1:2013/05/10(金) 14:14:55.90 ID:
舞台はS市杜王町。

吉良吉影が川尻浩作に扮し、バイツァダストを身につけ、

そして『仗助達と戦わなかった』場合の想像のお話。



吉良はある少年と少女に出会う。




※オリジナルキャラ及びオリジナルスタンドが登場します。


拙い文章ですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

吉良吉影


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1368162895

2:2013/05/10(金) 14:25:38.88 ID:
商店街の電器店。
テレビの前に二人の学生が集まっている。

学生A「おおお~~!グルメリポーターの億泰だッ!今日は『自然薯そば』かよ~っ!」

学生B「すげーよな、同じ街の高校生がテレビに出るなんてよォ~~
飯食ってる時にスカウトされるとか、うらやましいぜェーーッ!」


「名匠が研いだ刀みてーな蕎麦のなめらかさ!
自然薯もよォ、こねくり回した餅みてーな感触っつーかよおー、
箸で持ち上げてもこぼれそうでこぼれねェーーッ!
祭りの時の金魚すくい、みてーによお~っ!ゥンまああ~~~いっ!!」


学生A「ゴクリ。今日の昼飯はそば屋『有りす川』で決まりだなッ!」

学生B「あぁ、もう12時になる!早く行こうぜええ~~っ!」


3:2013/05/10(金) 14:37:20.06 ID:
時計の針は12時ちょうどを指している。

吉良はサンジェルマンの紙袋をゴミ箱に捨て、
駅に向かって商店街を歩いていた。

「今日のカツサンドも美味だった」

そんな事を考えていると、
ふと背後に言い表せない『奇妙な感覚』を感じた。

吉良は後ろを振り向く。

少年と少女が歩いていた。
早人と同じくらいの年だろうか。

吉良「(この『感覚』は……この少年達か?)」


4:2013/05/10(金) 14:47:45.48 ID:
吉良が少年達をじっと見ていると、少年が口を開いた。

少年「僕の名前は『孝貴(こうき)』」

少女「……わたしは『紗枝(さえ)』」

少年「おじさんの名前は何て言うの?」

吉良「(ん?何だこの子供達は…
わたしの名か?わたしの名は『吉良吉影』。
フフフハハハハッ!この名を誰かに言うわけがないだろう)」

少年「言うわけがない?でもごめんね、僕『わかる』んだ。
『キラヨシカゲ』って言うんだね、おじさん」


ゴゴゴゴゴゴ…

吉良「…な、なにィ!?」


5:2013/05/10(金) 14:59:33.18 ID:
吉良「(こいつ…新手のスタンド使いかッ!?)」

少年「?? ねぇ『スタンド使い』って何?」

吉良「考えを読まれた!?
(仕方ないッ!早人のバイツァダストを解除し…) キラークイーンッ!」

シュバッ!……ピタッ

少年「??」

吉良「み、見えていないのか…?『キラークイーン』が!」

少女「キャアッ!?」

吉良「!?」 少年「!?」

不良「一家団欒のおしゃべり中スミマセンねェー。幸せ家族もさ、
少しは『不幸』にならなきゃいけねーとオレは思うわけよ」


6:2013/05/10(金) 15:12:10.16 ID:
少女「あれ?バッグが…!?ねぇ、バッグとったでしょ!返して!」

不良「うるせーぞッ!ソバカスだらけの顔しやがって!
ブツブツ言うのは顔面だけにしろよコラァ!」

少女「!? う…うぅっ……」

少年「おいッ!バッグ返せよ!『大切なもの』なんだ!あと謝れ!」

不良「ハハッ!やなこった!ホレパ~~スッ!」

仲間の不良にバッグを投げる。仲間の不良はそのままどこかに走り去ってしまった。


少年「あ、あいつ…ッ!?」

吉良「(わたしは、トラブルには極力関わらない。
カワイソーだとは思うが、私は無関け……こ、これはッ!?)」

吉良の視界に少女の『手』が映った。


7:2013/05/10(金) 15:25:52.98 ID:
吉良「(う…美しいッ!なんて美しい『手』なんだ!
この少女は『大器』だ。大人になれば素晴らしい女性になるッ!)」

