280:2015/08/06(木) 22:13:19.46 ID:
――――――――――――――――――――――――――
D 0.409420%
2010.08.10 (Tue) 10:03
未来ガジェット研究所


ハルヒ「……メール、準備できたわ」

岡部「こっちも準備万端だ。して、メールの内容は?」ヌッ

ハルヒ「お、乙女の秘密よ! 見るなバカ!」

岡部「……貴様もか。まぁ、別に構わんが」

岡部「さぁ、放電現象が始まったら送信しろ」

バチバチバチッ

ハルヒ「…………」

ハルヒ「……ジョン」ピッ

シュタゲ


――――――――――――――――――――――――――

281:2015/08/06(木) 22:14:36.17 ID:
D 0.409416 4920656e767920796f75%
2010.08.10 (Tue) 10:05 
????


キョン「―――――――――ッ!!!!! いってぇ!!!!! なんだこれ、いってぇぇぇぇ!!!! 頭が、頭が割れるッ!!!!!」

キョン(脳がかゆいッ!! 死ぬほど痒いッ!! 目と耳から指を突っ込んで掻き毟りたいくらいだッ!!)

古泉「おや、突然どうし……だ、大丈夫ですか!? 落ち着いて、深呼吸してください。はい、ひっひっふー」

キョン「はぁ……はぁ……。な、なぁ古泉、さっきは何を言いかけたんだっけか……」

古泉「ええとですね、『なぜ日本映画は比較的海外進出しにくいのか』という話について、そもそも映画業界が斜陽産業と呼ばれていた時代から脱するためにテレビ局や広告代理店が映画を企画し始めたため……」

キョン(こいつ、一体、なんの、話を……くそっ、またアレかよ……過去改変による世界改変か……。しかも俺が体感した中で一番どでかいやつだ……)ズキズキ

古泉「……国内向けビジネスとして特化してしまった、ということを言おうとしていたのですが、そんなことよりお体大丈夫ですか?」

キョン「長話をしやがってホントに心配してるのかお前……? まぁ、身体のほうは大丈夫だ、心配するな」

古泉「本当ですか? 何かあったらすぐ言ってくださいね」

キョン(どうも調子が狂うな……)


282:2015/08/06(木) 22:15:44.39 ID:
キョン(しかし参った。心の準備ができてないのはいつものことだが、こうも間断なく世界が改変させられると自分の記憶力が不安になるぜ)

キョン「えっと、ハルヒのやつはどこだっけか」

キョン(兎にも角にもまずはハルヒだ。さりげなく情報を吸い上げてやろう)

古泉「先ほど朝比奈さんとお手洗いに行かれたところですよ。連れション、というやつでしょうか」ンフ

キョン(よかった、ハルヒは居る。あと古泉は一回殴る)

キョン(だがここは一体どこなんだ?……観察するに映画館の通路か?……もしかして、秋葉原から俺たちの街に帰ってきたのか?)

みくる「はぁ……はぁ……、あ、古泉くん! と、……」トテトテ

キョン「あぁ、朝比奈さん。って、どちらへ行かれるんですか?」

みくる「ちょっと買い物に行ってきまぁす!」トテトテ

キョン(?)


283:2015/08/06(木) 22:16:38.51 ID:
ハルヒ「ジョン~! 待たせてゴメンネ~? さみしかったぁ?」ムニュ

キョン(その胸はやわらかかった……い、いやいや! 現実逃避しとる場合ではないッ! 今こいつなんて言った!? そしてなんだこの、俺の腕に絡みついてきたハルヒと、おっぱいは!)ドキッ

みくる「涼宮さぁん、待ってくださいぃ。ジョンくんは逃げませんよぅ」

ハルヒ「ジョンどうしたの? そんな変な顔しちゃって。まぁアンタはいつも変な顔だけど」ププッ

キョン「な……な……」

キョン(数秒でいい、俺に考える時間をくれ……。どうしてハルヒは上目遣いで執拗に俺との距離を詰めてくるんだ? い、いやそこじゃなくて、どうしてこの二人は俺の事をジョンと呼んでいるんだ!?)

キョン(それだけじゃない。俺はたしかに映画館を出る方向に走っていった朝比奈さんを確認している。それじゃこのトイレから出てきた朝比奈さんは誰なんだ!?)

古泉「先ほど少し体調に異変があったみたいでして、混乱されているのでは」

ハルヒ「えぇぇーーッ!! 大丈夫ジョン!? どこか痛いところはなぁい!? 救急車呼ぶ!?」ピ、ポ、パ

みくる「わわぁー、呼んだら来ちゃいますよぉー!」ガシッ

キョン「あ、あぁ! 救急車はいらん! 簡単に呼ぶな馬鹿野郎! えっと、ほら! 俺は元気だぞー!」アハハ

ハルヒ「そ、ならよかった。なんかいつも以上に挙動がおかしいわよ? フフッ」


284:2015/08/06(木) 22:17:30.47 ID:
キョン(このSOS団はなにがどうなってるっていうんだ!? あ、朝比奈さんが二人!?)

キョン(そう言えば、このSOS団に長門はいないのか……?)キョロキョロ

長門「……」トテトテ

キョン「おぉ長門! 居てくれたか!」

長門「……?」

キョン(やっぱり世界改変は検知できないのか……)

古泉「長門さんがエンドロールをすべて見終えたようですね」

キョン「あぁ、なるほどな。それで」

古泉「なるほどな、とおっしゃいますと?」

キョン「言葉の綾だって何回言ったらわかるんだ」

キョン(ん? なんで“何回言ったら”なんて言ったんだ、俺……)

ハルヒ「有希も揃ったわね! それじゃ、次はどの映画を見ようかしら!」


285:2015/08/06(木) 22:18:33.99 ID:
キョン「……古泉、俺たちって映画館のはしごでもやってんのか?」

古泉「もしや自覚がなかったのですか?」

キョン「はぁ、さすがに2年目ともなると飽きるものかと思っていたが」

古泉「おや、去年も涼宮さんと映画館のはしごをされたのですか? んっふ、うらやましい限りです」

キョン「…………」

キョン(おかしい。明らかにおかしい。これはそろそろトボけて付き合うのは厳しいか)

キョン「なぁハルヒ、みんな。悪い、俺、ちょっと本当に体調が悪くなっちまったみたいだ。今日は帰るよ」

キョン(一旦家に戻ってハルヒ以外に再集合をかけよう、と思ったが、これは失敗する気がするな……)

ハルヒ「えーっ。ねぇみくるちゃん、ジョンが体調を悪くするのは規定事項だったの?」

みくる「えっと、そのような報告は未来から連絡されてませぇん」

キョン(なッ!? なんだその会話!? さっきから冷静を装い続けている俺だが、そろそろビックリ水位の上昇が堰を切って溢れ出さんとしている……)


286:2015/08/06(木) 22:19:25.91 ID:
ハルヒ「てことは仮病ね? ジョンのくせに生意気だ―! こうしてやるー! うりうりー!」

キョン「だはぁっ! や、やめんかバカハルヒ! 抱きつくな! 暴れるな! 顔をこすりつけるな!」

古泉「ほほえましい限りです」ンフ

みくる「ですねぇ」ポッ

長門「…………」

ハルヒ「で、なんで仮病なんか使おうとしたのよ」

キョン(どうする、なんて言い訳をする……。シャミセンが円形脱毛症になった、いやこれは一度使ったな……)

キョン「い、いや、それがだな、その……。家で待つ妹が心配になってだな」

キョン(きっとこの世界のジョン君は妹思いのシスコン野郎だったに違いない!)

ハルヒ「アンタの家族、お母様のご実家に行ってるんでしょ? ほら、アンタの“ハツコイ”の相手だった従姉妹が近くに住んでるとかいう地方に」

キョン(なんとなくそんな気がしていた!)


287:2015/08/06(木) 22:20:08.75 ID:
ハルヒ「ふーん、このあたしに隠し事。別にいいわよ? 不思議の一つや二つ、男なら隠しておくものよね」

キョン「勘弁してくれ……」

ガサゴソ

キョン(ん、なんだ? 自販機の裏に……二人目の朝比奈さんか?)

ハルヒ「よそ見すんなッ!」グイッ

キョン「グエッ」

ハルヒ「その耳かっぽじってよく聞きなさい。浮気だけは“ゼッタイに”許さないから♪」ニコッ

キョン(何度見てもおっかねぇ顔だぜ……)

キョン(ん? “浮気”、だと?)


288:2015/08/06(木) 22:23:03.44 ID:
キョン「まさか、俺とハルヒは付きモガフッ!!!グフッ!!フゴッ!!」

みくる(?)「は、はぁ……はぁ……。しゃ、しゃべらないでくださいぃ!」

キョン「バザビナザン!!ビギガ!!ビギガドバドゥ!!ジヌ!!」ジタバタ

ハルヒ「ちょ、ちょっとみくるちゃん!? さっきまでこっちに居たような、って居る?」

みくる「あ、あれぇー、あたしがもう一人いますぅ」

みくる(未)「えっと、あたしはちょっとだけ未来から来たみくるですぅ」

みくる「あ、どうもー」

みくる(未)「どうもー」

古泉「大変です涼宮さん! 彼が息をしていません!」

キョン「」


289:2015/08/06(木) 22:24:52.62 ID:
みくる(未)「4回目にしてやっと成功しましたぁ」

キョン「頑丈そうな布地の両端を両手で持って背後から頭部をひっかける形で鼻と口を塞ぐとか……。もうちょっとお手柔らかにできなかったんですか……」ゴホッ

ハルヒ「みくるちゃん、よくわからないけどGJよ!」

みくる(未)「わぁい」

古泉「おや、4回も挑戦したということは、4人の朝比奈さんがいないとおかしいのでは?」

みくる(未)「えっと、ちょっとした小技を使ったんです。ほんのちょっとずつ時間平面に開ける穴をずらすように分岐点を探し出してあげれば、【禁則事項】と組み合わせて【禁則事項】になるんです。あっ、これは禁則事項でした……ごめんなさい」

キョン「なんなんだこの世界は……」


290:2015/08/06(木) 22:25:57.22 ID:
みくる(未)「涼宮さん、ちょっとこっちで、こっちのあたしさんと二人きりでお話がしたいんですけど、いいですか?」

ハルヒ「許可する!!」ドヤァ

みくる「ありがとうございますぅ」

みくる(未)「失礼しまぁす」

キョン(このハルヒの満足そうな笑顔よ)

キョン(というか、タイムトラベルまでして俺の口をふさいだってことは、相当にあの発言は禁句だったということか……。仕方ない、ハルヒの彼氏ジョン君を演じよう。これは不可抗力である)


291:2015/08/06(木) 22:26:58.33 ID:
みくる「それで、何が起こったの? あの時のジョンくんの言葉?」

みくる(未)「そう。ジョンくんは、自分と涼宮さんが付き合ってることを疑問に思って、それがきっかけで別れ話に発展します」

みくる「えっ……」

みくる(未)「原因は世界外部からの干渉によってジョンくんの記憶が書き換えられたこと。これは本来あたしたちの時間線のSTCデータには無い事項、特大のイレギュラーでした」

みくる「ひぇぇ……」

みくる(未)「規定事項が次々に破綻し、大量の時空震動が観測されたから未来は大混乱。分岐と収斂を繰り返してあたしという存在自体が消えかかったりしました。時空断層を構築されなかったのが不幸中の幸い」

みくる「はゎゎ……」


292:2015/08/06(木) 22:28:58.51 ID:
みくる(未)「最初の世界線では、別れ話の後いろいろあって、涼宮さんが絶望を感じてしまって、久しぶりに閉鎖空間を展開します。それも地球規模で」

みくる「うん……」

みくる(未)「古泉くんたちの機関は壊滅状態、長門さんたちの攻勢も長くは持たなかった。時間線も存在が曖昧なものになってしまって、そんな中にあってなんとか世界線理論的過去改変の実行許可を取り付けたあたしは近接世界の過去に飛んだの」

みくる「そっかぁ……」

みくる(未)「それで世界を4回やり直して、なんとかこの世界線に来れたの……」グスッ

みくる「……つらかったね」グスッ

みくる(未)「うん……つらかったよぉ、ふぇぇ」ダキッ


293:2015/08/06(木) 22:31:13.78 ID:
みくる(未)「まもなくSTCデータの上書きが完了すると思います」

みくる「うん……」

みくる(未)「次の世界線の変更と同時に、あたしという存在はその世界線に再構成される」

みくる「…………」

みくる(未)「たぶん、その世界線のあなたと合体するようなことになると思うんだけど、あたしの記憶は全部なかったことになる」

みくる「うん……」

みくる(未)「実質、あたしが消えちゃうんだよね……えへへ……」グスッ

みくる「……こうして抱きしめていれば、怖くないです」ダキッ

みくる(未)「……うん、ありがとう、あたし」ギュッ


294:2015/08/06(木) 22:32:40.77 ID:
D 0.337187 4920656e767920796f75%
2010.08.10 (Tue) 19:07 北口駅前


キョン(結局映画館のはしごに遅くまで付き合わされてしまった。中は冷房施設ではあるが、外気温との寒暖の差のせいか、ちょっとめまいがした)

キョン(ハルヒのやつ、執拗なまでに俺のことを束縛しやがって……まぁ、色々柔らかかったことは脳裏に焼き付けておこう)

ハルヒ「みんなまた明日ねー! 明日は昆虫採集、セミ取り合戦よ!」

キョン(どうも去年のエンドレス夏休みの無制限イニング延長戦に突入しているような気分だ)

みくる「あ、あの、ジョンくん……」

みくる(ジョンくんはどうして記憶が書き換わっちゃったんだろう……)

キョン(この朝比奈さんは未来から来たほうなのか、元々居たほうなのか、どっちなんだろうな。みちるさんの時を考えると未来から来たほうなのかもしれない)

ハルヒ「さ、ジョン。帰るわよ」グイッ

みくる「あっ……」

キョン「おい、引っ張るなハルヒ。朝比奈さん、また明日」

みくる「は、はい……」


295:2015/08/06(木) 22:33:27.57 ID:
キョン「それじゃ、踏切まで一緒に行くか」

ハルヒ「は? 何か用事でもあんの?」

キョン「え?」

ハルヒ「ん?」

キョン「……あ、あぁ。そうだったな。お前の家まで見送ってやろう」

ハルヒ「アンタさっきからなに頓珍漢なこと言ってるの?」

キョン「……これもハズれたか」


296:2015/08/06(木) 22:34:39.46 ID:
ハルヒ「もしかして、あたしの家に居づらくなった……?」ウルッ

キョン(上目遣いはやめろ! くそ、ハルヒが女の武器を意識的に使うようになるとこんなにも攻撃力がアップするとは!! というか、なにか? この世界の俺はこのハルヒと一つ屋根の下で暮らしているとでも言うのか! うらやま、じゃなかった、けしからん!! けしからんぞ!! お父さん許しませんからね!!)

ハルヒ「……?」

キョン「そそそ、そんなことは断じてないぞ! お前の手作り飯が美味いことは俺の胃袋が重々承知しているんだ! あぁ今日はお前のお母様が飯当番なのか!? たとえ味音痴な飯マズ嫁だったとしても一向に構わん! ちょっと今日は、ホントに、家に帰んないとヤバいんだって! 頼む! この通りだ!」

ハルヒ「うぇーんジョンが浮気してるー!! あたしとは遊びだったのねー!!」ビェェ

キョン「往来で変なことを言うな!! なぁ、どうしたら俺を家に帰してくれるんだよ!!」

キョン(ハルヒの家に行ってみろ、絶対に古泉や長門、朝比奈さんたちと相談する隙を得ることはできない!)

ハルヒ「じゃーあたしもジョンの家行くー♪」ダキッ

キョン(本末転倒だーッ!?)


297:2015/08/06(木) 22:35:57.13 ID:
2010.08.10 (Tue) 19:30 
喫茶店 珈琲屋夢<ドリーム>


キョン(とりあえず晩飯をおごるという条件で喫茶店に逗留することに成功した。が、その場しのぎにしかならないことは百も承知だ)

ハルヒ「♪」モグモグ

キョン(どういうわけかわからんがこのハルヒは蜂蜜ヌガーのように俺にべったりとくっついて離れない……)

キョン(それからどうでもいいことだが、『ジョン』と呼ばれ続けた俺の瞼の裏には、光陽園学園の制服を着たハルヒの不遜な顔がちらついていた。あぁ、懐かしいじゃねぇか)

喜緑「ご注文の品はすべてお揃いでしょうか。伝票こちらに置いておきますね」ニコッ

キョン「あ、どうも」

キョン(この人まだここで働いてたのか。こっちの喜緑さんも情報統合思念体の総意の代表なんだろうか)


298:2015/08/06(木) 22:37:09.91 ID:
キョン「……なぁハルヒ。昔話をしないか?」

ハルヒ「んー?」モグモグ

キョン「お前が俺の正体を『ジョン・スミス』だと知ったのは、どういう経緯だったんだっけか」

ハルヒ「タイムトラベルの後遺症かしら、ジョンって時々記憶力に問題があるわよね。でも心配しないで! 今年もしっかりテスト勉強の面倒はあたしが見てあげるから!」ゴックン!プハーッ!

キョン(ム、ムカつくが、耐えろ、耐えろ俺……)


299:2015/08/06(木) 22:38:30.24 ID:
ハルヒ「ハッキリバッチリ確定したのは去年の七夕でしょー、アンタの自己申告で」

ハルヒ「でも4年前の夏ごろには特定してたわけ。それはジョンがよく覚えてるでしょ?」

ハルヒ「中学生のほうのアンタには結局声かけられなかったけど……。未来が変わっちゃうんじゃないかと思ったら不安だったのよ」

ハルヒ「同い年ってのはわかってたし、あたしが北高に入学すれば良いだけだしね。3年間退屈だったけど、ジョンのおかげでそれなりにやってけたわ」

ハルヒ「入学式の日、偶然にもアンタの真後ろになって、ニヤニヤを隠すのが大変だったわねぇ」ニヤニヤ

キョン(コイツ、思い出し笑いしてやがる……)


300:2015/08/06(木) 22:39:36.07 ID:
ハルヒ「まぁ、それからのアンタは『俺はジョンじゃない! 変なあだ名を増やすな!』の一点張りでめんどくさかったけど」

キョン(ということは、4年前の七夕の日に中学生ハルヒがジョンの正体、おそらく俺の生年月日と本名あたりを特定できた、という点が過去改変されてるわけか……)

キョン「なぁハルヒ。4年前の七夕の日、変なメールを受け取ってなかったか? 例えば、未来から来たメールとか」

ハルヒ「んー?…………!!!???」ガタッ

ハルヒ「……」ギロッ

キョン(ん? 突然表情が変わった。これは核心か……?)

ハルヒ「ねぇ、ジョン」

キョン「なんだ」




ハルヒ「アンタ、誰」



301:2015/08/06(木) 22:41:36.00 ID:
キョン「……!? な、なにを突然ななな何を言ってるんだハルヒさん!! 俺は居たって普通のどこにでもいるジョン・スミスじゃないか!」アハハ

ハルヒ「あたしはあの宇宙からのメッセージのことは誰にも話したことがない。たとえタイムトラベラーのジョンやみくるちゃんでもね」

キョン(う、宇宙からのメッセージ?)

ハルヒ「あたしのジョンはどこにいったの!? アンタは誰なの!? 答えなさいッ!!」バンッ!

キョン「そんな不審者を見るような目つきはやめてくれ……胃が痛む……」

ハルヒ「……うーん、でもアンタも確かに人畜無害そうなジョンではあるのよね」ジロジロ

ハルヒ「ねぇ、一体なにが起こってるの? 怒らないから話して御覧なさいよ」

キョン「それは絶対怒るための前口上だろうが。これはもう、正直にゲロっちまった方がいいのか……」

ハルヒ「……ねぇ」

ハルヒ「…………」

ハルヒ「……あたしのジョンは、生きてるの?」ウルッ

キョン(……愛されてんなぁ、どこぞのジョン・スミスさんよぉ)


302:2015/08/06(木) 22:44:03.51 ID:
キョン「大丈夫だ、ジョンは生きてる。俺の中でな」

ハルヒ「……そ。ならいいわ」

キョン(わからんが、そういうことにしておこう)

ハルヒ「いえ、良くないわ! ってことは、突然あたしの彼氏になりかわったどこの馬の骨ともわからないやつを、ぶッ飛ばすこともできないじゃない! カーッ、アンタいったいなんなのよ!」バンッ

キョン「あ、あぁ。俺はだな、その、なんつったらいーか……。あれだ、異世界人だ」

キョン(ええいままよ! 『ジョン・スミス』という切り札が既に切られている状況だ、こういう話をしても大丈夫だろう!)

ハルヒ「異世界人……」ポカン

キョン「お前が生きてきたであろうこの世界に実によく似た世界からやってきた。いや、やってきたというか、あっちのお前が俺をこっちに送り込んだんだけどな……」

ハルヒ「あ、あっちのあたし?」


303:2015/08/06(木) 22:45:15.53 ID:
キョン「そうだ。ある事実を確認するためにな。それはさっき話してた、未来からのメールだ。お前が宇宙からのメッセージだと勘違いしてるやつだ」

ハルヒ「勘違い……。ねぇ、じゃぁあれを書いたのは」

キョン「あっちのハルヒだ」

ハルヒ「あっちのあたし……。そう、そうだったの……」

キョン(普通ならすんなり受け入れられる話ではないが。今回ばかりは長門の無表情並にコイツがなにを考えているのかさっぱりわからん)

ハルヒ「ふざけんじゃないわよ……。それって、まったく……」

キョン(怒ってるのか……?)

ハルヒ「サイッコーに、おもしろいじゃない!!!!!!」


304:2015/08/06(木) 22:47:22.82 ID:
キョン(くくっ、やっぱりハルヒはハルヒだったか……!!)

キョン「ってお前、店内で大声を出すな!」

ハルヒ「ってことはなに!? 異世界のあたしはついに異世界の、しかも過去にメッセージを送る能力を手に入れたってことなのね! なんてすばらしいの!」

ハルヒ「いつもジョンやみくるちゃんがうらやましかったのよねー、お手軽にタイムトラベルできて! どうしてあたしにはできないのかって!」

キョン「朝比奈さんも自由に時間移動できるわけじゃないんだけどな」

ハルヒ「あーっ、もう! うらやましいわーそっちの世界のあたし! なんでこんなにあたしだけ平凡なのかしら!」

ハルヒ「古泉くんは絶対裏でなにかやってるし、有希もなんだか知らないけど超人的な能力を持ってるっぽいのに! あたしだけ! 平凡!!」

キョン(本当はお前が一番ぶっ飛んでるんだとは言えないな……。というかこのハルヒはここまで暴露されていてまだ自分の能力に気づいてないのか。あるいは、本当に持ち合わせてないのか……?)


