1:2016/11/25(金) 06:32:24.93 ID:u/An8gSe0




提督「箱?」

雪風「これです!倉庫を整理してるときに、雪風が見つけました!」

提督「おぉ……たしかに」

提督「なんだかいかにもって感じの、古めかしいデザインの箱だぁ」

雪風「えっへん!」





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2:2016/11/25(金) 06:33:06.45 ID:u/An8gSe0




提督「こりゃおそらく、そうとう昔の鎮守府で使われていた無線機だな」

雪風「無線機?この変な箱がですか?」

提督「うん、たしか……そうだったと思うが」

雪風「へぇ〜!」


雪風「……あ、そうだ!」

雪風「しれぇ!」






3:2016/11/25(金) 06:33:54.05 ID:u/An8gSe0




雪風「もしよければコレ、雪風が頂いてもいいですか?」

提督「あぁ、とっくの昔に使われなくなったものだし、別にかまわんが……」

雪風「ありがとうございますっ!」

雪風「これが“れとろ感”ってやつですね!雪風、なんだか気に入っちゃいました!」


提督「でも……もう壊れてると思うぞ、これ」

雪風「えっ、そうなんですか!?」

提督「イヤ、露骨にがっかりするなよ……当たり前だろ?」

雪風「しゅん……」






4:2016/11/25(金) 06:34:48.38 ID:u/An8gSe0




提督「とにかく、今日はもう遅い」

提督「明日は朝から鎮守府の一般公開もあるからな」

提督「いつもみたいに菓子食って夜更かししてないで、さっさと寝ちまいなよ」

雪風「うぅ〜……」



……
…………
………………



ネロネロネロ ミナ床トッテ……


雪風「フタヒトサンマル……消灯時間……」

雪風「お菓子よし、懐中電灯よしっ……」


雪風「ごめんなさいしれぇ!夜戦、開始します!」






5:2016/11/25(金) 06:35:30.19 ID:u/An8gSe0




雪風「しれぇはああ言ってましたけど」

雪風「後生大事、物を大切にすれば……」

雪風「この無線機だってきっと、使えるようになるはずです!」


雪風「今日は夜空が変な曇り方をしているので、あまりいい電波は届かないかもしれませんが……」

雪風「ふだんの演習用の無線機と、これの配線は取り換え済み!」

雪風「あとは適当な“しゅーはすー”に合わせて、雪風がいつもの要領で使ってあげれば……!」






6:2016/11/25(金) 06:36:19.58 ID:u/An8gSe0




ガチャ


雪風「えっと、昔のものはこうして使うのかな?」


雪風「えー、“しーきゅーしきゅー”!」

雪風「こちら、雪風です!」

雪風「どなたか応答を、どうぞ!」



シーン……



雪風「やっぱり、だめですよね……」






7:2016/11/25(金) 06:37:00.41 ID:u/An8gSe0




雪風「うんともすんとも言いません……」

雪風「いくらなんでも、壊れちゃったものはどうしようもありませんよね」

雪風「はぁ……」






『……ザ……ッ……』






8:2016/11/25(金) 06:37:46.74 ID:u/An8gSe0




雪風「この無線機でもし、どこかの知らない人とお話ができたら」

雪風「すっごく素敵だと思ったのに……」



『……ザッ……ザ……』



雪風「……でも、仕方ありませんねっ」

雪風「今夜はホゲモンでもしながらお菓子を食べて、早めに寝まし……」



『……!……ザッ……!』






9:2016/11/25(金) 06:38:36.41 ID:u/An8gSe0




『……イC…………ハイC.ヒト……ハイ……ト……!』



雪風「へ?」



『……応答…………ぞ!……をど……ぞ!』



雪風「きゃっ!」






10:2016/11/25(金) 06:39:18.98 ID:u/An8gSe0




雪風「やりました!誰かと繋がったみたいです!」



『……気の……だっ……?』

『たし……我々宛て……波を受信……たと思っ……なぁ……』



雪風「え、ええ、えーと!こ、こちらは“じゅりえっと”、“つー”、“けべっく”――」

雪風「――です、どうぞ!」






11:2016/11/25(金) 06:40:02.24 ID:u/An8gSe0




『!?』

『ほ……!ホホ、C、タナ……ゼロ、フタ、ロク――』

『ホネ、お……女の子が……を使用し……るのか!?』

『固有略符……聞い……とのない……だが、日本から……か?』

『何に……も驚きだ……ど、……ぞ』



雪風(わぁ……!なんだか、ワクワクしてきちゃいました!)

