1:2016/02/03(水) 22:26:51.13 ID:


―――事務所


李衣菜「美味しいね、福豆」ポリポリ

泰葉「ん」ポリポリ

加蓮「んむ」ポリポリ


李衣菜「食べだすと止まらないや」ポリポリ

加蓮「こう……夢中になるよね」ポリポリ

泰葉「……蟹鍋、みたいな?」ポリポリ

加蓮「それだ」ポリポリ

李衣菜「いいね。今度作ろっか」ポリポリ


ぽりぽり

  ぽりぽり……


P(もう30分くらいぽりぽりしてる)カタカタ…

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2:2016/02/03(水) 22:29:02.05 ID:

※以下ずっとポリポリ


加蓮「節分てさ」

李衣菜「うん?」

加蓮「なんで節分って言うのかな」

李衣菜「さぁ……たしかに豆っぽくないよね、名前」

泰葉「……豆っぽさってなに?」

李衣菜「……なんだろう?」

加蓮「あれでしょ、几帳面な感じ」

李衣菜「なるほど、マメね」

泰葉「……高垣楓さんリスペクト?」

加蓮「ごめん忘れて」


3:2016/02/03(水) 22:31:09.69 ID:
李衣菜「綺麗だよねぇ、高垣さん」

泰葉「うん。素敵な女性だと思う……」

加蓮「…………あのふわふわな髪の毛……」

李衣菜「ん?」

泰葉「?」


加蓮「豆投げたら、絡まって取るのめんどくさそう」

李衣菜「…………」

泰葉「…………」

加蓮「…………」


李衣菜「ディスってるよね」

泰葉「高垣さんの事務所に潰されそう」

加蓮「ひぃぃ」


4:2016/02/03(水) 22:33:18.57 ID:
李衣菜「豆ぶつけるなんて、天下の歌姫を鬼扱いとか……まずいでしょ」

泰葉「ああ……私たちのアイドル生命もここで……」

加蓮「えっ、えっ。そんなひどいこと言っちゃった?」

泰葉「週刊誌にすっぱ抜かれ……」

李衣菜「連日抗議の電話が鳴り止まず……」

加蓮「いやああああ」


李衣菜「ま、直接本人に言っても笑ってくれるだろーけど」

泰葉「むしろ喜ぶんじゃないかな。ふふ」

加蓮「だよねー」


5:2016/02/03(水) 22:35:57.03 ID:
泰葉「鬼のお面、ノリノリで付けそうよね」

加蓮「鬼なのに豆投げてきそう。酔っぱらいながら」

李衣菜「自由すぎる」

泰葉「また一緒にお仕事したいね」

李衣菜「へへ、うん。……ということで、Pさん?」

加蓮「ふふっ、よろしくねっ」

P「ん? ああ、任せとけ。……ただし、絶対失礼なことするなよ?」

「「「はーい」」」


6:2016/02/03(水) 22:37:47.72 ID:
P「あちら側にも連絡取らないとなー……さてさて、どんな企画を――」カタカタ ブツブツ


加蓮「で」

李衣菜「で?」

加蓮「節分。名前は置いといて、どうして鬼は豆ぶつけられただけで降参しちゃうわけ?」

泰葉「……たしかに」

李衣菜「貧弱だね、鬼」


7:2016/02/03(水) 22:40:07.97 ID:
加蓮「でしょ? そんなだったらもう、豆じゃなくてもいいと思わない?」

李衣菜「んじゃ、代わりになにぶつける?」

泰葉「なにがいいかな……。あ、そういえば」

加蓮「はい、岡崎さん」

泰葉「はい。……えっと、北海道では福豆じゃなくて落花生を撒くって聞いたことあるの」

李衣菜「へぇ、落花生? って、豆とほとんど変わらないじゃん」


8:2016/02/03(水) 22:42:39.14 ID:
加蓮「ふふ、ピーナッツだもんね。誰から聞いたの?」

泰葉「うん、この間一緒にお仕事した双葉杏さんに。落花生なら殻のまま拾いやすい、って理由で広まったって」

李衣菜「……それは双葉さんだからじゃない?」

加蓮「そう聞くといまいち信用が……」

泰葉「う、うーん……こういうことででたらめを言う人じゃないと思うんだけど」


9:2016/02/03(水) 22:45:08.63 ID:
李衣菜「まぁ出身地だしね」

泰葉「北国の妖精……なんて、かわいいあだ名もあるものね」

加蓮「あのスタンス、本気なのかな?」

李衣菜「じゃない? やるときはやる、ってかっこいいよね。ロックだよ」

泰葉「李衣菜もあのTシャツ着る? ふふふ」

加蓮「あは、意外と似合うんじゃない?」

李衣菜「そうかな? へへ、なら許可取らないと」


10:2016/02/03(水) 22:47:06.23 ID:
泰葉「ということでPさん」

李衣菜「双葉さんとのお仕事もお願いしますっ」

P「来ると思った。うん、いい機会だし、歳も近いんだから親睦深めるのもいいんじゃないか?」