305:2015/08/06(木) 22:49:06.34 ID:
ハルヒ「あっちのあたしは、アンタと付き合ってないのね?」

キョン「えぶはっ!?……まぁ、そうだが」

ハルヒ「なるほどね、そういうこと……。つまり、異世界のあたしが叶えられなかったことを、あの日、こっちのあたしに託した、ってことなのね」

キョン(こいつの頭の回転が無駄に速いことに救われる日が来るとはな)

キョン「『恋愛感情は一時の気の迷いで精神病の一種』だと御高説をのたまったのはなんだったんだ」

ハルヒ「何の話よ……。あぁ、なるほど。ジョンと付き合ってないあたしならそういうこと言うかも。ふふ、おもしろいわね異世界人!」

キョン(ということはなんだ。元の世界でも、やっぱりハルヒは俺の事を……)

ハルヒ「言っとくけど勘違いしないでよね。あたしはアンタの不思議属性に惹かれてただけなんだから」

ハルヒ「去年の7月まではずーっと苦痛だったわ。こんなつまらない、退屈を絵に描いたような奴がどうしてあたしの白馬の……あたしと関わり合いを持ったのか、ずっとイライラしっぱなしだったんだからね!」

キョン(おそらくこれはツンデレではない。くぅ……)


306:2015/08/06(木) 22:50:37.98 ID:
キョン「よくそんなやつと今の今まで付き合っていられたな。俺が見た限りではラブラブバカップルだったぞ」

ハルヒ「まぁ、色々あったのよ。童貞のアンタに教える義理は無いわ」

キョン「なんでわかった!? あっ……」

ハルヒ「やっぱり。反応が初々しいを通り越してウブ過ぎたのよね」プププ

キョン(くそ、まんまとカマかけに嵌ってしまった)

キョン「……ん? 童貞の“アンタ”? 待てよ、まさか」

ハルヒ「それ以上詮索したら殺す……。精神的に殺す……」ゴゴゴ

キョン(ジョンの野郎、許さない絶対にだ……ッ!!)


307:2015/08/06(木) 22:52:23.78 ID:
ハルヒ「紛らわしいからアンタのことをジョンって呼ぶのをやめるわ。谷口たちがキョンって呼んでたっけ。じゃーキョンで」

キョン(異世界に来てもキョンと呼ばれる運命なんだな、俺は)

キョン「まぁともかくだ。その未来からのメールの内容を教えてくれ。それが俺の知りたい事、というか知るべき事だ」

ハルヒ「……絶対に教えない」

キョン「……は、はぁ!? 俺が元の世界に戻れないかも知れないんだぞ!?」

ハルヒ「それだけは絶対に嫌。死んでも嫌。元の世界に帰りたいなら他の方法を探しなさい」

キョン「なにがそんなに嫌なんだ」

ハルヒ「あれはあたしだけの特別なの! あれを書いた別世界のあたしも、絶対アンタには見られたくないって思ってるはずよ! キョンに見せるくらいなら死んだほうがマシ!」

キョン「おいおいハルヒ様よぉ、それはお前の愛しのジョンが戻ってこないってことなんだとわかって言ってるんだろうなぁ。え?」

ハルヒ「…………」

ハルヒ「…………」グスッ

キョン「あっ」


309:2015/08/06(木) 22:54:41.57 ID:
ハルヒ「バカぁ……死んじゃぇ……この、殺人者ぁ……うぐぅ……」

キョン「あぁ……その、なんだ。……すまん」

ハルヒ「グスッ……すまんで済んだら警察は要らないわよぉ……こっちは恋人人質に取られてんのよぉ……」

キョン「……飯、おごるよ」

ハルヒ「当たり前でしょ……。もう、いいから早くどっか行って……」

キョン「あ、あぁ……。ホントに、済まなかった」

ハルヒ「早く消えて!!! あたしのジョンの顔と声でしゃべるな!!! この、このぉ!!!」ブンッ

キョン「おわ! 灰皿を投げるな!! わ、わかったよ、出てくから……」

ハルヒ「……グスッ……ヒグッ」

キョン「……」カランコロンカラーン

喜緑「……またのご来店をお待ちしております」


310:2015/08/06(木) 22:56:24.41 ID:
2010.08.10 (Tue) 20:21 
キョン自宅周辺


キョン(俺にとって未来からのメッセージと言えばファンシーな手紙が下駄箱の中に伝説のラブレターよろしく意味不明な記号群やなにやら可愛らしくも几帳面な書体の直筆文で届けられるアナログチックなものだったが、それが電子メールに取って代わって無機質な活字を媒体経由でデジタルデータ解析しなければならないとは、時代の波には抗えないようだ)

キョン「こりゃハルヒから聞き出すのは時間がかかりそうだ。しっかし、泣いて笑って怒って喜んで、忙しいやつだな」トボトボ

キョン(……ホント、ヒトの気持ちがわからないやつは最低だな。いや、この世界の記憶を持ってないんだからある程度仕方ないと思うが、それにしてもなぁ……)

キョン「ただいまーっと、うちのもんは誰もいないんだったっけ」ガチャ

??「おかえり、キョンくん」


311:2015/08/06(木) 22:58:19.23 ID:
キョン「あぁ、ただいま……って、誰だ!? スーツの、女性……。あ、朝比奈さん!?」

みくる(大)「なんてね。ビックリした? あ、住居不法侵入で通報しないでね」

キョン「あ、いえ、それはもちろんですが、いったいどうしてこの時代に?」

みくる(大)「色々積もる話もあるんだけど、それはまたいつか。簡潔に説明するね、あまり時間がないから」

キョン「時間が、ない……?」

みくる(大)「あなたは元の世界に戻らなければならない。ですよね」


312:2015/08/06(木) 23:00:37.69 ID:
みくる(大)「正確に言えば、過去改変のキッカケとなった事象を相殺することによって、この世界線を元の世界線変動率<ダイバージェンス>に近似した世界線に変更しなければならない」

キョン「事象を相殺するって、どうやってです? またあの七夕の日に行って大立ち回りを繰り広げればいいんでしょうか」

みくる(大)「そんなところなんだけど、よく聞いてね」

みくる(大)「今回対象となってる事象は時間平面理論における分岐点とはなりえないの。世界線理論で言うところの世界線収束範囲<アトラクタフィールド>の収束のようなもの」

みくる(大)「つまり、これからわたしとタイムトラベルしてあの日へ行っても、この世界の根幹を成り立たせているDメール受信とそれに伴う中学生の涼宮さんの行動から生じる因果律だけは変えることができない」


313:2015/08/06(木) 23:02:23.27 ID:
キョン(時間平面理論ってのはたしか、ハルヒが文芸部会誌に掲載した『世界を大いに盛り上げるためのその一・明日に向かう方程式覚え書き』とかいう落書きと、罪のないカメを真冬の川に投擲する作業の賜物だったと記憶しているが……)

キョン「……つ、つまり?」

みくる(大)「簡単に言うと、実力行使による事象の改変は大幅な世界線変動をもたらさない、ってこと」

キョン「それじゃぁどうやって事象を相殺する、というか世界を変えるんです?」

みくる(大)「あなたもDメールを送るの。涼宮さんの行動を元通りにするような内容のものを」


314:2015/08/06(木) 23:04:17.23 ID:
キョン「ですが、Dメール送信による過去改変はこの世界でも通用するんですか? てっきり秋葉原の、未来ガジェット研究所とかいうところのへんてこマシンは機能しなくなってるものだと」

みくる(大)「あら、それはどうして?」

キョン「たしか長門は、ハルヒの“過去を改変したい”という願望があったからDメールなるものが実用化されたとか言ってたので……。ということは」

みくる(大)「そう。この世界の涼宮さんも過去を変えたいと願っているということ」

キョン「あ、あの恋愛病罹患者のハルヒが!? いったいアイツがどんな過去を変えたいと?」

みくる(大)「あなたと付き合ったことをやり直したいと思ってるみたいよ」

キョン「…………」


315:2015/08/06(木) 23:06:00.19 ID:
キョン(あれ、なんだろう。俺のことじゃないとわかっているのに、涙が……)ツー

みくる(大)「あ、言い方が悪かったわ! ごめんなさい! えっとね、キョンくん。要はその、宝物はストーリーの最後に発見すべきっていう法則というか!」アセッ

キョン「は、はい?」

みくる(大)「なんかね、ラブコメ要素を抜きにしちゃって最初からラブラブしてるのはつまらないって思ってるみたいなのよ」

みくる(大)「付き合う前の、お互い好き合ってるのに気持ちを伝えられないドキドキ、そのせいで発生するすれ違いやハプニング……。そういう学生生活を経験したかったらしいわ」

キョン「……あの野郎、どこまでも自分勝手なことを。振り回されるこっちの身にもなってくれよ、まったく」ヤレヤレ

みくる(大)「キョンくーん? 顔がにやけてるぞ♪」


317:2015/08/06(木) 23:11:52.15 ID:
キョン「そう言えば、どうして時間が無いんですか? 過去改変なら、去年の冬の世界改変の、再改変の時みたいにいつまでも猶予があるんじゃ」

みくる(大)「……涼宮さんの過去改変の力はとても強力で、現在進行形で元の世界線からの収束力が弱くなっていて、現在世界線が現アトラクタフィールドから離脱しようとしているの」

みくる(大)「時間線が収斂を忘れて分岐したままになってしまうとも言える。まるで太い縄の糸がほつれて二度と結びつかなくなるように」

キョン「えっと……?」

みくる(大)「メモ用紙2枚とペンを借りるね……。今キョンくんが居るこの世界線を仮にα´という直線だとして……、キョンくんが今日の朝までいた元の世界線をαとすると……、こう」

キョン「二枚の紙に、それぞれ一本ずつの直線ですね」


318:2015/08/06(木) 23:14:17.44 ID:
みくる(大)「そしてこの1枚の紙で構成されてる二次元平面がアトラクタフィールド。他にもいっぱい世界線はアトラクタフィールド上にあると仮定できるけど、とりあえずこの1本ずつね」

みくる(大)「通常のアトラクタフィールドの世界線がαの紙面上。そして、こっちのα´の世界線が涼宮さんの過去改変によって生み出されたアトラクタフィールド。それが、位相を変える形で交差しているの。こんな風に」エイッ

キョン「片方の紙の平面部に、もう片方の紙の端っこを垂直にあてて、“T”のような状態になりましたね」

みくる(大)「この2本、というか2枚の中身がほとんど一緒だったのは今から4年前の七夕の日。時間平面理論でいうところの超大型時空震が発生した時点ね。ここからα´が分岐発生したと考えてもよくて、そこから現在までは4年の月日が流れてる」


319:2015/08/06(木) 23:16:14.63 ID:
みくる(大)「そして今日、改変が起こってキョン君はα平面からα´平面に移動した。そう考えてるわね?」

キョン「はい。違うんですか?」

みくる(大)「実は世界全体が改変されているの。だから正しく言えば、“世界”という唯一無二の存在が今まで着てたαという服を脱ぎ捨てて、α´という服に着替えてしまった、っていう感じかな」

みくる(大)「この時、時空震は発生しない。もしかしたら発生してるのかもしれないけれど、改変によって無かったことになるから観測できないの」

キョン「パラレルワールド、じゃないってことか……」


320:2015/08/06(木) 23:20:07.98 ID:
みくる(大)「パラレルワールドとも仮定できるけどね。ホント、コペンハーゲン解釈とエヴェレット・ホイーラー・モデルのいいとこどりってズルいわね」

みくる(大)「これとわたしたち側の未来人のタイムトラベルを組み合わせられる、2006年から2034年の間はちょっとした小技が使えちゃうわけだけど、バタフライ効果を考えるとあんまりやりたくないのよね」ハァ

キョン(未来人によってタイムトラベルの仕方が異なるのか。TPDD<タイムプレーンデストロイトデバイス>は結局、パラパラ漫画に鉛筆を突き刺すイメージのタイムトラベルで合っているのか?)

キョン(そういや、あの憎々しい顔の藤原とかいう野郎も別の世界線、あるいは時間線から分岐前までやってきた存在だったんだろうか。まぁ、ハルヒがそっちの時間線側に時間断層を作ったらしいから、古泉の言う通り二度と現れることは無いんだろうが)

キョン(ええい、ややこしいな。考察したところで俺の海馬傍回は見事に記憶を長期保存することを拒んでいるようだ)


321:2015/08/06(木) 23:22:24.14 ID:
キョン「そういえば、2034年まで、というのは?」

キョン(長門もそんなこと言ってたっけか)

みくる(大)「涼宮さんの力で新しく発生した時空間関係のシステム……、わたしたちは世界線系タイムトラベルとか、アトラクタフィールド理論、世界線理論、リーディングシュタイナー系タイムトラベルなどと呼んでいるんだけどね」

キョン(リ、リーディングシュタイナーだと! あの岡部某の話は全部が全部ホラじゃなかったのか……)


322:2015/08/06(木) 23:23:59.62 ID:
みくる(大)「こっちのシステムには時限措置が取られていたの。去年の七夕の日、涼宮さんが短冊になんて書いたか覚えてる?」

キョン(突然何の話だ……? 短冊になんの関係が?)

キョン「えーっと、『地球の自転を逆にしてくれ』ってのと『自分中心に世界が回れ』でしたっけ?」

みくる(大)「そう。それはこっちのα´世界線でも一緒。それが16年後と25年後に叶う。彦星のアルタイルまで16光年、織姫のアークライトまで25光年ね」

キョン(アークライトってのはベガの別名だったか)

みくる(大)「後者の願いが2009年から見て25年後の2034年に叶うわ。これによって世界線系のタイムマシンはそれ以降新規開発が不可能になった。開発が不可能になっただけで、既存のマシンは普通に使えたみたい。理屈はよくわからないけど」

キョン(2025年には地球の自転が逆になるのかという野暮な質問はやめておこう)


323:2015/08/06(木) 23:26:02.24 ID:
みくる(大)「ともかく、時間が無いっていうのは、αとα´が互いに干渉不可能なほど独立してしまうまでの時間が無いということ」

みくる(大)「このメモに書いた例でいうと、まずα´平面上にα平面と交わっている線と仮定できる直線を書いて……、これをα´平面上のα世界線とします」

キョン(このα´の紙に新しく書いた直線ってのがさっきの“T”の付け根の部分ってことか)

みくる(大)「αの直線はこのまままっすぐ伸びるとして、今わたしたちが居るα´世界線は……えいっ」ビリビリ

キョン(α直線とα´直線のあいだの部分を平行にメモ紙の半分くらいまで破いた? そしてα´が書かれていたほうを持ち上げて……、ひねった?)


324:2015/08/06(木) 23:27:55.66 ID:
みくる(大)「α´はこんな風に、三次元座標的に独立した、二度とαと干渉しないベクトルとして進んでいくことになる。わたしたちはこの変な世界線を時間平面演算の関係から16進数アトラクタフィールドと呼んでいるわ」

みくる(大)「こうなってしまうと適切な過去改変を実行したところでα´の世界線の性質そのものが変化してしまって、元のαへと世界が改変されることは永遠に不可能になるの」

キョン「あれ? ってことは、今俺の目の前にいる朝比奈さんはα´の未来から来たってことなんですよね?」

みくる(大)「そう。キョンくん自身が今まで接触してきたわたしとは別の世界線、しかも別のアトラクタフィールドの出身ということになるわね」

みくる(大)「だけどやってることも記憶もほとんど同じはずだし、同じ人だと思ってくれて大丈夫よ。それに今日の改変前まではあなたの知ってるわたしと全く同じ存在だったはずだから。αとα´は、ほとんど同じ世界なの。今のキョンくんを除いてね」

キョン「むむむ……」


325:2015/08/06(木) 23:30:44.92 ID:
キョン「……朝比奈さん(大)にとって、元の世界線に戻るメリットってあるんですか」

みくる(大)「このままだと近い将来ディストピアになってしまう。わたしは直接体験することはなかったけれど、涼宮さんたちにとって良い未来とは言えないし、超未来においてディストピア社会とわたしたちの組織との衝突もできれば避けたい。今のところわたしたちは専守防衛に徹しているけど」

キョン「ディストピア……。ジョン・タイターの言ってた通りか。でも、朝比奈さん(大)がディストピアより未来から来たってことは……」

みくる(大)「完ぺきな統制社会とは言っても1世紀も続かなかったわ。首脳陣の利権がこじれたのが原因だとか。その頃には2034年製タイムマシンも経年劣化で使い物にならなくなってたしね」

キョン「でも、α世界線に戻ってもディストピアになる運命は変わらないとジョン・タイターは言っていたらしいんですが」

みくる(大)「αならその運命を変えられる可能性がある。より良い世界が待っている。その鍵を握っているのはあなたであり、未来ガジェット研究所よ」

キョン(いつからこの人はグノーシス主義に傾倒するようになったんだか)

キョン「世界を運命から救う、か。大層な大義名分がふっかかってきたもんだな……」


326:2015/08/06(木) 23:33:05.24 ID:
キョン「それで、タイムリミットはいつなんですか?」

みくる(大)「明日の午前12時まで」

キョン「なッ!? なんだってそんなすぐなんですか!? あ、明日ッ!?」

みくる(大)「涼宮さんの力だとわたしたちは考えているわ。わからないけど、彼女なりの照れ隠しのつもりなのかも」

キョン「はぁ?」

キョン(我ながら素っ頓狂な声を発してしまった)

みくる(大)「うーん、これはわたし個人の推測なんだけどね。多分、涼宮さんは“キョンくんが自分と付き合いたいと思うかどうか”を試しているのかもって思うの」

キョン「……ホントに迷惑千万なやつだ。たとえ無意識だとしても、そりゃないぜ」


327:2015/08/06(木) 23:34:02.80 ID:
みくる(大)「一応確認しておくけど、世界を元に戻す? それとも、この世界で生きていく?」

キョン「いやいやいや! さすがにそれは選択の余地はないですって。それはもう、去年の冬からずっと気づいていることです」

みくる(大)「でもそれって涼宮さんと付き合いたくないってこと?」

キョン「…………」

みくる(大)「ふふっ。いじわるしてごめんね。わかってるわ、SOS団として過ごしてきた日々を改変したくない。そういうことよね」

キョン「時間が無いなら早く行きましょう……」


328:2015/08/06(木) 23:41:10.92 ID:
世界が改変され、SOS団の記憶がすっかり入れ替わっちまっていて、俺はハルヒと付き合っているし、朝比奈さんの正体はハルヒにバレていた。

ちなみに朝比奈さんの正体がバレたのは、自分が未来人ジョンだとハルヒに白状したどこかのアホがどうやって3年前にタイムワープしたのかまでもセットにしてゲロっちまったかららしい。

現状はこのトンデモ度合の三重奏を奏でているというのに、どういうわけだか俺は落ち着いていた。

そういや第一回目の七夕飛行の時もそうだったな。TPDDを失くしたと泣いていた朝比奈さんを尻目に俺はどこまでも冷静だった。

第二回目は、そりゃあの後朝倉による暗殺とかいう事態が待ち構えていたとは言え、朝比奈さん(大)と合流してからはそれなりに落ち着きを取り戻していたのだ。

さて、今ひとたびの七夕飛行へと飛び立とう。帰ったらハルヒが電話レンジを使わせてもらったお礼として未来ガジェット研究所にIBN5100を届けないといけないしな。

こうして安心してタイムトラベルできるのはやはり、SOS団という名前の、能力的にも、仲間としてもとんでもないやつらが居るからである。つくづく俺はSOS団のメンバーで良かったと思うね。

そんなわけで、今の俺にはこんな状況を楽しむ程度の余裕が生まれていたのだった。


334:2015/08/07(金) 21:01:32.54 ID:

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◇Chapter.4 涼宮ハルヒのレーゾンデートル◇
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D 0.337186 4920656e767920796f75%
2006.07.07 (Mon) 21:00 
光陽園駅前公園


336:2015/08/07(金) 21:04:24.80 ID:
キョン「……うぐっ」

キョン(この嘔吐寸前までいきそうなグルグル目眩には慣れたもんだが、慣れたからと言って不快指数が下がるわけでもなかった)

みくる(大)「近接世界線への到着を確認。これでさっきまでいた時間線の規定事項、あるいは世界線の因果律にある程度拘束されない行動が可能になったわ」

みくる(大)「でもあんまり激しい改変は避けてね、バタフライ効果が怖いから」

キョン(前回の朝比奈さん(大)ツアー{※復活朝倉に刺される前}の轍を踏まないようしっかり靴を履いて飛んできたぞ。前回の朝比奈さん(小)ツアー{※復活朝倉から自分を救う時}の時もしっかり靴は履いていたわけだが)

みくる(大)「やっぱり世界線系タイムトラベルは落ち着かないわね……。STCデータをいちいち再構成しないといけないなんて」

キョン(あれ? でもそれって高校生の朝比奈さんにできたことが、大人になったらできなくなってた、ってことか? うちの未来人の愛らしいおっちょこちょいはいつまで経っても治らないらしい)

みくる(大)「α´世界線における深刻なパラドックスを起こさないようDメールの内容を確認次第、元居た時間平面へ帰還。いいわね」

キョン(このようにロボアニメの司令官ばりのクールなセリフを吐いているが、中身はいつもの朝比奈さんだと思うと憎さ余って可愛さ百倍である)

キョン(まぁ、この世界線では朝比奈さん(小)を木偶のように操っているわけではなさそうだから、憎む理由もないのかな)


337:2015/08/07(金) 21:06:11.86 ID:
キョン(その時俺はしょうもないことを思いついてしまった。聞くだけならロハだろう)

キョン「……朝比奈さん。帰還場所、この場合時間平面というべきところを、2010年の8月10日ではなく、8月9日以前にすることはできないでしょうか」

みくる(大)「できるけど、リスクはなるべく避けたいです」

みくる(大)「どんなことがあって8月9日以前に存在したジョンくんと、今のあなた……キョンくんが接触するかわからないし。この場合もパラドックスが起きちゃうわ」

キョン「一応わかってはいるんですが、どうもそのジョンって野郎がどんなやつか気になりまして……」

みくる(大)「……こちらの世界だけが持ってる記憶はなるべく所持しないほうが身のためよ。改変時の頭痛がひどくなっちゃうわよ?」

キョン「頭痛くらいならなんとか……」


338:2015/08/07(金) 21:07:58.33 ID:
みくる(大)「もうっ! 任務中にやめてください! 好奇心は猫をも殺すとは言うけど、今のキョンくんはそれです」

みくる(大)「考えても見て。涼宮さんと日中から“らぶchu☆chu”してる人間をキョンくんが直視したら、それはもうトラウマものよ!」

キョン(八重桜鑑賞会での一発芸じゃあるまいし、そんなことでトラウマになるほど俺の心臓は固形化したケイ酸塩で構成されているわけ……では……)

キョン「…………」

キョン「……はッ!?」

キョン(なんだこの小学生のお絵かきのために調合された水彩絵の具パレットのような心象は……)

みくる(大)「わかった?」

キョン「……なかったことにしてください」

みくる(大)「それでいいんですよ」ウフフ


339:2015/08/07(金) 21:09:19.47 ID:
みくる(大)「そろそろ時間よ」

キョン(さすがに校庭に侵入しては気づかれてしまうからな、校門の外で待機だ)

キョン(というか、今この時間平面に俺が3人、中坊の俺も入れれば4人の俺が存在してることになるのか。人口密度高いな)


ガシャン!


