──とは言え気にならない訳では無いが……ここはどうしようもあるまい。

『コスプレ』とやらがこの者達にとって当たり前の言葉ならば、下手にその意味を問うたら怪しまれる可能性がある。

大丈夫、私は美しい。まずはゆっくり情報を集めるのだ。


男1「なんだとおおおおおぅおおおぉおおぉぉぉぉ!!?」


ザーボン「む?」

突然、下劣で小汚い声が辺りに響いた。


14:2012/05/06(日) 21:56:31.64 ID:
声の方を見ると、五人の男達が何やら二人の少女(だろう。その二人は私に背を向けて居るので顔は確認出来ないが)に詰め寄っていた。

男2「オレ達の誘い断るなんてマッジありぇねッッッ!」

男3「ワシらこんにゃにカッコ良い男性達なんじゃぜぇぇぇぃ!?」

男4「来い来い来いやぁあああぁあああぁぁぁ!!」

……男達があの少女二人に求愛行動でも取り、見事に拒否されたと言った所だろうか?


15:2012/05/06(日) 21:59:19.90 ID:
周りを見渡して見る。通行人達はあの事に気付いているみたいだが、見て見ぬ振りをしている様だ。

なるほど──ここの者達はそういう連中なのか。

それ自体は良いだろう。その様子を美しいとは思わないが、他人と一々関わらないと言うスタンスそのものは別に悪いとは思わない。

だが……


16:2012/05/06(日) 22:01:05.62 ID:
男5「オラっ、楽しませてやっらァ! 満足させってやらァ!!」

小汚い男の一人が片方の少女の手首を掴んだ。

少女1「やっ……痛いっ!」

──醜い。

あの男達の言動は我慢ならなかった。

私はあのゴミ共へ左手を差し出す。


17:2012/05/06(日) 22:02:42.39 ID:
圧縮エネルギー弾。

通常のエネルギー弾の攻撃範囲を狭め、対象にぶつける技。

その特性故、爆発で土煙を起こして敵への目くらましにしたりすることは出来ず、また、威力は普通のエネルギー弾と変わらない。

はっきり言って実戦ではあまり使い道が無い技だが……

こう言う、敵の近くに巻き込みたく無い者が居る場合にはうってつけの技だ。


18:2012/05/06(日) 22:04:30.47 ID:
……ここで誤解無き様言っておこう。

私はフリーザ軍の戦士で、確かに命令されれば残虐な事も喜んでするし、女子供と言えど殺してみせよう。……いや、して来た。

だが逆に言うと、私は命令が無ければあの様な小汚い行為を見過ごしてやれる性格ではない。

もちろんそれは被害者の為では無く、醜い事や物が嫌いな私の自己満足なのだが。

ザーボン(消えろ)


19:2012/05/06(日) 22:08:21.27 ID:
……だが。

私は、左手に溜めたエネルギー弾を打ち出す事は出来なかった。

少女2「このっ! 唯ちゃんを離しなさい!」

絡まれている片方・金髪の少女が、茶髪の少女の手首を掴んでいる男に正拳突きを決め、倒す。


20:2012/05/06(日) 22:10:18.29 ID:
男3「馬鹿男(ばかお)!」

男4「てぇんめぇぇぇ! よぉくも馬鹿男ををををををををを!」

少女1「わっ!」

少女2「!!」

叫ぶや否や殺気丸出しで拳を振り上げる男達に、少女達はお互いをかばう様に動く。

……くっ!


ドッ!


少女1・2『えっ……?』

男達『な、なんじゃぁ!?』


22:2012/05/06(日) 22:11:46.93 ID:
私は少女達の前に立ち、防御もせずに男達の攻撃を胸で受け止めていた。

やはり──戦闘力は大した事はないか。

見た所戦闘力150前後の破壊力だろうか? その金髪少女の拳になす術も無く倒れた程度の奴の仲間だ。予想はついていた。

男4「なんじゃおまぇ!?」


23:2012/05/06(日) 22:14:22.13 ID:
男1「プッ……見てみろやこいつの格好……」


バコッ。


男1「ぐひひょうううううううううううううう!」

男達『へ?』

私は男達を全員、デコピンで難なく片付けた。


24:2012/05/06(日) 22:16:59.66 ID:
……なんだ。いくら雑魚と言っても、ここまで弱かったのなら手助けなど不要だったかな?

少女1「あ、あの……」

少女2「ありがとう……ございました」

ザーボン「なに、大丈夫だったかな? お嬢さん方──」

私は少女達の方へ振り向き……

言葉を失った。


34:2012/05/13(日) 13:36:28.01 ID:
私の目の前に居たのは、栗色の髪をした、素朴で愛らしい少女。


ズキン。


そして──


ズキン。


金髪の美しい少女。


『ザーボン君っ』


ザーボン(────)

私は思わず、唇だけでとある名前を呟いていた。


35:2012/05/13(日) 13:38:57.85 ID:
少女1「私たちデートしていたら、急にさっきの人たちに絡まれちゃって……」

少女2「本当に助かりました」

微かに痛む頭を押さえ、私は言った。

ザーボン「い、いや。
それよりも、お名前を教えては頂けないかな?」

少女1「えっと、私は──」

少女2「……すみません、ちょっと場所を変えませんか?」


36:2012/05/13(日) 13:41:10.44 ID:
む?


ザワザワ……


言われて気付いた。

私達……いや、私はやたらと注目をされている。

なぜだ? 私がした事と言えば、ゴミ共をデコピンで始末しただけだ。

そう目立つ事はしていないはず。


37:2012/05/13(日) 13:43:30.96 ID:
いずれにしても、この状態は芳しくは無い。

ザーボン「わかった」

私は頷いた。


どうした事だ。

移動中、私は思う。

私にはあのゴミ共を殺せなかった。

デコピンで吹き飛ばしはしたが、目一杯手加減をした為死んでは居ないはずだ。

これは情けとか、同情したとかではない。


38:2012/05/13(日) 13:47:30.31 ID:
ただ……出来なかったのだ。

エネルギー弾を打とうとした時、ベジータに殺された時の事が頭によぎったから。

相手がどうとかではなく、あの恐怖を思い出すと他人を殺めると言う行為がどうしても出来なかったのだ。

あげく、助けた相手に姿を晒す羽目になってしまった。

こういうのは正体を知られずに助け、そのまま去るのがもっとも美しいと思うのだが……

まあいい。おかげで様々な話が聞けそうだし、何より……

あの金髪の少女。他人の空似──だろうが。

心の奥底にしまい込んで幾重にも鍵を掛けていた、深い深い思い出。

まさか、この様な時に思い出す事になろうとは……


39:2012/05/13(日) 13:50:23.62 ID:

少女1「私は平沢唯ですっ」

少女2「私は琴吹紬と申します」

ザーボン「私はザーボンだ」

とある──レストランだろうか? に入り、案内された席に着いて適当に注文をすますと、私達は自己紹介をし合った。

……この店の店員の格好は面白いな。皆女性で、露出の多い大胆な制服を着ている。

しかし──琴吹紬、か。

わかってはいた。人違いだと。彼女がこんな所に居る訳がない。

いや、この世にすら居るはずがないのだから。


40:2012/05/13(日) 13:52:32.89 ID:
唯「ザーボン……さん? 日本の人じゃないんですか?」

この星は日本と言うのか? それともこの星には様々な国があり、ここは日本と言う国なのか。

本当は(彼女達から見て)異星人なのだが、とりあえずそれは伏せておこう。

宇宙には、宇宙を旅するレベルの文明すら持たない惑星も多々ある。

街をザッと見た所この星もその一つである感じがしたし、だとしたら『私は異星人』だとか話しても警戒されるだけではないだろうか。


41:2012/05/13(日) 13:54:53.82 ID:
ザーボン「……うむ。そんな所だ」

唯「わぁ、日本語上手いですねっ!」

ザーボン「ははは、ありがとう」

しかし……未練だな。

ザーボン「琴吹嬢……貴女は、この星の生まれだろうか?」

つい、聞いてしまった。


42:2012/05/13(日) 13:57:25.67 ID:
紬「えっ?」

唯「???」

紬「あの……どういう事でしょう?」

その反応を見る限り、やはり違うらしい。

ザーボン「む? すまない、言葉を間違えた様だ。
君も異国の生まれなのかと思ってな」

とりあえず誤魔化しておく。


43:2012/05/13(日) 14:01:02.58 ID:
紬「いえ、私は唯ちゃんと同じ日本人ですよ」

唯「あははっ。さっきの言い方だとムギちゃん、宇宙人みたいだよ~」

ザーボン「ふふ、そうだな。失礼した。
琴吹嬢が群を抜いて麗しかったもので、ついな」

紬「あら、ザーボンさんや唯ちゃんにはかないませんよ」

そう言って琴吹嬢は穏やかに笑う。


44:2012/05/13(日) 14:03:38.57 ID:
唯「あー、ザーボンさんムギちゃんナンパしてるっ!?
ダメ! ムギちゃんは私の彼女だもん!」

紬「あっ、唯ちゃ、こんな所で……」

言うや否や、琴吹嬢に抱きついてキスをする平沢嬢。

ナンパ……文脈を考えたら、私が琴吹嬢を口説いたと言う事か?

ザーボン「誤解だ。私は恋人持ちの者にそんな事はしない。
まして、これほどお似合いな二人に対してそんな美しく無い事など、な」

お世辞ではない。

彼女達と出会って間も無い私から見ても、二人はとてもお似合いで美しい恋人同士だった。


45:2012/05/13(日) 14:08:49.73 ID:
唯「えーっ/// お似合い?
もーザーボンさんったら上手いんだからぁ///」ムチュチュウ

紬「も、もう唯ちゃんたら……///」ムフー

「紬さん唯さん、いらっしゃいっ」

横から聞こえた声に、私達はそちらを向く。

唯「あっ、詩音ちゃんやっほー☆」

店員が注文の品を持って来たらしいが、この様子を見ると琴吹嬢・平沢嬢の知り合いらしい。


46:2012/05/13(日) 14:11:46.74 ID:
詩音「どうしたんですか?
今日はまた凄いイケメンさん連れて」

紬「さっき町で絡まれたのを、このザーボンさんに助けて貰ったの~♪」

詩音「まあ! そうだったんですか!」

唯「そうなんだよー、凄かった!」

紬「あ、こちら園崎詩音ちゃん。私たちのお友達です」

ザーボン「よろしく、ザーボンだ」

詩音「こちらこそ。
でもカッコ良いですね! そんなコスプレして女の子助けるなんて、本当にヒーローみたい!」

……だからコスプレとは一体なんなのだ。


47:2012/05/13(日) 14:14:57.45 ID:
詩音「ではごゆっくり。
──あ、二人共。
いちゃつくのは良いですが、あまり見せ付けすぎないで下さいね☆」

唯・紬『///』

そう言い残すと、園崎嬢は行ってしまった。

ザーボン「……ところで、コスプレと言うのは……」

唯「あっ、そうだザーボンさん、何でそんな格好しているんですかっ?」



48:2012/05/13(日) 14:17:49.05 ID:
ザーボン「私の格好……何か変だろうか」

前述の通り、私はフリーザ軍の戦闘服を身に付けている。

汚れてもいないので、不潔という事もないはずだが……?

唯「えっと、正直ちょっと変わってるかと思います!」

む……?

言われてみれば……周りの者達は誰もこの様な格好はしていない。

むしろこの戦闘服は浮きすぎていると言っても良いだろう。

そういえば、先程の町中でも……


49:2012/05/13(日) 14:22:10.73 ID:
もしや。

ザーボン「そ、そうだったのか……私とした事が」

場をわきまえない服装と言うのは美しくない。

私ともあろう者が……

よく確認するまでもなく、少し意識を向けるだけで簡単に気付ける事であった。


ドドリア『ザーボン、お前はすげぇ頭良いけどよ。
たまにありえねぇ位簡単なポカするよな』


かつて同僚に言われた言葉を思い出す。


50:2012/05/13(日) 14:29:17.61 ID:
……そう言えば。

ザーボン「もしや、私をこの店……」

紬「エンジェルモートです♪」

ザーボン「エンジェルモートに連れて来たのは……」

気付けばすぐわかる。この店の店員は、探索していた町の人間達とは明らかに服装が違う。

よく見たら他の客も、荒すぎのチェックのシャツやよれたパンツ・不思議なコーディネートのリュック等々、
町の者達とは一線を画する格好の者が大半だ。

それでも私が浮いているのは確かだが、気休めながら町中よりはまあマシだろう。

この星の事はまだ謎だらけだが、それ位はわかる。


51:2012/05/13(日) 14:31:24.80 ID:
紬「うふふ。
メイド喫茶とかならもっと良かったのですが、すぐに移動するにはあまりにも遠かったですし、せめてと思いまして。
あの場所では……
ゆっくりお礼も言えませんでしたから」

メイド喫茶?……メイドが喫茶店をやっているのだろうか?

まあそれはともかく。

確かに注目されているとは感じていたが……そこまで目立っていたのか。


52:2012/05/13(日) 14:35:38.00 ID:
ザーボン「気を使わせてしまって申し訳ない。感謝するよ」

うかつだったな。これからはさらに慎重に動かなくては……

とりあえず、目立たない様にどうにかして服を調達しなくてはいかんな。

紬「いえ。お気になさらないで下さい。
……あの、よろしければ家にいらっしゃいますか?
お洋服プレゼント致しますよ」

ザーボン「む?
いや、そこまでして頂く訳には……」

正直嬉しい誘いだが、この少女達の素性もわからないのだ。

おいそれと受けるのも……


53:2012/05/13(日) 14:39:08.03 ID:
紬「いいえ。私たちこそちゃんとお礼をしたいですし、それに──」

唯「そうだよ~、ご遠慮なくっ。
って、お洋服用意するのはムギちゃんだけど」

言って笑う平沢嬢につられてか琴吹嬢もほほ笑み、

紬「それに、何か事情がおありの様ですし」

私を見つめる。

……その目は優しく澄んでおり、裏──少なくとも、悪い意味での裏があるとは思えなかった。


54:2012/05/13(日) 14:42:20.42 ID:
ザーボン「……うむ」

私はしばし思案すると言った。

ザーボン「わかった。ありがたく受けさせて頂く」

人知れずあれこれ探っていても、いずれは行き詰まるだろう。

だがこの話に乗る事でこの惑星の民族と関われ、服も貰える。

また、例えこの話に裏があったとしてもそれならその時だ。

この星の者達の実力や文明を見ると、よほど無茶をしなければ不覚もまず取るまい。


55:2012/05/13(日) 14:46:36.03 ID:
唯「むむっ、でも私も助けて貰ったんだから、ムギちゃんだけにってのもアレなので……
はい、ザーボンさんっ」

と、何やら平沢嬢がポケットから取り出したのは……

ザーボン「──これは何だろう?」

唯「飴ちゃん! 美味しいぃ♪ ですよ~」

なるほど、食べ物なのか。

これもこの星を知る良い機会の一つかな。

私は包みを開け、

紬「──あっ」

中に入っていた桃色の丸い物体を口に入れた。


56:2012/05/13(日) 14:49:24.85 ID:
ザーボン「……うむ、美味だ」

それはほんのりと上品に甘く、異星人である私の口にも合った。

紬「あの……」

唯「れしょ♪
ふぁい、ムギちゃんにもふぁげる☆」チュッ

紬「もふっ」

平沢嬢が、いつのまにか自分も口にしていたらしい『飴ちゃん』とやらを、琴吹嬢に口移しをした。


57:2012/05/13(日) 14:53:11.67 ID:
正直こう言う場所でその様な行為ははしたないのではあるが、なぜかこの二人にはそれも美しく感じた。

百合は正義だ。

唯「んふーふ。飴ちゃんとムギちゃんの味が混ざって、お口の中がぱらだいす☆」

紬「も、もう……///」

口元に手をやりながらも、琴吹嬢は平沢嬢を軽くにらむ。

しかし彼女の頬の赤らみとその雰囲気の甘さを見ると、掌に隠された口元は笑みの形になっている様だ。

紬「そ、それより飴ちゃんも良いけど、注文した物も食べない?」

ザーボン・唯『あ』


66:2012/05/19(土) 12:59:57.71 ID:


それからしばらく。私達は店を出、琴吹嬢の家に案内された。

その際車と言う乗り物で迎えに来てくれた、斎藤と言う執事に一瞬不審な視線を向けられた(やはり私の格好が原因だろう)が、
ここは琴吹嬢が上手く取り持ってくれた。

本当は場所を聞き、二人を抱えて飛べば一瞬で着く距離だったのだが……

今まですれ違った人間達を見る限りこの惑星の者は自力で空を飛べない様なので、私が舞空術を使える事は隠しておいた。


67:2012/05/19(土) 13:02:35.38 ID:


紬「まあ、ピッタリですね♪」

唯「わっほう! ザーボンさん似合ってるっ♪」

屋敷に通された私は、早速約束通り洋服の一式を用意され、着替えた。

ザーボン「そうか。ありがとう」

薄手花柄のシャツに、ネイビーのブルゾンとパンツ。明るいブラウンのレザーシューズ。

一目でわかる。どれも良い物だ。


68:2012/05/19(土) 13:05:13.17 ID:
そう言えば、この家へ送って貰った車・その際に見た琴吹邸の外観……

そのどれもが、この星でここまで目にしたどんな乗り物・建物にも無い気品、豪奢な匂いを感じた。

ザーボン「……もしや、琴吹嬢は貴族であらせられるか?」

紬「はい?
……えっと」

私の言葉に、彼女は困った様にほほ笑む。

それらの物だけでなく、琴吹嬢自身からも感じる気品。

間違いないと思ったのだが……違うのだろうか?


69:2012/05/19(土) 13:08:08.77 ID:
唯「あのね、ムギちゃんはとってもお金持ちさんなんですよっ!
でもでも、貴族ってなんか違う感じがするなぁ。
……セレブ?」

セレブ? 有名人と言う事か?

だとしても、貴族だから有名と言う事ではないのだろうか。

紬「うふふ。まあそんな事はお気になさらずに」

……ふむ。ここでは『貴族』と言う言い回しはしないのかな。

まあ意味が通じているのを見ると、その言葉自体は存在する様だが……


70:2012/05/19(土) 13:11:56.43 ID:
紬「──ところで。
よろしければ今晩、家にお泊りになりませんか?」

ザーボン「……良いのかな?」

紬「はい」

それも願ったり叶ったりだが……

恩があるからと、普通見ず知らずの人間にここまでするだろうか。

何か──たくらんでいるのか?

ザーボン(……まあ良い)

危険さよりも、得る物の方が大きいだろう。

私はそう判断した。


71:2012/05/19(土) 13:17:04.91 ID:
ザーボン「では、続けてお言葉に甘えさせて頂こう」

紬「はい」

私の返事に琴吹嬢がゆるやかに頷き、

唯「やった! また一緒にご飯食べれますねっ」

平沢嬢が飛び上がって喜ぶ。

ザーボン「?」

紬「あ、今日は唯ちゃんも家に泊まるんです」

ザーボン「む?
それではお邪魔ではないのかな?」

この二人はそう言う関係なのだろう?

今の口振りだと平沢嬢はここに住んでいる訳ではなさそうだし、ならばせっかくの二人の時間を邪魔するのは美しくない。


72:2012/05/19(土) 13:19:34.70 ID:
紬「いえ。そんな事はありませんわ。
ぜひご一緒致しましょう」

唯「そうそうっ。
今晩三人で遊びましょうー。
──あっ、アレなら私のギター聴かせてあげまっす!」

ギター……楽器の事だな。

ザーボン「……そこまで言うなら。
ありがとう」

……不思議だ。

こんな風に誰かから笑いかけられたのはいつ以来だろうか。

遠い遠い昔。フリーザ様……

いや、フリーザにすべてを奪われる前まで遡らなければならないだろう。

忘れていた記憶が蘇り、私の中でさざなみの様に広がり始めていた。


73:2012/05/19(土) 13:23:15.88 ID:


それから時間はあっという間に過ぎた。

確かな能力のある執事やメイドがついた、三人で(琴吹嬢の両親は、仕事との事で姿を見せなかった)の食事。

湯浴みもさせて貰った。

その後、琴吹嬢・平沢嬢と共に部屋で遊んだ。

約束通りの平沢嬢のギターに、琴吹嬢のキーボードも聴かせて貰って非常に盛り上がった。

そしていつの間にか日が変わり……


74:2012/05/19(土) 13:25:58.89 ID:


唯「すー、すー……」

紬「うふふ♪
唯ちゃん、気持ち良さそうに寝ちゃって……」

ソファーで眠ってしまった平沢嬢をベッドまで運び、布団を掛けながら琴吹嬢は呟いた。

ザーボン「すまないな、女性に運ばせてしまって」

紬「良いのですよ。断ったのは私ですし、何より……
唯ちゃんは私が運びたくて」

ザーボン「……うむ、そうだな」

この二人が、お互いを真に大切に想い合っているのは良くわかる。

ザーボン(本当に美しい二人だ)


75:2012/05/19(土) 13:28:58.04 ID:
紬「でも驚きました。
ザーボンさん、楽器お上手で」

ザーボン「いや、なに。たしなむ程度だよ」

実は先ほどあまりに盛り上がった為、最後はこの二人と私でセッションをしたのだ。

私も多少楽器の心得があった為、鑑賞するだけではつい我慢出来なくなったと言うのもある。

紬「うふふ、ご謙遜を。
たしなむというレベルではなかったではありませんか」

ザーボン「ありがとう。
だが君達こそ、素晴らしい腕前だったよ」


76:2012/05/19(土) 13:36:27.42 ID:
事実だった。

技量そのものは特筆する物でない事は確かだが、この二人の演奏は何か……

心に訴えかける魅力があった。

これでも色々な宇宙で、様々な音楽を聴いて来た私だ。

この印象には自信がある。

紬「うふふ。こちらこそ、お褒めに預かりまして光栄です」

と、彼女は表情を引き締め、

紬「……ザーボンさん、少し外でお話ししませんか?」

ザーボン「……そうだな」

こちらも確認しておきたい事がある。

彼女の真意だ。

私は頷くと、琴吹嬢と共に外へと出て行った。


77:2012/05/19(土) 13:39:42.15 ID:


一見ひと気のない静かな庭。

ザーボン「…………」

紬「うふふ、気付いていらっしゃいますね。
気を悪くさせてしまったらすみません」

ザーボン「いや、素性もわからない者と二人きりで話すのだ。
用心でボディーガードを配置するのはよくわかる」

などと話しながら、私達は側にあるベンチに腰を掛けた。

ザーボン(よく手入れされている……綺麗な庭だ)


78:2012/05/19(土) 13:47:17.56 ID:
紬「……では、単刀直入に伺います」

ザーボン「うむ」

紬「貴方は、裏の世界の方ではありませんか?」

……確かにそうだ。

惑星の地上げをする殺戮集団──フリーザ軍に所属するだけでなく、幹部まで務めていたのだ。

決して光の当たる生き方はしていない。

ザーボン「……その通りだ」

紬「やっぱりそうでしたか。
私、家の事情で昔から裏世界の色々な方とお会いしてきましたから、匂いでわかるのです」


79:2012/05/19(土) 13:49:36.66 ID:
ザーボン「それで……私をどうすると言うのだろうか?」

私は一戦を交える覚悟を決めた。

紬「あ、ご心配なさらないで下さい。
別にザーボンさんを捕まえるとか、そんなつもりはありません。
ただ……よろしければ、我々のグループで働いてみないかと思いまして」

ザーボン「……は?」

私は思わず間抜けな声を出していた。


80:2012/05/19(土) 13:54:00.36 ID:
ザーボン「それは……私を勧誘していると言う事だろうか」

紬「はい。
お昼での貴方の動き、ただ者でないのは一目でわかりました。
……ううん、むしろ……
私も様々な地下……裏の世界の方々を見てきましたが、そのどんな達人よりもお強いのでは?
今しがた、隠れている者たちの存在を軽々と見破ったりもしましたし……」

まあ、この星の人間達には──少なくとも体術で負ける事はないとは思うが。

紬「そんなザーボンさんに、例えば……
それこそボディガードのお仕事などはいかがでしょう?」


81:2012/05/19(土) 13:56:48.41 ID:
ザーボン「待て。
もしその話を私が受けて、私の正体が残虐な殺人犯だったらどうするのだ?」

彼女の話はあまりに軽率だ。

紬「そうなのですか?」

ザーボン「…………」

どうする? いくらなんでも、経歴一つ話しもしない者に仕事を与えはしないだろう。

この星がフリーザ軍の様な組織に居た事が美徳と受け取られる場所なら良いのだが、そんな星は少数派も少数派だ。

しかし、この話は簡単に捨てるのはあまりにも惜しい。


82:2012/05/19(土) 14:04:19.32 ID:
嘘を吐くか?

……いや、彼女には即席での生半可な嘘では見破られる。そんな気がする。

それに何より、なぜか琴吹嬢には嘘を吐きたくなかった。

今まで散々……必要とあらば、同僚やフリーザにも嘘を吐いてきた私なのにも関わらず。

紬「……話せませんか。
でも大丈夫です。貴方の素性はきちんとお調べ致しますので。
これでも私達の調査能力は世界でも屈指なのですっ」

例えそうだとしても、この惑星の文明レベルでは異星人の素性を暴く事は出来ないと思うが。


83:2012/05/19(土) 14:07:42.98 ID:
ザーボン「……喋っても喋らなくても、変わらないと言う事か」

紬「そうですね。
……それに。
先ほどもお話しました通り、私は裏に生きる様々な方を見てきたので……
ザーボンさんが悪人でない事くらいはわかるのです」

私が悪人では……ない?

散々虐殺を繰り返してきたこのザーボン様が?

私は思わず自嘲めいた笑みを浮かべていた。

紬「もし異国に来て、行く場所が無い様でしたら、この話。
いかがでしょうか?」

なるほどな。彼女の真意はわかった。

だが……


84:2012/05/19(土) 14:10:02.57 ID:
ザーボン「……琴吹嬢。貴女は私を買いかぶりすぎだ」

紬「それを確認させては頂けませんか?」

そう言って彼女は笑う。

天使の様に、無邪気に。

ザーボン「……わかった。
そちらが良いのであれば、ぜひお願いする」

そもそもこの様な話、こちらから頼みたい位だったのだ。


85:2012/05/19(土) 14:14:48.46 ID:
紬「わあ! ありがとうございますっ。
嬉しいですわっ!」

ザーボン「ふふ……礼を言うのは私の方だよ」

紬「いえ、ザーボンさんの様な能力をお持ちの方には、是非ともお力を貸して頂きたいと思っておりましたので」

ザーボン「財を為すには、有能な人材が不可欠……と言う事だな」

やはりそれは、どの惑星……

いや、どの銀河でも同じなのだな。


86:2012/05/19(土) 14:17:27.35 ID:
紬「ええと……
否定は、出来ませんね。
──あっ! あの、違いますよ。
確かに琴吹家は裏の世界にも精通していますが、それはあくまで表に出ない世界と言う事でして……
闇の世界とか、犯罪には手を染めていませんわ」

ザーボン「ふっ……
わかっている」

それこそ彼女を見ていたらわかる。

彼女や彼女の周り、この家からその様な匂いがまったくない。

それこそ、まさに闇の世界に深く染まっていた私の感覚だ。間違いは無いと胸を張って言える。


87:2012/05/19(土) 14:20:04.18 ID:
ザーボン(しかし……ボディガードか)

とりあえず、目下の身の振り方には困らなくなった……のだろうな。

しかし、また戦いや……虐殺を行う日々が始まるのだろうか?

少し前にはその中に居たはずだ。

……が。

なぜか気が進まなかった。


88:2012/05/19(土) 14:22:47.50 ID:
紬「──あっ、さっきはボディガードと言いましたが……
他に何か得意な事はありますか?」

ザーボン「む?」

紬「家は様々な事業をやっておりまして。
もしザーボンさんが自信がある事が別にあり、その関係のお仕事をされたいのでしたら協力出来ますよ。
もちろん、手を伸ばしていない領域ならその限りではありませんが」

ザーボン「……戦闘も得意ではあるが、一番自信があるのは頭脳だな」

紬「頭脳……ですか。
それはどういった分野で?」

ザーボン「どの分野でも、だな」

それが、この星で通用する物かどうかはまだわからないが。


89:2012/05/19(土) 14:28:59.67 ID:
……私はふと思った。

ザーボン「──もし希望を聞いて頂けるなら……
頭脳や知識を活かし、かつ人と沢山関わる事が出来る仕事はないだろうか?」

紬「……人と沢山関わる事が出来る、ですか?」

ザーボン「もしその様な職に就ければ、この国に慣れる事が出来ると思ったのだが」

それも嘘ではないが、それが可能ならば怪しまれずに堂々と様々な人間と会話も出来るし、この星の事を探れる。

それが延いては、フリーザ軍に戻る近道にもなろう……が、それ以上に。


90:2012/05/19(土) 14:32:24.23 ID:
ザーボン(……なぜだろうか。
血なまぐさい事にはもう関わりたくない。
出来れば……避けたい)

紬「なるほど。
ちょうど心当たりがありますので、明日……いえ、もう今日ですね。
十数時間お待ち下さい」

ザーボン「言ってみるものだな。
ありがとう」

紬「いいえ。
──では、戻りましょうか」

月明かりの中そう笑いかける琴吹嬢は、これ以上ない位神秘的で美しかった。

あの人の様に。


91:2012/05/19(土) 14:33:56.80 ID:
今日はこの辺りで~。


97:2012/05/21(月) 20:38:06.50 ID:


次の日。

琴吹嬢は約束通り希望に沿った仕事の話を持ってきてくれ、すぐさまその職に就くに相応しい知識があるかどうかのテストを受けた。

幸い私の頭脳はここでも通用する様で、問題無く満点を取ると次は細かい決まり事や条件などの説明をされた。

ちなみに、戸籍などの必要な物はすべて整えてくれるとの事だ。

話の流れとは言え、少なくともすぐに経歴を話す必要が無くなったのもありがたい。

そちらはまた対策を練るか。

そして今が週の中日。来週から早速、仕事に入る事になるらしい。


98:2012/05/21(月) 20:41:05.38 ID:


私は自分に与えられた、琴吹邸の一室の窓から外を見つめていた。

ザーボン(しかし……凄いものだ)

周りにも有能な者達が集まっているからこそとは言え、あの行動力に、器……

琴吹嬢のそれらの能力は、宇宙中から有能な人材を集めているフリーザ軍にスカウトしても良い位だ。

……フリーザか。

そうだな。

目的を忘れてはいけない。


99:2012/05/21(月) 20:46:05.46 ID:
私は、ここを安住の地にする為に周りの地固めをする訳ではない。

いずれフリーザ軍に戻る為に必要だからこうしただけだ。

ザーボン(……そう、私は戻らねばならないのだ)

……なぜ?