加蓮「そだね。広げようアイドルの友情の輪♪」

李衣菜「あれ、歳近いって双葉さん……杏ちゃんっていくつだっけ?」

泰葉「17歳だって言ってたけど」

李衣菜「…………マジで?」

泰葉「うん」

加蓮「ほんとに妖精なんじゃないの……」


11:2016/02/03(水) 22:49:26.81 ID:
P「そういやあのプロダクションに知り合いいたな……名刺どこやったか」ゴソゴソ…


李衣菜「さぁ、歌姫とも妖精とも友だちになろう!」

加蓮「うーん、芸能界ってファンタジー……」

泰葉「ふふっ、不思議な世界よね。私も長いこといるけど、まだまだ知らないことあるもの」

李衣菜「そういえば、泰葉っていつから芸能界にいるの?」

加蓮「あ、それ気になってた。私、昔からテレビで見たことあったし」

泰葉「ああ、うん……どのくらいかな? 5歳のときからだったかな……」

「「え゛」」


15:2016/02/03(水) 22:52:39.14 ID:
泰葉「だから10年……11年か。そのくらい?」

李衣菜「じゅ、10年以上とか……凄まじいね」

加蓮「想像もつかないなぁ……」

泰葉「ふふ、いろんな大人のいろんな思惑を見て育ちました」

加蓮「わ、笑って話すこと?」

泰葉「笑って話せるのも、今が楽しいから。11年、芸能界にいたから……こうして2人に出会えたんだって思うの」

李衣菜「泰葉……!」

泰葉「もちろん、Pさんにも感謝してます。ふふふ♪」

P「ん? ああ……ふふ、いいさ」

李衣菜「泣ける」

加蓮「泣いた」


16:2016/02/03(水) 22:54:28.23 ID:
李衣菜「さぁさぁ泰葉、もっと福豆食べて」

加蓮「ほらほら食べて」

泰葉「た、食べてるけど。待って、そんなにいらないよ……」

李衣菜「泰葉を鬼から守れっ」ポイポイ

加蓮「泣いた赤鬼っ」ポイポイ

泰葉「それ絵本……くすっ、ありがと2人とも……♪」

李衣菜「おにはそとー!」

加蓮「やすはうちー!」

P「あー、袋から出すなよー。掃除大変だからなー?」


17:2016/02/03(水) 22:56:32.65 ID:
李衣菜「大丈夫です、直接撒いたら食べられませんし。もったいないじゃないですか」

加蓮「床も汚れないしねー」

P「ならいいけど。……というか食いすぎだろ。いくつ食べたんだよ……歳の分の10倍は行ってないか?」

泰葉「あ。……違うんです、福豆の方から口に入ってくるんです」

P「んなバカな」

加蓮「ふふっ。歳の分食べたら健康に過ごせるんだから、その10倍食べたらもっと健康になれるよ」

P「どんな理屈だよ……」


李衣菜「よし、加蓮はあと100倍食べなきゃ」

泰葉「毎日3食福豆にしなきゃ」

加蓮「言わなきゃ良かった」


18:2016/02/03(水) 22:58:53.40 ID:
李衣菜「風邪は外、だよ」

泰葉「ほら、『邪』って字、入ってるじゃない。鬼みたいなものでしょう?」

加蓮「はいはい……んもー、バカなんだから」

李衣菜「一緒にバカになろう、バカは風邪ひかないって言うしね!」

泰葉「李衣菜、うまい」

李衣菜「えへへへ」

加蓮「そんなうまくないし……ふふっ♪」


19:2016/02/03(水) 23:01:09.38 ID:
李衣菜「福豆もうまい。ぽりぽり」

加蓮「んむ。ぽりぽり」

泰葉「うん。ぽりぽり」

P(俺の分も残しといて)カタカタ…


加蓮「……なんの話してたんだっけ?」

泰葉「『なんで節分?』『鬼弱すぎじゃない?』って話?」

李衣菜「それそれ」

加蓮「『節』で『分』とは」

泰葉「んー……」

李衣菜「一小節で分ける。楽譜のことなんだよ!」

泰葉「……うん。そう」

加蓮「座布団全部持ってってー」

李衣菜「うーんきびしー」


20:2016/02/03(水) 23:03:09.04 ID:
P「……『季節を分ける』日だから、だってさ。たしかに立春の前日だな、節分は」カチカチ

加蓮「りっしゅん」

李衣菜「ヘイ、リッスン!」

泰葉「妖精がここにも」

李衣菜「ロックの妖精と呼んでくれ、べいべー」

加蓮「ぷっ」

泰葉「……ふっ」

李衣菜「だから厳しくない?」

P「立春は春の始めって意味で……聞いてる?」


21:2016/02/03(水) 23:05:08.66 ID:
李衣菜「あ、聞いてます聞いてます」

加蓮「まだ寒いのに春の始めって、変なの」

泰葉「でも、九州だとそろそろ梅が咲き始めるところもあるよ?」

加蓮「はやっ! そんな早いんだ?」

李衣菜「お、長崎県民の本領発揮?」

泰葉「ほ、本領ってわけでも……」

P「…………へぇ、長崎だと節分にクジラ料理食べるのか」カチカチ…