不良「おいおっさん。どこ見てんだ?反抗期の子供はちゃんとしつけとけよ。
しょうがねぇッ!まずはオレがてめーをしつけてやるぜェェーーッ!」

吉良「(ムッ!『手』に見とれて呆けていたか。
わたしとしたことがこんなカスに絡まれるとはな。仕方ない…)」

ボンッ!ピュッ
吉良はキラークイーンで不良の指を切断する。


不良「!? おおおあっ…ふううああ~おおあ!?」

不良は泣き叫びながらどこかに走り去ってしまった。

吉良「(フン。失せろ。さてこの少年達をどうするか。
わたしを襲うつもりならもうやっているはず。
しかし、何もしてこない。『心は読める』が、
どうやらスタンド使いではないらしいな…)」

少年「……」

吉良「君達に話がある。ついてこい。
(もし逃げるのであれば、すぐに『始末する』)」


8:2013/05/10(金) 15:39:33.27 ID:
吉良達は、商店街から脇道にそれた場所にある、
小さな公園に来ていた。公園の中央部に大きな樹がある以外に、取り立てて目立つものはない。

駅からも近いが、吉良達以外に人はいなかった。

吉良「静かな良い場所だ。正式名称は忘れたが、
通称『初公園(ういこうえん)』と呼ばれていたかな」

少女「……」

少女はバッグの行方を追いたかったようだが、
少年が「ダメだ。行ったらおじさんに殺される。
さすがにこんなところで死ぬのは嫌だろ?」
という話をし、渋々ついてきたようだ。


『キミタチ三人ハ 「三ツ」以上ダ』

吉良「ん…?何か今、『声』が聞こえたか…?」


9:2013/05/10(金) 15:53:07.50 ID:
吉良「(それにしても…
この少女はさっきからずっと『目をつぶっている』。それにあの杖。盲目なのか?
バッグを盗られた時も、一瞬何があったかわかっていない風ではあったが…まぁいい)」

吉良「(ここでこの吉良吉影の考える選択肢は二つだ。
①二人共殺す
②片方を殺し、片方をバイツァダストの対象にする
どうするかな。先程早人から解除したとはいえ、
現状バイツァダストの対象はあいつがベストだろうし…)」

少年「ねぇ、聞きたいんだけど」

吉良「……何だ?」

少年「さっき紗枝のことを『美しい』って思ってたよね?」

吉良「……あぁ、確かにそう思っていた。それがどうした?」

少女「ええ!?わ、わたしが『美しい』…!?そんな…でも嬉しい」

ポッ
少女の頬が赤らみ始め、そして恥ずかしそうに微笑んだ。


10:2013/05/10(金) 16:03:29.11 ID:
少年「紗枝が僕以外の人間の前で笑った…!!すごい!」

吉良「(…な、何なんだ?)」

少年「おじさん、ありがとう!『あの日』以来だよ!快挙だ!」

吉良「どういうことだ?話が見えない」

少年「あぁ、ごめん。さっきも疑問に思ってたよね。盲目なのか?って。
そう、紗枝は目が見えないんだ。5才の時から…」

吉良「生まれつきではないのか。何か事故にでもあったのか?」

少年「ううん。事故じゃない。紗枝は自分で自分の目を…」




少年「『潰した』んだ」


11:2013/05/10(金) 16:13:48.18 ID:
名門の栗生家は、杜王町から内陸部へ車で1時間半程走ったところにある。

少女の名前は『栗生紗枝(くりうさえ)』。

兄の名前は『栗生孝貴(くりうこうき)』。1988年1月30日に、この二人の双子は生まれた。


双子には特別な『能力』があった。

その目で『見た』人間の『考えがわかる』という、一種のテレパシー能力。

しかし現在、このテレパシー能力を使えるのは孝貴だけだ。


紗枝は5才の時に、この能力を『失明』という形で失っている。


12:2013/05/10(金) 16:21:19.07 ID:
- 7年前(5才の時) -

チュンチュン…
小鳥が少女の左手に乗っている。

紗枝「うふふ、かわいい」

孝貴「おーい!ご飯のじかんだぞー!」

紗枝「あら、それじゃあ今日はここまでね。お行きなさい」

バサバサバサ…
紗枝が声をかけると、鳥は庭の木へ向け羽ばたいていった。


孝貴「紗枝はとりやねこがすきだね」

紗枝「うん。だってうそをつかないから…」


13:2013/05/10(金) 16:30:30.33 ID:
母「(さて、紗枝にもそろそろ料理を覚えてもらいましょうか)
ねぇ紗枝。今度お母さんと一緒にお料理を作らない?」

紗枝「……」

母「(ノーリアクション。ほんっと不気味な子だわ。あーやだやだ。召し使いにやらせよう)
あら、お母さんとは嫌かしら?じゃあ仕方がないわね。メイドさんに任せましょうか」