考えると、頭が痛んだ。


コンコン。


紬『ザーボンさん、入ってもよろしいかしら?』


100:2012/05/21(月) 20:47:34.48 ID:
ザーボン「──どうぞ」

私の返事の後、琴吹嬢が部屋に入って来る。

ザーボン「どうされましたか、紬様」

紬「ザーボンさんがどうしているかな、って思いまして。
……って、敬語はやめてって言ったでしょう?
それに紬様もやめて欲しいなって」

ザーボン「む……しかし、貴女は私の雇い主である故……」

正確に言うとそれは『琴吹財閥』ではあるが、この件は彼女が責任者となっているらしいし、便宜上こう言っておく。


101:2012/05/21(月) 20:52:16.52 ID:
紬「そうですが、家の召使いと言う訳ではありませんし。
適度に誠意を見せて頂ければそれで構いませんよ」

ザーボン「……わかった、気をつけよう。
ええと、お嬢様」

本当は良くない事だとは思うが、それこそ雇い主が仰るなら従うべきだろう。

紬「本当は『ムギちゃん』って呼んで欲しいのですが……うーん。
さすがにそれは……」

ザーボン「うむ、立場上あまりに不適切だな。
もちろん、命令とあらば従うが……」


102:2012/05/21(月) 20:54:31.30 ID:
紬「……ですね。
うふふ。まあ無理にとは言いませんので、『紬様』以外なら呼びやすい物で構いません。
──それで、明日からお引越しをする訳ですが、どうですか?
家は過ごしにくくありませんでしたか?」

ザーボン「何を仰る。とても良くして頂いて……」

そう。私は明日、通勤し易い場所へ引っ越す。

家具等は備え付けで荷物は大してない為、明日移動する時にまとめて持って行く事になっている。


103:2012/05/21(月) 20:57:28.61 ID:
ザーボン「しかし、正体もわからない人間の為にどうしてここまでしてくれる?」

いくら期待している相手とは言え、ここまでの行為にそう得があるとは思えないのだが……

紬「うふふ、それだけ貴方を買っていると言う事です。
この位当然ですわ」

そう言う彼女の笑顔には、いつもと同じく裏は感じられない。

ザーボン「……本当にありがとう。
必ず最高の結果を出して、もっと琴吹家……いや、お嬢様に栄光を与えてみせよう」


104:2012/05/21(月) 20:59:42.54 ID:
紬「あらあら。そうして頂ければ、家の人材派遣部門の信用も上がりますね。
まあ、そんなに気負わなくても大丈夫ですよ」

ザーボン「うむ。任せて頂きたい」

紬「あらあらまあまあ……
わかりました。
期待していますね」

……不思議だ。これほど素直にやる気になるなんて。

お嬢様と、平沢嬢のおかげだろうか?

そして、私はいずれ彼女達を裏切らないといけないのだろうか?

……今はそんな事はどうでも良いな。

いや……考えたくない。

来週か。楽しみだ。


105:2012/05/21(月) 21:03:14.89 ID:


────────

????「あ、あぁ……」

「……(ボソリ)逃げなさい」

????「でも……で、でも……」

「ここは私が時間を稼ぐから。
ね?
ほら、走るのっ!」

????「!
待って! 行っちゃダメだっ!」

「大丈夫! 私もすぐ追いかけるわ!
また後でねっ!

ザーボン君!」

────────


106:2012/05/21(月) 21:05:31.50 ID:


ザーボン「────!!!!!」

胸が熱い。動悸が激しい。頭痛がする。目の焦点が合わない。

ザーボン(ゆ……夢?)

無意識の内に飛び起きていたのか。上半身だけ起こした状態の私は、手の甲で額を拭った。

……凄い汗だ。

ザーボン(また……か)

遠い遠い記憶。これまで忘れ──いや、逃げていた報いなのか。

その悪夢は、ここ数日ずっと私を襲っていた。


107:2012/05/21(月) 21:08:19.88 ID:
ザーボン「…………」

私は暗い部屋の中で、そっとある人の名前を呟く。

……こんな事では駄目だ。私は昔、決めたではないか。

すべてを忘れ、フリーザ軍の戦士として生きると。

そうだ。私はフリーザ軍・大幹部のザーボン。

この環境も、あそこへ戻る情報や手段を探る為に必要だから、利用しているだけだ。

そう。そのはず……なのに。

ザーボン「…………」

なぜ私はこんなに切ないのだろう。心細いのだろう。

だけど、数時間前まで居た『彼女』……いや、お嬢様の残り香が、そんな私を癒してくれた。


108:2012/05/21(月) 21:14:51.20 ID:


日曜日の午前。

引っ越して数日。日本での暮らし方や環境は学び、慣れたのでもう問題ない。

もちろん、地球へ来た原因なども時間が許す限りあれこれ調査をしてみた。……こちらはまったく進展はないが……

悪夢も相変わらずだが、こうやって色々と動いていたら、潰されそうになる程追い詰められる事は無くなってきていた。

やる事・準備が多すぎてあまり睡眠時間が取れない=夢の世界に居る時間が少ないと言うのもあるだろう。

それでも肉体的に辛く無いのは、やはり……そう、楽しいからだろうな。


109:2012/05/21(月) 21:16:33.23 ID:
ともあれ、後は翌日の初出勤を待つだけだ。

さて、とりあえず今日は何をして過ごすか。

仕事への下準備は完璧。とすると、やはり調査の続行か……


ピンポーン。


ザーボン「む?」

思案を始めたとき、チャイムが鳴った。

早速玄関に向かい、扉を開けてみると……


110:2012/05/21(月) 21:19:03.81 ID:
唯「やっほーっ、ザーボンさん!」

紬「こんにちは~」

ザーボン「おや。いらっしゃい」

二人をリビングキッチンへ通し、ソファーに掛けてもらう。

ザーボン「どうしたんだ、二人揃って」

私はお菓子と紅茶を用意しながら、「きれ~いっ!」や「広い!」などと言いながらはしゃぐ二人に問うた。


111:2012/05/21(月) 21:21:07.91 ID:
紬「うふふ。
今日は唯ちゃんとデートをしていたのですが、このマンションの近くまで来たものですから」

唯「私が行ってみたいってお願いしたんですっ!」

ザーボン「ああ、なるほど」

そう言えば今回の件、お嬢様は平沢嬢には話したと言っていたな。

もちろん隠す事ではないし、二人の関係を考えたら会話の中でそう言う話も出るだろう。

唯「このマンションって、ムギちゃんのお家のなんですよね?
すっごく良いお部屋だなぁ~」


112:2012/05/21(月) 21:23:11.96 ID:
ザーボン「うむ。行く所の無かった私にこれほどの家を紹介して頂き、お嬢様には本当に感謝している」

チョコレートと、入れたての紅茶をテーブルに並べる。

紬「あら、ありがとうございます☆」

唯「ありがとうございます~!
わぁ、凄いおいしそうっ!」

お嬢様はレモン、平沢嬢はミルクを入れると、全員で紅茶に口を付けた。


113:2012/05/21(月) 21:25:11.03 ID:
ザーボン「……うむ、良い味だ」

唯「んふー、ザーボンさんもお茶入れるの上手いですねっ。
ムギちゃんにも負けてないかも」

ザーボン「いや。この……アールグレイだったか。
この紅茶が良い葉を使っているからだよ」

紅茶の入れ方に多少心得があるのも確かだが、そう思う。

紬「ふふ、またまたご謙遜を」

ザーボン「そうではないよ」


114:2012/05/21(月) 21:30:31.55 ID:
しかし、ここは良い国だな。

様々な物が手に入るし、質も良い。

何よりのどかな物だ。殺伐とした雰囲気がまるでない。

私の知る限りこれだけ豊かな国だと、必ずその物資なりなんなりを巡って激しい争いがあるのだが……

この様な場所に住まう人間達には、不平不満は無いのだろうな。

……まあ先日、この二人に絡んでいた様な愚か者は居るみたいだが、どこにも例外と言うのはあるだろう。


115:2012/05/21(月) 21:32:27.52 ID:
紬「はい、唯ちゃん♪」

唯「はい、ムギちゃん♪」

気が付くと、お嬢様と平沢嬢が各々の紅茶を飲ませ合っていた。

ザーボン(……美しい)

行為そのものは決して美しい物ではないはずだ。

ザーボン(しかしこれは……
たまらんな。どんな絵画や彫刻も敵わぬ)

唯「ムギちゃんの紅茶もおいしいねっ☆」

紬「唯ちゃんの紅茶も美味しいわ♪」


116:2012/05/21(月) 21:34:29.67 ID:
唯「ザーボンさんが入れて、ムギちゃんが飲んだお茶だから、もっと味が良くなったのかな」

紬「うふふ♪」

唯「──あっ、ザーボンさんのもちょっと下さいな~」

紬「ストレートティー♪」

ザーボン「む?
ストレートが飲みたかったら、また入れれば……」

そう言うと二人は頬を膨らませて、

唯「かー。わかってない、わかってないよっ、ザーボンさん!」

紬「ダメダメですわっ」

唯「こういうノリは大事なんですよっ!?」

ザーボン「???」


117:2012/05/21(月) 21:37:25.40 ID:
ち、地球ではこう言うノリが当たり前なのか???

考える間も無く、私達は紅茶を飲み回す事になっていた。

紬「うふふ♪」

ザーボン(なんだこれは)

唯「あははっ♪」

ザーボン(しかし……お嬢様)

凄く生き生きしているなと思う。


118:2012/05/21(月) 21:40:02.66 ID:
紬「はい、唯ちゃんっ。
あーん」

唯「あーん」パクッ

琴吹邸で私と二人の時も、別によそよそしかったりした訳ではない。

だが、彼女と……平沢嬢と居る時は、他では見ない位輝いている。

どちらも本当の彼女なのだろうが、やはり仕事や、その相手とそんな会話をする時とプライベートはきちんと分けているのだろう。

そう言う姿勢は美しいと思う。


119:2012/05/21(月) 21:43:15.98 ID:
唯「あっ、そういえばザーボンさんはお仕事も決まったんでしたっけ」

ザーボン「うむ、そうだ。私は本当に運が良いよ。
日本に来て、すぐ家も仕事も手に入れる事が出来たのだからな」

唯「そのお仕事ってなんですか?」

……ああそうだ、お嬢様の願いで、平沢嬢には仕事に関してだけは完全に秘密にしていたのだ。

その理由は後述しよう。


120:2012/05/21(月) 21:48:10.65 ID:
ザーボン「ふふ、内緒だ」

唯「えーっ、なんでぇ!?」

ザーボン「なんでもだよ」

唯「ぶーぶー!」

紬「まあまあ、無理に聞いたら悪いわ」

唯「ムギちゃんは知らないの?」

紬「うん。
その事に関しては家はノータッチなの」

唯「ちぇちぇ」

紬「うふふ♪」


121:2012/05/21(月) 21:52:00.55 ID:
お嬢様が楽しそうに、拗ねる平沢嬢の膨らませている頬をつつく。

唯「あっ、そうだっ。ザーボンさん漫画とか読みますかっ?
さっきムギちゃんとデートした時に買ったんだぁ」

ザーボン「どれどれ?」

『くちびるためいきさくらいろ』……

こ、これは百合約聖書か!?


それから私達は、日が傾いて二人が帰るまで、この『くちため』や他愛ない話などで盛り上がった。


125:2012/05/26(土) 14:05:14.52 ID:


次の日。

赴任先の学校の廊下。

担当する授業がやってきた私は、案内役の教諭と共に教室の前までやって来ていた。

「では、後はよろしくお願いしますね」

ザーボン「承知致しました」

その教諭と別れ、私は教室の中に入る。


ガラガラガラ……


私の入室と共に喧騒がおさまる。

窓際後ろの席で「あっ!」と言う声が聞こえたが、気にせず黒板に名前を書き、私は言った。

ザーボン「始めまして。今日から赴任して来たザーボンだ。
英語の授業を担当させて頂く。
皆、よろしく頼む」

私の挨拶に平沢嬢は目を点にし、お嬢様がニヤリとほほ笑んだ。


126:2012/05/26(土) 14:08:17.23 ID:


ザーボン「──では、以上で授業を終わる」

……よかった、何とかこなせたみたいだな。

知識には自信があっても、このような仕事の経験はない。

正直不安や緊張があったのだが、授業の流れを思い返しても、生徒達の反応を見ても上手くいったようだ。

唯「ザーボンさんっ!」

休み時間に入って教室を出ようとした時、平沢嬢が声を掛けてきた。

ザーボン「……何かな? 平沢」


127:2012/05/26(土) 14:11:24.65 ID:
唯「やっぱり、あのザーボンさんですよねっ!?」

ザーボン「むう、バレてしまったか!
気付かれないと思ったのだがな」

唯「気付くよぅ!」

私が笑って軽口を叩くと、彼女は唇を突き出して頬を膨らませる。

律「なんだなんだ。唯、ザーボン先生と知り合いなのか?」

澪「そう言えば、先生が入って来た時に声を上げてたもんな」

紬「うふふ♪」

後ろから、カチューシャを付けた少女、長い黒髪の少女、そしてお嬢様がやってきた。

この二人の名前は確か、『田井中律』と『秋山澪』……だったな。


128:2012/05/26(土) 14:13:39.04 ID:
紬「初めまして~、ザーボン先生」

ザーボン「うむ。私の授業はどうだったかな?」

紬「とてもわかりやすかったです♪」

唯「もう、ムギちゃんたら何言ってんのさ。
ザーボンさんだよっ?」

紬「あら~、本当っ!」

唯「もうっムギちゃんめ!
ちゅーしちゃるぅ!」ムチュチュ~

紬「んふ♪」

たまらぬ。これが『労働の喜び』と言う奴か。


129:2012/05/26(土) 14:16:36.17 ID:
律「まてまてまて。ムギもザーボン先生の事知ってたのか?」

紬「はぁい☆」

夢見心地のお嬢様。

さもありなん。見るだけでたまらんのだ。当事者はもっとだろうな。

澪「……あっ。次移動教室だろ?
そろそろ準備しないとやばいぞ」

律「おっと、そうだったな」

唯「ああぁん! まだ話終わってないよぅ~!」

律「また後ででも話せば良いだろ?」

澪「では失礼します」

紬「うふふ♪」

口々に言い、四人は去って行った。


130:2012/05/26(土) 14:19:28.84 ID:


放課後。

ザーボン「ふう」
(とりあえず初日の授業はきちんと出来たな)

職員室の自分の席で、私は安堵の息を吐いた。

もちろん、まだ覚えきれていない生徒の名前や宿題等々ある為、これで今日の仕事が終わった訳ではないが。

唯「ザーボンさ~ん!」

そんな私の前に現れたのは、平沢嬢……に、例の三人だ。

ザーボン「どうした、さっきも見たメンバーで」

紬「これから部活がありまして。
よかったら先生もご一緒にどうですか?」


131:2012/05/26(土) 14:22:05.15 ID:
部活?

……ああ。そう言えば先日までにした、お嬢様達との会話の中に何度か出てきた。

軽音部、だったかな。

ザーボン「それは面白そうだな。
だが、部外者の者が居てもお邪魔ではないのかな?」

唯「そんな事ないですよぅ!」

律「ザーボン先生、色んな楽器演奏出来るんだって?
むしろ聴きたいぜ」

澪「うん」

ザーボン「そうか。
そう言うなら……行ってみようか」

唯「やったぁ☆」


132:2012/05/26(土) 14:24:23.91 ID:



ジャジャジャァァァァァン!


律「ふぉぉ」

澪「……上手い」

梓「す、凄いです」

演奏が終わった私を、皆が讃えてくれた。

唯「でしょっ☆」

紬「ザーボンさんは演奏出来るだけじゃなくて、とっても上手いのよ♪」

ザーボン「ははは、そんな事はないよ」


133:2012/05/26(土) 14:26:41.88 ID:
律「いや、むしろ……」

澪「上手いどころか、プロレベルじゃないか?」

参ったな。この美貌を褒められるのはよくあるが、こう言った事で持ち上げられた経験はあまりない為、どことなくくすぐったい。

紬「皆、そろそろお茶にしましょうか~」

梓「そうですね、そうしましょう」


134:2012/05/26(土) 14:28:38.47 ID:
律「おおっ、梓が率先してお茶に賛成するとはっ!
あっしたーは雨~♪」

唯「へい♪」

律「あっしたーは雨~♪」

唯「へい♪」

梓「だー、うっさいです!
私はただ、ザーボン先生から色々とお話を聞きたいだけですっ!」

澪「そうだな。
唯とムギが先生と会った時の事も詳しく知りたいし」

その言葉を見ると、朝の授業の後にでも我々の馴れ初めを軽く説明されたらしい。


135:2012/05/26(土) 14:30:57.58 ID:
紬「まぁまぁ、とりあえず座りましょう~♪」

言いながらも、自分は紅茶を入れる作業に取り掛かるお嬢様はとてもウキウキしていた。

……そうか。昨日は平沢嬢と居る時のお嬢様は輝いているなどと思ったものだが、実際は『軽音部の仲間と居る時』なのであろう。

ただ、それに加えて恋をする者特有の甘さを放つのは、やはり平沢嬢と一緒の時か、
そうでなくとも彼女が何かしら関わってくる時だけのようだが。


136:2012/05/26(土) 14:34:26.06 ID:


律「へぇ~、そんな事があったのか!」

梓「先生、お強いんですね」

お嬢様の用意した紅茶とお菓子を頂きながら、私達は会話を楽しむ。

ザーボン「いや、その時の男達があまりにも雑魚だっただけだ」

澪「でも凄いです。
見ず知らずの人が絡まれてたら、つい見て見ぬ振りをしてしまうのが普通なのに……」

ザーボン「そうだな。その事自体は否定しない……が、私にはそんな美しくない事は出来んよ」


137:2012/05/26(土) 14:36:53.48 ID:
澪「そっか……
そうですね。私も、そんな『勇気』を持てる人になりたいなあ」

ザーボン(…………勇気、か)

律「澪ちゅわんは澪ちゅわんですものね。
泣き虫さんだから一杯いっぱい頑張らないと☆」

澪「う、うるさいな。憧れる位良いだろ!?」

律「まあ澪は今のままでも十分魅力あるし、このままでも良いと思うけどな」


138:2012/05/26(土) 14:39:17.05 ID:
澪「な……何を急に変な事言うんだっ///」

梓「私も同感ですよ。
私、澪先輩の事好きですし」

澪「な、な、な、梓まで何を言ってるのかなあ!///」

律「おっ、梓さんの愛の告白か!?」

梓「律先輩の事も好きですよ」

律「な……!///
ば、馬鹿こくなぃ! 猫じゃらしでもくらいやがれ、この百合にゃんがぁ!///」フリフリ

梓「ニャフ♪
……あ、いや。
からかわないで下さい!」


139:2012/05/26(土) 14:41:29.14 ID:
唯「あずにゃーん、私は?」

紬「うふふふふ♪」

梓「二人共後ろから抱きつかないで下さいっ!
もうっ、皆さん大切な先輩なんですから好きに決まってるじゃないですか!」

唯「わーい、私もあずにゃん好きだよぅ☆」

紬「私も好き~☆」


140:2012/05/26(土) 14:48:54.12 ID:
…………なんと言うか、言葉が上手く出てこないが……

まったくもって、彼女達のレベルの高さには驚かされるばかりだ。

いやあ。天国と言うのが本当に存在したら、こういう場所の事を言うのだろうな。

ザーボン(ビューティフル・ザ・百合……!)

唯「あ、そう言えば!
なんでザーボンさんのお仕事、私に内緒だったの?
絶対ムギちゃん知ってよねっ」

紬「うふふ、ごめんね。
唯ちゃんの唖然とした顔が見たかったから、ザーボンさんにも頼んでつい秘密にしちゃった」

唯「なんじゃとぉう」


141:2012/05/26(土) 14:51:28.20 ID:
紬「思わずその時の唯ちゃんの顔、撮っちゃった~。
可愛いわぁ♪」ウットリ

と、お嬢様が携帯を取り出して、画面を見せる。

唯「むはっ!?」

律「ははは、本当だ」

梓「目が点になってて……」

澪「凄く可愛いな」

その画面……写メだったか? を、他の三人がニコニコと見つめる。

ザーボン(確かに可愛いらしいものだ)

その時の平沢嬢の顔を思い出しながら私も拝見し、大きく頷いた。


142:2012/05/26(土) 14:54:17.62 ID:
唯「くうう、このいたずらっ子・天使ちゃんめ!
今日は家に泊まりに来なさいっ。おしおきするんだから~!」

ザーボン「キマシタワァ」

紬「きゃ~♪」

澪「なんだ、ムギの奴それが目的だったのか」

梓「納得です」

紬「うふふ、違うわっ。
これも、目的だったの~♪」


143:2012/05/26(土) 14:55:48.45 ID:
ザーボン(さすがだ。お嬢様)

尊敬の念を抱きつつ、私は紅茶を飲み干す。

……しかし、美味い。

昨日平沢嬢は私の入れた紅茶を飲み、

『ムギちゃんにも負けてないかも』

と言ってくれたが、とんでもない事だな。

ザーボン(私には、このように濃厚で優しい味は出せんよ)


144:2012/05/26(土) 14:57:33.33 ID:
唯「そうだ!
ザーボンさん、先生になったんなら『ザーボンさん』って呼び方は変ですよねっ」

ザーボン「ん?
私は別に構わないが……」

どうなのだろう。

調べた限りでは、教諭には名前の後に「先生」付けが基本で、よほど仲が良くても「さん」呼びはまずしないみたいだが……

ザーボン(こう言う経験が不足している今の私では判断出来ないな)

郷に入っては郷に従え。私は、この場の流れと彼女達の判断に任せてみる事にした。


145:2012/05/26(土) 14:59:28.54 ID:
律「まあ確かに堅苦しいかもな」

梓「普通に『ザーボン先生』で良いじゃないですか」

唯「えーっ、つまんないよー」

澪「いや、唯。こう言うのってつまるつまらないの問題じゃないと思うぞ」

唯「むーん……
さわちゃんがさわちゃんだから……
よしっ、ザーボンさんは『ザボちゃん』だーっ!」

律「おおっ!」


146:2012/05/26(土) 15:01:08.09 ID:
ザボ……ちゃん。

……あだ名か。悪くないな。

梓「え、えーと」

澪「私達はなんてツッコめば良いんだ?」

律「最高だなって言えば良いと思うよ☆」

梓「最高だな。
律先輩のおデコ」プッ


147:2012/05/26(土) 15:03:25.20 ID:
律「中野ぉ!
ツインテール引っ張っちゃるっ」クイッ

梓「もうっ、何するんですか!」ニャフフン///

唯「あずにゃん嬉しそうっ☆」

紬「♪」

さわ子「仲良き事は素晴らしき事かな」


153:2012/06/02(土) 10:07:57.13 ID:
澪「ぅわっ!?
さわ子先生いつの間に!?」

さわ子「やっと仕事が一段落してね。
まあそれよりザーボン先生、上手くやっていけそうですか?」

ザーボン「まだ初日なので断言は出来かねますが、恐らくは」

私はMs.山中に答えた。

さわ子「うんうん。
もし何かあったら、いつでも相談して下さいね」

ザーボン「ありがとうございます。
山中先生は外見だけでなく、心もお綺麗でいらっしゃる」


154:2012/06/02(土) 10:10:43.58 ID:
さわ子「ふふ、からかわないで下さいよ」

紬「おーぉ」

澪「…………」

梓「(タイヤキパクパク)」

唯・律『ほげー』

さわ子「……何よ貴女達、その微妙な反応は」

唇を尖らせるMs.山中に平沢嬢は惚けたように、

唯「さわちゃん先生が普通に先輩やってるって思って」

さわ子「どういう意味よ」


155:2012/06/02(土) 10:13:53.06 ID:
律「私は、ザボちゃんイケメンだし、さわちゃんならデレデレするんだろうなーって思ってたからさ」

澪「確かに、容姿だけじゃなくて肌も白く・きめ細かくて宝石みたいだし……
声だってカッコ良いしな」

さわ子「……ああ、そういう事」

Ms.山中は合点がいった様に頷く。

さわ子「確かに以前の私なら、イケメンにはイケメンと言うだけでクラッと来ていたわね。事実よ。
でも、今の私は違うわっ!」

紬「と言うとっ!?」ワクワク

お嬢様が身を乗り出す。

……物凄く瞳を輝かせておられるな。


157:2012/06/02(土) 10:19:25.60 ID:
さわ子「私は自分の本当の気持ちに気付いたのっ!
今まではただ恋人が欲しかったってだけで、特別誰かを本気で愛してた訳じゃない。
それがわかった時、深い霧が晴れるように……自分の本心に出会えたの!」

……むう、気のせいか? Ms.山中の背に後光が……


さわ子「女の子って、良いなって!」パアァァァァァ


ふおっ! 眩しい!?

律「なんか凄い唐突な結論出しだし、そもそもそれも『特別誰か』を愛してるって訳じゃねーっ。
……でも」


158:2012/06/02(土) 10:21:40.12 ID:
澪「物凄く同感です、さわ子先生」

さわ子「ありがとう!」

と、Ms.山中は軽音部の皆と順に握手していく。

そして私の番になり……

さわ子「ザーボン先生っ」

ザーボン「はい」


パシンッ!


私達は締めのハイタッチをした。


159:2012/06/02(土) 10:24:54.30 ID:
さわ子「ふう、今日はなんて爽やかな日なのかしら」ナデナデ

梓「にゃふっ♪///」

紬「先生、お茶のおかわりどうぞ~♪」

さわ子「あら、ありがとうムギちゃん。
……でも思うんだけど、やっぱり何事も形を追い求めるだけじゃ駄目なのよね」

ザーボン(……!)

さわ子「私は結局、『恋人』と言うのをステータスと言うか、アクセサリーみたいに思ってた訳だけど……」

と彼女は紅茶を一口。

さわ子「それに気付かなかったら、男が好きだろうが女の子が好きだろうが、いつまで経っても恋人なんて……
ううん、例え恋人が出来たとしても、長続きはしなかったんでしょうね」


160:2012/06/02(土) 10:30:43.59 ID:
澪「そうかもしれないですね。
恋愛って、最初は追いかけるものじゃなくて生まれるものだと思います。
追いかけるのは、生まれたそれからで……」

さわ子「そうね。
ただ恋をしたいから誰かを追いかけるって、恋愛自体にも……相手にも失礼なのかもしれないわね」

澪「はい。
恋人が出来たら……自分はもちろん、相手も幸せになって、そういう気持ちをくれた『恋愛』そのものにも……
幸せを返したいです」

唯「おおっ、澪ちゃんが大人だ!」

紬「さわ子先生も澪ちゃんも素敵ですね、ザーボン先生♪」


161:2012/06/02(土) 10:33:27.28 ID:
ザーボン「ん?
うむ、そうだな……」

律「なんか澪ワールドも感じるが……
さすが、この中で彼女居る歴が一番長いだけあるぜ!」

澪「からかうなよ、律」

律「澪さん澪さん、例の彼女とはどれくらい進展しましたかっ!?」バッ

澪「(ムギュッ)むぃよ。
や、ふゃめろ……
──だあー、手を口に押し当てるな!
つかそりゃなんだっ」

律「ぶー。マイクだよう。
てか答えて下さいよ!
……あっ、昨日日曜だったし、昨晩の事でも思い出したんでちゅか???」


162:2012/06/02(土) 10:37:33.15 ID:
澪「う、う・る・さ・い!///」ポカリッ

律「ひゃっはー☆」

唯「ふふふふふっ。
まあ憂お家でも凄く幸せそうだし、私とムギちゃんも澪ちゃん達に負けてられないなぁ」

梓「ああ、確かに私ものろけられます。
憂の事なんで天然なんでしょうけどね」

澪「えっ、そ、そそそうなのか///」

律「澪たん超嬉しそう☆」

澪「や、やめろよからかうなよ///」

律「……なんだよぅ。
ガチ喜びかよぅ!」


163:2012/06/02(土) 10:39:48.14 ID:
さわ子「ツッコミの貰えなかったボケは寂しいものね」

梓「──私ちょっとトイレ行って来ます」

澪「ん? ああ」

紬「あらあら♪」

唯「あや? あずにゃんやけに嬉しそうだねっ」

梓「そんな事ないです。トイレ行くです」

紬「うふふ♪」

律「ははぁーん、さては澪と憂ちゃんの『らぶシーン』でも想像して、体がどうにかなっちゃったか?」


164:2012/06/02(土) 10:44:21.87 ID:
梓「ばっ、馬鹿な事言わないで下さいそんな事ある訳ないじゃないですか大体」カキカキ

律「私のおでこが!」

唯「『肉』!」

梓「プッ」タッ

律「なにすんだ中野ぉ!」テテテ

紬「まあまあまあまあ。りっちゃんも嬉しそう♪」

澪「──ザーボン先生、どうしたんですか? ボーッとして」

……はっ。


165:2012/06/02(土) 10:46:52.58 ID:
ザーボン「い、いや……
あまりに芳しい展開に、つい見惚れてしまっていたのだ」

澪「?」

ザーボン「ははは、何でもないよ。
気にしないでくれ」


澪『私も、そんな『勇気』を持てる人になりたいなあ』

さわ子『でも思うんだけど、やっぱり何事も形を追い求めるだけじゃ駄目なのよね』


私は……


166:2012/06/02(土) 10:51:11.64 ID:


……………………

…………

???「ようっ!」

ザーボン「……ジース。ノックせずに部屋に入ってくるのはやめてくれと何度も……」

ジース「まあまあ、堅い事言うなって」

ザーボン「まったく。
で、何か用か?」

ジース「相変わらず気難しいなぁ。せっかく親友ちゃんが遊びに来たのにー」

ザーボン「私は今勉強しているんだ。邪魔をしないでくれ」

ジース「またかあ。そんなに勉強ばかりしてどうするんだよ」


167:2012/06/02(土) 10:53:24.64 ID:
ザーボン「別に。
私はこうやって知識を得るのが好きなんだ」

ジース「ちぇっ、もったいないよなぁ。
この星じゃあ俺と並んで武術の天才なのにさ。
──よし、久しぶりに組み手しようぜ!」

ザーボン「はあ!?
だから私は今勉強を……」

ジース「良いから良いから。
頑張って、この銀河一と名高いサウザーさんより強くなってやろうぜ~」

ザーボン「そんな事に興味はない……って引っ張るな!」


168:2012/06/02(土) 10:55:47.97 ID:


ジース「この先に良い場所があったよなっ」

ザーボン「まったく……強引な奴だ」

「あら、ザーボン君にジース君だ~」

ザーボン「!」

ジース「あっ、チョリーっす!
お出かけですか?」

「そうよ。お散歩♪
二人も?」

ジース「へへっ、オレ達はこれから一戦やるんです! 修行っす!
な、ザーボンっ」

ザーボン「あ、ああ///」


170:2012/06/02(土) 10:59:44.67 ID:
「まあまあまあまあ、凄いわっ!
男の子って羨ましいな」

ジース「いずれオレ達二人が、この宇宙で一、二を争う戦士になってみせますよ!」

「うふふ、頑張ってね。
じゃあまたね♪」

ジース「はい!」

ザーボン「は、はいっ」

ジース「……姉さん行っちまったぜ。
いつまで人見知りってんだい」

ザーボン「──ハッ!?」


171:2012/06/02(土) 11:06:56.20 ID:
ジース「やれやれ。ホント奥手な奴だなあ。
いつまであの人を『憧れのお姉さん』のままにさせてんだか。
お隣さんなんだし、男ならさっさと告ろうぜ!」

ザーボン「う、うるさいな……
ほっとけよ」

ジース「つまんね。
お前は顔もスタイルも良い。オレと並んでこの星最強。頭はぶっちぎりに良い。
告ってダメな理由は特に思い付かないけどなあ」

ザーボン「…………」

ジース「姉さんも美人だからお似合いだしよ。
ちょっと眉が太いけどさ」

ザーボン「う、うるさいなっ。それも良いんじゃないか!」


172:2012/06/02(土) 11:13:05.61 ID:
ジース「……あ、もしかして例の変身が原因か?
お前、あれがコンプレックスだったよな」

ザーボン「!
そ、その事は言うなよ!」

ジース「すまんすまん。
ただオレには羨ましいけどなぁ。
確かにこの銀河でああいう事が出来る人間なんて聞いた事ないけど……
なんつーか、突然変異の特別なヒーローみたいでカッコ良いじゃん!」

ザーボン「……しかし、見た目が……」

ジース「見た目?
これぞ奥の手! な野獣っつーか、究極モンスターみたいな感じでカッコ良いと思うけどなぁ」

ザーボン「…………ありがとう」


173:2012/06/02(土) 11:17:34.96 ID:
ジース「ん?
なんか言ったか?」

ザーボン「いや、何でもない。
それに、私にとってあの人は憧れでもあるんだっ」

ジース「憧れ?」

ザーボン「ああ。見目麗しいだけじゃなく気品があって、優しくて……気高い、美しい人なんだ。
私もいつかあんな風に、本当に美しい人間になりたいと思う」

ジース「ふーん。
なら尚更告ろうぜ!
恋人がそういう相手なんて超々カッケェじゃん!」

ザーボン「う……そうは言うが……
そんな簡単にこ、こ告白なんて出来るものか……」


174:2012/06/02(土) 11:19:28.33 ID:
ジース「ンだよ。ただヘタレてるだけかぁ。
つまんねつまんね」

ザーボン「ヘ、ヘタレとはなんだ!」

ジース「だって事実じゃねぇの」

ザーボン「こいつっ。
行くぞ! ぐうの音も出ないほど叩きのめしてやる!」

ジース「おほー、ザーボンちゃんがその気になったぜ!
よっしゃよっしゃ、じゃあ──」


ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!