雪風(でも、雑音がひどくてなんだか聞き取りにくいですねっ)






12:2016/11/25(金) 06:40:57.85 ID:u/An8gSe0




雪風「えぇーと、そうです!こちらは日本です!」

雪風「何故でしょう、お返事がすごく遅れて聞こえてきますね!どうぞ!」



『そうか、や……内地か!こ……現在、徳山…………田尻沖』

『内地から……う離れて……ないからな』

『同様の……で混線し……るものと思われ……、どうぞ』



雪風「沖?」

雪風(もしかすると……この方は漁師さんか何かでしょうか?)






13:2016/11/25(金) 06:41:26.77 ID:u/An8gSe0




雪風「そうですか、分かりました!」

雪風「こうして知らない方と無線をするのは初めてですが、よろしくお願いしますね!どうぞ!」



『少々感……よろしくない……だが、こちらで送信調整を試み……よう』

『どうせ、これは最……宴の後の夢……だからな』

『……前に子供……を聞けて安心し……、よろ……頼む、どうぞ』



雪風「?」

雪風(言っていることがよく分かりません……)

雪風(心なしか、お酒で酔っぱらっているみたいです!)






14:2016/11/25(金) 06:42:18.21 ID:u/An8gSe0




雪風(えーと、何を話しましょう……えっと……)

雪風(……あ、そうだ!)

雪風「宴ってことは、何か“おめでたいこと”があったのでしょうか?どうぞ!」



『…………』

『……あぁ……うだな』






15:2016/11/25(金) 06:42:54.08 ID:u/An8gSe0




『幾度となく……を生き……たこのフネとて、生……帰れは……いだろうが』

『お国の……、陛下や……のため、この身を……る』

『これほど……たいことは、他……ないだろうな』



雪風(な、なんだか分かりませんが……)

雪風(とても落ち込んでいる……ようですね)

雪風(雪風のせいでしょうか?どうにかして元気づけてあげなきゃ……!)

雪風(なにか、明るい話題を!)






16:2016/11/25(金) 06:43:28.23 ID:u/An8gSe0




雪風「そ、そういえば今度、○○に新しい大きなスーパー銭湯ができるそうですね!」

雪風「しれぇが今度、皆で行って来たらどうだって言ってくれています!とても楽しみです!」

雪風「あなたも、お風呂は好きですか?どうぞ!」



『……えっ』

『……し……しれぇ?』



雪風(……あっ)

雪風(司令なんて言葉を使ったら、私が艦娘だってバレてしまいますね!)

雪風(“きみつほご”の関係で、これはよくありません!)






17:2016/11/25(金) 06:43:55.76 ID:u/An8gSe0




雪風「ゴホン!」

雪風「し、紫麗さんです!親戚のおじさんのなまえです!どうぞ!」



『そ、……か』

『スーパ……湯という言……ど聞いたこ……無いが、やはり入浴施……のか』

『そ……一体、どのよう……ころなのだ?どうぞ』



雪風(スーパー銭湯を知らないなんて、珍しい方ですね!)

雪風「えーと、そうですねー!」

雪風「とても大きなお風呂があって、その他にもサウナとか泡の出るお風呂とかがあって!」

雪風「お風呂あがりに美味しいコーヒー牛乳が飲めるようなところです!どうぞ!」



『……』






18:2016/11/25(金) 06:44:45.43 ID:u/An8gSe0




『あははっ、やは……れは夢なの……っ』

『そ……うな贅の限……尽くした施……ど、今の疲……た日本にあるは……ない』



雪風(えっ?)



