1:2013/01/24(木) 20:07:36.06 ID:
あるところに、5人の女の子がいました。

大人しいけれど、誰よりも優しい女の子、まどか。

おしとやかで、ちょっぴり寂しがりやな女の子、マミ。

元気いっぱいで、お調子者な女の子、さやか。

自分勝手だけれど、ほんとうは思いやりのある女の子、杏子。

そして、クールでどこか謎めいた女の子、ほむら。


ある日、彼女達は病気で寝たきりのおばあさんのもとへ、順番にお使いに行くことになりました。

おばあさんは、森の奥深くに建つお家に、ひとりで暮らしています。

「森の奥の家へ行くときは、決して道から外れないようにね」

女の子たちは、そのように言いつけられました。

森の中にはオオカミがひそんでいて、女の子たちが迷い込むのを待っているのです。

キュウべえ


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1359025655

2:2013/01/24(木) 20:08:28.86 ID:



――けれども。

女の子たちは、その言いつけを守れるのでしょうか?

森の誘惑に逆らえるでしょうか?危険に近寄らずにいられるでしょうか?

女の子たちは、昔話に語られる悲劇を、繰り返さずにすむのでしょうか?



3:2013/01/24(木) 20:10:34.24 ID:
最初にお使いを頼まれたのは、膝に乗せた真っ白なノートにらくがきをしていたまどかでした。

まどかはペンを動かしていた手を止め、椅子から立ち上がると、

バスケットにパンとワインを入れて、おばあさんの家へ続く道を歩き出しました。


10: :2013/01/24(木) 22:41:22.11 ID:

               GO TO 
          GRANDMOTHER'S HOUSE 


          AND STAY ON THE PATH. 


4:2013/01/24(木) 20:11:19.35 ID:
深い森に囲まれた道は、まっすぐにおばあさんの家へ続いています。

このまま歩いていけば、すぐにおばあさんの家へ着くでしょう。

赤いリボンで2つに結わえた髪を揺らしながら、まどかはのんびり歩いていきました。

まどか「私が大きくなったら一緒にお酒を飲もうって、ママが言ってたっけ。
    いつかそんな日がきたら、うれしいなって。……でも今はまだ、早いかな。」

そんなことを考えながら、ふと森へ目をやると、ちらりと何かが通り過ぎたのが見えました。

まどかはそれが気になって、つい道をそれて、森の中へ入ってしまいました。


5:2013/01/24(木) 20:13:07.44 ID:

――――――
――――
――

森の中は薄暗くて、まるで色が失われているかのようでした。

地面に咲く小さな白い花の輝きがあっても、森はなお暗く深く、

どこまでも続いているのではないかとさえ思えてきます。

まどかが花をつみながら森を進んでゆくと、ふたたび、目の前を何かがよぎりました。


6:2013/01/24(木) 20:14:53.97 ID:
短いけど、ひとまずここまで

このSSは、まどマギとベルギー製赤ずきんゲーム「the PATH」のクロスオーバー的ななんかです


8:2013/01/24(木) 20:17:36.36 ID:
それと、スレ立て&SS書きはこれが初めてなので、
行間とか書き方とかこんなもんでいいのかなとか、文章おかしくないかとか、ちょっと不安だったりします。
その辺アドバイスいただけたら、それはとってもうれしいなって。


15:2013/01/26(土) 21:56:09.21 ID:

それは、白い服を着た女の子でした。

白い服の女の子は、木々の合間を風のようにかけ回っています。

なんとなく、まどかはその女の子を追いかける事にしました。

森の中を走り回る女の子は、時どき、まどかを待つかのように足を止め、

まどかが追いつくと、ハグをしたり、いっしょに手遊び歌をしたりしました。

立ち止まって、追いついて、また走ってをくり返すさまは、さながら鬼ごっこのようでした。

そうしてふたり走っていると、やがてある場所で、女の子は走るのをやめました。


16:2013/01/26(土) 21:56:43.19 ID:

そこには、勉強机が置かれていました。

まどかは、その机の内側にあった椅子をひき、そこに座ってみることにしました。

まどか「勉強は苦手だなぁ。頑張っては、いるんだけど。
    私は、何をやってもいまひとつ……」

頬づえをついて、足をぶらぶらと揺らしてみます。

そうしてしばらくぼんやりとしていましたが、

まどかはひとつため息をつくと、立ち上がって椅子を机に戻しました。


17:2013/01/26(土) 21:58:30.22 ID:

寄り道はここまでにして、そろそろおばあさんの家へ行かないと。

まどかはそう思い、ふたたび森の中を歩き出しました。


まどかが歩きだすと、白い服の女の子もまた、ふたたび走り出しました。

女の子は、木々の向こうへ駆けてゆき、あっと言う間に見えなくなりました。


18:2013/01/26(土) 21:59:22.89 ID:

おばあさんの家へつづく道をめざして、まどかが歩いていると、

今度は、丸太の上にちょこんと座った、うす汚れたぬいぐるみを見つけました。

まどかはぬいぐるみを抱き上げると、汚れを軽くはらってやりました。

まどか「こんにちは、ぬいぐるみさん。こんなところでどうしたの?
    家族とはぐれちゃったのかな。」

まどかは、そのぬいぐるみがかわいそうに思えたので、バスケットの中に入れてやりました。


そしてまどかはみたび、森の中を歩き出しました。


19:2013/01/26(土) 22:00:43.18 ID:

いいかげんに寄り道はおしまいにして、おばあさんの元へいかなくちゃ。

まどかはそう思い、うす暗い森を歩いてゆきましたが、

いつのまにやらずいぶん奥深くまで来てしまっていたのか、

光さすあの道は、なかなか見えてきません。


まどかは、もといた道へ戻ろうと、必死になって走りましたが、

歩けども歩けども、走れども走れども、おんなじ景色が続くばかりで、

おばあさんの家へつづく道は、すっかり見えなくなっていました。


20:2013/01/26(土) 22:02:04.57 ID:

――――――
――――
――


もうどれくらい走り続けたのでしょうか。

ときおり息をきらしては足を休め、そのついでに、足元に咲いていた花をつみながら、

まどかは深い森の中を、ひとりさまよっていました。


21:2013/01/26(土) 22:03:09.53 ID:

走っては止まり、走っては止まりを、ひたすらにくりかえし、

まどかが、からだの疲れと、こころの不安をおぼえはじめたころ、

まっさらな光の向こうに、なにかが見えました。

そこへ向かえば安心できるような気がしたので、

まどかは光に向かって走り出しました。


22:2013/01/26(土) 22:03:44.84 ID:





……どこからともなく、獣のうなり声が聞こえていました。





27:2013/01/27(日) 20:25:13.56 ID:

――――――
――――
――


光の中を抜けると、少し開けた場所に出ました。

そこは暗い森の中とは思えないほど明るくて、あざやかな場所でした。


まどか「わあ……きれい……!」


そよ風が木の枝と葉っぱをゆらす音が聞こえ、

空からは、やわらかな木もれ日がふりそそぎ、

地面には、色とりどりの草花がみずみずしく茂っています。

まどかの目の前には、うつくしい花畑が広がっていたのです。



28:2013/01/27(日) 20:26:17.47 ID:

幻想的な景色に心をうばわれ、思わずあたりを見回してみれば、

さっきの白い服の女の子もそこにいて、かがみこんで花をつんでいました。

まどかも女の子にならって、近くに咲いていたうす紅色の小さな花を

ひとつふたつと、つみとりました。


まどか「きれいな花……。
    世界は、こんなにすてきなもので満ちあふれているんだ!
    ……なんて、思ってみちゃったりして。」


つみとった花たちを、まどかはバスケットの中に、やさしくていねいにしまいました。



29:2013/01/27(日) 20:27:19.52 ID:

そうしていると、まどかの近くで、可愛らしい鳴き声が聞こえました。

足元に目をやると、そこには黒い子猫が、ちょこんと座っていました。

子猫は、物欲しげにまどかを見上げています。

まどかは思わず頬をゆるませ、その子猫の喉元をやさしくくすぐってやりました。

すると、子猫はあごを上向きにして、心地よさそうに目を細めます。


まどか「もしかしたら、猫をなでるのが私の特技なのかも。
    とりあえず、この子は喜んでくれてるみたい。」


そうして、まどかは子猫を抱き上げると、頭や背中をなでてやったり、

ほっぺたをぺろぺろとなめられたりしながら、のんびりなかよく遊んでいました。



30:2013/01/27(日) 20:28:33.09 ID:



ふいに、風がごう、と吹きました。

まどかがほんの一瞬、風の強さに気を取られたとき、

黒い子猫はまどかの腕をすりぬけて、どこかへ向かって走ってゆきました。

まどかは思わず立ち上がり、子猫を追って走り出しました。



31:2013/01/27(日) 20:29:04.44 ID:





まどかは子猫を追いかけて、森の奥へ奥へと走っていきました。




35:2013/01/29(火) 17:06:32.73 ID:

――――――
――――
――


気がつくと。

まどかは、おばあさんの家のすぐ前の道で、あおむけに倒れていました。


いつの間にやらザアザアと雨が降り出しており、

あたりは森の中よりも暗く、すっかり色を失っています。


ふりそそぐ雨に濡れながら、まどかは重い体を起こし、

やっとの思いで立ち上がると、

だらりと力なく両腕を垂らし、

重たい足取りで、おばあさんの家へ向かいました。



36:2013/01/29(火) 17:07:45.30 ID:

――――――
――――
――


家に入ると、なにかがこすれるような、かすれた音が聞こえてきます。

家の中は薄暗く、ピンク色の灯りでぼんやりと照らされていました。

壁も床も、チェス盤のような四角い模様で埋め尽くされており、

天井でゆっくりと回るファンには、動物のぬいぐるみがひっかかっています。

ぬいぐるみの破けたおなかから、黒い綿がこぼれていました。

部屋の奥で、かんぬきや回転ハンドルをいくつも取り付けられたドアが、ひとりでに開きます。

まどかはおばあさんに会うために、奥へ奥へと進んでゆきました。



37:2013/01/29(火) 17:09:01.83 ID:

まどかは階段をのぼって、ドアの向こうへ進みます。

ガラス張りのせまい廊下が、奥へぐーんと伸びていきました。

ピンクの色の光に染まる、左右に張りめぐらされた透明なガラスの壁からは、

喉がやぶけたぬいぐるみが、それぞれのガラスにひとつずつ生えています。

ぬいぐるみのぱっくり開いた喉元からは、黒い綿がのぞいていました。

かすれるような音にまじって、誰かのうめき声が聞こえてました。



38:2013/01/29(火) 17:09:58.25 ID:

まどかは廊下のドアの奥の、暗桃色のダイニングキッチンを進みます。

誰もいないその部屋の、テーブルやキッチンには、さまざまな大きさの食器が置かれています。

どの食器にも多種多様な料理が、おいしそうに盛りつけられていますが、

どれも食べかけのまま放置され、すっかり冷めきっていました。

料理のならぶテーブルの下をくぐると、黒のしましまの絨毯がしかれた床には、

首のないぬいぐるみと、両腕のないぬいぐるみ、両足のないぬいぐるみが落ちていて、

それぞれの傷口からは、黒い綿がぼろぼろこぼれていました。

ざりざりとノイズの走る音がして、うめき声が少し大きくなりました。



39:2013/01/29(火) 17:12:10.25 ID:

まどかはさらに奥の部屋の、ぐねりぐねりとうねる段差を下ります。

ぐるぐる模様の天井には、鉄骨が複雑に絡み合いながら、ジグザグと渡されています。

からまり合う鉄骨の、そこかしこに散らばるぬいぐるみ達は、

どれも体がどこかしら欠けていて、ちぎれた首や肩や足から、その中身を溢れさせ、

四角い模様の広がる床へ、黒い綿をぽろぽろと落としています。

聞こえてくる誰かのうめき声が、どんどん数を増やしてゆきました。



40:2013/01/29(火) 17:13:47.70 ID:


まどかはドアの向こう側、天井に黒い椅子がはえた小部屋を通り抜け、

ひとりでに開いたドアの先、まっ暗でせまい廊下を進んでゆきます。

正方形の窓が交互に並んで、左右の壁に不気味なほどきれいな模様を作っていました。

わずかな窓の隙間から、暗いピンク色の光がもれています。

かすれる音はもはや聞こえず、うめき声だけが増えつづけていました。



41:2013/01/29(火) 17:15:51.78 ID:

そしてまどかは、いちばん奥の部屋にたどり着きました。


その部屋はいっとう暗くて、ピンク色の灯りも弱々しく、かろうじて部屋の中を照らしていました。

声もいちだんと強くなり、部屋はたくさんの人びとの痛みと苦しみの嗚咽で満ちています。

壁はドームのようにゆるりとカーブしており、やはり四角い模様で埋めつくされていました。

その中で、バラバラになったぬいぐるみ達が、いくつもいくつも黒い綿を散らしながら、宙をただよっています。

部屋のまん中には、黒いコールタールのようなものをしたたらせながら、ベッドがふわふわと浮かんでいました。



ベッドの中には、誰もいません。

まどかは、ベッドに向かって



42:2013/01/29(火) 17:16:19.10 ID:





               ドサッ





43:2013/01/29(火) 17:16:49.70 ID:

――――――――   ――
 ――――――――――――   ――――――――
――
     ―――――――                ―― ―



                   ――――――
                        ―――――――――――

   ―       ―――――――  ―――――――――――――
 ――             ――――――――――
                       ―――――――――――――


44:2013/01/29(火) 17:18:13.94 ID:

      空飛ぶ子猫
                飛び散る赤い色

              「助けたい」

           妖精のささやき
              手に入れた力

      「助けなきゃ」

      崩れた景色
       逆さまの舞台装置

「救わなきゃ」

           倒れた私
                  濁りきった宝石

             「救わなきゃ」

  「救わなきゃ」         「救わなきゃ」

    「救わなきゃ」     「救わなきゃ」 「救わなきゃ」
           「救わなきゃ」 「救わなきゃ」
  「救わなきゃ」            「救わなきゃ」
          「救わなきゃ」「救わなきゃ」
     「救わなきゃ」      「救わなきゃ」
 「救わなきゃ」 「救わなきゃ」   「救わなきゃ」 「救わなきゃ」
  「救わなきゃ」  「救わなきゃ」「救わなきゃ」 「救わなきゃ」
「救わなきゃ」「救わなきゃ」「救わなきゃ」「救わなきゃ」「救わなきゃ」
「救わなきゃ」「救わなきゃ」「救わなきゃ」「救わなきゃ」「救わなきゃ」
「救わなきゃ」「救わなきゃ」「救わなきゃ」「救わなきゃ」「救わなきゃ」


               割れる卵


             私が、救うんだ



45:2013/01/29(火) 17:18:57.25 ID:

   ―――――――――――――――
     ―――――― ―――――――――――――――――――
 ―――――――――――――  ――――――   ――――――――


     まどかの視界が、どんどん暗くなってゆきました――


 ――――――――――――――――――――――   ―――― ――
  ――――  ―――――――――――――――――――――――― 
 ――――――――――――――――――――――――――――――――


49:2013/02/01(金) 00:14:26.11 ID:

2番目にお使いを頼まれたのは、テーブルについてささやかなティータイムを楽しんでいたマミでした。

マミは白いティーカップを静かにテーブルに置き、すっと立ち上がると、

バスケットにパンとワインを入れて、おばあさんの家へ続く道を歩き出しました。



50:2013/02/01(金) 00:15:14.29 ID:

               GO TO
          GRANDMOTHER'S HOUSE.


          AND STAY ON THE PATH.



51:2013/02/01(金) 00:16:22.58 ID:

深い森に囲まれた道は、まっすぐにおばあさんの家へ続いています。

このまま歩いていけば、すぐにおばあさんの家へ着くでしょう。

くるりと巻いたおさげを揺らしながら、マミは優雅に歩いていきました。


マミ「グラスを片手に、優雅な夜のひとときを。
   ワインの似合う大人の女……憧れちゃうわ。」


そんなことを考えながら、ふと森へ目をやると、

小さな白い花がいくつか咲いているのが見えました。

あの花を摘んで持っていったら、きっとおばあさんは喜ぶだろう。

そう考えたマミは、つい道をそれて、森の中へ入ってしまいました。



52:2013/02/01(金) 00:17:19.93 ID:

――――――
――――
――


森の中は薄暗くて、まるで色が失われているかのようでした。

地面に咲く小さな白い花の輝きがあっても、森はなお暗く深く、

どこまでも続いているのではないかとさえ思えてきます。

マミが花をつみながら森を進んでゆくと、目の前に何かが見えました。



53:2013/02/01(金) 00:18:57.30 ID:

それは、白い服を着た女の子でした。

女の子のそばには、ちいさな蝶々が、細くて低い木に止まっており、

二枚の白くうすい羽を、ゆっくりと動かしています。


マミ「虫は苦手だけど、蝶は好きよ。
   リボンみたいで綺麗ですもの。」


マミが人さし指を差し出すと、蝶々はマミの指にふわりと飛び移りました。

しばらく蝶々を指に止まらせたあと、マミが人さし指をふわっと上げると、

それにあわせて、白い羽をした蝶々はふわっと飛び上がり、

ぱたぱたとはばたきながら、どこかへと飛び去ってゆきました。

ふたりはしばらく、蝶々が飛んでゆくのを見守っていました。

そして、白い蝶々がすっかり見えなくなった時、白い服の女の子は、急に走り出しました。

マミは、女の子についていくことにしました。



54:2013/02/01(金) 00:20:06.13 ID:

うす暗い森を走ってゆく中で、マミは何度か、白い服の女の子を見失ってしまいましたが、

女の子はときどき、まるでマミを待つかのように足を止めていたので、

どうにかマミは、白い服の女の子に追いつくことができました。


立ち止まって、追いついて、また走って、立ち止まって、追いついて。

そうしてふたり走っていると、やがてある場所で、女の子は走るのをやめました。



59:2013/02/02(土) 19:42:34.35 ID:
立ち止まった女の子のかたわら、しなだれた大きな枝の上に、

おしゃれな装飾のほどこされたマスケット銃がありました。

背伸びをせずとも手が届く、ちょうどいいところに、マスケット銃がひっかかっていたので、

マミはそれを手に取ると、気取った構えをとりはじめました。


マミ「私は邪悪な魔女を狩る、正義の味方。
   さあ覚悟なさい!私の魔弾の舞踏からは、逃れられはしないわよ!」


片手で持とうとして、銃の重みによろめく。気を取り直して、正面にまっすぐ狙いをつける。

マミは優雅にふるまいながら、さまざまなポーズを取っていましたが、

白い服の女の子がふたたび走り出したのを見ると、

あわてて銃を枝に戻し、走って追いかけにゆきました。



60:2013/02/02(土) 19:44:24.30 ID:

マミは一生懸命走りましたが、女の子の足はマミよりもずっと早く、

やがてマミは、白い服の女の子の姿をすっかり見失ってしまいました。

森の中でひとりきりになってしまったマミは、とてもさみしくなりました。

ひとりぼっちで歩く薄暗い森は、とても孤独で、おそろしいものです。


あの女の子と、友達になりたかったのに。

マミは、白い服の女の子を探すことを、ようやくあきらめました。

そして、さみしい気持ちをかかえながら、森の中を歩きだしました。



61:2013/02/02(土) 19:45:20.41 ID:

お花は、もう摘んだもの。あの道まで戻って、おばあさんの家へ行こう。

マミはそう思いながら、うす暗い森を歩いてゆきましたが、

いつのまにやらずいぶん奥深くまで来てしまっていたのか、

光さすあの道は、なかなか見えてきません。


マミは、もといた道へ戻ろうと、必死になって走りましたが、

歩けども歩けども、走れども走れども、おんなじ景色が続くばかりで、

おばあさんの家へつづく道は、すっかり見えなくなっていました。



62:2013/02/02(土) 19:46:16.57 ID:

――――――
――――
――


もうどれくらい走り続けたのでしょうか。

途中で、マミは勉強机をみつけましたが、そこには誰の姿もありませんでした。

ひとりぼっちが嫌で嫌でたまらないマミは、息をきらしながらも、必死に森の中を走ります。


明るいところに行きたい。誰かに会いたい。

さびしさで胸がつまり、マミの目のふちに涙がたまりはじめたころ、

まっさらな光の向こうに、なにかが見えてきました。

その向こう側に誰かがいてくれるような気がしたので、

マミは光に向かって走り出しました。



63:2013/02/02(土) 19:47:00.05 ID:





……どこからともなく、獣のうなり声が聞こえていました。





64:2013/02/02(土) 19:48:09.22 ID:

――――――
――――
――


光の中を抜けると、少し開けた場所に出ました。

そこは暗い森の中とは思えないほど明るくて、あざやかな場所でした。


マミ「いいお天気!
   ピクニックするには、うってつけの陽気ね。」


どこからともなく、かすかにエンジンの音が聞こえてきます。

黄色い日差しで満たされた空の下、平らに広がる地面には、

きれいに刈り取られた芝生が、しましま模様を作っています。

地面には、規則正しく線とブロックが並んでおり、どうやら駐車場のようでした。



65:2013/02/02(土) 19:50:21.10 ID:

あたりを見まわせば、さっきの白い服の女の子もいます。

女の子は、ぽつんとおかれた日よけつきのテーブルについてました。

マミはそのテーブルに近づくと、椅子にこしかけ、日よけがつくる陰の中に入りました。


マミ「お茶会はやっぱり、にぎやかなほうがいいわよね。
   さあ皆さん、素敵なひとときを一緒に過ごしましょう!」


ふたりは、空っぽのティーカップをかかげて乾杯をし、しばらくのあいだ、お茶のないお茶会を楽しみました。

ひとしきりお茶会の気分を味わうと、マミはテーブルをはなれて、ふたたび黄色い空の下へ出ました。



66:2013/02/02(土) 19:52:44.06 ID:

マミがもう一度、駐車場へ目を向けると、

すこし離れたところに、車が一台、ぽつんと停まっているのが見えました。

芝生をさくさく踏みしめながら車に近づくと、エンジンの音が、よりはっきりと聞こえるようになりました。

マミは不思議に思い、車の窓を覗き込みました。

背中の後ろで、女の子が息をのむ声がしたような、そんな気がしました。



67:2013/02/02(土) 19:53:50.91 ID:

車の中には、男の人と女の人が乗っていました。

マミはその人たちに会えたのがとてもうれしくて、思わず笑顔になりました。


マミ「車でおでかけなんて、久しぶり!
   今日はきっと、素敵な一日になるはずよ!」


そして、ふたりが車に乗るよううながしてきたので、

マミは喜んでドアを開け、車に乗り込みました。

男の人が冗談めかして何かを言い、女の人が笑って、マミもまたクスクスと笑いました。

車のエンジンが吠えるかのように大きくうなり、排気管が煙を吐き出します。



68:2013/02/02(土) 19:54:34.35 ID:





やがて、車は走り出しました。




72:2013/02/06(水) 04:09:48.27 ID:

――――――
――――
――


気がつくと。

マミは、おばあさんの家のすぐ前の道で、あおむけに倒れていました。


いつの間にやらザアザアと雨が降り出しており、

あたりは森の中よりも暗く、すっかり色を失っています。


ふりそそぐ雨に濡れながら、マミは重い体を起こし、

ふらつきながら立ち上がると、

頭をがくりと垂れながら、

重たい足取りで、おばあさんの家へ向かいました。



73:2013/02/06(水) 04:10:44.56 ID:

――――――
――――
――


家に入ると、滴がぽたぽたとしたたる音が聞こえてきます。

家の中はおしゃれなアンティーク調で、なぜか家具がよぶんに置かれていました。

黄色がかった光が部屋じゅうを照らし、不気味な明るさで満たしています。

天井からぶら下がるファンは、とても細いリボンで吊るされており、

いまにも落ちてしまいそうなほど、ぐらぐらと不安定に揺れています。

部屋の奥で、四角い傷痕が点々と二列に並ぶドアが、ひとりでに開きます。

マミはおばあさんに会うために、奥へ奥へと進んでゆきました。



75:2013/02/06(水) 04:11:36.87 ID:

マミは階段をのぼって、ドアの向こうへ進みます。

廊下の壁がパッと左右に広がって、あっという間に大きな部屋に変わりました。

そして突然、部屋のすみに巨大なタイヤがあらわれます。

大きなタイヤは、勢いよく煙を吹き出すと、音もなくしぼんでゆき、

その中から、バラバラな車の部品たちが産まれ、ぼろぼろとあふれてゆきました。

なにかの滴がしたたる音が、ほんの少し重みを増しました。



76:2013/02/06(水) 04:12:53.90 ID:

マミは広間のドアの奥の、人間には広過ぎる部屋を進みます。

部屋の中には、ふかふかのソファーや四角いテーブル、さまざまな家具が置かれていますが、

どれも部屋と同じように、異様な大きさをしています。

ふいに壁がぐるりとまわり、床と天井は壁に、壁は天井と床に変わりました。

床だった壁に置かれた、異様に大きなガラスのテーブルの上には、

砕けたポットと空っぽのティーカップが一人分、丁寧に置かれているのが見えました。

したたる水音に混じって、誰かの歌声がほんの一瞬聴こえました。



77:2013/02/06(水) 04:14:10.87 ID:

マミはさらに奥の部屋の、豪奢なしましま模様の部屋を進みます。

壁に描かれたしま模様が、ふいにぐにゃりと歪むと、じわじわと形を変えてゆき、

やがて、壁一面にみっちりと敷きつめられたマスケット銃になりました。

どこからともなく、写真が一枚、はらりと舞い降りたかと思うと、

砂のようにぼろぼろと崩れ、床に落ちる前に、消えてなくなりました。

滴の音がさらに重みをまして、べちゃりという音に変わりました。



78:2013/02/06(水) 04:15:39.54 ID:

マミは両開きのドアの向こう、食べかけのケーキが置かれた小部屋を通り抜け、

ひとりでに開いたドアの先、まっ暗でせまい廊下を進んでゆきます。

壁にしっかりと縫いつけられたリボンが、闇の中でモゾモゾとうごめきます。

床からともる光が、足元だけを暗いオレンジ色に染めあげていました。

ふたたび歌声が聴こえたかと思うと、ふいにブツリと途切れました。



79:2013/02/06(水) 04:17:06.73 ID:

そしてマミは、いちばん奥の部屋にたどり着きました。


そこはとても大きな広間で、今まで通ったどの部屋よりも、広く広く大きな部屋でした。

壁も天井もはるか遠く、あたり一面、刺繍がびっしりと縫い込まれ、細やかな模様で覆いつくされています。

黄色い光もまた、どの部屋よりも明るく、大きすぎる広間を目が痛くなるほどに照らしています。

滴のようだった水音はいまや、重く湿ったなにかが落ちる音に変わっていました。

部屋のまん中には、小さすぎる白い椅子に囲まれたテーブルがあり、ベッドが深くめりこんでいました。



ベッドの中には、誰もいません。

マミは、ベッドに向かって



80:2013/02/06(水) 04:17:49.44 ID:





               ドサッ




81:2013/02/06(水) 04:18:35.17 ID:
――――――――   ――
 ――――――――――――   ――――――――
――
     ―――――――                ―― ―



                   ――――――
                        ―――――――――――

   ―       ―――――――  ―――――――――――――
 ――             ――――――――――
                       ―――――――――――――


82:2013/02/06(水) 04:19:30.15 ID:

              全てが傾ぐ

    痛い   ガレキ      苦しい     ひしゃげた天井
           苦しい
痛い      苦しい
    痛い
          苦しい               パパ
               苦しい        苦しい
        痛い
    怖い          赤           痛い
                       痛い
     痛い                    苦しい
「助けて」                
   痛い
          苦しい         痛い      痛い

     ママ        苦しい           苦しい
                       死にたくない
   痛い     苦しい
                  痛い     苦しい


              ぼやけた視界

              小さな白い影


             ひとりぼっちの家           


          ひとりぼっちの帰り道
                ひとりぼっちの戦い

          ひとりぼっちのベッド
                ひとりぼっちの生活



  新しいともだち
    孤独の終わり

        「もう私、ひとりぼっちじゃないのね!」


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼


 「もう何も怖くない」           


▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


83:2013/02/06(水) 04:21:09.79 ID:

   ―――――――――――――――
     ―――――― ―――――――――――――――――――
 ―――――――――――――  ――――――   ――――――――


      マミの視界が、どんどん暗くなってゆきました――


 ――――――――――――――――――――――   ―――― ――
  ――――  ―――――――――――――――――――――――― 
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88:2013/02/09(土) 07:04:31.60 ID:

3番目にお使いを頼まれたのは、床に座り込んで音楽を聞いていたさやかでした。

さやかは白いイヤホンを外し、うんと伸びをしてから立ち上がると、

バスケットにパンとワインを入れて、おばあさんの家へ続く道を歩き出しました。



89:2013/02/09(土) 07:05:02.32 ID:

               GO TO
          GRANDMOTHER'S HOUSE.


          AND STAY ON THE PATH.



90:2013/02/09(土) 07:05:53.46 ID:

深い森に囲まれた道は、まっすぐにおばあさんの家へ続いています。

このまま歩いていけば、すぐにおばあさんの家へ着くでしょう。

短く切りそろえた髪を揺らしながら、さやかは元気よく歩いていきました。



さやか「うーん。ただパンだけってのも、何かさびしいもんだねー。
    肉や野菜と言わないまでも、せめてジャムとかあればいいのに。」


そんなことを考えながら、ふと森へ目をやると、

小さな白い花がいくつか咲いているのが見えました。

ちょっと森に入って、パッと摘んで持っていこう。おばあさんも喜ぶはず。

そう考えたさやかは、つい道をそれて、森の中へ入ってしまいました。



91:2013/02/09(土) 07:07:17.23 ID:

――――――
――――
――


森の中は薄暗くて、まるで色が失われているかのようでした。

地面に咲く小さな白い花の輝きがあっても、森はなお暗く深く、

どこまでも続いているのではないかとさえ思えてきます。

さやかが花をつみながら森を進んでゆくと、目の前を何かがよぎりました。



92:2013/02/09(土) 07:08:27.30 ID:

それは、白い服を着た女の子でした。

白い服の女の子は、草木の生い茂る森の中を自由に走り回っています。

さやかは、その女の子にちょっとイタズラしてやろうと思い、

お前は私の嫁になるのだー!と言わんばかりに、とびかかりました。

白い服の女の子は、クスクスと笑って、さやかの腕をするりとかわしました。

そうして、ふたりはその場をぐるぐる回って、しばらくの間じゃれあっていました。

回りながら遊んでいると、ふいに白い女の子がどこかへ向かって走り出したので、

さやかもまた、女の子を追いかけて走り出しました。



93:2013/02/09(土) 07:10:44.55 ID:

森の中を走るとちゅうで、マスケット銃のかかった枝を通り過ぎました。

さやかは時々歩いて足を休めながら、白い服の女の子を追っていると、

木と木のあいだに張っていたクモの巣に、頭からつっこんでしまいました。


さやか「ぎゃーっ!!キモいキモいキモい!!
    ほ、本体いたりしないよねぇっ!?」


さやかはあわてふためきながら、必死に両手をふり回しますが、

そうして、じたばたすればするほど、クモの糸は余計にからみついてきます。

それでも両手をふり回し、髪の毛をふり乱し、足を何度も踏みならし、

しこたま暴れまくったところで、ようやく、クモの巣が体から取れました。


動き疲れたさやかは、その場にかがみこみ、しばらく息を整えていましたが、

少し離れたところで立ち止まっている女の子を見ると、

片方の手で髪の毛を軽く払ってから、そちらへ向かってゆきました。



94:2013/02/09(土) 07:13:13.68 ID:

そこには、さやかの背丈よりもいくぶん高い、まっすぐな金属の柵がありました。

さやかは、その黒い柵に片手をかけて、額をくっつけ、軽くもたれかかりました。


さやか「余ったぶんの幸せで、誰かの不幸を帳消しにできたらいいのにね。」


さやかは、そうしてしばらく、物思いにふけっていました。

そしてなにかをふり払うように軽く頭を振ると、柵から離れ、

ちょっとだけ、おでこを気にしました。


さやかは、そういえばおばあさんの家へ向かうんだったと、ふと思い出し、

白い女の子に向かって手を振ると、元いた道を目指して走りだしました。



95:2013/02/09(土) 07:16:00.71 ID:

おばあさんの家へ行くんだから、まずはあの道へ戻んなくちゃ。

さやかはそう思いながら、うす暗い森を駆けぬけてゆきましたが、

いつのまにやらずいぶん奥深くまで来てしまっていたのか、

光さすあの道は、なかなか見えてきません。


さやかは、もといた道へ戻ろうと、必死になって走りましたが、

歩けども歩けども、走れども走れども、おんなじ景色が続くばかりで、

おばあさんの家へつづく道は、すっかり見えなくなっていました。



102:2013/02/11(月) 19:40:41.24 ID:

――――――
――――
――


もうどれくらい走り続けたのでしょうか。

走るだけの体力も気力もなくして、すっかり疲れはててしまったさやかは、

えんえんと続く森の中を、とぼとぼと歩いていました。


ああ。ひょっとしたらこれは、ヤバいかも。

さしものさやかも、さすがに不安な気持ちになりはじめたころ、

まっさらな光の向こうに、なにかが見えました。

そこへ向かえばどうにかなりそうな気がしたので、

さやかは光に向かって走り出しました。



103:2013/02/11(月) 19:41:43.79 ID:





……どこからともなく、獣のうなり声が聞こえていました。




104:2013/02/11(月) 19:44:15.55 ID:

――――――
――――
――


光の中を抜けると、少し開けた場所に出ました。

そこは暗い森の中とは思えないほど明るくて、あざやかな場所でした。


さやか「こんなに明るいのに、なんでか辛気くさいトコだねー。
    こっちの気力まで吸い取られちゃいそう。」


地面には、いくつも水たまりがあって、空の青い色を映し出しています。

そして、マットレスもシーツもないベッドが、あちこちに置かれていました。

広い森の中にいるのに、病院を思わせるような、そんなふしぎな場所でした。



105:2013/02/11(月) 19:47:34.62 ID:

そこには、白い服の女の子もいて、からっぽなベッドのひとつに座り込んでいました。

骨のような白いベッドに腰かけ、両足を交互にゆらす女の子を横目に、

さやかはあたりを探索してみることにしました。


水たまりをよけながら、なにもないベッドたちの間を歩いていると、

ひとつだけ、きちんとマットレスがしかれたベッドを見つけました。



106:2013/02/11(月) 19:49:46.10 ID:

ベッドの上には、入院着の男の子がひとり、横たわっています。

男の子のベッドのかたわらには、ベッドサイドテーブルが置かれていました。

さやかは、水たまりをパシャパシャと横切りながら、まっすぐベッドに近づくと、

入院着の男の子のそばに、そおっと座りました。

男の子は、すやすやと安らかな寝息を立てて眠っています。

しばらく男の子の安らかな寝顔を眺めると、さやかは立ち上がり、

今度はテーブルの方へ回り込みました。



107:2013/02/11(月) 19:52:14.15 ID:

ベッドと同じくらいの高さのテーブルの上には、

からっぽの花びんと、1枚のCD、イヤホンに繋がれた機械が置かれています。

さやかはまず、森の中でつんだ白い花を1輪とりだすと、花びんにさしました。


さやか「これで少しはマシな気分になるんじゃない?」


さやかは次に、CDを手に取ってながめました。

そのCDは、とても手に入りにくいものなのだと、さやかは知っていました。


さやか「あたしは音楽が好き。彼が音楽を好きだから。
    同じものを好きでいたいんだ。」


さやかがCDを機械にセットすると、男の子が目をさましました。

背中の後ろで、女の子が息をのむ声がしたような、そんな気がしました。



108:2013/02/11(月) 19:54:57.36 ID:

さやかはほほえんで、ふたたび男の子のそばに腰かけると、

片方のイヤホンを、入院着の男の子に差し出しました。

男の子は左手をまったく動かさずに、右手でイヤホンを受け取ると、自分の耳につけました。

さやかは、男の子がイヤホンをつけたのを見ると、もう片方のイヤホンを自分の耳につけ、

機械についている三角形の描かれたボタンを押しました。


バイオリンの奏でるうつくしい旋律が、

半分こしたイヤホンを通して、ふたりの耳に流れ込んできます。



109:2013/02/11(月) 19:55:44.78 ID:





そうしてふたりは、バイオリンの音色に耳をかたむけていました。




113:2013/02/16(土) 03:17:55.74 ID:

――――――
――――
――


気がつくと。

さやかは、おばあさんの家のすぐ前の道で、体を丸めるようにして倒れていました。


いつの間にやらザアザアと雨が降り出しており、

あたりは森の中よりも暗く、すっかり色を失っています。


ふりそそぐ雨に濡れながら、さやかは重い体を起こし、

ふらつきながら立ち上がると、

両手でお腹をおさえながら、

重たい足取りで、おばあさんの家へ向かいました。



114:2013/02/16(土) 03:19:54.35 ID:

――――――
――――
――


家に入ると、さびしげなバイオリンの音色が聞こえてきます。

家の中はあたり一面まっ青で、床から天井へとあぶくが立ちのぼり、

まるで、深い海の底に沈んでしまっているかのようでした。

天井にはファンのかわりに、黒い色をしたおおきな車輪が吊られており、

同じ所をただひらすらに、ぐるりぐるりと回りつづけています。

部屋の奥で、ピンク色の珍妙な顔が描かれたドアが、ひとりでに開きます。

さやかはおばあさんに会うために、奥へ奥へと進んでゆきました。



115:2013/02/16(土) 03:21:48.67 ID:

さやかは階段をのぼって、ドアの向こうへ進みます。

まるい窓が並んだ廊下を、なにかがころころ転がって、まっすぐな線路になってゆきます。

線路が奥へ伸びてゆくにつれて、廊下もまた、奥へぐーんと長く伸びていきました。

左右の壁のふくれた窓たちは、なにかの情景を映し出しているのですが、

しばしば黒い砂嵐が映り込み、情景をかき消してしまうので、結局なんにも見えません。

バイオリンの音が一瞬、悲鳴をあげるかのような甲高い音を立てました。



116:2013/02/16(土) 03:24:04.80 ID:

さやかは廊下のドアの奥の、天井まである高い柵で囲まれた部屋を進みます。

まっすぐな柵のすきまから、まっ黒な海の向こうに浮かぶ欠けた月がのぞいていました。

床には、黒い四角のタイルと白い四角のタイルが、規則ただしく交互に並んでいます。

ふいに、暗い海がごぽりとうごめき、白い月がぐらぐら歪むと、

部屋を囲んでいた柵がぼろぼろと崩れ、不透明な黒い水がどろりとあふれ出し、

白黒模様の床も、黒い柵も、なにもかもを青色に染めあげました。

バイオリンの音が、すこしづつ外れるようになりました。



117:2013/02/16(土) 03:25:34.87 ID:

さやかはさらに奥の部屋の、まっ青な屋根裏部屋を進みます。

壁一面に、さまざまな弦楽器をもった男性のような影が浮かんでおり、

まるで、手に持った楽器を演奏しているかのように、壁の中でうごめいています。

青白い床板には、黒い溝が何本も通って、楽譜のような模様を描いています。

黒い車輪がいくつもいくつも、ぴょんぴょん跳ねながら部屋を横切っていきました。

不安をあおるバイオリンの音色が、さらに狂ってゆきました。



118:2013/02/16(土) 03:27:10.58 ID:

さやかは床の四角い穴の向こう、壁にバイオリンが飾られた小部屋を通り抜け、

ひとりでに開いたドアの先、まっ暗でせまい廊下を進んでゆきます。

足元に渡された不安定な足場は、黒い線路でできています。

暗くてはっきりとは見えませんが、壁にはいくつもポスターが張られているようでした。

バイオリンの音をさえぎるように、だれかの叫び声が聞こえました。



120:2013/02/16(土) 03:31:59.02 ID:
そこは大きな丸い劇場で、からっぽの観覧席が、壁や天井を逆さまに埋めつくしていました。

あたりはやはりまっ青で、時折、裏返しになった奇妙な文字がうっすらと浮かびあがります。

バイオリンの音はすっかりめちゃくちゃになり、耳障りな音を狂ったように響かせていました。

真下におんなじ部屋が透けて見える床には、大きな車輪や折れた剣が、たくさん埋まっていて、

部屋のまん中のステージの上には、奇妙な文字がびっしりと書きこまれたベッドが立てられていました。



ベッドの中には、誰もいません。

さやかは、ベッドに向かって



121:2013/02/16(土) 03:32:35.81 ID:





               ドサッ




122:2013/02/16(土) 03:33:47.76 ID:
――――――――   ――
 ――――――――――――   ――――――――
――
     ―――――――                ―― ―



                   ――――――
                        ―――――――――――

   ―       ―――――――  ―――――――――――――
 ――             ――――――――――
                       ―――――――――――――


123:2013/02/16(土) 03:35:32.09 ID:

             Look at me.            