ザーボン・ジース『!?』


175:2012/06/02(土) 11:21:16.86 ID:
ジース「なんだ!?」

ザーボン「空からエネルギー波が降ってきた……のか?」

ジース「な、なんだあの宇宙船は……」

──ん。

ザーボン「行ってみよう!」

──ザ……ん。

ジース「おう!」


『ザボちゃんっ!』


180:2012/06/03(日) 22:55:11.19 ID:


……………………

…………


ザーボン「!!!」

唯「よかったぁ、やっと起きたよ~」

ここは……桜が丘高の職員室──か?

目の前には、軽音部の五人とMs.山中が立っていた。

……そうだ。今日は部活でMs.山中とセッションをし、彼女達に実演をしてみせる約束をしていたのだったな。

ザーボン「私は……居眠りをしていたのか?」


181:2012/06/03(日) 22:57:22.73 ID:
律「そ。ぐっすり眠ってたぜ」

しまった。それは行儀が悪い。

ザーボン「すまない、見苦しい所を見せてしまった」

澪「いえ。そんな事はありませんけど……」

梓「先生、お疲れですか?」

律「ザボちゃんが来て……
一ヶ月位か?
私たち生徒から見てもわかる位、頑張ってたからなぁ」

さわ子「そうね。もしお疲れでしたらセッションはまた後日でも構いませんよ?
ザーボン先生、今日はもう学校に残ってする仕事はありませんよね?」


182:2012/06/03(日) 23:00:09.82 ID:
ザーボン「そうですが、問題ありません。
少々気が緩んでいただけですので」

言って私は立ち上がる。

──そう。早い物で、私がこの学校に赴任してからはや一月ほど。

生活自体は充実していて文句のつけようもないが、やはり知らぬ間に疲れは溜まっていたのだろう。

この私が居眠りをしてしまうとは……

それに、悪夢は相変わらずだった。

いや。むしろ日が経つにつれ内容がどんどん鮮明になってきている。


183:2012/06/03(日) 23:01:43.51 ID:
ザーボン「待たせてしまってすまなかったな。
行こうか」

私は歩き出す。

律「……おっしゃ、じゃあさわちゃんもザボちゃんも期待してるぜ!」

さわ子「ふふ、任せなさい」

背中から聞こえる皆の声。

それはとても安らぐもので。

ザーボン(……そうだな。何を気にする事がある。
所詮、昔の話。それを今更思い出した所で……
忘れてしまえば良いのだ。またあの時みたいに……)


184:2012/06/03(日) 23:03:16.86 ID:
あの時みたいに。

また、逃 げ れ ば ?


ズキン。


ザーボン(痛っ……!)

激しく頭が痛んだ。

紬「ザーボン先生っ♪」

廊下に出た所で、お嬢様が私の隣に来た。


185:2012/06/03(日) 23:04:54.37 ID:
ザーボン(……!)

いかん、苦しそうな顔を見られてはいないだろうか。

そんなもの美しくはない。

顔を逸らし表情を整え──

紬「ちょっとお耳を~」

終わる前に、お嬢様が私の耳に顔を近づけた。

ザーボン「ん?」

紬「……お話したい事があります。
今晩、お会い出来ますね?」

ザーボン「……!」


186:2012/06/03(日) 23:07:07.82 ID:
私はその言葉に思わず彼女に視線を向け、固まった。

間近で……それも久しぶりに見る、お嬢様の真面目な顔。


『……逃げなさい』


それはとても、あの時のあの人みたいで。

紬「時間、場所はまた連絡します」

ザーボン「……うむ、わかった」

駄目だな。もう、忘れられない。

逃れる事なんて出来ないのだ。

そんな風に思った。


187:2012/06/03(日) 23:09:37.10 ID:


……………………

…………

私は、あの夢の続きを知っている。

当然だ。あれは現実に起こった事なのだから。

あれから爆発が起こり、宇宙船が降りて来た場所にたどり着いて……


ジース「なんだ、あいつら……?
凄い大軍だ」


188:2012/06/03(日) 23:13:20.23 ID:
ザーボン「ジース、このまま空から近付くのは危険だ。
地上から隠れながら行こう」

ジース「おう」

ザーボン(……酷いものだ)

ジース「……この辺りは町だったはずなのに、瓦礫すら見当たらねぇ。
この辺りに居た人は……」

ザーボン「あのエネルギー波で消滅したと考えるべきだろうな」

ジース「ふざけやがって……!」


189:2012/06/03(日) 23:15:19.86 ID:
ザーボン「──この岩の向こうが、宇宙船がある場所のはずだ」

ジース「……着いたぜ!
あいつら……揃いも揃って似たような格好してやがる。
何かの軍隊か?」

ザーボン「シッ! 何か言っているぞ」


????「ほっほっほ。思った通りここは素晴らしい星ですね。
では皆さん、邪魔する方達を皆殺しにして、さっさとこの星を手に入れてしまいましょう」


ザーボン「な……!」

ジース「なんだと!?」


????「さあ、お行きなさい!」


ジース「させるか!」


190:2012/06/03(日) 23:17:51.40 ID:
ザーボン「ジース、待て!
……ちいっ!」

ジース「おらあ!」ガッ、バキッ!

兵士1「ぐえぇ……」

????「!?」

兵士2「な、なんだ貴様らは!」

ザーボン「消えろ!」ドウッ!

兵士2「ぐぁ──」

ジース「へっ、こいつら数だけだぜ! まとめてブッ飛ばしてやる!」

兵士3「な、なんだとおおお!」


191:2012/06/03(日) 23:22:02.24 ID:
ザーボン「……ジース!」

ジース「おうっ!」

ザーボン・ジース『クラッシャーボール!!!』


ドウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッッ!!!


兵士達『ぐわあああああああ……』

????「(ピピピッ)……あの二人は、共に戦闘力一万三千程ですか。
なるほど、下っ端の兵では歯が立たない訳です。
ふふふ、この銀河はお強い方が多くて素晴らしいですね。
──さあ、出番ですよ」

????「はっ」


192:2012/06/03(日) 23:25:33.21 ID:
ザーボン「ふん……」

ジース「俺達が力を合わせれば楽勝だな」

兵士4「く、くそっ、こいつら……」

????「下がれ!」

ザーボン「……!」

ジース「あ……あんたは……まさかっ!?」

ザーボン「サウザー!?」

サウザー「お前達、なかなかやるじゃないか。
次は私が相手になろう」


193:2012/06/03(日) 23:27:38.23 ID:


ザーボン(……勝てる訳がなかった。
サウザーは私達の銀河最強と名高い戦士だ)


ジース「く、くそっ……」

サウザー「ふふふ、この私相手によく粘った。
特に貴様。あのような……変身? と言うのか。
あれにはとても驚いたよ」

ザーボン「ぐ……」

????「ほっほっほ。もうそれ位で良いでしょう」

サウザー「はっ」


194:2012/06/03(日) 23:30:07.61 ID:
ジース「て、てめえがこの集団のボスか……?」

????「そうです。
フリーザと申します。以後お見知りおきを」

ジース「なめやがって……」

フリーザ「まあまあ。
これで私と貴方達の力の差がわかったでしょう?
ちなみに、このサウザーさんは私と戦い、私に従う事を決めて下さいました」

ザーボン・ジース『!?』

ジース「じゃ、じゃあ……」


195:2012/06/03(日) 23:32:30.00 ID:
サウザー「そうだ。フリーザ様はお強い。この私すら歯が立たなかった」

ザーボン「それが……なんだと言うのだ……!」

フリーザ「貴方達も私の配下になって頂きたいと思いまして」

ジース「なんだと……!?」


ザーボン(それからフリーザは、自分達が惑星の地上げを行っている事。
その途中、強い者や有能な者が居たらどんどんスカウトして配下にしている事。
地上げをする際、邪魔な者、またスカウトをしても従う気の無い者は容赦なく殺している事。
それらを説明してきた)


フリーザ「どうですか? ぜひ貴方達も我が軍に。
……実は私も変身型の宇宙人でしてね。そちらの方とは仲良くなれそうですし」

ザーボン「…………」


196:2012/06/03(日) 23:36:37.26 ID:
フリーザ「お二人の実力なら、早速フリーザ軍の幹部にもなれますよ」

サウザー「フリーザ様は素晴らしいお方だ。
この方について行けば、何でも手に入るぞ!」

フリーザ「ほっほっほ、サウザーさんの仰る通りです」

ジース「こ、こいつら……っ」

ザーボン「……余裕ぶって長話しているのが仇となったな」

フリーザ「ほ?」

ザーボン「エレガント・バスター!」


ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!


ジース「……や、やった! やったな、ザーボン!」


197:2012/06/03(日) 23:39:07.49 ID:
ザーボン「ジース、逃げるぞっ、飛べ!」バッ!

ジース「えっ?
ま、待てよ! なんでだよ!」バッ!

ザーボン「あの技は力を貯める時間がかかり過ぎる分、確かに威力はあるが……
サウザーや、サウザーすら相手にならなかったという化け物があれで倒せたとは思えん!
これからどうするにしても、一旦体勢を整えないと……!」

ジース「そ、そうか。
そうだな……」


198:2012/06/03(日) 23:41:37.89 ID:


ザーボン(それから私達は必死で逃げつつ、短い時間ながら相談をした。
ジースは一息ついたらまた戦いたがっていたが、私は頑なに反対した。
作戦を立てれば、あるいはサウザーだけならなんとかなったかもしれないが、あのフリーザと言う奴まで居てはどうにもならないと。
悔しいがここは一旦星を脱出し、機を待つしかないと)


ジース「くっそー! わかったぜ!
じゃあ家族や出来る限りの知り合いを連れたら、即お前の家に行けば良いんだな!?」

ザーボン「ああ! すぐ飛び立てるように準備をしておく!」


199:2012/06/03(日) 23:47:13.94 ID:


ザーボン(母星を見捨てるのは身を切られる思いだったが、どうしようもなかった……と言ったら言い訳だろうか。
だが少なくとも、あの時はそれが最良の手に思えた。
……いや、今でもあれ以上の策は思いつかない)


ジース「じゃあ後でな!」

ザーボン「ああ!」


ザーボン(それから私はジースと別れ、自宅へ向かった。
──が、当時の私は知らなかった。
スカウターと言う、相手の強さだけでなく居場所も探る事が出来る機械があると。
そしてそれを奴らが持っている事を)


200:2012/06/03(日) 23:53:07.56 ID:


……………………

…………


紬「お待たせしました」

ザーボン「──お嬢様。
いや。特に待ってはいない故、気にしないでくれ」

物思いにふけっていた私は、意識を現実へと引き戻した。

ここは琴吹邸の庭。

例の、学校の廊下でお嬢様の耳打ちを受けてから数時間後。

私は夜の時間に琴吹邸へ呼び出され、ここへ通されて彼女を待っていたのだ。


201:2012/06/03(日) 23:55:13.94 ID:
ザーボン(…………)

紬「ふふ。お察しの通り、前回と同じくまた家の者が周囲におります。
気を悪くさせてしまったら申し訳ありません」

ザーボン「いや、構わないよ。
……で、話とはなんだろう」

紬「単刀直入にお聞きします。
ザーボンさん、貴方は一体何者なのですか?」

ザーボン「…………」

紬「この三十日間、琴吹グループと、それに関わる者達が貴方の身元を調べました。
でも、何も……
些細な情報一つ見付かりませんでした」


202:2012/06/04(月) 00:03:51.33 ID:
そうだろうな。私は異星人だし、あの山から飛び立つ時や町の裏通りへ降り立った時、諸々の行動はとにかくすべて慎重に行っていたのだ。

まあ、服装に関しては迂闊だったが……

ともあれ忙しい日々にすっかり忘れていたが、そもそもどうやって地球に来たか私自身がわかっていないのだ。

紬「こんな事初めて。信じられません……!
ぜひ、お聞かせ願えませんか?」

さすがのお嬢様からも多少の緊張が見える。

……当たり前か。

まあ、護衛付きにせよこうやって二人切りで話をしてくれているのを見ると、まだ信用はしてくれているみたいだが……

どう説明すれば良いのだろうな。


203:2012/06/04(月) 00:07:09.59 ID:
ザーボン「……私は異星人だ、と言って……信じて貰えるだろうか?」

紬「異星人……?
ええと、この星の方ではないと言う事でしょうか?」

ザーボン「そうだ」

紬「えっと……なんて言ったら良いか……
正直、信じられません」

だろうな。地球は宇宙を旅するどころか、宇宙船すらまともに開発されていない惑星だ。

そのような星でこんな事を言われても信じられる訳はないだろう。


204:2012/06/04(月) 00:10:29.65 ID:
ザーボン「だが、事実なのだ」

紬「ええと……」

お嬢様は私の表情や空気で、私の真意を読もうとしているみたいだ。

しかし嘘など一つも吐いてはいないので、裏などあるはずもない。

紬「……詳しく、私にもわかるように説明をして頂けますか?」

……しまった。

そう言えば以前、琴吹邸に居た時からこう言う日がくる事は予想出来ていて、この時までに対策を立てておくつもりだったな……

すっかり失念していた。


205:2012/06/04(月) 00:12:32.62 ID:
まあとりあえず頭ごなしに否定はされず話を聞いて貰えるようだし、特に策は必要無いか。

『わかった』。そう言おうとして──私は凍りつく。

ザーボン(詳しく話す……それはつまり……)

紬「……ザーボンさん、私にはそれを聞く権利があるはずです」

その通りだ。彼女は私のクライアントなのだから、当然だ。

だが……

説明をすれば、どうしてもフリーザ軍の事を話さなければならなくなる。

……私が虐殺を繰り返してきた事も。


206:2012/06/04(月) 00:14:32.57 ID:
馬鹿な。出来る訳がない。

そんな事を話したら、今の環境を失ってしまう可能性が高い。

地球人も大多数の民族と同じで、こう言った事は悪としているのだから。

ザーボン(この環境を無くしたら、私は様々な謎を解くパーセンテージの大多数を失う事になる。
衣食住はそれぐらい大切だ。
それはつまり、二度とフリーザ軍に戻る方法も……)

……いや、違う。

ザーボン(私は今を……この現実を無くしたくない)

そして罪の告白をし、皆に……お嬢様に軽蔑の表情を向けられるのが怖い。


207:2012/06/04(月) 00:16:00.33 ID:
ザーボン「私は……」

紬「……何か、話せない事情がおありとか?」

どうすればいい。一体どうすれば……

ザーボン「……お嬢様!」

紬「は、はいっ?」

ザーボン「私が異星人だと言う事を行動で示す!」

紬「?」

ザーボン「失礼!」

紬「えっ?」

私はお嬢様の両肩を掴むと、高くジャンプした。


208:2012/06/04(月) 00:17:40.29 ID:
紬「!!!」

その距離、およそ一キロ位か? 一瞬でそこまで到達すると、私はお嬢様の背に手を回して抱きかかえた。

ザーボン「お嬢様。私によく掴まり、決して離さないで頂きたい」

そのまま地平線へ向けて飛ぶ。

紬「おおおおお!」

風を切り、二人夜の空を行く。


209:2012/06/04(月) 00:19:29.94 ID:
紬「ザ、ザーボンさんっ、これは一体どうなって、どうやっているのっ!?」

お嬢様はいささか興奮気味の声を上げる。

いや、これは興奮気味と言うより……

ザーボン「私には当たり前の技だ。
──地球人には、何の道具も無しに空を飛べる者は居ないと聞いたが?」

紬「そっ、そうね! こんな事出来る人、聞いた事ないわっ!」

楽しそうだ。


210:2012/06/04(月) 00:21:47.97 ID:
紬「ねね、ザーボンさんっ。もっと早く飛べる!?」

ザーボン「うん? 出来るぞ」

紬「じゃあもっともっと速く飛んでっ!」

ザーボン「わかった」

紬「ひゃ~~~~~!!」

それから幾ばくか。合間合間でお嬢様から要望を受け、それに答えながら私達は滑空した。


211:2012/06/04(月) 00:24:15.19 ID:


紬「ああ……幸せ……
もう思い残す事はありません……」

ザーボン「待て待て」

ベンチで横になったまま昇天しそうなお嬢様を私は止める。

空中遊泳を楽しんだ私と彼女は、近所の公園に降りて来ていた。

そのまま琴吹邸に帰っても良かった……

と言うかそうすべきだと思ったが、お嬢様が喉が渇いたと言うから自販機が近くにあるここにしたのだ。

ちなみに、琴吹邸にはすでにお嬢様自身が連絡を入れてあるので、心配されたり誤解を生む事はないはずだ。


212:2012/06/04(月) 00:26:10.82 ID:
ザーボン「しかし、楽しんで貰えたみたいで良かったよ」

紬「うふふっ。最高だったわ~♪」

ザーボン「……それで、信じて貰えるだろうか?」

と、彼女は体を起こして姿勢を正した。

紬「──正直、まだ信じきれません。
ううん、異星人なんて非現実的すぎて、ピンと来ないと言うのが正しいかもしれませんね」

ザーボン「…………」

紬「でも、信じきれてなくても……
今ので、本当にそう言う事もあるのかもって思い始めました!」


213:2012/06/04(月) 00:32:18.51 ID:
ザーボン「そうか……よかった」

紬「それに私、異星人さんとお話するの夢だったの~☆」

そう言うものか? 様々な宇宙を回っていた私にはよくわからないが……

紬「……でもね、私はザーボンさんの件に関しての責任者です。
これまではどんな事も調べ上げる自信があったので、責任者の権限を行使していましたが……
こうなった以上、素性のわからない方を放ってはおけないのです」

ザーボン「確かに……そうだろうな」

フリーザ軍みたいな組織でもない限り、素性のはっきりしない者を置いておくのはリスクが大きすぎるし、
他の者の不安や不審を煽る可能性が高い。

……結局、私が出した結論は……


214:2012/06/04(月) 00:34:22.70 ID:
ザーボン「……お嬢様。私は」

唯「あいすぅ、あいすぅ♪ んふんふ♪」

私が言い掛けたその時、ベンチ横の公園の入り口から平沢嬢が入ってきた。

紬「あっ、唯ちゃんだ☆」

唯「ふぉ?
──おお、ムギちゃんだっ! すきぃーっ!」

私達の姿に気付いた彼女は、満面の笑顔で走り寄って来てお嬢様に抱き着き、キスをする。

☆しゃらんら☆

……ハッ。


215:2012/06/04(月) 00:36:55.15 ID:
唯「むちゅ」

紬「ちゅ~……
──ん。んふ。
い、いきなりダメよ、唯ちゃん。
ザーボンさんが見てる……///」

本人達がよければ良いと思うのだよ☆

……ハッ。

唯「んふ?
……おおっ、ザボちゃんいつの間にっ!?」

ザーボン「最初から居たのだが、私の事は気にしなくても良いよ」


216:2012/06/04(月) 00:39:09.98 ID:
唯「そっかあ。
じゃあムギちゃん、続き続きっ☆」

紬「も、もうっ///
……あっ。唯ちゃん、アイスが溶けかかってるわ!」

唯「!
なんとぉーっ!」

そういえば、平沢嬢は右手にアイスを持っていた。

唯「こいつぁいけねえ! ムギちゃん手伝って!」

紬「わかったわ、唯ちゃんっ!」


217:2012/06/04(月) 00:41:11.32 ID:
と、溶けかかったアイスを二人で両サイドから舐め始めた。


ペロペロペロペロペロペロ……


唯「──ふう、助かったっ。
ありがとう、ムギちゃん☆」

紬「こちらこそ、美味しかったわ~♪
でも唯ちゃん、どうしたの?」

唯「うん、あのね……
……あっ!」

突然顔を真っ青にする平沢嬢。


218:2012/06/04(月) 00:43:13.41 ID:
紬「唯ちゃん?」

唯「あ、あああああのムギちゃんにザボちゃん先生、私がアイス食べてた事は憂には内緒にしてくだせぇ……」

紬・ザーボン『?』

憂と言うのは彼女の妹だな。

幾度と話に聞いているので、それだけは知っているが……

唯「あのね、かつお節切れちゃってお使い頼まれたんだけど、ついアイス買って食べちゃったんだぁ」

紬「あらぁ……」


223:2012/06/10(日) 12:56:50.35 ID:
ザーボン「それ位、別に良いのではないか?」

唯「ううん、今日はもうアイス食べちゃってたから。
憂にアイスは一日一個って言われてるの。
うう、怒られちゃうよぅ……」

ザーボン「憂嬢はそんなに恐ろしいのか?」

唯「怖いよぅ。『めっ!』って……
ううう、なんてこったぁ」

『滅』!?

彼女の怯えようはただ事ではない。

……平沢憂。どれほどの者だ……?


224:2012/06/10(日) 12:59:02.05 ID:
ま、まさか私と同じ、突然変異の戦闘の天才児か?

紬「大丈夫よ唯ちゃん。言わないわ」

お嬢様が優しいほほ笑みで平沢嬢の頭を撫でた。

ザーボン「うむ、私も言わないと約束しよう」

何かと縁の深い我々だ。共有する秘密の一つや二つあっても良いだろう。

こないだ見たアニメによると、地球ではこう言うのは確か……『オトコノヤクソク』と言うのか?

……いや、自分も相手も男でないとこの言い方はしないのだったかな?


225:2012/06/10(日) 13:00:40.46 ID:
唯「わあい! 二人ともありがとう!
これで、お家帰って……
……あああああ」

一旦は眩い笑顔を浮かべた彼女だが、その表情がみるみる内に歪んだ。

紬「唯ちゃん?」

唯「憂から預かったお金で買っちゃった……
今月はおこづかいももう無いよぅ」

なんという事だ。

紬「あらまぁ」

ザーボン「──持ち合わせならある。
いくらか知らんが、それで何とかならんかな?」


226:2012/06/10(日) 13:08:42.32 ID:
唯「……ううん。気持ちはとっても嬉しいけど、そんな事しちゃいけないんだよ。
私、ちゃんと憂に謝るっ!」

紬「まあっ! 偉いわ唯ちゃんっ!」

な、なんだと!?

それほど恐ろしい存在に正面からぶつかるとは、なんたる勇気か……

唯「あ、でっ、でもね。出来れば、そのぅ……」

と、平沢嬢は物言いたげに、お嬢様を上目遣いで見つめた。

それにお嬢様はわかったとばかりに大きく頷いて、力強く言った。


227:2012/06/10(日) 13:10:16.24 ID:
紬「私、加勢するわっ! 一緒に頑張りましょう!」

唯「おおおおおっ! ムギちゃんマジ天使だぁっ!」

紬「そうと決まれば早速行きましょっ☆」

唯「うんっ! ありがとう☆」

紬「……あっ」

お嬢様が思い出したように私を見る。

視線が一瞬交わり……

そうだな。私も平沢嬢のように勇気を出さねばならないな。

だが、一言二言で終わる話でもない。


228:2012/06/10(日) 13:11:34.15 ID:
ザーボン「──お嬢様。勝手なお願いだが……
説明をするにはまとまった時間が必要なのだ。
必ず話す。必ず話すから、また後日にさせては貰えないだろうか?」

紬「……それだけ込み入った事情があるのですか」

ザーボン「ああ。
頼む、信じては……頂けませんか」

私は頭を深々と下げた。

紬「…………わかりました。あまり長く待つ事は出来ませんが、もうしばらくなら可能でしょう。
日程はこちらからまた追って連絡致します」

ザーボン「……ありがとう」


229:2012/06/10(日) 13:13:27.66 ID:
唯「???
何のお話?」

紬「うふふ、ごめんね。
何でもないわ」

唯「……あっ、そっかぁ。お仕事だね。
ご苦労だな、紬っ」

紬「ありがとうございます、あなた♪」

……そうか。どのレベルまでかは私は知らないが、平沢嬢もお嬢様の仕事の事は知っていたのだったな。


230:2012/06/10(日) 13:18:41.39 ID:
しかし今の話を聞くと、こう言う事への距離感と言うか……

尊重の仕方・分別と言うのもしっかりと完成されているのだな。

見た目とか、それだけでは決してない。こう言った所もこのカップルの美点だと私は思う。

ザーボン「──さて、では行こうか」

私は先頭に立った。

唯・紬『?』

ザーボン「もう夜も遅くなってきたし、女性二人で夜道は行かせられんよ。
どっちにしろお嬢様を送っていかねばならんし……
何より、勇気をくれた平沢嬢へのお礼だ。
この戦い、私も参戦しよう」


231:2012/06/10(日) 13:20:59.83 ID:
紬「勇気?」

唯「よくわかんないけど、ザボちゃんも一緒に来てくれるんだっ!
嬉しいなぁ☆」

ザーボン「うむ、任せておけ」

紬「うふふ。
何だか楽しいわぁ♪」

さすがお嬢様だ。これから死地に向かうというのに、何たる余裕。

唯「でもでも、ザボちゃんが先歩いて大丈夫? 私のお家の場所知ってたっけ」

……はっ。

ザーボン「…………」

私は黙って二人の隣まで戻ってきた。

唯「ようし、じゃあ出発だあ!」

紬「お~っ!」

ザーボン「うむっ」

唯「──あっ、なめたけ買ってなかった!」


それから平沢邸に行ったが、憂嬢はとても穏やかで、気の利く素晴らしい少女だったと伝えておく。


232:2012/06/10(日) 13:28:08.24 ID:


ザーボン「ううむ……」

二日後の日曜日の昼前。私は唸っていた。

昨日の朝、お嬢様から早速メール……日程の連絡があった。

今日から見て、祝日である明日の昼に琴吹邸に来て貰いたいとの事だ。

一昨日はあの後、お嬢様と一緒に平沢姉妹から食事をご馳走になり、お嬢様を送り届けてから自宅へ戻って来た。

その時は(色々あった日ではあったが)楽しく、唯嬢のおかげで湧いてきた勇気もあり、気持ち良く一日を終える事が出来たのだが……


233:2012/06/10(日) 13:30:32.72 ID:
お嬢様からのメールでふと思った事がある。

果たして、本当にすべてを話す事が正しいのだろうか?

もちろん嘘を吐く気は毛頭無い。

だが……例えば、事実とは言え全員が全員、自分の心中すべてを有りのままに話したら世界はどうなるか?

……ありえない。

嘘を吐くとか逃げるとは別の意味で、話す内容は考える必要があるのではないだろうか。

ザーボン(大体、私の経歴を事細かに話してどうする?)

お嬢様に信じて貰えないだけならまだ良い。

下手をしたら引かれる……どころか、不必要に怯えさせてしまうだけにならないか?


234:2012/06/10(日) 13:33:06.55 ID:
まだ短い期間ながらこれまで桜が丘で真面目に働いてきたし、それなりに結果を残してきた自信もある。

そしてそれはこれからも続けていくつもりだが……

すべてを話してしまったら、こんな人物を信じ、あっせんした自分自身を責めてはしまわないか? 彼女の立場が危なくならないか?

……いや、この場合組織(と言っても良いだろう)の責任者たるもの、それは自業自得になるのだろうか……?

ともあれそのような事をずっと考えていて、昨日は一睡も出来なかった。

ザーボン「……もう昼か……」


235:2012/06/10(日) 13:35:09.30 ID:
そういえば昨夜から食事を取っていなかったな……

さすがに空腹を感じる。

ザーボン(……一昨日の夕食は最高だったな……)


……………………

…………

あの夜。公園からスーパーへ寄り、なめたけを買った私達三人は平沢邸へとたどり着いた。


236:2012/06/10(日) 13:37:41.59 ID:
憂「お帰りなさいおねえちゃん。遅かった……
あっ。紬さんに──もしかして、ザーボン先生ですか?」

『憂』と言う少女に対して勝手に色々と想像を膨らませていた私は、玄関で出迎えてくれた彼女にやや面食らっていた。

お嬢様のような貴族のものとはやや種類が違うが、品のある穏やかで美しい少女。

ザーボン「うむ、始めまして……だったと思うが。
桜が丘女子高等学校の教諭、ザーボンだ。よろしく」

憂「うふふ、よろしくお願いします。平沢憂です。
姉がいつもお世話になっております」

と、彼女は美しい姿勢で頭を下げた。


237:2012/06/10(日) 13:41:01.74 ID:
ザーボン(……出来た妹だ)

話によると職員室に寄った時に何度か私の姿を目撃していたらしく、
また、普段中野嬢からも私の話をよくされていたと言う事だった。

それから唯嬢はアイスの件を謝ったのだが……

憂嬢はその事は『しょうがないなぁ』とあっさり許していた。

しかし。

憂「帰りが遅くなるなら、連絡しなきゃダ メッッッ! だよっ」

と、そちらで怒っ……て??? いた。


238:2012/06/10(日) 13:44:31.93 ID:
それに唯嬢は本気で怯え、泣きながらお嬢様に抱き付いていたが……

何がそんなに恐ろしかったのだろう? むしろほほえましいを絵に描いたようで和んでしまったのだが。

そう言えば、お嬢様はその様子をずっとニコニコしながら見ておられた。

ザーボン(ああ、お嬢様はこれが目的だったのか)

これほど仲の良い姉妹が争いになるはずもないし、『加勢する』というのは建前だったのだろうな。

いやはや、しかし私も良いものを見させて頂いたよ。

百合姉妹か。

ちなみにお使いを頼まれていた物は、かつお節でもなめたけでもなくてサラダ油だった。


239:2012/06/10(日) 13:47:57.04 ID:


……………………

…………

ザーボン(それから、
『わざわざ姉を送って頂いてありがとうございました。良かったらお夕飯を召し上がってはいかれませんか?』
と誘って貰ったのだったな)

私もお嬢様も悪いと思い最初は断ったのだが、唯嬢も一緒に『どうしても』と言う為、ありがたく頂く事にしたのだった。

ザーボン(料理の味は絶品だった)

以前琴吹邸で頂いた食事も特筆もののレベルだったが、あれ程の料理は食べた事が無い。

かつては最高だと信じていたフリーザ軍が誇る料理人など、もはや相手にもならん。


240:2012/06/10(日) 13:51:01.87 ID:
ザーボン(食事とは、ああも暖かい物だったのだよな)

……いかん。現実逃避をしてしまった。

ザーボン「……少し外の風に当たるか」

このまま部屋で考え込んでいても駄目だと判断し、私は軽く支度をして家から出て行った。


241:2012/06/10(日) 13:53:23.62 ID:


ザーボン「……ふむ」

私は気分転換の為、いつもとは違う町に来ていた。

ザーボン(何とか……嘘を吐かず、誰にも嫌な思いをさせずに無事すべてを解決させるよう話すには……)

いくら考えても思い付かない。やはりそこまで甘くはないのか……

……とりあえず、どこかで昼食でも取ろうか?