キョン(お、来たな、世界の始まり様。今も昔も身のこなしは軽やかだ、校門を飛び越える姿も様になってやがる)

ハルヒ(小)「……」キョロキョロ

ハルヒ(小)「……」タッタッタッ

キョン(どうやらまだメールは受信してないみたいだな)

みくる『うぇぇぇぇぇん……』

キョン(あらら、TPDDを失くした朝比奈さんの泣き声まで聞こえてきた)

みくる(大)「……早く跡を追いかけましょう」


340:2015/08/07(金) 21:11:45.03 ID:
キョン(消失)『世界を大いに盛り上げるためのジョン・スミスをよろしく!』

ハルヒ(小)「!?」キョロキョロ


キョン(ここまでケータイいじらず……か。そろそろか?)


ハルヒ(小)「!!」アルーハレータヒーノコトー♪


キョン(……来やがった!)


ハルヒ(小)「……」ピッ、ピッ

ハルヒ(小)「……!?!?!?!?!?」


キョン(暗がりでもよくわかるほどに目ん玉を白黒させまくって4回転アクセルでも決めるんじゃないかという勢いだ……)

キョン(いったいどんな内容が書かれていたんだ? さて、どうやって盗み見るか……)


ハルヒ(小)「ジョン!! そこを動かないで!!」タッタッ


キョン(な!? 冬から来たほうの俺と朝比奈さん(大)のほうに向かって走り出しやがった!?)


みくる(大)「今よ! キョンくん!」

キョン(……ええい、行ったれ!)


キョン「お、おい! 俺はこっちだ!」

ハルヒ(小)「!?……おっかしーわねー、確かにあっちから声が聞こえたんだけど」


341:2015/08/07(金) 21:13:01.41 ID:
キョン「……宇宙からのメッセージ、受信したか?」

ハルヒ(小)「えっ!? なんでアンタがそれを……」

キョン「なんでって、手伝ってやっただろう。俺にも見せてくれよ」

キョン(どうだ……?)

ハルヒ(小)「だ、ダメに決まってるでしょ! 書いたのはアンタだけど、書かせたのはこのあたしよ!」

キョン「どういう理屈だそりゃ」

キョン(ならば、どうするか……)


342:2015/08/07(金) 21:14:27.18 ID:
ハルヒ(小)「……」チラッチラッ

キョン(ん? ハルヒのやつ、俺のことを観察してるな)

キョン(そうか、俺の正体を知るには身分証なんかを奪取しないとならんのだろう。これはわざと盗まれてやったほうがいいのか?)

キョン「なぁ、さっきから何見てるんだ。俺の正体が知りたいのか?」

ハルヒ(小)「は、はぁ!? 誰がアンタなんか……」

キョン「交換条件だ。そのメールを見せてくれたら教えてやってもいい」

ハルヒ(小)「はぁ!?!?……ちょっと考えさせて」

キョン(これは決まったか?)


343:2015/08/07(金) 21:16:35.42 ID:
ハルヒ(小)「……うん、決めた」

キョン「そうか。ならケータイを……」

ハルヒ(小)「メールは見せない。あたしはアンタの正体をつかむ」

キョン「……どこまでもお前らしいよ、やれやれ」

ハルヒ(小)「うりゃ!!」ビシッ

キョン「だはッ!! い、いきなり蹴りかかるやつがあるか!!」

キョン(ここで俺が片膝をついてしまったのが運の尽きだったらしい)

ハルヒ(小)「もう一発!!」バシッ

キョン「見切ったグワァー!!」バターン!

キョン(見切ったところで避けられるわけもなく! 俺は無様にも小さな体躯から繰り出される閃光魔術<シャイニングウィザード>をモロに受け、後頭部からアスファルトに叩きつけられてしまった!)

ハルヒ(小)「胸ポケット!? 違うッ、ズボン!?」ガサゴソ

キョン「お、お前は追剥か、この野郎……」グエッ


344:2015/08/07(金) 21:18:03.85 ID:
ハルヒ(小)「あったッ!! 生徒手帳!!」シュバッ

キョン(中一女子にやられる高二男子ってどうなんだ……)

キョン(……なんてな、反撃のチャンスを狙っていたのさ!)

キョン「おらッ!!」ガバッ

ハルヒ「きゃぁッ!!」バターン!

キョン(俺から身分証を奪取した瞬間、喜色満面になって隙ができることはわかっていたぜ)

キョン(中坊のハルヒなら押し倒すことくらいできる!)

キョン「さぁケータイを出せ! って、言うこと聞くわけねぇよなぁ。ならばッ、実力行使ッ!!」ハァハァ

ハルヒ(小)「い、いやぁぁぁぁっ!! どこ触ってるのよ変態ぃぃぃぃ!!」ゲシゲシ

キョン(あ、あれ、今俺ってもしかして日本国の法律に則って刑事事件を起こしている……?)

キョン「あ、あった……。メールは、3通!! これか!!」ピッ


345:2015/08/07(金) 21:18:57.46 ID:




ジョンの正体




つかめ!私は 




ここにいる。



346:2015/08/07(金) 21:21:18.04 ID:
キョン(なんとまぁ、キュウリの浅漬けの如くえらくあっさりした内容だったわけだ)

キョン(あいつがこのメールを見せたくない理由はあの宇宙語がバレたくなかったためなのだろうか。俺は長門に教えてもらったわけだが)

ハルヒ(小)「は、はぁ……はぁ……。なんなのよ、アンタ……」

キョン「あ、あぁ。説明が遅れてすまなかった」

キョン「実はこの3通のメールには珪素構造生命体共生型情報生命素子が寄生していてな」

キョン「お前に乗り移って悪さをする可能性があったんで消しに来たんだ。ほらよ、返すぜ」ポイッ

ハルヒ(小)「えっ、消しちゃったの……」

キョン「安心しろ、メール自体は3通ともそのまま残してある。それじゃぁな」スタスタ

ハルヒ(小)「えっ……。よ、よかった……」


キョン(体があちこち痛む……。早く休ませてくれ)

みくる(大)「さぁ、帰りは純粋なTPDDで戻ります。行きますよ」シュン


ハルヒ(小)「……って、生徒手帳返すわよ! 中身覚えたから!……って、あれ? 居ない?」キョロキョロ


347:2015/08/07(金) 21:23:56.02 ID:
同一世界線 D 0.337186 4920656e767920796f75%
2010.08.10 (Tue) 22:14
キョン自宅


キョン「いててッ、もう少しやさしく……」

みくる(大)「甘えん坊さんね、キョンくんは」チョンチョン

キョン(ぜひとも昔のナースコスを着て治療に当たってほしいなどとチラッとでも思ったことは心のクローゼットに閉まっておこう)

みくる(大)「はい、これで手当てはおしまい」

キョン「……これで良かったんでしょうか」

みくる(大)「今のところ順調よ」



ハルヒ「なーにが順調なのかしら」




348:2015/08/07(金) 21:27:04.95 ID:
キョン「なにって、そりゃお前世界を元に戻す作業がだな……って、ハ、ハルヒッ!?」

みくる(大)「涼宮さんッ!?」

ハルヒ「みくるちゃーん。おっきくなったわねー、みくるさんって呼んだ方がいいかしら?」

みくる(大)「……」アセアセ

ハルヒ「アンタたち、こんな夜遅くに二人っきりで何してるの? たのしそうねー」

みくる(大)「……」ダラダラ

ハルヒ「あたしに隠れて。ねぇ?」ニコッ

キョン(何度目かの妖絶な笑みを見て俺はふがいなくも腰が抜けそうになった。同時に脳内には走馬灯が……)


350:2015/08/07(金) 21:56:16.90 ID:
ハルヒ「ほら、ジョン。忘れ物よ」ポイッ

キョン「ハッ……! あ、あぁ、生徒手帳か。ありがとよ」

キョン「って、あれ? なんでお前が持ってるんだ?」

ハルヒ「なんでって、アンタ、あたしとの別れ際に置いてっちゃったじゃない」

キョン「それはそうだが……、どういうことだ?」

ハルヒ「相変わらず頭が弱いわねぇ。要はね、4年越しに忘れ物を届けたってことよ」

ハルヒ「あの時のアンタをあたしは4年間覚えていたの。高校2年生のアンタをね」

キョン(そうか! 本来高校1年の時の身分証をパクられていたから、ここだけは世界の因果の流れが変わっちまってるわけか!)

キョン「そうだったか。改めて礼を言う……って、なんだこの生徒手帳!? ボロボロじゃないか!?」

ハルヒ「当たり前でしょ! 4年間もほったらかしてたのよ! あたしが管理してなかったら今頃ゴミっかすになってたわよ。感謝しなさい」


351:2015/08/07(金) 21:59:18.43 ID:
キョン「ん? さっき喫茶店で飯食ってた時、俺の正体にどうして気づかなかったんだ?」

ハルヒ「それは……、もちろん前からずっと高校2年になったらジョンがまたタイムトラベルするんだろうなーって身構えてたけど、まさか中身が入れ替わるなんて思ってなかったのよ」

ハルヒ「4年前のあの時のジョンが、異世界人のアンタのほうだったなんてちょっとショック」

キョン「悪かったな」

ハルヒ「まぁいいわ。特別に許してあげる」

キョン(さっき灰皿を泣きながら投げつけてきたやつとは思えないな……)

キョン「待てよ、ってことは世界が少し変わっている……?」


キョン「これって世界線が変動したってことなんですよね?」ヒソヒソ

みくる(大)「そうとも言えるけど、そういうわけじゃないわ」ヒソヒソ

みくる(大)「そもそもTPDDは基本的に世界線を大きく移動させるようなタイムトラベルはできないの。だから、世界が変わった、というよりも、因果の流れが少し変わった、っていう感じかな」ヒソヒソ

キョン(そういや前に藤原某が『たいした違いにはならない』だなんだとほざいていたが、たしかに出来事の中身が入れ替わっただけで大局的な結果は何も変わってない、のか)


ハルヒ「」イラッ


352:2015/08/07(金) 22:00:44.93 ID:
ハルヒ「それで、みくるさん? こいつはこの後何をしなければならないのかしら?」

みくる(大)「……禁則事項です」

キョン「当たり前だ。お前を巻き込むわけにはいかん」

ハルヒ「あたしがおもしろそうなことに首を突っ込みたいって言ってるの」

ハルヒ「SOS団の団長は誰だったかしら。あなたもSOS団の一員ならわかるわよねぇ、み・く・る・さ・ん?」ニコッ

キョン(こいつなんでさっきから朝比奈さんに対してキレてるんだ……?)

みくる(大)「す、涼宮さんも知ってますよね? き、禁則事項は口が裂けても言えないって」プルプル

ハルヒ「その口裂いてから言ってもらわないと説得力にかけるわね。キョン、ハサミどこ?」

みくる(大)「ぴぃぃぃっ!!」ガクガク


353:2015/08/07(金) 22:03:06.01 ID:
ハルヒ「言っとくけど、アンタたちに拒否権なんか無いのよ。わかってる?」

キョン「というかハルヒよ、俺はこの世界を崩壊させようとしているも同然なのだぞ。そんなのの片棒を担いでいいのか?」

ハルヒ「だっておもしろそうじゃない」

キョン(この涼宮ハルヒという生物はどこの世界で生を受けたとしても“おもしろさ”を価値判断の最高位に位置付けているらしい)

ハルヒ「それにアンタは世界を元の世界に戻そうとしてるんでしょ? あたしも興味あるのよね、あっちの世界のあたしに」

みくる(大)「……わかりました、善処します」

キョン(禁則が折れた!?)


354:2015/08/07(金) 22:05:03.53 ID:
ハルヒ「……あなたのこと“みくるちゃん”って呼ぶから、あたしに敬語使わなくていいわよ?」

みくる(大)「そ、そんな、滅相もないです……」

キョン(んー……。今の管理職っぽい朝比奈さん的には、むしろ昔の状態の時よりハルヒに頭が上がらなくなってるのだろう)

ハルヒ「ねぇ、お願いみくるちゃん。あたしね、一度でいいからあなたとタメ張っ……対等な立場でお話したかったの」

ハルヒ「そのほうがお友達っぽいじゃない? 今のあなたとじゃなきゃできないと思うんだけど……ダメ?」ウルッ

キョン(こいつはどこでこんな女の武器的交渉術を身に付けたんだろうな。育て方を間違ってしまったようだぞ、この世界の因果律様よ)

みくる(大)「!?/////」

キョン(そして効果は抜群のようである。まぁ気持ちはわかりますよ、朝比奈さん)


355:2015/08/07(金) 22:06:44.78 ID:
みくる(大)「ハ、ハルヒちゃん……///」

ハルヒ「…………」

キョン(これは……)ゴクッ

みくる(大)「は、恥ずかしいから何か言ってよ!///」

ハルヒ「大人になってとんでもない爆弾を隠し持ってたわね……。これがギャップ萌えってやつなのね、素晴らしいわ……!」グッ!

キョン「違うんじゃないか。知らんが」

ハルヒ「さて! 腹を割って話せる仲になったところでみくるちゃん!」

みくる(大)「う、うん///」

ハルヒ「二度とあたしに断りなく夜にジョンと二人きりで逢わないこと。イ・イ・ワ・ネ?」ニコッ


356:2015/08/07(金) 22:08:38.75 ID:
キョン(朝比奈さんがあまりの恐怖に失神してしまったところで俺はハルヒに今後の行動の説明をした)

キョン「明日の12時までに秋葉原に行って未来ガジェット研究所とかいう大学生のサークルに赴き、そこにあるはずの電話レンジ(仮)とかいう珍妙な名前の“過去にメールを送れるマシーン”を使わせてもらう」

キョン「そして4年前の、あの未来からのメール、これをDメールと言うらしいが、それを受信した直後のお前にまた俺からDメールを送り、俺の正体を探らせないようにする」

ハルヒ「そんなモノがあたしの知らないところで開発されていたなんて! ムカつくわ……」

キョン(どこかで聞いたセリフだ)

ハルヒ「ジョン! じゃなかったキョン! 大学は東京の大学に進学するわよ!」

キョン「お前は話を聞いていなかったのか。世界を改変するんだから今ここで口約束しても仕方ないだろう」

ハルヒ「アンタは覚えてるんでしょ? だったら向こうのあたしに伝言しなさいよ」

キョン「……それってどうなるんだ?」

ハルヒ「もう! こんな調子じゃ、アンタ一人で東京に行かせるなんて不安ね」

ハルヒ「仕方ないわねー、ここはあたしと一緒に秋葉原に行きましょう♪ もちろん団員全員でね!」ダキッ

キョン「のわっ! 急にひっつくな!!……というか、お前、俺のこと嫌いだったんじゃなかったのか?」

ハルヒ「嫌いよ、大っ嫌い。でも、ジョンがまだウブだった頃のことを思い出しちゃって……ふふっ。アンタが悪いんだからね!」ギュゥ

キョン(あー、これは。これは、いかん。たぶん、ダメなやつだ。あー……)


357:2015/08/07(金) 22:10:12.79 ID:
古泉「おやおや、仲良きことは美しき哉。楽しそうで何よりです」

キョン「……SOS団には夜遅くに俺の家に集まる習性でもあるのか。うちは誘虫ランプか何かか?」

キョン「次回からはたとえタイムトラベルに出かける時でも玄関のカギを掛けることを心掛けよう」

ハルヒ「古泉くん、突然どうしたの?」

古泉「偶然この家の前を通る用事があったのですが、何やらにぎやかな声が聞こえてきましてね」

キョン(嘘が下手すぎるだろこいつ……。大方、俺の家に盗聴器でも仕掛けてるんだろうな)

ハルヒ「古泉くん! 明日秋葉原に行こうと思うのだけど、SOS団みんなで行くことにしたわ!」

ハルヒ「有希も誘いましょう! あと、そこにいるみくるちゃん大人バージョンも!」

古泉「おもしろそうですね。特に朝比奈さんの大人バージョンさんとは久しぶりにお話したいところです」


358:2015/08/07(金) 22:11:13.89 ID:
古泉「すいません涼宮さん。ちょっと彼をお借りしてもよろしいでしょうか。男同士で積もる話がありますので」

キョン「は?」

ハルヒ「いいわよ」

キョン「いいのかよ」

ハルヒ「あたしはみくるちゃんとお風呂入るわ。キョン、お湯もらうわよ」

ハルヒ「ほら、みくるちゃん起きて!」

みくる(大)「ふみゅぅ……」

キョン(どうしてハルヒはうちの風呂場のことを勝手知ったる面してるんだろうということは聞かないでおいたほうが長生きできそうだ)

古泉「さ、僕たちは外へ行きましょう」

キョン(さっきからアルカイックスマイルを浮かべやがって。何か企んでやがるな?)


359:2015/08/07(金) 22:12:09.75 ID:
2010.08.10 (Tue) 22:57 
線路沿


キョン「それで、話ってなんだ。なにか問題でも起きたのか?」

古泉「えぇ。それも宇宙規模の大問題が」

キョン「……マジか。いったいなにが起きたってんだ?」

古泉「何者かがこの素敵な世界を破壊しようとしているのですよ。なんとしても阻止せねばなりません」

キョン「なにッ! いったいどこのどいつが……。って、古泉よ。まさかとは思うが、それは俺のことか?」

古泉「ご明察」

キョン「……無駄話してる時間は無いんだが」

古泉「気付いてるんだか気付いてないんだかわからない人ですね、相変わらずです」


360:2015/08/07(金) 22:13:00.96 ID:
古泉「今回、この件に関して僕はあなたの敵だと言っているのですが」

キョン「そんなことしてお前になんの得があるんだ」

古泉「得しかないのですよ。喫茶店でのお話によれば、改変先の世界では“あなた”と涼宮さんはお付き合いしていらっしゃらないとか」

キョン「あの場にも忍び込んでたのか……。それがどうした」

古泉「そちらの世界における閉鎖空間の発生率は?」

キョン「そうだな……。4月の頭頃に去年の4月頃の頻度に戻ったと言っていたか。最近だとおとといの夜も発生したらしい」

古泉「やはり……」


361:2015/08/07(金) 22:15:25.28 ID:
古泉「あなたにとって驚きの数字を教えて差し上げましょう。去年の7月7日以降、閉鎖空間は何度発生したか」

キョン「……?」

古泉「ただの1回です」

キョン「な、なに……ッ!!」

キョン(1回って、あの佐々木の閉鎖空間と合体した変な閉鎖空間の、アレだけってことか!?)

古泉「推測するまでもなく、涼宮さんはあなたと親密な関係になることで閉鎖空間でのストレス発散をシフトさせたのですよ」

古泉「あなたとのやりとりでストレスを解消することを“おもしろい”と感じていた」

キョン「そうだったのか……。それじゃ、ジョンってのはそれなりにお前ら機関に貢献してたってわけだ」

古泉「えぇ。正直、僕はもう閉鎖空間での能力の使い方を忘れてしまいそうですよ」


362:2015/08/07(金) 22:16:34.81 ID:
古泉「事実、機関のメンバーのほとんどが文字通り能力の使い方を忘れつつあります」

キョン「そりゃ、お前らの能力の特性上仕方なかろうぜ」

古泉「機関は現在このような状態なのです。命を落とす危険が常に付きまとう閉鎖空間が日常的に発生する世界への改変など、誰が賛同するでしょうか」

キョン「古泉、お前にしてはらしくないな。この世界をまるごと改変するって言ってるだろ?」

キョン「お前ら機関も日常的に能力を使ってる世界に改変されるんだから、なにも問題はない。そうだろ?」

古泉「……あなたは、そんなに人間の気持ちがわからない人だったでしょうか」


363:2015/08/07(金) 22:18:47.32 ID:
古泉「むしろそれが問題なのです。機関は現在、死の恐怖に関連するあらゆるリスクから比較的遠いところに居ます」

古泉「しかし、明日から日常的に閉鎖空間が発生する世界になりますと言われて、生理的に受け入れられる人間がいるでしょうか」

キョン「だからな、お前らの記憶だって変わるんだから」

古泉「人間の想像力は偉大です。つまるところ……僕は、死ぬのが怖いんです」

キョン「なっ……」

古泉「たとえこちらの世界線で感じているこの恐怖感を一切忘却するとしても、世界が変わってしまえば明日《神人》に殺されるかもしれない」

古泉「そんなのは、ただの洗脳だ」

キョン「ち、違うッ!!」

古泉「どこが違うのですか。確かに殺される時の恐怖感は、今僕が感じているようなものではないのでしょう」

古泉「しかし、たとえ記憶が改ざんされ、感情や能力が世界線に応じて改変されるとしても……、僕たちは安穏を選ぶのです」

キョン「……それが機関の答えか」

古泉「そして、残念なことに僕個人の意見でもあります」


364:2015/08/07(金) 22:20:11.00 ID:
古泉「明日の12時」

キョン「ッ!!」

古泉「明日の12時まで、あなたの手足を拘束してしまえば僕の勝ちです」

古泉「逆に明日の12時までに秋葉原でメールを送信できたらあなたの勝ち。さぁ、ゲームを始めましょうか」

キョン「……古泉よ。お前さん、俺に一度でもゲームで勝ったことがあったか」

古泉「創作物のキャラクターなら、一度も達成できなかったことをここぞという時に達成するというのはストーリーメイキングの定石ですよ」

キョン「どうもお前のセリフは墓穴を掘るスコップの音に聞こえてならんな……」

キョン「悪いが、今回ばかりはお前に付き合ってる暇はない。なぜなら俺にとって本当の世界はココじゃない」

古泉「そう言うと思っていました」

キョン「そして俺は勝利を確信している」

キョン「なんてったって、あの団長様が俺を明日秋葉原へ連れていくと断言したんだぜ? それを反故にすることなど、モーゼだってできまいよ」

古泉「ならば涼宮さんに能力を使われる前にあなたを確保してしまえば良い。たったそれだけのこと……」

古泉「……皆さん、今ですッ!!」


365:2015/08/07(金) 22:21:59.31 ID:
キョン「そんなハッタリが通用するかよ。周りにゃ人間の気配なんか……ッ!?」バターン

新川「少々荒っぽいですがお許しください」ギューッ

森「対象<ターゲット>確保しました」

キョン(え……えッ!? なんだ!? 俺は、今の一瞬で捕まったのか!?)

