1:2012/09/20(木) 22:58:27.32 ID:
シュタゲSSです。
間違いがあったら指摘してもらえるとありがたいです。
暗黒次元のハイドを聞いてない人は、先にそちらを。
シュタゲってみんな良いキャラしてるよね。
基本的に20~23時の間に投下します。

シュタインズゲート


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1348149507

2:2012/09/20(木) 22:58:56.32 ID:
遊びのようなものだった。

ただの好奇心だった。

時間を遡るメール。過去を変えることのできる未来ガジェット。

そんなSF世界でしか存在しないような物を、偶然とはいえ俺達は作り上げた。

……作り上げてしまった。


3:2012/09/20(木) 22:59:41.40 ID:
世界を牛耳る闇の秘密結社。

人体実験。

秘密を知ろうものがいれば、この世から消し去られる。

―――機関。

そんな妄想が、現実となったのだ。

俺は、楽しかった。

ラボメンとつるんで、SERNの陰謀を暴き、電話レンジを使って過去を改変して、

……俺は、楽しかった。


4:2012/09/20(木) 23:00:14.53 ID:
だけど同時に、不安もあった。

過去を改変するなど、予測もつかない実験をしてもいいのか。

早くやめるべきではないか。

好奇心には勝てなかった。

その結果が、こんな悲劇を招く事も知らずに。


5:2012/09/20(木) 23:01:46.67 ID:
俺が不用意にDメールを送ってしまったせいだ。

みんなの思い出を犠牲にしてしまったのは、全部俺の責任だ。

まゆりに何度も何度も、痛い思いをさせてしまったのは、俺の責任だ。

何度もタイムリープを繰り返しては、まゆりの救出に失敗して、何度もまゆりが死ぬ瞬間を見てきた。

何度も、何度も、何度も、何度も!

まゆりだけじゃない。俺のせいで、みんなが苦しんでいる。

ダルにハッキングをしろと言わなければよかった。

Dメールで不用意に過去を変えなければよかった。

萌郁をラボメンにしなければよかった。


6:2012/09/20(木) 23:02:24.26 ID:
全て、俺のせいなんだ。

それでも俺は、まゆりを助ける。

皮肉にもそのためには、Dメールを送ってみんなの思い出を犠牲にしなくてはいけない。

……最低だ。

好き放題に過去をいじくって、それでもまだ俺は過去を変えようとしている。

……次は、ルカ子の思いを踏みにじろうとしていた。


7:2012/09/20(木) 23:03:07.67 ID:


紅莉栖「……?」

紅莉栖「どうした? 岡部。思い詰めたような顔をしてるけど」

岡部「……いや、なんでもない」

紅莉栖「あんたらしくないな」

岡部「余計な御世話だ」

紅莉栖「はいはいそうですか。人が心配してやったのに、何よその態度」

岡部「……心配していたのか?」

紅莉栖「な……っ! べ、別に心配なんかしてないっ! た、ただ、あんたがそんな調子だと、まゆりが心配するだろうからと思って……!」

岡部「……そうか」


8:2012/09/20(木) 23:03:42.08 ID:
紅莉栖「………」ハァ

紅莉栖「まゆりのこと?」

岡部「………」ピク

紅莉栖「やっぱりそうか……」

紅莉栖「あまり、無理しないで」

岡部「心配するなら俺よりまゆりを心配しろと、前にも言ったはずだ」

紅莉栖「……?」

岡部「いや……、別の世界線での話だ」

紅莉栖「……なんか、頭の中を覗かれてるみたいで嫌な感じ」


9:2012/09/20(木) 23:04:13.55 ID:
岡部「俺は、まゆりを救うためにも、Dメールを送らなくてはいけない」

岡部「ルカ子が、女として生きてきた16年間をなかったことにする」

紅莉栖「……あんた、漆原さんとデートするんでしょ? そんなしょげた顔するな」

岡部「……そうだな」

岡部「………」

紅莉栖「………」

岡部「……なあ、クリスティーナ」

紅莉栖「ティーナって言うな」

岡部「お前は、どうして俺の力になる?」

紅莉栖「はあ?」


10:2012/09/20(木) 23:04:51.63 ID:
岡部「……俺は鈴羽やフェイリスの思い出を犠牲にした」

岡部「俺の勝手な理由で、思い出をなかったことにした」

岡部「フェイリスの大好きな父親も、もう存在していない」

紅莉栖「……あのな」

岡部「俺は最低だ」

紅莉栖「何を勘違いしているか知らないけど、私は私の意思であんたの力になりたい」

紅莉栖「そして、私もあんたと同じようにまゆりを助けたい」

岡部「………」

紅莉栖「らしくないな、本当に。いつもの鳳凰院凶真はどこにいった?」


11:2012/09/20(木) 23:05:32.71 ID:
岡部「……フ。鳳凰院凶真といえ、闇の秘密結社であるSERNを相手にすれば、」

岡部「苦戦するのだ」

紅莉栖「調子に乗るなっ」

紅莉栖「とにかくっ!」

紅莉栖「全部が全部、あんたの責任じゃない」

紅莉栖「私も、過去を改変したらどうなるか気になっていた。SERNへのハッキングも、」

紅莉栖「興味があったから」

岡部「……紅莉栖」

紅莉栖「っ……、な、名前で」


12:2012/09/20(木) 23:06:06.51 ID:
岡部「Dメールを送れば、世界線がどう変動するかは予測がつかない」

岡部「……もしかすれば、今より酷い世界線に行ってしまうかもしれない」

岡部「ラボもなく、鈴羽もいなく、未来にディストピアが待つような世界線にとんでしまうかもしれないんだ」

岡部「……それでも、俺は」

紅莉栖「……岡部」

紅莉栖「世界線が変動すれば、変動する前の事を覚えていられるのは岡部だけ」

紅莉栖「でも、これだけは覚えておいて」

紅莉栖「私がいる。たとえ私が忘れていようと、私はあんたの力になる」

紅莉栖「……ま、私とあんたが知り合いだったらの話だけど」


13:2012/09/20(木) 23:06:36.24 ID:
岡部「最後は余計だ」

紅莉栖「ふふっ、でも……、無理しないで」

岡部「……はっ」

岡部「ダルがここにいれば、デレ期ktkrとか叫んでいるんだろうな」

紅莉栖「なぁっ!? あ、あんたねっ! せっかく人が……っ!」

岡部「……なあ、紅莉栖」

紅莉栖「ふぇっ、は、はい……っ!?」

岡部「……ありがとな」

紅莉栖「………」

紅莉栖「ふん。礼なんて、いらないわよ……」


14:2012/09/20(木) 23:07:25.08 ID:


ルカ子が女として生きてきた16年間は、俺の勝手な理由でなかったことにする。

まゆりを救うために。

鈴羽の思いを無駄にしないために。

ルカ子は、今にも泣き出しそうな顔をしながら頷いてくれた。


―――今日は、本当に楽しかったです……。


笑顔で、それでいて泣きそうな顔をして言った。


15:2012/09/20(木) 23:08:08.04 ID:
入力を完了させ、後は紅莉栖に頼んで電話レンジを起動してもらう。

そして、親指に力を込めてメールを送信すれば、世界は変わる。


―――少しで、いいから……、僕のこと、覚えていてください……。

―――女の子だった、僕の事を……。


紅莉栖「放電現象、始まった!」


後は、親指に力を込めればいいだけ。

そうすれば、世界は変動し、ルカ子は男に戻る。

この背中のぬくもりも、今日一日、ルカ子と久しぶりに修行した事も、

全部、なかったことになる。


16:2012/09/20(木) 23:08:50.48 ID:
岡部「ルカ子……」

岡部「今日のこと、たとえお前が忘れてしまっても、」

岡部「俺は絶対に忘れない……」

ルカ「岡部、さん……っ」


送信ボタンを押す前に、

俺はふと、


岡部「俺は、まゆりを助ける」

岡部「いろんな人達の思いを犠牲にしても、」

岡部「まゆりを助けてみせる」

ルカ「はい……っ」


17:2012/09/20(木) 23:10:23.11 ID:
岡部「俺はルカ子も助ける……。ルカ子だけじゃない」

岡部「紅莉栖に、まゆりに、鈴羽に、フェイリスに、……ついでにダルも」

岡部「ラボメンに、辛い思いをさせたくない」

岡部「……俺は、絶対にまゆりを助ける」

岡部「だから、ごめんな。ルカ子。今だけは……っ」


親指に力を込め、送信ボタンを押した。

その瞬間、かつてないほどの眩暈と頭痛が襲いかかってくる。

上下感覚が狂ったような、時化た海に落ちたような錯覚。

ここまで強い運命探知(リーディング・シュタイナー)は始めてだ。

まるで、β世界線からα世界線にとんだ時のような、眩暈だった。


18:2012/09/20(木) 23:10:50.89 ID:





0.456914%   →   2.734562%





20:2012/09/20(木) 23:11:37.61 ID:




岡部「……?」

岡部「(……ここは?)」

岡部「(なんで俺はこんな所にいるんだ?)」

岡部「(確か、ルカ子を男に戻すためにDメールを送って……)」

岡部「……ん?」ピチャ

岡部「水……? い、いやこれはっ! 血!?」

岡部「ひっ!」


21:2012/09/20(木) 23:12:27.68 ID:
岡部「な、なんだこの血まみれの男は!?」

岡部「(し、死んでる? どうして? 何故?)」

岡部「あ……、ぁ……っ」

岡部「ぁぁ………っ!!」

岡部「うわあああああ!!」タッタッタ

岡部「(どういうことだ? 何が起きた? どうして人が死んでる?)」

岡部「(ついさっきまで俺は柳林神社にいたはずだ。なのにどうしてこんな所にいる?)」

岡部「あっ、血……。血がっ」

岡部「な、なんで。なんで俺の手が血で……」


22:2012/09/20(木) 23:13:06.70 ID:
岡部「(ま、まさか。さっきの男は俺が……?)」

岡部「(い、いや待て。そんな記憶はない。あんな男と面識なんかない)」

岡部「(……落ちつけ。冷静になれ。とにかくこの血を落とさないと)」

岡部「(……公衆トイレ。あそこなら)」

--

岡部「………」

岡部「(……あの血は、ニセモノなんかじゃない)」

岡部「(……あの男は、確かに死んでいた)」

岡部「(いや、……殺されていた)」

岡部「……どうして」


23:2012/09/20(木) 23:14:12.71 ID:
岡部「(駄目だ。考えれば考えるほど訳が分からなくなる)」

岡部「(身に覚えのないことが……、)」

岡部「……待て」

岡部「身に、覚えがない……?」

岡部「(まさか……、世界線が変動したのか?)」

岡部「(俺の記憶では、Dメールを送信する瞬間までは柳林神社にいたはずだ)」

岡部「(……送信した瞬間に、激しい眩暈に襲われた)」

岡部(眩暈が収まったと同時に、何故か俺は別の場所にいて、)」

岡部「(そして、血まみれの男が目の前で死んでいた……)」

岡部「間違いなく、リーディング・シュタイナーは発動した……」

岡部「(世界線が、変わったのか……)」


24:2012/09/20(木) 23:14:57.83 ID:
岡部「……鈴羽」

岡部「この世界線に、鈴羽はいるのか……?」

岡部「(鈴羽はもう1975年にとんだが、この世界線ではあるいは……)」

岡部「(……とにかく、今はラボに―――)」

携帯「~♪」

岡部「っ!? ……着信?」

岡部「……この番号…、M4? 誰の事だ?」

岡部「……」

携帯「~♪」


25:2012/09/20(木) 23:15:47.70 ID:
岡部「……」ピッ

岡部「……誰だ?」

萌郁『今、どこにいるの?』

岡部「…?」

萌郁『任務を遂行させたら、FBの命令があるまで待機のはず』

萌郁『独断は、許されない』

岡部「その声は……、萌郁!? 桐生萌郁なのかっ!?」

萌郁『……えっ?』

岡部「どうして俺に電話をかけてきた!?」

萌郁『初めて、名前で呼ばれた……』

岡部「萌郁っ!?」


26:2012/09/20(木) 23:16:24.26 ID:
萌郁『……っ、こういう場では、コードネームで呼び合うべき』

岡部「コードネーム? なんのことだ?」

萌郁『……M3らしくない。取り乱して』

岡部「そんなことはどうでもいい! お前はなんで俺に電話をかけてきた?」

萌郁『なんでって……、あなたが、FBの許可なく独断で行動しているから』

萌郁『事前に集合地点は決めてあるはず』

萌郁『……私も、ターゲットは始末した。目標αの死体も確認した』

岡部「……なんのことだ? 始末……? 死体?」

岡部「あれは、お前がやったのか!?」


27:2012/09/20(木) 23:17:07.00 ID:
萌郁『……? M3の言っていること、よく分からない』

岡部「あの男だよっ! あの男は、お前が殺したのか!?」

萌郁『……声、大きい。もう少し、小さく』

岡部「そんなことはどうでもいいっ! 答えろ、桐生萌郁っ!」

萌郁『目標αの始末はあなたの任務。目標βの始末は私の任務』

萌郁『……役割分担した』

岡部「……目標目標言っているが、なんのことだ」

萌郁『……ユーロポールの捜査官。私達の存在がばれてしまったから』

岡部「………」


28:2012/09/20(木) 23:17:45.88 ID:
岡部「悪いが、お前の言っている事が全く分からない」

岡部「(目標αを始末? 俺の任務? コードネーム?)」

岡部「(どこの映画の世界だ。ここは日本だぞ……)」

岡部「(……いや、つい最近、まるで映画のような光景を見た記憶がある)」

岡部「(何回も、何回も)」

岡部「(日常が、一瞬で地獄に落ちていく瞬間を)」

岡部「(この目で何度も見てきた)」

岡部「……答えろ。桐生萌郁。お前は何者だ?」

萌郁『……? どうして、そんなこと 聞くの?』


29:2012/09/20(木) 23:18:19.25 ID:
岡部「いいから答えろっ!」

萌郁『……。……私はラウンダー。コードネームはM4』

岡部「(……この世界線でも、桐生萌郁はラウンダーなのか)」

岡部「(いやまて。どうしてそんなにも簡単に口を割った?)」

岡部「ガード下にいたあの男は、お前が殺したんだろ……」

萌郁『……あれは、違う。私 じゃない』

岡部「じゃあ誰だって言うんだよ……」

萌郁『……M3。あなたが、殺した』

岡部「―――っ!」


30:2012/09/20(木) 23:19:06.13 ID:
岡部「なんだよ、M3って。お前、俺をハメようとしているのか? そうはいかないぞ」

岡部「俺は、絶対に諦めない。お前らラウンダーには絶対に屈さない」

岡部「(みんなの思いを犠牲にしても……、俺はまゆりを救う)」

萌郁『……? M3……?』

岡部「………」

岡部「もう二度と電話をかけるな。お前の声なんて聞きたくない」

岡部「(俺はお前の声を聞くたびに、まゆりが殺される光景が、脳裏に浮かび上がってくる)」

岡部「(俺はお前を赦せない……っ!)」

萌郁『何、言ってるの?』

岡部「うるさい、黙れっ! お前がラウンダーだったなんて、お前が簡単に俺らを裏切ったなんて……っ!」

萌郁『……私も、ラウンダーだけど』


萌郁『……あなたも、ラウンダーよ』


31:2012/09/20(木) 23:19:39.47 ID:
岡部「……なん、だと」

萌郁『FBからの命令。指示があるまで、待機にしていろ、って……』

岡部「…………」

岡部「……俺が、ラウンダー?」

萌郁『そう。あなたが、ラウンダー』

岡部「……なんの冗談だ?」

萌郁『冗談じゃない……。それより、大丈夫?』

萌郁『いつもは冷静なのに、今は取り乱してる。何か、起きたの?』

岡部「……っ」ピッ

ツー、ツ、ーツー、

岡部「……ふざけんな」


32:2012/09/20(木) 23:20:14.24 ID:
岡部「俺が、ラウンダーだと? そんな世界線あってたまるか」

岡部「(冗談にもほどがある……)」

岡部「………」

岡部「(……いや。現状を受け容れなくては)」

岡部「(現実逃避して、らしい言い訳をして自分を落ち着かせても、何も解決しない)」

岡部「(世界線が思いもよらぬ変動をしたのか……)」

岡部「(こんな冗談みたいな世界線に来てしまったのか)」

岡部「……俺が、ラウンダーなんて」


33:2012/09/20(木) 23:20:55.68 ID:
岡部「(仮に俺がラウンダーだとして考えよう)」

岡部「(ラボはあるのか? 紅莉栖達は? 鈴羽はいるのか?)」

岡部「(……可能性は低い)」

岡部「(ラウンダーである俺が、呑気に未来ガジェット研究部なんてものは作らない)」

岡部「(そうなると、紅莉栖達は勿論、鈴羽とも面識がない恐れがある)」

岡部「(とにかく今は、ラボにいかないと)」

岡部「……」タッタッタ

岡部「(身体が、軽い……)」

岡部「(走っても息切れしない)」

岡部「(いや、当たり前か。ラウンダーである俺は、鍛えていたのだろう)」


34:2012/09/20(木) 23:21:29.65 ID:
岡部「……」タッタッタ

岡部「……? あれは……」

岡部「フェイリス!? おい! フェイリスッ!」

フェイリス「ニャ? あ、倫太郎ニャー! どうかしたのかニャ? 走って」

フェイリス「もしかしてランニング? こんな人が多い所じゃお勧めできないと思うのニャン」

岡部「フェイリス……? 俺を知っているのか?」

フェイリス「ニャニャニャ? ニャンだかいつもと様子が違うのニャ」

フェイリス「フェイリスは、倫太郎の事を知っているのニャ」

岡部「……、よ、よかった……」

フェイリス「……倫太郎?」


35:2012/09/20(木) 23:22:12.09 ID:
岡部「お前、なんで俺の事を知っている?」

フェイリス「ニャンでって、フェイリスもラボメンだからニャ」

岡部「ラボメン……? ラ、ラボは存在しているのか!?」

フェイリス「ニャに言ってるの、倫太郎。なんだか、倫太郎らしくないのニャン」

岡部「(ラボは、存在していたのか……っ!)」

岡部「な、なあ、聞くが、俺もそのラボメンだよな?」

フェイリス「当たり前だニャン。というか、ラボメンナンバー001ニャのに」

岡部「……は」

岡部「ははは……」

フェイリス「倫太郎?」


36:2012/09/20(木) 23:22:53.65 ID:
岡部「(これなら望みはある……っ! ラボが存在しているなら、まゆりやダル、ルカ子とも面識があるはずだ)」

岡部「(……紅莉栖と鈴羽はどうか分からないが)」

岡部「なあ、電話レンジって知ってるか?」

フェイリス「知ってるも何も、そのガジェットに隠された機能が見つかって今大騒ぎなのニャン」

フェイリス「フェイリスも話に参加したいけど、みんな言ってる事が難しくて理解できないのニャ」

フェイリス「それに、バイトもあるのニャ……」

岡部「電話レンジも、存在しているのか……」

岡部「それなら……っ」

フェイリス「ねえ、どうしてそんなことを聞いてきたのかニャ?」

岡部「……いや」


37:2012/09/20(木) 23:23:39.86 ID:
岡部「俺は……」

岡部「俺はな、フェイリス」

フェイリス「ニャニャ?」

岡部「……っ、とにかく、助かった」

岡部「これで、この世界線をなかったことにできる」

岡部「……すまない、呼びとめて」

フェイリス「倫太郎? なんだか、悲しそうな顔をしているのニャ……。何か嫌な事でもあったのかニャ?」

岡部「……ああ」

岡部「俺は、ラボに行く。それじゃあ」タッタッタ

フェイリス「あっ、ちょっと……っ!」


38:2012/09/20(木) 23:24:09.81 ID:


―――ラボ


岡部「あった……っ!」

岡部「電話レンジが、あったっ!」

岡部「(何も変わっていない。俺がいた世界線と変わりない電話レンジがある)」

岡部「……これならっ!」

岡部「この世界線を、なかった事に……っ!」

携帯「~♪」

岡部「……っ。……M4」

岡部「……」ピッ

岡部「(M4の着信は無視だ。今は電話レンジを使ってDメールを送らないと)」


39:2012/09/20(木) 23:24:56.05 ID:
岡部「……入力、完了」

岡部「後は、電話レンジを起動して……」

岡部「……送信」

岡部「……?」

岡部「(放電現象が、起きない? なぜだ?)」

岡部「(Dメールを送ったのに、世界線は変わらない)」

岡部「(……待て)」

岡部「……42型ブラウン管テレビっ!」

岡部「くそ……っ!」ダッ


40:2012/09/20(木) 23:25:26.04 ID:


――外


岡部「(くっ。よりにもよってブラウン管工房が休みとは……っ!)」

岡部「(でも、呑気にしてられない。俺がラウンダーの世界線なんて、認められない)」

岡部「(……なんとかして、店の中に入らないと……)」

鈴羽「こんな所で、何してるの?」

岡部「? ……え」

岡部「す、鈴羽っ!? 鈴羽じゃないかっ!?」

岡部「よ、よかった! お前がいてくれて助かった!」

鈴羽「……?」

紅莉栖「……岡部」


41:2012/09/20(木) 23:26:26.22 ID:
岡部「く、紅莉栖もいるのか!? な、なんだ。世界線は想定外に変動したが、周りとの関係は変わってないようだな……」