律「あれー、ザボちゃんじゃん!」

ザーボン「む?」

そんな中現れたのは田井中嬢だった。


242:2012/06/10(日) 13:56:18.88 ID:
律「どうしたんだ? こんな所で辛気臭い顔してさ。
ザボちゃん家ってこの近くなの?」

ザーボン「いや、そう言う訳ではないが。
ちょっと散歩だよ」

律「そっか」

ザーボン「田井中こそどうした? 一人で」

律「ああ、家こそ近所でさ。
今日家族で私だけ予定が無いから、コンビニで適当に食べる物でも買ってこようと思って」

ザーボン「なるほどな」


243:2012/06/10(日) 13:59:05.57 ID:
律「──そうだ。ザボちゃん暇……だよな。散歩してるならさ」

ザーボン「ああ、特に予定は無い」

決して暇と言う訳ではないが、それは確かだ。

律「じゃあさ、家来ない? ご馳走するぜ~」

ザーボン「む? 食事は買ってくるつもりだったのではないのか?」

律「一人分だとわざわざ作るのがメンドかっただけだよん。
行こうぜーっ!」

と、田井中嬢は私の手を取って歩き始めた。

ザーボン「ははは、強引だな」

律「イイじゃんイイじゃん~」

だが、一人で居るよりは良い気分転換になるかもしれないな。


244:2012/06/10(日) 14:03:08.66 ID:


ザーボン「──ごちそうさまでした」

律「おうっ。お粗末さんでした~」

田井中邸。早速私は、田井中嬢の手料理を振る舞われた。

ザーボン「とても見事な食事だったよ」

律「へへっ、そう言って貰えたら嬉しいぜ!
実は私、こう言うの割と得意で好きなんだよな。家事っつーの。
まあ、よく意外だって言われるんだけどな」

田井中嬢は少し照れ臭そうに笑う。


245:2012/06/10(日) 14:06:35.87 ID:
ザーボン「意外? なぜだ」

律「はははっ。
ほら、私って男っぽいからさ」

ザーボン「なんだ。そんな事は関係ないよ」

律「えっ?」

ザーボン「淑女と言う感じでないのは確かだが、それも君の個性だ。
人間は下品で無ければ良いではないか。
少なくとも、ボーイッシュな外見と言う個性・そう言う事を気にする乙女の心。
これらすべてがあって田井中律と言う女性だし、私はそんな君を美しく思うよ」


246:2012/06/10(日) 14:09:22.38 ID:
律「な、何ベタ褒めしてんだよ。
お世辞なんか嬉しくねーよ///」

ザーボン「? 紛れもない事実だと思う話をしただけだが」

律「そ、そそんなのおかしーし!///」

彼女は立ち上がると、食器をシンクへ運ぶ。

ザーボン「手伝おう」

律「良いって良いって。
二人分の食器運ぶ位、すぐ終わるからさ」

確かに、こうして話している間に終わってしまった。


247:2012/06/10(日) 14:11:35.57 ID:
律「さて、洗うのはつけ置きしてからとして……
どうだいザボちゃん、私とゲームでもするか?」

ザーボン「ゲーム?」

律「おうっ。
TVゲーム! やった事ある?」

ザーボン「いや、無いな」

そもそもTVゲームと言う物が何かもわからない。

律「そっか。じゃあちょっとやってみようぜ~」

ザーボン「わかった」

田井中嬢はテレビの前までやって来ると、何やら機械を出してセットをする。


248:2012/06/10(日) 14:17:01.04 ID:
律「ザボちゃんゲーム初心者だし、簡単なのが良いよな。
単純な操作で楽しめる、昔のゲームでもやってみっか」

と、何やら渡される。

聞けばコントローラーと言う物で、これで操作をして遊ぶらしい。

律「スイッチオンっと」

ロード時間と言うしばしの間にソフトの説明書を見ていると、テレビにゲーム画面(だろう)が現れた。

ええと、このゲームの名前は……


『ドラゴンボールZ Ultimate Battle 22』


ザーボン(どのような物かわからんが、まあやってみるか)


249:2012/06/10(日) 14:19:46.06 ID:


────────────────

最近、誰かからよく食事をご馳走になっているな。

前述の通りそのすべてが絶品だったのだが……

それは純粋な味だけではなく、『誰かと楽しく食べたから』と言うのも大きな理由の一つなのではないだろうか。

──地球に来る以前に、人とこうした食事をしたのはいつの事だったろうかな。


メガバスター!
ウォアァァ!


律「よっしゃ、勝ったぜー!
もっかいもっかい!」


250:2012/06/10(日) 14:24:41.57 ID:
……ふっ。思い返すまでもないな。

もうわかっているのだろう? ザーボン。

自分の弱さから逃げる為に無理矢理記憶を捨て、失って。私は本当に情けないな。

あの頃は、家族やジースに……

そして隣に住んでいた、大好きなあの人。

色々な人と暖かい食事をさせて貰った。


251:2012/06/10(日) 14:29:14.44 ID:


────────────────


コウカイシロ!
ギヤアァ!


律「げっ!?」

ザーボン「ふふ、コツは掴んだよ」

律「くっそ、もうかよー。ザボちゃん楽器だけでなくゲームの才能もあるでやんの!」

ザーボン「……なあ、田井中。一つ聞きたいのだが……」

律「んー?」


252:2012/06/10(日) 14:32:46.27 ID:
ザーボン「ある人にとても大切な事を話さなければならなくて。
だが、それをすべて……ありのままに話したら、その人に嫌な思いをさせてしまいそうで。
嘘は吐きたくない。
どうすれば良いと思う?」

律「? どうって……ザボちゃんはその人にその話をしたいの?」

ザーボン「……正直、したくはない」

律「 じゃあ無理に話さなくても良いんじゃね?」

ザーボン「いや……約束をしたのだ」

律「ふーん。
その話先に振ったのは?」

ザーボン「……相手、だな」

律「なら簡単だよ」

ザーボン「む?」


253:2012/06/10(日) 14:37:24.39 ID:
律「気にせず話しちゃえ」

ザーボン「そ、それは……」

律「だって、相手から話してくれって頼んできたんだろ?
だったら話せば良いじゃん。
──あ、話の内容って、その人への悪口とかそんなん?」

ザーボン「いや、違う」

律「だったらそれを話す事で多少嫌な気分にさせてしまったとしても、そりゃ相手の自己責任だよ」

ザーボン「…………」


254:2012/06/10(日) 14:40:18.44 ID:
律「あっ! ちょっと突き放したような言い方んなっちゃったな。
ごめん。
つまり、考えすぎだよ」

ザーボン「考えすぎ……?
そう、だろうか」

律「うん。
まあそりゃ、詳しい事情・内容はわかんないけどさ。
そう言う流れになったんなら、話してみりゃ良いじゃん。
もしかしたら相手の人、嫌な思いをするどころかその話で喜んでくれるかもしんないし」

ザーボン(そんな事はありえな……
……いや。こう言う決め付けこそ、考えすぎと言う事なのだろうか?)


255:2012/06/10(日) 14:42:52.63 ID:
律「逆に、そうやって一人であれこれ悩んでドツボにハマっちまってたら、より状況って悪くなったりする時もあるし……」

ザーボン「…………」

律「でも、ザボちゃんって優しいよな」

ザーボン「優しい? そんな事は無い」

律「あるよー。
人の事を思って、死にそうな顔してまで悩んでたんだろ? 超優しいって」

ザーボン「そ、そこまで酷い顔をしてしまっていたのか……」


256:2012/06/10(日) 14:45:07.32 ID:
律「ははは、まあな。
──ところでさ、ザボちゃんって日本に来て間もないんだよな。
その前に旅行か何かで日本に来た事って無いの?」

ザーボン「うむ、無いな」

律「そっか。
まあとにかく、その人との話上手くいくと良いな」

ザーボン「ああ……そうだな」

しばらく、私達は無言でゲームを楽しむ。

律「……これ、私の勘なんだけどさ」

ザーボン「うむ」


257:2012/06/10(日) 14:50:12.33 ID:
律「ザボちゃんが言うその人って、結構大人な気がするんだ。
根拠はないけどさ」

ザーボン(あの年齢の人間に、あまり大人扱いをするのも正しいとは思えないが……確かに)
「──そう、かもしれないな」

律「それなら、ある程度その人の……強さとか、器っつーの?
信じてやっても良いんじゃね?」

ザーボン「……!」

律「そりゃ何事も配慮は必要だし、明らかダメな事はやったり言ったらいけないけどさ、
気にしすぎてたら人と話なんて出来ないよ」


258:2012/06/10(日) 15:02:36.54 ID:
ザーボン「信じる……か」
(そうだな。
結局、私はお嬢様の事を信じていなかっただけかもしれん。
まだ自立こそしていないとは言え、それに向けて……もはや社会の組織に片足を踏み入れている者を。
これはもはや配慮を飛び越え、侮辱となっていたのではないか。

……いや。

もしかしたら私は、自分が話したくないだけの自身の弱い心から目を背け、結局は原因をお嬢様に求めようとしていたと言う事かもな……)


259:2012/06/10(日) 15:04:59.53 ID:
律「ははっ。
そうは言っても、私はノリで話しまくってよく澪にぶたれたりしてるんだけどな」

ザーボン(一昨日に覚悟を決めたつもりだったが……
とんでもなかったな)


ビシッ、ビビッ!


律「くー、危ねっ!
ザボちゃんホント上手くなったな!」

ザーボン「田井中、君も凄いな」


260:2012/06/10(日) 15:09:50.66 ID:
律「んー?
へへへっ、またお世辞かよ」

ザーボン「違うよ。そのような考え方が出来るとは、感服する」

律「やめてくれよ。
考えっつーか、『自分はそうやって生きてきたなー』ってのをただ言葉にしてみただけだし」

ザーボン「ならばそれを自然に行ってきたと言うのか。
なお素晴らしい」

律「もー! 照れ臭ーぇなっ!!
……大体偉そうな事言ったけど、私だってザボちゃんと似たような悩み位あるし」

ザーボン「そうなのか?」


261:2012/06/10(日) 15:12:36.04 ID:
律「うん……
実は私、好きな女の子が居てな。くそ生意気な奴なんだけどすげぇ可愛くて……
告白しようしようって思ってても、なかなか踏ん切りが付かないんだ」

ザーボン「……わかるよ。私にも、同じ事で悩んでいた時があった」

律「ザボちゃんが? 意外だな」

ザーボン「そうか?」

律「ああ。ザボちゃんみたいなイケメンなら大体の女の子はOKしそうだし、割とイケイケなのかと思ってたよ。
女の子の扱いも手慣れてる感じがするし」

ザーボン「ははは。まあ、その辺りは否定しないさ」


262:2012/06/10(日) 15:15:16.36 ID:
律「へへっ、やっぱりか。
──とにかく、さ。私だってそんななんだから、全然凄くはないよ」

ザーボン「別に、自分が出来ていないからと人に正論をアドバイスする事が駄目と言う訳ではあるまい。
ましてや、今回は人から相談されての対応なのだし」

律「……そうかな」

ザーボン「うむ。
……それに、な」

律「ん?」

ザーボン「少なくとも、私は君の言葉で大きく救われたよ」


263:2012/06/10(日) 15:17:33.18 ID:
律「……おう。こんな意見でも役に立てたんなら嬉しいよ」

ザーボン「ふふ、ありがとう」

律「へへ。
私だって、ザボちゃんの話で何か勇気が湧いたよ」

ザーボン「む?」

律「皆悩みがあるんだなって。
まして何でもこなせるザボちゃんが、恋愛でも私みたいにヘタレてた時があったんだってさ」

ザーボン「ははは、そうだな。
……お互いに頑張ろうな」

律「おう」


264:2012/06/10(日) 15:19:18.19 ID:


クラッシャーボール!
ギヤアァ!


律「んげ!
さりげに私六連敗!?」

ザーボン「フハハ! どうやら私はこのゲームを極めてしまったようだな」

律「なにおー!
仕方ねえ、私のとっておきのキャラで相手してやるぜ!」


ファイナル、フラァァッシュ!


ザーボン「──むっ!?
う、動きが違う……!」


265:2012/06/10(日) 15:21:22.64 ID:
律「へっへーん、こいつこそが真の持ちキャラって奴だぁっ!」

ザーボン「望む所!」


バシッ、ビュンッ、バシッ!


ザーボン「……田井中」

律「んー?」

正直言って彼女は勉強は出来ないし、抜けている所も多々ある。

──だが。

ザーボン「君は、やはり部長だな」


270:2012/06/17(日) 06:45:57.10 ID:


翌日、私は琴吹邸に来ていた。

時間は正午。指定された時間通りだ。

斎藤「──お嬢様、ザーボン様をお連れしました」

中を案内してくれた執事がとある一室の前で立ち止まり、ドアをノックをして言った。


紬『どうぞ』


斎藤「失礼致します」

返事を確認し、私達は中へ入る。


271:2012/06/17(日) 06:51:21.92 ID:
……一人暮らしを始める前、琴吹邸でお世話になっていた時に何度か入った事がある、お嬢様の部屋だ。

斎藤「では、私は失礼致します」

紬「ええ。ありがとう斎藤」

執事は会釈を一つし、部屋から出て行った。

……これで、部屋に居るのは私とお嬢様だけ。

もちろん、今回もどこかから琴吹家の者に見張られているのだろうが。

ザーボン「お嬢様、ごきげんよう」

紬「うふふ、ごきげんよう。
──どうぞ」

ザーボン「うむ」

挨拶をし、私は進められた椅子へと座る。


272:2012/06/17(日) 06:53:17.94 ID:
私と彼女は、さほど大きくはないテーブルを挟んで向かい合った。

そのテーブルの上には、恐らく入れたてであろう飲み物が入っているポットとカップがある。

紬「紅茶でよろしいでしょうか?
先程用意した物ですわ」

と、お嬢様はカップに紅茶を注いで私の前に置いてくれた。

ザーボン「ありがとう、お構いなく」


273:2012/06/17(日) 06:56:01.78 ID:
紬「さて……では早速、聞かせて頂けますね?」

ザーボン「……ああ。
だが、正直言って信じて貰えるかはわからない上、決して面白い話ではない。
……よろしいか」

一応確認をする。

そんな私に、お嬢様は無邪気に笑った。

紬「うふふ、今更ですよ。ザーボンさん」

ザーボン「……そうだな。
では、どこから話そうか……」

私も笑顔を返すと、ゆっくりと語り始めた。

迷いが無くなった訳ではない。

しかし……今度こそ覚悟は出来ていた。


274:2012/06/17(日) 06:59:15.48 ID:


────────────────

──私はかつて、とある星に生まれ、暮らしていた。

もう随分と昔の話だ。

大切な家族に友人、それに……

隣に住んでいた、憧れの──そして大好きだったお姉さん。

小さい頃から可愛がって貰っていて、その気持ちが恋に変わったのはいつだったか……


275:2012/06/17(日) 07:01:15.95 ID:
いや、失礼。そんな事はどうでも良いな。

……これでも私は幼い時から戦闘が得意で、武術の天才と呼ばれていた。

だが私自身は人と関わるのはあまり好きでなくてな。……ちょっと、特異体質で。

────────────────


紬「特異体質?」


276:2012/06/17(日) 07:05:37.87 ID:
ザーボン「うむ。
簡単に言うと、変身出来るのだが……」

紬「変身っ!?」

お嬢様が瞳を輝かせて、身を乗り出して来た。

紬「あ……ごっ、ごめんなさい。
変身って、別の姿に変わるって事ですか?」

ザーボン「う、うむ。
変身をすれば全体的に能力が上がるのだが、その姿があまりに醜くてな。
その能力に気付いて初めて人に見せたのは……地球で言う幼稚園の頃、クラスメート相手にだったかな?
ふふ。見事に皆から蔑まれ、引っ越しをしなければ外にも出られなくなる傷を心に負ってしまったよ」


277:2012/06/17(日) 07:07:54.22 ID:
紬「……地球以外でも、そう言うのってあるんですね」

ザーボン「ああ、当たり前のようにあるな。
物の本質で判断するのではなく……
自分の考え方と違うとか、周りから外れているかどうかで何かを排除しようとするのは、知的生命体のサガなのかもしれんな。
まあ、そのおかげで引っ越した先であのお姉さんに会えたのだから、悪い事ばかりでもなかったのだが」


────────────────

ともあれ、そんな私は勉強をする方が好きでな。

今話したような一時期を除き、私自身は楽しかったのだが、地味な少年時代だった。

そんな中……地球で言う中学生位の時に現れたのが、ジースと言う男だ。


278:2012/06/17(日) 07:09:13.10 ID:


ジース「へっ、お前がザーボンか!?
天才って言われてる!?」

ザーボン「……なんだお前は」

ジース「俺はジース!
お前の噂を聞いて、はるばる二十三個向こうの星から引っ越して来たんだ!」

ザーボン「はあ?」

ジース「オレはいずれ宇宙最強の男になるっ!
その為に、まずはお前から倒ぉぉす!」


279:2012/06/17(日) 07:11:36.03 ID:


ジースは家族ごと面白くてな。

あいつも自分の星では戦闘の天才児と呼ばれていたらしく、私の噂を聞いたら居ても立っても居られなくなったそうだ。

なんでも、あいつの家族揃ってジースに宇宙最強の男になって欲しかったらしく、その為の協力は惜しまなかったそうだ。


280:2012/06/17(日) 07:12:55.42 ID:


ザーボン「なんで私なのだ!」

ジース「俺はあのサウザーさんと同じ星の生まれなんだが、俺が修行してる間に遠くの星へ引っ越してしまってな。
だからとりあえず近場からナンバー1になっておこうと思って。
じゃあ行くぞっ!」

ザーボン「はあ!?」


281:2012/06/17(日) 07:14:32.66 ID:


ジースは強かったよ。

……ああ、話に出てきたサウザーと言うのは、私達の銀河で最強と名高かった戦士だ。

──ジースは、私が生まれて初めて変身をしないと勝てない相手だった。

普段の姿だと常に劣勢だったと言うのもあったし、男のプライドだろうかな。

そのまま負けるのが嫌で、ついしてしまった変身……

ただトラウマと言うだけではなく、年を重ねて客観的にその姿の醜さを自覚していた私は『やってしまった』と思った。

だが、


282:2012/06/17(日) 07:16:59.79 ID:


ジース「て、てめぇ、その姿は一体……」

ザーボン「…………」

ジース「くっそー!
そんなカッケェ奥の手隠してたなんて……
ズルぃぞ!」

ザーボン「……お前、私のこの姿を見て何とも思わないのか?」

ジース「あん? 何がだよ」

ザーボン「いや……こんな能力を持っている者などこの銀河で聞いた事もないし……
その、見た目も……」


283:2012/06/17(日) 07:18:45.45 ID:
ジース「何言ってんだ。それが良いんじゃねぇか」

ザーボン「なに……?」

ジース「他の奴にはねぇ力を持ってるなんて、正に天才って感じじゃんか。
しかも変身後の見た目もごっつくてカッコ良いときた!
羨ましくてムカつくぜーッ!」

ザーボン「そう、か?」

ジース「っ、イテテ……
おいザーボンっ! 今回はお前の勝ちにしといてやるが、次はこうはいかねぇぞ!」

ザーボン「…………次があるのか」

ジース「当たり前だっ!」


284:2012/06/17(日) 07:21:19.83 ID:


言葉通り、ジースは頻繁に私に挑戦してきたよ。

そして気が付いたら変な友情が芽生えていてな。

いつの間にか私とあいつは、武術のライバル兼・親友になって行った。


……………………

…………


285:2012/06/17(日) 07:24:26.68 ID:
「あら、ザーボン君。
今日はお外で読者?」

ザーボン「……!
う、うん……」

「うふふ、偉いわね~」ナデナデ

ザーボン「///」

「ね、隣座っても良い?」

ザーボン「ど、どうぞ」

「ありがとう。
──私はね、お散歩♪」

ザーボン「そっか」

「……うふふ。お日様がポカポカで気持ち良いね」ニコッ

ザーボン「……はい///」


────────────────


286:2012/06/17(日) 07:25:49.80 ID:
ザーボン「ふふふ。今にして思えば、本当に恵まれていた日々だった」

紬「…………」

ザーボン「だが、ある日。
奴がやって来た」

紬「奴?」

ザーボン「……フリーザだ」


────────────────


287:2012/06/17(日) 07:27:32.41 ID:
私は話した。あの終末の日の事を。

ジースと組んでのフリーザ軍との戦い。雑兵こそ蹴散らせたが、サウザーに敗北し、逃走した事。

救える者だけでも助ける為に一旦別れ、すぐに合流して星を脱出するつもりだった事。

……そして。


288:2012/06/17(日) 07:29:23.57 ID:


ザーボン「よし、家が見えてきたぞ!
まずは……」


ビュウンッ!


ザーボン「!」


ドゴッ!


ザーボン「ぐはっ……!」
(い、今のは……衝撃波か?)


289:2012/06/17(日) 07:31:22.28 ID:
フリーザ「ほっほっほ。見事な吹っ飛びようでしたね」

ザーボン「! ばっ、馬鹿な……」
(初めに舞空術で飛ばして距離を稼いだ後は、ずっと建物や木々で身を隠して移動してきたはず……
なぜだ!?)

フリーザ「見付かったのが信じられないと言う顔ですね。
これがわかりますか? これは『スカウター』と言って、対象の戦闘力と、場所がわかる道具です」

ザーボン「……!」

フリーザ「そう、これがある限りいくら身を隠しても無駄だと言う事ですよ。
まして貴方のような高い戦闘力を持っていると、特定はなお簡単」


290:2012/06/17(日) 07:33:38.92 ID:
ザーボン「ぐ……
おのれッッッ!」


ボンッ!


ザーボン「くらえっ!」


ドウッ! ドウゥッ!! ドオオオオオォォォォオオン!!!


フリーザ「ほっほっほ。
変身して……ふむ。
戦闘力一万九千程度のエネルギー波など、まあこんな物でしょうね」


291:2012/06/17(日) 07:35:24.99 ID:
ザーボン「くそッ!」


バキッ、ドガッ、ガガガガガッッッ!!!


フリーザ「……満足しましたか?」

ザーボン「まっ……全く効いていないのか……」


ガヅッ!!


ザーボン「ぐはっ!」


ドサッ。


フリーザ「どうですか? 私の配下になると言う話は」


292:2012/06/17(日) 07:37:43.74 ID:
ザーボン「あ……ぐっ、うぐ……」
(そんな、そんな馬鹿な! こいつ、強いなんて言う次元ではない……!)

フリーザ「おや、変身が解けてしまいました。
少し力を入れすぎましたかね。撫でただけのつもりだったのですが。
まあ返事は回復するまで待って差し上げますよ。私は寛大ですから。
……ふむ、貴方が行こうとしたのはあの家ですか。
どれ」


ゴウッ。


ザーボン「!!!」


ドゥゥゥゥゥゥゥゥン!


ザーボン(あ……あ……)


293:2012/06/17(日) 07:40:09.69 ID:
フリーザ「ほっほっほ! ご覧なさい、景色がスッキリしましたよ!
綺麗になったおかげで、より高く売れる星になりましたね!」

ザーボン(私の家に、隣……近隣のすべてが消えた……)


ドゴォンッ!


ザーボン・フリーザ『!?』

ザーボン(エネルギー波!?
だが小さい……!)

「ザーボン君っ、こっち!」バッ

ザーボン「あ……」ダッ!

フリーザ「また追いかけっこですか。
まあ、たまには良いでしょう」


294:2012/06/17(日) 07:41:43.61 ID:


──そうだ。その時私を助けてくれたのはあの人だ。

太い眉毛に美しい金髪を持つ、大好きな憧れのお隣さん。

彼女は私の手を取り、駆け出した。

……だが。


295:2012/06/17(日) 07:44:56.56 ID:
「!」

フリーザ「これはこれは、お久し振り……」

ザーボン「な……何と言うスピードだ……」

フリーザ「残念。追いかけっこにもなりませんでしたか」

ザーボン「あ、あぁ……」

「……( ボソリ)逃げなさい」

ザーボン「でも……で、でも……」

「ここは私が時間を稼ぐから。
ね?
ほら、走るのっ!」


296:2012/06/17(日) 07:47:13.40 ID:
ザーボン「!
待って! 行っちゃダメだっ!」

「大丈夫! 私もすぐ追いかけるわ!
また後でねっ!
ザーボン君!」

フリーザ「戦闘力は……
この星の方々の平均ですか。貴女はいりませんね。
……ただ」


ビュイッ!


「!」


フリーザの放った細いビームが、彼女の右脚を貫いていった。

奴は笑っていたよ。ニヤニヤと、陰険に醜く。


297:2012/06/17(日) 07:49:20.60 ID:
フリーザ「使い道はある。
ほっほっほ。見た所この方は貴方の大切な人なのでしょう?
私の配下になると誓えばやめて差し上げますよ!」


ビュイッ!


「!」


ドサッ。


フリーザ「これで両脚!」

ザーボン「き……貴様あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ダメっ!」

ザーボン「!?」


298:2012/06/17(日) 07:51:07.21 ID:
「私の事は良いから……ね? 逃げなさい……」

ザーボン「で、でもっ」

「は、早く……」ニコッ

ザーボン「あ、う……そんな……」

「私、は……平気だから」

フリーザ「──その。
笑 顔 を や め な さ い !」


ビュイッ、ビュイィッ!


ザーボン「!!」


299:2012/06/17(日) 07:53:41.91 ID:
フリーザ「ほっほっほ! 手も足も無くなった!
さあ、泣き叫んで懇願をなさい! あの方に、フリーザ様の部下になれと!
そうすれば貴女も楽になれるのですよ!」

ザーボン「こ、この野郎……」

「は、や、く、行、く……の、よ……
……………………
…………
……」

ザーボン「!!!」

フリーザ「チッ。加減を間違えましたかね。くたばりやがった。
あの気持ち悪い笑顔を苦痛と恐怖に歪めたかったのですがね!」

ザーボン「うぁ、あああ・あ・ああああ、あああ・・あああああっ!
貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


300:2012/06/17(日) 07:56:17.32 ID:
ジース「ザーボンッッ!」

ザーボン「!?
ジ、ジース……? なぜサウザーと一緒に?」

サウザー「ふ……」

ジース「まあ待て待て、フリーザ様の言う通りにしようぜ。
な?」

ザーボン「なっ。お前何を言……
……フリーザ様、だと!?」

ジース「いやあ。オレさ、フリーザ軍に入れて貰おうかと思ってな」

フリーザ「おや?
ほっほっほ。よくご決断下さいました。
サウザーさんも見事な勧誘、ありがとうございます」

サウザー「勿体無きお言葉です」


301:2012/06/17(日) 07:58:14.81 ID:
ザーボン「そ……そんな……
嘘だろ? ジース……」

ジース「はっはっは。
やっぱ、『味方になれば何でも手に入る』なんて言われたらなあ」

ザーボン「お……! お前っ! ふざけるなぁっ!
貴様ら全員まとめてッッッ!!」

ジース「ザーボンっ! 落ち着け!」

ザーボン「落ち着けだとっ!? あの人まで……あの人まで殺されたのにお前は……」


302:2012/06/17(日) 08:00:12.60 ID:
ジース「──よっしゃ、ちょっと肩貸してみろ」ガシッ

ザーボン「離せ!」

ジース「(ボソッ)今は奴らに従うんだ」

ザーボン「!?」

ジース「こんな状況で戦っても無駄死にするだけだぜ。
今はあいつに従うフリして、修行を重ねていつか奴らをぶっ倒すんだ」

ザーボン「そ……それは、しかし……」

ジース「ヤケんなってやられるのが目的かよ!? 違うだろ!
……な? ここは耐えるんだ。
それで必ず、二人で姉さんや皆の仇を取ろうぜ……!」


303:2012/06/17(日) 08:02:52.48 ID:
ザーボン「く、ぐ……
だが、だがっ……!」

ジース「ザーボン!」

ザーボン「…………………わかった……」

ジース「おう。頑張ろうな。
──いやあやりましたよフリーザ様、サウザーさん。
ザーボンの奴、フリーザ軍に入りたいって!」

フリーザ「おや、本当ですか!」

ジース「そうですとも!
な、ザーボンっ?」

ザーボン「……はい」


304:2012/06/17(日) 08:04:36.98 ID:
ジース「おいおい、もっと嬉しそうにしろよ。
すみません、こいつ無愛想で」

フリーザ「ほっほっほ、構いませんよ。
大切な方にご不幸があったばかりですから」

ザーボン(貴様ァァァァァァ! どの口が言いやがるッッッ!!!)

ジース「さすがフリーザ様! 宇宙の帝王の器ですねっ!」

フリーザ「宇宙の……帝王?
それは良い呼称ですね!
そう、私は宇宙の帝王ですからね!
ほっほっほ。ほーっほっほっほ!」


────────────────


305:2012/06/17(日) 08:05:36.64 ID:
ちと休憩しますです~


307:2012/06/17(日) 11:01:56.30 ID:
ザーボン「……こうして、私とジースはフリーザ軍に入った……」

紬「…………」

しばし訪れた沈黙。

と、お嬢様が口を開いた。

紬「少し休みましょうか。
ザーボンさん、気が付いたら結構長い間喋り続けていますし」

言われてみれば確かに喉が渇いたし、少々疲れた。それも良いかもしれない。


308:2012/06/17(日) 11:05:06.27 ID:
ザーボン「ああ……
──いや」

しかし、頷こうとしてやめた。

ザーボン「私は大丈夫だ」

紬「でも……」

ザーボン「……実を言えば、間を置いてしまうと話す気力が無くなりそうなのだ。
すまないが、このまま続けさせては貰えないか?」

手の震えが止まらなかった。

情けない話だが、よほど精神的に堪えているようだ。


309:2012/06/17(日) 11:06:58.96 ID:
紬「……わかりました」

とりあえず喉だけ潤そうとカップを取ろうとしたが、上手く掴めなかった。

ザーボン(……くそ)

仕方ない。

私は息を一つ大きく吐くと、続きを話し始めた。


────────────────


310:2012/06/17(日) 11:13:30.42 ID:
フリーザ達にはまるで歯が立たなかったとは言え、私達は軍の中ですでにトップレベルの実力だった。

まあかなり昔の話と言うのもあるが、当時で私達より強い者と言ったら、例の怪物二人を除いてギニューと言う男だけだった。

──そうそう。このギニューが居てくれたおかげで、長い間私とジースは殺しをしなくてすんだのだ。

基本的には、一般兵だけで十分制圧出来る程度の強さしか持たない者だけの星が大半だったし、
例外が居たらこのギニューが倒していた。

奴はフリーザからの信頼が厚い上、ギニュー自身がとにかくフリーザの為に働こうとする奴でな。

部下を与えられ、独立部隊の隊長として独自に惑星を攻めるのを任されていた程の男だ。

フリーザが私の星に攻め入った時も、他の惑星に行っていた為会わなかったのだが……


311:2012/06/17(日) 11:17:14.47 ID:
そのギニューに匹敵する実力を持つサウザーが入った事で、フリーザの元で戦いたがっていたギニューがフリーザの側近になり、
サウザーが別部隊の隊長として働く事になったのだ。

そして今話した通り、フリーザの為にととにかく働くギニュー。

一般兵では役者不足の相手が出たら、率先してすべて奴が受け持ってくれたと言う訳だ。

私もジースもフリーザ軍に入ったとは言え、殺しはしたくなかったからな。正直それはありがたかった。

……ともあれ、私とジースは幹部と言う立場もあったおかげか、与えられた仕事をやって結果を残しさえすれば比較的自由は多かった。

その自由時間を使って、復讐の為に修行を重ねていたのだが……

ある日、私達に転機が訪れた。


312:2012/06/17(日) 11:20:04.23 ID:


ザーボン「そうか。正式に決まったのか」

ジース「ああ。オレは明日からギニュー特選隊の一員だ。
これからはほとんど、軍の本隊から離れて働く事になる」

ザーボン「私もただの幹部ではなく、フリーザの側近……か」

ジース「お前の相方と言い特選隊のメンバーと言い、フリーザ軍も随分と強い奴らが集まってきやがったな」

ザーボン「だからこそこうして軍の大きな再編成があった訳だが……
サウザーがフリーザの兄の……クウラとか言ったか。
の方へ移動になったのはなぜだ?」


313:2012/06/17(日) 11:22:09.99 ID:
ジース「クウラもギニュー特選隊みたいな特殊部隊を欲しがっていて、
どちらがどちらの隊長になるか、ギニュー・サウザーで戦って決めたとかって噂は聞いた事あるが……
詳しくはオレもわかんね。
まあ、前と同じ軍から離れる事が多い職に戻ったとは言え、
ギニューはフリーザの元ですげぇ喜んでるけどな」

ザーボン「そうか……」

ジース「どうした? 暗い顔して」

ザーボン「いや……私とお前は離れ離れになるし、フリーザ軍にはどんどん強い者が入ってくるし……
私達の復讐は本当に果たせるのかと思ってな……」


314:2012/06/17(日) 11:23:47.48 ID:
ジース「なんだ、そんな事かよ。
大丈夫だって。
オレもお前も修行してだいぶ強くなったじゃねえか。
そりゃあ一人だと寂しいけどよ……それでも修行を頑張ってりゃ、いつか果たせるさ」

ザーボン「うむ……そう、だよな」

ジース「おう。
……まあ、こっちはもう自分の手を汚さないって訳にはいかないだろうがな……」

ザーボン「あ……」


315:2012/06/17(日) 11:26:13.20 ID:
ジース「仕方ねぇよな。特選隊は五人しか居ねえんだし、いっそ修行の一環だと思ってやるさ。
強くなるのに近道なのは実戦だからよ。
……罪もねぇ奴を手に掛けるのは、やっぱ嫌だけどな」

ザーボン「…………」

ジース「ははは、まあ大丈夫だって。
それより、お前こそ頑張れよ。
ザーボンは姉さんを好きなだけじゃなく、気高い……だっけ? 美しいとこに憧れてたんだろ?
だったらギリのギリ、本当にどうしようもなくなるまで自分の手を汚すなよ。
幸い、お前には……なんつったっけ? 新しく入ったお前の相方」


316:2012/06/17(日) 11:27:59.34 ID:
ザーボン「ドドリアか?」

ジース「そうそう。乱暴者のあいつが居るんだ。
そんな仕事はドドリアに任せて、お前は得意の頭脳で上手く切り抜けながら活躍しろよ」

ザーボン「ああ……そうだな。
お互い頑張ろうな」

ジース「おう! どれだけ離れてても、オレ達の気持ちはいつも一緒だぜ!」


────────────────


317:2012/06/17(日) 11:30:17.74 ID:
ザーボン「……こうして、ジースは旅立って行った」

紬「それは……寂しいですね」

お嬢様が、その個性的な眉を下げて言う。

ザーボン「そうだな。
恥ずかしながら、あいつが居なくなった後しばらくは不安で落ち着かなかったよ。
だが、それから幾年経っただろうか。
私達が再開する時が来た」

紬「まあ……! よかったです」

ザーボン「はは……そうだな。
嬉しかった。本当に」


────────────────


318:2012/06/17(日) 11:34:35.48 ID:
ジース「おうザーボン、久しぶりだな!」

ザーボン「ああ。会いたかったよ」

ジース「オレもだぜ。
つかお前さらに腕上げたな」

ザーボン「ジースこそ、戦闘力が前とはまるで違うじゃないか」

ジース「まあ、実戦・実戦・また実戦だったからな。
お前もだろ?」

ザーボン「いや、私はお前が言った通り戦闘はなるべく避けたよ。
強くなったのは修行の成果だ」


319:2012/06/17(日) 11:36:21.09 ID:
ジース「ん?
オレそんな事言ったっけかな」

ザーボン「覚えていないか?
まあ、もうかなり前の話だしな。
それよりジース……お前何か雰囲気が変わったか?」

ジース「そうか? 気のせいじゃね?
ところでよ、ザーボン。お前もギニュー特選隊に入らないか?」

ザーボン「フリーザの顔を滅多に見なくてすむのだからそれも良いが、難しいだろうな。
奴は側近を二人は置いておきたいみたいだし、私の代わりになれそうな者も居ないからな」


320:2012/06/17(日) 11:38:52.71 ID:
ジース「そっか。まあ仕方ねえか。
こっちは超楽しいんだがなぁ。
隊長は良い人だし、隊の仲間は面白いし、大抵の物は手に入るし。
ザコをいたぶって遊ぶのも面白いぜ!」

ザーボン「……何だと」

ジース「ギニュー特選隊って言ったら、宇宙中から強い奴を集めたエリート集団だ。
オレ達とまともに戦える奴なんか居やしないから、痺れるバトルは出来ないけどさ。これはこれで……」

ザーボン「ジース!」

ジース「わっ!
ビ、ビックリしたじゃねえか。急に大声出すなよっ」


322:2012/06/17(日) 11:41:39.43 ID:
ザーボン「お前何を言ってるんだ?
雑魚をいたぶるとか……
なんでそんな事を笑って話せるんだ!」

ジース「?? そりゃ楽しいからさ」

ザーボン「な……!?」

ジース「ん?
……ああそう言う事か!
お前、まさかまだ昔の事を引きずってんのか?
よしとけよ。素直に軍に馴染んじまった方が楽しいぜ!」

ザーボン「ジ、ジース……」

ジース「過去なんか捨ててさ!」


323:2012/06/17(日) 11:43:51.83 ID:
ザーボン「じゃあお前、復讐は?
あの人は……家族は……私達の星の無念はどうなる……?」

ジース「もう終わった事じゃん?
大体さ、弱かったら奪われたりすんのは仕方ねえよ。
なんつったっけ。弱肉何とか?」

ザーボン「貴様ァッ!」


バキィッ!!