キョン(くそっ、縄で腕と胴体が縛られてる……嘘だろ……!?)

古泉「あっという間に決着を見てしまいましたね。まぁ、明日の12時までは気を抜けませんが」

キョン「お、おい。やめろ、やめろよ古泉……。お前はッ! あのSOS団の日々を、忘れちまったってのか!!」

古泉「忘れるもなにも、“あなた”にとってはハナからそんなものは無かったのです。この世界にとって、“あなた”の記憶はただの幻想にすぎない」


366:2015/08/07(金) 22:23:17.02 ID:
キョン「前に、俺に言ったよなぁ!! 機関を裏切ってでも俺に味方するって!!」

キョン「俺と対等なダチになりてぇっつってたよなぁ!? あれは嘘だったのかよ!!」

古泉「……チッ。小癪な手段を使いますね」

古泉「言わせてもらいますが、僕らのSOS団に異世界人は居ません。ゆえに僕の行動はSOS団を守る行動です」

古泉「“あなた”はッ!! SOS団団員ではないッ!!」

キョン「くそっ!! どうすりゃいい、どうすりゃいいんだッ!!」ジタバタ

古泉「さぁ、彼を例の場所へ運んでください」

新川「了解です、古泉」

キョン「待っ―――――――――――


368:2015/08/07(金) 22:30:56.11 ID:
同一世界線 D 0.337186 4920656e767920796f75%
2010.08.10 (Tue) 22:56
キョン自室


―――――――――ってくれ、って、あ、あれ……ん!? な、何がどうなった!?」

キョン「ここは……、俺の部屋!?」

みくる(小)「はぁ……はぁ……。なんとか、間に合いましたぁ……」ペタン

キョン「あ、朝比奈さん! 小さいほうの!」

みくる(小)「え、えっと……未来の涼宮さんに頼まれて、この時間平面のあなたを救助するように言われたんですぅ」

キョン「そうだったんですか!! それで、ハルヒは今どこに!?」

キョン(最低最悪のクソみたいな可能性だが、機関のやつらがハルヒをマインドコントロールして……、この世界を絶対改変させたくないと強く願わせたら……ッ!!)

みくる(小)「ひゃぁ!? たぶんまだこの家の中に……あっ、ジョンくん!」

キョン「どこだハルヒ!! どこにいるッ!!」バタン!


369:2015/08/07(金) 22:33:14.29 ID:
2010.08.10 (Tue) 22:57 
浴室


キョン「ハルヒッ!! ここかッ!? ええい、腕が使えないなら蹴破ってやる!!」バターン!!

ハルヒ(大盛)「な、なに!?」

みくる(特盛)「きゃぁ!?」

キョン「よ、よかった……居てくれたか......」ハァハァ

ハルヒ(大盛)「……変態」

みくる(特盛)「あ、あの……キョンくん……」カァァ

キョン(……と、特盛!)

ハルヒ(大盛)「いつまでもナイスバディなみくるちゃんの裸を見てんじゃないわよ!!!! エロキョン!!!!!」シュバッ!

キョン「どぅぶぁへぇーッ!!!」ドンガラガッシャーン


370:2015/08/07(金) 22:35:41.82 ID:
2010.08.10 (Tue) 23:10
キョン自室


ハルヒ「……状況はわかった。あたしはこれからまだ自分の部屋でゆっくりしてるはずのみくるちゃんに連絡して、その時間に行ってキョンを助けるよう伝えればいいのね?」

みくる(小)「は、はいぃ。それで未来から許可が下りるので問題ないと思います」

ハルヒ「いつもありがと、みくるちゃん。みくるちゃんはこれからどうするの?」

みくる(小)「えっと、今帰るとパラドックスが起きるかもしれないので、ジョンくん、じゃなかった、キョンくん、も、もしよかったら今日はここに泊めていただければ……」

キョン(この人には異世界のハルヒの過去改変による世界改変によって俺の記憶が維持されてしまったということを説明した)

キョン(ついでにコッチのハルヒが自分をキョンと呼ぶよう命令した。今回ばかりはGJと言わざるを得ない)

キョン「えぇ、いいですよ。妹の部屋を使ってください」ボロッ


371:2015/08/07(金) 22:44:57.92 ID:
みくる(小)「ありがとうございますぅ。それと、そちらの方は……?」

キョン(俺は今の今までどんなことがあろうと朝比奈さん(大)の秘密主義には未来的に超重要な理由があるのだと信じて、それに従うように行動してきた)

キョン(だが、あろうことか朝比奈さん(大)は100円均一で販売してそうなレベルの度無しメガネをかけただけの状態で、いとも簡単に過去の自分である朝比奈さん(小)と相対しているのだ)

みくる(メ)「初めまして、みくるちゃん。わたしは来波<くるなみ>アサヒと申します」

キョン(その正体は朝比奈さん(メガネ)である。OLスーツと相まってセクシー教師風味だ)

キョン(渡橋泰水に続いてまたアナグラムか……。“波が来る”とか、“朝日”ってのはなんとなくより良い未来が到来するイメージがあるな。ほらあれだ、月曜日には黄色ってイメージがあるだろ?)

みくる(小)「は、初めまして! えっと、涼宮さんたちとは……」

みくる(メ)「明日SOS団で東京に行くことになりまして、その引率の先生役なんですよ。大丈夫、あなたたちの味方です」ニコッ

みくる(小)「そうなんですかぁ」ホッ


372:2015/08/07(金) 22:45:45.71 ID:
キョン(きっとあのメガネは、体は子ども、頭脳は大人的少年探偵ばりの秘密アイテムなのだと信じよう。そしてこれが朝比奈さん(大)の言ってた“善処”の結果なんだろう)

キョン(そうでなければ俺はわりと真面目に朝比奈さん(大)に対して、あるいは未来人のお偉方に対して本気で怒らねばならん)


373:2015/08/07(金) 22:47:04.30 ID:
みくる(小)「ジョンくん、じゃなかった、キョンくん、お怪我はだいじょうぶですかぁ?」

キョン「大丈夫ですよ。蹴りを食らうのは慣れてますから」

キョン(長門にニーキックをもらったりな)

ハルヒ「自業自得よ」

キョン「そう言えば朝比奈さんはどうやって俺を助けたんです?」

みくる(小)「えっと、ですね……。まず、今回の事象が分岐点でよかったです。時間平面理論なら得意分野ですから」ニコッ

みくる(小)「キョンくんの身体と接触するように時空間座標を合わせてTPDDを起動させて、該当時間平面到着と同時にTPDDを再起動してこの部屋まで飛んだんです。少し時間も巻き戻してますよぉ」

キョン「そんな使い方ができたんですね。まるでテレポートだ」


374:2015/08/07(金) 22:48:21.00 ID:
キョン「それで、そろそろこの縄を解いていただきたいのですが……」モゾモゾ

ハルヒ「折角だから明日の朝まで縛っておきましょう」

ハルヒ「美女三人と一つ屋根の下じゃコイツがどんな行動を取るかわかったもんじゃないわ」

キョン「……くぅ」シクシク

みくる(小)「で、でもまた古泉くんたちに襲われたら!」

みくる(メ)「古泉くん……」

ハルヒ「あたしの目の前でそんなことさせないし、多分できないんじゃないかしら」

ハルヒ「それができるなら今ここに突入されててもおかしくない」

キョン(アイツらはなんだかんだでハルヒのことを神だか神の子だかとして神聖視してるはずだからな)

キョン(鍵である俺と同時に居るところではムチャできないはずだ)

ハルヒ「それに今日はコイツから離れないで寝るから大丈夫よ」

キョン(生殺しだ……)シクシク


375:2015/08/07(金) 22:49:30.61 ID:
みくる(メ)「それじゃ、おやすみなさい」ガチャ

みくる(小)「おやすみなさぁい」バタン

キョン(二人は妹の部屋で寝ることになった。まるで親子のようだな)

ハルヒ「さあキョン。現在時間平面のみくるちゃんにも連絡したし……、明日に備えて寝るわよ」

キョン「ベッドを使って構わないが、せめて枕だけでも俺の分を床に置いてくれないか」

ハルヒ「離れないって言ったじゃない。アンタ、抱き枕になりなさい」

キョン「……は!?」

ハルヒ「ほら、コッチに来いッ!」

キョン「うおおッ!?」バタッ

ハルヒ「そして抱き着く! こうしてればさしもの古泉くんでも手出しできないはずだわ!」ギュッ

キョン(む、胸がッ!! 涼宮ハルヒの平均以上には大きい健やかなる胸がハアァッ!! 俺の顔をうずめているゥゥゥッ!!)スゥー!ハァー!

ハルヒ「ホントウブねアンタ……」


376:2015/08/07(金) 22:50:56.94 ID:
キョン(女子特有の風呂上がりの匂いが俺の鼻腔をくすぐる……! この甘ったるい香りは花丸マークの5月某日――未来方向タイムトラベル時のほう――に嗅いで以来だな……)

キョン(あぁ、中身はあんなやつだがしっかりと女性ホルモンが出ているらしい! 肉体的にも成長してるのか……)ドキドキ

ハルヒ「すぅ……」ギュッ

キョン(……って、もう寝たのか。コイツ、寝ながらにして腕の力を込めてきやがる)

ハルヒ「んん……」

キョン(色っぽい声を出しやがって)

ハルヒ「ジョ……ン……」

キョン(正直、たまりません……)

ハルヒ「だい……好き……」

キョン(性欲を持て余す)ギンギン


377:2015/08/07(金) 22:52:43.36 ID:
2010.08.11 (Wed) 6:09 
北口駅前


キョン(俺の腕を縛っていた縄は起き掛けに解いてもらった。あれじゃ歯も磨けないしトイレにも行けなかったからな)

キョン(だがどういうわけかハルヒはその縄を手に持っている。何に使う気だ?)

ハルヒ「おっはよー! みんな、準備はいい? さぁ、SOS団が世界を変えに行くわよ!」

みくる(小)「お、おー!」

みくる(メ)「うふふ。いいなぁ、この頃のわたし」ボソッ

長門「…………」

ハルヒ「有希も朝早くの招集にしっかり応えてくれて、団長として鼻が高いわ!」

キョン(そう言えばこっちの世界の長門は、古泉みたいなわけわからん状態にはならないのか?)


378:2015/08/07(金) 22:53:37.53 ID:
キョン「なぁ、長門。お前は、宇宙人的に見てこの事態をどう考えている」ヒソヒソ

長門「情報統合思念体の総意として世界改変については好ましく考えられている」

キョン「それはまた、いったいどうして」

長門「この世界では自律進化の可能性を得ることができないことが予見された」

キョン「そう、なのか? まぁ、元の世界でもどうなのかはわからんが」

長門「涼宮ハルヒとあなたが付き合っていない世界なら、あるいは」

キョン「……それって、そんなに大事なことなのか」

長門「すごく」

キョン(まぁ、理由はともあれ長門が仲間だってなら問題はないか。……仲間、というより、単に利害が一致しているだけ、というのがなんとも隔靴掻痒だ)


379:2015/08/07(金) 22:55:43.07 ID:
ハルヒ「キョン、ちょっと手出しなさい」

キョン「ん? こうか」スッ

キョン(その後コイツは何を思ったのか自分の手首と俺の手首を縄で縛ったのだ。片手で器用なもんだ、じゃなくて!)

キョン「お、おい!? なんのつもりだ! この縄を解け! これから電車に乗るんじゃなかったのか!?」

ハルヒ「ダメよ、こうしてないと人ごみの中でアンタが連れていかれちゃうかも知れないじゃない」

キョン「そうは言ってもだな、これはさすがに……」

ハルヒ「恋人繋ぎしてあげるから観念しなさい?」ニコッ

キョン(ただひたすら俺が恥ずかしいだけか……。仕方ない、辛坊しよう)

キョン(なに、世界線漂流の恥はかき捨てなのだ。決してハルヒの和解斡旋案をうべなったわけではない)

キョン(昨晩は古泉に煮え湯を飲まされたり、ハルヒにテストステロンの過剰分泌を強制させられたおかげで一睡もできなかった。移動中に仮眠を取らせてもらおう)


380:2015/08/07(金) 22:57:00.95 ID:
2010.08.11 (Wed) 10:04 
秋葉原駅 電気街口


キョン(新幹線の中で爆睡した俺とハルヒは機関に襲撃されるようなこともなく無事東京へ到着した)

キョン(俺たちの睡眠は未来人と宇宙人の聯合艦隊によって本土防衛されていたらしい)

ハルヒ「アー! キー! ハー! バー! ッラーーーーッ!」

キョン「やめんか恥ずかしい!」

みくる(小)「ここが秋葉原ですかぁ」

みくる(メ)「みくるちゃん、変な人に話しかけられてもついて行っちゃダメよ?」

キョン(冷静に考えると俺は美女4人に囲まれたハーレム状態でありながら縄で縛られ動物のような名前で呼ばれているというパラフィリアもビックリのアブナい辺幅を飾っていた)

ハルヒ「さっそく未来ガジェット研究所へ向かいましょう! キョン、案内して!」


381:2015/08/07(金) 22:57:57.48 ID:
2010.08.11 (Wed) 10:20 
大檜山ビル2F


ハルヒ「ここが未来ガジェット研究所……! いい感じに人の目を盗んで俗世に擬態してるわね」

キョン「好評価すればそうなんだろうが、ボロいテナントビルだとも言えるな」

ハルヒ「有希! 機関の動向は!?」

長門「周囲に多数。現在は手をこまねいている様子」

キョン(このハルヒは長門のことをどういう風に理解しているんだろうな)

ハルヒ「なるほどなるほどー。それじゃぁみくるちゃん、とつげきー!」

みくる(小)「あ、あたしですかぁ!? ひゃぁっ!!」バターン

キョン(人、それを無策と言う!)


382:2015/08/07(金) 22:59:33.37 ID:
岡部「だ、誰だ!?」

紅莉栖「あら、お客さん?」

みくる(小)「あ、あのっ! 突然お邪魔してすいません……」ヒグッ

岡部「ほう、いつぞやの西の高校生探偵団ではないか」

キョン「どうも、三日ぶりですね。岡部さん、牧瀬さん」

紅莉栖「三日ぶり……?」

岡部「あぁ、そうか。助手は覚えていないだろうが、彼ら、というかそこの少女涼宮ハルヒにも、過去を司る女神作戦<オペレーションウルド>に参加してもらったのだ。その様子では成功していたようだな。フフゥン」

ハルヒ「なにコイツ、態度がデカいわね」

みくる(メ)「なんですかその大層な名前の作戦は」

紅莉栖「あんまり気にしないでください……この人変なんです……」

岡部「変ではぬぁい! メァッドと言いたまえ! えー、レディとは初対面ですね」

みくる(メ)「来波アサヒと申します。引率の先生みたいなものだと思ってください」ニコッ

紅莉栖(ところでどうして手首を男女が縄で縛りあっているのかしら……。そういうプレイ?)


383:2015/08/07(金) 23:00:53.22 ID:
キョン「時間が無いので簡潔に言います。今俺たちは機関に狙われています。迅速に元の世界線に戻していただきたい」

岡部「な、何ッ! ついに機関が我がラボの偉大なる研究を危険視し、世界の変革を阻止せんと武力行使に出ただとッ!!」

キョン「……まぁ、間違ってはいません」

岡部(えっ、機関ってなんだ!? 咎人への啓示<アポカリプス・オブ・ガリアン>のことではないよな……。何かの組織か!?……よくわからんが、少年の話に合わせておこう!)

紅莉栖「なに、彼もソッチ系の人なの?」ヒソヒソ

ハルヒ「そうよ、カッコイイでしょ」ヒソヒソ

紅莉栖「は、はぁ!?」

ハルヒ「あげないわよ?」

紅莉栖「い、いらないわよ!」

キョン(俺の隣でひそひそ話をするならせめて聞かれないよう努力していただきたい)


384:2015/08/07(金) 23:03:11.55 ID:
岡部「フ、フフ。我が望みは世界の混沌……、止められるものなら止めて見るがいい! フゥーハハハ!」

キョン「それで、急いで電話レンジを貸してほしいんです」

岡部「電話レンジ“(仮)”だ、カッコカリ! というか、Dメールで元の世界線に戻ろうというのか? 果たしてそんなことが可能か……?」

みくる(メ)「それについてはわたしから。その前に……」スッ

みくる(小)「ふ……ふみゅぅ……」バタッ

みくる(メ)「この子が疲れて眠ってしまったので、そこのソファーを貸してもらってもいいでしょうか」

キョン(また例のアレで眠らせたのか。半年に一回はやってる計算になるな、コレ)

紅莉栖「どうぞ」

みくる(メ)「ありがとうございます」


385:2015/08/07(金) 23:05:29.87 ID:
みくる(メ)「Dメールによって発生した過去改変は、キッカケとなる事象を打ち消す行動を取らせるようなDメールを送れば、ほとんど元の世界線と同定できる世界線変動率<ダイバージェンス>の世界線に移動します」

岡部「貴様はいったい……」

ハルヒ「いいから早くその電子レンジを出しなさいよ」

岡部「電話レンジ(仮)だと言っておろう!! しかし、今は使えないのだ……」

キョン「な!? 一体どうして!?」

岡部「いや、それがだな……」

紅莉栖「申し訳ないけど、今電話レンジは改造中でちょっとバラバラな状態なの。一応元のDメール送信装置に戻すこともすぐできるけど……」

岡部「カ・ッ・コ・カ・リどぅわぁ!!!」


386:2015/08/07(金) 23:06:57.07 ID:
キョン「すぐって、どれくらいですか!?」

紅莉栖「1時間くらいかしら。できれば戻したくないってのが本音よ。あと2日も待ってくれれば改造が完了してDメールも機能するようにできるんだけどね」

ハルヒ「時間が無いって言ってるでしょ! 話聞いてんの!?」

紅莉栖「は、はぁ!? あのねぇ、いきなり押しかけてきといてね、どうして私が知らない高校生のお願いを聞いてあげなきゃいけないの?」

岡部「やめろ二人とも。それで……キョン、とか言ったか。少年よ、本当に世界をあるべき姿に戻したいと言うのだな」

キョン「俺は、SOS団との大切な思い出を取り戻したい。あの日あの時に、そう決意したからな……」

長門「…………」

みくる(メ)(あれー、キョンくんは至って普通の返事をしてるつもりなんだろうけど厨二病くさい……!)

岡部「それが答えか。フッ、貴様も運命探知の魔眼<リーディングシュタイナー>の能力に踊らされた男の一人……」

岡部「いいだろう。貴様がその罪を背負い生きていくというならばッ!!……同じ能力者のよしみだ、慈悲をくれてやろう」

岡部「クリスティーナ! マシンのDメール機能を復活させろ!」

紅莉栖「ティーナをつけるな! んもうッ! 後でなにかおごってよね!」


387:2015/08/07(金) 23:09:28.80 ID:
岡部「それで、Dメールによって世界はどのように変わっていたのだ?」

岡部「俺にとっては目の前から涼宮ハルヒ女史が消滅したようにしか見えなかったが」

キョン「改変後、俺たちは地元に居ました。一番大きく変わってたのは、ハルヒと俺がつ、つ……、男女交際をしている世界になってたんです」

ハルヒ「どうもー」ダキッ

キョン「ハルヒさん、抱き着かれると暑苦しいのですが」

ハルヒ「まぁ、あたしが付き合ってたのは未来人ジョン・スミスだけどね」ダキッ

岡部(ジョン・スミス? たしか俺がジョン・タイターについてググった時、まったくヒットしなかった中にそんな言葉があったような……。なんだっけか、涼宮ハヒ……?)