岡部「鈴羽。お前確か、ここでバイトしていたよな? 鍵か何か、持ってないか?」

鈴羽「持ってる訳ないじゃん。それより、お前は何をしている?」

岡部「何をって……、とにかく、説明している暇はない」

携帯「~♪」

岡部「……くっ!」

岡部「しつこい奴め……っ!」ピッ

鈴羽「誰からの電話?」

岡部「(……鈴羽には喋っておくべきか?)」

岡部「(……いや、喋ってしまえばどうしてラウンダーから電話がかかって来たかを聞かれる)」

岡部「(何よりも優先すべき事は、Dメールを送ることだ)」


42:2012/09/20(木) 23:27:17.34 ID:
岡部「(ブラウン管工房に入る手段は? やはり強引にでも扉を破壊するしか……)」

岡部「(いや待て。焦るな。時間はあるはずだ)」

岡部「(慎重に……、)」

岡部「(まずは現状を理解しないと。それを踏まえたうえで、鈴羽達に俺が別の世界線から来た事を説明しないといけない)」

岡部「紅莉栖。電話レンジは、過去にメールを送れる。そうだな? 間違いないな?」

紅莉栖「そう、だけど……」

岡部「(……やはり、大きく変わったのは俺だけのようだな)」

岡部「(鈴羽や紅莉栖にフェイリスは、大きな変化はなかった……)」

岡部「(この世界線は、"俺がラウンダー"という事実を取り除けば、前の世界線とほとんど変わりがないのかもしれない)」


43:2012/09/20(木) 23:27:49.14 ID:
岡部「紅莉栖っ! Dメールを送る。準備をしてくれ」

岡部「俺は―――」

紅莉栖「そんなことよりっ! 何か、言うことないの……?」

岡部「……?」

岡部「なんのことだ?」

紅莉栖「何も言わないつもり……?」

岡部「(……紅莉栖の様子がおかしい)」

岡部「(いつものような鋭い眼差しではなく、俺に怯えているような瞳)」

岡部「(……まるで、)」

岡部「………」


44:2012/09/20(木) 23:28:30.83 ID:
岡部「とにかくDメールの準備をっ!」

岡部「鈴羽、ブラウン管工房に入りたい。何とかして入る方法はないか?」

鈴羽「……牧瀬紅莉栖。こいつは、何を言っても嘘をつき通すよ」

紅莉栖「……っ。私、岡部を信じてたのに……」

岡部「(会話がかみ合わない……)」

紅莉栖「……見たのよ」

岡部「見たって、何を」

紅莉栖「あんた……、あんたが」

鈴羽「ユーロポールの捜査官を殺すところを」


45:2012/09/20(木) 23:29:09.27 ID:
岡部「―――っ!!」

岡部「………」

紅莉栖「ねえ、なんで黙ってるの? なんで、何も言わないの?」

紅莉栖「どうして……、あんなことしたのよ……っ」

岡部「俺じゃない……。俺じゃないんだ。……俺は殺していないっ!」

鈴羽「服に、血がついてるよ」

岡部「っ!」バッ

岡部「………」

岡部「……信じてくれ」

岡部「俺は、殺していないんだ……。説明すると長くないが、とにかく……っ」

鈴羽「笑える冗談だね。それであたしたちが、信じるよと言うとでも?」


46:2012/09/20(木) 23:29:36.99 ID:
岡部「紅莉栖……っ! 俺は殺していないんだっ! 頼む、信じてくれ……っ!」

紅莉栖「………」

岡部「紅莉栖……」

鈴羽「哀れだね、岡部倫太郎」

岡部「(……どうすれば、いいんだ)」

岡部「(俺は殺していないと言っても無駄……。信じてくれるはずがない)」

岡部「(この世界線での俺は、実際に人を殺してしまった。それを紅莉栖が目撃した……)」

岡部「(立場が逆だったら、俺も信じる訳ない)」

岡部「(何を言っても、無駄だ……)」


47:2012/09/20(木) 23:30:17.60 ID:
岡部「……なんだよ、それ」

岡部「なんなんだよ」

岡部「どうして、こんな冗談みたいな世界線に来てしまったんだよ……っ!」

岡部「この世界線の俺は何を考えていたんだ……」

鈴羽「……?」

岡部「(……Dメール。そうだ、Dメールさえ送ればこの世界線をなかったことにできる)」フラ

岡部「……」スタスタ

鈴羽「な……っ! 待て! 岡部倫太郎!」ガシッ

岡部「っ…! は、放せ! 俺は何があってもDメールを送らなければならないんだ!」


48:2012/09/20(木) 23:31:06.31 ID:
紅莉栖「Dメールを送るって、どうやってよ……っ!」

岡部「な、なんだと? Dメールは送れないのか!?」

紅莉栖「送れるけど、放電現象が起きる時と起きない時があるの……」

岡部「その原因は、42型ブラウン管テレビだ! あれが点いてる時だけ……っ」

鈴羽「どうして、それを知っている? あたしたちはここ一週間、電話レンジの機能について話し合ってきた」

鈴羽「そこでは何も言わなかったくせに、今のはまるで最初から知っていたような口ぶりだったじゃん」

紅莉栖「まさかあんた……、知ってて黙ってたの!?」

岡部「何を馬鹿なっ! とにかく俺はDメールを送らないと! そうすれば全て解決するんだ!」

鈴羽「それを、あたしがさせると思う?」


49:2012/09/20(木) 23:31:51.62 ID:
岡部「鈴羽っ! お前なら解ってくれるだろう!」

岡部「前の世界線ならまだ希望はあったが、こんな世界線じゃどんなに足掻いても未来は変えられないっ!!」

岡部「俺が、ラウンダーなんて、そんな世界線はあってはならないっ!」

鈴羽「……やっぱりか。牧瀬紅莉栖……、これであたしが言った事、全て理解してくれた?」

紅莉栖「……あんた、なんで……」

紅莉栖「あの子は……、まゆりはもう長くないの……。お願いだから、悲しませるような事はさせないで……」

岡部「……え」

岡部「紅莉栖? お前、今何て言った?」

岡部「おい……っ! 今、なんて言ったんだよ……っ!?」ガシッ

紅莉栖「きゃっ――、い、痛い……っ! やめ、」


50:2012/09/20(木) 23:33:19.95 ID:
岡部「まゆりは、長くない? どういうことだ」

紅莉栖「……何、言ってるの」

岡部「この世界線でも、まゆりは助からないのか……!?」

鈴羽「……岡部、倫太郎? お前、何を言ってる?」

岡部「おい鈴羽……。お前、言ったよな」

岡部「世界がまゆりの死を承認しても、ダイバージェンスメーターが1%を越えれば、それを回避できるって……」

鈴羽「ダイバージェンスメーター……、世界線変動率……」

鈴羽「………」

岡部「……くく、ははは」

岡部「この世界線は、得た物より失った物の方が多い……」


51:2012/09/20(木) 23:34:15.58 ID:
岡部「(……というより、失ったものしかないじゃないか)」

岡部「(でも、諦めるのはまだ早い……。Dメール。…Dメールさえ送れば……)」

岡部「(だがそれを、鈴羽たちが許してくれるとは思えない)」

岡部「……鈴羽」

鈴羽「……」

岡部「そうだ、鈴羽……。なんでお前、ここにいるんだ……?」

鈴羽「あたしがここにいたら、まずいことでもある?」

岡部「いや……、だって」

岡部「(……鈴羽がここにいるということは、この先に待つ未来は絶望)」

岡部「(鈴羽は未来を変えるために現在(過去)に来た)」

岡部「(………)」

岡部「("俺がラウンダー"でもいい。みんなが幸せになれるなら、)」

岡部「(誰も苦しまないなら、)」

岡部「(それが代償なら、甘んじで受け入れる)」


52:2012/09/20(木) 23:35:09.40 ID:
岡部「(……けど、この世界線は)」

岡部「("俺がラウンダー"で、まゆりはもうすぐ死に、未来に希望はない)」

岡部「(救いようがないだろ……っ! こんなの、あまりだ……)」

岡部「なあ……鈴羽」

岡部「お前のいる2036年は、やはりSERNによるディストピアが実現されるのか……?」

鈴羽「―――っ!?」

鈴羽「……どうして、あたしがタイムトラベラーだって知ってんの?」

岡部「それは……、」

岡部「それは……。別の世界線のお前が、俺に教えてくれたんだ」

鈴羽「………」


53:2012/09/20(木) 23:36:08.83 ID:
岡部「俺のいる世界線では、鈴羽は日本の大型掲示板に、自らをジョン・タイターと名乗り、」

岡部「タイムマシンの構造や、世界線の説明、未来に何が起こるかを書き込んでいた」

紅莉栖「……あんた、何言って……」

岡部「お前が2010年に来たのは、父親を見つけるため」

岡部「見つけられても見つけられなくても、結果的に1975年にとんでIBN5100を入手しようとしていた」

鈴羽「………」

岡部「俺は……、過去を変えすぎてしまったんだ」

岡部「だから、俺がラボメンを裏切る世界線……、こんな所に来てしまったんだ」

岡部「何も思わず、何も感じず、平然と人を殺してしまう俺が怖い……」

岡部「たとえ別の世界線の俺だとしても、この世界線の俺も紛れもない岡部倫太郎だから」


54:2012/09/20(木) 23:36:47.69 ID:
岡部「……なあ、頼む鈴羽。俺を信じてくれ」

岡部「この世界線での俺は確かに人を殺してしまった。だけど俺にはその記憶はない」

岡部「俺は殺していない。俺はラウンダー……、SERNと戦いまゆりを助ける」

岡部「運命の収束で回避しようのない死でも、ダイバージェンス1%の向こう側に行くんだ」

岡部「そのためには、俺はDメールを送ってこの世界線をなかったことにしなくてはならない」

岡部「だから、頼む鈴羽。……今だけでいい。俺を信じてくれ」

鈴羽「………」

紅莉栖「……岡部」

鈴羽「………」

鈴羽「無理。信じられる訳ないじゃん」

岡部「鈴羽……っ!」


55:2012/09/20(木) 23:37:47.00 ID:
鈴羽「どうしてお前がそんなに情報を知っているか知らないけど、仮にもSERNの犬であるお前の事を考えたら、」

鈴羽「そう不思議な事でもない」

鈴羽「あたしはお前を信じる事なんて出来ない。あたしは何があっても未来を変える」

岡部「……お前だって、全てを捨てて過去に来たんだろ……?」

岡部「もう絶対に、もといた2036年には戻れないって、それを覚悟の上で来たんだろ……?」

鈴羽「な……っ! どうしてそこまでっ!? それは誰にも話していない! 話してなんていない!」

鈴羽「岡部倫太郎っ! どこでその情報を知り得た!?」ガシッ!

岡部「……言っただろ。全部、お前が言った事だ」

鈴羽「……っ! またそれっ!? 別の世界線のあたしが言った!?」

鈴羽「ありえないっ! 世界線が変動する事は珍しくないけど、世界線をまたいでまで記憶を継続する事はありえない!」

鈴羽「……絶対に」


56:2012/09/20(木) 23:38:28.41 ID:
鈴羽「世界線が変われば、その出来事は起こらなかった事になる」

鈴羽「起こらなかった出来事を、どうやって記憶した?」

鈴羽「岡部倫太郎……、お前は欺瞞だらけだ。あたしがいた2036年でもそうだったよ」

岡部「……な、に? 俺は、2036年まで生きられるのか?」

鈴羽「……2036年、お前は自身を神格化させこう名乗っていた」

鈴羽「鳳凰院凶真」

岡部「なっ、なぜ、その名が……っ!?」

鈴羽「過去の岡部倫太郎とはいえ、本人だから知っていてもおかしくないか……」

岡部「……どういう、ことだ?」

鈴羽「お前は、全てを裏切り、300人委員会のトップに立つ。あらゆるものを奪っていき、人々から希望を消し去っていって、」

鈴羽「あたしの両親や仲間たちもお前に殺されたんだ」

鈴羽「……お前の事は、信じられる訳ない」


57:2012/09/20(木) 23:39:01.94 ID:
岡部「俺が、300人委員会のトップに立つ…だと?」

岡部「何の冗談だ」

鈴羽「冗談なんかじゃない。あたしはお前が赦せない」

鈴羽「お前は自分の事を信じろと言っているけど、」

鈴羽「この世界線でのお前は、26年後に鳳凰院凶真と名乗って人々を苦しめるんだ」

鈴羽「それは変わらない……」

岡部「………」

岡部「……だから、そうならないためにDメールをっ!」

鈴羽「送らせると思う!?」

鈴羽「……絶対に、送らせない」


58:2012/09/20(木) 23:40:02.88 ID:
鈴羽「あたしがお前の邪魔をすると知られた以上、送らせる訳にはいかない……」

岡部「……だ、だがっ」

鈴羽「牧瀬紅莉栖っ! 今すぐ警察に連絡して!」

鈴羽「今なら証拠もあるんだ! 早くっ!」

岡部「な……っ!? ま、待て! 俺は殺してなんか――」

鈴羽「お前は黙っていろ! 岡部倫太郎……、お前の事は絶対に赦せないんだ……っ!」ワナワナ

紅莉栖「……で、でもっ」

鈴羽「なんで躊躇うの!? 牧瀬紅莉栖も見たはずでしょ! 岡部倫太郎が、ユーロポールの捜査官を殺すところを!」

紅莉栖「……っ」

鈴羽「岡部倫太郎は、自分のために人を殺したんだ。それに変わりはない」

紅莉栖「………」


60:2012/09/20(木) 23:41:26.49 ID:
岡部「く、紅莉栖……っ! 俺は、殺していない……っ!」

紅莉栖「……警察を、呼ぶわ」

岡部「紅莉栖っ!」

紅莉栖「なんで、あんなことしたの……?」

紅莉栖「どうして、そこまでして嘘をつくの……?」

岡部「だから俺は嘘なんて付いていないっ! 俺は殺してないんだ!」

紅莉栖「だったら! あんたは誰なのよ……」

岡部「俺は……っ!」

岡部「……俺は」

岡部「………」


61:2012/09/20(木) 23:42:01.68 ID:
紅莉栖「まゆりが気の毒ね……。あんたが見せていたあの笑顔は、全部ウソだったんだから」

紅莉栖「……」ピッ、ピッ

岡部「……紅莉栖」

紅莉栖「警察ですか……? 秋葉原で、人を殺したっていう知人を保護したんです」

紅莉栖「場所は―――」

コロン コロン

鈴羽「スタングレネード!?」

岡部「なっ」

バン!

鈴羽「……うっ! あっ」キーン

紅莉栖「あぅ…!」

-

紅莉栖「お、岡部はっ!?」

鈴羽「……逃げられたか」


62:2012/09/20(木) 23:42:41.15 ID:

鈴羽「牧瀬紅莉栖? 怪我は、ない……?」

紅莉栖「……っ。だ、大丈夫」

紅莉栖「……」

鈴羽「牧瀬紅莉栖?」

紅莉栖「……っ」ジワ

紅莉栖「ねえ……、鈴羽。私、何を信じていいか分からなくなっちゃった……」

鈴羽「………無理もないよ。あの岡部倫太郎が――」

紅莉栖「そうじゃないの。私が、警察を呼ぶって言ったら、あいつ……、本当に悲しそうな顔をしてて、」

紅莉栖「まるで、私が裏切っちゃったような気がして、胸が痛んだのよ……」

鈴羽「でも……、あいつは平気で君たちを裏切ったんだ」

鈴羽「君は当然な事をしただけ。君が気を病む必要はないんだ」

鈴羽「全部、あいつが悪いだけだから」


63:2012/09/20(木) 23:44:03.47 ID:
紅莉栖「本当に……、そうなのかな」

鈴羽「え……?」

紅莉栖「岡部は、本当に自分のためだけに私達を裏切ったの……?」

紅莉栖「最初から自分のためだけに、人を殺めて……、私達を裏切ったの……?」

鈴羽「そ、そうとしか考えようが――」

紅莉栖「でも…っ! あいつがまゆりに見せていた笑顔は……、ニセモノとは思えないの」

紅莉栖「まゆりのために入院費を払って、まゆりが笑顔でいてくれるように、未来ガジェット研究部を創立させて、」

紅莉栖「……あいつ、言ってたのよ」

紅莉栖「いつか元気になったら、まゆりもラボに来られるといいな、って……」

鈴羽「………」


64:2012/09/20(木) 23:44:39.38 ID:
紅莉栖「ねえ、鈴羽……。私、何を信じればいいの?」

鈴羽「それは……」

紅莉栖「………」

鈴羽「それでも、岡部倫太郎は……、人を殺したんだ」

鈴羽「今まで、何人も、何十人も」

鈴羽「そこに何か理由があっても、人を殺してしまった時点で、あいつはもう手遅れなんだ」

鈴羽「いつか自分の心も殺して、あたしが知る鳳凰院凶真になってしまう」

鈴羽「あたしたちは、それを阻止しないと」

紅莉栖「……分かってる」

紅莉栖「…………」


65:2012/09/20(木) 23:45:13.04 ID:
紅莉栖「……警察に、もう一度連絡するわ」

鈴羽「お願い」

紅莉栖「……」ピ ッピ

紅莉栖「……警察ですか? はい……。はい」

紅莉栖「……そうです。……はい」

紅莉栖「……分かりました。……え? その人の名前……ですか」

紅莉栖「………」

紅莉栖「……岡部倫太郎、です」

紅莉栖「はい……」ピッ

鈴羽「なんて?」


66:2012/09/20(木) 23:45:56.55 ID:
紅莉栖「詳しく聞きたいらしくて、直接会う事になったわ」

鈴羽「まあ、そうだろうね。死体がまだガード下にあるかは分からないけど、血痕程度なら残ってるはず」

鈴羽「……うん。大丈夫だよ、牧瀬紅莉栖」

鈴羽「君が気を病む必要はない」

紅莉栖「……分かってるわよ。でも、それでも……っ」

鈴羽「………」

紅莉栖「あいつを信じてやれない私が、憎い」

紅莉栖「信じちゃいけないのは分かっているのに、こんな事を考えるなんて、私も愚かね……」

鈴羽「君は……、良い奴だね」


67:2012/09/20(木) 23:46:32.01 ID:


――――――
――――
――


鈴羽「落ちついた?」

紅莉栖「ええ……。もう、平気。迷いなんてないわ」

鈴羽「……うん、よかった」

紅莉栖「たとえどんな理由があっても、あいつは殺人を犯してしまったのよ」

紅莉栖「それを赦しちゃ、いけないから……」

鈴羽「じゃあ、協力してくれる……ってこと?」

紅莉栖「ええ。できれば、あいつが自首してくれるといいんだけど」

鈴羽「それは無理だと思うな」

紅莉栖「一応、警察は動いてくれるみたいだけど……」

鈴羽「完全には信用できないと思う。ラウンダーが圧力をかけて、事件そのものをもみ消しちゃう恐れも考えられるから」

紅莉栖「……そうね」


68:2012/09/20(木) 23:47:10.95 ID:
紅莉栖「……あ、みんなに電話しないと」

鈴羽「……」

紅莉栖「………」ピッピ

紅莉栖「………」プルル

ルカ『はい? 紅莉栖さん……? どうしました?』

紅莉栖「漆原さん? ……ちょっと、話があって」

ルカ『はい。……その、大丈夫ですか? 声が、その……』

紅莉栖「平気よ。心配するなら、自分の身を心配して」

ルカ『どういう意味ですか?』


69:2012/09/20(木) 23:48:33.90 ID:
紅莉栖「もう、何も隠さずに言うわ」

紅莉栖「……ただ、これはあなたにとっても辛い真実だから、」

紅莉栖「覚悟は、して」

ルカ『……は、はい』

紅莉栖「岡部を……、信じちゃダメ」

紅莉栖「もう岡部に、近づいちゃダメ」

ルカ『……え? い、いきなり何を言いだすんですか?』

紅莉栖「私、今日見たのよ。あいつが、人を殺す瞬間を」

ルカ『……? あの、何を?』

紅莉栖「……あいつが、人を殺したの」


70:2012/09/20(木) 23:49:19.09 ID:
ルカ『え……? 岡部さんが、人を……?』

紅莉栖「そうよ。それに、今回が初めてじゃないみたい」

紅莉栖「……あいつは、今まで何人も人を殺してきている。それが、ついにバレてしまったの」

紅莉栖「もう警察も動いてる」

ルカ『……っ』

ルカ『……あ、あは、あははっ、じ、冗談ですよねっ! く、紅莉栖さん冗談が上手なので騙されちゃいましたっ!』

紅莉栖「………」

ルカ『だ、黙ってたら分からないじゃないですかっ。じょ、冗談ですよねっ、冗談なんですよね――?』

紅莉栖「……事実よ」

ルカ『……っ、そ、そんな訳ありませんっ!!』


71:2012/09/20(木) 23:49:55.69 ID:
ルカ『岡部さんは、そんなこと絶対しませんっ!!』

紅莉栖「受け入れたくないのは分かるけど……、本当なの」

ルカ『嘘ですっ! あんな、毎日まゆりちゃんの様子を見に来て、たまにプレゼントも用意してくれて、』

ルカ『ラボであったことを話してあげて、優しく笑っているんですっ! 岡部さんはっ!』

ルカ『そんな岡部さんが、人を……、なんて、ありえません……っ!』

紅莉栖「……私も、信じたくないわよ」

ルカ『……っ』

ルカ『す、すいま、……っ、せん』

ルカ『……き、切り……、っ、ます……、ね』

紅莉栖「……ごめんなさい」

紅莉栖「……」ツーツー


72:2012/09/20(木) 23:50:37.35 ID:
鈴羽「牧瀬紅莉栖……」

紅莉栖「……っ、だ、大丈夫よ。あ、後はフェイリスさんにも……」

鈴羽「いいよ、もう。休んで。大丈夫だから、フェイリスにはあたしから言っておく」

紅莉栖「でも……っ」

鈴羽「大丈夫。あいつは、岡部倫太郎は……、しばらくあたしたちの前には出てこないと思う」

鈴羽「警察が動いているんだ。だから、もう……」

紅莉栖「そう……ね」

鈴羽「今日はもう……、休んで」


73:2012/09/20(木) 23:51:13.76 ID:




…………
……


―――病院の屋上


岡部「(……まゆりは、この世界線でも生きられない)」

岡部「(もって、クリスマスまで……)」

岡部「(……なんで、だよ。どうして……)」

岡部「(どうしてまゆりはこうも……)」

岡部「……くそっ!」

岡部「………」

岡部「………く」

岡部「(……どう、して、こんなことになってしまったんだろう)」


ガチャ……


74:2012/09/20(木) 23:52:09.86 ID:
ルカ「岡部……さん。病室にいないと思ったら、こんな所にいたんですね」

岡部「………」

ルカ「………」

岡部「……なあ、ルカ子」

岡部「あいつの……、まゆりの病気は……」

岡部「………」

岡部「……いや、なんでもない」

ルカ「………」


75:2012/09/20(木) 23:52:40.84 ID:
ルカ「あ、あの……っ」

岡部「……?」

ルカ「ついさっき、紅莉栖さんから、で、電話が、あって……っ」

岡部「――っ!」

岡部「(電話? まさか、紅莉栖……っ!)」

岡部「聞いたのか!?」

ルカ「う、嘘ですよね。岡部さんは、そんなことしませんよね?」

岡部「……俺はっ!」


76:2012/09/20(木) 23:53:18.15 ID:
岡部「………俺は」

岡部「(してない、と言えるのか)」

岡部「(たとえ別の世界線から来たとしても、この世界線の俺は確かに人を殺したんだ)」

岡部「………」

ルカ「なんで、黙っているんですか……」

ルカ「ねえっ、岡部さんっ! 何か、言ってください……っ!」

岡部「……ああ」

ルカ「っ!?」

岡部「……俺は、人を殺してしまったらしい」

ルカ「……ど、どう、して、他人事のように言うんですか……?」


77:2012/09/20(木) 23:54:10.00 ID:
岡部「……分からない」

岡部「分からないんだ……」

岡部「俺は、この世界線での岡部倫太郎の記憶がないんだ」

岡部「……俺は間違いなく、人を殺した」

岡部「なのに……、その記憶がないんだ」

ルカ「岡部……さん?」

岡部「俺は殺していない。……紅莉栖達にはそう言いきったのに、今じゃ即答できない」

岡部「……たとえ人を殺したのが別の世界線の俺だとしても、紛れもない岡部倫太郎が人を殺したんだ」

岡部「その事実は、変わりない……」


78:2012/09/20(木) 23:54:47.88 ID:
ルカ「あの、岡部さん……? 言っている意味が、よく分かりません……」

岡部「……っ」

岡部「……俺が、殺した」

岡部「俺が、人を殺したんだ」

岡部「……覚えている」

岡部「まだ生温かい血を両手に、目の前で身動きせずに倒れている男」

岡部「それを俺は眺めていた」

岡部「……俺は、人を殺した」

ルカ「――っ、う、嘘、で、すよね……?」

岡部「……本当だ」


79:2012/09/20(木) 23:55:24.75 ID:
岡部「……。……ほんとう……、なんだよ」

ルカ「じゃあっ! どうして、そんなに悲しい顔をしているんですかっ!!」

岡部「っ! ………っ」

岡部「すまない……」

ルカ「どうして、謝るんです……?」

岡部「……すまない」

ルカ「……どうして、僕の目を見てくれないんです?」

岡部「………」

ルカ「岡部さん……っ!」

岡部「………」

ルカ「………」


80:2012/09/20(木) 23:56:09.85 ID:
ルカ「……っ、ぼ、僕、帰ります……っ」

ルカ「この事は、まゆりちゃんには内緒にしておきますから……っ!」

ガチャ バタン

岡部「………」

岡部「……は、はは」

岡部「ははは……」

岡部「……夢なら、覚めてくれ」

岡部「頼む……。頼むから……」

岡部「………」


81:2012/09/20(木) 23:56:58.78 ID:
岡部「みんな俺から離れていく……」

岡部「……当然だ。当然の事なんだ。俺は人を殺してしまったんだ」

岡部「みんなを裏切ったんだ……」

岡部「これも、俺が不用意にDメールを送ったせいだ」

岡部「……でもっ! こんなの、あんまりだろ……っ!」ガンッ!

岡部「俺だけが不幸になるなら、どれだけマシだった事か……っ!!」

ガチャ……

岡部「っ!?」

萌郁「……岡部、くん」


82:2012/09/20(木) 23:57:33.78 ID:
岡部「……なんだよ」

岡部「なんでお前が、ここに……っ」

萌郁「……岡部くん。ユーロポールの捜査官の件だけど……」

萌郁「FBに頼んで、警察に圧力をかけてもらったわ。大人しくしておけば……、見つからない」

萌郁「死体も見つからず、事件そのものもなかったことになる」

岡部「………」

携帯「~♪」

岡部「っ!?」

萌郁「きっとFBよ。電話に、出て」

岡部「……っ」

萌郁「……お願い」

岡部「FB…? ……」

岡部「……くっ」

岡部「……」ピッ


83:2012/09/20(木) 23:58:14.92 ID:



……………
………



―――翌日 ラボ

ガチャ

フェイリス「……倫太郎? ……いないのニャ……?」

紅莉栖「岡部なら、もうこのラボには来ないわ……」

鈴羽「欺瞞が発覚したからね」

フェイリス「それじゃあ……、スズニャンの言っていた事は……、本当ってこと?」

鈴羽「うん。そこにいる牧瀬紅莉栖も、岡部倫太郎が人を殺す瞬間を目撃している」

鈴羽「それに、多分今回が初めてじゃないと思う」

フェイリス「そんな……っ」

ダル「つーかさ……、昨日牧瀬氏が見たって事件、ニュースになっててもおかしくないお」

ダル「けど、全く報じられてない訳だが……。なんで?」


84:2012/09/20(木) 23:59:14.26 ID:
紅莉栖「通報はしたわ……」

鈴羽「多分、警察に圧力をかけて、事件そのものをなかったことにしようとしてるのかも」

ダル「マジで? それ、ヤバくね?」

鈴羽「ありえない話じゃない。それだけ相手は強大ってこと……」

ダル「そんなん相手に僕らは戦うの? 無理じゃね」

鈴羽「無理じゃない。弱音なんて吐けない。未来は、必ず変えてみせる」

紅莉栖「……鈴羽の言う通りよ。おか…、あいつが、自分の心も殺してしまう前に、私達がそれを阻止しないと」

ダル「……世界線? が変わったら、岡部はその、ラウンダーっていうのじゃなくなる可能性もあるってこと?」

鈴羽「未来にディストピアが実現されない世界線に辿りついても、」

鈴羽「その世界線でも岡部倫太郎がラウンダーという可能性もある」

鈴羽「逆に、ラウンダーじゃない世界線もありえる」


85:2012/09/20(木) 23:59:55.65 ID:
紅莉栖「……岡部が、ラウンダーじゃない世界線……」

紅莉栖「ねえ、引っかかる事があるんだけど。あいつ、言ってたじゃない?」

紅莉栖「別の世界線から来たって……、どういうことか分かる?」

鈴羽「あいつにも言ってやったけど、それだけは絶対にあり得ない」

鈴羽「世界線が変動するという事は、もといた世界線はなかったことになり、新しい世界線が再構築されるんだ」

鈴羽「なかったことになるというのはすなわち、起こっていない出来事になる」

鈴羽「それを、どう記憶するの?」

鈴羽「因果に支配されているあらゆる生物は、世界線の変動には気づけない」

鈴羽「気づけば、矛盾が生じるから」

紅莉栖「でも、岡部は覚えていた」

鈴羽「嘘、という可能性も考えられる」


86:2012/09/21(金) 00:00:36.51 ID:
ダル「阿万音氏の言う通り、嘘をついてる可能性の方が高いと思われ」

紅莉栖「……でも」

鈴羽「まだあいつの事を信じているの?」

紅莉栖「……」

フェイリス「ね、ねえ……。倫太郎が別の世界線から来たとしたら、この世界線にいた倫太郎はどうなっちゃうのかニャ?」

鈴羽「だからそれはありえないって―――」

フェイリス「仮の話ニャ。もし仮に倫太郎だけが世界線をまたいでも記憶を継続できる能力を持っていたら、」

フェイリス「……どうなるのニャ?」

鈴羽「それは……」

鈴羽「この世界線の岡部倫太郎は、別の世界線の岡部倫太郎に上書きされるはず」

鈴羽「ただ、あくまで仮説だよ。証明しようがないし、そもそもそんな能力の存在すら危ういから」


87:2012/09/21(金) 00:01:12.78 ID:
フェイリス「それって、この世界線の倫太郎が消えちゃうってことかニャ?」

鈴羽「物理的に消えたりはしない。ただ、あたしたちが知っている岡部倫太郎は消える」

鈴羽「別の世界線の岡部倫太郎の意識に、上書きされちゃうっていうのかな……」

フェイリス「……た、たとえばの話ニャンだけど」

フェイリス「倫太郎が、その、人を殺したりなんてしない世界線から来たとしたら……」

鈴羽「……どういう意味?」

フェイリス「……倫太郎。嘘、ついてないのニャ」

鈴羽「……? 何を」

フェイリス「フェイリス、昨日、倫太郎に会ったのニャ」

鈴羽「っ!? い、いつ!? 会うなって、あれほど言ったでしょ!」

フェイリス「ま、まだ昼ごろの話ニャ……」


88:2012/09/21(金) 00:01:48.76 ID:
フェイリス「倫太郎、よく分からないことを言ってきたのニャ」

紅莉栖「なんて……?」

フェイリス「凄く焦ったような顔をして、『お前は俺を知っているのか』って」

フェイリス「『ラボは存在しているのか』って」

フェイリス「まるで、記憶喪失になったみたいだったのニャ……」

紅莉栖「す、鈴羽、それって……」

鈴羽「………」

フェイリス「電話レンジもあるのかって聞かれて、フェイリスはあるって答えたんニャけど、」

フェイリス「そしたら倫太郎、すごく嬉しそうな顔になったのニャ……」

フェイリス「……『これで、この世界線をなかったことにできる』って」

ダル「……え? それってつまり、岡部は嘘をついてないってこと……?」


89:2012/09/21(金) 00:02:49.11 ID:
鈴羽「そ、そんなわけ……っ」

紅莉栖「……でも、フェイリスさんなら岡部が嘘をついていたら分かるはずよ」

フェイリス「倫太郎、嘘ついてない……。それに、今にも泣き出しそうな顔をしてたニャ……」

紅莉栖「鈴羽。そういえば昨日の岡部も、様子がおかしくなかった……?」

鈴羽「……」

紅莉栖「電話レンジが過去にメールを送れるのかって、聞いてきたし、」

紅莉栖「……まるで、フェイリスさんの言うように記憶喪失にでもなったみたいで……」

鈴羽「で、でもっ! あいつは……っ!」

紅莉栖「……鈴羽、おかしくない?」

紅莉栖「あいつがラウンダーなら、自分からラウンダーだって名乗り出るかな……」

鈴羽「…………」


90:2012/09/21(金) 00:03:31.44 ID:
紅莉栖「ねえ、本当に岡部は別の世界線から来たんじゃ―――」

鈴羽「仮に、そうだとしても」

鈴羽「……あたしがいる2036年では、岡部倫太郎は自ら鳳凰院凶真と名乗り、」

鈴羽「人々を苦しませている。その事実は変わりない。……"変わっていない"」

ダル「……確かに。岡部が別の世界線から来た前提で考えたとして、」

ダル「もしその岡部が良いヤツでも、未来が変わってないってことは、」

ダル「結局、結果は同じってことじゃね?」

紅莉栖「……それは」

鈴羽「そうだよ。……岡部倫太郎が別の世界線から来たとして、それで未来が変わるなら、」

鈴羽「あたしの記憶からも、鳳凰院凶真は消えるはず」


91:2012/09/21(金) 00:05:30.86 ID:
鈴羽「たとえ、今のあいつが人を殺さず、良いヤツだったとしても、結果は変わらない」

鈴羽「あいつは、鳳凰院凶真になるんだ」

紅莉栖「……だったら、どうすればいいのよ」

鈴羽「……方法は、ある」

紅莉栖「何?」

鈴羽「……SERNがタイムマシンを開発させないためにも、」


鈴羽「……電話レンジを、壊せばいい」


115:2012/09/23(日) 20:11:44.69 ID:
----


運命探知(リーディング・シュタイナー)。

世界線の変動に観測できる能力。

世界線が変わる前の出来事を記憶できる能力。

そんな能力は、特別でもなんでもない。

誰かに吹聴するようなものでもない。


116:2012/09/23(日) 20:13:33.46 ID:
人より劣化していると言うべきか。


その先に待つ未来、今置かれた現実を受け容れられなくて、

過去を変えるという愚かな行為。

それはつまり、自分勝手な理由で世界中の人間を巻き込んでいるという事実。

ただ、現在(今)が受け入れられないから。その先に待つ未来を認められないから。

だから、過去を変える。


117:2012/09/23(日) 20:14:44.85 ID:
それは果たして賢明な判断なのか。

未来に待つディストピア。それを不幸ではないと思う人間もいるはずだ。

過去を変えるというのは、そういう多くの人間達の人生を滅茶苦茶にしているということ。

俺が送った一通のDメールで、2000年問題が起きた世界線に跳んでしまった。

つまり、俺がDメールを送りさえしなければ生きていられた筈の人間を、その一通のメールで殺してしまったということ。


118:2012/09/23(日) 20:16:11.78 ID:
まゆりを助けるために、

いろんな思いを犠牲にして、

挙句、辿りついた先も絶望だった。

俺がラウンダー。

ラボメンを裏切り、傷つけた。

そして――、結局まゆりは助けられない。


119:2012/09/23(日) 20:16:46.39 ID:
元の世界線に戻ろうと、俺はまたDメールを送ろうとしている。

それは正しい判断なのか。

次はここより酷い世界線に跳んでしまう恐れもある。

そうしたら俺はまた、その世界線を認められずになかったことにしようとするのか?

なんて、自分勝手。

なんて、独善的。


120:2012/09/23(日) 20:17:15.12 ID:
だが、もう諦められない。

散々、過去を改変して、途中で投げ出す事なんて出来ない。

いろんな思いを犠牲にして、

いろんな人達を犠牲にして、

過去を滅茶苦茶にしておいて、もう諦める、なんて言える訳ないだろう。

……言ってしまえば、お前だったら怒るよな。

なあ、紅莉栖……。


121:2012/09/23(日) 20:17:45.34 ID:
岡部「……私はあんたの力になりたい……、か」

岡部「く……、はは」

岡部「しょうがないことだって、分かっている」

岡部「……今回は、俺の責任だ」

岡部「俺が、この世界線をなかったことにする」

岡部「俺が、みんなを助けるんだ……っ!」


122:2012/09/23(日) 20:19:02.34 ID:
味方はいない。

いや、敵しかいないと言ったほうが正しいか。

この状況を鳳凰院凶真なら、四面楚歌と言っていただろう。

鳳凰院凶真……か。

俺は、自分の蒔いた種は自分で刈り取る。

そのためには、また過去を変えて、みんなの思いを犠牲にする。


123:2012/09/23(日) 20:19:52.92 ID:



ガチャ


萌郁「……M3」

岡部「………」

萌郁「落ちついて、聞いて」

萌郁「次の任務」

萌郁「タイムマシンを、奪え って……」

岡部「……っ。な、なに……?」

萌郁「バックアップに他のラウンダーも来る。抵抗する場合なら、殺しても構わないって」


124:2012/09/23(日) 20:20:52.77 ID:
殺しても、構わない。

抵抗するなら、

殺しても、

構わない……。


―――タイムマシン開発者の牧瀬さん、橋田さんは確保を。

―――この二人は、殺してはいけない。


125:2012/09/23(日) 20:21:39.97 ID:
それはつまり。

あの時、電話レンジの開発者でないまゆりが、

必要ないの一言で、殺されてしまったように、

もし他のラボメン達が、

ラボにいたら――



タイムマシン 開発 者 以外は 無力化 。




必要 な い。


126:2012/09/23(日) 20:22:43.46 ID:
目の前が真っ赤に染まった。

頭に血が上って、視界が揺れる。

奥歯がギリギリと音を立てている。

俺は、抑えきれない怒りを爆発させて、




桐生萌郁の、



首を、



締めていた。


127:2012/09/23(日) 20:23:24.88 ID:


萌郁「――っ!?」

岡部「また、それか……っ!?」

岡部「あの時、まゆりを殺したように!」

岡部「お前らは、ラボメンを殺すのかよっ!」

岡部「……お前さえいなければっ!」

岡部「お前さえいなければ、まゆりが死ぬ事なんてなかったんだ!」


128:2012/09/23(日) 20:23:54.57 ID:
それは、嘘。

世界が、まゆりの死を承認した時点で、

たとえ、ラウンダーが関係していなくても、

糸の切れた人形のように、

まゆりは、死んでしまう。


129:2012/09/23(日) 20:24:37.93 ID:
でも、

それでも……っ!


岡部「お前は、俺達を裏切ったんだ!」


疑う事の知らないまゆりは、

最期まで、お前の事を信じていた。

それなのに……っ!

お前はっ!!!


130:2012/09/23(日) 20:25:30.85 ID:
萌郁「……っ、あ、う……っ」

岡部「……っ!」ギギギ

萌郁「お……か、べ……くん」


桐生萌郁の手は、

首を締めつけた俺の手をどかそうとはせず、

俺の頬に触れた。


131:2012/09/23(日) 20:26:09.76 ID:
岡部「……っ、あ…」スッ

萌郁「っ! ごほっ! ごほっ! あ、く……っ!」

萌郁「はあ、はあ……っ」

岡部「……あ」


俺は、今何をしようとした?


萌郁を、どうしようとしたんだ?


答えてみろ、岡部倫太郎。


お前が嫌うこの世界線のお前と、何も変わりないことをしようとしたのではないか。


132:2012/09/23(日) 20:26:41.23 ID:
岡部「……っ」

岡部「(俺は……)」

岡部「(……何を)」

萌郁「……っ、はあ……っ」

岡部「……萌郁」

萌郁「……っ」


133:2012/09/23(日) 20:27:24.75 ID:
怯えるように、萌郁は俺から離れた。

当然だ。

殺されそうになったんだ。

俺から離れる事は、当たり前だ。

そう……。


みんな、俺から離れていく。


134:2012/09/23(日) 20:28:01.15 ID:
俺は、

俺は一体……、

何がしたかったんだろう。

みんなを助けるなんて言っておきながら、

辿りついた先は、みんなを絶望の淵に立たせている。


135:2012/09/23(日) 20:28:29.21 ID:
岡部「……すまない、萌郁」

岡部「俺は、お前を赦せないが……、」

岡部「俺は俺の勝手な理由で、お前を殺そうとしてしまったんだ」

岡部「この世界線のお前は……、何もしていないのにな」

岡部「(俺の勝手な理由で、また人を巻き込んだ)」

岡部「……」スタスタ

萌郁「おか、べくん……っ! どこに、行くの……?」


136:2012/09/23(日) 20:29:08.79 ID:
岡部「紅莉栖達に逃げるように伝える」

岡部「今の俺ができることと言えば、それくらいだ」

萌郁「待って……。信じて、くれるはずがない」

岡部「信じてもらうように説得する。信じてもらえなくても、お前らラウンダーから紅莉栖達を守りきって見せる」

岡部「俺は、絶対に屈さない」

萌郁「……だめ。行ったら、捕まる……」

岡部「(……捕まる?)」


137:2012/09/23(日) 20:29:45.58 ID:
岡部「……すでにラウンダーからは裏切り者の扱いか」

岡部「当然の判断だな」

岡部「……それで。お前は俺が裏切ると知ったらどうするんだ?」

岡部「俺を、殺してでも止めるのか?」

萌郁「………」

岡部「………」


138:2012/09/23(日) 20:30:31.74 ID:
萌郁「だめ。ラボに行ったら、あなたは殺されてしまう」

萌郁「裏切り者は、殺される……」

萌郁「さっき、拘束対象は橋田さんと牧瀬さんの二人って言ったけど、本当は岡部くんも含めた三人なの」

萌郁「だから行ったら……、殺され」

岡部「その点に関しては問題ない」

岡部「鈴羽が言っていた。俺は2036年の時点では生きているらしい」

岡部「それはつまり、2036年になるまで、俺は何があっても死なないように因果は収束する」

萌郁「言ってる意味、よく分からない……」

岡部「つまり、不死身ってことさ。何百発と弾丸が飛び交おうが、俺が死ぬ事はない」

萌郁「冗談を言ってる場合じゃ……っ」


139:2012/09/23(日) 20:31:09.52 ID:
岡部「お前こそ何の冗談だ?」

岡部「お前が俺に教えた事、それがラウンダーへの裏切りになってるって、気づいているのか?」

萌郁「私は、岡部くんの……っ」

岡部「話は終わりだ」

岡部「俺はこんな世界線に未練なんてない」

岡部「何があってもDメールを送って見せる」

岡部「お前らラウンダーから、紅莉栖達を守りきる」

岡部「……」

ガチャ

バタン


140:2012/09/23(日) 20:31:57.39 ID:


……ラボに行ってどうするべきか。

残された時間は少ない。

呑気にしていれば、ラウンダーがラボに襲撃を仕掛けてくる。

残された時間は少ないだろう。

短時間で、紅莉栖達を説得する方法は?