ジース「ぐあっ!」

ザーボン「はぁ、はぁ……」

ジース「ってぇな! 何しやがるっ!」


324:2012/06/17(日) 11:46:45.81 ID:
ザーボン「私達は誓い合ったじゃないか!
必ず復讐を果たすと! 仇を取るとっ!」

ジース「だからいつまでそんな事言ってんだよ!
つまんねえ意地なんざ捨てて、お前もやってみろって。
奪われる側から奪う側に回るんだ。マジ楽しいぜ!
好き放題やって、何でも手に入って。
姉さんだって、オレ達が復讐とかくっらい事に囚われるより、今を楽しく生きてくれた方が嬉しいって!」


バキイッ!!!


ジース「ぐぇっ!
て、てめえ!」

ザーボン「もう良い! 貴様などと話す事は何も無いっ!」

ジース「お……
おいザーボン、どこ行くんだよ!?」


325:2012/06/17(日) 11:49:12.49 ID:


……………………

………………

…………

……それ以来、ジースとは会話をしていない。

その日から私は修行を辞めた。

それまでの私を何とか繋ぎ止めていたのは、復讐心だけではなくて、
たとえ離れていても志を同じにする親友が居てくれたからだった。

そのあいつが変わって……居なくなってしまって、私の心は折れてしまった。

そして次に攻めた星で……


326:2012/06/17(日) 11:51:38.90 ID:


ドドリア「へっ。残ったのはガキが数匹か」

子供1「あ、あ、あ……」

子供2「ひいぃい……」

ドドリア「ついでだ、こいつらもオレが殺っちまって良いですかい?」

フリーザ「お好きにどうぞ」

ドドリア「ふへへ……オレを出させるだけあって、この星最強の戦士さんとやらはなかなかだったが……
まあ、このドドリア様の敵じゃあなかったな」

子供2「ひ、あ……」


327:2012/06/17(日) 11:54:23.36 ID:
ザーボン「ドドリア、どけ」

ドドリア「んん?
珍しいじゃねえか、お前が戦闘に口出すなんてよ。
一体なんの風の吹き回──」


ドウッ!


子供1・2『ぎゃ……』

ドドリア「な……」

ザーボン「これからは私も戦いに参加させて貰う。
そろそろ見ているだけも飽きたのでね」

ドドリア「ちっ、オレの獲物だったんだぜ!」


328:2012/06/17(日) 11:56:36.76 ID:


私は初めて自分の手を汚した。

もうどうでも良くなったのだ。

どれだけ強くなってもフリーザには敵う気がしなかったし、軍の規模はどんどん大きくなって行く。

そしてジースは失ってしまった。


329:2012/06/17(日) 11:57:58.01 ID:


『ザーボン君』


ザーボン(うるさいな。しょうがないんだよ。
あんな化け物や組織相手に、私一人でどうしろと言うんだ。
私はもう過去を捨てるんだ)


『…………』


ザーボン(……ごめんなさい)


330:2012/06/17(日) 12:00:31.78 ID:
それから私は頑張ったよ。頑張って……

逃げた。

少しでも気を抜くと思い出してしまう人達や気持ちを、フリーザ軍の大幹部として働く事で振り払った。

結果を出し、部下を使い、無能な者を見下し、時にはフリーザの機嫌を取ったり、人を虐殺したり。

とにかく動いて動いて動いていたら、忘れてしまったよ。


331:2012/06/17(日) 12:03:28.95 ID:
いや、心の奥底に閉じ込めてしまったと言った方が正しいかな。

私が弱かったから。

私が弱かったから逃げた結果がそれだ。

そのくせ気高く美しかった彼女への憧れだけは心のどこかで覚えていたのか、やたらと『美しさ』にこだわるようになり……


────────────────

ザーボン「気が付いたら、表面上の美しさに執着するだけの小汚い愚か者になっていた。
あの日から、醜い変身後の容姿こそが私の真の姿となってしまったよ」

紬「…………」


332:2012/06/17(日) 12:06:05.46 ID:
ザーボン「余談だが、ギニュー特選隊は仕事の報告の為、ごくたまに惑星フリーザ……言わば本陣に戻って来るのだが……
ジースの奴、強くなっていたよ。
修行を辞め、基本的に雑兵が敵わない敵だけと戦う私と、
少数精鋭の部隊ゆえに実戦を繰り返すジースとの戦闘力の差は、確実に開いて行っていたのだ」

紬「……それで、その後はどうなってしまったのですか?」

ザーボン「ああ……」


333:2012/06/17(日) 12:08:45.75 ID:


それから先。

フリーザ軍と言う虐殺集団に染まった私は、嬉々として宇宙を荒らし回り続けた事。

ある日ナメックの名を持つ星を攻め、そこでベジータと言う男に殺された事。

殺されたはずなのに、気が付いたら地球の山の中に立っていた事。

自分でも現状がまったくわからず、この星の事を調べようと町を探索していた事。

その途中でお嬢様や唯嬢と出会った事。

そして今に至る事──

私は話し終えた。


334:2012/06/17(日) 12:11:00.96 ID:


ザーボン「これで……すべてだ」

紬「……ええと、何て言ったら良いのか……
話の内容があまりに細かく、嘘とは思えません。
でも、正直突き抜けた話すぎて、信じても良い物かどうか……」

ザーボン「…………」

紬「ただ、ザーボンさんほど頭が良かったら、嘘を吐くにしてももっと上手い……」

ザーボン「──お嬢様。それなら地球人にはとても真似出来ない……例えば巨石でも素手で壊して見せようか。
……いや、そうだな。まずは……」


335:2012/06/17(日) 12:12:57.03 ID:
はっきり言って嫌だ。だが、ここでも逃げるのはもっと嫌だった。

……それに。

紬「ザーボンさん?」

ザーボン「私の『真の姿』をお見せする。
醜い私の、醜い姿を」

私は立ち上がり上の服を脱ぐと、力を入れた。


ボンッ!


紬「え……ええっ!?」


336:2012/06/17(日) 12:15:23.49 ID:


ガシャン!


お嬢様が変身した私の姿を見て驚愕の表情を浮かべ、手に持っていたカップを落とした。


これが、これが私の本当の姿です。

自分の弱さに負け、逃げ続けた私の醜さの象徴。

……ごめんなさい。せっかく私を生かしてくれたのに、私は貴女が喜んでくれるような事は何も出来ませんでしたね。


337:2012/06/17(日) 12:16:43.42 ID:


唯「なにもんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


バタンッ!


ザーボン・紬『!?』

突如扉を勢いよく開いて中に駆け込んできたのは、唯嬢だった。

紬「ゆ、唯ちゃん? どうしてここに……」


338:2012/06/17(日) 12:19:43.81 ID:
唯「あれっ?
いや、急にムギちゃんと遊びたくなって、でもメールは返信無くて電話も繋がらなかったからダメ元で来てみたんだけど……」

紬「あっ……ごめんね、電源切ってたわ」

唯「ううん、平気だよ。
で、斎藤さんに通して貰って……
なんか中から物が壊れる音がして、ムギちゃんの悲鳴も聞こえたから悪い人でも襲って来たのかなって……
……あややっ!?」

と、唯嬢が私の方に視線をやる。

私は固まって動けないでいた。


339:2012/06/17(日) 12:21:45.26 ID:
ザーボン(な、なぜ彼女が……
!!!
み、見られた!?)

お嬢様や、監視をしているだろう琴吹の者達には仕方ないと覚悟をしていた。

逃げるのが嫌だと言うだけではなく、
ここまで本当に良くしてくれた彼女達に信じて貰えるよう精一杯の事をするのは、不可欠の誠意だと思っていたからだ。

だが……これは想定外だ。覚悟どころか予想もしていなかった。

ザーボン(ど、どうする。嫌だ、こんな姿を晒したくない!
……そ、そうか変身を解けば……)


340:2012/06/17(日) 12:25:13.63 ID:
唯「かわいい!」

ザーボン「えっ?」

そう言うと、唯嬢は満面の笑みでこちらに近づいてきた。

唯「あれ? その髪の毛……
ザボちゃんだっ!」

ザーボン「う、うむ……そうだが……」

唯「おぉ~!
とゆう事は、これがあの『変身』と言うヤツですな!」

ザーボン「ああ……
……!? なぜ君がその事を!?」


341:2012/06/17(日) 12:28:29.17 ID:
唯「えへへ……
ホントはもうちょっと早くここに着いてたんだけど、なんか入り難い空気だったから……」

立ち聞き……していたのか。

唯「あ、あの……ごめんね?」

ザーボン「いや……
ふふ、構わんよ」

何なのだろうな。やはり我々三人には不思議な縁があるみたいだ。

唯「でもでも、すっごいね!
あのイケメンさんがこんなにかわいくなるなんてっ!」

彼女は何を言っているのだろうか。


343:2012/06/17(日) 12:30:17.32 ID:
ザーボン「……正直に言ってくれて構わんよ。
醜いだろう?」

唯「??? なにが?
鼻にピーナッツ入れたくなるかわいさだよ~♪」

は、鼻にピーナッツ?

しかし確かに、唯嬢はこんなお世辞を言ったりするタイプではない。

紬「……なるほど」

お嬢様が携帯を片手に呟いた。

どうやら誰かと連絡を取っていたらしい。


344:2012/06/17(日) 12:33:26.44 ID:
ザーボン「お嬢様?」

紬「あ、すみません。ちょっと斎藤とお話を」

携帯をしまっていつもの穏やかな笑顔を浮かべると、彼女もこちらへと歩み寄ってきた。

紬「先程は失礼しました。
あまりに違う姿に変わったものですから、つい驚いてしまいました」

唯「ね、ね、凄いよねっ!
これ手品じゃないんだよねっ!?」

ザーボン「ああ、違う」


345:2012/06/17(日) 12:35:46.62 ID:
紬「そうね。
道具も使わずにここまで体型も何もかもを変えるなんて、手品では不可能だと思うわ。
……うふふ、唯ちゃんの言う通りかわいいじゃないですか♪」

ザーボン「な……お嬢様まで……!
本気なのか!?」

正直冷たい視線を向けられたり、罵倒されると思っていた。

なのに……


346:2012/06/17(日) 12:38:48.50 ID:
紬「もちろんですよ~♪
うふふ、トンちゃんとどっちがかわいいかな?」

唯「うーむ、こいつぁ難しい問題だぜっ!」

どうしてこうやっていつも通りに接してくれるのだろう?

見た目だけではない。私は悪魔の所業を繰り返して来た人間だぞ?

唯嬢だって、話を聞いていたならわかっているはずではないか。


347:2012/06/17(日) 12:41:08.99 ID:
唯「ふふふっ、でもザボちゃん凄いね!
軽音部のイケメン枠だけじゃなくて、マスコットの地位まで狙うとはっ!
こりゃ、あずにゃんやトンちゃんもうかうかしてらんないぞぉ!」

紬「うふふ、ザーボンさんはまだ軽音部の顧問じゃないし、狙ってる訳でもないと思うわ」

唯「そっかぁ」

ザーボン「あ、あの……私は……」

紬「……そう言えば、前は一緒に空を飛んで下さいましたっけ。
ここまで地球人では考えられない事を見せられたら、信じない訳にはいきませんね」

ザーボン「!
で、では……」


348:2012/06/17(日) 12:43:10.03 ID:
紬「──ただ、一つ。
貴方はその……フリーザ軍に戻りたいですか?」

ザーボン「嫌だ。もう二度とあんな所には戻りたくない。
もう誰も……殺したりしたくない……!」

紬「それだけ聞かせて頂ければ十分です」

……!

ザーボン「そ、そうだ。私は人殺しなのだぞ!?
地球では罪も償っていない者がこうしている事は許されないのではないか!?
そんな者を使えば、琴吹家……いや、貴女の名前に傷が付いてしまうのでは……」


349:2012/06/17(日) 12:46:00.41 ID:
紬「それを言ったら、訴える者も居ない・証拠も無い・ましてこの地球外での罪なんて、
世界中どこに行っても裁ける場所はありません」

ザーボン「そ……それは、そうだが……」

良いのだろうか? 本当に。

今の環境は最高で、絶対に失くしたくはないと思っていた。

だがすべてを告白した後、ここまであっさりと受け入れられるとは思っていなかった為、戸惑ってしまう。

紬「うふふ♪
それに、ザーボンさんの評価に評判、凄く良いんですよ?」

ザーボン「えっ?」


350:2012/06/17(日) 12:48:43.87 ID:
紬「能力はずば抜けていて、頑張ってもいる。生徒に対しても誠意があって丁寧。
生徒からもザーボン先生の授業はわかりやすいって人気です」

ザーボン「そ、そうなのか……」

そう言えば、桜が丘に来てからは人の評価など気にした事がなかったな。

業務を覚えたり、悪夢に悩まされたりで気にする余裕が無かったのだ。

紬「家としては、このような方を裁けない罪があるからと言って簡単には切れません。
そんな事をしたら、家にとってはもちろん、桜が丘の先生や生徒にとっても大きな損失ですもの。
それに……唯ちゃん」

唯「なあに?」


351:2012/06/17(日) 12:50:51.28 ID:
紬「もしザーボンさんが学校やめて、どこか行っちゃったらどう?」

その言葉に唯嬢は頬を膨らませ、

唯「えーっ、嫌だよぅ! 寂しいもんっ!」

紬「うふふ、そうよね。
私もだわ」

ザーボン「…………」


352:2012/06/17(日) 12:53:16.63 ID:
唯「えっと、全部聞いてた訳じゃないからよくはわからないんだけど……
ザボちゃん昔悪い事して、それで悩んでるんだよね?」

ザーボン「……そうだ」

唯「でも、私とムギちゃんはザボちゃんに助けて貰ったし……
そうだっ!
これからはさらにもっともっと頑張って、逆に人をいっぱいいーっぱい幸せにしてみたらどうでしょうかっ!」

ザーボン「!」

その発想は……無かった。


353:2012/06/17(日) 12:55:23.34 ID:
紬「まあっ、それは良い考えね!
唯ちゃん凄いわっ♪」ナデナデ

唯「えへへ~///」

ザーボン「それで……良いのか?
それで……私は……」

紬「良いのですよ。
少なくとも、私と唯ちゃん……
それに、家や学校の皆だってザーボンさんを必要としているんですもの。
それで十分じゃないですか」

唯「そそそ。そうだよ~」


354:2012/06/17(日) 13:00:40.98 ID:
私を必要としている……

これは、まがりなりにも大幹部を務めていた、フリーザ軍でもそう思われていたと言っても決して思い上がりではないだろう。

だが……

あそこで必要とされるのと、ここで……お嬢様や唯嬢からそう言われるのとでは充実感がまったく違った。

唯「それにね」

唯嬢が私の手を取った。


355:2012/06/17(日) 13:03:08.02 ID:
唯「──へへへ、あったかぃ♪
こんなあったかいお手々の人が、悪い人な訳ないもん♪」


にこっ。


ザーボン「!」

私は……

紬「……まあ、本当ね。あったかいわぁ♪」

お嬢様も私の手を取り、ほほ笑む。


356:2012/06/17(日) 13:05:49.50 ID:
私は、完全に射抜かれた。

彼女達の心に。

二人は共に穏やかで無邪気で、どこか似ている。

しかし種類としては別の物で、決して同じではない。

その、別物の……しかしそっくりである優しくも穏やかな美しい心が、私を包み込んでいった。

……それはとても嬉しくて。


357:2012/06/17(日) 13:07:44.16 ID:
紬・唯『ぷにぷに~♪』

ザーボン「……ふふ、もっと早く君達みたいな人と出会えていたら……」

違う。

それは贅沢すぎるな。

ザーボン「……いや、君達と出会えて本当に良かったよ。
本当……に……」

紬「?」

唯「ザボちゃん?」

ザーボン「ありが……とう」

──溢れる涙は、しばらく止まりそうになかった。


358:2012/06/17(日) 13:11:17.44 ID:
今日はこの位で。

うーん、今回はほぼザーボンさん……と言うかドラゴンボールサイドでしたね(笑)
次はけいおん! メンバーが沢山出て来てそう偏らないと思うので、期待して頂けたら幸せです~。

ではでは、今回もありがとうございました。


362:2012/06/24(日) 10:19:25.73 ID:


……………………………………………………

ザーボン「……見苦しい姿を見せてしまい、すまなかった」

紬「まあまあまあまあ、そんな事気にしないで良いのですよ」

唯「そうだよ~」

あれから大分経ち、ようやく涙が止まった。

ちなみにもう変身は解き、服は着直して整えている。


363:2012/06/24(日) 10:21:33.82 ID:
紬「はい、どうぞ♪」

お嬢様が紅茶を入れ直してくれた。

唯「わーい、ありがとうっ!」

ザーボン「ありがとう」

しかし、涙を流したのなどいつ以来だろうか。それも人前で……

さらに変身後の姿のままでとなると、人生で初めてだ。

……むう、さすがに気恥ずかしい。


364:2012/06/24(日) 10:23:37.71 ID:
唯「うふふ、お菓子もおいしいぃ☆」

紬「いっぱい食べてね~♪」

唯「うんっ!」

ザーボン「……しかし、縁と言うのは本当に不思議な物だな」

唯「もふ?」

紬「?」

ザーボン「私は過去の事は完全に忘れていたのだ。
頭から消え……いや、自分で消し去っていたのだから」

だが、地球に来て……ではないな。


365:2012/06/24(日) 10:25:19.93 ID:
ザーボン「……お嬢様。貴女に出会うまで」

紬「私ですか?」

ザーボン「ああ。
『あの人』は……君とそっくりだったのだ。
顔も声も、何もかも」

紬「まあ……!」

唯「もふーっ!?」


366:2012/06/24(日) 10:27:32.82 ID:
ザーボン「だから、なのだろうな。
あの時お嬢様の顔を一目見た瞬間に……すべての記憶が蘇ったのだよ」

紬「それは……確かに不思議な話ですね」

ザーボン「うむ。偶然にしても出来過ぎな話だ。
まるで誰かに仕組まれたと勘繰ってしまう程だよ」

ははは、と私は笑う。

ザーボン「まして、私は確かに殺されたはずなのだ」

紬「そう言えば……仰ってましたね」


367:2012/06/24(日) 10:32:16.77 ID:
ザーボン「うむ。
その事を考えたら、今のこの時間は夢なのではないかと思ってしまう時がある」

紬「うふふ、気のせいですよ。
その……殺されたって言うのもきっと何かの間違いだと思います」

ザーボン「そう……なのかもしれないな」

この星に来てからがあまりに充実しすぎていて、その辺りの記憶に関しては曖昧になってきている。

……いや、そんな事はどうでも良いか。

私は今、彼女達と同じ時をこの地球で過ごしている。

もはやこの現実だけで十分だ。


368:2012/06/24(日) 10:36:35.75 ID:
そう言えば、なぜ、どうやって私がこの星に来たのかは結局わからずじまいだったが……

謎は謎のまま。それも良いだろう。

今の私には、そんな事よりも現在と未来の方が大切なのだから。

唯「つかザボちゃん先生っ!」

ザーボン「む?」


369:2012/06/24(日) 10:39:28.36 ID:
唯「その、ムギちゃんに似てる人ってザボちゃんが好きな人ですよねっ!」

ザーボン「ああ、そうだ。
そしてその気持ちは今も変わってはいない」

私が一人の女性として愛し、人間としても憧れ続けたあの人。

これからは何があっても貴女を忘れない。逃げない。

唯「て事はっ、ザボちゃんはムギちゃんにホレる可能性もあると言う事ですかっ」

紬「あらあら」

む?


371:2012/06/24(日) 10:46:21.06 ID:
ザーボン「それは……考えてもみなかったな。
そうだな……ふむ」

確かに、血縁関係など無論あるはずも無いが、お嬢様はあの人の生き写しと言っても良いレベル。

周りを癒す穏やかな雰囲気、気品。その魂の美しさもすべてがそっくりだ。

だが、そう。あくまで『そっくり』なのだ。


372:2012/06/24(日) 10:48:53.51 ID:
ザーボン「いや、それは無いよ。
最初会った時にも言っただろうか? 横恋慕になど興味は無いし……
何より、私が想うのはあの人であって、あの人によく似た誰かではないのだ。
だから心配しないでくれ」

胸を張って言える。私は永遠に『貴女』を想い続ける。

唯「そっかぁ。
……はっ。でもと言う事はムギちゃんにホレないと!?
こんなにかわいくて最高なムギちゃんを好きにならないとはなんて無礼なんざんしょっ!」クンクン

言って唯嬢がお嬢様のうなじに顔を埋めた。

紬「も、もう唯ちゃんたら///」


373:2012/06/24(日) 10:50:58.31 ID:
ザーボン「え、ええと。では私はどうすれば……???」

唯「ほぇ?
……どうしよう?」

ザーボン「ふっ……ふふふ、なんだそれは。
ふふふ、はははっ」

唯「えへへっ☆」

紬「うふふ♪」

幸せな香り漂う部屋で、私達は笑い合った。


374:2012/06/24(日) 10:53:49.08 ID:


──後でお嬢様から聞いた話なのだが、唯嬢を中へ通し、案内した斎藤殿の考えは……

『ザーボン様みたいな方を救うには、お嬢様だけでなく平沢様のような方も必要だと思い……
また、平沢様がいらっしゃった時は指示を仰げる雰囲気ではなかったので独断で行いました。申し訳ありません』

との事だった。


375:2012/06/24(日) 10:56:19.49 ID:
『確かに唯ちゃんみたいな説得の仕方は私には出来ないから、素晴らしい判断だったわね』と、
お嬢様はこの話をしてくれた後に笑っていた。

お嬢様も唯嬢も、斎藤殿も。

田井中嬢や秋山嬢、中野嬢。Ms.山中に憂嬢だってそうだ。

どうして皆こう……良い人なのだろうな。


376:2012/06/24(日) 10:58:17.16 ID:
私もこうありたい。

誰かの為に動ける、思いやれる。

幸い私には力がある。少なくとも、今の環境で通用する力は。

これだけ支えられ、助けて貰ったのだ。

今度は、自分の力を人の為に。

そしていつか、皆や『貴女』のように本当の意味で美しくなりたい。


377:2012/06/24(日) 10:59:44.42 ID:


……………………

…………

それからはあっという間に時が過ぎた。

忙しくも楽しい毎日。


378:2012/06/24(日) 11:01:12.34 ID:


……………………

…………


スタッ。


唯「ふおぉ! 楽しかったっ!」

紬「ねっ!
空を飛ぶって何度やっても楽しいわぁ~♪」

ザーボン「喜んで貰えたようで何よりだ」


379:2012/06/24(日) 11:06:06.51 ID:
唯「んふふ。あの時ムギちゃん、ザボちゃんと空飛んだみたいな話してたじゃん?
あれからずっと私も飛んでみたかったんだぁ!」

紬「うふふ♪
もうもう、とっても興奮が収まらないわっ!」

唯「ねーっ!」

ザーボン「空を飛べた事にかな?」

唯「違うよぅ!」

ザーボン「?」


380:2012/06/24(日) 11:07:31.70 ID:
紬「だって、空も飛べて変身も出来て、すっごい異星人の方が側に居るんだものっ!
お仕事の時は我慢もしますけど、毎日ずっとわくわくしてるの~♪」

唯「まったくでっす!
特にムギちゃんこう言うの大好きだもんねっ」

紬「むしろ大々好き!
それで唯ちゃんの事はだいだいだいすきっ♪」ダキッ

唯「あらあらまあまあこの娘ったら///」

ザーボン「もっとやりたまえ」


381:2012/06/24(日) 11:12:34.81 ID:


……………………

…………

ザーボン「ふむ。ようやく届いたか、『け○おん!』実写版のDVD!
いやはや、このような物が出ていたのに気付かなかったとは不覚。
では早速……
ん? よく見たらこの作品は……AV???
その上タイトルも微妙に違う!?
こ、これは非公式のパロディ物ではないか!
これはいかんだからこそファンとしては確認してみなければならぬ!!!」


382:2012/06/24(日) 11:16:02.88 ID:


ウィーン。


ザーボン「まったく、このようないかがわしい…… (ドキドキ)
ムギちゃんムギちゃん……(ワクワク)
よし、本編始まっ──」

…………………………………………

ザーボン「」デデーン!


383:2012/06/24(日) 11:18:46.48 ID:


……………………

…………

ザーボン「そうか、上手くいったのか」

律「うん。
ザボちゃん、ありがとな」

ザーボン「何を言っている。私は何もしていないよ」

律「そんな事ないさ。
前ザボちゃんが話聞いてくれたから告白する勇気を持てて……上手くいったんだよ」


384:2012/06/24(日) 11:21:17.60 ID:
ザーボン「……そうなのか?」

律「おうっ!」

ザーボン「そうか……役に立てたのなら私も嬉しいよ。
だが最終的に頑張ったのは君だ。尊敬する」

律「はははっ。もう、相変わらず上手いんだから!」

ザーボン「お世辞ではないよ。
自分の想いを相手に伝える事がどれだけ難しいか、私も知っているからな。
ともあれ、おめでとう」

律「おうっ///」


385:2012/06/24(日) 11:24:06.53 ID:


……………………

…………

ザーボン「スマイル、スマイル、スマイル」


テレビ『スマイル、スマァ~イル』


ザーボン・テレビ『プリキュゥアッ♪』ジャッ、ジャッ、ジャァァン!


386:2012/06/24(日) 11:27:47.17 ID:
ザーボン「ようし、今週も始まったぞ!
ふっ。
今回こそ、やよいタソとれいかさんがくっつく回かな?」ワクワク


ジャアァン!