『だが……し本当にそ……施設があ……す……らば』

『海水風……限ら……真水で過ごす我……とって、……も羨ま……話』

『是非と……行っ……たいものだ』



雪風(うぅ……やはり、何か大変なお仕事をされているようですね)






19:2016/11/25(金) 06:45:50.77 ID:u/An8gSe0




『だが、我とて飯だけ……良い……のを食べ……るぞ』

『先刻の宴に至っ……冷酒も飲めたし』

『コンドビーフ……久方……の白米な……平らげ……だ』

『あれは、ありっ……の贅沢だった』

『かつて、飯にあ……きたくて……に志願した時代……い出すよ、どうぞ』



雪風「へぇ〜っ、コンビーフですか!」

雪風「あれ、おいしいですよね!」

雪風「意外と白米ともよく合いますしね!どうぞ!」


雪風(こういう話をしていると、なんだかおなかが空いてきました!)

雪風(お菓子を開けちゃいましょう!)





20:2016/11/25(金) 06:46:52.27 ID:u/An8gSe0




『……ははは』

『そうだ、やはり君は……夢の世……住人なのか……れぬな』

『そ……、そうか』

『どうぞ』



雪風「モグモグモグ……ふぇ」






21:2016/11/25(金) 06:47:26.60 ID:u/An8gSe0




雪風「モグモグ……すみません!」

雪風「ちょっとモグモグ……待って下さいモグ……どうぞ!」



『???』

『な、……を食っ……るのだ?』



雪風「はい、マカロンです!」

雪風「最近発売されたばかりのやつです!美味しいです、どうぞ!」






22:2016/11/25(金) 06:47:57.72 ID:u/An8gSe0




『!?』

『マ……ンだと、な……なんとい……とだ』

『……でも士官しか食べ……ないよう……ロモノを、女の子が……!』



雪風(しかん?)






23:2016/11/25(金) 06:50:51.06 ID:u/An8gSe0




『……はは、はははは……!』



雪風(う、うぅ……)

雪風(お話し中にお菓子を食べたのが、やっぱり良くなかったのでしょうか)


雪風「あ、あの……」

雪風「もし、お気に障るようなことをしたのでしたら……その、ごめんなさいっ」






24:2016/11/25(金) 06:51:24.44 ID:u/An8gSe0




『あはは……イヤ、怒ってなん……ないさ』

『それ……も、私はと……素晴らしい夢……見ているのだ』

『なん……とて……良い気分だ』



雪風「??」






25:2016/11/25(金) 06:52:12.66 ID:u/An8gSe0




『この夢は、我々帝……軍の皆……夢見た……理想……!』

『内地……る国民が飢えに苦し……となく、満足……活を送っ……る』

『我々が果た……とのでき……った、理想の日本……姿……っ』


『坊ノ岬……特攻……かう前に、こうい……夢が見られた……うことは』

『幾多……場を惨めに……生き延びた……フネも、やはり最後を迎え……だろう』

『ようやく、先に逝……仲間に会……る』



雪風「え、えっと……?」






26:2016/11/25(金) 06:52:49.67 ID:u/An8gSe0




『ありが……、夢……界の君……!』

『私は戦……散る前……素晴らしい夢を見るこ……でき……!』



雪風「あ、あのっ」






27:2016/11/25(金) 06:53:36.64 ID:u/An8gSe0




雪風「先程からなんだか夢、夢とおっしゃられていますけど……」

雪風「これは夢なんかじゃありませんっ」



『!?』



雪風「皆でお風呂に入れるのも」

雪風「ご飯がおいしく食べられるのも」

雪風「そして今、こうやってお話しているのも……」

雪風「全部、本当のことなんです!」



『な……!』






28:2016/11/25(金) 06:54:06.11 ID:u/An8gSe0




『まさか……』



雪風「……」



『……』

『……ひとつ、聞いて……ろしいか、どうぞ』



雪風「は、はいっ!どうぞ!」






29:2016/11/25(金) 06:54:42.55 ID:u/An8gSe0




『ついさっきまで、三田尻……甲板……らは雲一つな……綺麗な夕焼……見えた』

『君のいる場……らは、空に何……える?』



雪風(三田尻のあとが、よく聞こえませんでしたっ)