逃げろ、なんて言っても無駄か。

俺がラウンダーの時点で、俺が発言したものは全て嘘と見なされる。


141:2012/09/23(日) 20:32:35.04 ID:
ならば、ラウンダーとして襲撃を仕掛け、

強引にでもDメールを送るべきか?

……そんなの無理だ。

女ばかりといえ、五人を相手に武器もなしじゃ……。

それに鈴羽相手だと……。


142:2012/09/23(日) 20:33:05.31 ID:
萌郁「岡部くん……っ!! 待って!!」

岡部「……?」

萌郁「……っ」

萌郁「私も、行くわ」

岡部「……な」

岡部「………」

岡部「ラウンダーを裏切れば命はない。そう教えてくれたのはお前の筈だ」

岡部「なのになんで……」

萌郁「私は、岡部くんのパートナー……」


―――私は、あなたの力になりたいの。


岡部「な……っ」


143:2012/09/23(日) 20:33:37.48 ID:
どこかで聞いたことのある言葉。

優しくて、温かくて、不安で潰れそうな心が、その言葉を聞いただけで―――

何度も一人でどうにかしようしていた。

全部が俺の責任だと思い込んで、どうにかしようとした。

それを、

俺の力になりたいと言って、

手を握ってくれた、誰かの顔が―――

脳裏に浮かび上がった。


144:2012/09/23(日) 20:34:13.92 ID:
だけど桐生萌郁。

俺はお前の知っている俺ではない。

まるっきりの別人だ。

自殺しようとしたお前を止めた覚えはないし、

パートナーとして行動してきた時の記憶もない。

それでもお前は、俺の力になりたいのか―――?

全てを捨てて、今まで俺と行動してきたことをなかったことにしても、

俺の力になるというのか?


145:2012/09/23(日) 20:34:47.16 ID:
萌郁「私は……、それでも」

萌郁「岡部くんの、力になりたい……っ」

岡部「だが……っ」

萌郁「昨日も言ったわ。あなたは、まるで別人。だけど、本質は変わってないって……」

岡部「萌郁……」

萌郁「それに、名前で呼んでくれて……、嬉しかった、から……」

岡部「……っ」


一瞬の躊躇、

憎悪しかなかったその感情は、

その一言で簡単にも―――


146:2012/09/23(日) 20:36:05.69 ID:
岡部「……萌郁」

岡部「俺を助けてくれるか……?」

萌郁「……もちろん」

岡部「………は」


岡部「作戦名は、オペレーション・闇の妖精(ドヴェルグ)だ」


悪の妖精、ドヴェルグを演じて、

もう一度だけ、元の世界線に戻るために、

みんなを助けるために――――


岡部「俺は、世界を否定する」


147:2012/09/23(日) 20:36:46.52 ID:


―――ラボ


岡部「……よりによって、ラボメンは全員揃っているようだな」

岡部「(できれば、巻き込みたくなかったんだが……)」

萌郁「……準備は?」

岡部「42型ブラウン管テレビは点灯済みだ」

岡部「後は、入力を完了させ、Dメールを送信するだけ……」

萌郁「……そう」

岡部「猶予はどのくらいある?」

萌郁「……30分くらい」

萌郁「早くしないと、ブラボーチームが合流する」


148:2012/09/23(日) 20:37:14.02 ID:
岡部「それくらいあれば充分だ」

岡部「説得する時間はない……。なんとしてでも、Dメールを送信する」

萌郁「抵抗される恐れがあるわ」

岡部「……それでも」

萌郁「……これ」

岡部「……これは」

萌郁「FBから支給された銃よ」

岡部「………」

岡部「俺の銃は……」


149:2012/09/23(日) 20:37:44.12 ID:
萌郁「撃てるの?」

岡部「……っ、いや。俺は人殺しじゃない」

岡部「……それでも、貸してくれ」

岡部「銃が必要だ」

萌郁「じゃあ、これ使って……」

岡部「お前は?」

萌郁「予備で、小さいの持ってるから……」

岡部「どこに?」

萌郁「スカートの下に」


150:2012/09/23(日) 20:38:17.41 ID:
岡部「……分かった」

萌郁「大丈夫……。撃たせないから」

岡部「それより、なるべく撃たないでくれ」

萌郁「……どちらが、先行を?」

岡部「俺が、行く」

萌郁「分かった……。準備、いい?」

岡部「……少し、待て」

岡部「……」スゥー ハァー


151:2012/09/23(日) 20:39:10.19 ID:
萌郁「……大丈夫?」

岡部「ああ……、大丈夫だ」

岡部「俺は、ドヴェルグを演じきってみせる」

岡部「……萌郁。背中を、任せる」

萌郁「……っ」

萌郁「……M…、岡部くん」

岡部「……俺はお前を信頼している。今だけは」


別の世界線では敵同士だったとしても。

今だけは、信頼させてくれ。

桐生萌郁―――


152:2012/09/23(日) 20:39:50.14 ID:
萌郁「準備は良い?」

岡部「……ああ」


―――カウント。

―――1

―――2

―――3

ガチャッ!!


153:2012/09/23(日) 20:40:24.83 ID:
岡部「全員動くなっ!」

紅莉栖「岡部……っ!?」

ダル「ひっ! う、動かない!」

ルカ「っ!? じゅ、銃……っ!」

岡部「全員、壁に向かって跪け!」

フェイリス「倫太郎……、なんでっ!」

岡部「動くなっ!」

岡部「無駄な抵抗はするな!」


154:2012/09/23(日) 20:40:59.56 ID:
紅莉栖「岡部……っ、どうして……っ!」

岡部「……っ、く、紅莉栖……」

岡部「(……今だけ、俺は……)」

岡部「……!」

ルカ「岡部さん……、すごく、悲しい顔をしてます……っ」

岡部「動くと撃つ……っ!」カチャ…

フェイリス「……っ、り、倫太郎っ! 嘘ついてる!」

フェイリス「フェイリスには分かるっ」

岡部「脅しじゃない……! いいから、壁に向かって跪け」

ルカ「岡部さん……っ」

紅莉栖「見損なったわ……っ!」

岡部「喋るな!」


155:2012/09/23(日) 20:41:31.80 ID:
岡部「……よし、これで」

岡部「(後は電話レンジでDメールを送りさえすれば、)」

萌郁「岡部くん……っ! 一人、足りない!」

岡部「なに……? っ! す、鈴羽!? あいつはどこにいった!?」

鈴羽「こっち!!」

ガンッ!

岡部「ぐっ!」

萌郁「岡部くんっ!」

鈴羽「撃つな! 撃つと岡部に当たるぞ!」

萌郁「……っ!」


156:2012/09/23(日) 20:42:08.19 ID:
岡部「……く」

鈴羽「……っ!」

ガン

萌郁「あっ…! くっ」

鈴羽「……動くな」カチャ

岡部「……くそ、鈴羽ぁっ!」

岡部「(なんで、邪魔をするんだ……っ!)」


157:2012/09/23(日) 20:42:34.24 ID:
鈴羽「形勢逆転だね」

ダル「阿万音氏かっけぇっ!」

鈴羽「橋田っ! 岡部倫太郎と桐生萌郁を縛って!」

ダル「え、え? ぼ、僕?」

鈴羽「早くっ!」

岡部「―――っ!」

岡部「これで、終われるかよっ!!」

鈴羽「な……っ!」

ガンッ!

鈴羽「あっ……、うっ」


158:2012/09/23(日) 20:43:12.15 ID:
岡部「くっ!」

岡部「動くな鈴羽っ!」

岡部「動けばルカ子の命はないぞ!」

ルカ「ぁ…っ、お、岡部、さ、……」

鈴羽「卑怯者っ! 漆原るかを盾にするなんてっ!」

岡部「なんとでも言えばいい! 俺は何があってもDメールを送るんだ!」

鈴羽「……Dメール? ……電話レンジか。それは―――」



159:2012/09/23(日) 20:43:57.09 ID:



岡部「……ああ! この世界線をなかった事にするには、そこにある電話レンジで―――」


―――ドクッ


岡部「……電話レンジで」

岡部「……?」


机の上には

あの

見慣れた

電話レンジが



―――なかった。


169:2012/09/26(水) 19:32:56.44 ID:



岡部「なっ! 電話レンジは!? 電話レンジはどこにある!?」

鈴羽「やっぱりか。お前が電話レンジを使って過去を改変しようとしていたのは分かっていた」

岡部「鈴羽っ! 電話レンジはどこにある!? 答えろっ!!」

鈴羽「……もう、ないよ」

岡部「……なん、だと?」

鈴羽「電話レンジは、あたし達が―――壊した」

岡部「………は?」


170:2012/09/26(水) 19:33:46.06 ID:
今、鈴羽はなんて、


言ったんだ?


電話レンジを、


……壊した?


171:2012/09/26(水) 19:34:16.94 ID:
岡部「………っ」

岡部「電話レンジを、壊した……だと?」

鈴羽「そうだよ。お前らの手に渡さないためにも」

鈴羽「電話レンジは破壊した」

岡部「……お前、何言って……」

岡部「……」フラ

ルカ「っ……」

萌郁「岡部、くん……っ!?」


172:2012/09/26(水) 19:34:46.88 ID:
電話レンジが壊れた?

それはどういう意味だ?

Dメールが送れない?

それは何を意味している。

この世界線をなかったことにできない。

それはつまり、

もう、元の世界線には戻れない――――


173:2012/09/26(水) 19:35:14.06 ID:
汗が、止まらない。


動悸が、激しい。


視界が、揺れている。


まるでノイズのように聞こえる紅莉栖達の声。


今は、凄く耳障りだった。


174:2012/09/26(水) 19:35:47.07 ID:
萌郁「……っ!」

萌郁「岡部、くんっ! もうすぐ、ブラボーチームが突入しちゃうっ!」

岡部「……っ! ど、どうすれば」

岡部「電話レンジがない」

岡部「電話レンジがなければ、過去を変えられない……っ!」


そして最悪な事に、

もう数分もしないうちに、ラウンダーが襲撃をかけてくる。


175:2012/09/26(水) 19:36:18.00 ID:
―――牧瀬紅莉栖。岡部倫太郎。橋田至の三名は、我々に着いてきてもらう。


―――椎名まゆりは、必要ない。


そんな言葉が、残響するように脳内に響き渡る。


どうすれば、


どうすればいい?


176:2012/09/26(水) 19:36:54.64 ID:
岡部「逃げないと……っ!」

岡部「鈴羽っ! ラウンダーが仕掛けてくる! 早く逃げないと!」

鈴羽「……? 何、言って……っ」


バタン!!


ラウンダー「全員動くな。両手をあげろ」

ラウンダー「抵抗するなら、殺す」

鈴羽「なっ! 増援!?」

岡部「くそ……っ! この光景……っ」


177:2012/09/26(水) 19:37:36.91 ID:
動く事も出来ず、銃をつきつけられている。

知っている。

この光景は、何度も見てきた。

嫌ってほどに、何度も何度も!

