4:2015/03/12(木) 22:52:09.31 ID:Zp4b4d7lO

須賀京太郎にとって東京という土地は、憧れと、驚きと、そして若干の嫌悪を抱かせる場所であった



長い期間開かれるインターハイ。その最中選手たちはずっと麻雀に明け暮れるのかというと、決してそうではない。
地方から集まった生徒たちは高いビルにはしゃいだり、迷宮のごとき駅の内部に辟易したり、たまに漂う奇妙な異臭に鼻をつまむ羽目になったり、形は様々ではあるがエンジョイしているものが多い。
特に試合に出る選手たちは息抜きという名目で遊びまわるものも多いようだ。

そんななか、須賀京太郎は麻雀に明け暮れていた。

「……ぉ、ツモ。500.1000」

「あちゃ、逃げ切られたか……」

「ふぅ、危なかった」

僅差で逃げ切った京太郎は手元のスコアシートに対局の結果をサラサラと記し、手持ちのカバンに押し込んだ。

「いやぁ、結構やるねあんた」

「いや、マジで運が良かったよ。白の暗刻が配牌で来てたからな」

上家の学生と軽く感想を交え、時計の針にちらりと目をやる。5時を少し回ったばかりである。

「ん、そろそろお暇するかな」

京太郎は席を立ち、支払いを済ませて、雀荘を後にした。


5:2015/03/12(木) 23:03:46.59 ID:Zp4b4d7lO

(東京のいいところは、ノーレートの雀荘がたくさんあるってところだな……)

地元でノーレート雀荘といえば、京太郎は一つ上の先輩染谷まこの家、roof-topしか京太郎は知らない。
しかしさすが東京というべきか、メジャーなゲームで、学生にも大流行の麻雀を行うためのノーレート雀荘はそこかしこにある。

おまけに今はインターハイの真っ只中。付き添いできた部員やら、見学に来て熱に当てられたものやらで街は溢れかえっている。
雀荘に入り席に着けばものの数分で四方が埋まり、すぐにゲームを始められる。数をこなすには絶好の環境に、京太郎は歓喜した。




始まりは、長野県で行われた大会にて、一回戦で敗北したことだった。
悔しかった。歯噛みした。しかしそれは理性で抑えられる範囲であった。
自分たちの大会もあるのに、しっかりとアドバイスをくれた先輩や同級生の面々に申し訳が立たなかった、しかしそれは顔を出せぬほどではなかった。
前よりも麻雀に費やす時間が増えた。しかしそれは可能な範囲、常識の範疇であった。



6:2015/03/12(木) 23:17:23.46 ID:Zp4b4d7lO

じわりじわりと麻雀という競技の熱が京太郎を蝕んでいたが、それはまだ仄かな光を発し始めた、熱してる最中の生鉄だった。

それに一気に火が通り、バチバチと火花を散らすほどの熱を帯びさせたものは、インターハイの第二回戦、清澄、宮守、永水、姫松の戦いだった。

痺れた、といった表現がおそらく当てはまる。京太郎は仲間たちの戦いを、対戦相手の強さを、間近に見せつけられた。
そして、その激しい戦いの最中にこんな考えが脳裏をかすめた

『俺もあんな戦いをしてみたい』



闘争心に火がついたら居ても立っても居られない。
二回戦インターハイ五日目、試合が終わった直後に京太郎は街へ飛び出した。最低限の荷物だけを持って雀荘に駆け込んだ。
そして、店から締め出される時間まで対局に夢中になった。

体の中の熱をできる限り吐いた京太郎は、しかしまだ体の内側に燻る火種に高揚しながら、呟いた。

「楽しいじゃんか」

前々から知っていた、とは言わない。
こんなに楽しいのは初めてだった。明確な目標を持った麻雀は楽しかった。

『彼女たちのように打ちたい』

その熱だけが、京太郎を変えた。


7:2015/03/12(木) 23:23:45.96 ID:Zp4b4d7lO




「明日は準決勝、か」

それなりに遠くの雀荘にいた京太郎は、ホテルまでの帰路をのんびりと歩いていた。

「……なんか、差し入れでも買ってくかな」

今頃メンバーは明日戦う対戦相手の対策会議でも開いていることだろう。甘いお菓子あたりをもって激励に行こう。
そう思った京太郎は、長野のものよりもだいぶ小さいコンビニへと入った。

「いらっしゃいませ」

店員の無機質な挨拶を聞き流し、お菓子コーナーに目を通す。

(んー……なにがいいかな?きのこたけのこは余計な争いが生まれたらやだし……アルファート……とか、あとは雨なんかもいいかもな)

適当に量のあるものを引っ掴みカゴに放り込んでゆく。そして会計に向かう前に、雑誌コーナーに立ち寄ってみた。

(お、最新号だ)

思えば今日は愛読する雑誌の発売日だったか。
これ幸いと雑誌を手に取りパラパラと京太郎は目を通す……


8:2015/03/12(木) 23:34:31.12 ID:Zp4b4d7lO

……

……アア

……アアアアア

(……ん?)

ふと、なにやら叩きつけるような音が聞こえる。思わず読みふけってしまった京太郎は顔を上げた。

そこは、ガラス越しの滝が見えた。

「……うわ、マジかよ」

雨である。土砂降りである。天地を逆さまにしたとはこのことか。
5秒で全身が濡れ鼠になるであろう夕立の中を慌ててかけてゆく人や傘をさす人、水を弾き飛ばす車が行き交っている。

「……あ、やべ」

京太郎はコンビニの入り口近くに目を向けた。そこには傘コーナーがあったが、黒いビニール傘一本しか見当たらない。

「やばやば」

雑誌を戻し、傘へと駆け寄る。この雨の中を走って帰るのは避けたいところだ。
最後の一本を手に入れようと京太郎は腕を伸ばし……



「ふぃ〜やばかったー!」

突如水の塊がコンビニの中に飛び込んできた。
なにやら黄色と白が混ざったような……水っぽい何かである。京太郎や店員が目をぱちくりするのを意にもせず、水塊はバチャバチャと体を振っている。

「えーと、タオルと、傘傘……」

思いの外かわいらしい声をしているその水はまず近くのタオルに目をつけたようで、それを手に取った。そして反対側に設置されていた傘にも目をつけてを伸ばし……

「ん?」

目があった。それはもうバッチリと

垂れ下がった濡れそぼった前髪から覗く瞳は、その惨めな惨状とは反対にキラキラと輝いていた。
さながら星のようだ、と京太郎は思案する

お互い傘に手を伸ばした姿勢で、少しの間、見つめ合う


9:2015/03/12(木) 23:41:11.56 ID:Zp4b4d7lO

「……どうぞ」

京太郎はおそらく女であろう相手に、最後の一本を譲った。流石にここで傘を取ってしまってはカッコが悪いと、男の子のプライドが叫んだのだ。

「ほんとに?ありがとっ!」

髪の隙間から覗く……多分、整った顔立ちの女はにっこりと笑うと傘を手に取り、レジへと向かった。

(仕方ない、走って帰るか……)

京太郎は苦笑し、ガラス戸の外へ目をやる。雨の勢い未だ止まず。明日風邪を引くことにならなければいいが……と考える。
相手レジで会計を済ませた後、出入り口でかるく屈伸をする。そして、コンビニの外へ……

「えー、お会計800円になります」

「はーい……あ」



「……お札、ずぶ濡れ、小銭もない」

「……申し訳ありません、その……それ、お札、ですか?」

「……わからない」



深くため息を吐いて、京太郎は再びレジへ向かった


11:2015/03/12(木) 23:51:44.92 ID:Zp4b4d7lO

「やーありがとー!助かったよ!まさか財布の中身がずぶ濡れなんて想像もしてなかった!」

タオルでゴシゴシと髪を拭う女を京太郎は……先ほどより若干引きつった苦笑で応じた。

「いやいやいいよ。傘を譲ったついでだ」

「ごめんね、お金出させちゃって。絶対返すから!」

一通りぬぐい終わった彼女はまだ湿った髪を手櫛で整える。すると……10人いたら12人が美少女というであろう美貌か姿を現した。
眉目秀麗だのなんだの様々な褒め言葉が当てはまるであろう顔立ちの中で、一際目が魅力的だった。
夏の満天の夜空のような輝きを宿すその瞳は、見るものを捉えて離さない。

「お、おう……」

部活仲間も美少女が多いが、それとは別で、明朗快活でありかつ、美術品のような美しさを持つ不思議な魅力の少女だった。

「ねぇ、名前と連絡先教えてよ。また連絡するから」

「おお、俺は須賀京太郎。今携帯出すから待ってろ」

美少女に連絡先を聞かれる、という時点で京太郎は先ほどの傘タオル計800円の支出の価値はあると思った。若干舞い上がりつつ、京太郎は懐から携帯を取り出す。

「ふーん、キョータロー、覚えたよ!私は大星淡!ちょっとまって、スマホスマホー」

濡れそぼった服を漁り、淡も携帯を取り出した。
お互いの連絡先をいざ交換しようとして……



「……携帯、つかない」

「……」

深く深く、京太郎はため息を吐いた


22:2015/03/13(金) 12:25:32.34 ID:fq9h7HpDO

結局京太郎は、口頭で電話番号を教えた後に恐ろしいほどの土砂降りの中をホテルに向かって全力疾走していた。
大星淡の二の舞にならないように、店員にビニール袋を数枚貰い、それで何重にも貴重品や買った品を包むという工夫を凝らしてある。

一緒の傘で行く〜?という淡の提案は大変、それはもう大変魅力的であったが京太郎と淡のホテルは真反対の方角にあり、とても往復する暇はなかった。

「はしるーはしるー、おれーたーちー……」

中学時代のハンドボールで鍛えた体力にはまだ余裕があるが、容赦なく降り注ぐ水が体温を奪っていき、おまけに視界も悪い。今日は麻雀ではそれならに勝てたが、厄日と言わざるを得なかった。


23:2015/03/13(金) 12:32:14.29 ID:fq9h7HpDO

ようやく宿にたどり着いた京太郎。
透明の自動ドアの向こうでずぶ濡れの京太郎を店員が少し嫌そうな顔で見たが、しまってあったタオルで体を拭い始めるとすぐ笑顔になった。

(やれやれ、水を滴るいい男にもサービスは無しか?……なーんて)

とりとめのない考えをしながら服に染み込んだ水を絞り出し、肌に張り付いた水滴その他もろもろをぬぐい落とす。

(……果たして、連絡し返してくれるかね?)

連絡先を互いに交換すればよかったが、京太郎は淡の電話番号を聞けなかった。なんと自分の番号を暗記していなかったのである。
絶対連絡すると淡は言っていたが……

(まぁ別にいいか、800円くらい)

800円で美少女に恩を売り、その報酬は夕立の中のランニング、少々どころではなく気落ちするが、表情には出さない。

「さて、冷えちまったし風呂でも入るか」

それなりにさっぱりした京太郎は、水ががぼがぼとなって気持ちの悪い靴を踏み鳴らしホテルの中へと入った。


24:2015/03/13(金) 12:39:56.21 ID:fq9h7HpDO



……

「あら、須賀くん」

「んぉ?」

大浴場近くで風呂上がりの牛乳を一気飲みしていると後ろから声をかけられた。
振り返ってみれば、我らが清澄麻雀部の部長にして策略家、竹井久の姿があった。手にはタオルの入ったカゴを抱えている。

「もうお風呂入ったの、早いわね」

「はは、ちょっと集中砲火を受けまして……そういう部長こそ」

「夕飯前にさっと入っちゃおうと思ってね」

時計を見てみると短針は6を長針は2を指している。
こうなると入浴時間は40分程度、風呂上がりのケアを含めるともっと余裕がなさそうだ。女性は長風呂と思っていた京太郎は少しポカンとする。

「いやだって、暑い部屋に五人寄り集まってあーだこーだ頭働かせたら汗かいちゃったんだもん」

少し恥ずかしそうに久は笑う。試合中は大胆不敵にして相手の裏をかき思考を引っ掻き回す、悪待ちの部長とは同一人物とは思えないほど、その仕草は可愛らしい。


25:2015/03/13(金) 12:42:29.78 ID:fq9h7HpDO

「で、どう?今日も雀荘で打ってきたんでしょう。勝てた?」

「まぁまぁ、といったところですか……その話は後の方が良さそうですけと?」

「え?あぁそうね、流石に時間が……また後で、みんなでお話ししましょ」

じゃねー、といって久は女湯へと駆け込んで行く。
軽く手を振って見送った京太郎は、瓶をカゴにつっこみ自分の部屋へと戻った。


34:2015/03/14(土) 20:58:44.96 ID:3kBwKKGgo

「……ん?」

ホテルで自分にあてがわれた、女子メンバーとは距離のある部屋。
京太郎は充電器を差し込んであった携帯電話を開いてみると3件の着信履歴があった。
三軒全部同じ番号で、約2分おきに掛け直されていてそこから電話は来ていない。

「……」

なんとなく電話をしてきた人物がわかった京太郎は、何の疑いもなくその電話番号へと電波を飛ばした。

……数回ほどのコール音が響き、その後

「はいはーい大星淡でーーーす!!」

左耳から右耳へ点棒が貫いていったような大音量である。たまらず京太郎は頭を離し顔をしかめた

「あれ?もしもーし、きょーたろーだよねー?もしもーーーし」

「聞こえてるよ、てかうるせぇ、大星淡さん」

「なんだー、聞こえてたなら返事してよー!こちとら何回も電話かけたんだからねー!」

やかましいやつである、たまったものではない。


35:2015/03/14(土) 21:08:13.80 ID:3kBwKKGgo

「はいはい申し訳ない……で、淡さん」

「気さくに淡様と呼んでくれて構わないよ」

「大星さん」

「……淡でよろしく」

「おうで、淡。何の用……ってのはわかってるけど、しっかり連絡してくれたな」

「あったりまえじゃん!恩はしっかり返すもの!仇と同じくね!」

少々喧しいものの、京太郎はこの淡のさっぱりとした物言いが嫌いではないようだ。少しだけ口角を上げて会話を交える。

「でー、コンビニで京太郎がいってたホテルの名前で調べたら場所はわかったんだけどさ、今日はこんな雨だし明日は準決勝があるから、ちょっと無理そうなんだよね。明後日まで東京にいる?」

「おう、勿論……ん?」

受け答えの後、少し考える。
明後日まで、というのは問題ない。明日の準決勝、清澄は必ず勝つだろう。万が一、いや那由多が一決勝に進出できないとしても、個人戦に出場する咲と和の付き添いでまだまだこのホテルに居座ることになる。
問題は……

「準決勝?」

「そ、準決勝。淡ちゃんは高校100年生の大将だから忙しいのだ!」

そう、準決勝である。言い草からして応援ではなく選手として出場するということであろう。そして、大将という言葉……

「白糸台の、大星淡?」

「え、今気づいたの?」


36:2015/03/14(土) 21:13:47.36 ID:3kBwKKGgo

まったくである、勉強不足である。今この瞬間まで須賀京太郎は大星淡が白糸台の大将ということまで気がつかなかった……否、そういえば特集雑誌に名前が載ってるのを見たと思うし、清澄の会議においても名前を聞いたような気がする。

「……いやすまん、そんなやつと偶然コンビニで知り合うとは思ってなかったからな」

「んー、まー、それはしょうがないかー。この私と知り合うという幸運で頭の中が全部白になっても無理はない!」

「いやそういうんじゃなくてフツーに忘れてた」

「……」

沈黙。

「ともかく!そっちの都合がいいなら明後日にはお金持って届けに行くから、電話に出られるようにしておいてね!以上!じゃねー」

そして唐突に電話は切られた。言いたいことを言われるだけ言われて終わった……いや、何度か冷たい返しをしたが

「……偶然ってあるもんだな」

携帯を再び充電器へ。京太郎は奇妙な出会いに驚きを感じながら、ホテルの食堂へと向かった。18.52分。もうすぐ夕食である。


37:2015/03/14(土) 21:59:07.06 ID:3kBwKKGgo

ここのところ毎日食べてはいるが、ホテルの飯というのはうまいものである。スコールめいた雨の中マラソンでカロリーを多めに消費した京太郎はそれを補わんとかたい腹筋を押し上げるほどに胃の中を埋め尽くした。メンバーに冷たい目で(除、タコス。むしろ京太郎より食う)見られた気がしたが、知ったことではない。

そして、食後の女子メンバーの部屋。

「さあ!明日の準決勝に向けて最終ミーティングを行うわよ!」

「……あれ、これ俺がいていいんすか?」

「いいですよ、同じメンバーなんですし、ね」

持ち込まれたホワイトボードを前に京太郎含めたメンバーがリラックスした様子で座する。
昼間、京太郎が不在の間に対策案をまとめあげていたのだろう。各々がそれを読み返し確認する作業である。

「あぁそういえば、差し入れにお菓子買ってきたんだった。どうぞ」

「なっ……ゆ、夕飯の後にチョコだなんて……京ちゃん、ひどいよ……」

買い揃えた菓子の袋を破いてくと悪鬼羅刹を見るような目で咲が睨んできた。

「いや、じゃあ食うなよ」

とか言ってると、染谷先輩は俺に頭を下げ

「わしはいただこうかの。甘いもの欲しかったとこじゃ。ありがとな京太郎」

和ははにかんで軽く会釈し

「私もいただきます。すいません須賀くん」

部長は……すでに手を伸ばし

「お〜、たけのこの里がないのはあれだけどいいチョイスねー!」

「……私も食べる」

咲も流された

「最初っからそういえばいいんだよ」

「おう私もいただくじぇ!よくやったぞ犬!」

「おめーやっぱダメだ」

「は?」


38:2015/03/14(土) 22:15:00.90 ID:3kBwKKGgo

「……イヤーッ!」

突如!ユーキ=サンは体を跳ね上げ立ち上がりキョータロ=サンにパンチ!