                   血まみれの左手       

      砕けた円盤                     

              彼の絶望              


             Look at me.            
          「後悔なんて、あるわけない」        

           私の手の中  光る宝石          

   Look at me.               Look at me.  
 Look at me. Look at me.       Look at me. Look at me.
 Look at me. Look at me. Look at me. Look at me. Look at me.
 Look at me. Look at me. Look at me. Look at me. Look at me.
 Look at me. Look at me. Look at me. Look at me. Look at me.
 Look at me.   彼女じゃなくて、私を見てよ!  Look at me.
 Look at me. Look at me. Look at me. Look at me. Look at me.
 Look at me. Look at me. Look at me. Look at me. Look at me.
    Look at me. Look at me. Look at me. Look at me.    
       Look at me. Look at me. Look at me.        
           Look at me. Look at me.          
              Look at me.            
                Look              
                at              

                me.             


             濁りきった宝石           


                      涙が頬を伝う   

          「あたしって、ほんとバカ」         


               割れる卵              



124:2013/02/16(土) 03:36:38.59 ID:
   ―――――――――――――――
     ―――――― ―――――――――――――――――――
 ―――――――――――――  ――――――   ――――――――


     さやかの視界が、どんどん暗くなってゆきました――


 ――――――――――――――――――――――   ―――― ――
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130:2013/02/24(日) 19:50:46.20 ID:

4番目にお使いを頼まれたのは、テーブルにもたれてお菓子を食べていた杏子でした。

杏子はお菓子を一息に平らげて、白い包み紙をくずかごに投げ入れると、

バスケットにパンとワインを入れて、おばあさんの家へ続く道を歩き出しました。



131:2013/02/24(日) 19:51:56.72 ID:

               GO TO
          GRANDMOTHER'S HOUSE.


          AND STAY ON THE PATH.



132:2013/02/24(日) 19:53:18.65 ID:

深い森に囲まれた道は、まっすぐにおばあさんの家へ続いています。

このまま歩いていけば、すぐにおばあさんの家へ着くでしょう。

まっ赤なポニーテールを揺らしながら、杏子は軽やかに歩いていきました。


杏子「主よ、日々のお恵みに感謝いたします。……なんてね。
   ま、このパンはあたしの分じゃないんだけどさ。」


そんなことを考えながら、ふと森へ目をやると、

小さな白い花がいくつか咲いているのが見えました。

あれをおばあさんに持っていくのも、悪くないかもね。

そう考えた杏子は、つい道をそれて、森の中へ入ってしまいました。



133:2013/02/24(日) 19:54:50.39 ID:

――――――
――――
――


森の中は薄暗くて、まるで色が失われているかのようでした。

地面に咲く小さな白い花の輝きがあっても、森はなお暗く深く、

どこまでも続いているのではないかとさえ思えてきます。

杏子は花をひとつだけつみ、元の道へ引き返そうとすると、目の前に何かが見えました。



134:2013/02/24(日) 19:57:15.93 ID:

それは、白い服を着た女の子でした。

女の子のそばには、バネのついた馬の遊具が置かれていました。

杏子は、女の子がなぜこんな森の中にいるのか気になりましたが、

なんとなく、つくりものの馬にまたがってみることにしました。


杏子「時間は、過去へは進まない。
   だから今を生きるんだ!」


馬のお腹から地面につながるバネがきしんで、前に後ろに、ぐらぐらと揺れます。

やがて、あまり馬が動かなくなると、杏子は馬の遊具から降りました。

すると、白い服の女の子がどこかへ向かって走り出したので、

杏子は思わず、女の子のあとを追いかけました。



135:2013/02/24(日) 19:59:08.53 ID:

途中で、木々の間にはられたクモの巣をかわしたり、足を休めたりしながら、

白い服の女の子を追いかけて、杏子が森の中を走ってゆくと、

やがてある場所で、女の子は走るのをやめました。


そこには、いちだんと大きな木の幹があって、4つの紙人形が仲良く飾られていました。

男の人の人形と、女の人の人形と、女の子の人形と、小さい女の子の人形。

杏子はそのうちの、大きいほうの女の子の人形を手にとると、くるくると回しはじめました。


杏子「『むかしむかし、あるところに』……おとぎ話はそうやって始まる。
   いつも『めでたし、めでたし』で終わるとは、限らないけどね。」


杏子は、なにげなく紙人形をもてあそんでいましたが、

しばらくするとその手を止めて、紙人形を元あった木の幹に戻しました。



136:2013/02/24(日) 20:01:07.07 ID:

杏子は、白い服の女の子に話しかけようと思いましたが、

すぐそばにいたはずの女の子は、いつのまにかいなくなっていました。

杏子はうす暗い森を見回してみましたが、女の子はどこにも見あたりません。

どうやら、杏子がぼんやりしているあいだに、どこかへ行ってしまったようでした。


杏子は、あの女の子を探しにいこうかとも思いましたが、

あきらめたかのように頭を横に振ると、

元いた道へ戻ろうと、暗い森の中を歩きだしました。



137:2013/02/24(日) 20:02:41.89 ID:

もともと、森に遊びにきた訳じゃないんだ。さっさとお使いを済ませよう。

杏子はそう思って、うす暗い森を歩いてゆきましたが、

いつのまにやらずいぶん奥深くまで来てしまっていたのか、

光さすあの道は、なかなか見えてきません。


杏子は、もといた道へ戻ろうと、必死になって走りましたが、

歩けども歩けども、走れども走れども、おんなじ景色が続くばかりで、

おばあさんの家へつづく道は、すっかり見えなくなっていました。



142:2013/03/02(土) 18:43:04.56 ID:

――――――
――――
――


もうどれくらい走り続けたのでしょうか。

杏子は、どこへ向かえばいいのかわからないまま、

えんえんと続く森の中を、あてどなく歩いていました。


どれだけ進んでいっても、終わりの見えてこないこの森に、

不信を覚えた杏子の中で、悪い予感が強まりはじめたころ、

まっさらな光の向こうに、なにかが見えました。

そこへ向かえばひとまず一息つけそうな気がしたので、

杏子は光に向かって走り出しました。



143:2013/03/02(土) 18:43:46.52 ID:





……どこからともなく、獣のうなり声が聞こえていました。




144:2013/03/02(土) 18:45:59.59 ID:

――――――
――――
――


光の中を抜けると、少し開けた場所に出ました。

そこは暗い森の中とは思えないほど明るくて、あざやかな場所でした。


杏子「ガラじゃあないんだけど……神妙な気分ってやつになるね。」


どこからともなく鐘の音が、ごうん、ごうんと響いてきます。

紅色の光の中に、うすぼんやりと白いもやがただようその場所は、

くずれた壁や床、大きなステンドグラスがあって、どことなく教会を思わせました。



145:2013/03/02(土) 18:47:08.17 ID:

杏子がうっすらと広がるもやの中を歩き回っていると、

壁のひとつの裏側に、白い服を着た女の子がよりかかっていました。

杏子が白い服の女の子に近寄ると、女の子はお菓子を差しだしました。

杏子はふっとほほえんで、女の子からお菓子を受け取ると、

包み紙を大きく破って、もぐもぐとお菓子を食べはじめました。

杏子がお菓子を食べはじめると、女の子はもうひとつお菓子を取り出して、

包み紙をすこし破り、ちょこちょことお菓子を食べはじめました。

ふたりは、ほんのすこしの時間をかけて、小さなお菓子をたいらげました。



146:2013/03/02(土) 18:50:24.71 ID:

杏子は、女の子のいる壁から離れると、その内側へ回りこみました。

ほんの少し高い床の、ほんの小さな階段を昇ると、

規則正しくならんだ長椅子の下、ぼろぼろな床の中央に、

いったい誰が描いたのか、2匹の犬と4つの矢印のらくがきを見つけました。

杏子は矢印の上に立つと、軽快なステップを踏みはじめました。


杏子「パーフェクトなんか朝飯前。
   ランキングのトップはいただくよ!」


両足をこきみよく動かしながら、とんで、はねて、くるりと回る。

記憶をたよりにひとしきり踊ると、杏子は少しのびをして、

もういちど、その場を見わたしてみました。



147:2013/03/02(土) 18:54:10.14 ID:

杏子は、床にきれいに並べられた長椅子のうちのひとつに、

黒いカソックを着た男の人がひとり、座っているのを見つけました。

男の人を見ると、杏子は少し悲しげな顔になりました。

杏子は、長椅子へゆっくり歩いてゆくと、男の人のとなりに座りました。

そして、祈るように両手を組み、まぶたを閉じてうつむきました。


杏子「あたしは散々自分勝手に生きてきた。その事は、後悔しない。
   でもさ、神様。本当は……」


しばらくそうして、杏子はただ黙っていました。

となりに座る男の人も、ただ黙って杏子を見つめていました。

背中の後ろで、女の子が息をのむ声がしたような、そんな気がしました。



148:2013/03/02(土) 18:57:37.14 ID:

やがて、男の人は長椅子から立ち上がると、コツコツと歩いてゆき、

色あざやかなステンドグラスの前の、傷だらけの教壇に立ちました。

杏子はゆっくりと顔をあげると、両目を開き、男の人をじっと見つめます。

そして、カソックを着た男の人は、なにやらお話をはじめました。

杏子は、しばらくきょとんとしていましたが、

やがて、穏やかな笑顔を取り戻して、男の人のお話にしずかに耳を傾けました。

がらぁん、がらぁん、と、ひときわ高く大きな鐘の音が、あたりに響き渡ります。



149:2013/03/02(土) 18:58:16.05 ID:





白いもやが立ちこめてゆく中、杏子はいつまでもお話を聞いていました。




154:2013/03/06(水) 19:49:55.23 ID:

――――――
――――
――


気がつくと。

杏子は、おばあさんの家のすぐ前の道で、うつぶせに倒れていました。


いつの間にやらザアザアと雨が降り出しており、

あたりは森の中よりも暗く、すっかり色を失っています。


ふりそそぐ雨に濡れながら、杏子は重い体を起こし、

ふらつきながら立ち上がると、

右手で胸元をおさえながら、

重たい足取りで、おばあさんの家へ向かいました。



155:2013/03/06(水) 19:51:25.22 ID:

――――――
――――
――


家に入ると、どこか遠くから鐘のなる音が聞こえてきます。

家の中は灰色のもやが立ちこめており、あのうす暗い森の中のように色あせていました。

白黒の部屋の中で、ランプの灯りだけが、あざやかな赤い色をしていました。

天井のファンには、いくつもの黒い鎖が、固く巻きつけられいて、

ファンの羽根は回ることなく、動きをぴたりと止めてしまっています。

部屋の奥で、赤いひし型の小窓がついたドアが、ひとりでに開きます。

杏子はおばあさんに会うために、奥へ奥へと進んでゆきました。



156:2013/03/06(水) 19:53:11.22 ID:

杏子は階段をのぼって、ドアの向こうへ進みます。

そして、まっ暗な廊下のとなりの、天使をかたどった噴水の部屋に入りました。

天使の石像の、剣で貫かれた胸元からは、赤く濁った水が静かにあふれていましたが、

水の流れはしだいに弱まってゆき、やがて流れることもなくなって、

赤い水で満たされていた噴水は、すっかり干上がってしまいました。

枯れた噴水の底には、まっ黒に焦げたかたまりが、いくつも沈んでいました。

遠くから響く鐘の音が、少しづつ近くなってきました。



157:2013/03/06(水) 19:55:44.55 ID:

杏子は部屋のドアの奥の、古ぼけた広間を進みます。

部屋いっぱいに灰色をしたもやが広がり、壁一面に黒一色の街が描かれていました。

広間のいたるところに、白黒なメリーゴーランドの馬がありますが、

どの馬にも顔がなく、鎖でお腹をつらぬかれ、動きをぴたりと止めてしまっています。

広間の中を進んでいると、壁に描かれた建物の中から、いくつもの人影が顔を出しました。

どの人影も、うつろな赤い瞳をして、じっとこちらを見つめていました。

さみしげな鐘の音に混ざって、ぶすぶすとくすぶるような音が聞こえてきました。



158:2013/03/06(水) 19:58:08.58 ID:

杏子はさらに奥の部屋の、暗いもやに包まれた礼拝堂を進みます。

床には黒い長椅子がずらりと並び、灰色のもやの向こうへと、まっすぐに列を作っています。

ふいに、天井から赤い滴がいくつも染みだして、丸くふくらむと、まっ赤な林檎に変わりました。

赤い林檎は、ふるふる震えたかと思うと、天井からぽろぽろこぼれ落ちて、

赤い色の滴に戻ると、長椅子をつたって白い床へ染みこみ、じわじわと消えてゆきました。

鐘の音が低く歪んで、火花がバチリと爆ぜる音がしました。



159:2013/03/06(水) 19:59:28.11 ID:

杏子は両開きのドアの向こう、破かれた紙人形たちの小部屋を通り抜け、

ひとりでに開いたドアの先、まっ暗でせまい廊下を進んでゆきます。

廊下の左右の壁には、ろうそくの火が心もとなく灯っていました。

弱々しくも赤くあざやかな火が、闇の中をわずかに照らしています。

鐘がひびく音も、燃えあがる音も、いまやごく近くから聴こえていました。



160:2013/03/06(水) 20:03:24.12 ID:

そして杏子は、いちばん奥の部屋にたどり着きました。


その部屋は、いちだんと暗く濃いもやが広がっていて、壁も天井も床もまったく見えません。

がんがんと鳴りひびく鐘の音が、ごうごうと燃えさかる音と、不気味に混じりあっています。

灰色のもやの向こうに、彩りのないステンドグラスが、かろうじて見えました。

はるか頭上からは、先が輪っかになった鎖がみっつと、柄が鎖でできた槍がひとつ、静かにぶらさがっています。

槍の切っ先に貫かれ、宙に吊られた赤いベッドが、部屋の真ん中でぐらぐら揺れています。



ベッドの中には、誰もいません。

杏子は、ベッドに向かって



161:2013/03/06(水) 20:04:18.55 ID:





               ドサッ




162:2013/03/06(水) 20:05:26.75 ID:

――――――――   ――
 ――――――――――――   ――――――――
――
     ―――――――                ―― ―



                   ――――――
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                       ―――――――――――――


163:2013/03/06(水) 20:06:07.46 ID:

  誰もわかってくれない          話を聞いてくれない
            お父さん、泣かないで

            天使の皮を被った悪魔

                ◆

  ◆     集う人々     ◆   みんなが話を聞いてくれる
                笑顔       ◆
       ◆                   ◆◆
           ◆   赤い目   ◆
      ◆
                ◆             ◆  
    ◆                 ◆
              「魔女め!」            

         ◆                 ◆
              壊れた人形    ◆     ◆         
   ◆◆           ◆◆     ◆
         ◆     わたしのせい      ◆  ◆
 ◆          ◆           
  ◆    ◆          ◆      ◆◆   ◆
    ◆
  ◆◆ ◆ ◆◆◆◆       ◆◆        ◆
    ◆     ◆◆◆  ◆ ◆◆◆ ◆◆◆
 ◆ ◆◆◆◆ ◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆◆◆◆◆ ◆ ◆◆◆
  ◆◆   ◆          ◆◆    ◆◆     ◆◆
  ◆      「頼むよ、神様           ◆ ◆
 ◆◆◆◆                       ◆ ◆◆
  ◆   ◆        こんな人生だったんだ
 ◆ ◆◆                        ◆◆◆
    ◆     少しくらい、いい夢を見させて!」 ◆◆  ◆

 ◆ ◆◆   ◆◆             ◆ ◆    ◆
  ◆◆  ◆  ◆              ◆◆  ◆  ◆
            赤い宝石にくちづけを
   ◆   ◆               ◆  ◆
 ◆                           ◆

         「ひとりぼっちは、さみしいもんな」


                閃光



164:2013/03/06(水) 20:06:51.95 ID:

   ―――――――――――――――
     ―――――― ―――――――――――――――――――
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      杏子の視界が、どんどん暗くなってゆきました――


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168:2013/03/11(月) 18:59:05.39 ID:

最後にお使いを頼まれたのは、壁ぎわに立って白い壁時計をいじっていたほむらでした。

ほむらは時計を壁にかけ、髪の毛をさらりとかきあげると、

バスケットにパンとワインを入れて、おばあさんの家へ続く道を歩き出しました。



169:2013/03/11(月) 18:59:31.25 ID:

               GO TO
          GRANDMOTHER'S HOUSE.


          AND STAY ON THE PATH.



170:2013/03/11(月) 19:00:23.26 ID:

深い森に囲まれた道は、まっすぐにおばあさんの家へ続いています。

このまま歩いていけば、すぐにおばあさんの家へ着くでしょう。

長く伸びた黒髪をなびかせながら、ほむらはさっそうと歩いていきました。



ほむら「最低限の栄養、必要なものはそれだけ。
    あとは空腹が満たされれば充分よ。」


そんなことを考えながら、ふと森へ目をやると、ちらりと何かが通り過ぎたのが見えました。

ほむらはそれが気になって、つい道をそれて、森の中へ入ってしまいました。



171:2013/03/11(月) 19:00:57.90 ID:

――――――
――――
――


森の中は薄暗くて、まるで色が失われているかのようでした。

地面に咲く小さな白い花の輝きがあっても、森はなお暗く深く、

どこまでも続いているのではないかとさえ思えてきます。

ほむらが森の中を進んでゆくと、ふたたび、目の前を何かがよぎりました。



172:2013/03/11(月) 19:04:04.04 ID:

それは、白い服を着た女の子でした。

白い服の女の子は、木々の合間を風のようにかけ回っています。

女の子はほむらに気がつくと、にっこり笑って、足を止めました。

ほむらが女の子に近寄ると、女の子はふたたび、森の中を走りだしました。

その様子はまるで、ついておいで、と言っているかのようでした。

ほむらは白い服の女の子に続いて、森の中を走りだしました。


走って、走って、追いついて。また走り出して、追いかけて。

馬のかたちをした遊具を、横目で見ながら通りすぎて。

そうしてふたり走りながら、森の中を進んでゆくと、

やがてある場所で、白い服の女の子は立ち止まりました。



173:2013/03/11(月) 19:09:01.38 ID:

そこには、とても大きな切り株がありました。

切り株の上には、眼鏡がちょこんと置かれています。

ほむらはすこし身を乗り出して、切り株の上の眼鏡を手に取ると、

なぜだか、少しだけ懐かしくなって、その眼鏡をかけてみることにしました。


ほむら「いつだって見たくないものばかり目に入る。
    けれど本当におぞましいものは、常に視界の外にいるのよ。」


しばらくそうして、うす暗い森の中をながめていましたが、

やがてほむらは眼鏡を外し、きれいにたたんで切り株の上に置きました。

そして顔を上げると、白い服の女の子が、いつのまにか走りだしていたので、

ほむらはふたたび、女の子を追いかけました。



174:2013/03/11(月) 19:10:06.75 ID:

白い服の女の子を追いかけて、ほむらがたどりついた場所には、

高く積まれたレンガでできた、すすけた壁がありました。

ふいに、ほむらの足元で、なにかがきらりと光りました。

かがみこんで、よく見てみると、銃弾がひとつ落ちていました。

ほむらが銃弾を拾い上げると、ひんやりとした感触が指先に伝わりました。


ほむら「銃弾ひとつですべてが片付くなら、これほど楽なことはないでしょうね。
    世界はそんなに優しくはない。」


ほむらは冷たい銃弾を、バスケットの中へすべりこませました。

そしてほむらが立ちあがると、あたりにはもう誰もいませんでした。

白い服の女の子は、いつの間にかいなくなっていたのです。



175:2013/03/11(月) 19:11:16.06 ID:

あの女の子は、一体何者?……けれど今は、この森を出て元の道へ戻らなければ。

ほむらはそう思い、うす暗い森を歩いてゆきましたが、

いつのまにやらずいぶん奥深くまで来てしまっていたのか、

光さすあの道は、なかなか見えてきません。


ほむらは、もといた道へ戻ろうと、必死になって走りましたが、

歩けども歩けども、走れども走れども、おんなじ景色が続くばかりで、

おばあさんの家へつづく道は、すっかり見えなくなっていました。



176:2013/03/11(月) 19:21:02.58 ID:

――――――
――――
――


もうどれくらい走り続けたのでしょうか。

時おり気まぐれをおこして、地面にまたたく小さな白い花をつみながら、

ほむらはうす暗い森の中を、たったひとりで進んでいました。


永遠と思えてしまうほどに、ながいながい時間歩きつづけて、

疲れきったほむらの心が、ひどく張りつめてきたころ、

まっさらな光の向こうに、なにかが見えました。

なぜだか、そこへ向わなければいけないような気がして、

ほむらは光に向かって歩いてゆきました。



177:2013/03/11(月) 19:22:04.51 ID:





……どこからともなく、獣のうなり声が聞こえていました。




183:2013/03/15(金) 20:21:21.06 ID:

――――――
――――
――


光の中を抜けると、少し開けた場所に出ました。

そこは暗い森の中とは思えないほど明るくて、あざやかな場所でした。


ほむら「夕焼けの帰り道。
    あの時私は、自分の足元を見つめていた。」


目の前にひろがる景色は、夕暮れ時のむらさき色に染められています。

足元には石でできた道が伸び、その両端には低い手すりがありました。

どうやらそれは道ではなく、石造りの橋のようでした。



184:2013/03/15(金) 20:22:13.62 ID:

石の橋の手すりの上には、白い服の女の子が立っていて、

あたりをきょろきょろと、せわしなく見回していました。

ほむらの後ろからは、ピンクのリボンをつけた制服姿の女の子が、

ふたつの鞄を両手にさげて、ほむらに向かって歩いてきています。



185:2013/03/15(金) 20:25:15.51 ID:

ほむらは、後ろから歩いてくる女の子には気づかずに、

白い服の女の子の方へ、近づいてゆきました。

女の子はほむらに気がつくと、橋からおりて、右手で大きく手招きをします。

そしてほむらが近くに来ると、白い服の女の子は、片方の手を差し出しました。


ほむらは、おずおずと自分の手を差し出し、女の子の手を握りました。

女の子は、ほむらの手をきゅっと握り返すと、手をつないだまま歩きはじめました。

それにつられて、ほむらもまた、女の子の隣を歩きはじめました。



186:2013/03/15(金) 20:26:29.40 ID:

――――――
――――
――


ひたすらに、ひたすらに。

歩いて、歩いて、歩いて、歩いて。


そうして歩いてゆくうちに、いつしか森をぬけて、

ふたりは、明るい日ざしが降り注ぐ道まで、戻ってきました。

おばあさんの家まで続く、まっすぐな道の上までくると、

白い服を着た女の子は、ほむらとつないでいた手を離しました。



187:2013/03/15(金) 20:27:16.10 ID:

地面に降りていたカラスが、どこかへと飛び立ってゆきました。


ほむらは、白い服の女の子の方へ一度だけ振り返ると、

おばあさんの家をめざして、道を歩きだしました。

ほむらの長い黒髪が、歩調にあわせてゆらゆらと波打ちます。


まっすぐ道をたどってゆくほむらの姿を見届けると、

白い服の女の子は、森の中へ戻ってゆきました。



188:2013/03/15(金) 20:27:55.08 ID:





やがて、暗いむらさき色の空の下に、

ひっそりと建つ小さな家が見えてきたところで、

ほむらは、足を止めました。



189:2013/03/15(金) 20:29:17.89 ID:

けれどもほむらは、おばあさんの家には入らずに、

目の前に広がる、うす暗い森を見つめていました。


森の奥深くにあった、あのふしぎな夕焼けの橋が、

繰り返しの中に埋もれた、遠い昔の景色に重なって。

ほむらは、どうしても、どうしてもその場所が気になってしまって、

またしても道をそれて、森の中へ入ってしまいました。



190:2013/03/15(金) 20:31:46.61 ID:

――――――
――――
――


うす暗い森の中では、あの白い服の女の子が元気に駆け回っています。

白い服の女の子を横目に見ながら、

ほむらはあの夕焼けの場所を目指して、森の中を歩いてゆきます。



191:2013/03/15(金) 20:33:01.18 ID:

勉強机を通り過ぎ、

マスケット銃の枝を通り過ぎ、

まっすぐな柵を通り過ぎ、

人形の木を通り過ぎ、

眼鏡の切り株を通り過ぎて、

それでもなお、ほむらは歩いてゆきます。


終わりの見えない森の中を、ほむらはひとり、進みつづけました。



192:2013/03/15(金) 20:33:59.75 ID:

――――――
――――
――


そうして、うす暗い森をひたすらに歩いてゆくと、

おそろしげな獣の声が聞こえてきたので、ほむらは顔を上げました。

目の前には、前に来た時と同じように、まっさらな光が広がっています。

光の向こうへ、ほむらは迷わず歩いてゆきました。


ほむらの後ろから、女の子の笑い声が聞こえていました。



193:2013/03/15(金) 20:35:41.22 ID:

――――――
――――
――


ほむらはふたたび、むらさき色の空の下へ辿りつきました。

石造りの橋の上には、やはり白い服を着た女の子がいました。

白い服の女の子は、手すりの上に立ち、せわしなくあたりを見回していました。

ほむらの後ろからは、ピンクのリボンに制服姿の女の子が、

前と同じように、両手にふたつのかばんをさげて、ほむらに近づいてきます。



194:2013/03/15(金) 20:36:48.61 ID:

ほむらは、いつのまにか自分の後ろにいる女の子に気が付きました。

リボンの女の子は、にっこり笑って、ほむらに片方のかばんを差し出ました。

ほむらが、とまどいながらもそのかばんを受け取ると、

リボンの女の子は、もう片方のかばんを持ちなおして、ほむらの隣に並びました。

背中の後ろで、女の子が息をのむ声がしたような、そんな気がしました。



195:2013/03/15(金) 20:40:39.03 ID:

沈んでゆく夕日に照らされて、ふたりの影が長く伸びます。

明るく笑うリボンの女の子と、他愛のないおしゃべりをしているうちに、

いつもは冷たい表情をしているほむらも、やわらかい笑顔になりました。

そうしてふたりは、石橋の上を楽しげに歩いてゆきます。

耳鳴りに似た甲高い音が、きぃん、と響きました。



196:2013/03/15(金) 20:41:10.71 ID:





ふたりは夕闇の向こうへと、並んで歩いてゆきました。




200:2013/03/21(木) 12:32:59.45 ID:

――――――
――――
――


気がつくと。

ほむらは、おばあさんの家のすぐ前の道で、腕や足を曲げて倒れていました。


いつの間にやらザアザアと雨が降り出しており、

あたりは森の中よりも暗く、すっかり色を失っています。


ふりそそぐ雨に濡れながら、ほむらは重い体を起こし、

ふらつきながら立ち上がると、

左の手の甲をかばいながら、

重たい足取りで、おばあさんの家へ向かいました。



201:2013/03/21(木) 12:33:57.12 ID:

――――――
――――
――


家に入ると、ゼンマイがキリキリ巻かれる音が、かすかに聞こえてきます。

部屋の中はまっ白で、家具がひとつもなく、ひどく寂れた様子でした。

天井には、丸くて平たい盾のような形をした砂時計が吊られています。

見なれた砂時計の中では、あざやかな色の砂がぐるぐると渦まいていました。

部屋の奥で、えんえんと続く丸い図形を刻みこまれたドアが、ひとりでに開きます。

ほむらはおばあさんに会うために、奥へ奥へと進んでゆきました。



202:2013/03/21(木) 12:35:34.44 ID:

ほむらは階段をのぼって、ドアの向こうへ進みます。

まっさらな廊下の両側には、とても薄い色のロッカーがずらりと並んでおり、

廊下が奥へぐーんと伸びてゆくのにあわせて、ロッカーもその数を増やしてゆきました。

まっすぐ廊下を進んでゆくと、ロッカーの扉が手前から奥へ順番に開いてゆきます。

ロッカーの奥の暗闇には、拳銃、手榴弾、突撃銃、爆弾……さまざまな兵器がしまわれていました。

一瞬、ゼンマイの音が早回しになると、元の早さに戻りました。



203:2013/03/21(木) 12:37:10.50 ID:

ほむらは廊下のドアの奥の、橋のかかった広間を進みます。

まっさらな広間の真ん中には、四角い模様の描かれた大きな橋が渡されていて、

白く染まった壁はゆるやかに弧を描き、色のない天井へとつながっています。

橋の下に床はなく、底の見えない白い谷が、深く深く続いていました。

直線をつくる模様をたどって、橋の上を渡ってゆくと、足元の石がぼろぼろ剥がれ、

谷の底から浮んでくる黒い瓦礫とともに、上へ上へと流れてゆきました。

ゼンマイの音にまぎれて、耳鳴りのような音が響きました。



204:2013/03/21(木) 12:38:38.68 ID:

ほむらはさらに奥の部屋の、乾いた病室を進みます。

床にも壁にも天井にも、継ぎ目がまったく見えないその病室は、どこもかしこも白一色で、

動かないカーテンに、ベッドと丸い椅子が、病室の白に溶込んでいました。

突然、まっさらな部屋の中に、くっきりとした黒い影が落ちてきました。

奇怪な形の振り子の影は、白い形をなぞりながら、右へ左へ何度も横切りました。

キリキリと鳴るゼンマイの音が、幾度も止まりかけました。



205:2013/03/21(木) 12:40:51.74 ID:

ほむらは引き戸の向こうの、赤い眼鏡をかけたマネキンの小部屋を通り抜け、

ひとりでに開いたドアの先、まっ暗でせまい廊下を進んでゆきます。

足場も、天井も、壁も、区別がつかないほどに暗くて黒い廊下の中を、

空色に光る幾何学的な筋が、ひび割れのように走っていました。

なおも動こうとするゼンマイの音を、耳鳴りに似た甲高い音がかき消します。



206:2013/03/21(木) 12:42:44.03 ID:

そしてほむらは、いちばん奥の部屋にたどり着きました。



がしゃりと大きな音がすると、それきり何の音も聞こえなくなりました。

その部屋の中もやはりまっ白で、いちだんと殺風景な空間が広がっています。

部屋の中央には、どこか女性的な化け物が描かれた絵画が、数えきれないほど浮んでおり、

髪の毛のように細長い糸が、短いピンで止められて、全ての絵画につながっています。

蜘蛛の巣のように行き交う、黒い糸のまん中には、ベッドがきつくからめとられていました。



ベッドの中には、誰もいません。

ほむらは、ベッドに向かって



207:2013/03/21(木) 12:43:14.68 ID:





               ドサッ




208:2013/03/21(木) 12:43:47.91 ID:
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                   ――――――
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   ―       ―――――――  ―――――――――――――
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                       ―――――――――――――


209:2013/03/21(木) 12:44:31.17 ID:

             動かないあの子

                   卵が割れて
          穢れは天高く

             悪魔のささやき

              繰り返す

             希望
                 真実

              繰り返す

                 絶望
             約束

               引き金

           「もう誰にも頼らない」

      繰り返す    繰り返す    繰り返す

   繰り返す    繰り返す    繰り返す    繰り返す

     繰り返す    繰り返す    繰り返す    繰り返す
   繰り返す    繰り返す    繰り返す    繰り返す
     繰り返す    繰り返す    繰り返す    繰り返す
  繰り返す    繰り返す    繰り返す    繰り返す
     繰り返す    繰り返す    繰り返す    繰り返す
 繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す
 繰り返す繰り返す何度やっても繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す繰り
 繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す
 繰り返す繰り返す繰り返す繰り返すアイツに勝てない繰り返す繰り返す
 繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す繰り返す


        「私のやってきた事は、結局……」



210:2013/03/21(木) 12:45:09.89 ID:
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     ほむらの視界が、どんどん暗くなってゆきました――


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215:2013/03/24(日) 00:29:39.82 ID:

部屋の中には、もう誰もいない。

ここにいるのは私だけ。


みんなを、探しにいかなくちゃ。



216:2013/03/24(日) 00:30:09.09 ID:

               GO TO
          GRANDMOTHER'S HOUSE


          AND STAY ON THE PATH.



