1:2013/05/22(水) 22:57:48.15 ID:mTPLJMkWo

叫び声がこだまする。






アルミン「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1369231068


2:2013/05/22(水) 22:58:15.78 ID:mTPLJMkWo

アルミン・アルレルト。


聡明な頭脳、類稀なる知性を持つ彼ですら、その時が来るまで気付いていなかった。


地獄とは、いついかなる時も、そして誰の前にも、平等にその口を開いているのだと言うことを。

3:2013/05/22(水) 22:58:44.05 ID:mTPLJMkWo

アルミン「エレン、急いで! また教官に怒られるよ!」タッタッタッ

エレン「わかってるって」タッタッタッ

アルミン「そこの階段から行こう。ちょっとだけ近道になる」タッタッタッ

エレン「ああ」

アルミン(よし、このペースならなんとか間に合いそうだ。エレンってば今日は訓練前の掃除担当だってことをすっかり忘れているんだもの。そういえば――)

ズルッ

考え事をしながら階段を昇るという暴挙。

一瞬の油断。

だが、その一瞬で全ては終わっていた。

4:2013/05/22(水) 22:59:15.94 ID:mTPLJMkWo

アルミン(あ……、足を踏み外し――)

ガンッ

アルミン「あぁ!!」

誰よりも優れた彼の頭脳は、自らが階段を踏み外し、脛を段差にぶつけた、その事実を一瞬で理解した。

光よりも早く思考する。

――脛をぶつけた。

――痛みが来る。

――でも、きっとエレンが心配するな。

――そんなことで時間をとられてはエレンが遅刻をしてしまう。

――痛みを堪えてなんでもないふうを装おう。

6:2013/05/22(水) 23:00:09.80 ID:mTPLJMkWo

彼は知識として、経験として知っていた。

体をどこかにぶつければ、痛いということを。

だが、彼は知識としてしか知らなかったのだ。

脛をぶつけたときの、その痛みを――。

8:2013/05/22(水) 23:00:40.76 ID:mTPLJMkWo

アルミン「――ぁぁっ!」

アルミン「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

アルミン「うぐぅああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」


口を開けば、悲鳴が漏れる。


アルミン「っああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

アルミン「ああああああああああああああああああああああああ!!!」


呼吸をしようとしても、吸った端から悲鳴へと変わる。


アルミン「あああぁぁっ!!」

アルミン「――っああああああああああああああああああああああああ!!!」


それは、およそ人に耐えうる痛みではなかった。

9:2013/05/22(水) 23:01:12.89 ID:mTPLJMkWo

無限に続くかのような地獄の苦しみ。

アルミン「ああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」

痛みを堪えようと無意識のうちに脛を手で押さえる。

アルミン「うあっああああああああああああああああああああああっ!」

そして、それがまた痛みを呼ぶ。

アルミン「うぐっああああああああああああああああああああっ!」

その痛みは、悲鳴を止めることを許さない。

11:2013/05/22(水) 23:02:11.78 ID:mTPLJMkWo

エレン「大丈夫か、アルミン!」

駆け寄る幼馴染。

痛みに意識を占領されたアルミンは、その一言を吐くことができなかった。






《エレン、転ばないように気をつけて》

13:2013/05/22(水) 23:02:39.63 ID:mTPLJMkWo

ズルッ

一瞬の油断。

だが、その一瞬で全ては終わっていた。

エレン(あ……、足を踏み外し――)

ガンッ

エレン「――あぁぁぁああああああああああああああああああああああっっ!!!」

そう。

エレン「ああああ!! っああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

その痛みは。

エレン「うぐぅあああああああああああああああああああああああ!!!」

誰の元にも、平等にやってくるのだ。

14:2013/05/22(水) 23:03:06.75 ID:mTPLJMkWo

アルミン「ああああああああああっっあああああああああああああああああ!!!」

エレン「ぐああああああああああっっ!!!」

アルミン「うあああああああああああああああああああっっ!!!」

エレン「ああああああああああっああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

アルミン「うぐっああああああああああああああああああああっ!」

エレン「――あぁぁぁああああああああああああああああああああああっっ!!!」

16:2013/05/22(水) 23:03:44.82 ID:mTPLJMkWo

アルミンとエレンの悲鳴は無駄ではない。

アルミン「あああぁぁっ!!」

エレン「ああああっああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

アルミン「ああああああああああっっあああああああああああああああああ!!!」

エレン「ぐああああああああああっっ!!!」

アルミン「うあああああああああああああああああああっっ!!!」

エレン「ああああああああああっああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」



ミカサ「エレン!? アルミン!?」

彼らの悲鳴は一定の効力を発揮した。



彼らの幼馴染、訓練兵団第104期生最強を呼ぶことに成功したのだ。

18:2013/05/22(水) 23:04:17.80 ID:mTPLJMkWo

ミカサ「二人とも何があったの!? ――今、助ける!」

走りよるミカサ。

だが、油断は誰にでもある。

それはすなわち、104期生最強にも油断はあるということなのだ。

ミカサは忘れていた。

二人の幼馴染の身を案じるあまり、忘れていたのだ。



階段は、走っては危ないということを――。

19:2013/05/22(水) 23:04:45.74 ID:mTPLJMkWo

ズルッ

ミカサ(あ……、足を踏み外し――)