「グワー!」

そのまま2人はもつれ込みカラテの応酬!!血中タコスを込めた技がぶつかり合う!

「なにやってんのよあんたたち……」

「放っとけ、すぐ戻るじゃろ」

じゃれ合う二人をよそに四人はミーティングを再開。優希は完全にマウントを取り京太郎の腋を容赦なく擽る!

「おらおらー!焼き鳥にしてやるー!」

「やめ、やめっ……うははは、やめっ優希……!!」

「あぁそういえば須賀くーん」

「はーい」

「おわっ!」

部長の呼びかけに即応じた京太郎は優希をかかえて立ち上がった




39:2015/03/14(土) 22:25:45.77 ID:3kBwKKGgo

「なんすか部長」

「お、おまっ、おろせ京太郎!バカ!」

ぽこぽこと京太郎を叩く優希を肩にかかえて部長の方を向く京太郎。

「いや。実は……ちょっとお願いしたいことがあってね」

「なんすか?」

「あした、須賀くんも、会場に来てくれるわよね?」

「そりゃもちろん」

「おろせー!このー!」

全身全霊をかけて応援……と行きたいが大声を出すわけにはいかない。チームメンバーとともに控え室で選手を見守る予定である。

「そこでさ……ちょっと、頼みにくいんだけど。もう一つの準決勝の偵察に行って欲しいの」

「もう一つの?」


40:2015/03/14(土) 22:40:00.20 ID:3kBwKKGgo

もう一つの準決勝といえば、Aブロックの白糸台、阿知賀、千里山、新道寺の戦いである。

「言うまでもないけど、私たちは優勝する」

する、という物言いに京太郎は久の意志の強さを改めて感じる。この大会に、誇張なしに全てをかけているのだろう。

「そこで一つ、不安要素があるの。白糸台の大将、大星淡」

「え」

先ほど電話で話した相手の名前が上がり、少しだけ京太郎は動揺した。

「白糸台の新一年生、突如として大将として抜擢された超新星……データが少なすぎるのよ」

「うむ……探したんじゃが、奴の牌譜が本当に数えるほどしか見つからなかった」

そんなすごいやつだったのか、と今更ながら京太郎は思う。

「須賀君には、大将戦だけでいいから、向こうの試合を見てきてもらって、向こうのチームの牌譜……できればなにか癖のようなものをつかんできて欲しいの。申し訳ないけど……お願いできるかしら」

「え、あぁ、勿論です」

半ば反射的に京太郎はそれを了承した


62:2015/03/17(火) 12:31:52.06 ID:DkRnpBIgO

対策会議という名の雑談タイムは、夜9時には終了となった。明日に備えて早く寝るらしい。
自室に戻った手持ち無沙汰な京太郎は麻雀の指南書を寝そべりながら読んでいた。

「……五索の中央を削れば四索に……イヤー無理だなこれ……」

しかし、どうにも頭に入ってこない。胸の奥のモヤモヤとした感覚が邪魔をしてくるからだ。

「……偵察、ねぇ」

悩みの種は部長の頼みであった。
Aブロック準決勝の大将戦の、特に大星淡の偵察。

京太郎は思案する。部長の頼みは当然のことである、と。優勝にかける思いは、きっと誰よりも強いはず。
となれば、未知数の実力を持つ白糸台の大将、当然不安要素として警戒するはずだ。
その牌譜や打ち方を知りたがるのは当然であるし、それで自分を頼ってくれるのはありがたい。

たしかに大将戦を応援することはできなくなるが、自分は清澄が勝ち抜くことを信じて疑っていない。


では、と考える。自分は何を、もやもやうじうじとしているのか、と




63:2015/03/17(火) 12:41:48.64 ID:DkRnpBIgO

あれ、鳥が違うな……ちょいといじって正解探すから気にせんといて



答えはすぐに分かった。どうやら自分は大星淡の偵察という役目に対して罪悪感を持っているらしい。
今日知り合ったばかりで、恩を売ってやって、また会う約束をした……と、たったそれだけの、知り合い未満にも当たるほぼ他人の、しかもおそらく清澄が最後に戦うであろう対戦相手である。

牌譜をとる、打ち筋の研究、それは全く卑怯なことではない。強者とは常に対策を練られるものだ。
そう、まったくもって不自然ではないし、何も問題はない行為である。

「……でもなぁ」

にもかかわらず京太郎はチクチクと針に刺されるような罪悪感に苛まれる。
知り合いになってしまった、ということが何よりも大きいのかもしれない。
傘を譲った時や、名前を名乗った時の輝くような笑顔の淡に対して、まるでコウモリのような行為を働くことに、不快感がこみ上げてくる。

「……寝よ」

しかし、優先するのは清澄だ。部長の頼みだ。そこは譲れない。
京太郎は考えるのをやめ、指南書を放り出し、布団へと潜り込んだ。


70:2015/03/17(火) 15:05:36.50 ID:jKud/qfyO

そして、翌日である。天気は快晴、だが室内競技である麻雀には関係がない、むしろ会場の外で茹だるような暑さに辟易することになる。

「あっちぃ〜……おはよ〜ございま〜す……」

「おお京太郎……おはようさん。暑いのぉ……」

朝八時すでに気温は30度を上回っている。廊下で鉢合わせたまこもあまりの暑さにうんざりとした顔をしていた。

「部屋ん中は良かったんじゃがのう……長野と違って暑さがいやらしいわ……」

「本当ですねぇ……部長達は?」

「今頃慌てて身だしなみ整えとるわ。わしは一足早く起きて朝風呂を楽しんできた」

なんとも準備のいいことである。要領の良さは我らが部活の中で一番かもしれない。

「じゃあ、朝ごはんいただきましょうか」

「そうじゃの……」


71:2015/03/17(火) 21:07:03.65 ID:3dpeUIkgo

メンドクセーからこれ鳥でいいや、よろしく



須賀京太郎にとって東京という土地は、憧れと、驚きと、そして若干の嫌悪を抱かせる場所であった。
そして、実際に来てみるとこの嫌悪は少しばかり増すことになる。

長野に比べ、多くの店があり、遊技場があり、便利である。
しかし、長野に比べ、臭い、うるさい、蒸し暑いのである。
そんなことを、かんかん照りの日の中を歩きながら考える。

あのあと、慌てて支度をしてお淑やかさの欠片もなく朝食をかきこんだまこ以外のメンバーと共に、徒歩でも行ける会場へ徒歩を進めていた。
しかし、暑い、暑すぎる。

「あぁ……暑いですね……」

「暑いって言っちゃダメだのどちゃん……余計暑くなるじょ」

和と優希はこの僅かな距離ですでにグロッキーである。きっちりときた制服は夏服とはいえあからさまに暑い。

「な、なんでこんなむしむしするの……?」

体力のない咲などわずか300メートル足らずで既に溶けそうなほどである。

「いや、こればっかりはしょうがないじゃろ」

「すがくん、ほんとうにだいじょうぶなのぉ……?」

「え、まぁ」

まこは汗をかきこそすれど余裕があるが久はうんざり感を隠そうともしていない。いきなりの呼びかけに京太郎は火照った顔を上げて答えた。

「ハンドボール部ではこれより重い荷物持たされて山の合宿所まで行きましたから」

「うへぇ……」




75:2015/03/17(火) 21:14:39.47 ID:3dpeUIkgo

打って変わって会場の中は冷房が効いてさながら天国であった。人ごみのせいで少しばかり蒸すが、気にするほどではない。

「あ〜!極楽だー!」

「こらゆーき!荷物の整理くらい!」

「大丈夫だよ和、やっとくやっとく」

「あぁ、すいません須賀くん……」

テーブルの上に色々と詰まった袋を置き、中身を取り出し整理する。対策をまとめたノートやらタコスやら昼飯やらタコスやらエトペンやらタコスを適当に置いていくと結構な量である。

「ふぅ、これで一息……喉乾いたな。俺飲み物買いに行ってきます。」

「あ、私も行くわ。みんなついでに欲しいものあるー?」

「お、すまんの、じゃあ適当な茶を」

「あ、私もお願いします」

「コーラ!」

「ゆーき……紅茶があったらお願いします」

「はい任せといてー、須賀くん、行きましょ」

「え?はぁ……」


77:2015/03/17(火) 21:22:17.94 ID:3dpeUIkgo

流されるがまま、成り行きでなぜか部長を引き連れてドリンクコーナーへと行くことになる。

「須賀くんありがとね、暑い中荷物持ってもらっちゃってさ」

「え?一年で男手なら当たり前じゃ?お礼言われるほどじゃ」

「感謝は素直に受け取っときなさい」

ピシッと指で刺され、ドヤ顔で宣言される。人を食うような態度の部長だが、こういうところがあるから憎めない。頭一つ分背が違うこともあって動作も可愛らしい。

「お礼に私がおごってあげるわ。好きなもの頼みなさい」

「いやそんな……いや、じゃあコーヒー牛乳お願いします」

「あら、甘党?」

クスクスと笑われながら、和やかな雰囲気で自動販売機のボタンを押す。ちょうどその瞬間……

「あーーーーー!きょーたろー!」

「え?うおっ!?」

突然背中にぶつかってきた衝撃に、取り出し口から飲み物を取り出そうとしていた京太郎は頭を自販機にぶつけてしまった!鈍い音が辺りに響く。

「だ、大丈夫須賀くん!?」

「な、なんとか」


78:2015/03/17(火) 21:43:43.27 ID:3dpeUIkgo

頭を擦りながら何事かと背中の方を向いてみる。するとそこにちょうど昨日見知った顔があった。

「あ、ぶつかっちゃった?ごめん!」

「お、大星……?」

若干ふらつく足に鞭打ちまっすぐ立ち上がる。
突進を仕掛けてきた犯人淡を見下ろす形になるが、それにも動じず淡はキラキラとした笑顔で見つめてくる。

「いやーグーゼンだねー!お礼直接言いたかったんだ!京太郎はどこかの付き添い?男子大会はもう終わったよね?共学なの?」

「え、えーと、須賀くん……彼女は」

「あ、おはよー!大星淡だよ!高校100年生の白糸台の大将!昨日京太郎に助けてもらってねー、お礼を言いに」

ゴッチーン!!   と、言うなれば鴨居に頭をぶつけたような音が鳴った。京太郎には馴染み深い嫌な音である。

「いったーーーーい!!」

「淡……!いきなり走り出して人を突き飛ばすとは何を考えているか!」

「げんこつはなしでしょスミレ〜!」

「……」

「ぁー……」

完全に置いてけぼりなのは久と京太郎である。


79:2015/03/17(火) 22:05:14.67 ID:3dpeUIkgo

「な、に、を、考えているんだお前は!aブロックもうすぐ試合開始だぞ!」

「私は大将なんだからずっと後でしょー!?」

周りの目が集まってることも気にせず言い争い。その渦中の中心にいる京太郎と久は訳も分からずオロオロするばかりである。


「全員が集まってるのが相手への礼儀で常識だろが!もういい!説教は控え室で続きだ!こい!」

「あ!ちょ!ま!待ってスミレ〜!私京太郎におか」

「知らん!後で聞く!!彼氏といちゃつくのは後にしろ!」

「か!?彼氏じゃないよー!勘違いしないでよぉぉぉぉぉ……」



騒ぐだけ騒いで、二人は立ち去ってしまった。残された清澄タッグは呆然とするばかりである。

「……あー、と、帰りましょう部長、視線が痛いです」

「そ、そうね……」




110:2015/03/26(木) 12:23:06.52 ID:aQYsHvgpO

「はぁ……」

「エライ目にあったわね……」

控え室への道をたどりながら、がっくりと肩を落とす。まさか唐突なタックルを受け、さらに人混みの視線を浴びることになるとは思わなかった。

「しかし……須賀くん?さっきのは、大星淡……さん?」

「そうですね、本人も言ってましたし」

「……知り合いなの?」

小首を傾げて久が問うてくる。疑問に思うのも当然だろう、なぜ縁もゆかりもない同士であろう二人が知り合いなのか。

「実は双子ちゃんで両親の離婚に巻き込まれたとか?」

「ないです」

「親戚とか?」

「ないです」

「まさか遠距離恋愛?!」

「ない」

「……須賀くんまさか弱みを」

「ねーーですよ!!」

久の知的好奇心溢れる質問責めに簡潔な答えを返す。ここで言い淀んだらそこにつけこまれてからかわれることこの上なしだ。

「まぁジョークはともかく……一体何があったの?この数日でしょ?知り合うとしたら」

「まぁ、そうですけど……」


111:2015/03/26(木) 12:29:50.56 ID:aQYsHvgpO

京太郎は昨日起きた淡との出会いを話す。コンビニで出会ったこと、金を貸したこと、電話連絡しあったこと……

「お人好しねぇ須賀くん」

そして、第一声がこれである、しかしぐうの音も出ない

「相手がバカ素直でよかったわよ本当に、フツー連絡なんてしてこないで借りパクされるわよそんなの」

「仰る通りです……」

「どーせ相手が可愛いからカッコつけたかったんでしょう」

「いえ、一目見たときは濡れ女子かと思いました」

「……なんで貸したの?」

「気まぐれでしょうか」

「……」

呆れはてた目で見られた。善行を行ったはずなのになぜ……京太郎は唸る

「で……須賀くん。そんな知り合いの大星淡の偵察、できる?」

途端に鋭い目つきで久は問うてきた。不安要素を少しでも削りたい故か

「ええ、できます」

しかし、京太郎はきっぱりと返した。

「出会って1日2日のあいつよりみんなを優先するのは当然だし、それに……」



「さっき自販機に頭ぶつけられた恨みがありますからね」

「あなた器が大きいのか小さいのかよくわからないわ」


112:2015/03/26(木) 12:37:38.46 ID:aQYsHvgpO

……

…………

………………

「……そろそろ、か」

スマートフォンをチラリと見た京太郎は立ち上がる。Aブロックの準決勝はBブロックより少し早く始まった。そのためBブロックよりも大将戦が始まるのも早い。

「じゃあ、行ってきます」

「おお京太郎、頼むぞ」

まこに一言告げて画面を食い入るように見つめる一年娘三人に気づかれぬようコソコソと控え室を後にする。
鞄から取り出したるはノートとシャーペン

「こいつにザーッと記録してくりゃいいんだよな」

牌譜の記録は散々やった、問題はない。
少し離れた大型モニターの前、すでに多くの人が集まっているが幸い一つだけ席が空いている。

「隣失礼します」

「んー……」

ぐったりとした白髪の女生徒の隣……少しスペースを空けた に腰掛け、画面を見つめる。

ちょうどタイミングよく大将戦のサイコロが振られた頃で、席に着く四人の中に、見知った顔の大星淡もいた。

(さて……高校100年生の麻雀、見せてもらうぜ淡)

8割型麻雀への熱意、1割ほど恨みを込めて、一つは一つの挙動すら見逃すまいと、京太郎は記録を開始した。


128:2015/03/27(金) 12:30:40.01 ID:h7OgXpM3O

家庭が吹き飛んだ!!