泰葉「あっ、小さな頃食べたことあります! 懐かしいなぁ……」

李衣菜「クジラ」

加蓮「クジラ?」


「「……クジラ!?」」


22:2016/02/03(水) 23:08:08.14 ID:
加蓮「クジラってあのクジラ? 海にいる?」

泰葉「ええ、あのクジラ。……海以外に知らないけど私」

李衣菜「クジラって……スーパーに売ってたかな」

泰葉「こっちじゃ見たことないかも。九州じゃ珍しくないの、クジラ料理は」

李衣菜「ほへー……」

加蓮「っていうかなんで節分にクジラ食べるの?」

P「大きなものを食べると縁起がいいから、だってさ。でかいにも程があるよな」

加蓮「動物の中で一番大きいよね、クジラって……豪快なんだね、九州人」


23:2016/02/03(水) 23:09:57.07 ID:
李衣菜「泰葉も豪快?」

泰葉「え、どうかな……自分じゃ分からないけど」

加蓮「がっはっは、って笑いながら手づかみでクジラを食べる泰葉」

李衣菜「ぶっふぉ」

泰葉「北条さん」

加蓮「あっはいごめんなさい」

李衣菜「んっふぐ、ぐ、くふふっふふ……!!」

泰葉「……李衣菜?」ジトッ

李衣菜「は、はい――んふっ、あははあは♪」

泰葉「もうっ!」


24:2016/02/03(水) 23:12:50.85 ID:
P「で、なんで鬼に豆が効くのかって話な」

加蓮「うんうん、それね。……んふふっ、ダメ、豪快な泰葉想像しちゃって……♪」

泰葉「…………」ペチ

加蓮「あいたっ」

P「……いいか?」

泰葉「はぁ……すみません、Pさん」

P「ふふ。……簡単に言うと、鬼の目を潰すために豆をぶつけるらしい」

李衣菜「え、えぐいですね」

泰葉「それは……退散もしますよね」

加蓮「鬼がなにしたっていうの! ……ああ悪さするんだっけ」

泰葉「セルフツッコミ……」


25:2016/02/03(水) 23:14:56.38 ID:
李衣菜「袋のまま投げてあげたら目に入らないよね」

加蓮「散らばらないし合理的……そっか、そういうことだったんだ」

泰葉「違うと思うけど……ふふ、優しいね2人とも」

李衣菜「鬼も笑顔にしてこそアイドルでしょ!」

加蓮「そうそう! みんなみんな楽しんでもらわないとねっ」

泰葉「うん、いい心がけだと思う。私も、どんな人も笑顔にしたいな……!」


加蓮「それじゃあ、ふくはーうちー♪」ポイポイ

泰葉「おにもーうちー。ふふふっ♪」ポイポイ

李衣菜「ちょ、いたいいたい!? なんで私にぶつけ、ちょっとぉ!」


P「……あはは。みんなが今年も健康でいられますように」ポリポリ…


27:2016/02/03(水) 23:17:37.53 ID:


がちゃ……


ちひろ「……だ、大丈夫ですか? 私、豆ぶつけられませんか?」ヒョコ


P「あ、ちひろさん。どこ行ってたんですか……って、なに怯えてるんです?」

ちひろ「あ、い、いえその……誰も彼も私のこと鬼だ悪魔だって、う、うぅぅ……!」グスッ

P「は? 誰ですかそんなひどいこと言う奴は。とっちめてやりますよ」

ちひろ「ぷ、ぷろでゅーさーさぁん……!」ウルウル


李衣菜「あっ、ちひろさんおかえりなさい!」

泰葉「ちひろさんもどうですか、福豆。美味しいですよ♪」

加蓮「ちひろさんの分、まだ残ってるよー。ふふっ」


ちひろ「…………み゛ん゛な゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛」ブワッ

P「きたない」



おわり


28:2016/02/03(水) 23:19:34.94 ID:
というお話だったのさ
脱線に脱線を重ねてもしっかりオチてくれるちひろさんは女神


29:2016/02/03(水) 23:20:15.86 ID:
習わしって地域によってさまざまだから調べてて楽しかった


30:2016/02/04(木) 00:41:52.45 ID:
おつ
泰葉が踊ってる幸せを噛み締める


31:2016/02/04(木) 10:36:31.32 ID:
子供の11年は長いよなあ…
だからこそ辿り着いたこの場所への想いも強いのだろう、乙


32:2016/02/04(木) 10:58:24.17 ID:
ちょっと此所のちひろさん可愛すぎんよ乙乙


33:2016/02/04(木) 22:24:14.39 ID:
やち天


34:2016/02/05(金) 11:48:06.05 ID:
あかん豪快な泰葉を想像したら笑いが止まらへん




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