217:2013/03/24(日) 00:31:09.44 ID:

深い森に囲まれた道は、まっすぐにおばあさんの家へ続いています。

このまま歩いていけば、すぐにおばあさんの家へ着くでしょう。

けれども、白い服を着た女の子は、道からそれて暗い森に入ってゆきました。


森の中で迷ってしまっても、白い服の女の子は平気です。

その女の子は、どこへだって行けるのですから。



218:2013/03/24(日) 00:31:58.52 ID:

――――――
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森の中は薄暗くて、まるで色が失われているかのようでした。

地面に咲く小さな白い花の輝きがあっても、森はなお暗く深く、

どこまでも続いているのではないかとさえ思えてきます。



219:2013/03/24(日) 00:34:05.40 ID:

うっそうと木々が生い茂る、深い深い森の中には、

女の子たちが興味を示しそうなものが、いたる所に置かれています。


切り株の上の眼鏡、地面に落ちた小さな銃弾。

四人家族の紙人形、ぐらぐら揺れる馬の遊具。

木々の間に張る蜘蛛の巣、まっすぐな黒い柵。

おしゃれなマスケット銃、きれいな蝶々。

シンプルな勉強机、丸太に座るぬいぐるみ。


いろんなものがあちこちにある、ふしぎな森の中を見て回りながら、

白い服の女の子は、より深い場所へと進んでゆきます。



220:2013/03/24(日) 00:35:02.69 ID:

――――――
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白い服の女の子は、うす暗い森を走り抜けて、

むらさき色の夕焼けの中の、石造りの橋にやってきました。


女の子は、橋の手すりの上に立って、あたりをきょろきょろ見回してみますが、

誰の姿も見当たりません。



221:2013/03/24(日) 00:37:35.71 ID:

――――――
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白い服の女の子は、うす暗い森を走り抜けて、

紅色の中にもやが立ちこめる、古ぼけた教会にやってきました。


女の子は、崩れた壁の裏側まで、くまなく探しまわってみますが、

誰の姿も見あたりません。



222:2013/03/24(日) 00:38:55.11 ID:

――――――
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白い服の女の子は、うす暗い森を走り抜けて、

青色の水たまりと、からっぽのベッドの広場にやってきました。


女の子は、ベッドのひとつに座って、まわりをぐるりと見回してみますが、

誰の姿も見あたりません。



223:2013/03/24(日) 00:40:04.02 ID:

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白い服の女の子は、うす暗い森を走り抜けて、

黄色い日差しが照りつける、広々とした駐車場にやってきました。


女の子は、日よけのついたテーブルについて、ずっと向こうまでながめてみますが、

誰の姿も見あたりません。



224:2013/03/24(日) 00:41:19.06 ID:

――――――
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白い服の女の子は、うす暗い森を走り抜けて、

桃色の木もれ日がふりそそぐ、ちいさな花畑にやってきました。


とてもきれいなこの場所にも、やはり、誰の姿も見あたりません。



225:2013/03/24(日) 00:42:52.39 ID:

白い服の女の子は、森の中をさんざん探しまわりましたが、

結局、他の女の子たちを見つけることはできませんでした。


白い服の女の子は、このうす暗い森でみんなを探すことは諦めました。

そして、森の中を風のようにかけ抜けて、あっという間に元の道へ戻ると、

おばあさんの家を目指して、まっすぐ走ってゆきました。



226:2013/03/24(日) 00:44:00.83 ID:

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道をたどっていった先の、紫色をした暗い空の下には、

小さな家がひっそりと建っていました。

5人の女の子がお使いに行くように頼まれた、おばあさんの家です。


玄関につづく、桟橋めいた板の道を渡ると、

白い服の女の子は、おばあさんの家の中へ入りました。



227:2013/03/24(日) 00:45:15.65 ID:

――――――
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――

家の中に入ると、そこはまるで違う世界のようでした。

いくつもの魔女の絵が宙に浮かぶ、まっさらな部屋。

絵画の間に張り巡らされた糸に、からめとられたベッド。


白い服の女の子は、部屋の中をまっすぐに横切ると、

いちばん奥にある、ぐるぐる模様のドアを通って、次の部屋へ進みます。



228:2013/03/24(日) 00:47:28.00 ID:

ドアの向こう側もまた、まるで違う世界のようでした。

鎖がよっつ垂れ下がる、灰色のもやに包まれた部屋。

ぶらさがる鎖のひとつに、貫かれて宙づりになったベッド。


白い服の女の子は、部屋の中をまっすぐ横切ると、

いちばん奥にある、赤い小窓のついたドアを通って、次の部屋へ進みます。



229:2013/03/24(日) 00:48:38.46 ID:

そのドアの向こう側も、まるで違う世界のようでした。

観覧席がずらりとならぶ、まっ青なステージの部屋。

中央のステージの上、『私を見て』でいっぱいのベッド。


白い服の女の子は、部屋の中をまっすぐ横切ると、

いちばん奥にある、おかしな顔文字が描かれたドアを通って、次の部屋へ進みます。



230:2013/03/24(日) 00:50:04.81 ID:

ドアの向こう側はまたしても、まるで違う世界のようでした。

綺麗な刺繍で埋め尽くされた、とてもとても大きな部屋。

小さな椅子で囲まれたテーブルと、くっついてひとつになったベッド。


白い服の女の子は、部屋の中をまっすぐ横切ると、

いちばん奥にある、歯形のような傷痕がついたドアを通って、次の部屋へ進みます。



231:2013/03/24(日) 00:51:17.25 ID:

ドアの向こう側はやはり、まるで違う世界のようでした。

ピンク色にぼんやり照らされた、暗いドームのような部屋。

ぬいぐるみ達と一緒に浮かぶ、黒い何かがどろどろ流れるベッド。


白い服の女の子は、部屋の中をまっすぐ横切ると、

いちばん奥にある、たくさん部品が付けられたドアを通って、次の部屋へ進みます。



232:2013/03/24(日) 00:52:46.60 ID:

五つの奇妙な部屋を、順番に通りぬけて、

白い服の女の子は、いちばん奥の部屋にたどりつきました。


最後の部屋は、うす暗いベッドルームでした。

壁にかけられた小さな額には、白い服の女の子の写真が飾られていて、

その下には、何の変哲もないベッドが置かれていました。

ベッドの中では、おばあさんが静かに眠っています。

部屋のすみには、猫のようなうさぎのような、おかしな白い生き物がいますが、

女の子は、その生き物には目もくれず、まっすぐにベッドへ向かいました。



233:2013/03/24(日) 00:53:37.75 ID:

ベッドのかたわらの小さなランプと、窓から差しこむ月明かりが、

暗いベッドルームの中を、うすぼんやりと照らしていました。

おかしな白い生き物は、つぶらな赤い瞳で、じっとベッドを見つめています。


白い服の女の子が、ベッドのそばにかがみ込むと、

眠っていたおばあさんが、その両目を開きました。



234:2013/03/24(日) 00:54:55.44 ID:

あるところに、1人の女の子がいました。

アパートの一室、日の光が差しこむ赤い部屋の中で、

女の子はひとり、ぽつんと立っています。


薄い色の肌をしたその女の子は、髪をふたつのリボンで飾り、

きれいな白い色の服を着ていました。

けれども、その白い服の胸元は、まっ黒なもので汚れてしまっています。



235:2013/03/24(日) 00:55:34.85 ID:

そこへ、部屋のドアを静かに開けて、

長い黒髪にカチューシャをした女の子がやってきました。

女の子は壁ぎわに立つと、白い壁時計をいじりはじめました。



236:2013/03/24(日) 00:56:13.50 ID:

次に、部屋のドアを無造作に開けて、

長い赤毛をポニーテールにした女の子がやってきました。

女の子はテーブルにもたれかかると、白い包み紙をむいてお菓子を食べはじめました。



237:2013/03/24(日) 00:56:45.11 ID:

つづいて、部屋のドアを勢いよく開けて、

短い髪にふたつの髪留めをした女の子がやってきました。

女の子は床に座り込むと、白いイヤホンをつけて音楽を聴きはじめました。



238:2013/03/24(日) 00:57:34.66 ID:

さらに、部屋のドアを上品に開けて、

髪をくるりと巻いておさげにした女の子がやってきました。

女の子はテーブルにつくと、白いティーカップに紅茶を注ぎはじめました。



239:2013/03/24(日) 00:58:13.94 ID:

最後に、部屋のドアをそおっと開けて、

赤いリボンで髪をふたつにくくった女の子がやってきました。

女の子は椅子に腰かけ、膝の上で白いノートを開くと、らくがきをはじめました。


5人の女の子たちが戻ってくると、よごれた白い服の女の子は、ひとり部屋を出てゆきました。



240:2013/03/24(日) 00:59:53.85 ID:

よごれてしまった服を、きれいな白い服に着がえると、

女の子は、道のまわりに広がる森へと、ふたたび足を踏み入れました。


オオカミに目をつけられて、暗い森に迷い込んでしまうのは、

あの5人の女の子たちだけではありません。

薄暗い森の奥では今も、オオカミが女の子たちを狙っています。

どこまでも続く森の中に、女の子たちが興味を示すものを置き、

女の子たちを食べるために、オオカミではないものに姿を変えて。

そうして、女の子たちが森に迷い込んでくるのを、じっと待っているのです。


彼女は今日もまた、迷える女の子たちを探して、森の中を走ってゆくのでした。



241:2013/03/24(日) 01:00:41.39 ID:

          AND I WILL EAT YOU!

          AND I WILL EAT YOU!

     AND I WILL EAT YOU, EAT YOU, EAT YOU!





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