ザーボン「むっ、出おったな! 誰が地球をバッドエンドなどにさせるものか!
行くのだプリキュア、美しくも華麗なる力ですべてを守るのだっ!」


387:2012/06/24(日) 11:30:03.21 ID:


……………………

…………

澪「あっ、ザーボン先生」

憂「こんにちは」

ザーボン「うむ、こんにちは。
どうしたのだ屋上で。
二人だけか?」

澪「はい。今日はカップルでお昼を食べようか、と言う話になりまして」


388:2012/06/24(日) 11:32:24.92 ID:
ザーボン「そうなのか。
では邪魔をしては悪いな。失礼するよ」

憂「あ、よかったら一緒にお昼しませんか?」

ザーボン「む?」

澪「そうだな。ザーボン先生とお昼食べるなんて滅多に……
いや、初めてか?……だし。
ご一緒しませんか?」

ザーボン「良いのかな?」

澪・憂『はい』


389:2012/06/24(日) 11:34:17.68 ID:
ザーボン「では、そうさせて貰うか」

憂「……あっ。先生のお弁当、手作りですか?」

ザーボン「うむ、そうだ」

澪「へぇ~、凄いですね!」

憂「プロの方のお料理みたいです!」

ザーボン「いや、昨夜の残りを詰めただけだよ」

憂「それでも凄いですよ」

澪「うん」


391:2012/06/24(日) 11:36:59.37 ID:
ザーボン「ははは、ありがとう。
しかし、君達が食べているのも手作りだと見受けられるが?」

憂「そうですよ」

澪「はい」

ザーボン「おお、やはりか。
憂は知っていたが、澪も料理が好きだったのだな」

澪「いえ……実は今、憂に教えて貰っていて勉強中なんです。
早く憂みたいに上手くなりたいな」


392:2012/06/24(日) 11:40:02.21 ID:
憂「澪さん、凄く上手になってきたよ。
私なんてすぐに追い抜いちゃうと思うな」

澪「そんな事ないよ。憂のご飯美味しいもん」

ザーボン「確かに、憂の手料理は絶品も絶品だったな」

澪「あ、ザーボン先生、唯やムギと一緒に憂の晩御飯食べたんですよね」

ザーボン「うむ。
その節はどうも」

憂「こちらこそ。
楽しかったですね」


393:2012/06/24(日) 11:43:29.09 ID:
澪「羨ましい……」

ザーボン「ははは。今度は皆も誘って会食でもしようか?
まあ次も憂にご馳走になるのは悪いから、今度は私が……
いや、君の料理と比べられてはさすがに分が悪いな」

憂「そんな事ないですよ。
私はまだまだです。
──ところで澪さん、さっき嫉妬しました?」

澪「そ、そんな事ないぞ。
ちょっと良いなって思っただけだ」


394:2012/06/24(日) 11:45:40.96 ID:
憂「えへへ、それを嫉妬って言うんですよ?」

澪「う、うるさいな。私がそんな子供じみた事をする訳ないだろっ」

憂「そうですか♪」パクッ

澪「あっ! 卵焼き……楽しみにしてたのにっ」

憂「代わりに私の卵焼きあげますよ」

澪「えっ本当!? ありがとうっ!」

憂「はい、お口開けて下さい」

澪「えっ!?」


395:2012/06/24(日) 11:47:47.22 ID:
憂「あ~ん」

澪「ザ、ザーボン先生の前でそんな……
恥ずかしいよう///」

憂「いらないんですか。
じゃあ私が食べちゃいますね」

澪「あっ、待って!
……う~っ。
わ、わかったよう///」

憂「あ~ん♪」

澪「あ、あ~ん」パクッ


396:2012/06/24(日) 11:51:43.32 ID:
憂「えへへ♪」

澪「あうう……///」モクモク

憂「どうかな?」

澪「美味しい……
憂も、憂のお料理もだいすき///」

憂「えへへ♪///」

澪「──ってザーボン先生、ニコニコしてどうしたんですか?」

ザーボン「ん? あ、いや。
これこそ至福の時と言うのだろうなと実感していたのだ」

澪「?」


397:2012/06/24(日) 11:56:50.64 ID:
憂「あ、よかったら皆でお弁当を食べ合いっこしませんか?
人のお料理を食べるのも色々と参考になりますし」ドウゾ

ザーボン「おお、それは良いな」ドウゾ

澪「面白そうだな!
……けど、何か私だけダントツに劣ってそうだ……」ドウゾ

憂「そんな事ないよ。さっきの卵焼きだって美味しかったし」モグ

ザーボン「……うむ。澪の料理の腕も十分大したものではないか」モグ

澪「いやぁ……///
ザーボン先生こそもの凄いじゃないですか」モグ

憂「このタコさんウインナー、どう味付けしたんですか?」

ザーボン「ああ、それはな……」


398:2012/06/24(日) 12:00:17.09 ID:


……………………

…………

ザーボン「ふむ、噂に違わぬ絶品のラーメンだった。
また寄らせて貰うよ」

店主「ありがとうございます! 是非またよろしくお願いします!」

ザーボン「うむ」ガラッ

店主「ありがとうございましたー!」

ザーボン「……よし、これ程の名店はすぐさまツイートするべきだ……
──!!!??」ザーボンノ、ユリサーチ!


399:2012/06/24(日) 12:02:40.04 ID:


せつな「ラブぅ、何見てるの?」

ラブ「だっはー! エロ本立ち読みしてるの見付かったぁ!」

せつな「……そっか。ラブはこう言うのが好きなのね。
わかったわ、今晩試してみましょ」

ラブ「えっ!? ホント!?
ホントにっ!!?」

せつな「精一杯頑張るわ」

ラブ「っしゃあ! 幸せゲットだよっ!」


ザーボン「な、なんと……
──むう!!!??」


400:2012/06/24(日) 12:06:53.57 ID:


まどか「マミさんのおっぱい♪」マミマミ

ほむら「マミっぱい」マミマミ

マミ「ちょ……二人共こんな所でっ、ダメよぅ……!」

まどか「すきぃ♪」ウェヒヒヒww

ほむら「すきよ」パクウッ

マミ「あぁんっ!///」ビクッ、ビクゥ!


ザーボン「絶対の正義にして真実はここにあった!」スマホ!


ザボちゃん @Beautiful_YuriYuri

絶対・運命・百合示録!


401:2012/06/24(日) 12:10:27.06 ID:


ブウーーーーーン!


梓「すみません。わざわざ送って頂いて」

ザーボン「なに、通り道だったのでな」

梓「でも楽しみですね。
最初に軽音部の皆で遊んで、唯先輩と憂のお家で夕ご飯食べるなんて」ニコニコ


402:2012/06/24(日) 12:12:26.56 ID:
↑あれっ? 失敗。
↓でやり直しですよ。


403:2012/06/24(日) 12:14:23.26 ID:


……………………

…………


ブウーーーーーン!


梓「すみません。わざわざ送って頂いて」

ザーボン「なに、通り道だったのでな」

梓「でも楽しみですね。
最初に軽音部の皆で遊んで、唯先輩と憂のお家で夕ご飯食べるなんて」ニコニコ


404:2012/06/24(日) 12:17:06.76 ID:
ザーボン「そうだな。
しかし、顧問でもない私がこのような集まりに参加して良いのかな?」

梓「もちろんです。こんなにお世話になっているんですから。
ザーボン先生はもう、準軽音部ですよ」

ザーボン「ははは、何か照れるな。
あ……と。梓、よく掴まっていてくれたまえ。
私もバイクの免許を取ったばかりで、あまり運転に自信がないのでな」

梓「はいです」


405:2012/06/24(日) 12:19:30.73 ID:


ブウーーーーーン!


ザーボン「おっと。赤だな」キッ

??「おっ! ここで会ったが幾ばくかじゃぁ!」

ザーボン「む?」

梓「?」


406:2012/06/24(日) 12:21:20.63 ID:
男1「ふへへ。今ちょうど仲間も揃いに揃っとるしのう!
さらに、この辺りの番長さんまでおるんじゃで!」

番長「らっしゃっせ!」

梓「何ですか?
この、アクニン・ソノモノさんたちは」

男2~9『なんじゃとおおおお!?』

ザーボン「知らぬ。
たぶん、我々には見えない彼らの知り合いが周りに居るのだろうな」

梓「なるほど!」


407:2012/06/24(日) 12:23:19.69 ID:
男2「なるほど、じゃにゃあ!」

男3「大体こんなにナイスな男性集団のどこが悪人じゃいあ!?」グスン

男1「覚えとらんか? 前に町でてめえにボコにされたモンじゃあ!
てめえさえ来なきゃ、あの美少女二人をゲット出来てたのによぅっ!」

ザーボン「?」

梓「ああ。
もしかして、先生が唯先輩とムギ先輩を助けた時に絡んでいた人達じゃあ?」

ザーボン「ああ、そう言う事か。まったく記憶に無かったよ」


408:2012/06/24(日) 12:25:32.19 ID:
男1「こなくそぉぉぉぉぉぉぉ!
こうなったら行けい、お前らぁっ!」

男2~9『おうっ!』

ザーボン「ふむ」


ブンッ。


男2~9『のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


409:2012/06/24(日) 12:27:17.48 ID:
男1「な、な、な!?」

梓「わっ! 手を振っただけで皆飛んで行きました!
何やったんですか!?」

ザーボン「ああ、衝撃波……簡単な手品だよ」

梓「へぇ~、凄いですっ!」

男1「な、な、な、なんでこんな事になっちまったぁ!?」


410:2012/06/24(日) 12:30:27.22 ID:
番長「……105円になりゃっす!」ユラァリ

男1「おお! 『わしに続け』とはさすが番長!
ようし、わしらのコンビネーションをくら痛いのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉう!」バタッ

番長「あざっしたっ!」バタッ

梓「わわわ、指で頭を触るだけで二人共倒しちゃった!
どうやったんです!?」

ザーボン「ああ、人体急所をついただけだ。
難しい事はない」

梓「へぇ~、凄いですっ!」

ザーボン「少し時間を取られてしまったな。
では行こうか」

梓「はいです」


411:2012/06/24(日) 12:32:32.20 ID:


ブウーーーーーン!


ザーボン(そう言えば。
以前奴らに絡まれ、反撃をしていたお嬢様の攻撃を『戦闘力150程度の破壊力だろうか?』などと思ったりしたな)

実際はもっと低いのではないだろうか。

スカウターが無いので細かい数値はわからないが、様々な地球人達を見ていたらそう思う。


412:2012/06/24(日) 12:37:08.56 ID:
恐らく、この星の人間……いや、生き物達は戦闘力が低い。宇宙中を見てもずば抜けて、だ。

だが戦闘力が低い分、地球……少なくともこの日本には自然がある。物がある。自由がある。『心』がある。

自由と無責任を履き違えている者や、その当たり前に気付かず不平不満しか言わない者、
綺麗事では通らない事も多々あるみたいだが……

なに。

それこそ宇宙にある、幾多の過酷な環境の星々に比べたら些細なもの。


413:2012/06/24(日) 12:40:12.91 ID:
そう言った、この星の色々な面を知れば知るほど好きになる。

軽音部や桜が丘の皆と、日々を過ごせば過ごす程愛おしくなる。

日本とは、そして地球とはなんと素晴らしいのだろう。

唯一の懸念はフリーザが攻めて来ないかどうかだが、それもまず無い。

調べてみたのだが、地球の存在する場所はこの銀河の辺境の辺境も辺境なのだ。


414:2012/06/24(日) 12:42:30.51 ID:
いくら物資が豊かでも、誰からも買い手がつかないレベルの。

奴が惑星を攻める基準は、その星が売れるかどうか。別に滅ぼす為に攻めている訳ではない。

よって、そちらの面では最悪と言って良い条件である地球にわざわざ来る事は無いだろう。

ザーボン(私はこのまま、地球に骨を埋めたい)

それは想像するに、なんと甘美なものか……


415:2012/06/24(日) 12:44:29.41 ID:


……………………

…………

律「へっへ~!」

紬「凄いっ、凄いわりっちゃん!
なめこぬいぐるみさんがこんなにいっぱいっ!」ドンッ!

律「ふっ、ゲーセンならこの私、田井中律様にまぁかせとけ~☆」

紬「はいっ!
んふんふ♪」

律「んふんふ♪」


416:2012/06/24(日) 12:46:47.45 ID:


澪「ふうっ。やるじゃないか、梓」

梓「こちらこそありがとうございました。
でも澪先輩こそさすがです。
こんなに高得点だなんて……」

澪「はは、まあゲームだけどな」

梓「そんなの関係ないです。素敵ですっ」キラキラ

澪「そ、そんな目で見るなよ、照れるよ///」


417:2012/06/24(日) 12:48:47.06 ID:
律「おーい澪、梓ーっ。
なにやってんだ?」

澪「律、ムギ。
梓とセッションしてたんだ」

律「なぬ!? そりゃ面白そうだ!」

梓「お二人はUFOキャッチャーですか?」

紬「んふ~♪」デン!

梓「うわ、この子たち超かわいいですね!///」


418:2012/06/24(日) 12:50:56.23 ID:
律「おっしゃ、じゃあ次は私としようぜ!」

澪「ああ、良いぞ」

律「もち、ドラムマ○アな~☆」アズサノノド、ゴロゴロ

梓「にゃふっ!?///」

紬「まあ♪」

梓「な、何するんですか! 昨夜はあんなに乙女だったくせに!」

律「な! そ、そそそれは関係ねーだろっ///」


419:2012/06/24(日) 12:54:20.69 ID:
澪「ゲーセンの中とは言え騒ぐなっ」ポコンチョ

律「あイタっ☆
まあっ、私だけポッコリするなんて、澪お姉様ったらなんてい・じ・わ・る・さん!」

澪「だーっ!
ほら行くぞっ、勝負するんだろっ」ムニー

律「いひゃい、いひゃぁ~。
ほっへ、のひる~~~」ズルズル


420:2012/06/24(日) 12:58:46.63 ID:
梓「ふふふふふっ。
──あっムギ先輩、その子たちどこに居ました?
何だか、とっても欲しいなって」

紬「あっち~♪」

梓「そうですか」ワクワク

紬「あ、よかったら一人プレゼントしよっか?」


421:2012/06/24(日) 13:00:03.34 ID:
梓「ホントですか!?
……ううん、悪いんで頑張って自分でゲットしますっ!」

紬「そっかぁ。
じゃあじゃあ、私も手伝うわっ。
りっちゃんに沢山教えて貰ったから、いっぱい力になれると思いまっす!」

梓「わあ、ありがとうございますっ!」


422:2012/06/24(日) 13:02:39.19 ID:


唯「おおっほぉ!」

さわ子「ふっふっふ! まだまだ行くわよっ!」

唯「こいつぁたまげました!」

さわ子「ふっ、任せなさい!
私は昔『お菓子すくいのさわ子』と呼ばれていたのよ!」

唯「わわっ! 五回目のタワー崩し!」

さわ子「こうなったらすべてのお菓子タワー、デェストロォォォイするわよォ~~!」

唯「頑張れさわちゃん! ゆけっ、さわちゃんっ!!」


423:2012/06/24(日) 13:04:17.64 ID:
澪「うわ、とんでもない事になってる!」

律「わっはー! お菓子まみれだ!」

梓「えへへ☆」ツヤツヤ

紬「この子達に家族だけじゃなくて、お友達まで出来ちゃったぁ♪」テカテカ

唯「あっみんなぁ!
わわわ、なめこさん祭りだ!」

紬・梓『んふんふ♪』

唯「んふ~♪」


424:2012/06/24(日) 13:09:29.36 ID:
澪「しかしどうしたんだ? そっちも負けず劣らずのお菓子の山じゃないか」

唯「うんっ。さわちゃんは天才なんだよ、おまいさん方!」

さわ子「これで……最後っ!」

律「おおっ! この辺のお菓子タワー全部崩しやがった!」

さわ子「あら。いつの間にか皆集まって来てたのね。
ほら、皆も持つの手伝って」

紬「は~い♪」

ザーボン「承知致しました」


425:2012/06/24(日) 13:12:35.46 ID:
律「うへぇ、ムギは相変わらず力持ちだな。片手になめこファミリー、片手にお菓子の山……
つかザボちゃんいつの間に後ろに!?」

ザーボン「ずっと居たが、なに。
こう言う仕事は私に任せ、気にせず皆で仲良くしてくれ」ニッコニッコ

紬「うふふふふ♪ ザーボン先生もお好きですね☆」

ザーボン「日常的な香りの百合……これもまた美しや、だな。
『キマシタワァ同盟』会長・ムギ」

紬「さすがの発言ですね、副会長♪」


426:2012/06/24(日) 13:15:03.55 ID:
律「うむうむ何かわからんが皆上機嫌で何よりじゃあ!
では行こうかの」スタスタ

澪「どさくさに紛れて一人だけ手ぶらで行くなっ。
お前も持つの!」

律「えー。りっちゃんペンより重い物持てないんだ☆」

澪「そうか。
じゃあ律の分は無しですよね? さわ子先生」

さわ子「そうね。仕方ないわ」

律「いやぁ~んっ!」


427:2012/06/24(日) 13:17:21.51 ID:


ザーボン「むう」バラハバラハ~

憂「えへへ」ウーツクシク、チルゥ~


ジャアーーーンッ!


純「わっ、二人共またパーフェクト!」

ザーボン「やるな、憂」

憂「先生こそ完璧ですよ」


428:2012/06/24(日) 13:19:20.77 ID:
澪「パーフェクトにつぐパーフェクトか……」

和「決着がつかないわね」

ザーボン「もうこれ位にしておこうか。さすがに疲れたよ。
君の勝ちだ」

憂「いえ、ずっと互角だった訳ですから引き分けですよ」スッ

ザーボン「……そうだな。引き分けだ」ガシッ


429:2012/06/24(日) 13:21:42.31 ID:
律「くうっ、熱いねっ! ナイス勝負だった!」パチパチパチ!

紬「楽しかったわ~♪」パチパチパチ!

純「いやはや、憂と遊んでてフラッと入ったゲーセンで皆さんと出会うなんて!
おかげで良い物見せて貰いましたっ!」パチパチパチ!

憂「えへへ♪」


430:2012/06/24(日) 13:23:31.81 ID:
和「で、私は唯に呼び出された訳だけど……
これは何の集まりかしら?」

唯「軽音部で遊んで、最後に全員でご飯食べようパーティですっ!」

和「……ええと、それでどうして私?
いや、呼んでくれたのは嬉しいんだけど」

唯「どうせなら皆で集まりたくなったんだよ~」

和「いや、私部外者よ?」


431:2012/06/24(日) 13:25:25.31 ID:
ザーボン「問題は無いよ。それを言ったら私も部外者だ」

さわ子「そうそう、気にする事はないわ。和ちゃんもご一緒しましょう」

澪「それに和にもいつもお世話になってるしな」

梓「主に律先輩が迷惑をかけてしまって、ですけどね」

律「な、な、な、なんの事だか私にゃわからんが、部長様も大賛成だぜ!」


432:2012/06/24(日) 13:27:01.06 ID:
和「まあ、皆がそう言ってくれるならありがたく参加させて貰うわ」

唯「やったぁ♪」

律「もちろん鈴木さんも来るよな?」

純「えっ! 良いんですか!?」

唯「当然だよ~♪」モッフリコ

純「わわわ、マイ・髪が!」


433:2012/06/24(日) 13:28:45.97 ID:
憂「全員集合しましたし、どうせならこのまま買い出しに行きましょうか?」

さわ子「そうね。それから直接憂ちゃんと唯ちゃんのお家に行きましょうか」

純「わっ、もしかして憂の手料理!?」

憂「うん。
ザーボン先生にも手伝って貰う予定だけどね」

和「あら。ザーボン先生は色々な事がお得意だと聞いてますが、料理もされるのですか?」

ザーボン「多少なら、な。
憂にはとても敵わないが」


434:2012/06/24(日) 13:32:51.12 ID:
憂「えへへ、そんな事ないじゃないですか。
先生の料理、すっごく美味しいんですよ」

和「それは楽しみだわ」

純「桜が丘一料理が上手い憂と、桜が丘一万能選手・ザーボン先生のタッグクッキングかぁ。
こりゃあ期待しちゃうわ!」

憂「純ちゃん言い過ぎだよ~///」

ザーボン「ふふっ。期待に応えられるように頑張らせて貰うよ」


435:2012/06/24(日) 13:34:43.03 ID:
純「──あっ。
澪先輩、よかったらその後にでもベ、ベースを教えて頂けませんか?」ドキドキ

澪「うん? 私で良ければ構わないよ」

純「やった!」

律「──おっ、プリクラがあるぜ!
最後に全員で撮らないか?」

梓「良い考えです!」


436:2012/06/24(日) 13:36:24.43 ID:


純「さ、さすがにこの人数で入るとキツいですね……」

紬「うふふ、もっと皆で引っ付けば良いのよ~♪」

梓「はいです」クンカクンカ

律「よし、準備はOKか?」


437:2012/06/24(日) 13:41:31.99 ID:
ザーボン「うむ」

唯「OKです、りっちゃん隊員っ!」

澪「ああ」

梓「良いですよ」

さわ子「は~い」

和「良いわよ」

純「はいっ!」

憂「はい」

紬「どんとこいですっ!」

律「おっしゃ、じゃあ行くぜっ!」


パシャッ!


438:2012/06/24(日) 13:44:13.25 ID:


……………………

…………

時はあっという間に過ぎる。

忙しくも楽しい毎日。

それは、大切な人達と大切な場所で過ごす宝物の日々──


439:2012/06/24(日) 13:46:33.60 ID:
本日はこの辺りで。

それでは皆さん、今回も本当にありがとうございました~♪


444:2012/07/01(日) 17:40:20.38 ID:


────────────────

ザーボン「……ふむ」

とある日の夜、自宅。

今日、家で片付ける仕事も終えた私は、紅茶の入ったカップを片手に窓の前で外を見つめていた。

今は鮮やかな紅葉が町を赤く彩る季節。

その輝く魅力は、日の落ちた時間でも損なわれてはいない。


445:2012/07/01(日) 17:43:04.69 ID:
ザーボン「もう少しで学園祭か……」

このようなイベントは生まれて初めて経験する為、まったく勝手がわからない。

だが、それに向けた準備を始めた生徒達・教諭達を見ていると、学校生活でのその存在の大きさは感じ取れる。

私も新人ながらあれこれと仕事を与えられ、なかなか多忙の中に居たりする。

その為、ここしばらく軽音部にお邪魔は出来ていないのだが……


446:2012/07/01(日) 17:49:07.88 ID:
そう言えば先日廊下ですれ違った時に唯が、


唯『ご飯はおかず! おかずなんだよザボちゃ~ん♪』


などと言ってニコニコしていたな。

よくわからないが、彼女達の準備も着々と進行しているようだ。

……学園祭の準備が始まる少し前に、私は改めて軽音部の顧問への誘いを受けた。

正直迷ったのだが、ここはやんわりと断っておいた。


447:2012/07/01(日) 17:52:12.16 ID:
大イベントの一つと名高い学園祭だ。

それを初体験の私には、通常業務に合わせてそちらの仕事もこなしながら顧問が出来るかは不透明だったのだ。

そして案の定、忙しさは激増した。

まあその渦中に居る今にして思えば、すべてを受け持っていたとしても無難程度にはこなせたかもと思う……のだが、
それとて絶対の自信がある訳でもないし、そもそもそれは結果論か。

何より強制ではないのだから、八方美人になってどこかで万が一足を引っ張ったりしたら迷惑なだけからな。


448:2012/07/01(日) 17:55:26.67 ID:
ともあれ、落ち着いた時にまた必要とされたら受ければよいだろう。

しかし……先程上げたすべての仕事をきっちりとこなしているMs.山中は凄いものだ。

もちろん、他の先輩教諭の方々も。

……まあ、私がその方々と同じだけの経験を積めば、追い付き・追い抜く自信がある事は確かではあるのだが……

その自信を本当にする為にも、もっともっと頑張らないといけないな。

人に支え、助けて貰った分は成長して将来必ず返す。

時間が流れる事によって例え本人には返せなくなっても、その時は別の誰かに。


449:2012/07/01(日) 17:57:02.14 ID:
ザーボン「……さて、そろそろ湯浴みでもして休むか」

私はカップを流しに持って行き、風呂場へと向かう。

──その時。


450:2012/07/01(日) 17:58:47.53 ID:


『あと一週間』


声が聞こえた。


ザアッ!


ザーボン「!!!!!」

唐突に、部屋中に風が吹き荒れた。


451:2012/07/01(日) 18:03:04.40 ID:


ゴウッ!


その流れが私の体を貫き──

ザーボン(……ああ、そうか)

私は悟った。

ザーボン(初めから謎など何もなかったのだ)

何一つ。


452:2012/07/01(日) 18:07:19.45 ID:


……………………

…………

ザーボン「……これは……どうした事だ?」

気が付いたら、私は見知らぬ場所に立っていた。

ザーボン(まるで宮殿の中のような、広くて豪奢な場所……
城か?)

???「どうも~。貴方はさっき亡くなられた方ですね」

ザーボン「──!?
なんだ貴様は。ここは一体どこだ?」


453:2012/07/01(日) 18:10:29.19 ID:
???「私は死者の案内人。
とりあえずこちらへどうぞ~」

ザーボン(ふざけた奴だ。消してやる。
……いや、待て。
それは、こいつが私をどこに案内するつもりなのかを確認してからでも良いか)

案内人「ちゃんとついて来て下さいね~」テクテク

ザーボン「…………」スタスタ

……………………

ザーボン(──む? さらに開けた場所に出たな。
……! 何だ? あの巨漢の男は……)


454:2012/07/01(日) 18:13:06.68 ID:
案内人「閻魔大王様、新たな死者を連れて参りました」

閻魔「ご苦労。お主は下がってくれ」

案内人「はい。では失礼します」テクテク

ザーボン「……ここは何だ? そして貴様は誰だ」

閻魔「お主は……ザーボンだな。
なるほど、かなり沢山の罪を犯しているものだ。
この閻魔帳をここまで埋めるとはな」パラパラ


455:2012/07/01(日) 18:14:21.22 ID:
ザーボン「質問に答えろ!」

閻魔「ここは死後の世界だ。
そなたは死んだ為、ここに来た」

ザーボン「何だと?」

閻魔「記憶があろう?」

ザーボン(……確かに、私にはベジータに殺された記憶がある)
「……ちっ」


456:2012/07/01(日) 18:18:19.94 ID:
閻魔「どうやら納得したようだな」

ザーボン「ああ。納得はした。間違いなく私は殺されたよ。
それで? 私はこれからどうなる?」

閻魔「そなたは罪を重ねすぎた。深い深い地獄に落ち、その汚れた魂が清められる」

ザーボン「ほう」

閻魔「だが、宇宙レベルで見たら最悪、と言う程ではない。
安心するがよい。魂が清められた後は、新しい生命体として再び転生出来るであろう。
本当に最悪の大罪人は、永遠に浄化の苦しみを味わい、二度と転生が出来ないのだからな」


457:2012/07/01(日) 18:20:47.86 ID:
ザーボン「……その地獄とやらに自由はあるのか?」

閻魔「無い。
最悪ではないと言っても、そなたの罪は決して軽くはない。
終わりは来るとは言え、永遠とも思える期間苦しみを負う事になるだろう」

ザーボン「ふん……話はわかった。
だが、この私がはいわかりましたと簡単に首を縦に振ると思うか?」


バッ!


ザーボン(必殺技の一つ、スーパーエネルギー波。
一瞬で消滅させてやるよ)


458:2012/07/01(日) 18:22:13.33 ID:


……………………


ザーボン「……?」
(な、なぜだ。なぜ何も出ない?)

閻魔「無駄だ。今のお主は私には抗えぬ。
死人は、この死者の世界では無駄な暴力は働けぬよ」

ザーボン「何だと……!? どう言う意味だ!?」

閻魔「言葉通りの意味だ」


459:2012/07/01(日) 18:24:20.91 ID:
ザーボン「……ならば!」バッ!


ガッ、ガッ、ガガガガガガッッ!!


閻魔「ふふふ」

ザーボン「馬鹿な……
ま、まったく効いていないのか……?」

閻魔「──むん!」


ブンッ!


ザーボン「!」


460:2012/07/01(日) 18:28:13.58 ID:


ドッ!


ザーボン「ぐっ……」
(け、券圧でのただの衝撃波か?
吹き飛ばされて床に叩きつけられただけだ。ダメージなど無い……
が……)

閻魔「──構えを解いた、か。
わかったようだな。無駄だと。
そなたが生前どれだけ強かったのだろうと、今は無関係だ」

ザーボン(……そのようだな。
ならばどうする? 他に手は無いのか……?)


461:2012/07/01(日) 18:30:15.24 ID:
閻魔「では、早速そなたが行く地獄へ案内させよう……
と、普通なら言うところだが」

ザーボン「むっ?」

閻魔「どうやら、そなたには善性……清き心が隠されているようだな」

ザーボン「清き心……だと?」

閻魔「そうだ。
悪に染まりきった清き心などではなく、純然なる善性そのものがな。
そのような者には、少しだけチャンスを与える事にしている」


462:2012/07/01(日) 18:32:42.79 ID:
ザーボン(こいつは何を言っているのだ。
このザーボン様の心が清い……?)

閻魔「仮にではあるが肉体を貸し与え、そなたが一番更生出来そうな次元の銀河の……地球と言う星に送る」

ザーボン「……それでどうなると言うのだ?」

閻魔「その場所でのそなたの行動によって、魂がどんどん清められるだろう。
それは過去の償いにもなり、罪が軽減される事となる」


463:2012/07/01(日) 18:35:48.32 ID:
ザーボン「ふっ、笑わせるな。大罪人のザーボン様だぞ?
その地球とやらでも、私はまた罪を犯すぞ」

閻魔「それは無いと断言しよう。
そういう者だからこそチャンスを与えるのだ。
私は罪人を裁く為だけに罪人を地獄に落とす訳ではないのでな。
拾える者は、なるべく拾い上げてやりたい」

ザーボン「ふん……」
(あまりにも良い話だが……何か裏があるのか?
だが、このまま即地獄へ行くよりは良いのだろうか……?)


464:2012/07/01(日) 18:38:12.04 ID:
閻魔「ただ、この件に関しての記憶は一時的に失って貰うがな」

ザーボン「なに?」

閻魔「その方が魂の『本音』が出るのだよ」

ザーボン(……余計な前提は覚えていない方が都合が良いと言う事か)

閻魔「まあ、死んだ時に身につけていた服位はサービスしよう。
そなたに相応しい星は、裸では都合が悪すぎるからな。
とは言っても、断る事も自由だがどうする?
もちろんその場合は即地獄に行って貰う事になるが」


465:2012/07/01(日) 18:44:20.00 ID:
ザーボン「……それに答える前に一つ質問したい」

閻魔「何だ?」

ザーボン「もし事故ででも私が何か……町を破壊したり誰かを殺したりしたらどうなる?
罪が増えたりするのか?」

閻魔「悪意を持って行ったなら、な。
だが先程も言ったが、そんな恐れがある者にはこのようなチャンスは与えぬ。
我々にはこう言った事で抜かりはない。
ちなみに、万が一そのような事があっても、そなたがこの死者の世界に戻ってくる時にはすべて元に戻っている」


466:2012/07/01(日) 18:47:01.73 ID:
ザーボン「と言うと?」

閻魔「そなたが行くのは、そなたの生きた世界とはまったく別の次元だ。
そこではそなたはイレギュラーと言う訳だが……
だからこそ、その次元にとってのイレギュラーである存在が去る時、その次元の理がすべて元に戻る」

ザーボン「……つまり、イレギュラーが居なかった場合の状態へと再構築される、と?」


467:2012/07/01(日) 18:49:59.68 ID:
閻魔「そうだ。そなたが居なかった場合の『現在』へとな。
その時はもちろん、関わった者達のそなたに関する記憶は無くなる。
当然、絆を結んだ者が居たとしたらそれもすべて」

ザーボン(くだらんな。『絆』だと?)
「……随分と都合が良いものだな」

閻魔「そのように組み立てているのだ」

ザーボン「ふん……
まあとにかく、私が気にするような事は何も無いと言う事か」

閻魔「そうだ」


468:2012/07/01(日) 18:57:05.75 ID:
ザーボン(……ここで意地を張り、地獄とやらに行ってそのまま終わってしまうより、
この話に乗って時間を得、何かしら手段を講じるのが上策か。
しかし、これに関しての記憶を失ってしまうのでは……)

閻魔「ちなみに、この件でそなたが動けるのは……
五ヶ月と言ったところか。
これほど罪深い者が、これだけ長い期間の猶予を与えられるのは前例が無いかもしれんな。
それだけ期待が持てると言う事だが」


469:2012/07/01(日) 18:58:49.72 ID:
ザーボン(五ヶ月か。それだけあれば、何かの拍子で記憶が復活する可能性もあるか?
ともあれ、ここで私が取るべき最善の行動は……)

……………………

ザーボン「──わかった。その話、受けようではないか」

閻魔「うむ」

ザーボン(受けて……利用させて貰う)


こうして私は地球へと送られた。

そして……


470:2012/07/01(日) 19:02:42.49 ID:


……………………

…………

ザーボン「あ……ああ……」

風が止んだ。

後には恐ろしいまでの静寂。

ザーボン「ば、馬鹿な……!
ありえないっ!」

それを壊すように両膝を突き頭を抱えるが、現実が変わる訳もなかった。

ザーボン「閻魔、聞いているのか!?
私は、私はこの世界から消えなければならないのか!?
なぜ……
い、いや、それだけならともかく、どうして残された時間などを伝えた!?
せめて黙ったまま、何も知らないまま終わらせてくれれば……!」


471:2012/07/01(日) 19:03:35.06 ID:


『これも、償いの一つだ』


472:2012/07/01(日) 19:05:29.01 ID:


ザーボン「!!!」

再び響いた野太い声に、私は言葉を失った。


『そなたは生前、他人の大切な人や物を奪い続けてきた。
それを失う苦しみと、その時が近付いて来る恐怖にこの一週間……
苦しむがよい』


……もうこれ以上、閻魔の声は聞こえてこなかった。


473:2012/07/01(日) 19:08:37.74 ID:


あと一週間。

あとたった一週間で私は死後の世界に戻らねばならない。

失うのだ。

お嬢様、唯、軽音部の皆、桜が丘の先輩教諭達や教え子達……

そう。かつて閻魔が言っていた、そして私が内心馬鹿にしていた『絆』をすべて。

それは、以前私が逃げて心にしまいこんでいた、故郷の星での出来事を思い出した時よりもよほど……

恐ろしかった。


476:2012/07/08(日) 10:58:00.40 ID:


────────────────

教諭「おや? ザーボン先生、ここ間違っていませんか?」

ザーボン「えっ?
……あ、申し訳ありません」

教諭「ははは、初歩的なミスですよ。
しっかりして下さいよ」カタヲ、ポン

ザーボン「ふふっ! すみません。
失礼致しました!」

さわ子「……?」


477:2012/07/08(日) 11:00:18.62 ID:


……………………

…………

ザーボン「ええと、それでここは……(カキカキ)
おや?」

姫子「センセ、どうしたの?」

ザーボン「いや、ええと……
すまない、答えをド忘れしてしまった」

信代「あはは、ザーボン先生にもそんな事あるんだね!」

ザーボン「いやあ、すまんっ!
では──そうだな。代わりに若王子、解いてみてはくれないか?」

いちご「……良いですけど」

ザーボン「感謝するっ!」

唯・紬・澪・律『……?』


478:2012/07/08(日) 11:01:52.81 ID:


────────────────

とある日、放課後の職員室。

ザーボン「ふう……」

椅子に座り、私は大きく息を吐く。

ザーボン(くそ……!)