そして、ラウンダーの一人が、


178:2012/09/26(水) 19:38:13.36 ID:
M7「開発者三名以外―――」


何を言うか、知っている。


その言葉は、


M7「無力化しろ」

岡部「……よせ」

岡部「……やめ、やめろ……」

岡部「やめろっ!!」

ダンッ!

岡部「ぐ……っ!?」


179:2012/09/26(水) 19:39:02.81 ID:
M6「M7っ! 岡部倫太郎は殺すなっ!」

紅莉栖「いや……いやぁっ! 何よ、なんなのっ!?」

紅莉栖「なんであんたがっ! 私達をかばって……っ!」

萌郁「岡部…・・くんっ!」

萌郁「……っ!」ギロッ

ダン ダン ダン!!

M5「ぐっ! が……、ぁ」ドサ

M7「M4!? 裏切りやがったな!」

M6「――M4を優先して無力化しろっ!」

ダンダン!!

M7「がっ!?」ドサ

M6「M7!? くそっ!」カチャ

鈴羽「――っ!」

ガツンッ!!

M6「ぐっ!」


180:2012/09/26(水) 19:40:15.85 ID:
鈴羽「――くっ。片付いた!?」

鈴羽「みんな、隠れていて! まだ外に敵が待機している可能性がある!」タッタッタ

岡部「……くっ」

ルカ「おか、岡部さんっ!」

フェイリス「倫太郎っ!」

岡部「……大丈夫だ」

岡部「腕をかすっただけで、問題はない」

萌郁「岡部くんっ!」

岡部「萌郁っ! 車は用意してあるかっ!?」

萌郁「ええ、ここから少し離れた路地に駐車してある」

鈴羽「他に敵はいない! 逃げるなら今のうちっ!」

岡部「行くぞ……っ!」


181:2012/09/26(水) 19:40:47.12 ID:


――――

FB「……」コツコツ

ラウンダー「……これは?」

FB「……タイムマシンだろうな。壊れているようだが……」

ラウンダー「我々に奪われると思い、壊したと……?」

FB「その可能性も高いが、一応回収しておけ」

FB「直せるかもしれない」

ラウンダー「分かりました」


182:2012/09/26(水) 19:41:38.39 ID:



――車


萌郁「場所はっ!?」

岡部「とにかく走れ! ラウンダーに見つからない場所に!」

萌郁「ラジ館は?」

岡部「あそこは人が多い。こんな大人数でラジ館に入ったら、目立つだろう」

岡部「とにかく、ラボから離れてくれ」

萌郁「分かった……っ!」

紅莉栖「岡部……っ。怪我、大丈夫……?」

岡部「ああ……。多少、血が出ているが、大丈夫だろう」

岡部「これなら、傷口を止めれば問題ない」


183:2012/09/26(水) 19:42:43.26 ID:
鈴羽「……岡部倫太郎」

鈴羽「どういう事か、説明して」

岡部「……」

鈴羽「どうしてあたし達を助けたの? ラウンダーをなぜ裏切った?」

岡部「言っただろう……。俺は、別の世界線から来たんだ」

鈴羽「それ……、本当……?」

フェイリス「倫太郎、嘘ついてないの……っ! それに、フェイリス達を守ってくれた……」

紅莉栖「……っ」

紅莉栖「岡部……」


184:2012/09/26(水) 19:43:17.65 ID:
岡部「……紅莉栖? どうした」

紅莉栖「……いえ」

岡部「………」

岡部「……くっ」

岡部「(……どうすれば?)」

岡部「(電話レンジがない現状、俺達はどうやっても助からない)」

岡部「(逃げても逃げても、いつか必ず捕まる)」

岡部「(……手段が、もうない――)」


185:2012/09/26(水) 19:43:59.16 ID:


―――路地

キッ…

萌郁「ここなら、しばらく見つかない」

岡部「……ああ。だがラウンダー相手じゃ、時間の問題だ」

岡部「あいつらは、もう秋葉中に散らばっている……」

紅莉栖「岡部……、どうするの?」

岡部「それを今考えている……」

岡部「電話レンジはもうない」

岡部「過去を改変する事は、もう出来ないんだ……」

鈴羽「……っ」


186:2012/09/26(水) 19:45:05.72 ID:
鈴羽「岡部、倫太郎……。電話レンジを使って、何をしようと……」

岡部「言っただろう! こんなクソみたいな世界線をなかったことにするって!」

岡部「……Dメールを送りさえすれば、元の世界線に戻れるとばかり思っていた」

岡部「電話レンジに頼りすぎたんだ……」

鈴羽「………」

岡部「……どうすれば」

岡部「ラウンダーに見つかれば……、命はない」

岡部「(俺と紅莉栖とダルは確保されるが、他は……)」


187:2012/09/26(水) 19:45:40.92 ID:
鈴羽「……あたしの、せい……」

鈴羽「あたしが、電話レンジを壊せって……言ったから」

岡部「なっ……」

岡部「電話レンジを壊したのは、お前だったのか……、鈴羽」

鈴羽「違う……。違う……。こんなの、あたしが望んだ結果じゃない」

鈴羽「これじゃ父さんたちが報われない……」

鈴羽「あたしは何のために過去に……」

岡部「………」

鈴羽「……失敗、した」

岡部「っ……!」


188:2012/09/26(水) 19:46:23.65 ID:



――――あたしは、失敗した―――――


――――失敗した失敗した失敗した――――


――――あたしは、何のために生まれてきたんだろう――――


――――こんな人生は、無意味だった―――




189:2012/09/26(水) 19:46:54.70 ID:
岡部「……違う」

岡部「お前の所為じゃない、鈴羽」

鈴羽「……え」

岡部「全部、俺の責任なんだ」

岡部「……前の世界線の俺は、不用意にDメールを送って過去を改変した」

岡部「その結果、いろんな人達を傷つけてしまったんだ」

岡部「……そして、こんな……、"俺がラウンダー"の世界線に来てしまったんだ……」


190:2012/09/26(水) 19:47:25.42 ID:
鈴羽「でも……っ!」

岡部「SERNは俺達が発明した電話レンジを使って、タイムマシンの開発に成功させる」

岡部「……ならば壊せば、壊してしまえば」

岡部「俺だって考えなかった訳じゃない!」


だけどそれは、軽率な判断だったんだ。


岡部「でも、この世界線は、あまりにも希望が無い……っ!」

岡部「俺が、お前たちを裏切っていた……っ!!」


191:2012/09/26(水) 19:48:05.06 ID:
ルカ「岡部……さん」

ダル「………」

岡部「全部俺の所為なんだ……。全部俺が悪いんだっ!」

岡部「お前たちを傷つけてしまったのも! まゆりが何度も痛い思いをしてしまったのも!!」

岡部「俺が……悪いんだ……」

紅莉栖「……岡部」

岡部「……くそっ。こんなの、あんまりだろ……っ!」

紅莉栖「岡部っ!」

岡部「……っ、くり、す……?」


192:2012/09/26(水) 19:49:21.26 ID:
紅莉栖「あんたの言ってる事、悪いけどあまり理解できない」

紅莉栖「だけど……、お願いだからそんな顔しないで」

紅莉栖「私は、今だけは……、あんたの事を信頼するから」

紅莉栖「……あんたの力に、なるから」

岡部「……紅莉栖」

紅莉栖「後悔しても時間の無駄。とにかく、現状をどうにかしないと」

岡部「……そう、だな」

岡部「(俺は何を諦めているんだ……)」

岡部「(まだ目の前に、守れるものがあるだろう……っ!)」


193:2012/09/26(水) 19:50:02.38 ID:
岡部「……紅莉栖」

紅莉栖「……ほんと、違和感。何よ、"紅莉栖"って呼び方……。今なら、あんたが別の世界線から来たってことを信じてあげる」

紅莉栖「証明しようのないことだけど」

岡部「……俺は、お前の事をなんと呼んでいたんだ?」

紅莉栖「牧瀬って。それにしても、感情を表に出すようなヤツじゃなかったんだけどね」

岡部「からかうな……。俺は、この世界線の俺は認められない」

岡部「(……いや、認めたくないだけ)」

鈴羽「……」


195:2012/09/26(水) 19:51:05.22 ID:
岡部「俺は、ラボメンを守ってみせる」

岡部「紅莉栖、まゆり、鈴羽、フェイリス、ルカ子、萌郁、……ついでにダル」

ダル「僕はついでかよっ」

萌郁「岡部……くん?」

岡部「俺はこれ以上、誰も傷つけたくない……っ!」

岡部「(ラウンダーに見つかるのは時間の問題)」

岡部「(見つかってしまえば、最悪な事態は避けられない)」

岡部「(それなら、俺は……、みんなを救うために)」


196:2012/09/26(水) 19:52:07.23 ID:
岡部「俺が、"鳳凰院凶真"になればいい」

鈴羽「なっ!?」

鈴羽「待って、どういう意味か説明して」

岡部「そのままの意味だ、鈴羽」

岡部「俺は最期までドヴェルグを演じきる」

岡部「そして、ラボメンを救ってみせる」


だけど、今は無理だ。

それなら、残された望みは―――


197:2012/09/26(水) 19:52:53.29 ID:
鈴羽「だ、だけど! あたしのタイムマシンを使えば――」

岡部「どうする気だ?」

鈴羽「そ、それは……」

岡部「駄目だ。お前のタイムマシンは、未来には跳べない」

岡部「不確定要素が多い……」

岡部「失敗は赦されないし、もし失敗してしまったらどうなるかなんて予測もつかないんだ」

岡部「過去の自分に会って電話レンジを壊すなと言うか? 無理だろ……」

岡部「過去の自分と出会えば、深刻なパラドックスが発生する」


198:2012/09/26(水) 19:54:08.54 ID:
岡部「……今の俺では、お前たちは救えない」

岡部「だけどあるいは、別の俺なら……」

岡部「全てを、過去にゆだねれば」

紅莉栖「……どういう、意味?」

岡部「たらればの話をするつもりはない」

岡部「俺がドヴェルグを演じきる。そして必ず未来――、鈴羽に」

鈴羽「……もしかして、岡部倫太郎」

岡部「ああ、そういうことだ」

岡部「今だけでも、お前たちを救ってみせる」


199:2012/09/26(水) 19:55:32.78 ID:
今まで、俺の勝手な理由でどれだけの人達の思いを犠牲にしたのだろう。

自分勝手な理由でDメールを送り、過去を改変して、

2000年問題が実際に起きた世界線に跳んできて、

そのせいで人が死んでしまい、

誰も救われない、世界線。

そんな結末を迎えてしまった。


200:2012/09/26(水) 19:56:13.36 ID:
岡部「ラウンダーに見つかってしまえば終わりだ」

岡部「それなら、せめて俺一人だけ犠牲になればいい」

岡部「そして、俺は鳳凰院凶真の仮面を被る」

岡部「永遠に外れる事のない、仮面を……」

岡部「お前たちを、救うために……っ!」

フェイリス「倫太郎……っ」

鈴羽「……岡部倫太郎、お前まさか……」

岡部「……どうした?」

鈴羽「いや、なんでもない。未来のお前が、少しおかしなことを言ってたから……」


201:2012/09/26(水) 19:56:43.78 ID:
岡部「この俺、鳳凰院凶真は……っ!」

岡部「お前たちラボメンを救うために、ドヴェルグを演じきる」

岡部「なお、今回の作戦名は、オペレーション・―――」

萌郁「闇の妖精(ドヴェルグ)……」

岡部「も、萌郁……?」

萌郁「でしょ……?」

岡部「ク……、フフ」

岡部「フゥーハハハハ!」

岡部「俺は、今を持って鳳凰院凶真の仮面を被る!」

岡部「そして、ラボメンを、まゆりを―――絶対に助けてみせるっ!」


202:2012/09/26(水) 19:58:14.31 ID:








2036年――――


鳳凰院凶真「……どうやら世界は、俺を嫌っているらしい」

男「……? 世界は貴方の手中に落ちたも同然、これ以上、望むものがあるのですか」

鳳凰院凶真「フフ……。確かに、時すらも支配した俺に不可能はない」

男「それでしたら、」

鳳凰院凶真「だがそれでも届かないものもある」

鳳凰院凶真「……どう足掻こうが、所詮は叶わぬ願いだ」

男「………」

男「……どうやら貴方は世界がお好きのようだ」

鳳凰院凶真「違いない。俺が世界を嫌っているならば、今の俺は存在していないだろうからな」

男「おっしゃる通りだ」


203:2012/09/26(水) 19:58:47.53 ID:
鳳凰院凶真「時間移動を可能にした機械」

鳳凰院凶真「発明されたと同時に、世界は混沌に陥った」

鳳凰院凶真「そして同時に、世界は俺の手中に落ちた」

鳳凰院凶真「……世界は実に汚らしいな」

男「……と、言いますと」

鳳凰院凶真「欺瞞に満ちている。何より、世界は優しさを受け容れない」

男「………」

男「どうしました?」

鳳凰院凶真「貴様こそどうした? いつもは反論なく、俺の下命に従っているではないか」

鳳凰院凶真「こういった、どうでもいい会話も全て頷いていたはずだ」


204:2012/09/26(水) 19:59:35.66 ID:
男「いえ、まるで……、今から終焉を迎えるような、そんな気がしただけです」

鳳凰院凶真「クク……」

鳳凰院凶真「全ては、計画通りに進んでいる」

鳳凰院凶真「……作戦名・オペレーション・最強の神戦(トール)」

鳳凰院凶真「じき、ラウンダーは任務を遂行させるだろう」

男「……?」

ラウンダー「失礼します」

ラウンダー「鳳凰院凶真様。報告に上がりました」

ラウンダー「レジスタンスの本拠点を無力化に成功、」

ラウンダー「レジスタンスの指揮者の始末も完了しました」

鳳凰院凶真「そうか……。まだ俺に反逆する者はいるだろうが、勢力は落ちただろう」


205:2012/09/26(水) 20:01:38.64 ID:
ラウンダー「それともう一つ」

ラウンダー「我々、SERNが開発したものを元に作られたと思われるタイムマシンを、レジスタンスのアジトから発見しました」

鳳凰院凶真「……」

鳳凰院凶真「ふむ。うまくいきすぎて、逆に不安だな」

鳳凰院凶真「……それで」

ラウンダー「命令通り、身柄を確保しました」

鳳凰院凶真「連れて来い」

ラウンダー「はっ」


206:2012/09/26(水) 20:02:10.83 ID:
男「……一体何をお考えに?」

鳳凰院凶真「なに、どうせすぐに分かる」

鳳凰院凶真「貴様は、席をはずせ」

男「ですが……っ!」

鳳凰院凶真「命令だ」

男「………」

男「分かりました」スタスタ

鳳凰院凶真「………」


207:2012/09/26(水) 20:02:58.13 ID:
鈴羽「……っ! ~!!」

鳳凰院凶真「………」

鳳凰院凶真「そいつが、タイムマシンに乗ろうとしていたのだな」

ラウンダー「はい。名は橋田鈴羽。ワルキューレの一員であることは間違いありません」

ラウンダー「拷問にかけ、知っている情報を全て吐かせますか?」

鳳凰院凶真「拘束を解け」

ラウンダー「……は? 今なんと」

鳳凰院凶真「拘束を解けと言った」

ラウンダー「……分かりました」

スルスル……

鈴羽「っ!」バッ

ラウンダー「動くな! 撃つぞっ!」カチャ

鈴羽「……」チッ


208:2012/09/26(水) 20:04:04.46 ID:
鳳凰院凶真「貴様はもう用済みだ。出ていけ」

ラウンダー「は? 我々に反対している組織の一員をここに残し、」

ラウンダー「鳳凰院凶真様を一人にするのは……」

鳳凰院凶真「逆らうのか?」

ラウンダー「で、ですが……っ!」

鳳凰院凶真「………」チラ

鈴羽「……」

鳳凰院凶真「選択させてやろう。死ぬか、出ていくか」カチャ

ラウンダー「なっ…」

ラウンダ「……了解しました。緊急時は速やかにご連絡を」スタスタ


209:2012/09/26(水) 20:04:57.97 ID:
鳳凰院凶真「………」

鈴羽「はっ……。仲間をまるで家畜のように見ているね、お前は」

鈴羽「どんな性格してんのかと思えば、相変わらず最低な奴だったよ」

鳳凰院凶真「ククク……。まさに四面楚歌という現状で、よくもそんなに強気でいられる」

鈴羽「拷問にかけたきゃかけな」

鈴羽「それとも馬鹿らしい男の欲望でも満たす?」

鈴羽「あたしの仲間を殺したように、お前はあたしを殺す?」

鳳凰院凶真「殺せと依頼を出した人間と、依頼を受けて殺した人間」

鳳凰院凶真「どちらが罪が重いのだろうな」


210:2012/09/26(水) 20:06:16.24 ID:
鈴羽「なんのつもり?」

鳳凰院凶真「久しいな、鈴羽」

鈴羽「……っ!」

鈴羽「馴れ馴れしく名前で呼ぶな。それと、生憎だけどお前の事なんて知らない」

鳳凰院凶真「今のお前はな」

鈴羽「何が言いたい?」

鳳凰院凶真「クク……、簡単な事だ」

鳳凰院凶真「俺がまだ、"岡部倫太郎"だった頃、俺は貴様に会っている」

鈴羽「な……っ!」

鳳凰院凶真「そこでお前は、失敗をした」

鳳凰院凶真「過去を変えるために全てを捨てて跳んだというのに、お前は失敗したんだ、鈴羽」


211:2012/09/26(水) 20:07:17.75 ID:
鈴羽「……欺瞞に満ちたお前の言葉なんて信用ならない」

鳳凰院凶真「どう受け取ってもらっても構わない」

鳳凰院凶真「何より――、こんな嘘をついて俺にメリットがあるのかどうかと問われれば、」

鳳凰院凶真「答えは、否だがな」

鈴羽「………」

鳳凰院凶真「貴様にはヒントをやろう」

鳳凰院凶真「これが何だか、分かるか」

鈴羽「知らない。爆弾? その数値が、0になった途端にここ一帯大爆発でもさせる気?」

鳳凰院凶真「ダイバージェンスメーター」

鳳凰院凶真「世界線を数値に表せる事ができる」

鈴羽「必要性ないね。あらゆる生物は世界線の変動に気づけないんだから、数値が変わっていようと気づける筈がない」

鈴羽「作った意味がない」


212:2012/09/26(水) 20:08:15.71 ID:
鳳凰院凶真「これがヒントと言っただろう?」

鳳凰院凶真「よく覚えておくといい。ま、全てはお前の判断に任せるがな」

鈴羽「……」

鳳凰院凶真「……」ピッ

男『……何か問題がありましたか?』

鳳凰院凶真「全ラウンダーに告げろ。橋田鈴羽の姿を見ても、射殺をするな」

鳳凰院凶真「拘束もするな、と」

男『……正気ですか?』

鳳凰院凶真「正気だ。逆らうのか?」

男『……逆らいませんが、貴方の立場が危うくなります』

鳳凰院凶真「構わない。命令通りやってくれることを期待している」ピッ


213:2012/09/26(水) 20:09:14.91 ID:
鈴羽「どういうつもりだ」

鳳凰院凶真「……これ以上言う事はない」

鳳凰院凶真「変えられるものなら、変えてみろ」

鳳凰院凶真「過去をな。全てを得てしまった俺に、愉悦と思えるものはもうない」

鳳凰院凶真「貴様に、期待していると言う事だ」

鈴羽「……っ」

鳳凰院凶真「消えろ……。次に俺が戻って来た時にここにいたら、有無を言わせずに殺す」

鳳凰院凶真「………」スタスタ

鳳凰院凶真「………」

ガチャ


214:2012/09/26(水) 20:09:48.30 ID:



--


岡部「……」

岡部「……全て、終わったんだな」


オペレーション・闇の妖精(ドヴェルグ)。

任務完了、と言ったところか。

およそ26年と続いた戦いも、鈴羽がタイムマシンで無事に過去に跳べば、終わりを迎える。

俺が、岡部倫太郎ではなく鳳凰院凶真として過ごしてきた26年。

今―――、やっと仮面が外れた。


215:2012/09/26(水) 20:10:41.98 ID:
岡部「俺は……、みんなを守れたんだよな」


ラボメンは俺が、鳳凰院凶真が守ってみせた。

レジスタンス組織、ワルキューレはほぼ壊滅状態だが、ダルや紅莉栖……それに鈴羽は無事だろう。

そうなるよう、俺が仕向けた。

他に、ルカ子やフェイリスもラウンダーから守りきった。

みんな、幸せかどうかは分からないが、生きている。


216:2012/09/26(水) 20:11:14.64 ID:
……きっと、俺を恨んでいるだろう。

俺は、ラウンダーを使って、何十人もの人間を殺してきた。

理不尽な殺戮を繰り返してきた。

いつの日だったか、萌郁が言ってたな。

この世界線の俺と、前の世界線の俺は全く別人だったが、本質は変わっていないって。


岡部「……違いない」クク


217:2012/09/26(水) 20:11:44.60 ID:



まゆりは死んだ。

病室で、

呆気なく、

息をひきとった。

それも、

クリスマス当日に。


218:2012/09/26(水) 20:12:24.90 ID:
聞いた話によると、死に際は苦しまなかったようだ。

せめてもの救い。


岡部「……看取れなくて、すまない」


それでも、必ずまゆりを救ってみせる。

そのためには、


俺はラウンダーとして。

鳳凰院凶真として。

みんなを助けるために、仮面を被った。


219:2012/09/26(水) 20:13:12.01 ID:
俺は、ラボメンを守りきれた。

その道が、いかに険しいと知っていても、今まで諦めずにやっと辿りついた。

何度、諦めようと思ったのだろう。

罪悪感に押し潰されて、手にある拳銃を自分のこめかみに突きつけたことだってある。

その度に、萌郁に止められたんだったな。


――あなたは、岡部倫太郎じゃない。

――鳳凰院……、凶真よ……。


220:2012/09/26(水) 20:15:09.27 ID:
俺を支えてくれた萌郁も、俺を助けるために死んでしまった。

ラウンダーの仕事の最中での出来事だった。

上からの伝達ミスで、敵の暗殺に失敗した。

敵に撃たれそうになった俺を、萌郁が庇った。

本当にバカなヤツだ。

言っただろう。

俺は、2036年になるまで絶対に死なないって。

それでも、最期の最期では、

俺を守れてよかったと、涙を流していた。


221:2012/09/26(水) 20:15:55.98 ID:
岡部「……はあ」


岡部倫太郎に戻れたのは、いつ以来だろう。

26年という年月は、長いようで短かった。

思えばこの世界線の俺も、そんなに最低なヤツじゃなかったのかもしれないな。

そいつの本心を知る機会など、永遠とないが……。


222:2012/09/26(水) 20:16:39.34 ID:

岡部「……俺は、闇の妖精(ドヴェルグ)を演じきってみせた」


皮肉にも、


岡部「本当に世界に混沌を齎してしまったとはな……」


まゆりを救うために、

何万人と、犠牲になった事だろうか。

タイムマシンを開発させる為に、何百人の犠牲を出した事か。

俺に反逆してきた者達を、どれほど殺してきたことか。


223:2012/09/26(水) 20:17:45.74 ID:
岡部「……すまない」


謝っても赦されない事は分かっている。

それでも俺は、まゆりを、

絶対に助けてみせる。

たとえ、そのためにどれだけ犠牲になろうと、

構わない。


全て、"なかったこと"になるから。


224:2012/09/26(水) 20:18:23.09 ID:
その考えが間違っている事は分かっている。

だけど、何十年と時を経ても、この世界線をなかったことにしなくてはいけないという考えは、変わらないままだ。

だから俺は、鈴羽に託した。

過去の俺に、過去に跳ぶ鈴羽に全てを委ねた。


岡部「……ぁ」


涙が、零れた。

ずっと、我慢してきたものが、全て吐き出された。

……泣かないって、決めていたのに。


225:2012/09/26(水) 20:18:48.94 ID:




どうか、鈴羽。

過去の俺を信じてくれ。

電話レンジを、壊さないでくれ。


そう、願い続けていた――――




226:2012/09/26(水) 20:19:25.70 ID:



―――――――2036


―――――2034

――2022



――――2015


――――――2012



――――――2010



227:2012/09/26(水) 20:19:57.53 ID:





2036年    →     2010年



228:2012/09/26(水) 20:20:56.10 ID:




紅莉栖「え? 話って何?」

ダル「どったん。なんか、めっちゃ深刻そうな顔してるけど」

鈴羽「今から話す事は、冗談でもなんでもない」

紅莉栖「……何?」

ダル「………」

鈴羽「本当は、あたしはあたしの正体を君たちに教える気はなかったんだ」

鈴羽「だけど、君たちが岡部倫太郎を信じて疑わないから、」

鈴羽「……あたしは、全て告白しようと思う」


229:2012/09/26(水) 20:21:42.13 ID:
鈴羽「いい? 岡部倫太郎を信じちゃダメ」

鈴羽「あいつの言う事は、欺瞞に満ちてるから」

紅莉栖「は? え?」

ダル「い、いきなりどったん? 阿万音氏」

鈴羽「………」

鈴羽「……あたしは、2036年からタイムトラベルしてきた」

紅莉栖「え?」

鈴羽「そこにいる、橋田至の――――」



鈴羽「―――娘」



END




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