……

終わった。
長い対局だった、京太郎は背もたれにもたれかかりぐっと背伸びをする。

結論から言うとわけがわからなかった。
大星淡の麻雀には、訳のわからない何かがあった。
およそ常人には理解できないものだ、と

手元の記録を見てみる。牌の切り出しだけを見ればまるで初心者だが、ほぼ全ての局で結果がついてきている。
他家が必ず5向聴以降から始まるだの、ダブリー連発だの、カンドラ丸乗りだの、まるでイカサマか超能力者だ。

パタリとノートを閉じ、溜息を吐く。

「こりゃ負けねーや」

確信を持って呟いた。



(さて、帰るとするか)

清澄の方はどうなったろうか、まだ試合が終わっていなければいいが……
京太郎はスッと立ち上がる。座りっぱなしだったせいで筋が伸びきっている。グッと背伸びをし……

「ん?」

足元に、何かが落ちていることに気がついた。白くてふわふわとした何か……


129:2015/03/27(金) 12:37:35.24 ID:h7OgXpM3O

「……?」

拾い上げてみるとチャリンと金属音がなる。よく見てみると鍵が付いていた。
このフワフワはキーホルダーか何かだろう。

「落し物か」

落ちていた場所的に隣の席に座った誰かのものだろう。ふと、席に着くとき隣にいた白くてフワフワの、ちょうどこのキーホルダーのような髪型の女生徒が思い浮かぶ。

「……みつけちゃったらしょーがねーな」

部長の言う通り相当にお人好しの甘ちゃんのようだ、と自虐をし、京太郎は人が流れて行く方とは逆向きに歩き出した。





歩く途中にふと思い出す。
あの女生徒、どこかで見たことがあると。

「……たしか、二回戦の先鋒の」

小瀬川白望、だっただろうか。先鋒戦を一位通過したことと、基本道理ながら、たまにしっちゃかめっちゃかな手の入れ替えをしていたはずだ。あまり意識していなかったから気が付かなかったようだ。

「……でも、だからって」

冷静に考えればこの広い会場の何処にいるかもわからない彼女にキーホルダーをどう届けに行けばいいのだろう。
んー、と唸り、考える。

「落し物センターにでも行くか、はたまた……ぁ」

と、考えているうちに『目印』を見つけた京太郎は、我ながら運がいいとそこへ走り出した。


130:2015/03/27(金) 12:43:13.31 ID:h7OgXpM3O

「すいません」

高い高いそれに声をかけるとびくりと震えたソレはくるりと振り向いた。見下ろされるなどいつぶりのことだろうか。赤い瞳に見据えられる。

「え、えー、と、私、かなー?」

威圧感のある風貌とは裏腹にオドオドと可愛らしい声で応答する彼女。大将戦である意味一番目立っていた人物はさすがに忘れなかった。

「はい、宮守の姉帯豊音さんですか?」

「そ、そうどけどー……」

なにやら怯えられているが、それは置いておく。
確認が取れたところで京太郎は懐から先ほどのキーホルダーを取り出した。

「これに見覚えありませんか?」

「あー!」

それを見た途端、長い腕を伸ばし豊音が手を……正確にはそのキーホルダーをつかんできた。流石に京太郎も怯む。

「これ……ど、どうしたの?」

「先ほど拾いました。まぁ色々と心当たりがあって、もしかしたら……と声をかけてみたんです」

「ほ、本当?ありがとー!」

「うおお!?」

両手を握られブンブンと振り回される。おそらく握手だがその威力からプロレス技に分類してもいいかも、と京太郎は思う。


140:2015/03/27(金) 15:05:45.72 ID:v0argb7lO

>>138
これ!文章おぞくてすまぬ……



「って!こーしちゃいられないってー!」

「うぉあ!?」

そして腕を掴まれたまま急に豊音は走り出した。

(はっや!?)

ハンドボール時代散々全速力で走り回った京太郎すら引きずられないのがやっとの速度、やはり体格の差なのか。

「えーとえーと……ここかなー!」

「うぉう!?」

そして突如立ち止まられ、ブレーキも間に合わず転ぶ羽目になった。豊音を巻き込まないので精一杯だ。

「ってて……」

「え?        あっ!?ご、ごめんねー、怪我は、ない?」

「は、はい、まぁ」

慌てて身体中をペタペタと触って怪我の有無を確認してくる豊音。コミュ力不足ではなく特殊なコミュ力をもっているのだなーと悟る

「ここは……え、さっきと真逆の位置に」

地図を確認すると先ほどいた会場東部分のちょうど反対にいる。結構の距離があるのだがそれだけ早かったということだろう。

「……なにしてんの?」

「うおっ」

突如背後から声がする。慌てて振り向くと、二回戦で見覚えのある連中が勢ぞろいしていた。


148:2015/03/30(月) 12:24:55.31 ID:gHq76emaO

「あー……こんにちは」

「え……あ、こんにちは」

何とも微妙なふいんき(なぜか変換できる)のなか、正面にいたやたらと背の低い子に挨拶をする。
向こうも状況を把握できないまま挨拶を返した。

「あ、みんなー、えっとねー、この人がシロの落し物を見つけてくれたんだよー!」

「……落し物?」

満面の笑みで告げる豊音に当人のシロはうねうねとした眉をひそめた。

「シロ!ワキガアマイ!」

「エイちゃんそれ違う。シロ、何落としたの?」

「わかんない……」

お団子の人、たしか……塞、だっただろうか。
モノクルが印象的な副将だったはず。

「えーと、これなんすけど」

パッパッとズボンの埃を払った京太郎は手に握ったキーホルダーを差し出す。

「アー!?」

それを見て大声をあげたのが金髪の……エイスリン、次鋒だったか。

「シロ!ヒドイ!」

「……あー」



「あぁ、君隣に座った」

「え、今そこっすか?」


149:2015/03/30(月) 12:33:18.54 ID:gHq76emaO

シロ……白望、だったかは、ひどい猫背のまま京太郎にゆったりと歩み寄りそのキーホルダーをつまみ上げる。

「……私のだってよくわかったね」

「なんか似てたので」

「え、毛玉に似てるってなに……まぁとにかくありがと」

なんとも微妙な表情のまま白望に軽く頭を下げられる。これで解決、と京太郎は五人の方を向く。

「それじゃあ、俺はこれで……」

「シロ!オロカモノ!グショー!ナマケモノ!」

ポコポコと効果音がつきそうな殴打を連発するエイスリン、それを背中で受ける白望。なんとも微笑ましい光景である。それをポカンと見つめていたら引き際を見失った。

「こら二人とも!煩い!ちゃんとお礼言って!ほら!」

「あーもう……いやなんかありがとね。あれあの子が白望にプレゼントしたものだからさ。君が見つけてくれてよかったよ」

「いやそんな」

塞にぺこりと頭を下げられた。京太郎は年上に頭を下げられたことに思わずひるむ。控え室になるべく早く戻りたいこともあり、少しばかり焦りがでた。

「ちょーお礼とかしたいんだけどー。名前とか連絡先とか教えてよー」

美人のお姉さん型に連絡先を聞かれるなど普段はあり得ないことではあるが、早く清澄の元に戻りたい。やんわりと断るタイミングを京太郎は……

「……」

「……え、なんすか?」

気がつくと白望はじーっと京太郎を、見つめていた。
その頭の中を覗き込むように、瞳を、じーっと


150:2015/03/30(月) 12:39:34.00 ID:gHq76emaO

「……お礼に、アドバイス」

「へ?」

「何かに迷ったときは、身近な大人を頼ること。それとこれ」

意味深なことを告げたのちに白望はどこからか一つ、ペロペロキャンディを取り出した。

「こいつをあげよう」

「は、はぁ……」

なにやら他の四人が顎が外れそうなほどに大口を開けてみているが、これはチャンスか。すかさず京太郎は身を翻した。

「じゃ、じゃあ俺はこれで!それでは!」

あのまま時間を浪費したら何を言われるかわかったものじゃない。注意されない程度の小走りで京太郎は駆け出した。



「……シロが、見知らぬ男にあんな風に話すなんて」

「あまつさえ、ダルがらずにアドバイスやお礼の品を送るなんて」

「ちょーちょーびっくりだよー……」

「Apocalypse……」

「ひどい言い草だ……」

白望は相変わらずだるそうに、しかしその届けられたキーホルダを大切そうにポケットにしまった。

「大切なものを届けてもらったし……ちょうど私が適任だったし」

「適任?」

「……迷い子のお世話」


176:2015/04/08(水) 21:44:25.17 ID:s1NjL3Gjo

「で、その落し物の持ち主を探して、結構遅れた、と」

「そうです」

「お人よしねぇ……」

「流石にどうかと思うのぉ」

「早く帰って来れば咲さんの大将戦見れたのに」

「ひどいよ京ちゃん」

「バーカバーカ!」

「皆さんすいませんでした。優希除く」

控え室に戻ってきたらこの有様であった。試合が終わっても待っていてくれたらしい、ありがたい話だ。

「見つかったから良かったものの……普通に大会運営の係りの人に持ってけばよかったのに」

「返す言葉もありません」

ウカツ!な行動であったことは京太郎も自覚がある、素直に頭を下げて謝った。

「まぁこの辺にしとこうかの、久。決勝進出決まったことだしな!」

「そうでしたね!みんな、本当におめでとう!」

心の底からの、祝福だ。
中堅戦までを見ていた京太郎は相手が強いことはよくわかっていた。しかし、優勝候補の一角臨海を抑え、トップで決勝進出が決まったことは正真正銘快挙である。


177:2015/04/08(水) 21:55:15.33 ID:s1NjL3Gjo

「で、須賀くんの方は首尾はどうだった?フラグ立てるのに夢中で忘れてたなんてなしよ〜?」

「ふらぐ……?」

首をかしげた京太郎であったが、とにかく偵察結果のノートを差し出した。

「ありがとう。どれどれ……おお、よく表情とかも見て観察してるわね!」

驚いた、という風に久は言うと食い入るようにノートを見つめた。他の四人もどれどれとより集まる。

「……須賀くん、他家が全員五シャンテン以降から始まったというのは」

「マジだ。二半チャン全部、そうだった」

「……信じられない」

オカルトを一切合切認めない和も思わず顔をしかめる。データに現れている以上、そこには確率を超えた何かがあることを理性でなく本能で感じたのかもしれない。

「噂で聞いたのマジだったんじゃな……」

「なんなんだじぇこいつ、ダブルリーチをほぼ毎回してるし!」

「うー、思ってたよりやばげね……」

かきつくように覗き込む優希を制しながら久は頭を抱えた。想定の数倍恐ろしい魔物であることは明確だ。ノートのデータからは表情に出やすいこと以外何も弱点がない。

「わ、私勝てるかなぁ……」

思わず、咲が弱音を吐く、それに反射的に京太郎は言葉を返した。

「絶対勝てる」


178:2015/04/08(水) 22:04:44.15 ID:s1NjL3Gjo

五人が、目を丸くして京太郎を見つめた。

「試合を見てきた俺が保証する。ぜーったいに勝てる」

「……身内贔屓?」

「客観的な判断でも同じですね。間違いなく勝てます。咲が負ける要素がありません。それよりも阿知賀の大将の方がまずいかも、そっちを注視したほうがいいです」

阿知賀の大将と聞いて和が少し反応したがスルー、京太郎は確信を持ってそう告げた。

「……そこまで信頼してくれるなら裏切れないわね。根拠は、何?」

「友情パワー?」

「……胡散臭くなったわ」

「……そりゃないよ京ちゃん」

「なんでだ!?」





会場を後にしたメンバーは旅館へ徒歩を進めていた。明日の中日を挟んでいよいよ大会も決勝戦だ。
対策会議はどんなにしてもしたりない……が、ともかく今日はもう休みたかった。すでに日が暮れかけている。

「いやー、疲れたわね、激戦だったもの……」

「肩凝ってかなわんわ」

ずいぶん軽くなった荷物を抱えて京太郎は後ろをついて行く。ふいに、進行方向の地平から上がりかけた月を見て奇妙な思考が頭をかすめた

(あいつ……淡は今どうしてるかな……)


179:2015/04/08(水) 22:17:06.29 ID:s1NjL3Gjo

ーーーーー

例によって大量のホテル飯を胃に詰め込んだ京太郎は、いざ部屋に戻りベッドに横になると教本を広げた。

明日、自分にできることはない、そして今日1日ずっと牌に触っていないせいでもはや我慢の限界だ。
明日は早くから、開店時間から雀荘に駆け込んで麻雀に明け暮れるとしようと思う。
しかしそれとは別の考えが、須賀京太郎の脳内に麻雀教本の知識を刻むことを阻害していた。

大星淡のことである。

確か明日が金を返すと約束した日であったか。しかしそっちはもはやどうでもよく、京太郎は今、淡が何を考えているのかがこの上なく気になっていた。

(あそこまで強いと、いったい普段何を考えているんだろう、戦う相手が何に見えてるんだろう……大将戦で、ある意味負けてしまってどんな気分なのだろう)

色めいた考えなど微塵もない、麻雀が強い人への疑問であった。
内にくすぶる麻雀への熱意があらぬ方向へと向かおうとしている。
無論そんなことを本人を前にして言う気はさらさらないが、なんとなく、スマートフォンを手に取り、真っ黒な画面をじっと見つめた。映るのは漆黒の中にきらめく自慢の地下の金髪である。


180:2015/04/08(水) 22:29:03.24 ID:s1NjL3Gjo

と、突然スマホが手の中で震えだした。

「お?」

番号を見てみると、登録されていない番号である、一体誰なのか……変な電話だとやだなぁと思いつつ京太郎は通話をタッチした。

『もしもーーしきょーたろーー?』

なんとも間の抜けた声が響いてきた。今朝自販機に頭突きをかます羽目になった原因、大星淡の声である。

「あん?淡か?」

『そうそう!出てくれてよかったー。昨日の電話ってホテルの公衆電話からしたからさー。今日急いで新しい携帯を買いに行ったんだ!前のやつ古かったし丁度いいかも!』

I's phone6.7の音質を聞いておどろけーと宣ってくるが、音質はこちらのスマートフォンの依存なので向こうの携帯の性能の一端も知ることができないようだ。

「そらまたご苦労さんだな」

『でしょー?親にも携帯壊して怒られてさー……あぁ、そうそう、今朝はごめんねー、あの時お金返そうと思ったんだけどさー、スミレに捕まっちゃってさー』

「スミレ……白糸台の次鋒か」

『そーそー!もー、自分は甘いもの我慢しないくせに他には厳しいんだから〜!そんなんだから体重計恐怖症になるんだよね!』

散々な言い草だと京太郎は思う。普通部下が誰かの頭を自販機にぶつけさせてる現場を見たら怒るのが当たり前だとは思うが。

「まぁそれはともかく、なんの用事だ?」

あぁそうそう、と淡は思い出したかのように、世間話を打ち切り要件を告げた。

『明日さ、どうせなら一緒に遊ばない?』


185:2015/04/08(水) 22:38:24.88 ID:s1NjL3Gjo

「明日ぁ?お前、決勝は?」

『ミーティングは今日の夜と明日の夜、それ以外はフリーなんだよねー』

なんとも余裕溢れるスケジュールである。部長が聞いたら闘志に火がつきそうだ。対抗してこちらもオールフリーにするとか言い出しかね……かねる、か。

『でさー、京太郎も麻雀やるんでしょ?私がみっちりと指導してあげてもいーんだよ?それ以外にもー!ゲーセンとかー、マンガとかー!』

「優雅なこった……てか、金は?」

『乾かした!』

「……」

Q.金は?
A.乾かした!