388:2015/08/07(金) 23:10:54.70 ID:
岡部「ほっほーん、あの時のDメールはそういう内容だったのか、この発情期ティーンエージャーがッ!」

ハルヒ「知ってんの!?」

岡部「いや、メールの中身までは知らん。見せろと言っても聞かなかったからな、あの時の貴様は」

ハルヒ「そ、そう。知らないならいいけど。あと貴様って言うのやめて」

岡部「フッ、世界が変わっても貴様は変わらんな」

ハルヒ「口で言ってわからないの。そう」シュッ


389:2015/08/07(金) 23:12:15.00 ID:
岡部「ギガンドボグデギバダンダ(機関の目的はなんだ)」ボロッ     ←ハルヒに顔面を蹴られた

キョン「俺の世界改変を止めさせること。具体的には、今日の昼の12時までにDメールを送信させないようにすることです」

岡部「12時?」

みくる(メ)「その時間を過ぎてしまうと世界線同士がアトラクタフィールドレベルで不干渉状態に陥ってしまって、Dメールによる改変を受け付けなくなってしまうんです」

岡部「さっきからこの麗人はどうしてそんなに世界線に詳しいのだ? ジョン・タイターのファンか何かか?」

ハルヒ「この人、こう見えても未来人なのよ」ドヤァ

岡部「な……! マジなのか?」

みくる(メ)「うふふ。わたしはとっても遠い未来から来ました。色々聞きたいって顔してるけど、Dメールを送るまでは待ってね」

岡部「あ、あぁ。……ん? だがDメールを送ったらこの麗人は目の前から消えていなくなってしまうのでは……」

キョン「向こうのハルヒが知らないはずの人なので、内密によろしくお願いします。詳しくは帰ってから」


390:2015/08/07(金) 23:13:38.92 ID:
2010.08.11 (Wed) 11:41 
未来ガジェット研究所


カチッ カチッ カチッ カチッ

紅莉栖「…………」カチャカチャ

長門「…………」ペラッ

キョン「……洋書、おもしろいか?」

長門「わりと」

みくる(メ)「…………」

みくる(小)「スゥ……スゥ……」


391:2015/08/07(金) 23:18:54.30 ID:
岡部「ええい、クリスティーナよ! まだできんのか!?」

ハルヒ「一時間でできるって言ったじゃない! もう過ぎてるわよ時間!!」

紅莉栖「うるっさい! ほんっとうにうるっさい! メールの準備でもして待ってたらどうなの!?」

岡部「そうだったなー、うんそうしよううん。少年、メールの文面は考えているのか?」

キョン「えっと、全部で18文字でしたよね。これです」


『ジョンに関わるな世界がつまらなくなる』


岡部「こんなんでいいのか?」

ハルヒ「このあたしが太鼓判を押すわ。あの時のあたしがこのメールを受信したら、多分行動しないから」

ハルヒ「でもそれでいてジョンのことを知りたいとは思い続けると思う。ホントにつまらなくなるのか、調べたらおもしろそうだしね」

キョン(いつも古泉のやつにメンタル診断されてたハルヒだが、こう自分の口で言ってくれると回答に信憑性がある)

岡部「本人が言うと説得力が違うな。しかしどうして未来人はジョンを名乗りたがるのか……」


392:2015/08/07(金) 23:20:29.95 ID:
紅莉栖「はい、完成したわ。送り先の日時はいつ?」

紅莉栖「すぐ放電現象を起こすから、そしたら送信して」

岡部「おぉっ! よくやったぞクリスティーナ!」

紅莉栖「」ギロッ

岡部「ヒッ。に、睨むでない……」

みくる(メ)「2006年7月7日21時59分です」

紅莉栖「オーケー。すぐ計算する。2008年が閏年だから……」


393:2015/08/07(金) 23:25:47.05 ID:
11:57:00


長門「……機関が動き出した」

岡部「何ッ!! 機関め、最後の悪あがきと来たかぁー。ククク……」

キョン「このタイミングで……! 岡部さん、浮ついてる場合じゃない! なんかこう、撃退措置を!!」

古泉「その必要はありませんよ」

ハルヒ「!!」

みくる(メ)「!!」

岡部「む?」

キョン「くっ……、来やがったか」

古泉「このタイミングにすべてを賭けさせていただきました」


394:2015/08/07(金) 23:27:55.83 ID:
古泉「さぁ、チェックですよ。王手飛車取りです」

キョン「ってことはまだ詰んじゃいねぇだろうが……」

ハルヒ「あたしの前でよくもまぁ堂々と……」

古泉「元々あなたたち二人のことを、僕は快く思っていない節がありました。いえ、正直に言いましょう」

古泉「羨ましかったのですよ、涼宮さんとお付き合いされているジョン・スミス氏が」

古泉「思春期特有の病として処理すべきでした。ですが、今回のイレギュラーが発生して、僕はわからなくなった」

みくる(メ)「あなたはカタストロフを望んでいるの……!?」

古泉「いいえ。僕は彼を殺すつもりが無いどころか、二人の仲を裂こうとさえ考えていません」

古泉「この安穏とした世界で平和に暮らしてほしいのですよ。今回の行動について、今すぐには無理でもいずれ涼宮さんも理解してくれると信じています」

キョン「なんだこいつ……イカれてやがる……」

ハルヒ「男の嫉妬ほど醜いものはないわ……」


395:2015/08/07(金) 23:30:26.21 ID:
古泉「後で何が起きても機関が処理をする、ということでようやくコンセンサスが得られたのですよ」

古泉「涼宮さんを手中に納めてしまえば、他組織のみならず宇宙人や未来人とも交渉しやすいですしね」

キョン「こいつ、この場でハルヒを人質に取る気か……ッ!」

岡部「貴様が“機関”のエージェントだと……? どこからどう見ても営業スマイルの高校生にしか見えんが。まさかッ! それは世を忍ぶ仮の姿で……」ブツブツ

古泉「巻き込まれてしまって、あなたもかわいそうな人だ」BANG!!


岡部「は……あ……」ガクッ


紅莉栖「え……お、岡部? 岡部ぇっ!?」

ハルヒ「拳銃!? 嘘でしょ!?」

キョン「この野郎……ッ!!」


396:2015/08/07(金) 23:33:06.50 ID:
11:58:36


古泉「あとは牧瀬さんを1分間行動不能にさせればチェックメイトです」

古泉「サイエンシー誌にも論文が掲載された若き天才に向けて銃口を向けなければならないとは」カチャ

紅莉栖「なんなのよアンタたち、一体なんなのよッ……」スッ

古泉「さすがアメリカ生活が長いだけあって聞き分けが良いみたいですね」

古泉「そのまま両手を挙げて1分間おとなしくしていてくだされば撃ちませんので」ニコッ

紅莉栖「……あなた、この電話レンジについて、どこまで知っているの?」

古泉「そこの異世界人からの情報しか得ていませんが、この場所が必要であること。つまりあなたたち二人の研究員による助力が必要、ということでしょう」

紅莉栖「そうね、間違っていないわ。だけど一手届かなかったわね」

古泉「何を……」

紅莉栖「この電話レンジはそもそも遠隔操作できるように作られているのよッ!!」

バチバチバチバチバチッ!!

古泉「!?」


397:2015/08/07(金) 23:34:28.88 ID:
11:59:51


バチバチバチバチッ

ガタガタガタガタ

紅莉栖「放電現象!! 今よ、キョン!!」

キョン「よしきたッ!!」ピッピッピッ

古泉「くっ!!」BANG!!

ハルヒ「させないッ! きゃぁ!!」パァン!

キョン「ハ、ハル――――――――――――――――――


398:2015/08/07(金) 23:36:08.06 ID:
D 0.337187%
2010.08.11 12:00:00 
湯島某所


―――――――――――ヒッ!!!!! ぐっ……」ズキズキ

古泉「おや、お帰りなさい。どうでした、向こうの世界は」

キョン「はぁ……はぁ……。最高に悪夢だったぜ、ちきしょう……」

古泉「それはそれは。少し落ち着いてから情報交換と行きましょうか?」

キョン「あぁ、それは助かる。だが今すぐ確認したいことがある」

古泉「なんでしょう」

キョン「ハルヒは、生きているか?」

古泉「……えぇ、生きていますよ。ご安心ください」

キョン「そうか……」


399:2015/08/07(金) 23:36:52.13 ID:
古泉「……なるほど、そのような世界改変を経由してきたのですね」

キョン「世界がそっくり再構成されているとして、直前までいたお前と、今目の前にいるお前は同じ存在なんだよな?」

古泉「そうなるみたいですね。あなたの言う通り、パラレルワールドというわけではないなら」

キョン「よし、古泉。歯ぁ食いしばれ」

古泉「えっ」


409:2015/08/08(土) 21:42:44.03 ID:
古泉「……さすがに向こうの世界の責任まで取れというのは理不尽だと思うのですが」ボロッ

キョン「うるせぇ。俺の怒りが治まらないんだ」

古泉「あなたも結構な人ですよね」

キョン「どういう意味だこの野郎」

古泉「まぁ、そうでなければ異世界からの単独帰還など成し遂げられるものではないでしょう」

キョン「単独とは言ってもSOS団には助けられっぱなしだ。お前を除いてな」

古泉「手厳しいですね」


410:2015/08/08(土) 21:43:55.43 ID:
キョン「悪いがさすがにちょっと疲れた……。体中にあった傷は消えてるみたいだが、あんまり寝てなくてな」

キョン「精神的な疲労しか無いはずなんだが、少し休ませてくれ」

古泉「どうぞ。僕でよければ冷たいお茶を用意しますが」

キョン「……頼む」

古泉「了解です」ンフ

キョン(ふぅ……。なんとか帰ってこれたか。さっきも古泉に言ったが、本当にSOS団のおかげでなんとかなった)

キョン(だがハルヒが過去改変を諦めようと心から願わない限り、こんな事態が二度三度と起こるかもしれん)

キョン(こりゃ寝てる場合じゃないかも知れないな……)

古泉「はい、どうぞ。市販のものに氷を入れただけですが」


411:2015/08/08(土) 21:45:09.35 ID:
キョン「横になりながらで悪いが、色々聞いていいか?」

古泉「構いませんよ」

キョン「今はどういう状況なんだ?」

古泉「昨日の午後、涼宮さんと椎名さんが非常に仲良くなりましてね、今日はラボにてコスプレづくりを手伝うのだとおっしゃっていました」

キョン「人工衛星への不法侵入を企んでなくてよかったよ」

古泉「ラジ館の鍵が開けられなくて一時的に諦めているのだとか。それで男性陣はIBN5100探しを命じられたわけですが、あなたの提案でこうやって宿待機となっているわけです」

キョン「なるほど、実に俺らしい発想だ」

古泉「それで、向こうの世界はどういう状況だったのですか?」


412:2015/08/08(土) 21:46:12.91 ID:
キョン「その前に古泉、どうして俺が世界改変に巻き込まれたことを知っている? この世界ではハルヒによる昨日午前に実行された世界改変はなかったことになってるはずなんだが」

古泉「まさにそこが気付いたきっかけです」

古泉「あの涼宮さんが過去改変を実行したのに世界は改変されなかった、なんてことあると思いますか?」

キョン「はぁー、なるほど」

古泉「おそらく昨日の改変は実行された。そして再度“改変されなかった”として改変されたのだと推測しました」

古泉「あなたの豹変ぶりからどうやらビンゴだったようです」

キョン「ん? こっちの世界でもハルヒはDメールを送っているんだよな?」

キョン「ってことは中学生ハルヒは俺のも入れて合計3回もDメールを受信したってことか?」

古泉「いえ、そうではありません。ちょっと詳しく考えてみましょうか」


413:2015/08/08(土) 21:48:24.39 ID:
古泉「現在僕らがいる世界線の4年前において、中学生だった涼宮さんは2回Dメールを受信したことになります」

古泉「おそらく、時間的にこの1回目のDメールが今ラボでコスプレ作りをしているはずの涼宮さんが昨日送ったDメールです」

古泉「あなたが世界線漂流を行う前に居た世界線の涼宮さんが送ったDメールとは、内容も送受信時間も全く同一でしょうが、送信地点の世界線が異なるので別物となります」

古泉「1回目のメールを読んで、涼宮さんは不審がりながらも信じたのでしょう」

古泉「そして2回目のDメール受信、つまりあなたが先刻までいた世界線、α´世界線から送ったDメールですが、こちらを見て当時の涼宮さんは行動を思いとどまった」

キョン「待て待て。それじゃ、俺がさっき送ったDメールは、俺がさっきまでいたα´世界線と、俺が今いる世界線との二つの世界線の4年前に届いてた、ってことか?」

古泉「いいえ、そうではありません。まず、Dメール自体は世界線を移動できないので、Dメールはあなたが先ほどまでいたα´世界線の中学生涼宮さんの元に届いたはずです」

古泉「そしてそれによって世界線が改変されたわけですが、Dメールの受信という過去改変の事実だけは改変されてません。それこそ新しい世界線の因果律の起点となったのですから」

キョン「なんだか考えれば考えるほどややこしいな。世界線の移動と因果律の変更が同時に起こったのか」


414:2015/08/08(土) 21:49:42.80 ID:
キョン「ってことは、今俺が居るこの世界線は、ハルヒがしょっぱなのDメールを送るまでに俺が居た世界線とは似て非なる別物なのか?」

古泉「今の世界線での涼宮さんと、あなたがかつていた世界線での涼宮さんの違いは計2回のDメールを受信していたかいなかったか、という一点に限るでしょう」

古泉「ですから、この世界線はあなたがかつていた世界線と結果的には全く同じものと見なしても問題ないレベルだと思われます」

古泉「良かったですね、元の世界に戻ってきましたよ」

キョン「うーん、わかったような、わからんような……」


415:2015/08/08(土) 21:50:26.79 ID:
古泉「あまり考えすぎるとかえって行動力が削がれることもありますから、あなたくらいのほうがよりよい結果が出せるのかもしれません」

キョン「遠まわしにバカにしてないか、それ」

古泉「滅相もない。それでは、そろそろあなたの見てきた世界についてつまびらかに教えていただけませんか」

キョン「そうだな。それじゃいろいろと話しにくい部分はあるが、かいつまんで向こうの世界のこと、どうやってこの世界に戻ってこれたかについて説明してやろう」

古泉「よろしくお願いします」


416:2015/08/08(土) 21:52:22.54 ID:
古泉「……なるほど。非常に興味深いですね。差し詰め、“もしも涼宮ハルヒがジョン・スミスの正体に気付いていたら世界”とでも名付けましょうか。α´世界線では味気ないですからね」

キョン「なんの意味がある」

古泉「ちょっと長かったですかね。では“デレデレ世界線”、略して“D世界線”ということで」

キョン「もう一発殴られたいようだな」

古泉「冗談です。それと、おそらく向こうの古泉一樹は実弾を使用してないと思いますよ」

キョン「なに、そうなのか?」

古泉「機関でそのような事態が発生した場合、麻酔銃を使ったハッタリで押し切るような想定もされているのですよ。まさにそのケースだったと思われます」

キョン「そんなわけわからん事態を想定してることは不問に付してやろう」

キョン「とにかく、それならよかった。俺の背中でハルヒが古泉に撃ち殺されたなんて、本当にシャレにならん。全く笑えない」

古泉「僕には記憶がないので本当に実感がないのですよ。そろそろ勘弁してください」

キョン「俺には体温や息遣いの記憶まで残ってるんだぞ。こっちこそ勘弁してくれ」


417:2015/08/08(土) 21:53:52.95 ID:
キョン「岡部さんには感謝と謝罪をしなければな。お前からも謝ってくれよ」

古泉「重々承知しました」

長門「岡部倫太郎なら現在未来ガジェット研究所にいる」

キョン「のわっ!……って、なんだ長門か」

古泉「涼宮さんたちと一緒にいたはずでは?」

長門「涼宮ハルヒからあなたたち二人がサボタージュしていないか調査してくるよう指示された」

キョン「お見通しってわけか。こりゃ参ったな」

古泉「できれば涼宮さんには内緒にしておいていただきたいのですが」

長門「わかった」

キョン「い、いいのか長門? ハルヒより俺たちを優先して」

長門「あなたたちには3日前神保町へ連れて行ってもらった恩がある」

古泉「なんと。まさに正しく、情けは人の為ならず、と言ったところでしょうか」

キョン「情けというか、友情ってところだろうな」


418:2015/08/08(土) 21:55:29.24 ID:
長門「あなたの世界改変時の記憶を読み取らせて」

キョン「あ、あぁ……。またやるのか、昨日のアレを」

古泉「どうぞごゆっくり」

長門「身構える必要はない」

キョン「いやムチャを言うな長門さん。一思いにやっちゃってくれ」

長門「了解した」ピトッ

キョン「ちょ待っ!! 俺がソファーから起き上がってからにッ!!!!」ジタバタ

キョン(長門の短くも透き通った前髪が俺の顔にかかる! あぁ清涼感のあるいい匂いだ……)

長門「完了した」

キョン「ふぅ……。今日は暑いな」

古泉「冷房ついてますよ」


419:2015/08/08(土) 21:56:27.43 ID:
長門「」ドンッ!!ドンッ!!

キョン「な、長門ッ!?」

古泉「突然どうされたのですか!? 急に壁を殴るなど……」

長門「感情読み取りの副作用。エラーの消去」ドンッ!!ドンッ!!

キョン「や、やめろ! 手の皮がむけちまう!」

古泉「機関の用意した家なので、優しく扱っていただければと思うのですが……」

長門「わたしにはどうすることもできない」ドンッ!!ドンッ!!

キョン「今度は床を殴り始めた!?」

古泉「まるでマグマを噴出させんとする勢いですね……」

長門「……収束した。心配させてすまない」

キョン「お、おう」

古泉「長門さんの無表情壁ドンは、来るものがありますね……」


423:2015/08/08(土) 22:10:54.83 ID:
長門「リーディングシュタイナーと呼ばれる現象は、世界外記憶領域を利用した記憶の忘却およびほぼ完ぺきな形での同時的記憶受信」

キョン「世界外記憶領域? 天蓋領域の親戚か?」

長門「構造は全く異なるが、例えるなら情報統合思念体の人間バージョン」

キョン「……そんなものが存在してんのか」

古泉「つまり、アカシックレコード、ですね。なるほど、リーディングシュタイナーという名称は人智学を提唱したルドルフ・シュタイナーから引用されていると」

長門「正確には異なるが、だいたいそう」

古泉「ユング心理学の集合的無意識、パウリ効果、シンクロニシティ、シェルドレイクの仮説……。本来ならオカルティズムや擬似科学の領域として扱われやすいものですが、まさか実在していたとは」

キョン「お前のペダンチスムには辟易するよ」

長門「これに関しては涼宮ハルヒの力によるものではない」


424:2015/08/08(土) 22:15:47.12 ID:
キョン「それで、一体なんの話だ」

古泉「つまり、リーディングシュタイナー所有者が世界改変だと認識するプロセスは一体どういう仕組みなのか、ということですよね? 長門さん」

長門「そう。Dメール送信という過去改変に伴い、世界は事象間の関係性が再構成される。人間の記憶も因果律に沿う形へと再編成される」

キョン「そこは理解できる」

古泉「ではなぜあなたは再編成に巻き込まれないのでしょう。長門さん、選ばれた人間だけがその世界外記憶領域を利用できるのですか?」

長門「すべての人間が世界外記憶領域にアクセスする能力を潜在的に持っている。しかし、情報のダウンロードは非常に限定的で、多くの人間は幻覚、デジャヴやメジャヴ、あるいは夢として理解する」

古泉「なるほど、別世界線での記憶をダウンロードすることは誰でも可能性があると……。虫のしらせや予知夢といった、現代科学では説明のつかない現象の多くはこのシステムで説明ができそうです」ンフ


425:2015/08/08(土) 22:17:43.34 ID:
古泉「では、どうしてあなたと岡部さんという数少ない人間だけが世界変更を認識できるのでしょう」

キョン「まず、過去改変の事実を認識できる環境におかれている必要があるだろ? それから、岡部さんはわからんが、俺はSOS団として活動してきて脳を弄繰り回されてしまったから、じゃないのか」

古泉「遠因としてはそうでしょう。その上で、現象面としてはどのようなことが起きているのか」

キョン「えっと……、俺の記憶が世界線間を跳躍してるのか?」

長門「そうではない。記憶自体は常に世界外記憶領域にバックアップされている。あなたの脳内にあるものが記憶の全てではない」

キョン「……新興宗教か何かか?」


426:2015/08/08(土) 22:19:24.43 ID:
古泉「つまり、あなたが時間経過とともに蓄積させている記憶は常に外部サーバのような場所に自動保存されているのですよ。それはすべての人類種に関しても同じです」

キョン「全く実感がないんだが」

古泉「そしてリーディングシュタイナーの本領発揮はここからです」

古泉「過去改変によって世界線が変更してしまった。同時にあなたの記憶も再編成されている。さて、次になにが起きるでしょう」

キョン「……?」

古泉「記憶喪失です。それもありとあらゆる記憶の消滅が起きて、脳が空っぽになります」

古泉「あなたの脳は世界線変動をトリガーとする記憶喪失体質になっているのですよ。これがリーディングシュタイナー所有者の能力です。一種の新型脳炎ですね」

キョン「マジか!?」

古泉「記憶が空っぽになってしまった人間は生きていけません。そこで本能的に世界外記憶領域に直前まで更新されていた記憶のバックアップをダウンロードする……」

古泉「おそらくその時に、元々脳に入っていた記憶と、バックアップとの情報齟齬が大きければ大きいほど強烈な頭痛やめまいを感じるのでしょう。ニューロン間の電気信号の伝達が変化するわけですから」

古泉「これによってあなたという人間は記憶も意識も世界線跳躍が可能になっているのですよ」

キョン「大丈夫か俺の脳みそよ。というか、去年のエンドレス夏休みで感じた強烈なデジャブの正体はこれだったのか」

長門「そう」


427:2015/08/08(土) 22:21:38.44 ID:
古泉「しかし、現象面だけ見れば記憶を維持する能力と捉えて然るべきでしょう」

古泉「リーディングシュタイナーという能力があなたに備わってしまっていたとは、機関はあなたに対するプロファイリングを更新しないといけないようです」

キョン「だが、話では誰もが持っている能力で、デジャヴのようなものなんだろ? 俺は平凡な人類としてカテゴライズされたままで居たいのだが」

古泉「去年のお盆までは強烈なデジャヴを感じるような体験はなかったのですよね?」

キョン「そうだ、あのエンドレスサマーの時が記憶している中では初めてだった」

古泉「しかしあの時は世界線を移動したことによってデジャヴを受信したわけではありません」

古泉「涼宮さんは15532もの世界線を創ったのではなく、一本の世界線を円環状に積み上げていたのです」

古泉「そしてあなたのリーディングシュタイナーの一部、すなわち数々のループで許容量限界まで蓄積された世界外記憶領域へのバックアップデータが、強烈なデジャヴとして受信する能力によってあなたの脳内に流入し、『俺の課題は、まだ終わってねぇ!』の一言を引き出すことにより、元の時間流に戻った」

古泉「相当な負荷があなたの脳に襲いかかったことでしょう」

キョン「実際ものすごい立ち眩みだったぞあれは……」

古泉「さらに言えばエンドレスサマーでは世界線が変更されなかったために長門さんは情報統合思念体を経由して記憶をすべて保持できたと言えます」


428:2015/08/08(土) 22:23:37.26 ID:
キョン「だが今回みたいな世界改変、あるいは世界線変動では普通の生物は記憶を維持できない」

キョン「去年の12月18日の世界改変の場合は、世界線変動ではないが、4年前の長門のプログラム注入がなければ、大人朝比奈さんと、一緒にいた俺は、記憶を維持できなかった」

古泉「そうでしたね。もしかしてその時の噛みつきの後遺症が今に現れているのでは?」

キョン「いやな言い方をするな」

キョン「だが確か、お前の叔父のつてとやらがあった市立病院で俺の脳みそを徹底的に調べたんだろう? あの時のお前は俺の頭に異常は何もないと言っていたぞ」

古泉「たしかに現代医学ではあなたの脳に異常はなかったようです」

キョン「うまい言い方だな」

キョン「まぁ、確かに俺の脳みそはこのあいだの世界分裂からの世界融合もあって、ぐちゃぐちゃになってるのかもしれん。未だに思い出すだけで二つの記憶が並列しているのは不思議でならん」