メイドA「お嬢様、本日も素敵なお召し物ですね。
(この年でこのソバカスの量!あれだけケアしてこれなんて、超ウケルわ~~~)」

メイドB「奥様から料理のお勉強をするよう仰せつかっておりますが、いかがなさいますか?
(この子本当に気持ち悪いィィ~~~ッ!無表情だし。ノーって言わないかなあ~、っていうか言えッ!)」

メイドC「お嬢様は本当に鳥がお好きですね。
(そんなに訓練された鳥が好きなのォ~?まぁ野生の鳥なんて見たことがないんだろうけどねェ~~~)」


14:2013/05/10(金) 16:47:19.42 ID:
孝貴と紗枝は、庭にあるベンチで星空を見ていた。


孝貴「……今日みた映画むずかしかったね」

紗枝「うん。でもわたしとてもすき。いままでの映画で『いちばんすき』よ」

孝貴「『ひのなごり』だっけ?」

紗枝「そう。ねぇお兄ちゃん…」

孝貴「ん?」


二人は顔を合わし、見つめ合う。


紗枝「(お兄ちゃんは紗枝のこと、すき?)」

孝貴「(あたりまえじゃないか。すきだよ。『いちばんすき』だ)」

紗枝「(うれしい。ねぇ…わたしお外にでたい)」

孝貴「(そうだね、僕もでてみたいなあ。よし、なんとかぬけ出してみよう!)」


二人は生まれてから、ただの一度も家の敷地から外に出たことがなかった。

敷地内にいる動物や鳥類は訓練され、二人の言うことを聞くように『躾られていた』。

紗枝は『野生』の鳥や動物に会ってみたかった。

孝貴は、紗枝の望みを叶えてやりたかった。

ただそれだけだった。


15:2013/05/10(金) 17:03:54.82 ID:
母「何ですって!?孝貴と紗枝が見当たらない!?あいつらッッ!!」

屋敷内は騒然としていた。
昼食の時間になっても孝貴と紗枝が姿を見せず、
使用人総出で二人を捜索。結果、敷地内に二人の姿を見つけられなかったのだ。

二人が『外』に出てもう何時間も経過している。


執事「何…?うん、うん、わかった。奥様!お二人を発見したそうです!」

母「本当!?どこにいたの!?」

執事「そ、それがその…」

母「早く言いなさい!」

執事「ぶ、『ぶどうが丘総合病院』…です」

母「な、何でそんなところに!?」


16:2013/05/10(金) 17:14:18.61 ID:
- 数時間前 -

自宅からここまで、2時間近くかかっただろうか。
二人はタクシーに乗り、海まで来ていた。

運転手「ここら一体の海岸は別荘地帯なんだ。
東京に住んでいるどこかの社長の避暑地としても使われているんだよ」

紗枝「すっごおおお~~い」

孝貴「うわあああ、きれいだな~~」

二人はタクシーから降り、辺りの景色を眺め感嘆の声を上げている。


運転手「ところで…まだ乗るかい?」

孝貴「いや、ここでいいよ。どうもありがとう!」

運転手「……あの、『お代』の方を頂きたいんだけど」

孝貴「おだいって??」

運転手「……ええ、だから『お金』ですよ。二人は『栗生家』のご子息だよね?」

孝貴「『お金』って……なんだ?」


17:2013/05/10(金) 17:27:51.92 ID:
ドゴァッ!
運転手が孝貴を蹴り上げた。

孝貴「……ッ!?」

運転手「てめーこのクソガキがあああぁぁぁッ!『栗生』じゃねーのかよ!!」

ドゴッ!ドカッ!

運転手「許せねぇ!図に乗りやがって!教育だ!教育してやるッ!
金がねーだと!?こんな距離走らせやがって!ぶちのめさねーと気がすまねェーーッ!!」

紗枝「や、やめて!」

ドガッ!ドカッ!

運転手「はぁ…はぁ…!やめるわけねーだろうがッ!オラ!どうだ!思い知ったか!」

孝貴「う…うぅ……」

ゴロツキA「ねぇオジサァ~~~ン、ナニやってるんスかぁ~~?」


19:2013/05/10(金) 17:41:31.66 ID:
運転手「あぁ!? (げっ、いかにもなゴロツキが二人…)」

ゴロツキA「ヘイヘイヘイ!なんか文句あんのか?」

運転手「……ちっ!文句はないよ。じゃあな」

運転手はタクシーに乗り込み、早々に立ち去ってしまった。


ゴロツキB「全く、社会人がこんなことやってんじゃあねーぜ。なぁ?」

孝貴「あ、ありが…」

ドゴォッ!!