歴史に残る珍解答であることは間違いないであろう。
事情を知ってる京太郎以外ではお前は何を言っているんだとなること請け合いである。

『ねーいーでしょー?せっかくの機会だから他の学校の、それも他県の人!遊べるなら遊びたーい!』

「……本当に珍しいやつだなお前」

『ほえ?』

「なんでもねーよ」

ここまで人見知りしない性格なのは珍しい、東京の人は全員他人に無関心で交通事故の現場を写メる奴ばかりだと思っていた京太郎は本当に淡が東京生まれの東京育ちか疑問になってきた。


187:2015/04/08(水) 22:46:12.10 ID:s1NjL3Gjo

「わかった、付き合うよ。俺も明日は雀荘に入り浸ろうと思ってた。強い奴と戦えるならこっちからお願いしたいくらいだ」

『お、いうね!もしかして強い?』

「すごくよわい」

『えー、なにそれ口先だけ〜?口先マーン』

「やかましい。で、俺は10時頃には雀荘行きたいんだが」

『じゃあ10時頃にあのコンビニで待ち合わせしよーよ!』

「おうわかった。後でこの番号でLIMEの申請送っておくからさ、登録しといてくれ」

『はいよー!じゃあ明日ねー!』



通話が終わった。騒がしい声が途切れ、部屋の中に空虚なエアコンの音がかすかに響く。

「本当になんつーか、面白い奴だな」

一人呟く。しばらく黒くなったスマホの画面を眺めた後、それを充電器につないでまくらの傍に起き、京太郎は再び教本を読む。
先ほどまで頭の中を埋めていた余計な思考は、既に消え去っていた。


188:2015/04/08(水) 22:58:03.97 ID:s1NjL3Gjo

翌日、京太郎は六時には起きて朝風呂を堪能し、ストレッチののちに朝食をしっかりと食べた。ここで7時半。
そこから部屋で持ってきた荷物の整理及び纏めた牌譜をファイルに整理、そして近くのスーパーでメンバーはの差し入れを購入、この時点で9時、そして待ち合わせのコンビニに九時半にはついた。

この行動は別に京太郎に気合が入っていたわけではなく、差し入れの購入以外は基本的な行動であった。
そして集合時間よりも早く集まるのもハンドボール部時代の癖だ。

「少し早く来すぎたか」

私服の京太郎はクーラーの効いたコンビニ内で適当な漫画雑誌を手に取った。暇つぶしにはちょうどいい。

コンビニの外には様々な人が歩いて行く。スーツを着た如何にもなサラリーマン、無駄に化粧を重ねたおばさん、赤いジャケットにもみあげのすごい人もいれば、和服を着たちびっこも通る。

視界の端でそれを捉えながらもほとんど意識せずに漫画を読む。大して面白くもないそれでも暇はつぶせる程度には役に立つ。

しかし、視界の端にキラリと何かが光り反射的に京太郎は顔を上げた。
窓の外、以前会った時とは違う、柔らかく艶やかな金髪をたなびかせた、大星淡が窓の外からこちらを見つめていた、満面スマイルのおまけ付きだ。

すこしだけドキリとしたことを頭の奥底にしまいこみ、京太郎は漫画をしまうとてきとうなガムをひとつ買い、コンビニの外へ出た。

「おはよう京太郎!」

「おお、おはよう淡」


223:2015/04/25(土) 20:55:36.40 ID:yomGS5s7o

「おはよう京太郎!」

「おお、おはよう淡」

コンビニから出た京太郎にさっそく淡が元気いっぱいの挨拶をしてきた。
日本人離れした美貌とはミスマッチなはずのにこやかな顔だがそれがまたかわいい。美人は得である。

「おぉー……ねね、靴の裏見せて」

「は?」

「裏!」

いきなり訳のわからない要求だ。片足を上げてくいっと足首を曲げてやる。

「……あれー、スパイクないね」

「この季節にスパイク付きの靴はく奴がいるか」

「長野県民でしょ?」

「長野県民をなんだと思ってやがる」

        /   /  //  . :〃  . :iト、|:. |             ヽ    ヽ  ヽ
      乂 .′ / ,イ .:/ !   . :i| |:. |\: .                  ハ
      .′ i`ーァ′/ ! .:i |   . : | |:. |  \: .  ヽ: .  ____ i-‐ ´   .
     .′  !/ . : ′| .:| |   . : | |:. |   \: .        ̄| ̄ ̄ `ヽ:
        /i|  :|. :|  | .:| |   . : ! |:. |_,,-‐====‐\   . : :|   . :|: . i
    j〃 . :i|  :|. :|‐===┼-  | : j   -‐     \: .    . : |   . :|: . |
    /  . :i|  :{. :!  \八  . : | jノ   , -‐ __,,.⊥   . : }   . :|: . 人
   ′ . : 八  ? ≫=ミ、 . : !     ≫≦Y⌒'マハ:、  . : .′ . :|: . : .\
   i . :i    . :\{ハ 《  )i:::::::ハ\{     ″{ .)::i::::::::::}::} 》 . : /  . :/!: . \: .\
   | . :|   . :i   '. ヾ い;::::::jj         八∨乂 _;ノ:ノ  . :/  . :  |: .    : .`ー-田舎モン!
   | . :|   . :| . :| . :l'.   V辷ク            ゞ゚-‐ '  . :/   . :/ . :|: .  .
   | . :|   . :| . :| . :|ハ               /    . :/   . :/ .:.:|: .    : .
   | . :|   . :| . :| . :| :.       ,        /  . . : .′ . / . : :|: .     : : . .
   | . :|   . :| . :| . :|  :.             /  ,. : ,イ  . :/  . : 人: .       : : : . . .
   |..:i:|   . :| . :| . :|   ゝ.     、   ノ .′ // / . : : /  . :.:/  \: .\: .
   l :从  . : :| . :| . :{   / > .        { /'   / . : / . : : .:′    \: .\: .
   乂{: \. : :!\〉、:\_/   . : .:〕jッ。.     . ィV`ヽ /. :/ . . : :/       \: .\: . .
    `\ \{   \;/  . : .://{{   ` ´ | |│ ,// . : .:/             \: .\: . .

「……ガム食うか」

「食べる!」

包み紙を剥がし、一つくれてやる。なんの疑いもなく淡は口に入れた。

「……から!辛い〜!」

「田舎モンっていった罰だ」

「ひょおはほおほはは〜!!」

ペシペシと叩かれるが大して痛くない。いいザマだ。


225:2015/04/25(土) 21:05:16.97 ID:yomGS5s7o

渋い顔をした淡が落ち着くまで適当にぶらつく。ぷくーっと顔を膨らませた淡がようやく口を開いた。

「あー、辛かった」

「俺はそれくらいが好きなんだ。で、電話で話した通り、最初は雀荘でいいか?」

「んー……そだね、コテンパンにしてやるから!」

ウネウネと髪をうねらせながら不敵な笑いを浮かべる淡。どうやら辛口ガムで随分とヘソを曲げてしまったようで、本当にコテンパンにされそうだ。

「はは……手加減しないなら願ったり叶ったりだな」

「ほほー、いうねー、口先マンのくせに〜」

「そこから得るものがあるかもしれないだろ」

折れない心とか、とは続けない。負けること前提で進めるのはあまりよろしくない気がする。プライド的な意味で。

というわけで、二人は近くの適当な雀荘に入った。決勝戦前の中日なだけあり、多くの学生で溢れかえっている。

「んー……あ、卓空いてる」

「お、本当だ」


227:2015/04/25(土) 21:14:04.87 ID:yomGS5s7o

空っぽの卓で対面になるように2人は席に着いた。この様子ならすぐに残りも埋まるだろう。

「ラッキーだね!」

「あぁ、待つかと思ったんだけど……」

しばらく待っているうちに空いた席に一人、また一人とつき、四方が埋まる。ついに開幕だ。

             「回ニニO
         _--ー「T「 ̄\  /二\
        「 l L_コュ 凵  ヽ |(::::::::::)|
        L 」コー゙゙゙゙゙ ̄ ゙゙゙̄ーヽ`二´.|
  /二\,, /: : : : : : : : : : : : : : : : :ヾ\ 〆)
. |(::::::::::)レ: : : : : : : : : : : : : : : : :: : : : : ヽ>ヽ
 .ヽ`二/: : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ: : : : : : :.ヽ
. ヾ : :/: : : : : /: : : : : : : :ハ -/-ト: | 、.: : : : : : |
  `フ: : : : |: : :|ーヾ: : : : :| i/  |:/ ヾ: : : : : : :|
  |: : /: : |: : ハ: | ヽ\: :ヽ  __´   |: : : : : : ヽ
  |: :ハ: : : ヽ:| ヾ __.   ̄ ,,=≡ニ=,,. |: : |: :|: : :ヽ
   V >、ヽヾ ,,=ニ≡      /// ノ: : レ: : : : ヾヽよろしくおねがいします!
.    /: : : : :.| ´    _´___   ∠: : : : |: ルレ
.    |: :|: : : :|.///   ト--ー゙|   ,,. |: : :/レ
     |: | : : : :ヽ    ヽ _ノ_,,-i::´fヨヽ |
    レヽ: : :ト: :ド ̄ ̄日フヽ  |:::::::::::::ヾ
      ヽ_:ヾ     >::::::____::,ー 、::/ヽ
         ̄     ド:(  {   .|ベ/ ヽ
              | ヽヽ__ゝーノソ>  ト___
              |  (`ー(ー´ \. ハ::::::::ヽ
              ヽ |   ∧   ,ヘト::::::::o|ヽ
               ヽ|    トoヾ_へ\\::::| |
                ヽ_/ ヽoヽ  ,,ゝ弋コヾ|

                ─- 、 、
            ,   -───-ヽレ_
          ,  ´             `  、
        /                    \
.      , '                       丶
.    /                       ヽ
.    i       ,ィ ,ヘ                  l
    |       / !.{ ヽ \  ヽ          |
   l      ,イl| ヾ;、 \  ` ー-ゝ、_ 、      |
    i  l. i / ヾゝ  `''ー   ̄_ニ;三=ーヽ . |    |
.    ヽ ヽ!T'==-_、 `‐ `〒‐'fr;ゥj´ _j j リヽ  し1!
     \` l `'´ hタヽ    --゚‐'_  `T!´r) }   ,リ
        }. l   ̄ /j          `   リ r 'ノ    ラ
     ._.ノ  l.   ヾ:-            、_ニ1    ノよろしくお願いします
      `ー;ァ. ヽ    -ー‐一       ゞー-  ,∠ _
        ` ー ゝ、   `     r‐;-‐`''"~ ̄   |
           _,.> 、__, -‐',コ |        |
        「f´ ̄   ∠?-‐''´ | |      ,. =‐ |
        | |     |       | |    /  -='
       | |    ,  j      ,>ヽ    /_ -‐`ー─
      _,.ゝニゝ/ / `ー---‐ '´  〉〉 / '´
     ̄  ノ/ .レ'        f ,ニニン /
.       くく ./l        | |   /  / ̄ ̄ ̄

「よろしくお願いします」

「よろしくね〜」

全員挨拶が終わり、卓へと向かう。すると、突然対面に座る淡の雰囲気が変わった。


233:2015/04/25(土) 21:22:30.44 ID:yomGS5s7o

             .      ,  ´            ` 、
                /                 \
                //: ..::              ....:.:ヽ
               //:.:.:.:/.:.            ..:.:.:.:.:.∧
            //  :.:.:´:.:.:.:.:....:.:.:   ...  .......:.:.:.:.:.:.:.:、: ',
        .1}   } .:./  .: ::::/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ト;.:.:.:.:',:.:.:.:.:.:. ', .',
.         7ミニ彡 .:/:.:.:// /  ://}.:.:/ ,' .ヽ:.:. .',.:. 、.:.: |..:.∧
    __  { ,'.|   /}/:.:.://:/:.:.:.:.:..´/. ./ ./ /   V...ノ:.:.:.',.:.:|.:.:|:∧
.  /7}  ヽ{| ./.ノ.:.:.:./:/.:.:.:.:.:./  メ;..':.:/.     .V.;.:.:.:.:.}:::|.:.:|:.トヘ
.    {人_ .ヽ_ミx´,:.:.:./:/:.:.:.:ーx_  //ァ/    ./イ:.:.:.:.:.|.:.|.:.:|:.:ヽ.ヽ
.   ゝ   ̄...:.:.:., |:.:./:.:':.:.:./  _≧≦_.´    ._x≠キ":.:.:.|.:.|.:.:|:.:.:.:》 〉
   __`''ーt―r ' ./.:.,:.{:.l.:.:イ ',.〈丁≧ァ`    k´r‐=≠、.:.:.:.!.:.:.:.:!;/,_'_
r''´,-=、::`''ー==≧:.:.:.{{::';|:/ ゝ_,  r';_; }.    ./ 5、_/;}lノ:.:.:.|.:.:.:.:|.// ,Xァ
.` .≧=-`''-、_.:.:.:.:.:.:.:r<ヘ:.|.  ヘ ``'''.        ヾソ-'./.:.:./|.:.:.:.:|/ /  `、
         ̄´ /´.ヘ V   :ヘ      ,      /:.:.:/:/:.:ノノ /:::   .∧
        ト ./   ヘ ,ヘ   ::::> _  __ __   ,/イノ::::レ'/ /:::l:::    ∧
        |:`,'    :ヘ ヘ   ::::::::::::>.、 _, =r<:.,'.:.:.:.://// :/:::      ` ー、
          八_}    .:::.ヘ ヘ  ::::::::∧‐-   ./:/.:.:.:.:/::.//イ .l.::: .:::::::::::     }
        ,イ   .. ::::::::.ヘ .ヘ   ::::::∧`''ー.〈_:ゝ、:.:∧//:/:  |::::::::::::;:': .::::::  /


まだサイも回していない段階で既に真剣そのものな表情になっている。モニターで見た大将戦でもこんなに本気《マジ》の表情を見せただろうか。

(たぶん……さっき言ってたコテンパン、か?)

しかしその瞳の奥に悪戯心のようなものが見え隠れしている。さっきのガムの仕返し、といったところか。他二人はとくに気づいた様子もなく卓に向いているのでこのオーラは自分にだけ向けられているらしい。

(まいったね、こりゃ……)

処理が終わり、各々が自分の配牌を取っていく。
すべて理配し終えた段階で京太郎は思わず溜息を吐いた。

(マジで五向聴だ)

他の二人も表情が浮かばない。どうやら例の力が発動している……らしい。


234:2015/04/25(土) 21:31:58.72 ID:yomGS5s7o

六向聴ではないだけマシと割り切り、京太郎は手を入れ替えてゆく。決勝の様子から、自摸配まで弄くるパワーではないらしく、入れ替えは順調に進んでいく。
しかし……

「んー……」

7巡目ほどの、あの手からかなり早いテンパイにたどり着いた京太郎はチラッと対面の淡を見た。視線にも気付かずにジッと卓上を見つめている。

引いた三索を加え、二萬を切ればテンパイだ。しかしどうにも、気が進まない。

(俺がテンパイしてんのにこいつがテンパイしてねーのか?)