ここ数日、つまらないミスの連続。私は絶不調だった。

おかげでかなり苛立ちが募っている。

もちろん、それは表に出さないようにしているつもりだが……


479:2012/07/08(日) 11:03:44.46 ID:
ザーボン(あの時ですらこんな事はなかったのだが、な)

何ヶ月か前の自分の過去との戦い。

あれは周りの助けがあったからこそ乗り越えられたとは言え、まだ立ち向かいようがあった。

だが今回はどうする事も出来ない。

戦うにしてもどうやって?


480:2012/07/08(日) 11:07:42.33 ID:
ザーボン(……閻魔だの何だの、すべて夢なのではないか?
タイムリミットが来ても特に何も起こらないのだ)

ありえない。

なにせ、私は間違いなく死後の世界に行き、閻魔と話して自分で決めたのだ。

この星……地球に行くと。

この記憶・実感が夢だなどある訳がない。


481:2012/07/08(日) 11:09:49.17 ID:
ザーボン(……それを言ったら、地球でのこの日々こそ夢──と言った方が正しいのかもしれないな)

なにせ、閻魔の計らいが無ければ私は地獄へと直行していたのだ。

それを考慮すると、この夢の日々を過ごさせて貰っただけでもありがたいのだろうが……

今の私には、とてもそのように割り切って考える余裕は無かった。


482:2012/07/08(日) 11:11:26.69 ID:
律「おう、ザボちゃん!」

ザーボン「……む?」

声のした方を見ると、いつもの軽音部の面々が立っていた。

ザーボン「どうした? 皆揃って」

この時期、普段はマイペースな彼女達も、さすがに学園祭へ向けて準備なり練習なりをしているはずだが……

澪「あの、お話がありまして」


483:2012/07/08(日) 11:13:37.64 ID:
梓「よろしければ、明後日私たちの演奏をチェックして頂けませんか?」

ザーボン「明後日?」

そう言えば、明後日は学園祭前最後の休日だ。

……そして。


484:2012/07/08(日) 11:16:09.53 ID:
ザーボン「なぜ私なのだ?」

律「いやな、さわちゃんに見て貰おうかと思ったんだけど、『忙しくて無理だからザーボン先生に頼んでみて』って言われてさ」

紬「部室の使用許可は頂きました~」

律「だからどうかな?
今回私達新曲を二つ作ったんだけど、やっぱり本番前に人の意見を聞きたいなって」

澪「私達の演奏が、ちゃんとその曲を表現出来ているか意見を聞かけて頂けませんか?」

唯「どっちも元気の出る良い曲なんだよ~」

口々に言いながらも、彼女たちは相手……私を思いやるような、慈しむような優しい笑顔を浮かべている。


485:2012/07/08(日) 11:17:49.73 ID:
……ああ、そうか。

もちろん練習と言うのもあるのだろうが、何の事はない。

彼女達は私を心配して、元気付けようとしてくれているのだ。

恐らく、Ms.山中も。

参ったな。そう言った感情は表に出さないようにしていたつもりだったが、彼女達にはお見通しだったみたいだ。


486:2012/07/08(日) 11:21:02.50 ID:
ザーボン「わかった、明後日だな。
私で良ければ力になろう」

梓「わっ! ありがとうございます!」

唯「ようし、頑張るぞっ!」

ザーボン(そうだ。考えても仕方のない事に囚われていても無意味。
まずは目の前の事に集中するべきだ。
こう言う時は下手に結果を求めるより、ミスをしない事を重視して精一杯頑張ろう。
そうすれば何事も……せめて無難程度にはこなせるさ。
私は二度と人に迷惑や心配などかけないと誓ったのだからな。
例え……)


487:2012/07/08(日) 11:21:43.83 ID:
例え、私のタイムリミットが明後日だとしても。


488:2012/07/08(日) 11:25:16.90 ID:


────────────────

二日後、運命の日。

彼女達の演奏を聴く約束をしているのは昼過ぎで、今は朝。

私は電話で、『もしご都合がよろしければ……』と、この時間にお嬢様と唯から町へ呼び出しを受けていた。

ザーボン「……懐かしいものだな」

ここはそう、すべての始まりの場所。

この町のこの場所。私は五ヶ月前、ムギお嬢様と唯に出会った。


489:2012/07/08(日) 11:31:11.22 ID:
ザーボン(何だかんだで、ここにはあれ以来来ていなかったな)

唯「ザボちゃんっ!」

紬「おはようございます~♪」

ザーボン「ああ、おはよう」

ぼんやりと思いにふけっていると、二人がやって来た。


490:2012/07/08(日) 11:32:32.87 ID:
手を繋ぎながら歩いて来るのはさすがと言ったところ。

余談だが、家族や友達と手を繋いで歩くのと、恋人達が手を繋いで歩くのではまったく違うものだな。

取り立ててじゃれ合っている訳でなくとも、なんと言うか……雰囲気が違う。

これは、いわゆる『恋人繋ぎ』と呼ばれる繋ぎ方をしていなくてもだ。

今日ここで二人を待っている間も、間違いなく百合ップルを二組ほど見た。

少しだが、元気が出た。

──そうだ。これで良いのだよ、ザーボン。


491:2012/07/08(日) 11:34:07.75 ID:
ザーボン「さて……
確か、『部室に行く前に学園祭で必要な物を買い出したいから、荷物を持って』……
との事だったかな?」

唯「あっごめんね。それ嘘なんだ」

紬「はい……実はそうなんです」

やはりか。


492:2012/07/08(日) 11:37:50.16 ID:
唯「ザボちゃん最近調子悪そうだったから、元気付けてあげたくて……
ごめんね」

二人して謝ってくるが、当然気を悪くするなどありえない話だ。

しかし、彼女達の善意・気持ちを尊重して、私が気付いていた事は黙っておく。

ザーボン「そうだったのか……
いや、こちらこそ気を使わせてしまっていたとはすまなかった」

感謝を込め、私は言った。


493:2012/07/08(日) 11:40:48.04 ID:
ザーボン「ところで、ならばこんな早くに……
しかも学校とはまったく接点の無いここへ呼び出した事にも何か理由があったのかな?」

そう、これはわからなかった。

唯「あのね、ザボちゃんにはすっごくお世話になってるし、
演奏だけじゃなくて、一緒に遊んでちょっとだけでも楽しい気持ちになってくれたらなって思って」

紬「それを正直に言ったら、『そうまでして貰うのは悪いよ』と断られると思ったんです。
押し付けみたいになってしまってすみません」

さすがに私の性格をよくわかっている。その通りだ。


494:2012/07/08(日) 11:44:13.98 ID:
ただ、今の状況だと、自分の気持ちを偽ってそんな建前を言う余裕があったか……自分ではわからないが。

ザーボン「なに、電話で私の都合や気持ちを尊重してくれていたし、押し付けと言うものではない。
それに正直……私も皆と過ごしたいと思っていた」

少なくとも、今日だけは。

唯「そっかぁ、良かったっ☆」

紬「うふふ♪」


495:2012/07/08(日) 11:47:07.94 ID:
ザーボン「──さて、ではどうするのだ? どこかにでも連れて行ってくれるのかな?」

女性にエスコートをされると言うのも何か変な感じだが、今回に関してはそれも良い。

唯「おおっ! そうそう!」

紬「まずは、『エンジェルモート』~♪」

ザーボン「それは……懐かしいな」


496:2012/07/08(日) 11:47:57.80 ID:
唯「こないだムギちゃんと行ったら、詩音ちゃんがザボちゃんにまた会いたいって言っててね。
丁度良いからまた三人で行こうっ!」

ザーボン「うむ、そうだな。
園崎嬢……だったな。彼女は元気かな?」

紬「すっごく元気ですよ~♪」

こうして私達は歩き出した。


497:2012/07/08(日) 11:49:41.90 ID:


……………………

…………

それから私達はまずエンジェルモートに行き、次に楽器店へ。

服も見た。

まったく……楽しい時を過ごすと、時間が経つのなどあっという間だな。


498:2012/07/08(日) 11:54:13.74 ID:


……………………

…………

紬「あらぁ、もうこんな時間ね。
そろそろ学校に行かないと」

服のショップから出て、お嬢様が呟いた。

ザーボン「む……」

唯「そっかぁ、残念だあ」

紬「うふふ。
まあ学校で演奏して、ザーボンさんに元気になって貰うのが元々の目的だし」

唯「そうだったー」テヘペロ


499:2012/07/08(日) 11:55:18.16 ID:
……あとどれ位、私はこの地に居られるのだろうか。


スタスタ。


紬「……ザーボンさん?」ピタッ

せめて彼女達の演奏だけは聴きたい。


スタスタ。


唯「ザボちゃん?」ピタッ


500:2012/07/08(日) 11:57:04.45 ID:
それまでは消えたくない。

紬・唯『…………』

……………………

紬・唯『ザボちゃん♪』トントンッ

はっ。


501:2012/07/08(日) 11:59:59.80 ID:
ザーボン「うむ」

後ろから肩を叩かれつつ名前を呼ばれ、私は振り向──


むにっ。


ザーボン「む……?」

いたら、頬に何か当たった。


502:2012/07/08(日) 12:01:23.92 ID:
紬・唯『やったーっ!』

これは……ムギお嬢様と唯の指か?

どうやら二人が手を取り合って私に悪戯をしたようだ。

唯「勝利の人差し指っ!」

紬「指~♪」

ザーボン「ははは、やられたな」


503:2012/07/08(日) 12:04:03.97 ID:
唯「でも朝だけとは言っても、皆が来れなくて残念だなぁ」

紬「うん……
でも仕方ないわ。今日はクラスの出し物の準備や練習とかもあるし、さすがに軽音部全員抜けちゃうのはね」

そうだったのか……!? それは知らなかった。

ザーボン「何か本当に……すまなかったな。
わざわざ私の為に……」


504:2012/07/08(日) 12:05:53.33 ID:
唯「良いんだよ~♪」

紬「それに、クラスの皆も快く賛成してくれたんですよ」

ザーボン「む?」

唯「ザボちゃんが元気なさそうだから元気付けてあげたいって言ったらね、
皆『今日ぐらいは良いから行け行けっ』って言ってくれたんだよ~」


505:2012/07/08(日) 12:12:04.10 ID:


……………………

…………

エリ「あー。確かに最近のザーボン先生、超空回りしてる感じだよね」

アカネ「うん」

風子「疲れてるのかもね」

春子「そう言う事なら行ってきなよ!」

信代「うん! 一日位大丈夫っしょ!」

慶子「そうそうっ」


506:2012/07/08(日) 12:13:19.69 ID:


……………………

…………

唯「って♪」

そ、そうなのか……

紬「前にも話しましたっけ。
ザーボンさんね、皆から好かれてるんですよ?」

唯「姫ちゃんとかも『気になってた』って言ってたし」

紬「ちゃんと頑張ってきたからこその結果ですね♪」


507:2012/07/08(日) 12:16:31.92 ID:
む……う、嬉しいがもの凄くくすぐったいな。

唯「あれっ、ザボちゃん照れとりますですか?」

ザーボン「あ、ありえんよそんな事///」プイッ

紬「うふふ♪
でも、さすがに皆が良いって言ってくれても、軽音部全員が抜けるのは悪かったのでそこまでは遠慮したんですが、
りっちゃんや澪ちゃん、それに梓ちゃんだって『本当は行きたかった』って言ってましたから……」


508:2012/07/08(日) 12:18:12.38 ID:
唯「学園祭が終わったら、また皆で遊びに行こっ。
打ち上げっ!」

また皆で、か……

ザーボン「ああ、そうだな。
打ち上げ……行きたいな」

唯「やった!」

紬「うふふ♪ これでザーボンさんが軽音部の顧問になってくれたら完璧ですねっ」

唯「そうそうっ。
私たちもだけど、さわちゃんだってそう言ってるし」


509:2012/07/08(日) 12:19:40.75 ID:
確かにMs.山中にも、


さわ子『このままだと来年──少なくとも最初の内は梓ちゃん一人きりになりそうですし、
その時は出来る限り顔を見せて側に居てあげたいんですが……
やっぱり他の仕事がある以上、常にとはいきませんからね。
演奏の技術指導の面を考えても、ザーボン先生との顧問二人体制が出来たら梓ちゃんの件も含めて軽音部を色々とフォローし易くなるんですが』


などと言われた事がある。


510:2012/07/08(日) 12:20:56.58 ID:
前述の通り、これまではまだそこまでの責任を負う自信が無かった為に断り続けて来たのだが……

ザーボン「……うむ、そうだな。
前向きに考えさせて貰おう」

唯「おおっ!?」

紬「まあっ!」


511:2012/07/08(日) 12:23:20.85 ID:
ザーボン「とは言っても、早くとも学園祭が終わってからになるだろうがな。
……まあ、その時は色々と落ち着いて私に余裕が出来るだろうし、タイミングが良いからだが……
本来はこの忙しい学園祭で力になるべきだったのだよな。すまない」

紬「ううん、そんな事ないですっ」

唯「あずにゃん、何も言わないけどきっと不安だと思うから……
絶対喜んでくれるよっ」


512:2012/07/08(日) 12:25:09.79 ID:
紬「結局、私たち梓ちゃんに何もしてあげられなかったものね。
その事だって、私たちがちゃんと新入部員の子を集めていたら大丈夫だったんだし……」

ザーボン「それでも、君達が先輩だからこそ彼女もここまで続けてこられたのだろうな」

近い将来一人切りになるかもしれないと予想出来る場所に、わざわざ残る理由はそれだろう。

音楽関係の部活は軽音部だけではないのだから。


513:2012/07/08(日) 12:26:55.37 ID:
ザーボン「ふふっ。しかし……
ムギお嬢様や唯、それに律と澪の梓への可愛がり方を見ていると、まるで天使を愛でているようだ」

唯「天使かあ」

紬「うふふ、そうかもしれませんね」


514:2012/07/08(日) 12:29:44.72 ID:
唯「……あっ! じゃあじゃあさっきの打ち上げの事も含めて、指切りしようっ!」フンス

紬「おおっ!
そうしましょ~♪」フンス

ザーボン「指切り?」

唯「ムギちゃんはそっちね☆
ザボちゃん、両手とも小指出してっ」

ザーボン「わかった」


515:2012/07/08(日) 12:31:38.50 ID:
言われるがまま、私は両手の小指を二人へと差し出した。

すると唯が左手小指、ムギお嬢様が右手小指をそれぞれ私の小指と絡ませ、

唯・紬『ゆーびきーりげーんまん、うーそつーいたらはーりせーんぼんのーます、ゆーびきった!』

と歌い、その指を離した。


517:2012/07/08(日) 12:33:50.96 ID:
ザーボン「?」

唯「えへへっ。
これでただの約束が、大きな大きな約束になったんだよ!
守らなかったら針千本飲まないといけないの!」

──そうか。これはまじないみたいな物か。

私は彼女達には嘘を吐きたくないと常々思っていた。

だが、今は考えが少々違う。


518:2012/07/08(日) 12:37:35.54 ID:
閻魔の話によると、私が消えたらこの地球は私が居なかった場合の世界へと修正されるらしい。

そう。私を知る者達の記憶も。

それを思い出した今、優先すべき事は決まっている。

ザーボン「なるほどな。
うむ、了解した」

そう答える事で相手が喜んでくれるのならば、自分の信念などいらない。

大体、大切な人達の笑顔の為の嘘の代償が、針千本を飲む程度なら安い物ではないか。


519:2012/07/08(日) 12:40:41.26 ID:
ザーボン「……と、いかん。話に夢中になりすぎたな」

もちろん会話をしながらも歩いてはいたのだが、のんびりしすぎたかもしれない。

紬「そうですね。ちょっと足を早めましょうか」

まあいざとなれば私が二人を抱えて飛んで行けば良いのだから、そう焦る必要も無いのだが。

????「見付けたぜ!」


520:2012/07/08(日) 12:43:24.56 ID:
ザーボン「!?」


ギュンッ!


背後から声が聞こえ、私達を猛スピードの何かが追い抜いて行ったかと思えば、その何かが我々の三メートルほど前に着地した。

ば……馬鹿な、今の声は。それにあの容姿は……!


521:2012/07/08(日) 12:45:37.21 ID:
????「覚えのある気だと思っていたが、やっぱり貴様だったか。
ザーボンさんよ!」

ザーボン「ベジータ!」


528:2012/07/15(日) 11:15:51.66 ID:


ありえない……なぜ奴がここに!?

唯「ザボちゃんどうしたの? あの人知り合い?」

ザーボン「ああ……知り合いだよ。
以前話した、かつて私を殺した奴だ」

唯「えっ?」

紬「そう言えば……
確かにその人の名前、ベジータって言ってたような……」

唯「ベジータ……」

紬「それにあの人の格好、最初に会った時のザーボンさんと似てる……」


529:2012/07/15(日) 11:17:22.37 ID:
ザーボン「貴様、なぜこんな所に居る!?」

ベジータ「それはこっちのセリフだぜ。
ここは一体何だ? そして死んだはずの貴様がなぜ生きていやがる!?」

……待てよ。まさかこいつも……?

ザーボン「──ベジータ。
貴様まさか、誰かに殺されやしなかったか?」


530:2012/07/15(日) 11:19:19.80 ID:
ベジータ「!?」

ベジータの表情が変わった。

やはり……

奴も私と同じだと言う事か。

そして一週間前までの私と同じようにまだその時では無いのか、はたまた奴に関しては閻魔にそのつもりが無いのか。

ベジータはすべての記憶を取り戻してはいないようだ。


531:2012/07/15(日) 11:22:01.41 ID:
ベジータ「やはり貴様、何か知っていやがるな?」

ザーボン「…………」

ベジータ「なら答えて貰おうか!」

どうする? すべてを話して良いものか。

……いや、ベジータの性格を考えれば、どんな行動を取ろうと恐らく先の展開は変わらない。

喋れば用済み。喋らなければ『なら死ね!』と、私を再び殺そうと襲ってくるだろう。確実に。

しかし出来れば戦闘はしたくない。

……話し合いで解決出来ないか、一応は試して──


532:2012/07/15(日) 11:23:21.16 ID:
唯「ちょっと! さっきから何だぁ!」

ザーボン「!?」

紬「そうですっ!」

唯とムギお嬢様が怒りの声を上げながら前へと出て行く。

ベジータ「ほう?」


533:2012/07/15(日) 11:25:08.90 ID:
ザーボン「や、やめろ二人共、下がるんだ!」

慌てて二人を後ろへ下げようとするが、唯もムギお嬢様も身をよじって抵抗した。

唯「だってっ! あの人ザボちゃんを……殺した人なんでしょ!?」

紬「もう二度とそんな事はさせませんっ!」

こ、この二人は……本当に……


534:2012/07/15(日) 11:26:46.62 ID:
ベジータ「はっはっは! 何だ、ザーボン様ともあろう者が女に盾になって貰っているのか!?」

ザーボン「黙れ! そのような事はない!」

私は彼女達を後ろに下がらせる事を諦め、自分が二人の前に出た。

紬「ザーボンさんっ!」

ザーボン「──二人共、逃げろ」

唯「えっ!?」


535:2012/07/15(日) 11:28:22.99 ID:
ザーボン「ベジータは話が通じる相手ではない。
必ず戦闘になる。
巻き込まれたら無事ではすまないし、君達を守りながら戦える相手でもないのだ」

紬「でも……」

ベジータ「何をゴチャゴチャ言ってやがる!」


グワッ!


ザーボン「!」

唯・紬『!!?』


536:2012/07/15(日) 11:30:44.19 ID:
なんと言う殺気だ……!

背後の気配だけで、ムギお嬢様と唯の体がわずかに震えているのがわかる。

当然だ。私が前に居るとは言え、ここまで本物で、かつ本気の殺気を受けたのだから。

正直、私もまったく怖くないと言えば嘘になる。

ザーボン(半年近く、このような物から離れていたからな……)

だがそれで怯むわけにもいかない。


537:2012/07/15(日) 11:32:18.22 ID:
ザーボン「わかっただろう?
あいつは……
いや、はっきり言おう。君達は邪魔だ。
頼むから先に逃げてくれ」

唯「……ザボちゃん」

紬「……わかりました。確かにその通りみたいですね……」

唯「うん……
で、でもザボちゃん、怪我しないよね? 無事で居てね?」

無理だろうな。

ザーボン「うむ。もちろんだ」


538:2012/07/15(日) 11:33:46.43 ID:
私が笑顔でそう言うと、二人は心配そうながらもベジータの居る方向とは逆に走り出した。

ベジータ「ん?」

ベジータが彼女達の方に視線を向けたが、

ザーボン「待て! 貴様が用があるのは私だろう!」

すぐさま意識をこちらへと戻させる。


539:2012/07/15(日) 11:35:01.61 ID:
ベジータ「ああ、そうだな。
さて。じゃあ知っている事すべてを話して貰おうか」

ザーボン「……その前に聞かせろ。
私が持っている情報をお前に話して……その後はどうする?」

ベジータ「決まっているだろう?」

奴が浮かべる邪悪な笑み。


540:2012/07/15(日) 11:36:44.63 ID:
ザーボン「もしこの星から脱出するにしても、何をするにしても。
例えば、私との協力が必要ならどうする?
それでも私と戦うと言うのか?」

ベジータ「当たり前だ。
どんな理由にせよ、貴様がここに居ると言う事はフリーザ軍が関わっていやがるんだろう?
なら貴様をブッ殺しても宇宙船を見付ければ何も問題無いぜ」

ザーボン「……フリーザ軍など無関係だ」

ベジータ「フリーザの側近が抜かしやがるな」


541:2012/07/15(日) 11:38:53.03 ID:
ザーボン「嘘ではない。
それに、この星にはお前が求めるレベルの宇宙船など無いのだ」

ベジータ「貴様が居るのにまともな宇宙船一つ無いだと?」

ザーボン「先程言った事に合わせて、この星はそれほど高度な文明を持っている訳ではないのだ。
だから、お前の満足出来る性能の宇宙船など存在するはずも──」


ドウッ!


ザーボン「!」


542:2012/07/15(日) 11:40:16.42 ID:
唐突に放ったベジータのエネルギー弾が、私の顔の真横を通り過ぎて行った。

ベジータ「バレバレの嘘など必要無い! オレ様を舐めているのか!」

……良かった。建物を背にしている訳ではなく、かつ私と奴に身長差があったおかげか、エネルギー弾は空へと消えて行く。

被害は何も無い。

しかし、相手に自分が信じられない話をされただけでこの反応……

やはりこの男に話し合いは不可能か。


543:2012/07/15(日) 11:41:39.28 ID:
閻魔の事や、ここが別の次元で私達の世界に自力で戻る方法は無い事など、なおさらベジータには信じられない……
そして信じたくも無い話だろうからな。

嘘で上手く言いくるめ、同盟を結ぶと言うのも一瞬頭をよぎったが……

ザーボン(……いや、駄目だな)


544:2012/07/15(日) 11:43:02.35 ID:
例えそれが成功したとしても一時しのぎにしかならず、近い内に必ずばれるだろう。そうなれば奴は結局暴れる。

そもそも今日居なくなる私が、ベジータと同盟を組んでどうなると言うのか。

勝てるかどうかわからないベジータとの戦いは出来れば避けたかったのだが……難しいようだ。


545:2012/07/15(日) 11:44:56.46 ID:
ザーボン「ふ……
信じないのは勝手だが、他に話す事も無いぞ?」

ベジータ「なら死ね!」

やはりこうなるか。仕方ない。

だが──


ザワザワ。


ここは町中だ。ベジータの、地球では浮いた格好やTPOをわきまえない声量等で野次馬が集まってきているし、
何より退避させたとは言ってもまだ大して時間が経っていない為、ムギお嬢様と唯も気になる。


546:2012/07/15(日) 11:47:01.60 ID:
ザーボン「場所を変えるぞ」

ベジータ「好きにしろ。どっちにしろ変わらんがな」

よし。これでムギお嬢様や唯、無関係な人々や建物に被害を出さずにすむ可能性が高くなった。

ザーボン「ではついて来い!」


ドンッ!


言って私は飛び立ち、ベジータも続く。

人前で舞空術など使いたくはなかったが、ここは仕方あるまい。

画像や動画が出回ったら、映画か何かの撮影だったと思って貰える事を祈ろう。


547:2012/07/15(日) 11:48:46.93 ID:


────────────────

以前見た地図によると、確かこの先に……

──あった。島だ。


スタッ!


私とベジータは、海の真ん中に浮かぶ島に降り立った。

ザーボン(ここは完全な無人島のはずだ)

ここならば被害は出るまい。


548:2012/07/15(日) 11:53:20.72 ID:
ザーボン「では……」


ボンッ!


ザーボン「始めるか!」

私は変身をし、構えた。

ベジータ「ふん……そう言えば前はオレ様が先制攻撃をしたんだったな。
今回は貴様から攻めさせてやるぜ」


549:2012/07/15(日) 11:57:31.53 ID:
しかし余裕の笑みを崩さないベジータは、構えすら取らない。

ザーボン(……不気味だな)

こいつは度を過ぎた自惚れ屋だが、決して馬鹿ではない。

相手の実力がわからない場合はその過剰な自信で自滅する事もあるみたいだが、敵の力がわかっていたらそのような事は無い。

実際あの……私が殺された時の戦いでは、私に油断があったにせよ、策を使った先制攻撃で私に大きな手傷を負わせたではないか。

それが致命的な差となり、私は敗れた訳だが……


550:2012/07/15(日) 12:00:14.61 ID:
なぜこいつはこんなに舐めた態度を取るのだ?

構えすら取らないのは格下を相手にする時の余裕であって、さすがに作戦とは思えないのだが……

ベジータ「へっ。どうした?
来ないのか!?」

──ええい! 考えていても時間の無駄か!

あの時の戦いを見たら、私と奴の戦闘力はほぼ同じ。

ただ単純に、一回勝利したから自惚れて油断をしているだけなのだ。

……そう信じるしかない。


551:2012/07/15(日) 12:01:06.31 ID:
ザーボン「良いだろう。後悔するが良い!」


バッ!


私は飛びかかり、拳を何度か撃ち込む。

しかし、まったく当たらない。


552:2012/07/15(日) 12:02:20.17 ID:
ベジータ「ふん」

……それだけならまだ良かった。

ザーボン(な、何だと!?)

ベジータが避けている動きそのものが見えないのだ。


ビュッ、ビュッ、ビビビビッ!!


私の目には、奴は最初の構えすら取っていない体勢のままに見える。


553:2012/07/15(日) 12:03:22.61 ID:
ザーボン(なぜ当たらない!?
い、いや、それよりもどうやって避けているのだ!?)

ベジータ「当ててみるか?」

!?

ベジータが言った。余裕の笑みを崩さぬまま。


555:2012/07/15(日) 12:06:16.13 ID:
ザーボン「舐めるなッッッ!」


ガッ!


私の左フックが、ベジータの首の横に直撃した。


ドガッ、ガガッ、バキッ!!!


そのまま右ストレート、左脚中段横蹴り、上段横蹴り、右飛び膝蹴りと繋げる。


バッ!


556:2012/07/15(日) 12:08:45.38 ID:


ザーボン「エレガント・ブラスター!」


ズオッッッッッッ!!!


そして飛び膝蹴り後の着地を待たず、左手を右腕に置き、一瞬で放てる中では最強の必殺技を撃った。


557:2012/07/15(日) 12:10:29.43 ID:


バッ、スタッ。


土煙が舞う中私は後ろに飛び、距離を取る。

私がベジータの前で初めて変身したあの時は弾き飛ばされてしまったが、今のは間違いなく直撃したはずだ。

やがて土煙が晴れ、そこには……


558:2012/07/15(日) 12:11:33.73 ID:
ザーボン「!」

無傷のベジータが立っていた。

ベジータ「はっはっは! それで全力か? ザーボンさんよ!」

ザーボン「…………」

やはり……

薄々とは気付いていた。ベジータはさらに強くなっている。

あの時とは比べ物にならない程に。


559:2012/07/15(日) 12:13:29.26 ID:
ザーボン(どうする……どうすれば良い!?)

私には奴の動きが見えず、あれだけ攻撃を『当てさせて貰って』もダメージは無い。

もはや、策かどうとかと言う次元ですらないのだろう。

ベジータ「次はこっちから行ってや」


ビッ。


ベジータ「──ろう」

声は途中で、後ろから響いた。


560:2012/07/15(日) 12:14:29.80 ID:
ザーボン「!!?」


ガッ!


ザーボン「っ!」

振り向く間も無く、背後からベジータが私を空中へと蹴り上げた。

ザーボン(い、いつの間に後ろを取られたのだ!?)

空中で何とか体勢を立て直し、地上に視線をやる。


561:2012/07/15(日) 12:16:13.60 ID:
ベジータ「後ろだバカめ!」


ドガッ!


ザーボン「ぐあぁぁっ!」


ドズゥゥゥン!!


またも背後からの攻撃に、私は地面へと叩きつけられた。


562:2012/07/15(日) 12:17:05.31 ID:
ザーボン「ぐ……っ!」

ベジータ「はっはっは! 良いザマだな!」

空中で勝ち誇るベジータ。

──むっ? この位置は……

……こ、これに賭けるしかない!


563:2012/07/15(日) 12:20:21.32 ID:
ザーボン「ベジーターーーーッ!!!!
いくら貴様が強いと言っても、これをまともに受け止める勇気があるかーーーーーっ!!!」


ぐぐっ……


叫びながら、私は全身に力を溜める。

ベジータ「ほう? 面白い。
やってみやがれ! 何だか知らんが受けてやるぜ!」


564:2012/07/15(日) 12:21:55.83 ID:
よし、挑発は成功だ。

この技は完成までに少々時間がかかるし、地球へのダメージを考えたらベジータの位置も考慮しなければならない。

つまり、今が最大の──そして恐らく最後のチャンス。

ザーボン「ふっふっふ……後悔するなよ!」

ベジータ「させてみやがれ!」


565:2012/07/15(日) 12:23:04.91 ID:
ザーボン「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


ベジータ「……ふん」

……よし、出来た。

頼むぞ、効いてくれ。この技に私のすべてを込める。


566:2012/07/15(日) 12:26:42.90 ID:
ザーボン「エレガント・バスタァァァァァァァァァァッッ!!!」


ゴウッ!


私の魂を持って行け!

ベジータ「──!」


ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!


567:2012/07/15(日) 12:30:55.84 ID:


──手応えはあった! 間違いなく当たったはずだ!