雪風「お、お空ですか?えーと、そうですね!」

雪風「こちらは雲に覆われた、どんよりとした夜空が……」

雪風「……あっ、雲が切れて、綺麗なお月様が見えるようになりました!どうぞ!」






30:2016/11/25(金) 06:55:12.97 ID:u/An8gSe0




『……そうか』

『……あは、あはははっ!』



雪風(よ、よく笑う人ですね……)






31:2016/11/25(金) 06:55:55.36 ID:u/An8gSe0




『あぁ……マナイ!』

『少……おかしくてね!』

『なんだか、さっきま……を覚悟してい……分が馬鹿馬……くなったのだよ』



雪風「え?」



『……そうか、そ……話を聞いちゃ、まだ当分死……いな』

『内地に残……家族を連……、そのスーパー銭湯とや……も行ってみ……し』

『マカ……も食べさせ……りたいなぁ』






32:2016/11/25(金) 06:56:48.82 ID:u/An8gSe0




『あり……う君、私にも勇気が湧い……たよ』

『本当に、……がとう』



雪風「はい!なんだかよく分かりませんが!」

雪風「元気になってもらえたのでしたら、“雪風”も嬉しいです!どうぞ!」



『雪……風……!』

『ははっ、本当に奇……因果だな!』






33:2016/11/25(金) 06:57:42.01 ID:u/An8gSe0




『君の話……、艦の皆にも話……みよう』

『……と、……な勇気……られるは……だ』

『こ……夢でない……証とし……いつか……君に会……たい……だ』



雪風「あわわっ、電波が……」



『あ……こち……よ……聞……なく……』

『ここ……お別……な』



雪風「うぅ〜っ、もっとお話をしたかったですが、しかたありませんね!」






34:2016/11/25(金) 06:58:30.17 ID:u/An8gSe0




『こち……“雪…”より、“…風”……へ』

『君た……未来……幸あれ……!』

『さ……な……』



雪風「はい!そちらの皆さんも、幸運を!」

雪風「さようなら!」





35:2016/11/25(金) 06:59:00.60 ID:u/An8gSe0





『……ザザッ……』

『プツン』







36:2016/11/25(金) 06:59:34.78 ID:u/An8gSe0




シーン……


雪風「何も聞こえなくなりました……」

雪風「……不思議な方でしたが」

雪風「お話はとても楽しかったです!」

雪風「また、どこかで会えるといいですねっ」






37:2016/11/25(金) 07:00:04.86 ID:u/An8gSe0




雪風「ふわぁ……それにしても、眠くなっちゃいました……」

雪風「ふにゃ……おやすみ……なさい……」



……
…………
………………



提督「……」

提督「ゆーきーかーぜー!」

雪風「ひゃっ!」






38:2016/11/25(金) 07:00:54.64 ID:u/An8gSe0




提督「随分と長く、気持ちよく眠っていたようだねぇ?」

雪風「うぅ……」

提督「こんな日に寝坊とは、だからあれほど夜更かしをするなと」

雪風「ご、ごめんなさい……」

提督「まったくもー……」



提督「……それよりさっきからさぁ、おもしろいお客さんが来てるんだよ」

雪風「へ?」






39:2016/11/25(金) 07:01:40.44 ID:u/An8gSe0




「なんでも、去る大戦を生き延びた駆逐艦の通信兵だったって爺さんがさ」

「最後の艦隊特攻の際に、変な無線を誰かと交わしたって話をするんだよ」

「へぇ〜!」


「私は忙しいから、もしよかったら相手してやってくれよ」

「はい!分かりました!」



fin






40:2016/11/25(金) 07:03:00.73 ID:u/An8gSe0

本作に出てくる無線知識はすべてハッタリです、ごめんなさい!

ここまで読んで下さった方、楽しく書かせていただきありがとうございました!




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