古泉「それは僕も同じですが……。とにかく、あなたがリーディングシュタイナーと呼ばれる力を発動できる人物であることは間違いないようです」

古泉「この直接の原因は涼宮さんの願望実現能力ではなく、むしろ体質だと考えてよろしいのですね?」

長門「そう」

キョン「直接的原因でなくとも、間違いなくアイツが環境要因だろうけどな」


429:2015/08/08(土) 22:26:22.50 ID:
キョン「ということは、だ。俺の脳内にある俺という自我と記憶は別の世界線のものなんだから、お前らにとって俺は異世界人、ということになるのか?」

古泉「さぁ、どうでしょうか。確かに記憶は別の世界線のものでしょうが、自我、すなわち『あなた』という意識、この場合魂や精神と言い換えてもいいかもしれません、コレがどこに従属するものかについては、なんともお答えできません」

キョン「なぜだ?」

古泉「可能性として、世界線漂流に関係無く自我が共通して存在するかも知れないのですよ」

古泉「記憶というのはただのデータの蓄積です。しかし、それをコピー&ペーストしただけで同じ人間をもう一人作り出すことは可能でしょうか」

キョン「別の自我があれば、たとえ同じ記憶を持っていたとしても別人なはずだ、と言いたいのだな」

古泉「その逆も然りです。つまり、別の記憶があったとしても、同一の自我があればそれは同一人物と言えるのではないか、と」

古泉「僕から見ればあなたという人間はこの世界線で順調に17年間生活してきたわけですが、ある日突然異世界の記憶を所持していたように見えるだけであって、別人とまでは言えません」

古泉「例えるなら、同窓会で久しぶりに会った友人」

古泉「どこかにあなたはあなただと思わせるものがありましたからね。だからこそあなたがD世界線へ行った時もSOS団は異世界人のあなたに協力的だったのでは?」

キョン「お前だけは反抗的だったがな」


430:2015/08/08(土) 22:28:58.28 ID:
古泉「んっふ。さて、世界線移動で記憶を維持できることはリーディングシュタイナーで説明するとして、どうして自我までも世界線移動してきたのでしょう?」

古泉「それまで17年間あったはずのあなたの自我はどこへ消えたのでしょうか。あるいは消えたのではなく合体した、もしくは元々同一のものであったか……」

キョン「どの世界線であっても、俺という存在は俺である、という可能性か」

古泉「そうです。あなただけでなく、すべての人類、すべての生命が、あるいは」

古泉「ゆえに僕はあなたを異世界人として認めることはしません。SOS団に居たためにちょっと脳みそがおかしくなってしまった一般人、という認識がより妥当かと」

キョン「どっちもどっちだな。で、長門大先生。答え合わせを願いたいのだが」

長門「以前に言った通り、禁則事項ということで」

キョン「……長門の生誕史上初のジョークのリバイバル上映と来たか」

古泉「以前というのは、あのルソー氏vs情報生命体の時の、精神はどこにあるかという質問ですね」

長門「そう」

古泉「わかりました。これ以上の議論はカント哲学にコペルニクス的転回を与えかねません」

古泉「精神、意識、あるいは魂とは何か。今後の科学の発展に期待しましょう」


434:2015/08/08(土) 23:17:14.08 ID:
キョン「そういや、どうしてハルヒは1975年から2034年までというよくわからん期間の世界システム改変を実行したんだ? 2034年については七夕の短冊効果だったわけだが」

古泉「そう言えばあなたには言いそびれていることになっているのでしたね」

古泉「僕の推測では、涼宮さんが世界システム改変を実行したのは7月27日の夜、あの結婚披露宴が終わった後です」

キョン「あー、そういやそんなこと言ってたっけか」

古泉「改変直前に遭遇した、今後秋葉原で出会うだろう友人椎名まゆりと、担任の甥にあたる岡部倫太郎のカップルに今回の騒動の白羽の矢が当たったのだと僕は考えています」

キョン「ハルヒの近くを歩くだけで危険極まりないな」

古泉「さて、どうして結婚披露宴がトリガーとなったのか」

古泉「これはもう先ほどあなたから聞いたD世界線での話を聞いて確信を得ました」

キョン「…………」

古泉「ズバリ言いましょう。涼宮さんはご自分の結婚について考えてしまったのですよ」

古泉「担任教諭と新婦さんの姿を、同年代の岡部さんと椎名さんカップルの姿に投影し、そしてご自分にも」

キョン「……そうなんだろうなぁ。自分で言うと自意識過剰みたいでアレだが、それが“ジョンと出会っていたら”、という過去改変願望に繋がるわけか」


435:2015/08/08(土) 23:20:27.38 ID:
古泉「それから、あなたの話、というか、D世界線の朝比奈さん(大)の話による、2034年の短冊効果についても僕から推論があるのですが、よろしいでしょうか」

キョン「あ、あぁ。あの人でも理屈はよくわからないとか言ってたからな、これに関してはお前の領分なんだろう」

古泉「『自分を中心に世界が回るように』という願いによって、然る後に世界線理論を利用したタイムマシンは開発されなくなった。同時に新世界システムの期限も2034年に設定された」

古泉「ですが、システムキャンセルは世界システム改変が過去に与えた影響自体をすべて無かったことにすることはできなかった」

古泉「ということは、です。涼宮さんの短冊は“SOS団が有する超常的な能力に類するモノが今後新しく登場することを拒否する願い”としてアルタイルこと彦星様は了したのではないでしょうか」

キョン「なんともまぁネガティブに捉えたもんだな。きっとその彦星様はカササギ橋梁組合がストライキを起こしたせいでノイローゼになってたんだろうよ」

キョン「だが古泉、世界システム改変の影響が2034年に消えたのに、それ以降も世界線系タイムマシンが利用できるのはやっぱり変だぞ」

古泉「そのタイムマシンの内部に世界システムが組み込まれていたとしたら、変な話ではありませんよ」

キョン「もはや屁理屈の領域だと思うが……」


436:2015/08/08(土) 23:22:39.08 ID:
古泉「そして1975年から、という点に関しても実はある推測が立っているのですが……」

古泉「この話はあの人工衛星とも関わってくる話になります。つまり例の異世界人の話ですね」

キョン「さっきまで俺自身が異世界人と呼ばれていたからヘンテコな気分だ」

古泉「話が長くなるのですが、長門さんも一緒に聞きますか?」

長門「いい。それよりも涼宮ハルヒの動向を監視したい」

古泉「それではこれを使ってください。未来ガジェット研究所をリアルタイムで盗聴できますよ」スッ

長門「助かる」カチャ

キョン「さらっとヤバいやり取りが行われているが、俺はなにも見ていないし聞いていない。そうだな、うん」


古泉「さて、既に随分話し込んでいますが、まだまだ僕の推理ショーは続きますよ」ンフ


438:2015/08/08(土) 23:37:49.96 ID:
古泉「機関があの未来ガジェット研究所について徹底的に調査した結果、いくつか不可解な点を発見しました」

キョン「ほう? あの大学生サークルになにかひみつが?」

古泉「平仮名三つで『ひみつ』ですか。あなたも相当涼宮さんに入れ込んでいますね」ンフ

キョン「長門、古泉を記憶喪失にさせてやってくれ」

長門「今忙しい」

古泉「ともかく、あのラボ自体はなんの変哲もない趣味人サロンでした。機関の調べでは、ですが」

古泉「唯一気になった点は、テナントとして大檜山ビル2階にあの研究所が入っているわけですが、そのテナント料は破格の月10000円だとか」

キョン「都内でそれは確かに安いが、まぁ大学生相手にまともに商売するつもりなんてないんだろう」

古泉「そうでしょうね。ですがオーナーの天王寺裕吾がこのご時世にブラウン管のテレビやモニター販売、廃品回収程度でどれだけ儲かっているのか気になりましてね」

古泉「少し天王寺家について探りを入れさせていただきました」

キョン「勝手に身辺調査されるにあたってなんともまぁかわいそうな理由だ」


439:2015/08/08(土) 23:44:23.36 ID:
古泉「結果から言いましょう。天王寺氏は“ラウンダー”という名称の傭兵部隊の一員、それもおそらく中間管理クラスであることが判明しました」

キョン「……マジでか」

古泉「どこの組織に属しているかまでは堅牢無比なまでに情報がプロテクトされていてわかりませんでしたが、彼が裏できな臭いことを遂行しそれを生業としていることは間違いなさそうです」

キョン「なんだってそんなやつがブラウン管販売だのテナント経営だのをやってるんだ」

古泉「考えられるのは隠密行動中か、あるいはそれ自体が命令なのか……」

古泉「僕たち機関も涼宮さんの安全上気になりましてね、天王寺氏の経歴を徹底的に調査しました」

古泉「あまり関係ありませんが、彼は複雑な経歴の持ち主でしたよ。母親は日本人、フランス育ち、フランス帰りの帰国子女であり、来日早々できちゃった結婚をしているなど」

古泉「そして廃品回収と同時にIBN5100の捜索も行っていたようです」

キョン「ここでIBN5100か。まぁ、趣味でやっててもおかしくなさそうではあるが」

古泉「そしてここでもう一つ面白い繋がりを発見してしまったのです」

キョン「お前の本職って探偵だったんだな」

古泉「おっと、ご存じありませんでしたか」


440:2015/08/08(土) 23:49:24.75 ID:
古泉「あの大檜山ビルは天王寺氏以前のオーナーである橋田鈴という人物から贈与形式を以って無償で権利譲渡されたものでした」

古泉「ビルだけでなく御徒町のご自宅も。このことは役所から裏が取れてます」

キョン「無償ねぇ」

古泉「この橋田という人物は自宅が天王寺宅の隣近所だったらしく親交が厚かったらしいです」

古泉「一時期は同居もしていたとか。このことは御徒町に古くから住んでいる方からの情報です」

古泉「橋田鈴は譲渡後の西暦2000年に“自殺”したことになっています。43歳の若さで」

キョン「遺産贈与の直後に自殺か……」

キョン「話が普通に探偵モノの事件に発展してきたな。正直これ以上はヤバいと思うが……」

キョン「しかし、たしかに臭うな。もしかしたら諸々はフェイクで、橋田某が地下組織運営の片棒を担いでいた可能性もあるんじゃないか」

古泉「機関も同じように考えました。そして橋田氏の素性を洗ったわけですが、これがとんでもなく当たりだったんですよ」

キョン「とんでもなく?」

古泉「橋田鈴、彼女の戸籍は1975年に新規作成、舞文曲筆されたものでした」

キョン「なんてこった……」


441:2015/08/08(土) 23:54:06.47 ID:
古泉「彼女の存在をたどれる限界がとある医療施設でして、彼女は昭和50年当時そこで保護されていたようです。そこの施設長から確認した話ですが、どうやら橋田鈴は記憶喪失を装って新しい社会的人格を手に入れたようです」

古泉「なぜ橋田鈴という人間がこの世に書類上誕生する必要があったのか。橋田鈴の正体は何者なのか。非常に興味がありましてね、つまびらかに人間関係を調べ上げさせてもらいましたよ」

キョン「えげつねぇことをしやがる」

古泉「そしてこの一枚の写真を入手しました。ご覧ください」

キョン「ずいぶん懐かしい雰囲気の現像写真だな。集合写真か」

古泉「彼女は1977年、20歳の春、東京電機大学工学部の学籍を手に入れます。のちに大学院へ進学し、同大学の物理学助教授となりました。これは、教授時代の彼女がゼミ生たちと撮った卒業アルバム用の集合写真です」

キョン「そこって岡部さんと橋田さんのいる大学じゃないか」

古泉「おや、ご存知でしたか」

キョン「あぁ、D世界線――ホントにこの名前で呼ぶのか?――のハルヒが東京の大学に進学したがっててな、牧瀬さんがマシンを直してる間に色々話を聞いたんだ」

キョン「それで、この写真の中心にいる白衣の女性が橋田鈴か……」

キョン「この橋田鈴さんと橋田至さんってのは親戚かなにかか?」

古泉「いえ、機関の調べでは同姓であるだけの他人です。“橋田”という苗字は日本に1000世帯近くあります。高知県に多いようですね」

古泉「まぁ、橋田鈴さんの苗字は捏造ですから、本当の苗字は不明です」

キョン「それもそうか」

古泉「ここで注目してほしいのはこの人物とこの人物。名前は、牧瀬章一と秋葉幸高です」

キョン「牧瀬……?」


442:2015/08/08(土) 23:58:43.77 ID:
古泉「彼女に関連する話で一番興味をそそられたのはこれです。1986年、当時まだ学部生だった牧瀬青年と秋葉青年、そして橋田助教の3人からなる“相対性理論超越委員会”を結成したのだとか」

古泉「これは橋田ゼミ出身の方から証言を得ました。なかなか口を割らないので手こずりましたよ」

古泉「そこで一体なにが行われていたと思います?」

キョン「普通ならゼミの課外授業といったところなんだろうが」

古泉「そうでありながら、そうでなかったと推測しています」

古泉「そこではまさに“タイムトラベル”についての研究が行われていたそうなのですよ」

キョン「そろそろその言葉が出るかと思っていたが、ついに出たか。朝比奈さん関係以外の、“タイムトラベル”……」

古泉「卒業後も委員会は続けられたそうですが、1994年10月3日に中止となります」

古泉「資金の出処はおそらく秋葉幸高氏の会社だったのでしょう。経営がバブル崩壊やメキシコ通貨危機などの影響で立ち行かなくなり、資金提供が滞ったことでタイムマシン研究が中止となったものと思われます」

古泉「秋葉氏に関しては多く情報が機関の手に入っていますよ。新川さんの旧いご友人から穏便にお話を伺わせていただきました」

キョン(あの人も人脈が広いな……)


443:2015/08/09(日) 00:03:24.89 ID:
古泉「一方、この牧瀬章一という人物ですが、現在は理論物理学論文を非公式で発表する傍ら“中鉢博士<ドクター中鉢>”という芸名でタレント活動などもなさっているとか」

キョン「なにッ!? テレビでたまに見るあの人だろ!? ……あの中鉢博士の若かりし頃の姿だったとは」

古泉「それだけではありません。娘さんの名前にも心当たりがあるはずですよ」

古泉「現在18歳、ヴィクトル・コンドリア大学脳科学研究所所属の日本人研究員……、牧瀬紅莉栖」

キョン「な……ッ!? あの未来ガジェット研究所にいた、なんだかすごい経歴を持ってる、あの! ……まさか中鉢博士の娘だったとはな」

古泉「続けていきましょう。この秋葉幸高氏の娘さんの名前は秋葉留未穂さんと言いますが、彼女は現在フェイリス・ニャンニャンという名義で最強雷ネッターとして活躍しているとか」

キョン「……IBN5100と未来ガジェット研究所ッ!!!!」

古泉「そう、すべてはそこに繋がるのですよ」ンフ


444:2015/08/09(日) 00:10:42.48 ID:
古泉「しかし、秋葉幸高氏はどういうわけかIBN5100と何の接点もありませんでした。ここで橋田助教からの無償提供でもあれば、完全に黒、と言ったところだったのですが」

キョン「何の接点もない? フランス人の実業家に売り渡したって話はウソだったのか?」

古泉「あなたの話を信じて重点的に調べたわけですが、そのような事実は存在しなかったか、徹頭徹尾抹消されています」

古泉「あるいはこういう可能性も考えられます。あなたの気づかないうちに世界線が変わっていた」

古泉「つまり秋葉幸高氏がIBN5100を入手してフランス人に売る世界線から、そもそも入手しない世界線へと」

キョン「!!」

古泉「そして幸高氏はこの秋葉原の大地主です。街を電気街にするか、萌えの街にするかに関して発言権を持ちうる人間の一人でもあります」

キョン「色々と見えてきたようで情報が文字通り混線しているな、世界線的な意味で。蜃気楼と徒手格闘しているような気分だ」

古泉「幸高氏の話でおもしろいことがもう一つあります。2000年4月3日、娘さんの誘拐未遂事件に遭遇していたのです」

キョン「フェイリス・ニャンニャンが誘拐!?」

古泉「未遂だったようですが。偶然にも誘拐犯からのメールと当時7歳の留未穂さんの家出のタイミングがかぶってしまい、誘拐犯は誘拐を実行できず、幸高氏は誘拐を事実と誤認」

古泉「身代金1億円を用意するために相当苦心したようです。IBN5100が手元にあれば1億くらい簡単に手に入ったでしょう」

古泉「実際は1億円を用意し終わる前に娘さんが家出から戻ってきたため事件は発生せず、金銭的にも問題は起こりませんでした」


446:2015/08/09(日) 00:36:23.94 ID:
古泉「ですが、橋田鈴がキーパーソンであることは揺るがない」

古泉「関係があるかはわかりませんが、橋田助授の教え子の一人、天王寺綴、旧姓今宮綴は天王寺裕吾の妻でした。しかし1999年11月9日に第一子を出産した後、2年と経たず綴さんは“交通事故”で帰らぬ人となってします。2001年10月23日のことです」

古泉「本当に交通事故だったか、若干胡乱な点がありますが」

キョン「なんでそんなに事件発生年が偏ってるんだよ……」

古泉「陰謀の臭いがしますね」フフッ

キョン「橋田鈴の名義偽証年の1975年と言えばIBN5100の発売された年……教え子に秋葉氏、牧瀬氏、天王寺氏の嫁……」

キョン「同居人に天王寺氏……しかも、タイムトラベルの研究と、大檜山ビルのオーナー……」

キョン「未来ガジェット研究所と、IBN5100……なにもかもが繋がっている……」

古泉「僕は宿命論者ではありませんが、これを偶然の一致として一笑に付すことができるでしょうか」

古泉「まるで『セレンディピティ』だ。惹かれあった男女がお互いの連絡先を5ドル札と本に書き、5ドルはレジで払い本は古本として売る。このそれぞれが巡り巡って男女の手元に戻ってくるのはどのくらいの確率なのでしょうね」


447:2015/08/09(日) 00:44:28.80 ID:
古泉「まさか、とは思ったのですが。橋田助教の顔写真から、彼女の1975年頃、すなわち19歳頃の推定写真を作成しました。それがこちらになります」スッ

キョン「……ッ!?!?!? こいつはッ!!!!」

古泉「僕は直接お会いしたことはありませんが、阿万音鈴羽さんと瓜二つらしいですね。ブラウン管工房でバイトをされている。歳は現在18歳」

キョン「ということは、阿万音さんが、タイムトラベラーッ!!!」

古泉「これはもう疑いの余地なしと言ってもいいでしょう。現在時間平面に存在する阿万音鈴羽は年内に1975年へタイムトラベルし、その余生を2000年まで地に足つけて暮らす」

古泉「阿万音さんの身元調査もしました。こちらは手間がかかりませんでしたよ。なにせ阿万音鈴羽なる人物は1872年の壬申戸籍から現在に至るまで、世界中どこを探しても登録されていなかったのですから」

古泉「加えて阿万音鈴羽が秋葉原に姿を現した日ですが、我々の調べによると2010年7月28日のようです。つまり、あの人工衛星が墜落した日……」

古泉「結論です。あの人工衛星は別の世界線の未来から来たタイムマシン。阿万音鈴羽はその搭乗者であり、まだこの世に生を受けていない未来人である」

古泉「そのタイムマシンはおそらく、未来ガジェット研究所が開発する。ゆえに涼宮さんの7月27日の世界システム改変の影響は1975年へと円環状に広がってしまった」

キョン「それが言いたいがための長編推理小説だったのかよ、聞くだけで疲れちまった……」


448:2015/08/09(日) 00:57:24.92 ID:
キョン「ま、待て待て。1975年にタイムトラベルするのはIBN5100を入手するためだとしても、どうしてそこから未来へともう一度タイムトラベルしなかったんだ? 未来で作られただろう人工衛星型タイムマシンを使って」

古泉「例えば、あの人工衛星型タイムマシンが故障してしまった、あるいは元々未来へタイムトラベルできるように作られていなかった」

キョン「……それほどまでに重要なアイテムってことだよな、IBN5100」

古泉「未来人が命を懸けて入手しなければならない存在ですからね」

キョン「もうひとつ質問だ。世界線系のタイムマシンはタイムトラベルをすると世界線移動してしまうと朝比奈さん(大)から聞いた」

キョン「ということは、だ。この世界線上に存在する橋田鈴なる人物と阿万音さんは……」

古泉「互いに異なる世界線出身の人物でしょう。完全な同一人物ではない。ですが、世界線変動率<ダイバージェンス>の近似を考慮すれば同一人物と考えても問題なさそうです」

キョン(あの時の朝比奈さん(大)と同じか……)

キョン「そして阿万音さんは既にラウンダーと繋がっているか、あるいは将来的に、っつっても俺たちからしたら過去だが、ともかく橋田鈴として繋がることになる可能性がある。これは……」

古泉「殺してでも奪い取る。何が何でもIBN5100を自らの手中に、そして最終的にはラボへと届ける。それほどまでの執念が感じられます」

古泉「SOS団所属の未来人の目的は未来の保護でした。仮に阿万音さんもそうだとするならば、その目的はディストピア社会の保護、世界のディストピア化ということになります」

キョン「……なぁ、ハルヒのIBN5100探しは、やめさせたほうがいいんじゃないか? 仮に見つけちまったら岡部さんに渡すことになる」

キョン「俺たちまで巨大な陰謀に与することはねぇ」

古泉「やめろと言ってやめるなら、このような推理は必要なかったのでは?」


449:2015/08/09(日) 01:00:20.60 ID:
2010.08.11 (Wed) 13:28 
湯島某所


長門「さすがに昼食を取るべき」

キョン「おっと、もうこんな時間か。ずいぶん話し込んじまったな」

古泉「内容が内容でしたからね。正直もうお腹いっぱいです」グー

キョン「長門は昼は食ったか?」

長門「まだ」

キョン「よし、それじゃ三人でなにか食いに行こう。ついでに未来ガジェット研究所に寄ってうちの団長様と副々団長様をお迎えに上がろうぜ」

古泉「岡部さんとも色々話がありますしね」


459:2015/08/10(月) 21:57:34.77 ID:
2010.08.11 (Wed) 13:35 
牛丼専門 さんぽ


キョン(ラボへ向かう途中に財布と胃袋に優しそうな牛丼屋を見つけたので入ることにした。今時チェーン店じゃない牛丼屋とは珍しいな)