まさかダマテンで狙っているのではなかろうか、という疑念が浮かぶ。どちらにしろまだ東一局、焦らなくてもいいかと京太郎は淡には安パイの三索を切った。
二萬も通らない牌ではない故、和に見られたらどやされるだろうが。

しかし下家が次に二萬を切ってもそれはあっさり通った。

(ありゃりゃ)

予感が外れたか、と京太郎は頬をかく。


236:2015/04/25(土) 21:41:48.35 ID:yomGS5s7o

次順、あっさり京太郎は三索をひいた。オカルトは信じるが自分にそんな力はない、と知っている京太郎はどちらかといえばデジタルよりだ。もう大丈夫と安心して、不要牌の二萬を切り落とした。役は安い、リーチはしなくても……

「ロン」

「……え?」

宣言、その方向を向くと淡がニヤリと笑って牌を倒していた。

「えーと、3900!」

「あ、あぁ……」

マジで?という心情で京太郎は点棒を淡に渡した。まさかこんな露骨に狙い撃たれるとは……と思ったあたりで、他の二人がとくに変な様子はないことに気づく。

(……あぁ、そういえば)

よく考えれば下家が二萬を切った後安心した京太郎は淡を注意してみていなかった。その時に手を入れ替えたのかもしれない。

(俺のミス、か……)

淡に狙い撃たれたのではないかというバカバカしい疑問を京太郎は振り切り、さあ次だと親の一本場の卓に向いた。





           ,  ⌒ ー   ̄ ̄  、
         /_,. -            \
        /´ /     /⌒\      ヽ
        , ´ ,         V     :.
       /  /  /  / /      | V : V |
     /-- ´' / /  / l|{     | l| | | {
        / イ  {  ':|_,斗| |  、_l__/_ィ  |l∧
         /  ,: ∧ | {∧{ {  、 /}/}/ } /∧|
       / イ / {∧{ 、__,.V {∨ 、_,/ イ}' `
       ̄´ V∨乂l      \    ムイ/
               从      '     八/はぁ……
           -〈〈/\  v-っ  イ》く__
        /////∧\} > -- < |//}///> 、
       /////////\}     「/〈////////\
      /////////////|--、  r-|/ イ//////////\
    //////////////∧、__「//////////////// \
   {//{////////////〈 ∧    }///////////////////}
   |//|/////////////V/\ //////////////////'//|



                _, -──-  .,_
               '´         `丶、
            /              \
           ,          /         \
.           /     .   /            ヽ
           ′     / /              `、
.          .' /   /,     // /|   |       `
         i     . /    」_ ′/  |   | i|  . i
.         i |   j/,    /イ`メ、   |  小 ||   ト.!
          j .|  ∨/    / |/ ヽ  |  ァT丁l   | |
         ノ i|  V    j 抖竿ミ    ノ ノ ,ノイjノ   | i
___ ____彡' , i|  i| j   八|:x:x:    /ィ竿ミ 刈    | }
 ̄¨ え≠  / 八 i|/l   |  |        :x:x:/ ノ    | ′あー楽しかった!
 /  -‐ '    ハ  八  ト、  ヘ.__ `  厶 イ   ノ
/    __,.斗‐=≠衣  ヽ八\ 丶.__ソ  . イ(⌒ソ  イく
     jア¨¨^\   \   \ >-=≦廴_  ア /ノヘ\
  斗ァ'′     \   \   ヾ. \___ ⌒ヾく<,_ `ヽ )ノ
/圦 |       、\   ヽ   、∨tl  `ヽ . ∨ V\ i
 { `|           Vi:\  ハ  i } |    } i }  ∨,} }
≧=- |         辻_V\`i}  i } |  /} iハ}   辻ノ
   ノ          ¨〕V//リ  iノ ////V〔    ¨〕

結果的に京太郎は負けた。ぼろ負けした。ネギトロにされてしまった。


238:2015/04/25(土) 21:55:24.17 ID:yomGS5s7o

>>235本気の本気の時しか使わないからね、仕方ないね

その四人で4回卓を囲んだが、京太郎の結果は4着3着4着2着。
別に淡は京太郎だけを狙っていたわけではなかった。他の二人も特別強いわけではなかった。
しかしラスを二回引いたぶっちぎりのドベの京太郎に対し、淡は全局一位。まさしくコテンパンである。

            /l  ,,,;;-―''"::: ̄ ̄ ̄::::::::`ヽ、
              l::|/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::二`ヽ、
          ノ/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
          /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
         /:::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::L、
       /::::::::::::::::::::::::::/::::::::/::::_::::::::::::_::ソ'ノイ:::::::::::::::`ヽ=、
      ./::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::/  ___\  ∠:ノィ:::::::::::::::::::::\
     /::::::::::::::::::_::::::::::::::::::::l    ` _/::\\  ィ" ヘ::::::::::::::::::::::::ヽ
      |::::::::::::::::/ ┐):::::::::::::::::`ァ   ヽ、 `<_l! ` ´   \::::::::::l:::\:lくそ!トーレスめ!トーストにしてやる!
 、_ ノ: ::::::::::: :| r.〈::::::::::::::::/      ` 、       ∠、 |::::::::::|::::、:::|
  \´::::::::::::::::::::l ヽ \::___チ             `〈_:ノl!ノ::::::::ノ:::::|:::|
   Y::::::::::::::::::::\_  `ー          __  、 ノ .|:::::::::::::::|::| ||
    |:::::::::::::::::::::::: ̄フ´         /::ー-、_ヽ ´  |::::::::_ノイ /
    \::::::::::::::::::::::::チ´          /::::::::::::::::|;;;/   |::::/
   ,,r-、`、:::::::::::::::::ノ            l!_::::::: :::: :レ'    /::::L_,
  /;;;;;;;;;;`ー、< ̄ ̄  l \         `ー-、:ノ   /::::::チ
_ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;フー、   |  \      ー    /::::、::/
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/   \」_   `ヽ、       /::::::::::チ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; /      `ヽ、_   .〉`ー― '"'" ̄ ̄
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ        // `ヽ.」
;;;;;;;;;;;_;;;;;;/         //   /`ヽ、
-―'"   \\      .//   /  / l__
.          \\    .//   /  / /;;;;;;;;;\
         \\ //   /  / /;;;;;;;;;;;;;;;;;\

お昼時になり他の二人が卓を離れたため京太郎と淡も雀荘を出る。

「いやぁー……京太郎、マジで弱かったねー」

「うるせーよ牌を見透かしたみたいに狙い打ってきやがって……」

「わざとじゃないしー」

ルンルン気分の軽い足取りで歩く淡とは対照的に京太郎は沈んだ気分でそれについて行く。

「かてねーとは思ってたけどここまでボコボコにされると自身失うぜ」

「ふふーん、この高校100年生の淡ちゃんに勝とうなど、一年生のきょーたろーじゃ99年はやいのさ!」

ビシィッ!と指で刺されてもぐうの音も出ない。ぐぬぬと唸った京太郎は何かいい返さねばと口を開いた。

「つ、次は負けねーからな!」

「……え?」

とたんに、淡の動きが止まった。

「次……?」

「え、ダメ?……あ、そうか、大会終わったらもうお互い遠くだもんな、でもネトマなら」

「いやそーじゃなくて」

京太郎の言葉を遮り、淡がポツリと呟く。

「また、してくれるの?麻雀」

「あぁ、そりゃ勿論」

「……そう」


240:2015/04/25(土) 22:09:36.83 ID:yomGS5s7o

「うーん……まぁ、いいか」

スッと顔を上げた淡は先ほどまでの明るい表情に戻ると、またずんずんと歩き出した。

「じゃあお腹減ったし、なんか食べようよ」

「奢らねーぞ」

「え?そりゃそうでしょ、学生同士だし。何食べるー?ラーメンとかどう!ラーメン!」

「……本当に、お前は珍しいやつだよ」

「ほえ?」





「で、次はここか」

礼儀正しくラーヌン次郎をペロリと平らげた淡に連れられて、京太郎はゲームセンターに来ていた。

「そうそう!麻雀ばっかしてちゃ麻雀だけの麻雀人間になっちゃうよ!アラフォー待った無し!」

「んー、確かにな……しかし、でかいな」

長野にこんなでかいゲーセンはなかったなーとおもいつつ、そのあまりにもやかましい店内へと二人は足を踏み入れた。


302:2015/05/14(木) 12:21:16.74 ID:Ou6djP0iO

     /                  \
 _人_ '                      ` 、  \
  Υ'/ /  /              ト、        丶
   / /  /         |    | | Χ     }
  .′   il  /   |  | \ | / `、  リ   |
  i | _|l__∧ト、八  |   メ´  ニニ  /   } |
  | |   ||  `>x、\|   斗チ芋ミ、∨   ,′j
  | |l   l|斗示芋ミ、    ''h!::::::::}  ,′    ,
  |l 八  И'h!::::::}      乂___ノ /     /
  ||  \| 乂__ノ       /i/i/ /     /l|     「いやぁ〜久しぶりに来たよ〜」
  .八   ゝ /i/i/i    i       / /  / / |
   ‘,\ ハ      r    ア  /l/ /  /:: |
     ト、  込、         _ノ   //  ,イ::: l|
     |l l\ \> .,_       /∨  /l|:  八_
 |ヽ.  八l_\ \-─=ー ァ--<  /   / 八 {  \ `ヽ
 | | ./ /´  ハ 〕     { 〉     ,′ /   ` ヽ  \∧
 | |/─、_ / |∨  __ ?__=|   /     〕\  \
 | | Y´ \\.ノ (`ヽ \\)     |  ,′         \ 丶

ゲームセンターの中は予想よりもだいぶ騒がしかった。
都会のゲーセンは二階三階とあるのか……と京太郎はギャップを感じる。

「しかし、来たはいいけど俺はあんまりゲームは得意じゃないんだよな」

「そうなの?」

「外で遊ぶほうが好きだし」

「……なんで麻雀部入ったの?」

呆れた目で見られるが、入ったのだから仕方がない。

「じゃあわたしがよくやるゲームを一緒にやろう!んふふ〜、ずーっと麻雀の練習ばっかでしばらく来れなかったから久しぶり〜」

「やっぱ名門校は練習キツイのか」

「キツイっていうか、長い!」

ウガーッと淡は不満を漏らす。長い練習をキツイというのではないのかと思ったがたいした問題でもないと思い聞かないことにした。

「えーと、あった、これこれ!」

先を歩いていた淡がビシッと指をさした。その先を見てみると、なにやら洗濯機のようなピカピカ光る機械がある。


304:2015/05/14(木) 12:31:18.05 ID:Ou6djP0iO

「……なんだこれ」

「マイマイ!」

「……あぁ、前行った時に誰かがやってたよーな」

淡は早速チャリンとコインを投入し機械の前に立った。
そしてじっと京太郎を見てくる

「やらないの?」

「え?俺もやんの?」

「空いてるんだしやろうよー」

「お、おう……ここか」

京太郎はいわれるがまま淡と同じように隣の機械にも100円を投入しその画面の前に立った。なにやら淡がニヤニヤしている。

「じゃあシンクロモードでプレイしようね」

淡が勝手に画面をタッチしてモードを選択していく。なにやらよくわからない、初めてプレイするゲームなので任せるしかなさそうだ。

「じゃあ簡単な歌曲で練習!がめんのマーカーに合わせてタッチするだけだから簡単でしょ!」

「そうか?まあやってみるか……」


306:2015/05/14(木) 12:40:43.96 ID:Ou6djP0iO

そしてゲームが始まり曲が流れ出す。すると中央の画面に言われた通りマーカーが現た。チラリと淡を見ると、外側のラインに触れた時にタッチしている。見よう見まねで京太郎もやってみる。

「お」

そのままゆったりとしたテンポでマーカーが流れ続けてくる、要領をつかんだ京太郎は曲に合わせてマーカーを押し続ける。

(しかしこれは……恥ずかしいな)

誰が見ているわけでもないが、まるで踊っているようではないか、と思いつつも、一曲が終了した。

「はい終わり。どう?簡単でしょ?」

「まぁ、そうだな。でもお前よくこんなのやれるな……」

「人の目なんか気にしない!さ、次やろ次!次は少し難しいのやろう!」

画面をカチカチと押している淡は楽しそうだ、付き合ってやるのも悪くはないか……
京太郎は画面に向き直る。次の曲が選択されたようだ。曲名は……LUCIA?





「ふう、クリア〜。……あれ?!クリア!?きょーたろークリアできたの?!」

「やっぱお前すげー難しいの選びやがったな!?死ぬかと思ったぞ!?」

「えー……京太郎えー……なにその才能、そこは失敗するとこでしょー……」

「言いたい放題だなこんにゃろめー!」

「ギャー!グリグリやめてぇ〜!」


322:2015/05/14(木) 22:20:39.43 ID:UgxBw0Aoo

じゃれ合いながらゲームを離れ、次は麻雀ゲームをやることになった。

「えー、ここまで来て麻雀?」

「いいじゃねーか別に、初心者潰しの大星さん」

「ごめんってばー」

反射神経が疲労しきった京太郎はドスッとゲーム機の前の幅広の椅子に腰を下ろした。

「ちょ、つめてつめて」

「え、お前ここ座んのかよ」

すると淡は京太郎をぐいぐいと押して、無理やりに同じ椅子に座り込む。
二人なら問題なく座れる椅子ではあるが、画面を覗き込むと体が密着しそうで落ち着かない。

「ん〜、じゃあへっぽこな京太郎には私が指導をしてあげよう。光栄に思いたまえ」

「はいはいありがとさん……」

チャリンとコインを投入し、画面をタッチして対局画面へと移っていく。隣の淡はなんだかんだといいつつ楽しげに画面を見つめている。

「ふふー、頑張ってねきょーたろー」

「おう」


323:2015/05/14(木) 22:27:12.83 ID:UgxBw0Aoo

「ねー京太郎」

「ん?」

「京太郎の麻雀を始めたきっかけってなに?」

「あー、それはなー……」

「あ、それ鳴いて」

「え、マジ?……入ったきっかけなー、麻雀部に好きな子がいたからだ」

「なにそれ」

「いやマジで。中学の頃までは運動一筋だったんだけどさ、同学年でスッゲー可愛い子が、麻雀部に入ってさ、お近づきになれればなーって……お、ツモった」

「なにそれ、不純」

「男なんてそんなもんだ。で、まぁ、それでやり始めたんだけど、案外面白くてな」

「ふ〜ん……へんなの」

「なにがだよ」

「その割にはガッツあるなーって……私にボコボコにされれば、すぐに心折れて、少なくともその場では麻雀やめる!とか言い出すかと思ってた」

「いいたかないけど負け慣れしてるからな……」

「ダサいよー」

「うっせー」


324:2015/05/14(木) 22:35:34.82 ID:UgxBw0Aoo

「……ここは三索か?」

「三色の目あるんだからもったいないでしょ、もっと欲張りなよ」

「そ、そうか……で、淡はさ、どうだ」

「なにが、麻雀始めたきっかけ?」

「いや、そうじゃなくて、麻雀って楽しいか?」

「……え?それ聞く?普通同じ質問返さない?」

「聞きたいんだ」

「別にいいけど……楽しくなきゃやってないでしょ」

「やっぱ強いし楽しいか」

「そりゃね。負けることもたまにあるけどだいたい勝てるし……」



不意に、淡の顔が俯いているのが視界の端に移って、京太郎はそちらを見た。

「でも、ね、昨日は……相手も強くて楽しかったんだけどさ、すごく悔しかった……」

「……そうか」

再びゲーム画面に顔を向ける。そこから淡のアドバイスは終局まで入ることはなかった。


325:2015/05/14(木) 22:44:22.12 ID:UgxBw0Aoo

「今日はお疲れ様」

「おう」

ゲームセンターを出た二人は、帰り道を行きながら話していた。先ほど浮かばない顔をしていた淡もいまはすっかり明るい表情だ。

「本当楽しかった〜。しばらく息抜きできなかったからさ!」

「いつも緩みまくってる気がするけどな」

ルンルンと広い歩幅でゆったり歩く淡の姿を見ていると京太郎も心が和む。こんなにも凛とした美貌なのにどうしてこうも癒しオーラが放てるのか、不思議でならない。ふだん幼馴染のポンコツを眺めていると余計にそう思う、あれはあれで可愛いが。

「……それにしてもさ、知り合って3日目なのにこんな風に仲良く遊ぶって不思議だよねー」

「お前が人懐っこいからだよ」

「犬みたいに言うなー!」

ポスポスと叩かれるが全く痛くない。淡のいう通り、知り合って3日目だというのに既にこのさっぱりとした子供っぽい性格の淡に、京太郎は心を許していた。

そして、二人の帰路の分かれ道へと差し掛かる。


326:2015/05/14(木) 22:51:16.03 ID:UgxBw0Aoo

「じゃ、ここでお別れ」

「そうだな」

「えーと、お金返したし、忘れ物とかないし……よし、大丈夫。じゃあ、ばいばーい京太郎」

淡は軽く手を振って沈みかけた夕日の方へと歩き出した。
揺らめく金の長髪がまさしく黄金色に輝いて、その性格とは裏腹の神々しさを醸し出す。

思い立って、京太郎は声をあげた。

「淡!」

その声に反応して、淡は振り返る。小首を傾げて、なんなのか、と問いかけてくる。

「明日の、清澄と白糸台の決勝線さ!」

「絶対に、清澄が勝つぜ!」

自分のことでもないのになにを偉そうにと自虐しながらも京太郎は自信満々に言い切った。
その言葉を受けて、少し呆然とした淡も、段々とその口角を上げて、悪役っぽい顔をする。