ザーボン「はぁ、はぁ、はぁ……」

……そう言えばこの技を使ったのは随分と久しぶりだな。

ジースと組んでフリーザ、サウザーと戦った時以来か。

奥の手を使わなければならないような相手はずっと出てこなかったし、現れたと思ったら使う間も無く殺されてしまった。


568:2012/07/15(日) 12:32:42.45 ID:
だからこそこれだけ戦闘力に差があっても、
力を溜める間を稼げ、こうして当てる事さえ出来れば何とかなるのではないかと言う希望を抱けたのだが……

ザーボン(昔とは違う、今の私の戦闘力での一撃なら……!)

だが、そんな僅かな希望は打ち砕かれた。


569:2012/07/15(日) 12:34:13.41 ID:
ベジータ「…………」

激しい光と煙が消えた空には、ベジータが変わらずに存在していた。

──いや、唯一片腕を軽く上げて防御をしたような体勢になっている所だけ変わっている。

だが、それだけだった。


スー……

スタッ。


ベジータが地上に降りて来る。


570:2012/07/15(日) 12:36:51.39 ID:
ザーボン「ぐ……」

ベジータ「くっくっくっ。
やるじゃないか。正直驚いたぜ。
あんな技を隠し持っていやがったとはな」

ザーボン(あ、あれでも通用しないのか……)

ベジータ「油断している所を直撃出来さえすれば、変身前のフリーザにダメージを与える事も出来たかもな?
──くっくっく。
まあ、撃つまでに時間がかかる上、別に受けずに避けるなり弾き飛ばせば良いんだ。
そのレベルの奴相手にそんな事、実戦ではまず不可能だろうがな」


571:2012/07/15(日) 12:39:11.20 ID:
ベジータが一歩、二歩と近寄って来、私はそれに合わせて後ずさりする。

ザーボン(ぐ……!)

ベジータ「だが、戦闘力を抑えすぎたまま防御もせずに受けていたら、オレもかすり傷程度は付いていたかもしれん。
褒めてやるぜ」

変わらぬ奴の笑み。

……あれでもまだ力を抑えていたと言うのか……


572:2012/07/15(日) 12:44:40.38 ID:
──ん? 待てよ。こいつはさっき……

ザーボン「待て。貴様は『変身前のフリーザ』と言ったな?」

ベジータ「? ああ」

ザーボン「そうか……貴様は変身したフリーザと戦ったのか」

ベジータ「……!」

この戦闘の中で、初めてベジータの顔色が変わった。

……と言う事はその戦いで殺されたのか……


573:2012/07/15(日) 12:47:09.82 ID:
私はフリーザが変身してどんな姿になるか、どれだけ強くなるかは知らない。

だがあの大怪物がわざわざ変身したと言う事は、
最低でもベジータは、変身前のフリーザと多少なりとも対抗出来る力があると考えるのが自然だろう。

……勝てる訳がない。私は変身前のフリーザの強さにすら足元にも及ばないのだ。


574:2012/07/15(日) 12:50:13.92 ID:
それなのに、フリーザを変身させるほどの戦闘力を持つ相手だと……!?

ザーボン(だ、だが、諦める訳にはいかん!)

気が付いたら、

ザーボン「!」

ベジータが目の前に居た。


ドゴッ!


ザーボン「ぐはっ!」

強烈なボディーブロー。


575:2012/07/15(日) 12:51:04.84 ID:
そして……

ベジータ「ずあっ!!!!!」


ズァウォッ!!!


爆発波。

ザーボン「!!!!!」

ベジータを中心とした爆発の衝撃波が、私を吹き飛ばした。


576:2012/07/15(日) 12:52:32.38 ID:


────────────────


ズザァァァァァッ!


ザーボン「……う……?」

何だ? どうなったのだ……?

視界の先には青い空。耳には何やら喧騒。

──そうか、私は……


577:2012/07/15(日) 12:54:17.92 ID:
いかん。立ち上がらなくては。戦いはまだ終わってはいない。

……体が動かん……


ぐいっ!


突然強い力で引っ張られる感覚がして、上半身が浮き上がった。

それで視点が変わる事によりわかった。

ここは町だ。少し離れた周りにはかなりの数の野次馬。そして私の胸ぐらを掴んでいるベジータ。


578:2012/07/15(日) 12:56:15.11 ID:
ザーボン(なるほど……先程の引っ張られる感覚の正体はこれか……)

ベジータ「おい、さっさと話しやがれ!
オレはまだまだ強くなる! フリーザよりも、カカロットよりも!
そしてあいつらをぶっ飛ばしてやる!
その為にはこんなザコしか居ない星なんぞにいつまでも居られるか!」

……だ、駄目だな。戦闘力の差もさる事ながら、もはや体も満足に動かないのだ。


579:2012/07/15(日) 12:57:43.90 ID:
やはりどうやっても戦って勝てる相手では無い。

こうなったらこれも絶望的な可能性だろうが、私の話術で上手く切り抜けるしかない。

ザーボン「……っ……」

しかし、話そうとしても声が出なかった。

ベジータ「……まだ口を割らないつもりか?」

違う。喋りたくても喋れないのだ。


580:2012/07/15(日) 12:59:42.70 ID:
ダメージは思った以上に深刻らしい。

ザーボン(……ムギお嬢様、唯、皆……)

気持ちが切れそうになったその時、


『ザボちゃんっ!』

『ザーボンさんっ!』


突如聞こえてきたのは、よく知っている声だった。


581:2012/07/15(日) 13:02:08.47 ID:
──まさか!?

二人は野次馬をかき分け、凄い勢いで走り寄って来る。

ザーボン(な、なぜ二人がここに!?)

しかしよく見たら、ここは先程まで彼女達と歩いていた町ではないか。

あの爆発波で、私はここまで飛ばされて来ていたのか……


582:2012/07/15(日) 13:03:58.32 ID:
唯「ひ、ひどい!」

ベジータ「ん?」

紬「どいて下さいっ!」


ドンッ!


ムギお嬢様がベジータを突き、私の胸ぐらを掴んでいた手を離させる。

その隙に、唯が私の体を支えてくれた。


583:2012/07/15(日) 13:05:29.70 ID:
ザーボン(ば、馬鹿! 殺されるぞ!)

言おうとしたが、やはり声は出ない。

ベジータ「てめえらは、さっきザーボンと一緒に居やがった……」

紬「なんなんですか貴方っ!」

唯「ひどすぎるよっ!」


584:2012/07/15(日) 13:06:30.40 ID:
ザーボン(や、やめろ……っ)

ベジータ「……ふっふっふ。良い事を思い付いたぜ」

ザーボン・紬・唯『!?』

ベジータの笑みがより邪悪な物になったのを見て、私達三人は体を強張らせる。

ベジータ「──だがその前に……」

と、奴は私達から視線を外し、周りの野次馬達を見回した。


585:2012/07/15(日) 13:07:38.33 ID:
ザーボン「?」


ビッ!


ベジータが右手人差し指と中指を合わせ、右腕を下から上へと突き上げた。

……まずい!


ドンッッッ!


紬・唯『!!?』

その直後、周りの地面からドーナツ状の激しいエネルギー波が吹き上がった。


586:2012/07/15(日) 13:08:43.33 ID:
ザーボン(馬鹿な! 周りには無関係の人間達が……)

やがてエネルギー波が収まり、地面には底が見えないほどの大穴が空いていた。

──私とムギお嬢様、唯にベジータ……

そして野次馬との間に。


587:2012/07/15(日) 13:10:12.74 ID:
ザーボン(よ、よかった……被害者は出ていないようだ……)

私が安堵のため息を吐いた時、ベジータが叫んだ。

ベジータ「おいクズ共! 粉々になりたくなければ消え失せやがれ!
次はブッ飛ばすぞ!」


『ワアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!』


ベジータの一喝で、野次馬達が全員蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。


588:2012/07/15(日) 13:11:56.02 ID:
ベジータ「くっくっく。これでやっと静かになったぜ」

唯「…………」

紬「こ……こ、これは???」

さすがの二人も顔色を失っている。

紬「う、うふふ。
こんな物を見せられたら、ますますザーボンさんに以前聞かせて貰ったお話、疑いようが無くなりましたね」


589:2012/07/15(日) 13:12:53.09 ID:
ベジータ「さあ女共、こっちへ来やがれ!」

ザーボン「!」

紬・唯『!?』

ザーボン「な、何の……つもりだっ……!」

まだ立ち上がる事も出来ないが、今度は何とか声が出た。少しは回復してきているらしい。


590:2012/07/15(日) 13:13:43.05 ID:
ベジータ「決まっているだろう? そいつらを人質に取ってやるのさ。
……いや、人質なんざ一匹で良いな。
片方はコナゴナにしてやるぜ」

紬・唯『!』

な、何だと!?


591:2012/07/15(日) 13:15:21.42 ID:
ベジータ「さあ、それが嫌なら──」

ザーボン「うおおおおっ!」


ドウンッ!


……不思議な物だ。

この二人がベジータに捕まる。そしてどちらかが殺される……

それを考えた時、言う事を聞かなくなっていた私の体が反射的に動いていた。

ザーボン「ふ、二人共っ、私に掴まれ!」

ベジータにエネルギー弾を撃った後、私はムギお嬢様と唯を抱えて飛び立った。


597:2012/07/22(日) 13:38:42.99 ID:


────────────────

無我夢中で飛び続け、やがて私は力尽きた。


ドシャァッ!


ザーボン「ぐっ……」

紬「ザーボンさんっ!」

唯「ザボちゃんっ!」


598:2012/07/22(日) 13:40:53.27 ID:
ザーボン(こ、ここは……)

私が地球に送られた時、最初に立っていたあの森林……いや、山だった。

唯「大丈夫!? ねえっ、しっかりして!」

ベジータと離れられ、かつ彼女達が側に居てくれる事で多少落ち着いたのか、私はここに来てようやく自分の体の様子に気付いた。

服はあちこち破れていて、肌は血に染まっている。恐らく髪の毛もボサボサだろう。


599:2012/07/22(日) 13:42:32.23 ID:
そして、変身が解けていた。

私の変身は維持に消耗があるのだが、それは普段なら気にも止まらない程度の本当に極々微量な物だ。

ザーボン(それなのにこのザマか……
大怪我をしているのはわかっていたが、ここまでとは)

タイムリミットが来るよりも先に、私は再び死んでしまうのかもしれんな……


600:2012/07/22(日) 13:44:22.75 ID:
紬「あっ、わ、私ばんそうこう持ってますっ!
小っちゃいけど、せめて……」

ザーボン「いや、ありがたいが私の事は気にしないで……」

ベジータ「──ムダな事をしやがるぜ」

ザーボン「!?」

紬「っ!」

唯「ひっ!」


601:2012/07/22(日) 13:46:00.29 ID:
ベジータ「逃げられると思ったのか?」

木々の影から現れたベジータは、ゆっくりとこちらに近付いてくる。

ザーボン「ふ、二人共逃げろ! 逃げるんだ!」

私は力を振り絞り、立ち上がった。

体が悲鳴を上げるが、そんな事に構ってはいられない。


602:2012/07/22(日) 13:48:40.24 ID:
紬「でも……でもっ!」

ザーボン「大丈夫だ! ここは私が何とかするからっ……!」

唯「む、無理だよっ!」

……確かにどちらにしろ、ベジータがその気なら逃げられはしない。

もはや私には、空を飛ぶ力すら残って無いのだから。


603:2012/07/22(日) 13:52:36.59 ID:
……そうか。『貴女』はあの時、こんな気持ちだったのですね。

ザーボン(これまでも頭ではわかっていたつもりだったけど、こうやって体験・実感してみると違うなあ。
やっぱり貴女は凄いや)

不思議と、私の口元には笑みが浮かんでいた。


604:2012/07/22(日) 13:54:08.40 ID:
ベジータ「何をゴチャゴチャ言ってやがる!
そいつらに痛い目見せたくなかったら、さっさと……」

ザーボン「待ってくれ!」

ベジータ「……ほう?」

ザーボン「た、頼む、助けてはくれないか!?」

ベジータ「ふん……また命乞いか?」


605:2012/07/22(日) 13:55:45.27 ID:
ザーボン「そうだ!
私はどうなっても良い!
だ、だが、この二人だけは助けてやっては貰えないか!?」

紬・唯『!?』

ベジータ「なに?」

ザーボン「何でも言う事を聞くし、また私の命が欲しいと言うのなら好きにしろ!」


606:2012/07/22(日) 13:58:59.22 ID:
ベジータ「ほう? 随分と殊勝じゃないか。
なら……」

ザーボン「何だったら、土下座でも何でもする!
ほら、この通──っ!?」


ドザッ!


土下座をする為に膝を曲げようとしたが、その瞬間私は倒れこんでしまった。

その時の体重を支える力すら、今の私の脚には無かったのだ。


607:2012/07/22(日) 14:02:07.60 ID:
唯「ザボちゃん!」

そんな私を見て、唯とムギお嬢様がお互いの手を取りつつ、私をかばうように前に立った。

ベジータ「バカが。くだらん事をしやがる。
いいか、貴様は……」

紬「やめてっ! お願いですからザーボンさんにこれ以上酷い事しないで!」

二人は声も掠れているし、足もガクガクと震えている。

誰かを守る為に、絶対に勝てない・恐ろしい相手に勇気を振り絞って立ち向かう恋人達。

その姿は、言葉では言い表せられない程……


608:2012/07/22(日) 14:02:57.90 ID:
美しかった。


609:2012/07/22(日) 14:04:33.17 ID:
そうだ。これこそが私が彼女達を美しいと思う一番の理由。

もちろん外見や雰囲気もあるが、こう言う高貴な魂を持っているからこそそれはより眩く光る。

『あの人』にも負けない、真の強さと優しさを兼ね備えた、気高く高潔な美しさ。

私がずっとずっと憧れていた心。


610:2012/07/22(日) 14:06:23.77 ID:
ベジータ「てめえら……」

ベジータが、怒りの表情で凄まじい殺気を放ってくる。

……やはり無理だったか。

当たり前か。ベジータに情など通用しない。

初めから泣き落としなど期待出来なかったのだ。

……いずれにしても、本当の意味ですべてを理解した私が、いつまでも彼女達に見惚れている訳にはいかん。


611:2012/07/22(日) 14:08:26.98 ID:
自爆。

最後の手段だが、逆に言うとまだ手は残っているのだ。

本当にすべてが終わってしまうまで、決して諦めんぞ!

私も、最後の最後まで自分に出来る事をやってやる。

そして必ず君達を守ってみせる!

ザーボン(いくぞベジータ……!
これが私の最後の力だ!)


612:2012/07/22(日) 14:10:30.90 ID:
そう覚悟を決めたその時、

ベジータ「いい加減オレ様の話を聞きやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

ザーボン・唯・紬『!!!』

ベジータの怒号が辺りに響き渡った。


613:2012/07/22(日) 14:11:52.37 ID:
ベジータ「貴様ら内輪で勝手に話を進めやがって!
いいか!? オレ様はてめえらの事なんざどうでも良い!
これ以上痛い目見たくなったり、その女共を殺されたくなかったらここがどこかとか全部説明しやがれ!」

ザーボン「な……
まさか、そうすれば助けてくれると言うのか?」

ベジータ「何度も同じ事を言わせるな! オレは貴様らを殺す事そのものには興味が無い!」


614:2012/07/22(日) 14:13:26.60 ID:
こいつは嘘を吐くタイプではない。

と言う事はその通りなのだろう。

……待てよ? そう言えば、ベジータはなぜか最初人通りの多い町中から場所を変える事をあっさり了解した。

いや、それ自体は余裕の表れだったとしても、先程の野次馬を追い払った時や、
ここまで私を生かしたり、どちらかだけとは言えムギお嬢様や唯を人質に取ろうとしたり……

冷静に考えてみたら、どうにもベジータらしくない。


615:2012/07/22(日) 14:16:09.93 ID:
奴ならば、邪魔だと思った相手はもちろん、求める情報を持っている者が居ても、
話すつもりがなさそうなら無理に聞き出そうとはせずにさっさと殺そうとするであろう事は前述した通りだ。

人質を取るなど、さらに輪を掛けて違和感が強い。

……もしや……


616:2012/07/22(日) 14:17:30.79 ID:
私は何とか体を起こし、座り込んだ。

ザーボン「ぐ……っ。
ベジータ、お前まさか……迷っているのか?」

ベジータ「!?
何の話だ!」

ザーボン「人を殺す事を、だ」

ベジータ「何だと……!?」


617:2012/07/22(日) 14:19:25.60 ID:
ザーボン「な……何となくそんな気がしてな……」

ここまで言って私は咳き込んだ。

ムギお嬢様と唯が、そんな私の背中をさすってくれる。

ザーボン「ち、違ったか?」

ベジータ「……てめえらを殺す事自体は迷いなんか無い。
だが……気に食わんしムカつくが、どんどん強くなって行きやがるカカロットの野郎は、無闇に他人の命を取ったりは……
──!
チッ! 下らん話を……!」

ベジータは吐き捨てると頭を掻き毟った。


618:2012/07/22(日) 14:21:02.50 ID:
ベジータ「いいか! オレ様の言う事を聞きさえすれば、
オレ様が強くなる為にてめえらみたいなザコの命は助けてやろうと言っているんだ!」

正直、こいつが何を言っているのか私にはわからない。

だが、そうか……


619:2012/07/22(日) 14:22:20.54 ID:
ザーボン「ふ……はは、はははっ」

ベジータ「!?」

紬「ザーボンさん?」

唯「ザボちゃん?」

ザーボン「決めつけは良くないな。
初めからきちんと話していれば、こうも遠回りしなかったと言う事か」


620:2012/07/22(日) 14:24:53.92 ID:
ベジータ「チッ。
貴様は確かに頭が良いが、前オレを治療した時言い今回と言い、マヌケすぎるぜ!」

ザーボン「ふふっ。違いないな。
……ぐぅ……っ!」

座った状態を維持する事にも苦心し始めた時、ムギお嬢様と唯が体を支えてくれた。

ザーボン「す、すまない。
……では話そう……と言っても、町中で話した事は正しいのだが……」


621:2012/07/22(日) 14:26:20.32 ID:
ベジータ「まだ抜かしやがるか……!」

ザーボン「待て。異論があるなら最後まで聞いてからにしてくれ」

ベジータ「…………」

──取りあえず、今回は聞く態勢に入ってくれたようだな。

……いや、今のあいつと、再会した当初の禍々しいだけのあいつは少し違う。

私達の前に現れてすぐのベジータは、まともに会話が出来る感じがしなかった。

これは時間を置いたからこそか?

もしそうなら、遠回りしたようでも実はこれで良かったのかもしれない。


622:2012/07/22(日) 14:27:26.00 ID:
ベジータ「……!」

──突然、ベジータの体が透け始めた。

ザーボン「!?」

ベジータ「何だ!?」

唯「???」


623:2012/07/22(日) 14:29:05.65 ID:
紬「こ、これもザーボンさん達の技……?」

ザーボン「い、いや、違う。
おい貴様、どうしたと言うのだ!?」

ベジータ「オレが知るか!」

などと話している間にもベジータの肉体はどんどん薄くなり、もはや奴の体を通して向こう側が透けて見える程だ。


624:2012/07/22(日) 14:31:00.03 ID:
ベジータ「く、くそったれが!」

奴は必死にもがいているが、どうにもならないようだ。

このままだとベジータは消えてしまうのだろうか?

ザーボン(……!)

だとしたら、私は一つ、あいつに言わなければならない事がある!

ザーボン「ベ、ベジータ!」

ベジータ「!?」


625:2012/07/22(日) 14:39:21.45 ID:
ザーボン「実際に手を下したのはフリーザだったのではあるが、惑星ベジータを滅ぼすよう奴に進言したのは……
惑星ベジータが滅びる大元のきっかけを作ったのはこの私なのだ!
決して、巨大隕石のせいなどで消滅したのではない!
そ、その……すまなかった」

そうだ。これだけは言っておかねばならない。

今更こんな話をしても仕方ないのだろうが、それを決めるのは謝罪を受ける方だし、
何より謝罪する機会があるのにそれをしないのは間違いなのではないだろうか……?


626:2012/07/22(日) 14:49:22.04 ID:
ベジータ「…………」

奴は静かに見つめてくる。

……やはり余計な事をしただけだったか……?

ベジータ「……ふん。
そう言えば貴様、さっきの無人島の時と言い今と言い、フリーザの野郎を呼び捨てにしているじゃないか。
またオレに取り入ろうと言う訳でもなさそうだし、ザーボン様ともあろうお方が一体どうしたんだ?」

ザーボン「それは……
……色々あってな」


627:2012/07/22(日) 14:50:25.27 ID:
ベジータ「……まあそんな事はどうでも良い。
ドドリアからも惑星ベジータの事は聞いたが……」

そ、そうだったのか。

ベジータ「勘違いするな。
オレには星の仲間や親たちの事などどうでも良い。
今オレが興味あるのは、カカロットやフリーザよりも強くなる事だけだ!」

ザーボン「ふっ……そうか」


628:2012/07/22(日) 14:52:25.55 ID:
確かにベジータはこう言う奴だった。

カカロットと言うのが誰なのか、私は知らない。

だがフリーザの名前と並べたと言う事は、それだけ凄い強者であり、奴にとってはフリーザレベルの宿敵でもあるのだろう。

唯「あっ……」

そしてベジータの姿が完全に──消えた。


629:2012/07/22(日) 14:54:10.22 ID:
ザーボン「…………」

紬「……今の人はどこに行ったんですか……?」

ザーボン「わからない。私もこのような事は初めてだ」

……いや、待てよ? もしや……

唯「──あっ! そんな事よりっ!」


630:2012/07/22(日) 14:55:15.58 ID:
紬「!
そ、そうねっ。
ザーボンさんを病院に連れていかないと!」

唯「救急車っ!」

ザーボン「……ああ、そうだな」

正直、力を使いすぎた。病院が近くにあって数分もかからずにたどり着けるのならわからないが、恐らくもう助からないだろう。

こうして何とか座っている体勢で居られるのも、彼女達に支えて貰っているからなのだ。

だが、どちらにしろ私は今日消えゆく。

ならばこれ以上心配させるような事は絶対にしないし、言わない。


631:2012/07/22(日) 14:56:54.75 ID:
紬「わっ! 圏外~……!」

唯「ああぁ……私も……」

二人は動けない私の代わりに、私のスマホも確認してみたが、同じだった。

唯「えっと、えっと!? どうしようか!?」

紬「……よしっ、私たちでザーボンさんを運びましょうっ!」

唯「それだ!」


632:2012/07/22(日) 15:00:59.34 ID:
ザーボン「ま、待て待て……
いくら二人居て、ムギお嬢様が……腕力に自信があると言っても、そ、それは無茶だ」

紬「頑張りまっす!」

唯「私だって、日々ギー太に鍛えられてるから大丈夫っ!」

困ったな。結局は迷惑を……

……む!?


633:2012/07/22(日) 15:02:12.22 ID:
紬「!!!」

唯「ザボちゃんの体が……」

そう。私も先程のベジータと同じように、体が透け始めた。

……ああ、やっぱりそうだったのか。

紬「え、えっ??? どうして? どうなってるの?」

唯「ザ、ザボちゃんも消えちゃうの!?
そんなの嫌だよっ!」

ザーボン「……いや、心配するな。
も、問題無いよ」


634:2012/07/22(日) 15:03:17.05 ID:
唯「えっ!?
だ、だって……」

ザーボン「実はさっきベジータが消えた事を『知らない』と言った、のは……嘘だ。
こ、これはフリーザ軍での長距離移動の方法でな。
簡単に言うとワープみたいな物だ」

紬「ワ、ワープ?」


635:2012/07/22(日) 15:04:17.07 ID:
ザーボン「そうだ。
フリーザ軍の技術など……二度と使いたくはなかったのだが、
で、電話が繋がらないならこうして病院に行った方が良いと……思ってな」

紬・唯『…………』

二人の様子を見るに、まったく信じてはいない。

それでも私は笑顔で言う。


636:2012/07/22(日) 15:05:40.38 ID:
ザーボン「は、ははは。そんな顔をするな。
宇宙は広いのだ。こう言う技術もあるのだよ」

唯「……ホント?」

ザーボン「もちろんだとも」


637:2012/07/22(日) 15:07:23.26 ID:
唯「ホントだよね!?
この後私達の演奏聴いてくれるんだよね!?
ちゃんと……
ちゃんと戻ってきてくれるんだよねっ!?」

紬「学園祭の後の皆での打ち上げだって!
顧問になってくれる約束だって!
本当ですよねっ!?」

……すまない。

ザーボン「当たり前だ。
さ、さっきの奴には歯が立たなかったが……
私が地球人離れに強いのは知っている……だろう?
だから、こ、こんな傷、すぐに治してくるさ」


638:2012/07/22(日) 15:08:03.60 ID:
唯「じゃあなんでそんな泣きそうな顔してるのさ……」

ザーボン「!?」


639:2012/07/22(日) 15:09:47.14 ID:
し、しまった!

ザーボン「ふ、ふふふっ、これはすまな……かった。
傷が痛くてな。情けない話、だ」

紬「…………」

ザーボン「それよりほら、き、君達は先に学校へ向かっていてくれ。
必ず間に合わせる……よ」

唯「…………」


640:2012/07/22(日) 15:11:04.85 ID:
ザーボン「皆の新曲、楽しみだなあ……」

もはや薄れすぎて、自分でも自分の体がよく見えない。

いよいよ時間の猶予が無くなってきたのだ。

ザーボン「では、また後でな」


ニコッ。


今度はちゃんと笑えただろうか?


641:2012/07/22(日) 15:12:13.43 ID:
そして視界がぼやけ……

紬「あっ!」

唯「ザボちゃんっ!」

紬「ザ……」

……………………

………………

…………

……


642:2012/07/22(日) 15:13:40.50 ID:


────────────────

私は、何も無い……ただただ真っ白なだけの空間に立っていた。

ザーボン「……閻魔、私の声が聞こえるか?」

閻魔『うむ』

姿こそ見えないが、閻魔の低い声が響いてきた。

この空間だと彼と話せる。なぜかわかったのだ。


643:2012/07/22(日) 15:18:11.52 ID:
ザーボン「私はこのまま地獄に行くのだろうか?」

閻魔『そうだ。もはや私の所でする事もないからな。
直行して貰う』

ザーボン「だが、地獄へ着くまではまだ時間があるようだな。
それまで少し質問して良いか?」

閻魔『構わぬよ』


644:2012/07/22(日) 15:21:36.95 ID:
ザーボン「では……
あれからムギお嬢様達はどうなった?」

閻魔『前に説明した通りだ。
もはやあの地球は、そなたが居なかった場合の星へと再構成された。
そなたとベジータの戦いで破壊された、地面や自然なども元に戻っておる』

ザーボン「そうか。
では、私の事で彼女達を悲しませたり、約束を破って怒らせてしまうとかは無いのだな?」

閻魔『そうだ』

……良かった。


645:2012/07/22(日) 15:24:40.89 ID:
ザーボン「しかしベジータとは驚いたよ。
あれも貴様が?」

閻魔『そうだ。
あやつを送り込んだのも、そなたと目的は同じ。
そなたも含めたあの環境なら、罪の償いが期待出来たからだ』

ザーボン(私も含めた?)

閻魔『ただ、あのタイミングで蘇ったのだけは予想外だったが』

ザーボン「蘇った……だと?」


646:2012/07/22(日) 15:27:50.38 ID:
閻魔『そなたも知っている、永遠の命をも手に入れられる力でな』

ザーボン「……ドラゴンボールの事だな」

あれには死者を蘇らせる事まで出来るのか……

何でもありだな。

閻魔『うむ。やはりあの力は反則みたいな物だ』

そう言って閻魔は笑う。


647:2012/07/22(日) 15:31:51.06 ID:
ザーボン「ふふ、では貴様の計算も狂ったな。
私も軽率な判断をして、無駄な戦闘をしてしまったし」

閻魔『いや、それに関しては期待通りだ』

ザーボン「何?」

閻魔『あの時そなたがあの行動を取ったからこそ、
気が付いたら見知らぬ地に飛ばされていた上、そなたと同じく記憶の一部を失っていて、混乱していたベジータに心の余裕が出来た。
それだけ時間が出来、多少なりとも暴れて気を晴らす事が出来た訳だからな』

ザーボン「…………」


648:2012/07/22(日) 15:36:32.46 ID:
閻魔『もし最初から、『元の世界に帰る方法は無い』などと話していたら……
あの状況とあやつの性格ならば、暴走して虐殺行為を行っていただろう』

……確かに。

となると、やはり私の早とちりは遠回りではなく正解だったのだな。

閻魔『例えすぐにそうはならなくとも、力づくで宇宙船を奪うか作らせるか……
しかし、あの地球にはベジータが求める宇宙船そのものはもちろん、作る事が出来る技術も無い。
となれば、最終的な結果は同じだろう』

なるほど……


649:2012/07/22(日) 15:39:47.26 ID:
閻魔『──予定では、時間を置いた事で冷静になったベジータは、
そなたを橋渡しにして例の少女達と関わる事になっていたのだが……
まあ仕方ない』

確かに、出来る事ならばベジータとの事は、戦闘をせずに話し合いで収められないかと思っていたし……

彼女達なら。

ザーボン(あの素晴らしくも美しい皆なら……)

ベジータをも変えてくれたかもしれない。


650:2012/07/22(日) 15:42:22.92 ID:
ザーボン「それと、これは半分皮肉なのだが……
よくもまあ、ムギお嬢様のような少女を見付けたものだ。
初めて会った時は本当に驚いたよ。遠い遠い昔を思い出す程にな。
……まあ、感謝しているのだが」

閻魔『一つの次元では確かに難しいが、いくつもの次元を見れば……
魂以外は同じである、別人と言うのは存在するものだ』

ザーボン「ふっ。そうか……」


651:2012/07/22(日) 15:46:17.88 ID:
──空気が変わった。どうやら地獄は近いらしい。

ザーボン「……なあ、私は上手くやれたか?」

閻魔『うむ。立派だったぞ。
立派に……出来る限りの幸せを、出来る限りの存在に与えた。
もちろん、それで罪のすべてが消えた訳ではないがな』

ザーボン「ああ、それは構わんよ。
出来る事はやり尽くせたと言うだけで私は満足だ」

欲を言えば皆の新曲を聴きたかったが、それは贅沢だな。


652:2012/07/22(日) 15:52:01.61 ID:
閻魔『心配はいらぬ。そなたは罪と徳と、差し引いたそのままを受けるだけ。
命ある時だけを見れば、理不尽と思う事はあっただろうが……
真に長い目で見れば、すべては平等だ。
ただの一毛すら間違いは無い。
永遠に続く幸せは無いが、それと同じで苦しみもいずれ終わる』

ザーボン「ふっ……」

地獄と言う場所には行った事が無い為、特に恐怖と言うのは感じない。

だが、想像を絶する苦しみが待つであろう未知の場所へ行く不安はある。

閻魔はその不安を軽減させようとしてくれているのかもしれない。


653:2012/07/22(日) 15:55:27.27 ID:
閻魔『それに、再構成された為に彼女達は何も覚えていなくとも……
深い深い魂の奥底では、きっとそなたの存在が刻まれている事だろう』

ザーボン「……そうか」

──わかる。地獄は目の前だ。

閻魔『では、な』

ザーボン「……ありがとう」

真っ白な空間が暗闇に侵食され始め、まるで獰猛な生き物のように私を襲う。


654:2012/07/22(日) 15:57:31.03 ID:


澪『よし、良いぞ』

梓『私もです』

紬『こっちもOKで~っす♪』

唯『りっちゃん隊員っ、きんしゃい!』

律『よっしゃーっ! じゃあ行くぜ!
ワンツースリーフォーッ!!!』


655:2012/07/22(日) 15:58:37.58 ID:


深い深い闇が私を飲み込む前、放課後ティータイムの演奏が聴こえたような気がした。


656:2012/07/22(日) 16:01:48.25 ID:


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無限に続くかのような恐ろしい苦痛・絶望。

そんな永久に近い苦しみを、ザーボンは見事に耐え切った。

そうしてかつてザーボンだった魂は、彼が居たのとは別の次元の地球で……

とある美しい恋人達との間に、新しい命として転生する事になる。

しかし、それはまた別のお話。



完。




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