孝貴「!? ぐ、ぐああッ!?」

ゴロツキB「こういうのはオレらの『特権』だぜ」

ゴロツキA「コチとら3日前バイトクビになって、カネもねえスケも寄り付かねぇ…
『ジャンフランコ・フェレ』?ガキがいい服着やがって!浮かれてんじゃあねーぜこのボンクラッ!」

ドガァッ!ドゴッ!

紗枝「や…やめて!やめてーーッ!!」


20:2013/05/10(金) 17:55:34.12 ID:
紗枝「お兄ちゃん!……やめて!やめてよ!!
(な、なんで言うこときいてくれないの?
しつじもメイドも、みんな言うことをきいてくれてたのに。
タクシーのひとも、このひとたちも、なんで言うこときいてくれないの…?)」


もう嫌だ…


ゴロツキA「ギャハハッ!」 ドカッ!

ゴロツキB「ヤクやる程じゃあねーがスッキリするなあッ!」 ドガッ!


もう嫌だ…


ゴロツキA「こいつ思いっきり転げ回ってるぞッ!」 ドゴッ!

ゴロツキB「このバカタレがッ!ヒヒ!」 ドゴォッ!


もうこんなせかい…見たくない!!


紗枝「うわああああああッ!!!!」


22:2013/05/10(金) 18:07:53.76 ID:
- ぶどうが丘総合病院 -

母「し、失明…!?」

医師「ええ。そこらに落ちてる釘で刺したようですが、両目共に視神経をやられています。
残念ですが、もう娘さんに視力が戻ることはありません」

母「そ、そんな…」

孝貴「お、お母さん。僕…」

母「あんたは黙ってなッ!(クソッ!このクソガキ共!栗生家の恥さらしだわッ!)」

医師「息子さんも相当ひどい傷を負っています、あまり大声は出さないで…」

孝貴「……」




二人は学んだ。
不信と用心こそが、安心の両親であると。

外の世界は楽しい。でも、誰も信用はできない。

二人はこの時から『植物の心のように穏やかな生活』を送りたいと願い始めた。


23:2013/05/10(金) 18:24:17.38 ID:
- 現在 -

少年「それから僕らは誰も信用せず、紗枝に至っては笑うこともせず、今まで生きてきたんだ。
おじさんに声をかけちゃったのは、じっと見られてたからつい……」

吉良「……(似ている。いや、というより同じだ。『わたしの考え』と)」

少年「でもおじさんに声をかけて良かった。
おじさんはすごい。紗枝はもう…人前で笑わないと思っていたから」

吉良「わたしが美しいと思ったのは嘘かもしれんぞ?」

少女「ううん。声で『わかる』の。嘘か本当かくらいは…」

吉良「(なるほど。視力を失った結果、少女のテレパシー能力が『聴くこと』に特化したのか。
……そろそろこの公園に来て20分近く経つ。いい加減この子達をどうするか決めないとな。
わたしに敵対する気がないのであれば、この『心を読む』能力は使えるが)」

少年「ねぇおじさん。お願いがあるんだ」

吉良「(しかしこのわたしの正体を知られている。どうするか……)」

少年「僕達の『友達』になってよ」


24:2013/05/10(金) 18:38:14.64 ID:
吉良「……このわたしと『友達』になりたいだと?」

少女「わたしも同じ気持ちよ、ダメ?」

真剣な眼差しで、少年と少女(見えてはいないが)が吉良を見つめる。


『二十分ケイカシタ 第二ダンカイニ ウツル』

吉良「(何だ!?また『声』がしたぞ。公園に入った時と、
この子達の話を聞いている際にも聞こえた。確かその時は『第一ダンカイ』だったか?
今回も後ろから聞こえた気がしたが…)」

クルッ
しかし、吉良の背後には大樹しかない。

吉良「(もしや、何らかのスタンド攻撃を受けているのか…?)」

少年「どうしたの?僕は『声』なんて聞こえなかったけど」


25:2013/05/10(金) 18:52:10.82 ID:
吉良は思う。

吉良「(『友達』…か。わたしのことをそういう風に話す奴はいた。
しかし、どいつもその目は『本気』ではなかった。だがどうだ、この少年の『目』は。
平和の象徴が鳩であるのと同様に、本気の象徴であるかのような『目』をしている)」