「いーや!勝つのは私!」

自信満々に言い切った後、再び背を向けてズンズンと淡は去っていった。



「……」

そして、京太郎も、淡と反対方向、夕日に背を向けて歩き出した。


327:2015/05/14(木) 22:56:37.86 ID:UgxBw0Aoo

翌日、インターハイ団体戦の決勝戦。
より一層多くの観客が詰め寄る中、清澄の控え室は緊張に包まれていた。

「……もう少しで開始だな」

「おう……」

「……おい優希、これみてみろ」

「お?……あー、タコス」

「お前ガラにもなく食べるの忘れてたぞ、食べなきゃ力がでないんだろ?」

「おう!気が聞くじぇ京太郎!……んー!うま!」

「俺の謹製タコスだ……それくらいしかしてやれねーからな……勝てよ、優希!」

「……任せとくじぇ!」



「……ふぅー」

「三連覇がかかると、さすがに緊張するか?」

「……」

「それとも、妹か?」

「関係ない……私は、ただいつも通り……勝つだけ」

「……任せた」

「任せといて」



決勝戦、先鋒戦開始


354:2015/05/21(木) 22:11:00.63 ID:Vy3VmNNvo

……
…………
………………

重苦しい、沈黙。緊張感の張り詰める控室。

「ゆーき……」

緊張した面持ちで和が見つめる画面には、対面で宮永照と対峙する優希の姿があった。

東4局、親番は照。

一言で言うと最悪である。宮永照との対局においてラス親を取られるのはほぼ負けを意味している。
もはや暗黙の認識と化している宮永照の能力、打点上昇ツモと《照魔鏡》。相手が起親で親番を潰すのが最高である。、その真逆はやはり最低である。

しかし優希は引き下がらない。点数98300点。まだまだ負けていない。
だが、長い南場が待っている。

「……お姉ちゃん」

咲が、ぼそりと呟く。
まさしくここで決勝戦は最大の山場を迎えている。
優希は、勝てるのか。

「……ん?」

不意に京太郎のポケットが震える。マナーモードにしてあるスマートフォンが震動したのだ。


355:2015/05/21(木) 22:19:09.70 ID:Vy3VmNNvo

画面を開くと、LIMEのようだ。差出人は、大星淡。

『やっほー。今控室だよねー?ねぇ、先鋒戦がどんな風に終わるか予想しあおうよー><
私はねー、白糸台以外マイナス!どうー?(#′∀')』

「……」

京太郎は、黙って返信文を書いた。

『余裕だなおい。そうだな、俺の予想は……白糸台が一位で、清澄はプラス収支だ』

送信……
すぐに返信が来た。

『えー?そこは清澄が一位っていうところでしょー?(・3・)』

すぐに、返信

『まぁそれが理想だけどさ……あの清澄のタコスは昨日俺のアイスを奪いやがったからな。それに……』

文を書き終えて、京太郎は再び送信を押す

『点数負けてても、あんまり関係ないんだ』

……変身は、来ない
お人好しが過ぎると、京太郎は皮肉に笑う。

画面の向こうでは、優希が宮永照に直撃をかましていた。


357:2015/05/21(木) 22:31:11.91 ID:Vy3VmNNvo

(っ……食いついてくる)

宮永照は、清澄と阿知賀のタッグに苦戦していた。
実に理にかなったコンビ打ちを展開されて、上がる前に潰されている。

松実玄の力で、ドラは誰の手にも行き渡らない。
優希はその類稀なる集中力と運で、宮永照に食らいつくもあと一歩、いや、二歩。であれば、二人でやることは簡単だ。

優希は、ドラとは無関係の場所で手を作り上げる。
玄は手の内にドラを溜め込み、優希の欲しがる牌を切り鳴かせる。
単純だが強力だ、玄の一押しが優希を宮永照に喰らいつかせている。

(気があう人でたすかったじぇ……さて)

阿知賀の方にウインクをしてから、優希は宮永照へと向き直る。ここまでやってまだ五分だ。いや、少し不利かもしれない。
しかしこれなら十分勝てる。優希は深く深呼吸をし、改めて卓上を見渡した。

(負けるわけにはいかないじぇ!この優希様が点を稼いで、みんなを有利になるにスタートさせなきゃならないんだからな!)タンッ

「ロン!」

「あ」

臨海に直撃させられた


358:2015/05/21(木) 22:39:06.55 ID:Vy3VmNNvo

混沌とした、先鋒戦、終了
白糸台は一位通過で、122500点
清澄は100200点。
今までの試合と比べると白糸台のリードが明らかに少ない。
会場内は騒然とした。

「うぬぬぬ……ただいまー」

「ゆーき!」

「おわーっ!?」

部屋に入ってくるなり感極まった和に優希は抱きつかれた。顔が胸に埋もれている。

「すごい!すごいですゆーき!あんなすごい麻雀!」

「むぐぐぐ……ぷはっ。うー、でもかなり離されちゃったじぇ……」

「何言ってんの、上々よ」

「うん……お姉ちゃん、すごく悔しそうだったし。すごいよ優希ちゃん!」

「そ、そう?へへ……まぁ、この私なら当然!」

えっへんと胸を張る優希は、そのまま京太郎に向き直った。

「京太郎!お前のタコスの力もかなりあった!たすかったじぇ!」

「へへ、早起きした甲斐があったってもんだ」

あの宮永照相手にプラス収支で二位通過、湧き上がる面々をよそに、のっそりと染め屋まこが立ち上がった。

「おう、ようやったの、優希……ほんじゃ、わしはこの荒れた場をフラットにしてこようかの」

「まこの胸みたいに?」

「張り倒すぞおどれ」


391:2015/06/16(火) 21:32:51.65 ID:T7vJaV9co

「っ……」

「何を落ち込んでるんだお前は、ダントツ一位だろう。その顔見せたらさっきの先鋒のメンバーにすごい嫌なもの見る目で見られるぞ」

「いや……落ち込んではいない。ただ疲れた」

「ほう」

「あそこまで、喰らいつかれたのは久しぶり……まぁ、楽しかった」

「……うん、そうか。さて、私の番か……苦汁を舐めさせられたからな、準決勝で。名誉挽回と行こう。照のリードをより磐石にしなければならないな」

「スミレ〜がんばってね〜」

「菫せ、ん、ぱ、い。淡、阿知賀と清澄の対象の牌譜見ておけよ」

「は〜い」

(読まないなあいつ……)


392:2015/06/16(火) 21:40:56.21 ID:T7vJaV9co

「……お」

またも、淡からのLIMEが届いた。

『う〜、京太郎やるじゃん!』

『どうだ、俺の戦況千里眼は!』

『千里眼ってなに?千里山の親戚?』

頭を抱えた。

『千里眼ってのは千里先まで見渡せるほどの視力って意味だ』

『せん……なに(:・・)?』

『せ、ん、り!』

『距離じゃん、未来じゃないじゃん(′・3・)』

『戦術ってつけたろーが!』

素直に戦術眼と書けばよかったと後悔。予想以上に手間取らせる。

『それより次峰戦の予想!私はねー、白糸台が一位でドベは阿知賀!』

『おうそうかいそうかい』

チラリと画面を見て、返答

『阿知賀は二位かな、俺的には』


393:2015/06/16(火) 21:49:11.23 ID:T7vJaV9co

(あー、なんじゃろーなこれ)

まこは頭を抱えたくなるような無茶苦茶な卓上を見た。
そして、対局相手たちを見る。

松実宥、そんな格好をして頭が茹らないのか、問い詰めたい。
弘世菫、お前こっち見ろ、うちは二位だぞ。阿知賀ばっかみんな。あ、みた。
郝慧宇、お前は……まぁよく知ってる。一回やったし。

(なんじゃこれ)

頭を抱えたくなる。なんと混沌とした場か、面子も卓上も。
自分が地味に見えてくるから困る。緑髪だぞ緑髪。

(しかし、ま)

眼鏡を外し、卓を見つめる。

(やることは変わらん)

牌をきる。

(だいぶ、なんというか、見たこともない表情しとるけどな?ご機嫌とりは、いつもの通りやればええ)


395:2015/06/16(火) 21:59:44.33 ID:T7vJaV9co

(逃がさんぞ松実宥)

弘世菫は若干頭に血が上っていた。対面に位置する松実宥にただならぬ熱い視線を送っている。無論、あれじゃない意味で。

(無論これはチームの勝利を目指している。そのためなら感情を殺すべきだ、しかし……)

感情論を切り捨てては麻雀は勝てない、一度ならず二度までも躱してのけた松実宥に直撃をとらなくては、この劣等感が対局中ずっと足かせになる。

(必ず射抜 抜いて見せる、必ず)

神経を集中させる。名門校のプレッシャー、三連覇のプレッシャー。勿論、ある。
しかしそれすら一瞬忘れた。稼いでくれた友のため、後に続く後輩のため、この戦いは負けられない。

(清澄のはまだ手ができてはいない雰囲気だ、臨海もあと少しといったところが、なら、狙い撃つ!)

弘世菫は、狙いを定めた松実宥の捨て牌をみて、最高の待ちで満貫の聴牌を作り牌を切り出した

「ポン」

「!」

上家の清澄が鳴く。

(くっ、しかし、白糸台までツモが回れば!)

「ほれ」

「あ!」

「ロン、5200」

阿知賀が上がった。清澄の捨て牌で。
ほいほいとまるで気落ちせず清澄は松実宥に点を支払う。

(……なるほど、強敵じゃないか、清澄の……染谷まこ!)

弘世菫の、視線を感じ、染谷まこは少し笑った。


398:2015/06/16(火) 22:11:56.30 ID:T7vJaV9co

白糸台、123800で次峰戦を終える。
対して阿知賀、点数を10万点代まで回復させる。
清澄と臨海はもつれ合う形でわずかに臨海が上。

「帰ったぞー、いやーすまんの優希、お前さんの点棒まいてきちゃった」

「先輩……すごく意地が悪い麻雀だったじぇ……」

「まーこー……あなた白糸台への嫌がらせに集中しすぎじゃないのー?」

「しゃーないじゃろ怖いし、調子づかれて突き放されるよりなるったけフラットにフラットに。だいたいこのくらいの点差なら……お前さんら勝てるじゃろ」

まこは、三人に目を向ける。
竹井久、原村和、宮永咲、この三人ならきっと追い抜ける。

「わしの役目は、射程圏内で耐えることと、相手をぐしゃぐしゃにかきみだすこと……あとは任せたぞ、久」

「……まっかせときなさい」



「やられた!!まんまとやられた!!!!」

「お、落ち着いてください部長」

「落ち着けるか!染谷まこめ……私が狙い撃つ相手全員に自分で振り込むし!いざ染谷を狙ってみよにも上がりを目指さない上がり方のせいで手が読めない!」

「……おそらく白糸台を独走させないために、あえて自分の点を吐いて菫のペースを乱してた。自分が上がる気がないんだから、当然相手はいろんな牌を持てるしひらひら逃げられる」

「ウグググ、悔しぃ……!!」

「部長キャラ崩壊してます……」

「あっはっはっは!スミレおもしろーい!」

「うがあああ!!」

「ギャー!?暴力はいけません〜!!スミレのアホー!」


399:2015/06/16(火) 22:23:52.41 ID:T7vJaV9co

中堅戦
清澄の部長竹井久、ついに憧れの舞台に立つ。

(やば……すごい緊張する)

なんせ悲願の優勝がかかった試合だ、今までよりはるかに大きい重圧がかかる。

(でもまぁ……後輩にかっこいい先輩の姿を見せつけるラストチャンス!怯えず行くわ!)

しかし久は引かない。強い気持ちで手を作っていく。
新子憧、渋谷尭深は、確かに強敵ではあるが、他と比べれば火力はマシだ。
問題は、雀明華。自風を使って速攻で上がられると、瞬く間にオーラスに突入してしまう、そしてそのオーラスは渋谷尭深の本領。
それまでに、何としても点を稼ぎたい。

(どう戦おうかしらー……)

んーと、少し考える。
そして、控え室のメンバーのことを思い出して、少し笑う。

(……かっこよく戦いたい。自分の好きなように、自分が楽しめるように、誇れる麻雀を)

きっと前を向く。かわいいかわいい後輩連中の目にやきつけよう、この戦いを。

「……ツモ!」

我らが大将咲、頼れる副将和、信頼するまこ、かわいい優希、面倒かけてしまった京太郎。

全員を思い、久はいつも通りに派手なツモ上がり(モーション的な意味で)を決めた


400:2015/06/16(火) 22:24:32.87 ID:T7vJaV9co



一方京太郎は控え室から抜け出てトイレへ向かっていた




401:2015/06/16(火) 22:34:17.27 ID:T7vJaV9co

「あーちくしょう!緊張して飲み物飲みすぎた!」

自分が戦っているわけでもないのに京太郎はいつの間にか2リッターのミネラルウォーターを飲み干していた。
それに気づいた瞬間尿意をもよおす、しかも強烈。
そのせいで京太郎は久の想いが詰まったツモを見逃した。運のない男である。

「くっそー……どうしてこう締まらないかねー」

小便器に用を足し、急いで手を洗う。
男子力高めな京太郎はしっかり隙間まで、液体石鹸を使って洗い流した。

「さてと!すぐさま観戦に!」

トイレを飛び出し、いざ走り出す!目的地は清澄控え室!目標は試合観せ……

「うはぅ!?」

「ぐおっ!?」

腹に、何か突き刺さった。
おそらく金色のものと視認したそれは走り出さんと身を乗り出した京太郎の硬い腹筋にドスリとめり込む。
カウンターの要領で名状しがたい金色に頭突きをもらった京太郎は二、三歩後ずさり、青い顔をして腹を抑えた。

「うっううぅ……ご、ごめん、前、見てなかった……」

「いや、俺も走ってたから……」

お互いくぐもった声で謝罪をし、お互いを見やる。

「……ん?京太郎じゃん」

「……淡?」


402:2015/06/16(火) 22:43:19.65 ID:T7vJaV9co

「ここでいいか」

「うん、オッケーオッケー」

そのあと、控え室に戻ろうとした京太郎に淡は、一緒に試合を観戦しようと持ちかけた。よって今二人は、大型モニターの備え付けられたスペースにいる。椅子は埋まっているため、壁に寄りかかる形だ。

「いやー、スミレを怒らせちゃってさー。大将戦までなるべく外にいようと思って」

「呑気すぎるだろ」

画面の向こう側では、控え室で後輩達が勇姿を見ているだろうと信じて戦う久が映っている。
その内の一人京太郎はその久の対戦相手の高校の大将とだべりながら見ているが。

「てゆーかー、京太郎勘鋭すぎー。この淡ちゃんより予想を当てるなんて、生意気だぞー!」

「理不尽な……」

プンスカ怒る淡を横目で見て、京太郎は苦笑いした。

「別に、勘が鋭いわけじゃねー。それなら麻雀弱いわけないしな」

「あーそっか」

「納得すんのな……俺は、ただ単に清澄に都合がいい展開を予想っぽく言ってただけだ」

「都合がいい?四位なのに」

「チーム戦だからな」

久が白糸台から直撃をとった。点数はそれなり、一気に差を詰める。

「わお。たかみーから直撃って、やるー。てかなにあの待ち」

「そういう人なんだよ。守り硬い相手の方がやりやすいんだ」


403:2015/06/16(火) 22:49:01.87 ID:T7vJaV9co

適当にだべりながら、試合を観戦する。画面の向こうで1回目の半荘が終了。風神こと明華が白糸台の大物手を阻止する。

「あーたかみー!」

「相性悪いな、ありゃ」

「うわー、点数が10万点だいに……でもいーもん!私が取り返すもんね!」

ふふーんと淡が胸を張る。

「そこ、ふつーは大丈夫かなーとか不安に思うとこじゃねーの?」

「高校100年生に負けはない!」

ふんすと語る淡の目に揺らぎはない、本当に、自分自身の実力を信じているのだろう

「チーム戦だぜ?これ」

「? 負けてても、私が取り返せばいーじゃん。大将の役目でしょ?」

「勝ってたら?」

「勝ってたら、ぶっ飛ばすまであがる!」

「なにもかわらねーじゃねーか戦法!」


404:2015/06/16(火) 22:58:11.06 ID:T7vJaV9co

「なにさー!よーはアガらせずにアガればいいんでしょ!私にはそれができる!」

再びふんすーと鼻を鳴らす。
京太郎は苦虫を噛み潰したような表情をした。

「……淡、俺の予想を教えてやろうか」

「予想?」

「多分な、白糸台は結構リードして、副将戦を終える。二位は清澄だ」

「ほほー」

一息、ついて

「……で、お前は、咲に負ける」

告げた。

「……ほっほーん」

結構カチンときたようだ。淡がメラメラと瞳の炎を燃やして見上げてくる。

「えーつまり、この淡ちゃんが、そのサキに、大きな点差ごと捲られて、逆転サヨナラ負けを喫すると」

「そうだ」

「……んにゃわけあるかー!」

淡は吠えてシュバッと京太郎の背後に周りベチベチと背中を叩いてくる。

「いててて、やめろ!」

「生意気だぞー京太郎のくせにー!てか、バカにしすぎー!」

フンッと今度は不機嫌に鼻を鳴らし、淡はきっと睨んできた。

「そんなに言うなら見てるがいい!この淡ちゃんがアッショーしてきてやるから!そしたら京太郎サーティーワンおごってよね、3段で」


405:2015/06/16(火) 22:59:45.47 ID:T7vJaV9co

何度目か、淡は鼻をふんすとならしてずかずかと歩き去って行った。

「……」

京太郎は、その背中を、少しばかり、心配そうに見つめた。


428:2015/06/18(木) 23:16:08.18 ID:c7G7tQVBo

最大の誤算はデビルメイクライが発売されたことだね。我悪くない



「で、須賀君は私の勇姿を見てなかったのね〜……」

「いや、見てましたって!」

「よそのモニターで、いざこれから戦う高校の大将と駄弁りながら?」

「」

ものすごい勢いでいじける久に京太郎は徹頭徹尾謝罪する。
あのあと、対局を終えた久に優希が何やらチクったのだ。
どうやら飲み物を買いに出たら淡と喋って観戦していたのを見ていたらしく、それを聞いた部長は至極不機嫌である。