キョン「そういや、どうして阿万音さんは未来から直接IBN5100販売年の1975年へ飛ばなかったんだろうな。はい、古泉くんの答え」

古泉「そうですね……。考えられるのは、2010年に立ち寄る必要性があった。何らかの因果操作工作が既定事項であり、それはこの年に電話レンジが開発されることに関係しているかもしれません。あるいはタイムマシンの性質上中継地点を設けねばならないとか」

古泉「もしくは2010年である必要はなく、たまたま。ディストピアでは過去の情報が規制されていて、それゆえ1975年でのスニーキングミッションを達成させるために誰でも情報にアクセスできる時代で過去の情報を仕入れる必要があったとか」

古泉「この場合、阿万音さんは世界をディストピアから救う正義のヒーローということになりますね」

キョン「朝比奈さん(大)は未来ガジェット研究所がディストピア未来を回避する鍵だと言っていたしな、そうかも知れん」

古泉「パンドラの箱を開ける、という意味での鍵かもしれませんよ」

キョン「お前の想像力はボディービル世界大会4連覇並にたくましいな」

古泉「人間の想像力は最大の武器ですからね」ンフ

長門「…………」モグモグ


460:2015/08/10(月) 21:59:05.84 ID:
キョン「それからもう一つ。これからラボに行くわけだが、そもそもそのラボがディストピアの原因なんじゃないか? 人工衛星型タイムマシンはラボが作ったことになるんだろ?」

古泉「あくまで涼宮さんが7月27日、岡部さんを始めとする未来ガジェット研究所のみに白羽の矢を立てていれば、という仮説です。他にタイムマシンを完成させる研究所があったとして、同様に世界システム改変に飲み込まれていればこの仮説は崩れることになります」

キョン「タイムマシンがそう簡単に作られたら困るけどな、それを聞いて安心したぜ」

キョン「あの人たちの人間性を鑑みるに、正直言って世界を支配するだなんだは想像つかないんだよな」

キョン(岡部さんは、たしかに口から黒歴史待ったなしの妄想ストーリーダダ漏れ状態ではあるが、あれは一種のペルソナであって決してマジモンのサイコパスではなかろうよ)

古泉「完全に信用はできませんよ。と言っても僕は岡部さんに個人的にご迷惑をおかけしているらしいですから、そこは謝罪しようと思います」

キョン「俺も一度助けてもらったからな、その恩は返す」

古泉「それに今後の行動を見極めるためにもう少し情報が欲しいですからね。ラボの方々に接近しておくのも悪くないかと」

キョン「清々しいまでに打算的だな」

長門「……ごちそうさま」


461:2015/08/10(月) 22:00:57.26 ID:
2010.08.11 (Wed) 14:00 
大檜山ビル前


ミーンミンミンミーン……

キョン(長門の『ごちそうさま』を合図に牛丼屋を出た俺たちはもはや通い慣れ始めてしまった未来ガジェット研究所のある雑居ビルへと向かった)

キョン「ここに傭兵部隊が潜伏してるとは信じられないほど平和だな」

鈴羽「何それ、スパイ? どこにいるの!?」

キョン「うわっ!? な、なんですかいきなり」

キョン(って、阿万音さんか。さすがに俺たちに問答無用で危害を加えるようなことはないだろうが……)

鈴羽「……少しでも怪しいと思ったらあたしに知らせて。だってあたしは、一人前の戦士だからね!」

キョン(なに言ってるんだこの異世界人)

古泉「初めまして阿万音さん。SOS団副団長、古泉一樹と申します。戦士というのは、もしかして鈴羽さんは軍隊に所属してたのですか?」

鈴羽「軍隊じゃないッ!! あたしが所属してるのは解放組織ワル……あっ、いや! なんでもないんだ! 気にしないで!」アセアセ


462:2015/08/10(月) 22:01:52.30 ID:
キョン(本当に異世界人はおっちょこちょいだったらしい。うちの未来人もおっちょこちょいではあるが)

キョン「長門、この人が例の人工衛星の搭乗者で間違いないか?」ヒソヒソ

長門「」コクッ

キョン(裏も取れたな。まぁ、これだけ慌てんぼうならそんなに警戒しなくても大丈夫か?)

??「こらぁバイトォ! サボってんじゃねぇぞ!」

鈴羽「うわぁ! いっけない、また店長に怒られる! じゃぁね君たち、達者で!」タッタッ

キョン(タッシャ……たっしゃ……達者?)

古泉「あのスキンヘッドで筋骨隆々の方が天王寺裕吾氏です」

キョン「あれが……。なるほど、スイス人顔負けの傭兵部隊って感じだ」


463:2015/08/10(月) 22:03:35.00 ID:
2010.08.11 (Wed) 14:07 
未来ガジェット研究所


キョン「お邪魔します。ハルヒいますか?」ガチャ

古泉「どうも」

長門「…………」

岡部「おぉ、お前たちか。来るんじゃないかと予感はしていたのだ……。フフフ、能力者同士は引かれ合うものだからな。それもまた“運命石の扉<シュタインズゲート>”の選択……!」

紅莉栖「あら、久しぶりねキョン。三日ぶりかしら」ヨッコイショ

キョン(俺にとっては数時間ぶりなんですよね)

キョン「牧瀬さん、お久しぶりです。マシンの改良は順調ですか?」

紅莉栖「えぇ、一応……。って、岡部のやつが漏らしたの?」

岡部「その言い方だと俺の沽券に関わるからやめるのだ! 前も言っただろう、少年は俺と同じく運命探知の魔眼<リーディングシュタイナー>の使い手だとな! 故にッ! 秘境の地、ヴァージン・エクストラ諸島には存在しない知識を有しているのだッ!」

紅莉栖「己はぶっ殺されたいかッ!!!」

キョン「あ、あはは……」


464:2015/08/10(月) 22:05:11.32 ID:
岡部「ってぇ!? き、きき、貴様は機関のエイジェントォッ!! 異世界から我が命を狙いに来たのかッ!?」

古泉「大丈夫です、こちらの世界ではあなたの味方です。全力で暗躍致しますよ」ンフ

岡部「フ……フフフ。フゥーハハハ! ついに機関が我が軍門に下ったぞォ! 終戦の時は近いッ!」

古泉「イエス、ユアハイネス」ンフ

キョン(うまいこと取り入ったな、こいつ)

紅莉栖「もしかして彼もそういう趣味なの?」ヒソヒソ

キョン「いや、あれは悪乗りしてるだけです」ヒソヒソ

古泉「実際涼宮さんがお世話になってますし、前の世界線でのご無礼もあるそうですからね。何らかの形でお礼がしたいと思っているのですよ」

キョン「それに関しては俺も同意見だ。岡部さん、体感で2時間くらい前になりますが、あちらの世界ではありがとうございました」

岡部「お、おう? あーいやいや、なに、気にするほどのことではない。なぜなら俺の望みは世界の混沌、ただ一つだからな……、ククク」


465:2015/08/10(月) 22:07:22.65 ID:
キョン「えっと、ハルヒたちがいないみたいですが……。おい長門、監視してたんじゃないのか?」

長門「わたしが盗聴を終えたタイミングで涼宮ハルヒと朝比奈みくるはこのラボを出ている」

キョン「一言言ってくれよ……」

長門「……あまりに楽しそうだったため、邪魔をしないほうが良いと判断した」

キョン(もしかしてこれは長門なりの気遣いなのか? まぁ、仮にハルヒたちが居なくても用があったからいいんだけどさ)


古泉「それで、涼宮さんはどちらに」

紅莉栖「あぁ、ハルヒならまゆりとみくると三人でフブキっていうまゆりのレイヤー仲間のところに遊びに行ってるわ」

長門「レイヤーとは?」

古泉「レイヤーとは、コスプレイヤー、すなわちコスチュームプレイを行う者、という造語の略称の略称ですね」

キョン「お前の衒学家ぶりはオタク文化でも発揮されるのか」

長門「それもコスプレ?」

岡部「違う、間違っているぞ無表情文学少女よ。この白衣は知的存在にのみ着ることが許された正式なユニフォームなのだッ!」

紅莉栖「私も着てるんだから恥ずかしいんだけど……」


466:2015/08/10(月) 22:08:33.59 ID:
長門「知的存在……」トテトテ

長門「……」ジーッ

紅莉栖「あら、マシンに興味あるの?」

長門「もし良ければ観察させてほしい」

紅莉栖「うふっ。かわいい女の子に興味持ってもらえて、お姉さんうれしいわ。どうぞ、研究室に入って」

岡部「ぬぁにが『オネエサン』だ、同い年ではないかセレブセブンティーンよ」

紅莉栖「だからッ! 私は18歳だってば!!」

岡部「一個上だとしてもお姉さん呼びはちょっと引くのだが……」

紅莉栖「う、うるさいなッ/// 後輩が初めてできて嬉しくて悪いか!」


467:2015/08/10(月) 22:09:44.57 ID:
2010.08.11 14:17 
未来ガジェット研究所 談話室


岡部「心配しているようだが、俺の身体は大丈夫だ。実弾じゃなかったしな。それに少年のDメール送信によって俺への攻撃も無かったことになった」

古泉「僕に襲撃実行の記憶はありませんが、改めて謝罪します。大変申し訳ありませんでした」

古泉「それにしても我々機関の存在を早々に見破っていたとは。岡部さんはなかなか鋭い方ですね」

岡部「本当に“機関”が存在していたとは……」ブツブツ

古泉「なにか?」

岡部「あ、いやいや! なんでもない! フッ、機関のエージェントなどに屈する我がラボではないのだ。フゥーハハハ!」

キョン「IBN5100の捜索にどこまで協力できるかはわかりませんが、もしよかったらハルヒとも仲良くしてやってください。アイツ、見つけるまでは東京から離れそうにないですから」

古泉「なにせ幻のレトロPCですからね、そう易々と手に入るとは思えません。手に入らなかったとしてもお許しくださいませ」

岡部「う、うむ……。実に良い働きだな、うん」


468:2015/08/10(月) 22:12:07.67 ID:
古泉「浮かない顔ですが、なにかあったのですか?」

岡部「それがだな……。どうも俺は誰かに監視されているらしい」

キョン「機関以外に、ですか?」

古泉「ちょっ」

岡部「機関には常に監視されている。無論、易々と機密を漏らす俺ではない。やつらに流れているのはすべてフェイク情報だ」

古泉(どうやら冗談だと思ってくれたようです)

岡部「……このメールに見覚えがあるか?」スチャ

キョン(『お前を見ているぞ』……それとゼリーの画像?)

古泉「……いえ。これは機関のものではないです」

岡部「こっちは?」ピッピッ

キョン(『お前は知りすぎた』……うぇっ、なんだこりゃ。血まみれの人形の首の写真か)

古泉「機関はこのような手段を取ることはないかと」

岡部「そうか……。となると、また別の組織が俺を……」


469:2015/08/10(月) 22:13:22.96 ID:
キョン「それってもしかしてラウンダーか?」ヒソヒソ

古泉「まだ断定はできません。色んな組織が狙っていてもおかしくない。事実、この未来ガジェット研究所がタイムマシンに対して最も関係が深いのですから」ヒソヒソ


キョン「そうだ、岡部さん。阿万音さんについて驚くべきことがわかりましたよ」

岡部「バイト戦士についてだと?」

古泉「阿万音鈴羽さんはある裏組織と繋がっている、かもしれないのですが。なにか心当たりはありませんか?」

岡部「バイト戦士が? そういやアイツが、紅莉栖がSERNと繋がっている、とか言ってたが……」

キョン「セルン?」

古泉「SERN。欧州原子核研究機構ですね、素粒子物理学の研究などをしている……。しかし、それではまるでSERNが裏社会のボスのような言い方ですが」

岡部「…………いや、お前らは知らないほうがいい」

キョン「?」


470:2015/08/10(月) 22:14:49.91 ID:
岡部「そう言えばあのボディコンエロ教師は誰だったのだ? 来波アサヒとかいう、新劇に出てくる駆逐艦みたいな名前の人物は」

キョン「あの人は朝比奈さん、朝比奈みくるさんが大人になった姿です」

岡部「なに? ということは、数年後からやってきた未来人だったのか!?」

古泉「いえ、実は高校生の朝比奈さんも未来人でして、かなり遠い未来からやってきたそうです」

岡部「なんと……。だがしかし、いったいなんの目的で」

キョン「それが、うちのハルヒのせいで2006年より過去へタイムトラベルできなくなってしまったからとか」

古泉「なによりそのタイムトラベルを可能にする理論の中心に涼宮さんがいらっしゃるので保護観察をせざるを得ないのだとか」

岡部「ふーむ、なるほど。タイムマシン研究者のそばには必ず未来人の影がある法則か」


471:2015/08/10(月) 22:19:14.89 ID:
岡部「その未来人の使ってるタイムマシンを使ってIBN5100を回収できないものだろうか。もちろん、販売時期まで遡行することは不可能だろうが……」

古泉「それが、あの人たちが使ってるTPDDというタイムマシンは世界線移動ができないそうです。つまり因果操作にかなり制限がある」

古泉「それゆえにこの世界線で手に入っていないのであれば、それはほぼ手に入らないということ」

キョン「それに朝比奈さんの上司の許可がないと使わせてもらえない仕様になってるので、どこまで協力してくれるか」

岡部「そうか……」



♪♪♪



岡部「すまない。電話だ……」ピッ

キョン(心臓に悪そうな着信音だな……)


472:2015/08/10(月) 22:20:58.76 ID:
2010.08.11 (Wed) 14:21 


岡部「―――――――――――!!!」ヨロッ

キョン「お、岡部さん!?」

古泉「大丈夫ですか!?」

岡部「……。あ、あぁ、そうか、お前たちか。俺は大丈夫だ」

キョン「まさか、また過去改変が……」

岡部「いいか、時間がない。手伝ってくれ……」



岡部「阿万音鈴羽は、未来人ジョン・タイターだ……ッ!!」


473:2015/08/10(月) 22:22:56.12 ID:



--------------------------------------------------------
◇Chapter.5 朝日奈みくるのジェノグラム◇
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D 0.337187%
2010.08.11 14:21 未来ガジェット研究所




474:2015/08/10(月) 22:25:35.58 ID:
キョン(阿万音さんがジョン・タイター!? ってことは、@ちゃんのジョン・タイターはモノホンの未来人で、中身は阿万音さんだったってことか!?)

岡部「とにかく時間がない。詳しいことはすべて後で説明する。紅莉栖、マシン開発がひと段落したらラジ館に来いッ!」ダッ

紅莉栖「へ!? ちょ、ちょっと岡部ぇ!?……紅莉栖って言った。アイツ私の事紅莉栖って……」ブツブツ

キョン「あっ!……行っちまった」

古泉「……まるで、あのケータイの通話に出た途端に人が変わったかのようでしたね」

キョン「ありゃなんだ? 新手の世界改変か?」

古泉「ちょっと判断材料が少なすぎますね……。涼宮さんたちが心配です。ひとまず涼宮さんたちと合流しましょう。それが元々の目的でしたし」

キョン「あぁ、そうだな。今電話をかけよう……」ピ、ポ、パ


475:2015/08/10(月) 22:26:51.52 ID:
長門はなにやら牧瀬さんの機械いじりの片付けの手伝いがあるとかで後から集合することとなった。まぁ、長門なら大丈夫だろう。……大丈夫だって。

なぜか椎名さんと別れて池袋に向かっていたハルヒと朝比奈さんは俺からの連絡を受け、渋々秋葉原へ引き返すこととなった。IBN5100についてわかったことがあるとうそぶくことで説得に成功した。

乙女ロードとかいうところへ行くという目的を達成できずにとんぼ返りとなったハルヒは不満たらたらだった。

あとで古泉に聞いたが、この世界の池袋のサブカル事情はとんでもないことになっているらしい……。

あぁ、もしできることなら秋葉原が萌えの街であった世界線にまで戻りたい。そしたら俺はあのメイド喫茶で猫耳メイド金髪ポニーテール少女椎名まゆりとニャンニャンできるはずなのだ……!


476:2015/08/10(月) 22:28:22.15 ID:
2010.08.11 (Wed) 17:32 
秋葉原 マクディナルハンバーガー


ハルヒ「いやーっ! まゆり、かわいかったわー!」

キョン(伝説の金髪ポニーテール少女まゆりッ!)

みくる「あのぅ、長門さんは?」

古泉「長門さんなら今未来ガジェット研究所で牧瀬さんのマシン開発のお手伝いをしているそうです」

ハルヒ「あの子ってプログラム系だけじゃなくて機械系も結構得意よね」


477:2015/08/10(月) 22:29:40.92 ID:
ハルヒ「それで、IBN5100探しはどうなってるの?」

キョン「一日遊んでおいてそれか」

ハルヒ「あたしは団長よ? そしてアンタは団員その一。オーケー?」

キョン「なんでもそれで通用すると思ったら大間違いだぞ」

古泉「IBN5100ですが、実はとある重要な機能を持っているものであることが判明しました」

キョン「おまっ」

キョン(俺はてっきりIBN5100はフランス人の実業家に売られただなんだと言ってハルヒの捜索意欲をそがせるものかと思っていたが)

ハルヒ「やっぱりアレはただのレトロPCなんかじゃなかったのよ! きっとロボットが人類を支配する未来において機械側のマザーコンピュータをクラッキングするために旧式コンピュータのプログラミング言語が必要なんだわ!」

古泉「涼宮さん? 未来ガジェット研究所と約束しましたよね。発見次第、ラボに無償で提供すると」

キョン(古泉は煽り検定一級でも持ってるのか)

ハルヒ「うぐっ……。使えないヘンテコ電子レンジつかまされて、してやられたわ……」

キョン(ワニ目にしてアヒル口のハルヒである。変なところで律儀なのがまたハルヒらしい)

みくる「あくとくしょーほーは許せません!」


478:2015/08/10(月) 22:31:28.21 ID:
キョン「古泉、お前いったい何考えてるんだ」ヒソヒソ

古泉「涼宮さんにIBN5100を入手してもらって、僕たちで管理しておけばいいのですよ。岡部さんには渡したくないと強く思わせて」ヒソヒソ

キョン「そんなにうまくいくか……?」


ハルヒ「ラボに文句言いに行きましょ! あんなの不当よ! クーリングオフよ!」

ハルヒ「そもそも電子レンジで過去を変えるなんて、笑えない冗談だったんだわ。それならまだ異世界に通じるテレビのほうがゴロゴロ転がってるってもんよ!」

キョン「リコール問題がタットワの技法を通じて多世界で勃発するだろうな。まぁ、そう簡単に世界は変えられないってこった」

ハルヒ「ふん、当然でしょ。最近の日本の首相みたいにコロコロ変わったら世界のほうが混乱しちゃうわ」


479:2015/08/10(月) 22:32:40.81 ID:
ハルヒ「それで、重要な機能って?」

古泉「重要な機能があることが判明しただけで、それが何かまでは、すいません、力不足ゆえつかめませんでした」

古泉「どうやら先進各国が熾烈な諜報戦を繰り広げ、水面下で衝突が起きているようです」

ハルヒ「ほうほう……!!」キラキラ

キョン(楽し気だな)


プルルルル プルルルル


キョン「ん、長門から電話だ。ちょっと電話出るぞ?」

ハルヒ「あんた成長したわね。ちゃんとあたしに許可を取るなんて」

キョン(そういうつもりで言ったんじゃないんだけどな)

キョン「あーもしもし? 長門か?」

長門『ラボに来て』

キョン「ラボにか? どうして」

長門『岡部倫太郎がSOS団に依頼したいことがあるらしい』

キョン(去り際に言ってたアレか……)


480:2015/08/10(月) 22:34:05.12 ID:
2010.08.11 (Wed) 17:55 
未来ガジェット研究所


岡部「色々頼んでしまってすまない」

キョン「いえ、岡部さんの頼みであれば」

古泉「IBN5100を発見するまではご助力致しますよ」

キョン(よくもまあいけしゃあしゃあと)

ハルヒ「いつの間にかSOS団男子があの変態男に懐柔されているッ!? これはミステリーよ、いやSFよ!!」

キョン「落ち着け」

古泉「それで、どのような用件でしょうか」

岡部「このケータイの画像を見てくれ」スッ

キョン「ん……? これは、なにかのメダルか?」

岡部「実はな……」


481:2015/08/10(月) 22:35:53.84 ID:
岡部「なんとかしてこのピンバッジを作ったやつの正体を掴みたいんだ。おそらくそいつが阿万音鈴羽の父親だ」

岡部「他にわかっているのは、父親の二つ名が『バレル・タイター』であることくらいだ」

キョン(バレル・タイター……。ジョン・タイターの親戚か? あ、いや、阿万音さんがジョン・タイターだという岡部さんの言を信じれば実際一親等なのか)

岡部「詳しいことは言えないが、期限は二日以内。明後日には鈴羽は確実にこの街を飛び立ってしまう。手伝ってくれるか?」

ハルヒ「阿万音さんのお父さん……」

みくる「あの話って、阿万音さんのことだったんですね……ぐすっ……」

キョン(しかし、ジョン・タイターこと阿万音さんはおそらくこれから1975年へタイムトラベルし、2000年に43歳の若さで亡くなる……。これは、言わないほうがいいんだろうか)

古泉「善処します。ですが、これでは情報が少ないですね……」

キョン「どうやって探すつもりで?」

岡部「それは、こう、足でだな……」

紅莉栖「随分と地道ね。仮にも未来ガジェット研究所なんだから、もっと未来的な方法はないの?」

岡部「そんな都合のいいものはない」

キョン(未来的な方法ね……)


482:2015/08/10(月) 22:37:09.11 ID:
ハルヒ「わかったわ。阿万音さんのためにもひと肌脱いであげる」

ハルヒ「それに、宝探し第二弾って感じでワクワクするわ! 最初に発見した人には岡部倫太郎から盛大なプレゼントがあります!」

岡部「勝手に作るな! そんなものはないッ!」

紅莉栖「いいえ、脳科学的にも目標達成に対してご褒美を設置するのはドーパミンの分泌量が増えてモチベーション的な意味で良いことだわ」

岡部「お前は『自分へのご褒美~♪』とか言って仕事終わりにコンビニケーキとか買っちゃうスイーツ(笑)OLかッ!」

紅莉栖「う、うるさいな! 糖質はチロシンの吸収効率を上げるのよ、無知乙!」


483:2015/08/10(月) 22:38:12.93 ID:
ハルヒ「SOS団チームの威信にかけて、一番に見つけるわよ! さぁ、あたしたちはクジ引きで手分けして探しましょ!」