孝貴「うん。僕は…いや『僕達』は本気だよ」

吉良「(少年は『ジャンフランコ・フェレ』が好きだ。一緒に服を見るのも楽しいだろう。
また少女は『日の名残り』が好きだ。同じ感性を持つ者同士、語り合う機会を設けてみたくもある。
そもそも『考え方』も近い。色々と話をしてみるのは面白いかもしれない)」

孝貴「じゃあ…!友達になってくれるんだね!」

紗枝「ほんと?嬉しい……」

吉良「まったく、口に出したことに反応してくれ。友達か……まぁ勝手にしろ」


26:2013/05/10(金) 18:57:59.68 ID:
少年「『ヨシカゲ』は社会人だよね?どんなお仕事をしてるの?」

吉良「おい!気安くその名前を呼ぶんじゃあないッ!」

少年「なんで?『友達』は名前で呼び合うってこと、僕知ってるよ」

吉良「……まぁいい、好きに呼べ。
(おかしい。この程度は構わないと思ってしまった。何か調子が狂う…)」

ゴゴゴゴゴゴ…


27:2013/05/10(金) 19:10:47.96 ID:
吉良吉影は、『植物の心のように穏やかな生活』を送りたいと願っている。
しかしその願いは未だ叶えられるメドが立っていない。

承太郎達と出会ってからだ。
バイツァダストを身に着けた当時、その憂いは取り除かれたはずだった。

しかし『真の平穏』は未だ訪れない。
承太郎達との戦いが起こる『可能性』、それがある限りは。


そんな毎日にストレスを感じていたのだろう。

この少年と少女に自身の正体を知られたことが、
一種の『禁を犯した』ということが、吉良に『奇妙な安らぎ』をもたらし始めていた。


28:2013/05/10(金) 19:19:23.66 ID:
少女「ヨシカゲはお仕事がとってもできるのね、すごいわ」

吉良「ヘンリー・フォードも言っていた。
小さな仕事に分けてしまえば、特に難しい仕事なんて何もない」

少年「すごいなああ~~。憧れちゃうよ」

吉良「君達に教えておこう。将来就職先に迷ったら、カメユーチェーンで勤めると良い。
カメユーチェーンはわたしが知る限り、社員にとって最高の会社だ。
福祉が充実しているとか、仕事量が少ないとか、そういった事ではない。
個人が責任を負うことなく、金銭を稼げる会社なのだよ。フフフ……」

少年「あれ、ちょっと悪い顔になってるよヨシカゲ?」

吉良「わたしの顔はずっとこれだ(…いや、一年前からだったかな?ハハハ)」


29:2013/05/10(金) 19:29:30.15 ID:
時計の針が12時40分を指した。

『三十分ケイカシタ 第三ダンカイニ ウツル ユウジョウハ 「成熟」シタ』


吉良「!? また『声』だッ!?」

孝貴「どうしたのヨシカゲ?紗枝は何か聞こえた?」

紗枝「ううん、わたし達以外の『声』なんて聞こえない」

吉良「間違いない、誰かいるなッ!?
シアーハートアタックで索敵を……いや、駄目だ!『孝貴と紗枝』がいる中でそれはできない。
ん?……な、何と言った?今わたしはッ!この二人を『名前』で呼んだのかッ!?」

ゴゴゴゴゴゴ…

吉良「この感情は『おかしい』!
やはりこの公園、何かあるなッ!?声がしたのは全てあの『大樹』の方向!
キラークイーン『第一の爆弾』で大樹を吹き飛ばすッ!!」

『マテ ソレハコマル』


30:2013/05/10(金) 19:36:21.22 ID:
吉良「待てだと?……やはりこの大樹がスタンド使いか?」

『ワタシハ 「スタンド使イ」 デハナイ スタンドソノモノ ダ』

吉良「同じだ。スタンドを爆破すれば、本体も爆破される」

『チガウチガウ ホンタイハ 何十年モ前ニ 死亡 シテイル
ワタシハ 一人歩キシテイル 「スタンド」ダ ドゥーユーアンダスタン?』

吉良「!? (ということは、意志を持った『スーパーフライ』のようなものか?)」

『ワタシノナハ 「グリーンガーデン」 能力ハ 「ユウジョウ」ヲ ハグクムコト』


31:2013/05/10(金) 19:47:21.41 ID:
吉良「『友情』だと?なるほど。これでここ一時間弱の不可解な点が、全て線になった」

『一ツ言ッテオク コノ能力ニ 「強制力」ハナイ
君ガ感ジタ ユウジョウハ 君達ノ才能ニ ヨルモノダ
スタンドノ才能 トドウヨウニ 君達ニハ ユウジョウノ才能 ガアッタノダ
ワタシハ 糸デ繋イダダケ 編ンダノハ 君達ジシンダ』