対局の結果は、白糸台が137000
、その他の高校は全員10万を下回るが似たり寄ったり。
三校で渋谷尭深を徹底的に狙い撃ち、一時白糸台は4万点近くまで点数を落としたが、ラス親の尭深はわずか三巡で四暗刻字一色を完成させる離れ業を披露、全校から大量の点棒を抉り取り、結局はプラス収支で終えてしまった。

「くっそー、泣きそうな表情になるもんだから油断したらこれよ、これも全部須賀君の仕業よ」

「なんだって!?絶対に許さないじぇ京太郎!!」

「それ俺かんけーねーし!!」

いじいじし続ける久と弄られる京太郎を他所に、原村和は準備を始めていた。

「……負けられませんね、せめてトップとの点差を10000まで縮めます」

「うん、頑張ってね!」

「もちろん、負けるわけにはいきませんから」

落ち着いた表情で、和はほかのメンバーを見渡した。

「みなさんから受け継いだバトンを最高の形で咲さんにつないで見せますよ」




429:2015/06/18(木) 23:27:08.31 ID:c7G7tQVBo

「ふぅ……なんとかなった……怖かった……お茶……」

「さすがだね尭深、いや、相手の顔!いい気味だったね!」

「2人のために、しっかりと点を取れてよかった」

「相手にとっては、たぶんトラウマになる。だって、三巡で32000点オール、もはや神業」

「ど、どうもです」

「淡はまだ帰ってこないのか!」

「ダイジョーブですよ部長、なんやかんや割と余裕を持って帰ってきますって。さて、行きますか……準決勝の汚名を返上しなくちゃ」

「……あんまり気負わないで」

「ん、ありがと」



「……」

ちらりと、スマホを見る。LIMEはこない。淡はヘソを曲げに曲げたらしい。
おそらくあの調子で、決勝に望むことだろう。

京太郎は心配である。
別に心配することではないはずなのだが、とにかく心配なのだ。
恐らく淡はひどい目にあう。この、大舞台の、締めくくりとなる対局で。

しかし今はそれよりも和のことだ。
画面の向こうですでに対局は始まっている。いつも通り、静かに正確に手を進めていく和。


453:2015/06/30(火) 22:44:39.06 ID:M5HAhYJVo

>>452
まだ一年は折り返し地点ですぜ
……もう、折り返したんですぜ……





原村和にとって、対戦相手というとは実のところ、さほど重要ではない。

和にとっての麻雀とは、全員が同じ条件のもとで、運に左右されながらも、知略の限りを尽くし、できる限りの最良の道を選び続けるゲームだ。
無論、対戦相手の癖とか、そういうのはかなり重要な情報ではあるのだが、和はそれよりも、とことんデジタルに、とことん合理的に、低い確率よりも高い確率を、低い効率よりも高い効率を。

(配牌で暗刻がふたつ……両方筒子ですか)

それ以外もそれなりにまとまっている。向聴数こそ並の三向聴だが、高めを狙えそうだ。

一瞬で計算を済まし、最も不要な牌を切り出す。

そして、対局相手を見る。

臨海のメガン・ダヴァン
白糸台の亦野誠子
そして……阿知賀の、鷺森灼

部長曰く、全員が不可解奇妙な「パワー」を持っているらしい。

(そんなオカルトありえません……が)

普段なら、バカバカしいと一蹴するが、和は、考えを切り替える。
オカルトは信じないが、打ち回しに独特の癖があるというのは事実だろう。
だったら、それを見咎めない手はない。

和は、ただ淡々と、手を作り上げる。


恐ろしい速度で

「ツモ」

7巡目、裏目もなく、最高の牌効率で打ち回した良配牌は、素晴らしいスタートを切らせてくれた

「2000.4000です」




454:2015/06/30(火) 22:55:01.29 ID:M5HAhYJVo

(……強いなー)

亦野誠子は、ため息をつきたくなった。もちろん対戦相手に失礼なので実際にはしない。

(……綺麗な手を作るな、無駄も一切なし、最短距離を突っ走る)

門前で上がったことがない自分からすれば羨ましい限りである、その運を、少しよこせ、あと胸も

(いや、運の問題じゃあない)

自分の手に、向き直る

(役割を果たせ)

現在白糸台は135000、他は全員マイナスで、4万近く突き放している。
ダントツで有利だ。このまま淡にバトンをつなげば、その圧倒的防御力とスピードと火力、つまるところパーペキな淡ならばきっと勝ってくれる。

(つまり、私のこの対局結構重要じゃん)

「ポン」

化け物どもを相手に、立ち向かう

(このままじゃ終われない)

(汚名返上の最後のチャンス、ふいにしてたまるか)

「チー!」

二副露、あと一つ

(綺麗にまっすぐ上がりを目指してくれて助かる、切る牌を結構絞れるからな)

「ポン!」

三副露

「ツモ!1000.2000!」




455:2015/06/30(火) 23:08:12.48 ID:M5HAhYJVo

「……ふぅ、ただいま戻りました」

「和ちゃん!」

和がかなり疲れた様子で控え室に戻ってきた。頭を回転させすぎたのか、顔は赤く、足取りはフラフラだ。

「ほら和、買っといたぜ、水」

「ありがとうございます……んぐっ」

珍しくラッパ飲み、若干汗ばんだ喉をこくりこくりと上下させる姿は妙に煽情的だ。

「ふぅ……すいません咲さん、それほど差を縮められませんでした」

「全然大丈夫だよ!」

対局結果、白糸台、142400点、対して清澄、ツモ重視のデジタル麻雀で114600点まで回復する。
その差、役28000。
厳しい、しかし、不可能ではない。

「うーん、やっぱ白糸台強いわ」

久が呻く。望みはきれちゃいないが、ぶっちゃけ胃が痛くなる点差である。
初出場にして初優勝の悲願は潰えてしまうのか?

「いや、大丈夫ですよ」

京太郎がそう言うと全員が顔を向けた。

「だって、我らが大将、天江衣をぶっ飛ばした、妥当宮永照のスーパー雀士、宮永咲が大将ですよ?負けるはずないでしょう!」

「え、えっと、京ちゃん?」

「おう!咲ちゃんが恐ろしいほど強いのはみんな知ってるじぇ!ファイト〜!」

「ゆ、優希ちゃんも……」

「……咲さん、お願いします」

「和ちゃん……」

「……咲、すまんが不甲斐なかったわしの分も頼むわ」

「染谷先輩……は、白糸台イジメに集中しなきゃ多分収支+でしたよね……」

「だってそうじゃなきゃ今頃白糸台もっとやばかったかもしれんぞ、なははは」

「……咲、よろしく頼んだわよ!」

「……部長」



「はいっ!行ってきます!」

『いってらっしゃい!』


456:2015/06/30(火) 23:15:18.96 ID:M5HAhYJVo

「亦野、よくやった」

「あはは……汚名返上には少し、地味すぎ、ましたかね……?」

「お疲れ様、誠子ちゃん……はい、お茶」

「ありがと……」

「……さすが、白糸台の副将」

「よしてください、先輩……あれ?淡のやつは?」

「ここだよーん!」

「うわ!おま、どこから!」

「ロッカー!!」

「狭いところが落ち着くのって、なんだろうね、あれ」

「やめろ照。……ていうか淡お前なぁ……いや、なんかもういい」

「へへーん、見てたよー!すごいじゃん!でもこれじゃあ余裕すぎて私の見せ場ないかなー?」

「……準決勝で苦労させたからさ、少しでも楽になってくれれば気が楽になる……準決勝でも言ったけどさ、頼んだよ淡」

「まっかせときなさーい!高校100年生のこの大星淡様が!」

「……清澄に、ひいてはその中の一人金髪のデクのボーに思い知らせてやる……!!ケケケケケケ!!!」ユラユラユラァァァ



「……金髪のデクのボー?」

「誰のことかな?」

「……さぁ?」

(もしかして自販機に頭ぶつけてたあの男子か?ていうかあいつすでに髪がユラユラしてるぞ、地味にこのssで初の「」の後の擬音じゃないか?)


457:2015/06/30(火) 23:27:42.37 ID:M5HAhYJVo

「……」

京太郎は画面を見つめる。

すでに、大将の四人がそろい踏みだ

起親、高鴨穏乃から順に、咲、ネリー、そして大星淡である。
全員がスタートを待ち、卓上に視線をおろしている。咲はああ入ったもののこの大舞台で死ぬほど緊張しているだろう。

……と、思ったら淡がちらりとカメラ目線になり、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。なんとなくこちらを見たような気がして少し後ずさる。

(はは、おっかねーおっかねー)

実は淡が入場する直前、京太郎のLIMEに淡からトークが届いていた
内容は『この私のアイス好きをなめるなよ、破産させるまで食ってやる!(#`д′)』

なんとも、腹に据えかねているようだ。それはもう、ものすごく。

京太郎は、今更それに返信をした。今は試合中、淡もマナーモードにしているはずだ。

文を書き終え、送信。

『テレレレテレレレーン』

『あ、マナーモードにしてないや、ごめんごめーん!』

「……」

絶句

(俺悪くねーよな?)

少し冷や汗をかいたが、気を取り直す。
ポケットにスマホをしまい、再び京太郎は画面に集中した


490:2015/07/07(火) 22:01:22.60 ID:/6QtvnqRO

白玄はっきりつけるみたいなssは考えたことがあるね






さて、と

淡は卓上を見下ろした。
淡はラス親であり、起親の高鴨穏乃が元気よく牌を切り出したところだ。
準決勝では苦渋を舐めさせられたが今度はそうはいかない。
メラメラと燃え上がるリベンジ根性を抑え込み、続けて対面。

宮永咲

静かに、素早く牌を切った。手慣れた手つきだ……当然か。

宮永咲、最近知り合って、結構気があう京太郎が言っていたが、私はこいつに、捲られて負けるらしい。

やってみろと、やれるもんならやってみろと、高らかに叫びたい。

点数はおよそ28.000点。そして、相手は必ず五向聴。こっちはダブリー『かけてもいい』

負けるものか、うち負けるものか。

髪がざわつく。意識を集中する。上家のネリーが切り出した。

淡、それを受けて改めて自分の手配を眺める。

ニヤリと少し笑い、牌を切り出した。

リーチは、しない。




491:2015/07/07(火) 22:07:02.72 ID:/6QtvnqRO

「なんと……」

久は唸った。大星淡がダブリーをかけなかったことに疑問を覚えたのだ。

「戦略を変えてきたかの」

まこの指摘の通りだろう。淡は聴牌を崩しー向聴に戻す。しかし、役を絡めやすい組み合わせに近づけたようだ。

「驚くことじゃありません。あの手なら確かにダブルリーチをかけずに粘ったほうがいいですね」

和は苦々しい表情で言う。相手の出だしがすこぶる好調なのに対し、咲の手牌がバラバラなのが気になるのだろう。

「ダブリーは制約じゃないのか……」

優希が呟いた。あの能力はドラゴンロードのような『制約』がないようだ。すなわち、遅い相手を眺めながら手を組み替える余裕があるのだ。

「……」

京太郎、黙って画面を見つめる。焦りは、ない。


494:2015/07/07(火) 22:27:08.36 ID:/6QtvnqRO

(いいじゃんいいじゃ〜ん!)

大星淡は大変機嫌よく牌を切り出した。
4巡目、二向聴まで戻したが役が絡みドラなしでも満貫にてが届く。
そして、手元には崩さずにとってある暗刻もある。
倍満もゆめじゃな〜いとウキウキしながら相手を待ち受ける。さあ追いついて見せろ、と。



誰も、リーチをかけない。
五巡目に入って改めて淡は卓上を見下ろす。ここからは油断しない。もしかしたら上がってきやがるかもしれないのだ。
捨て牌からはその気配はない。
ツモり、切る。手は進まながったが別に構わない。
カドまでまだまだあるのだから。

〜〜〜

(きたー!!)

「リーチ!」

高らかに宣言、リーチ棒をだす。
一応基本にならって、両面待ちの形にした。そして、次のツモ。

「カン!」

んでもって

「ツモ!」

淡はアガった。ところがどっこいカン裏がさっぱり乗らず、まさかの満貫そのまま。

(うぐぅぅぅなんでー!?)

満貫をツモあがりしたのに頭をかきむしる淡に三人の冷たい目線が刺さる。おっと失礼と姿勢を正し、気を取り直す。

(いいもんいいもん!上がったのは淡ちゃんだし!サァツギの局こそ……)

                       .  ¨  ̄ ̄ ¨   .
                . ´              `ヽ
               . ´                  :.
                ′                         :.
            /                        :.
            ,′                       ;.
            /                         /
              / {         ニニ二三三二ニニ       /
          /  \     ニ二二三三三二二ニ    /  イ
            /\_ \ ___   ニニ二三三二ニニ   ∠ イ |
        /  ,ィ   ̄ ̄三三|:ニニ三王 三l 三|ニニニ= | | |
.        厶イ |  i  二| 三トニ二三ト、三ト、 ト、ニニ= | |/
         j  j从|  | |、 | | | ト、ニ王ニ{{ o }}ニ=  | !
                 |  ト、圦乂| 乂| \{ \| ヽ{ヽ{   イノ
                 乂_{ jハ               从イ/´
               -=ニ`ト .    −    .イ二ニ=‐- 、_
              r=ニ    =ニ二|`ト   _ . r |二ニ   ニ7 }ニ〉
             ハ マニ   ニ二ハ         !二ニ    / / /ヽ
.            / Vハ \     ニ二ハー-  -一 j二ニ   / / / ∧
            ′ \\\   ニ二ハ───‐/二ニ  //イ /
            |      \\\  二∧    /二ニ ///,/ ,/  1
            |   }八  {\\\ 二∧  /二 /// // ∧   |

「!?!?」

対面の視線……否、死線を感じ体が震えた。
おもわず目をそらしてしまう。

(え、な、なになに!?ちょーこわい!?)


497:2015/07/07(火) 22:41:33.38 ID:/6QtvnqRO

(あ、淡ちゃんは怯まないもんね!テルーの妹だとかなんとかだけど、そんなのカンケーないし!)

その照が控え室で咲にたいそう怯えていることなどつゆ知らず東二局。
相変わらず淡は好調であり他家のスタートはやはり遅そうだ。

(ふーんだ、このまま突っ切って……)

「カン」

「っ」

対面、宮永咲のカン。
おそらく有効牌を引き入れられたと、直感が告げる。

(少し余裕なくなったけど、でもまあ有利なのは……)



「カン」

「ぅ」

三巡目、再び咲のカン。

「カン」

五巡目。またもカン、しかも全て暗カン。

おまけに、その五巡目のリンシャン牌。

「ツモ」

淡にとって完全に想定外、五巡目のツモあがり。

「三暗刻三槓子、リンシャンカイホー、満貫」

早い、強い。ドラが載ってないことが救いだ。

清澄との点差、咲の親満で縮まる。


500:2015/07/07(火) 22:59:08.07 ID:/6QtvnqRO

あ、ごめんなさい、淡はリンシャンでは上がってないです。見返してみたらこりゃ勘違いしそうに書いてあるわ……



咲は、すでに淡の急所を見抜いている……京太郎は悟った。
実は対局前に、淡攻略には簡単な抜け道があると言っておいた。どうやら見つけたらしい。

おそらく、ここから淡は相当苦い思いをすることになる。自分は聴牌スタート、相手は五向聴スタートで、自分の『遅さ』に苦しむ羽目になるのだから。

画面の中で、咲が左右の二人に目を運ぶ。その二人も各々を見合い、そして再び卓上を眺める。

スマとを開く。淡とのLIMEに当然、既読は付いていない。試合中だし。




「ポン!」

ネリーの牌に咲が無く。カンが積み重なり、淡の優位性が薄まる。

(カンでツモ増やして向聴数荒稼ぎとか、対抗できるかっつーのー!!もー!!)