ガンッ

ミカサ「――っっ!!!」

そう。

ミカサ「つっあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

痛みとは平等なのだ。

ミカサ「あああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」

大人にも、子どもにも。

ミカサ「うあぁっうあああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」

最弱にも、そして。

ミカサ「あぁっあああああああああっっああああああぁぁぁぁぁ!!!」

最強にも。

20:2013/05/22(水) 23:05:12.69 ID:mTPLJMkWo

アルミン「ああああああああああっっあああああああああああああああああ!!!」

エレン「ぐああああああああああっっ!!!」

ミカサ「うぐっああああああああああああああああああああっ!」

アルミン「うあああああああああああああああああああっっ!!!」

エレン「ああああああああああっああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

ミカサ「――あぁぁぁああああああああああああああああああああああっっ!!!」

21:2013/05/22(水) 23:05:40.69 ID:mTPLJMkWo

アルミン「ううぅぅぅあああああああああああああああああああああああああ!!!」

エレン「ぐぅおおおああああああああああっっ!!!」

ミカサ「――ああああああああああああああああああああっ!」

アルミン「つぅおああああああああああああああっっ!!!」

エレン「あああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

ミカサ「っぁぁぁああああああああああああああああああああああっっ!!!」

22:2013/05/22(水) 23:06:08.51 ID:mTPLJMkWo

サシャ「!?」

サシャ「どうしたんですか、三人とも!?」

彼女の「本能」は語る。

あそこは危険だ、と。

近づくべきではない、と。

サシャ「――っ」

だが、彼女の「人間」は語る。

仲間を助けるべきだ、と。

サシャ「今、行きますからね!」

彼女は仲間に駆け寄る。

「本能」の声には耳を傾けなかった。




彼女はどうしようもなく、人間だったのだ。

23:2013/05/22(水) 23:06:36.85 ID:mTPLJMkWo

そして、人間であるならば、平等にやってくる。

油断と、そして、痛み。

ズルッ

サシャ(あ……、足を踏み外し――)

ガンッ

サシャ「――あああああああああああぁぁぁっっ!!!」

25:2013/05/22(水) 23:07:11.01 ID:mTPLJMkWo

彼女の行動がなんであろうと関係がなかった。

サシャ「ううぅっあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

仲間を見捨てようとしたのであっても。

サシャ「あああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」

仲間を助けようとしたのであっても。

サシャ「っっっああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」

痛みにとっては、そんなもの、どちらであっても同じなのだ。

サシャ「あぁっっっああああああぁぁぁぁぁ!!!」

痛みは、脛を打ったのであれば。






――襲うだけなのだから。

26:2013/05/22(水) 23:07:38.23 ID:mTPLJMkWo

アルミン「あああああああああああああああああああ!!!」

エレン「ぎぃあああああああああああああっっ!!!」

ミカサ「ああああ! あああああああああああっ!」

サシャ「うぐっあああああああああっっっっ!!!」

27:2013/05/22(水) 23:08:05.82 ID:mTPLJMkWo

アルミン「っいあああああああああああああああああああ!!!」

エレン「があああああああああああああっっ!!!」

ミカサ「あああああああああああああああああああああっ!」

サシャ「――あああああああああっっっあああああああああああああああっ!!!」

28:2013/05/22(水) 23:08:34.85 ID:mTPLJMkWo

ライナー「どうしたんだ!?」

ベルトルト「一体何が!?」

彼らもまた、油断した。

四人が倒れているのならば、一人が二人を助ければよいのだ、と。

自らを過信したのだ。

そして、彼らは優しかった。

その優しさゆえに、悶え苦しむ仲間をすぐにでも助けようと走り寄ったのだ。

それが、自らに悲劇を呼ぶとも知らずに。

30:2013/05/22(水) 23:09:03.25 ID:mTPLJMkWo

ズルッ

ズルッ

ライナー(あ……)

ベルトルト(足を踏み外し――)

ガンッ

ガンッ

ライナー「ぐぅおあああああああああああぁぁぁっっ!!!」

ベルトルト「ううううううっくああああああああああああああああ!!!」

31:2013/05/22(水) 23:09:36.55 ID:mTPLJMkWo

アルミン「いっあああああああああああああああああああ!!!」

エレン「ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ミカサ「つあああああああああああああああああああああっ!」