吉良「……」




孝貴「ヨシカゲ、さっきからどうしたんだろう?」

紗枝「ねえお兄ちゃん。『アレ』…どうしよう」

孝貴「紗枝はどうしたいの?」

紗枝「わたしはヨシカゲと話をしていたいわ。お兄ちゃんは?」

孝貴「僕も紗枝と同じだよ。どんなことになったっていい。初めて『友達』ができたんだから」


33:2013/05/10(金) 19:56:53.92 ID:
吉良は、このスタンドには『敵意』がないとわかった。
警戒心のなくなった吉良は、生まれて初めてある『感情』に直面していた。

『もっと話したい』

仲の良い友達と門限寸前まで遊んだり、話したこんだ時。
このような気持ちを持ったことが誰しも一度はあるだろう。



しかし、吉良吉影は違う。孝貴と紗枝も違う。

三人は生まれて初めて、この感情を感じ始めていた。


34:2013/05/10(金) 20:05:50.15 ID:
時計の針は12時45分を指した。
公園には、三人の笑い声だけが響き渡っていた。

『楽しい』

吉良はそう思った。誰かと話をしていて、こんなに心安らぐことがあるとは…


吉良は、今まで体験したことのない心地良い時間を過ごしていた。

しかし、この時間はこれから突如消失することになる。


孝貴&紗枝「ゴホ!ゴホッ!?」

二人が同時にむせ始め、大量の血が口から吐き出された。


35:2013/05/10(金) 20:12:06.82 ID:
吉良「お、おい!大丈夫か?急にどうしたんだ?」

孝貴「ほ、『発作』が始まってしまった…」

吉良「発作…?」

孝貴「うん。僕達……病気持ちでさ。ゴホ!ゴホッ!!」

また吐血をした。
苦悶の表情を二人が浮かべている。

吉良「薬はないのか?水が必要なら買ってくるが」

孝貴「薬は…家だよ。でも家はここから車で1時間半はかかる」


36:2013/05/10(金) 20:22:37.38 ID:
吉良「1時間半だと!?そんなに遠いなら、なぜ普段から薬を持ち歩いていないんだ!?」

孝貴「持っていたけど…さっき盗られちゃったから」

吉良「さっき盗られた……?ハッ!
最初に不良が盗っていったバッグ――。あれかッ!?」

孝貴「うん」

吉良「確かに『大切なもの』と言っていたが、
ではなぜ私と喋っていた?早く家に帰っていれば…!」

紗枝「だってわたし、ヨシカゲと話をするのが楽しかったから…」

孝貴「僕も同じ。最初は殺されたくなかったからだけどね。でも本当に楽しかったなあ…」


吉良「……それでその薬がないと、この発作が続くとどうなる?」

孝貴「このままだと、多分僕達は30分もしない内に…」




孝貴「『死ぬ』」


37:2013/05/10(金) 20:32:17.46 ID:
吉良「(死ぬ……だと!?)」

孝貴「ゴホッ!ゴホッ!!…はぁ…はぁ」

孝貴がまた吐血をした。
口を覆った手の半分以上の面積を、真っ赤な血が占める。

吉良「(馬鹿な。そんな事態だったとは…!
命よりも、わたしとの会話を優先したというのかッ!?ええい…
あのバッグを探すことも難しい、家も遠過ぎる。どうする?どうすれば…ハッ!)」

この現状を打破できるスタンド。
『治す』ことのできるスタンド。
奴なら…!