キョン「結局また不思議探索になるのか」

古泉「前も言いましたが、これこそ我らSOS団の本分かと」

キョン(たしかに阿万音さんの素性についてはもっと情報が欲しい。肉親について何かわかれば阿万音さんの渡航目的もハッキリするかもしれん)

キョン(俺たちにとって、世界にとって、敵なのか、味方なのか)


ハルヒ「決まりッ! それじゃ、古泉くん、一緒に行きましょ!」

古泉「お任せあれッ!」


キョン「……朝比奈さん、行きましょう。長門、機械いじりはまた後でな」

みくる「はぁい」

長門「わかった」

キョン(このタイミングで両手に華の班員構成になるとは、アレをしろってことだよな……)


484:2015/08/10(月) 22:39:18.34 ID:
2010.08.11 (Wed) 18:04 
芳林公園


キョン「それで長門。例のピンバッジの制作者なんだが」

長門「あのピンバッジはまだこの世界に誕生していない」

キョン(俺はなんとなくそんな気がしていた)

キョン「ということは、この時間平面の秋葉原を探し回っても絶対に見つからないってことだな」

みくる「そんなぁ……。阿万音さんがかわいそうですぅ……」

キョン「というわけでして、朝比奈さん。相談があるのですが、長門と二人で未来へ行って、長門の宇宙的パワーで制作者を探し当てて、ここに帰って来てもらっていいですか」

みくる「え……、えええっ!?」

長門「…………」

キョン(ちょっとズルい気もするが、阿万音さんについては知っておく必要がある気がするのだ。なによりハルヒがピンバッジを見つける気満々だからな。ついでに岡部さんへの恩も返そう)


485:2015/08/10(月) 22:40:27.66 ID:
みくる「えぇぇ!? 未来から許可がおりましたぁ……。なんでぇ……」

キョン(やっぱりか)

長門「……手、繋いで」

みくる「あ、はいぃ……」ドキドキ

キョン「それじゃ、よろしく頼みますよ朝比奈さん」

みくる「えっと、タイムトラベルの瞬間を見ないでくださいね? 禁則事項なので……」

キョン(まぁ、女の子二人で女子トイレの個室に入るのも変だし、俺が目をつぶってればいいだけだな)

キョン「わかってますよ。あっち向いてます」クルッ

みくる「そ、それじゃ長門さん。い、行きますね……」

長門「…………」


486:2015/08/10(月) 22:41:27.14 ID:
キョン(何やら気まずそうな沈黙を交わしていた二人の気配が忽然と消えた)

キョン「……行ったか」

キョン(そういや未来人の家族構成ってのは興味があるな)

キョン(以前朝比奈さんに質問した時は、唇に指を当て、完璧なウインクとともに『特級の禁則事項です♪』なんて言われちまったしな)

キョン「そろそろか」

キョン(62秒後、思った通りさっきの気まずそうな沈黙が俺の背後に現れた)

みくる「た、ただいま戻りましたぁ」

キョン「早かったですね」

みくる「は、早くないです! 大変だったんですよぉ! もう!」

キョン「あはは、すいません」


487:2015/08/10(月) 22:43:30.30 ID:
キョン「それで、長門。どうだった?」

長門「あのピンバッジを制作するのは未来ガジェット研究所。その前に一度制作しようとして中断するのが橋田至、ラボメンNo.003」

キョン「あぁ、あの太った……。って、は? なんだそりゃ、俺たちはタチの悪い自作自演に付き合っているというのか?」

長門「因果の環が時間的に閉じている。ウロボロス的円環」

キョン「……朝比奈さん、どういうことでしょう」

みくる「え、えっと……。わかりません」

キョン(ピンバッジの制作者は阿万音さんの父親なんだろ? それで実際の制作発案者は橋田至……)

キョン(ん? 橋田? 阿万音さんの偽名は橋田鈴……。まさかな。万が一、いや、億が一そうだとしたら突然変異体<ミュータント>として遺伝子研究が叫ばれるだろう)


488:2015/08/10(月) 22:47:16.56 ID:
長門「つまり、既定事項」

みくる「あっ……」

長門「橋田至は本日午後6時45分頃、秋葉原の露天商にピンバッジ制作を依頼する」

キョン「なんだ、じゃぁ俺たちがすることはもう無いんだな」

長門「だが、現在橋田至はその行動を取ろうとしていない。思いつきもしていない」

キョン「んん?」

長門「わたしたちが橋田至にそのような既定事項を実行するよう促す必要がある」


489:2015/08/10(月) 22:48:50.79 ID:
キョン「あー、ってことはあれか。今年の1月に朝比奈さんとやった、ハカセ君をオレンジツインテール超能力者組織から救出した作戦とか、2月にやった釘と空き缶のイタズラみたいなやつか」

長門「そう」

みくる「ひぅっ……」

キョン「それなら簡単だ。俺たちが直接会ってそうするように頼んでくればいい。見ず知らずの人でもないしな」

長門「だが橋田至の人間性として基本的に自分の意志を貫徹する揺るぎない精神を持っている。現在は阿万音鈴羽のタイムマシン修理のみに意識が行っている」

キョン「なっ」

みくる「た、たいむましん?」

長門「加えて価値観の最高位に萌え・美少女・性欲が支配的に存在している」

キョン(なんという漢だ……)

長門「この場合、三人のうち最も適切なネゴシエーターは朝比奈みくる」

みくる「あ、あたしですかぁ……ひぇぇ……」

長門「今からあなたを橋田至が存在する座標に転送する。頑張って」

みくる「えっ、ちょ、ちょっと待ってく」シュン


490:2015/08/10(月) 22:50:17.81 ID:
キョン「き、消えた……。長門よ、マジで朝比奈さんを偵察部隊が未帰還の敵地に放り込んだのか?」

長門「彼女なら大丈夫」

キョン「たしか朝比奈さんは未来から行動を規制されていて、自分では因果をいじるような現象を操作できなかったんじゃ?」

長門「今回の件に関してはその限りではない」

キョン「どうして長門にそれがわかるんだ? もしかして、朝比奈さん(大)から直々にお前に伝令があったのか?」

長門「……禁則事項」

キョン(今のは長門なりにエスプリの効いた冗談なんだろう。その一ミクロンほど小首を傾げた無表情少女の顔はどこか現状を楽しんでいるように見えた)

キョン「……事が落花狼藉に及んだら緊急脱出措置を頼むぞ」

長門「」コクッ


491:2015/08/10(月) 22:51:54.39 ID:
ラジ館8F


みくる「――――――ださいってえええ!!? ここどこですかぁ!? なんであたし飛ばされたんですかぁ!?」ピィィ

ダル「んお? おぉ誰かと思えばミクルン氏。どしたん? もしかして頑張ってる僕のために専属チアリーディングを披露してくれるとか……ハァ……ハァ……」

みくる「えっと、そのぉ、ふみゅぅ……」

ダル「んほーーーっ!! ミクルン氏がそばに居てくれるだけでやる気100倍だお!!! やばいっす、ロリでちょいエロは無敵っす!!! もうタイムマシンなんかちょちょいのちょいって直しちゃうんだからね!!! 勘違いしないでよね!!!」

みくる「ひいっ!!!……えっ、た、タイムマシンなんですか、それ」

ダル「あれ、オカリンたちから聞いてなかったん? 今僕は阿万音氏が乗るためのタイムマシンをフェイリスたんとの一日デートのために一生懸命修理しているところなのだぜ。キリッ」

みくる「えっ、阿万音さんが、タイムマシンに……?」


492:2015/08/10(月) 22:57:39.59 ID:
みくる「そうだったんですかぁ。亡くなったお父さんに会うために2036年の未来から……。それに会えなくてもすぐ1975年に旅立たないといけないなんて……」グスッ

みくる「しかも過去にしかいけないタイムマシンなんて……。あんまりですぅ……」ヒッグ

ダル「ちょっとせつない話だよね。今オカリンたちが例のピンバッジ、もといその制作者の阿万音氏パパを探してるみたいだけど……。見つかってほしい、いや、絶対見つかるはずだお」

みくる(本当はあなたが作ることになるんですよ……。あれ、でも、っていうことはピンバッジの制作者は橋田さんで、制作者は阿万音さんのお父さんで、あれ……?)

ダル「それで、ミクルン氏は何しに来たん? ホントに僕のことを応援に? これってフラグなんじゃ……」ドキドキ

みくる「え、えっと! 橋田さんも一緒にピンバッジ探しましょう!」

ダル「うーん、ホントにそうしたいのは山々だし、僕だって阿万音氏の父さん見つけてあげたいって本気で思ってるんだけど……」

ダル「正直あと2日でこれを直しきる自信はまだ無いっつーか、僕の修理が間に合わなかったら阿万音氏がタイムトラベルできなくて元も子もないわけで、それだったら適材適所っつーか……」

みくる「橋田さんなら大丈夫です! 絶対タイムマシンを直せます!」

ダル「お、おーっ!! ゆるふわ系ロリ巨乳JKに力強く説得されたらなんかそんな気がしてきたお!! 胸アツ展開ktkr!!」


493:2015/08/10(月) 22:59:57.82 ID:
みくる「それで、あたしから提案があるんですが……」

ダル「あぁー、その提案お持ち帰りしたいぃぃぃ。あ、今のは竜宮ラナたんの名台詞だお。これ豆~」

みくる「多分、ピンバッジの制作者、つまり阿万音さんのお父さんは見つからないと思うんです……。東京は広いですから」

ダル「……ミクルン氏、意外にリアリストな件」

みくる「だから、あたしたちでピンバッジを作っちゃって、お父さんの痕跡が確かにこの2010年にあったって思わせてあげたいんです……」

ダル「あー、なるほどその手があったかー。んー、でもミクルン氏、ちょっとそれって卑怯な気が」

みくる「……卑怯なんかじゃありませんッ!!!」

ダル「うほっ」


494:2015/08/10(月) 23:02:43.28 ID:
みくる「お父さんとお母さんと離れ離れになって、会いたいときに会えなくてッ!!」

みくる「大好きだったのに、いつまでも仲良く暮らしていたかったのに……」

みくる「突然時間的過去へ行くミッションを押し付けられてッ! それをやらないと世界が危ないからってッ! どうして自分以外の人じゃなくて、自分なんだろうって!」

みくる「知ってる人が誰もいない世界に来て! 情報も規制されてて! やりたいことも限定されてて!」

みくる「さみしくて、孤独で、不安で、お父さんとお母さんに連絡を取りたくても取れなくて、生きているかも死んでいるかもわからない人の気持ちが……ッ!!」

ダル「ちょ、おちけつミクルン氏」

みくる「……ッ!! す、すみません……」グスッ

ダル「ひえーっ、ミクルン氏突然どしたん?」

ダル「……んー、でも、ミクルン氏の考えも一理ある罠。ホントに見つからなかった時は、それ、やっとくべきと思われ」

みくる「そ、それじゃぁ……!」パァ

ダル「つーかミクルン氏みたいなかわいい女の子に泣いて頼まれて断る男なんていないのだぜ。キリッ!」


495:2015/08/10(月) 23:05:45.34 ID:
2010.08.11 (Wed) 18:50 
芳林公園


みくる「ピィィィィッ!!」ドサッ

キョン「……長門よ、なんの予告も無しに空間転移を行うのは心臓に悪いと思うぞ」

長門「次回から気を付ける」

キョン「……朝比奈さん、お疲れ様でした。どうやら橋田さんのほうも無事うまくいったみたいですよ」

みくる「キョンくぅん……。こわかったですよぉ……うぇぇん……」ヒックヒック

キョン(朝比奈さんには申し訳ないが、なんとも愛くるしいお姿である)

長門「…………」

キョン「さ、俺たちのミッションもこれでコンプリートだ。ハルヒたちと合流しよう」


496:2015/08/10(月) 23:09:52.62 ID:
2010.08.11 (Wed) 23:30 
湯島某所 男子部屋


キョン(ハルヒたちと中央通りで合流したのち岡部さんと偶然鉢合わせ、ピンバッジの件に関して報告があった。つまり、橋田さんがピンバッジを作ろうとしていたので外人露天商にはピンバッジの件を聞いても無駄だ、という話だ)

キョン(この件についてはハルヒいわく)


ハルヒ『なかなか行動力のある人じゃない。嘘には二種類、人を傷つける嘘と、人を幸せにする嘘とがあるってことね。嫌いじゃないわ』


キョン(などと謎の好評価が付与されていた)


キョン「それで、古泉。結局阿万音さんの父親って誰なんだ?」

古泉「さぁ、そればかりは機関の総力を挙げてもわかりようがありません」

古泉「朝比奈さんから聞いたところによると、彼女は2036年から来たとのこと。2036年から来たということは、阿万音さんの誕生年は2017年。その父親なる人物は2010年現在において父親ではないのですから」

キョン「そりゃそうだ。こればっかりはわからんよなぁ……。長門with朝比奈さんのアイドルユニットによる未来へのライブツアーついでに調べてもらえばよかった」


497:2015/08/10(月) 23:12:04.50 ID:
古泉「今日はあの人工衛星が未来ガジェット研究所の制作した、いえ、将来的に制作するであろうタイムマシンであるという推測の裏が取れましたね」

キョン「そうだっけか?」

古泉「橋田さんが直していたのでしょう? ということは、おそらく彼に直せる構造であるということ。推測に推測を被せている状態ですが、例の電話レンジ(仮)とやらと構造が似ているのでは?」

キョン「なるほど。ってことは阿万音さんは未来ガジェット研究所側の人間ってことで決まりか」

古泉「未来のことなので今いち雲を掴むような話になってしまうのですが、もちろん、例の地下組織ラウンダーから送られたスパイだという可能性は0%ではありません」

キョン「あんな大学生サークルに張り付いて一体何の得があるんだと思っていたが、実際将来的にタイムマシン開発にこぎつけるとなると狙う理由もそれなんだろうな」

古泉「それに、朝比奈さんから聞いたように、あの人工衛星は過去にしかいけない。これが橋田鈴が1975年以降未来へ飛ばなかった最大の理由でしょう」

キョン「想像を絶する話だ……」


498:2015/08/10(月) 23:13:16.97 ID:
キョン「それで、例の掲示板を賑わせていたジョン・タイターなる人物があの阿万音さん本人だったわけだ」

古泉「未来人はジョンを名乗るのが好きなようですね。あなたと気が合うかもしれませんよ」

キョン「親父がバレル・タイターだったからという理由でタイターを名乗るのはともかくとして、どうしてそこで“ジョン”をチョイスしたんだか」

古泉「おそらくあなたと同じ理由でしょう。ありふれた名前であるというその一点では」

キョン「なぁ、2000年に来たジョン・タイターも阿万音さんだったんだろうか」

古泉「前も言いましたが、僕はその世界線での記憶が無いのでなんとも言えませんよ」


499:2015/08/10(月) 23:15:37.02 ID:
キョン「掲示板上の阿万音さんはなんて言っていたんだ?」

古泉「朝比奈さんが反応しなかったこと、また虚偽の情報が多くあったので今までまともに取り合っていませんでしたが、こちらがジョン・タイターの発言の一例になります」ペラッ



 タイムマシンはSERNによって独占されています

 一般人も企業も手に入れることはできません

 彼らは自身の利益のためだけに用いて、世界にディストピアをもたらしました

 私は未来を変えるためにやってきました

 SERNによって作られたディストピアを破壊し、ふたたび自由を手にするためです



キョン「SERNねぇ……」

古泉「SERNによってタイムマシンが独占されているということは、ジョン・タイターはSERNの作ったタイムマシンを盗んで過去へ飛んだということでしょうか。タイムマシンを利用して過去改変が可能なディストピア社会がなぜそれを見過ごしたのか」

古泉「その他、世界線の解釈についても多世界解釈の立場を取っていました。このように矛盾点が多かったので信用できなかったのですが、これが阿万音さんの作戦だったとは……」

古泉「ノイズまみれの中にほんの少しの真実を混ぜることにより、特定の人物、今回の場合リーディングシュタイナーを持っていた岡部さんを炙り出す手法だったわけです。まんまとしてやられましたよ、なかなかどうして切れ者じゃないですか」


500:2015/08/10(月) 23:17:28.18 ID:
古泉「SERNという単語、非常に気になる存在となりましたね」

キョン「牧瀬さんがSERNと繋がっている、と阿万音さんが言ってたんだったな」

古泉「SERNと未来ガジェット研究所の共通点と言えば、ブラックホールです。SERNはかつてブラックホールを作る実験をし、失敗している」

キョン「なるほど、それに対してこっちは成功している……。産業スパイ的なアレで知りたい情報ってことか」

古泉「しかし、牧瀬さんがSERNと繋がっているという点について機関として色々調べましたが特に何も発見できませんでした。彼女は物理学者ではなく脳科学者ですからね」

古泉「ちなみに父上である章一氏とも繋がりはありませんでした」

古泉「もしかしたらこれから先の未来に接点を持つ、ということかもしれませんが、その場合は同じくお手上げです。調べようがありません」

キョン「タイムトラベラーの言うことはややこしくていかんな、うん」


501:2015/08/10(月) 23:26:29.45 ID:
古泉「そしてSERNがディストピアを構築するという予言……。正直一研究機関が世界の統治機構へと変貌するなど、全く考えの及ばないことです」

キョン「まぁでもSFの定番なんじゃないか? ターミネーターだってスカイネットっていう便利ツールが世界を支配しちまうわけだし」

古泉「そう。結局、未来は何が起こるかわからないからこそ未来なのであって、今の僕たちにはどれだけ推理を重ねても想像の域を出ないのです。なぜならバタフライ効果ですべてがひっくり返される可能性がある」

キョン「なら現在より過去のことを推測すればいい。今まで名前が挙がった怪しい組織は、ラウンダーとSERNだ」

キョン「ラウンダーってのはSERNが親玉なんじゃないか?」

古泉「……いえ、やはりSERNはどこまでいっても研究機関に過ぎないはずです。可能性があるとしたら、SERNでさえも陰謀の手先に過ぎず、さらにそれを裏で扱うような世界的な組織がいなければ、そのような結果にはならないかと」

キョン「なんだそりゃ、ユダヤの陰謀論か?」

古泉「ホントにそうかもしれませんね。ですが、仮にラウンダーがSERNの産業スパイ軍団だとすると天王寺裕吾氏と橋田鈴氏が4年近く仲良く暮らしていた理由がわからない」

古泉「阿万音さんが未来ガジェット研究所側の反ディストピア組織の一員であった場合、人間関係がかなり複雑なことになってしまいます」

古泉「ラウンダーがSERNの下部組織であるという仮説に発生したこの天王寺橋田問題に関して、一番わかりがいいのは未来ガジェット研究所が将来的にSERNという支配機構の一部となる、ということ。この場合、阿万音さんはラウンダーです」

古泉「あるいは未来ガジェット研究所がディストピアを築くために目の上のたんこぶであるのがSERNであり、これを滅するよう動いていること」

キョン「つまりジョン・タイターの発言はまるっきり反対ってことか」

古泉「これらの仮説のほうが、より可能性があるかと」

キョン「あんまり信じたくないな……」


502:2015/08/10(月) 23:29:06.15 ID:
キョン「最後にアレだ。岡部さんが突然おかしくなった件について。まぁ、あの人は元々おかしいが」

古泉「それについては長門さんから情報を得ています。あのラボの奥で牧瀬さんが一心不乱にいじっていたもの。それはタイムリープマシンらしいのですよ」

キョン「タイムリープマシン? Dメール送信装置の改良版ってことだろうが、何が違うんだ?」

古泉「つまり、自分の脳内にある記憶を過去に転送できる……。物理的タイムトラベルは達成できなくとも、これならば過去に意識を送ることができます」

キョン「記憶を転送するタイムリープね……。まるで昔の長門がやってた記憶の同期みたいだな。また4年前の七夕を思い出すぜ」

古泉「まさに時をかける少女のソレですね」

キョン「それと岡部さんとどういう関係が……って、あの時、未来の岡部さんが転送されてきてたのか?」

古泉「間違いなくそうでしょう。本来持ちえない記憶を未来から持って帰ってきた、とも言えます」

キョン「Dメールに続いて、過去にしか行けないタイムマシン。そして記憶を過去に飛ばすタイムリープマシン……。ハルヒの過去改変願望もついにここまで来てしまったか」

古泉「これでより操作的に過去を改変できるようになりましたね。よかったじゃないですか」

キョン「またトンデモ世界への改変だけはよしてくれよ……」

古泉「正しい明日が来ると信じて。おやすみなさい」


503:2015/08/10(月) 23:30:09.77 ID:

‐‐‐



なあ。ハルヒ


なによ


そう遠くない未来にタイムマシンが開発されたとしてさ、その数年後のお前が今この時代に来れたとして、もし今の自分に会ったりしたら、その未来の自分が何を言うか想像できるか?


はあ?……数年後ってことは大学生になってるかしらね。で、そのあたしが今の自分に来て……か。ふぅん? たぶん、あんたって全然変わんないのねって今のあたしが逆に言ってあげると思うわ。だってあたし、2年や3年や5年で自分の信念が変わったりしない自信があるもの。でも、どうしてそんなこと訊くの?


思いついただけだ。未来の俺はどれだけ成長するだろうかなと気になってな


なら、安心しなさい。あんたはきっとずっとそのままだから。それともあんた、中学生の自分に説教できるほど精神的な成長を遂げたとでも言いたいの?




504:2015/08/10(月) 23:33:30.81 ID:



――4か月前の俺はぐうの音も出ないほど反論できなかったが、今は違う。


「人間ってやつは、時間が経つだけで変化するんだ。記憶も肉体も」


「それにハイデガーも言ってただろ? 人間は根源的に時間的存在であるってな」


「お前が変わってないんだとしたらそれは気付いてないだけだ。一つ間違いなく言えるのは、お前は色気が出てきている」


「それだけじゃない。お前は1年前から大きく様変わりしている」


「あの頃の勢いを残しつつ、だが少しずつ、確実に一歩一歩階段を上っているのは、いくら洞察力がガラパゴスゾウガメの全力疾走より鈍重だと自覚している俺にだって解るぜ」


「時間という存在がある限り、どうしたって変化するんだ。それが成長と呼べるものであるかは責任を持てないが」


「仮にお前が、俺たちの関係についてずっとそのままであってほしいと望んでいるのなら……」


「ずっとそのままを望んでいるのなら? それは、つまり、どうなるんだ……?」



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