サシャ「ああああああああああああああああああああっぁぁぁぁぁ!!!」

ライナー「あぐっあああああああああああああああああああああああ」

ベルトルト「うぐぅっあああああああああああああああああ!」

32:2013/05/22(水) 23:10:07.21 ID:mTPLJMkWo

彼らにとって、長い時間、悶絶していたのは何も意味がなかったのであろうか。

いや、そうではない。

エレンが担当である掃除の時間はとっくに過ぎ去っていたが、それもこの際問題ではない。

大事なのは、もう間もなく訓練が始まる時刻になるということ。

33:2013/05/22(水) 23:10:35.32 ID:mTPLJMkWo

コニー「おい、あれ!」

ジャン「!?」

マルコ「みんなが!?」




そう、訓練が始まる時刻になれば、多くの人がここを通るのだ。

34:2013/05/22(水) 23:11:14.47 ID:mTPLJMkWo

ジャン「なにがあった!?」

彼の行動は正解だった。

状況を見て、あの場所に何かがあると判断し、遠くから声をかける。

悶絶する彼らは痛みに悲鳴をあげているようだが、命には関わるようには見えなかった。

正しき行動。

だが、彼が一つだけ間違えていたとするならば――。

コニー「ここから声をかけたってしょうがねえだろ! 助けに行くぞ!」

ぐいっ

ジャン「っ!?」

ジャンの袖を引っ張り、倒れる仲間達に向かって駆け出すコニー。

続くマルコ。



そう、ジャンが間違えていたとするのならば。




それは、バカと一緒に行動をしていた、その一点に尽きるのだ。

36:2013/05/22(水) 23:11:42.48 ID:mTPLJMkWo

ジャン「おい、引っ張るなよ! あぶねえだろうが!」

コニー「そんなこと言ってる場合かよ――、あ」

ズルッ

ズルッ

コニー(あ……)

ジャン(足を踏み外し――)

ガンッ

ガンッ

37:2013/05/22(水) 23:12:19.22 ID:mTPLJMkWo

不幸なのは誰か。

そう問われれば、マルコである、そう答えざるを得ない。

彼は慎重にコニーとジャンの後に続いていた。

だが、少しだけ、本当に少しだけ、前で転んだ二人を避けきれず、階段を踏み外したのだ。

それだけで、脛を段差に捧げるには十分だった。

ズルッ

マルコ(あ……、足を踏み外し――)

ガンッ

38:2013/05/22(水) 23:12:46.17 ID:mTPLJMkWo

ジャン「――ああああああああああああああああああああああ!!!」



コニー「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!」



マルコ「んぐっ――あああああああああああぁぁぁっっ!!!」

39:2013/05/22(水) 23:13:23.50 ID:mTPLJMkWo

アルミン「あああああああああああああああああああああ!!!」

エレン「あああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

ミカサ「ううあああああああああああああああああああっ!」

サシャ「いっあああああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!」

ライナー「ああああぐぅぎあああああああああああああああ!!!」

ベルトルト「あああああああああああああああああ!」

ジャン「ががぁああああああああああああああああああああ!!!」

コニー「ああああっっああああああああああああああああ!!」

マルコ「うぐああああああああああぁぁぁっっ!!!」

40:2013/05/22(水) 23:13:51.39 ID:mTPLJMkWo

アルミン「いっつぅあああああああああああああああああああああ!!!」

エレン「がぁぁぁあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

ミカサ「――っっああああああああああああああああああっ!」

サシャ「ああああああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!」

ライナー「ぐぁああああああああああああああああ!!!」

ベルトルト「ぎぃあああああああああああああああああ!!!」

ジャン「ああああああああああああああああああああっぁぁぁぁぁ!!!」

コニー「ああああああああああああああああああああ!!」

マルコ「がっぐっああああああああああぁぁぁっっ!!!」

41:2013/05/22(水) 23:14:30.33 ID:mTPLJMkWo

――この悶絶の果てに何があるのか。



クリスタ「みんなが!?」

ユミル「……放っときなよ。遊んでるだけさ」



――それは誰にもわからない。



クリスタ「そうなの?」

ユミル「ああ。邪魔しないように訓練場にはあっちから行こう」



――わかっているのは、掃除当番をサボったエレンが罰を受けること。


――そして、訓練に遅刻する九人が罰を受けること。


――それだけなのだ。

42:2013/05/22(水) 23:15:18.73 ID:mTPLJMkWo

最後に彼らを目撃した人物、アニは呟く――。





アニ「……バカか、お前ら」





だが、その呟きは彼らの耳には届かない。


彼ら自身の悲鳴が、全てを埋め尽くしてしまうのだから――。

43:2013/05/22(水) 23:16:18.65 ID:mTPLJMkWo

アルミン「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

エレン「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

ミカサ「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

サシャ「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

ライナー「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

ベルトルト「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

ジャン「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

コニー「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

マルコ「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」




――この世界に、救いはあるのか。



それは、誰にもわからない――。





終わり

46:2013/05/22(水) 23:28:27.34 ID:mTPLJMkWo

仄暗い雰囲気のSSを書こうとしたらこうなった。

皆も脛には気をつけてください。

47:2013/05/22(水) 23:30:13.10 ID:gmdSAciJ0

アニメで実際に声入るの想像してわろたwww

SS速報VIPに投稿されたスレッドの紹介です。
元スレ:
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1369231068/

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