吉良「お前たち!少し待っていろ!『治せる』奴を連れてくるッ!」

吉良は公衆電話に向かって走り出す。


吉良「(『東方』だ、仗助の苗字は『東方』。番号を調べコールして……)」

トゥルルルル…トゥルルルル…ガチャ

「はい、東方です」


38:2013/05/10(金) 20:47:26.97 ID:
吉良「もしもし、仗助はいるか?」

「あ?…おい、おっさん誰だ?まずはてめーが名乗れ。あんたが先によ」

吉良「(しまった!?焦り過ぎたか。今電話に出ているのが『仗助』だったとは…!
名前をどうする?川尻や偽名を使えば怪しまれる。『吉良』の名前はもってのほかだ)」

「おい、何黙ってるんスか。てめーの名前をよ、ホレッ!まず名乗りなよ」

吉良「……すまないが、名前は名乗れない。緊急の用があって仗助に電話をした」

「緊急ゥゥ~~?何だってんだよ?」

吉良「杜王町駅近くの『初公園(ういこうえん)』で、子供が二人死にそうなんだ。
特殊な病気で君にしか『治せない』。時間がもうない、すぐに来てくれ!」

「ああ~?おめー見知らぬ奴から電話があってよ、
今すぐ来てくれなんて言われたら…そりゃ『罠』だって思わねーか?」

吉良「それは思う。しかし真実なんだッ!仗助にしか治せない!
わたしだって自分でできるなら何とかしている!」

「話がよォ~~見えねーぜ。おめーは誰だ?何を企んでる?」

吉良「企んで等いない!」


39:2013/05/10(金) 20:56:06.93 ID:
「(何だァ~こいつは。オレのクレイジーダイヤモンドは『病気は治せない』。
ただ『治せる』という能力自体は知っている。仲間でもねーのに。
…こいつもしや『吉良吉影』か?
でもだとしたらなぜこんな危険な行動に出る?
吉良は平穏を愛し、余計な関わり合いは極力しない男。その辻褄が合わねェー)」

吉良「頼む……『友達』の命がかかっているんだ…」

「…友達だと!?決まりだな!てめーは『吉良吉影』だと思ったが違う。
吉良は人を信用しない一匹狼だ。仲間や友達なんて最も信用していない。
親しい『友達』なんか絶対作らねーッ!おめー何者だコラァーーッ!!」

吉良「……!!クソッ!」

ガチャ!…ツーツー

吉良「おのれ…くそったれ仗助がッ!!こうなれば…」


40:2013/05/10(金) 21:04:21.54 ID:

『バイツァダスト』は、
わたしの正体を知られたくない一心で発現した能力だ。

正体を知られる前の時間に戻す。
できるだろうか?いや、やらなければならない。

もう、『この方法しかない』


わたしと『出会い』、
『不良に絡まれ』、『薬を失くし』、
『発作を起こす』運命ならば……



わたしと、『出会わなければいい』


41:2013/05/10(金) 21:15:41.03 ID:
ベンチに横たわる孝貴と紗枝。
地面にはいくつもの血の跡が見える。
何度も何度も吐血したのだろう。

孝貴「あ…ヨシカゲ。ゴホ!ゴホッ!」

吉良「(バイツァダストを使い、時間を戻す。
そこで運命を変えるしかない。二人の命を救うにはそれしかない)」

孝貴「…ヨシカゲ、それってどういうこと?『時間を戻す』?」

吉良「……」

孝貴「いつまで戻すんだよ?『僕達』と出会う前だって?
出会わなかったことにすれば、僕たちの発作は起こらない?」

紗枝「ゴホッ!ゴホッ!…はぁ…はぁ。ばか言わないで!
せっかく友達になれたのに!そんなことしちゃダメ!」

吉良「しかし、命がかかっている」

紗枝「わたしはこれで良いの!ううん、これ『が』良い!この思い出を持って死にたい!」

孝貴「僕もだ!初めて友達ができた!こんな幸せなことはもう起こらない!このまま死にたい!」


42:2013/05/10(金) 21:19:23.21 ID:
――死ぬ?

いやに簡単に言うな。

まぁ死ぬのは確かに自由だ。


自分の人生の終わりを自分で決めてもいいだろう。

しかし……



それこそが、だ。やはり『子供』だな。

お前らが死んで、他の人間がどう思うかわかっちゃいない。

このわたしが『どう思うか』わかっちゃいない――


43:2013/05/10(金) 21:26:16.14 ID:
ギュウッ
吉良が、二人を抱きしめた。

孝貴「え…?ヨ、ヨシカゲ!?」

紗枝「ど、どうしたの急に?」

吉良「……」

それは友愛に溢れた抱擁だった。
吉良は全ての神経を動員し、二人の温もりを感じていた。
二人もそれは同様だった。


スッ…
そして吉良は二人から離れると、
右手を突き出し、スイッチの準備に入った。

孝貴「!? ヨシカゲ……その右手。それで『スイッチ』を押すんだな!?」

吉良「……そうだ。スタンド使いでないお前達に止める術はない」

時計の針は12時58分を指している。
もう時間はない。

孝貴「ダメだ!スイッチを押させるなァーーーッ!!」

吉良「いいや、限界だ」


44:2013/05/10(金) 21:27:16.84 ID:
友情とは何だ?
よくわからない。

それを失うとどうなる?
想像すらできない。

では、この二人がこのまま死んでしまったら……



それは、『嫌』だ。



紗枝「……ゴホゴホッ!!はぁ…はぁ…。大丈夫!わたし大丈夫だからッ!」

左足に紗枝がしがみついている。涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃだ。
孝貴は咳き込みながらも、わたしの右手に真っ赤な両手を伸ばしている。

孝貴「ゴホ!ゴホッ!はぁ…はぁ…。
僕も大丈夫だ!なぁやめろよ!言うこと聞けよ!僕達…『友達』じゃないかーーーッ!!」



あぁ、『そう』だ。
だから――

吉良「……押すね!」



カチッ。

吉良の親指が人差し指に触れ、スイッチが起動した。


45:2013/05/10(金) 21:28:04.42 ID:
時計の針は12時ちょうどを指している。

吉良はサンジェルマンの紙袋をゴミ箱に捨て、
駅に向かって商店街を歩いていた。

「今日のカツサンドも美味だった」

そんな事を考えていると、
ふと背後に言い表せない『奇妙な感覚』を感じた。

しかし吉良は振り向かずに、そのまま真っ直ぐ歩き出す。

吉良の横を、少年と少女が通り過ぎた。
吉良は少年と目が合う。


少年「ねぇねぇ。あのおじさん、今僕たちを見てニヤっとしたよ!
すぐに目を逸らしたけど」

少女「なんで?」

少年「わかんない。『良かった、間に合った』って『考えてた』。
ますますわかんないや」

少女「なんか気持ちわるいねー」

二人はキャハハと笑いながら歩いていく。



二人はもう、後ろを振り返ることはなかった。

少年と少女の姿が見えなくなるまで、吉良は二人の背中を眺めていた。

吉良「これで……私の正体を知る者はいなくなったな」



≪吉良吉影の奇妙な友情 -完-≫


46:2013/05/10(金) 21:29:12.46 ID:
オリジナルスタンド名『グリーンガーデン』


本体は数十年以上前に死亡したインヴェルディーレというイタリア人男性。職業は庭師。
彼が旅行中にこの公園を訪れた際、大樹に彼のスタンド能力が宿った。

大樹はアヌビス神のように意志を持っており、
スタンド使いである吉良にはその『声』が聞こえている。

名前の由来は『Laura Mvula』の楽曲『Green Garden』に由来。

なおインヴェルディーレはイタリア語で『緑(色)になる』という意味。


<能力>

射程距離内(公園内)の人間の内、
『誕生日』や『何らかの好み』、『考え方』が合う者同士の友情を育む。

必ず育むわけではなく、あくまでそのキッカケを与えるに過ぎない。
スタンドの才能と同様に、友情の才能がなければそれは開花しない。

また、射程距離外に出ようと、育まれた友情が失われることはない。
(喧嘩をしたり疎遠になることで失われることはある)


共通項が1つかつ10分程で「役に立つ友情」を育み、
共通項が2つかつ20分程で「目的志向の友情」を育み、
共通項が3つ以上かつ30分以上で文字通りの「友情」に至る(成熟)。

※心理学者のヘルプ・ゴールトバーグによる友情の三段階を参照。


47:2013/05/10(金) 21:30:06.85 ID:
『初公園(ういこうえん)』について

正式名称は杜王友愛公園。地元の人からは『初公園(ういこうえん)』と呼ばれ親しまれている。
※友愛(ゆうあい)→ユーアイ→UI→うい→初

勿論、この話だけの架空の公園です。何も設定を生かすことなく終わりましたが…



『バイツァダストの解釈』について
※ジョジョの疑問スレまとめWiki、より参照

バイツァダストは『仕掛ける際の効果』と、『仕掛けた後の効果』が違う。
初めの朝、早人は一連の出来事を覚えておらず、吉良はバイツァダストについての知識を持っていた。
女の人に仕掛けた(と思ってた)時も吉良は、①「自分が記憶を持って巻き戻ったことに疑問を持っていない」
さらに初回巻き戻りの際、②「早人が繰り返しにより死んでない」

結論。仕掛ける際の効果は、
『吉良のみ記憶を持ったまま時間が巻き戻る+巻き戻る前の再現が起こることはない』



今回はこの仕掛ける際の効果を適用。
その為時を戻した後も吉良が少年達との記憶を持ち、かつ発作が起こらない未来に変わった。
という流れです。




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