淡はイライラしながら自分の親番の東4局を進める。手牌は相変わらず好調。ー向聴を維持しながら高めに作り変える。4巡目にして超良系の手が出来かけている。しかし

「カン!」

咲が、早い。恐ろしいほどの速度で手を作る。
理由は簡単だ。二人が、咲の鳴き頃の牌を切っている。

(私の点数を削りにきた……!!)

穏乃、ネリーの考えは読めた。防御力の異常に高い淡に手が届く咲に点数を稼がせ、その後に咲を削ろうという魂胆だ。そのために今は咲に協力しているのだ、『その方が手っ取り早いから』

(そんなのくやしーじゃん……!!)

強いから、警戒されているからこその作戦にしかし、まるで前座のように扱われてると感じ、淡はイラついた。そして、満貫確定の聴牌へと、牌を切り出す。

「カン」

(あっ)


501:2015/07/07(火) 23:05:29.20 ID:/6QtvnqRO

もちろん、相手の暗刻がなんなのかなど読めるはずもないだろう。しかし、やっちゃったと思わずにはいられない。
わずか五巡目で生牌を危険視など普通はしない。しかし、咲にその考えが甘かった。

「ツモ、リンシャンカイホー」

責任、払い

頭がクラクラする。

淡の総合能力は確実に咲に勝る。
しかし、他二人のブーストで、咲の火力、スピードが恐ろしいことになっている。

(勝てる?これ)

責任払いの5200、安くない。
己の中に生まれた不安をしかし、淡は強引に呑み下した。

(弱気なこと考えるな!負けるわけにはいかないじゃん!!)

三人が協力したからなんだ。そんなもの言い訳にはしない。私が優位なんだから目をつけられるのは当たり前。

(負けるわけには……!!)

焦る。最初にあった余裕など、最早かけらも残っていない。


502:2015/07/07(火) 23:21:03.49 ID:AaFMrJYGo

……

…………

………………

食いしばった奥歯が痛い。ような、気がする。

半荘1回目が終わった。
死に物狂いで打って、上がったのは二回。
最初の満貫のツモ、そのあと、咲にたいしてなんとか3900の直撃。

しかし、点差はわずか7000点まで縮まってしまった。



強い。

顔を覆う。手の隙間から差し込む蛍光灯の明かりがひどく鬱陶しい。

強い。

このままでは凌ぎきれない。

どうしよう

どうしよう

絶望が淡の胸の内を埋め始めた。
負けるのが、恐ろしい。
負けてしまう、恐ろしい。
悔しい、悔しい。
みんな、他のみんなは全員+収支で帰ってきて、私のせいで全て台無しになって、負けて

いやだ

いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ

「どう、しよう」

休憩時間は長くない。まだ余裕はあるが、二回目の対局が迫ってくるのが恐ろしい。

「……」

救いを求めて、スマートフォンを見る。周りに誰もいないいまこの廊下で、唯一、何かにつながっているモノだ。
すがるように、ホームボタンを押す。




LIMEが、一件

須賀京太郎:怖かったら呼べ


525:2015/07/08(水) 23:08:09.62 ID:98VPq0lVo

握りしめたスマートフォン。すでにスライドしてLIMEを開いている。
須賀京太郎が試合開始直前に送ってきていた短い文章が、他愛のない会話の一番下に表示されていた。

(……なんで、わかんのよ)

試合開始する前、というのが激しくムカついた。
私がこうなることを、見越していたかのようだ……いや、事実そうなんだろう。だって須賀京太郎、私が負けると予想していたのだから。

「……」

既読はつけてしまったが、無視してしまおうか。
気分転換で開いただけで、返信する気分ではなかった、言い訳はそれで済む。
不本意だが私は、凄まじい重圧に襲われているのが傍目から見ても分かるだろうから。

でも……

「……」

指が、動く

なんで、書こうか

偉そうに、とか、舐めるな、とか、憎まれ口でも送ろうか

そんな心配は無用と、強がって突っぱねようか。



結局、打ち込んだのは、『助けて』と、たったこれだけ。

あぁ、情けない、一皮剥ければ私はこんなに弱かったのか。

視界がじんわりと滲んでくる。そして、震える指で、送信を押した。


途端、奇妙な電子音がなる。

「はいはい、呼ばれて飛び出て即参上」

音の方を振り向くと、いま読んだばかりのはずの、金髪の男がこちらへ歩いてきていた。


527:2015/07/08(水) 23:15:02.39 ID:98VPq0lVo

「ほれ」

何を言うでもなく、その大きな手を差し出してきた。見ると、そこには小さな棒付きキャンディー。

「脳みそってスゲー大食いな器官でさ、しかも甘いもんしか受け付けねーらしいぜ」

「……そうなんだ」

なんとも、どうでもいい豆知識を聞かされた。
くれるのだろうと思って、それを手に取る。包み紙をとって、口に咥えた。

……甘酸っぱい、けど少しベタついている。
夏の気温のせいか。

「……びみょー」

「ははっ、まぁもらいもんの飴だからな、文句はその人に」

「もらったものを誰かにあげる?フツー」

笑う余裕がないから刺々しくツッこむけど、このノッポはどこ吹く風だ。

ーーー気楽そーな顔してさーーー

「……なんで、送ってすぐに来たの?」

「こりゃ呼ばれるなって思って。紳士たるものレディの呼びかけには5秒以内に応じるもんだぜ」

「ストーカー?」

「ちげーよドアホ」

「アホだと〜?」

あぁ、全く、こっちの気分も知らないで

楽しそうに、話しやがってさ


529:2015/07/08(水) 23:21:34.85 ID:98VPq0lVo

「こっぴどくやられたな、どーだうちのタイショーは」

「……一対一なら勝てるし」

「それ麻雀じゃねーし。で、どうだ。言った通りだろ?」

「……」

「お前、うちのあのあれにまくられて負けるって」

ポンっと、頭に手が置かれて、撫でられた。言葉とは裏腹に、手つきは優しい。

「……なんで、わかったの?私が負けるって」

「そりゃあ、3人がかりで潰されるだろーなーーって思ったんだよ」

「……ふーん」

安直な答えを聞かされた。確かに、あの3人に事実私は追い込まれている。大ピンチだ。血の池の方が生ぬるい地獄だとすら思うも。

「それと……もう一つ」

スッと、頭から手が離れる。顔を上げると、こっちをじっと見つめていた。

「お前は、お前が負けるのを怖がってるから、負ける」

その目は、真剣だったけと言ってる意味はまるでわからない。


530:2015/07/08(水) 23:29:36.19 ID:98VPq0lVo

「なぁ、麻雀で勝つって、なんだと思う?」

「……そんなの、点数が少しでも高ければ勝つでしょ」

「そおーだそのとーりだ!たとえ百点棒一本でも多い奴の、勝ちだ。100点でも低けりゃそいつの負けだ」

何を、当たり前のことを。京太郎は続ける。

「そのルールのせいてで俺の部内の一年生四人の中では、トップ率はダントツドベの0.95だ。わかるか、10回やって1回目トップになれるかどーかだ。そりゃそーだ、何もかもが劣ってる俺があいつらに容易に点数合戦で勝てるわきゃないからな」

「何その自虐情けない」

「やめろ死にたくなる」

えらそーに語ってたかと思えば途端に顔を曇らせる。

「まぁともかく麻雀ってのはそういうゲームだ……で、淡、聞くぜ。いま、この麻雀で勝ってるのは誰だ?」

唐突な、質問。
何を変なことを聞いてくるのか、億劫な口を開いて答えてやる。

「そんなの……私だよ。7000点、上にいる、けど……」

「そーだお前はまだ勝ってる!お前の仲間たちが、稼いでくれたおかげでな」

その言葉に、四人の顔が思い浮かぶ。
四人は、必死でリードを広げてくれた。対策されまくって、まるで自分の麻雀を打てなかっただろう、それなのに、決して引かず、互角以上の成果を出さて、私にバトンを渡した。

でも、そのリードは、もう……


531:2015/07/08(水) 23:39:30.43 ID:98VPq0lVo

「淡、お前が負けてるのは、お前が3対1に追い込まれてるからだけじゃねーんだ」

「……」

「お前は、麻雀の基礎を見落としてるぜ。大将戦が始まった時お前は28000点もリードしてた、それなのに、なんでお前は場をささっと流さなかったんだ?」

「それは……」

「こう考えてみろ、淡。28000点のリードってのは、仮にこれが個人戦だとすれば、お前は50000点だとすると2位は22000点っていう超超大差だ。おまけに実際は相手はまだ8万9万あるから箱割れにするのは難しい……だとすればお前がやることは一つ。速攻で流す麻雀だよ」

京太郎の顔は、真剣だ。

「そりゃ、早く上がれそうな高い手なら目指せばいいけど、普通はここまでの大差ならささっと鳴いて、パパッとクイタンなりなんなりで流したり、あるいは安めの相手にわざと振り込んだりしてもいい。お前は相手を無理やり遅らせられるんだし、相手が3人で挑んでくるならそれを潰すために早上がりに徹底すべきなんだ」

「なんでお前がそうしなかったのか」



「それはお前がこの大将戦を、チーム戦のラストじゃなくて自分一人の戦いとしか見てないからだぜ」

「っ!」

その言葉は、驚くほど強く、鋭く、私の胸を貫いた。

そんなことないと叫ぼうとしてと、声がでない。

反論したい、でも言い返せない、だってそれは、その通りだったんだから。


532:2015/07/08(水) 23:49:11.47 ID:98VPq0lVo

「お前は負けん気が強いからな……準決勝で負けたの悔しいって言ってたし。だから、この大将戦で自分も+収支で終わらせたかったんだ」

「……私は」

「そこが、お前の急所だった。高い手で上がって優位になりたかった、自分”も”勝ちたかった……そこが、相手を遅らせてなお食らいつく猶予を残しちまう、お前の弱点なんだ」

まぁ咲のあれはそれでも勝てるかどうか怪しいと思うけど、と、京太郎は顔を少し引きつらせて語るが、私は、もう何も言い返せなかった。

私は、私の勝手な欲望だけで、大局を見ずに、自分のことしか見ずに、その結果、みんなの稼いだ点数を無駄にしてしまった。

もう、ダメだろうか、勝てないだろうか
みんなに会わせる顔が、ない

「……嫌だよぉ……」

言葉が溢れる、涙が出てくる。

「負けるの、やだよぉ……勝ちたいよぉ……!!」

私が勝ちたいんじゃない、チームで勝ちたいんだ、今更私はそれに、気づいた。京太郎の、言葉で

でも、もう遅い、私のリードはもう少ししかない
もう……



「諦めるにはまだ早いと思うけどな」

すっと、前に何か差し出される。それは牌譜のようだ。
涙をぬぐって、差し出されたそれを見てみる。


534:2015/07/08(水) 23:55:54.21 ID:98VPq0lVo

「これ……牌譜のノート……?」

「さっき言った、うちの一年四人で打った牌譜だ……お前に見せたの内緒だぞ?部長に知られたら殺されちまう」

お前の偵察した詫びだ、と苦々しげに京太郎は言う。その牌譜に目を落とすと……

(……南3局で、京太郎…1300点?)

絶望的だ。ほぼ勝ち目はないしかし京太郎の南4局には、逃げ腰な姿勢は見当たらない、よどみなく、フラつきながらも上がりを目指している

「一位の和に役満直撃すりゃ捲くって一位だ、勝ち目はあった、まだ諦められなかったんだ、結局負けたけどな」

「さて……淡い、お前は今、どんな状況だ?」

私は……大星淡は今……

「私は……みんなが、稼いでくれた点数のおかげで、7000点リードして一位。残りは半荘一回。私は、相手の手を6向聴まで遅らせられる」

なんだ、まだ、ぜんぜんやれるじゃん。すくなくとも、この男のこの牌譜よりも。
てゆーか、私、有利じゃん。なんで、不安になってたんだろ。



536:2015/07/09(木) 00:01:52.70 ID:egcWSxF5o

「……うん……うん」

立ち上がる。話してる間に、あと少しで第二回開始の時間が迫っていた。

迷いは、断ち切った。
不安は、投げ捨てた。
よどみなんて、もう、ない。

まだ飴はけっこう大きい。流石に咥えたまま会場には行けないから、口から出して、京太郎にもたせた。

「え、おま、これ」

「ありがと、きょーたろー。でも、敵に塩送ったこと、こーかいさせてやるから!!」

不安なんて微塵もない、支えてくれたみんなのおかげで、私はまだ有利なんだから、あとはそれを私が最後までつなぐ。つないで見せる!

「おい待て!ほら!」

ああなんだと言うのだ!大きな声で呼び止められ振り返る。ぬっと、ハンカチを差し出された。

「涙ふいてけ、顔ひでーぞ」

「……サンキュー!」

受け取って、今度こそ走り出す。
私は負けない、白糸台のみんなのために、そして、お節介なこいつからアイスクリームをおごってもらうために!

「勝つぞぉ!うおおおおお〜!!」

「会場で叫ぶなって〜!!」


539:2015/07/09(木) 00:07:49.10 ID:egcWSxF5o

……

ぽつんと、取り残されてしまった。手元には、淡がなめていた飴だけがある。

「やれやれ……あいつの言うとおり、塩送ったことを後悔するかもな……しかし、これどーしろってんだ……」

手元の飴を見る。さすがに舐める気にはなれない。
もったいないけど、捨てちまうか……

と、考えていると、突然にゅっと湧き出した手に飴をかっさらわれた。

「うお?! ……て、え?」

「……」

するとそこにはなんとインハイチャンプ宮永照。口にはすでに棒付きキャンディを咥えている。

「……え、えーと」

「激励に来た、つもりだった」

ぽつりと呟いた。そして、こちらを見上げてくる。

「……役目は横取りされたけど、ね……ありがと、淡の友達さん」

そういって彼女は去ってしまった。

飴の処理はすんだが、どうにも……釈然としない。

「……帰るか」

トイレにしては長く出すぎただろう。大の方でしたといいわけでもするか。
俺は、もうすっかり静かになった廊下を、清澄の控え室に向けて歩き出した。


567:2015/07/10(金) 07:57:26.28 ID:o1Yx03U9O

対面に座った淡を見て、咲は思わず眼を見張る。

(……さっきまでと全然違う)

一回目の半荘が終わる頃には淡はすっかり憔悴しきっていた。
それもそのはず、自分ら3人に徹底的にマークされていたのだ。

(それでも、削りきれなかった)

咲からすれば、完全に想定外であった。それほどまでに大星淡の防御力は圧倒的だった。
京太郎のいう『急所』を見つけてなお、咲は淡を抜き去ることができなかった。

(ここからは他の二人も、敵になる)

残りの半荘、点数を稼ぐため、協力していた二人も問答無用で咲から点を奪いに来るだろう、厳しい戦いになる。

(それに、なにより……)

淡の、眼が違う。覚悟を決めた、強く輝く、星のような瞳。油断も慢心も一切ない、全身全霊でもって、『護り』にきている。

(それでも……負けたく、ない)

起親穏乃が牌をきった。続けて咲もツモり、切り出す。

(私は……勝つ。皆と一緒に!)


569:2015/07/10(金) 08:11:43.34 ID:o1Yx03U9O

大星淡は考える、どうすれば勝てるか。

無論、相手より点数が高くなくてはならない、それは大前提。
そして淡は7000点のリード……これは、あまり大きくない。
3900の直撃、場合によっては5200のツモで捲られるだろう。

しかし淡はこの7000点が、とてつもなく頼もしい防壁に思える。チームが稼いでくれた、私に繋いだバトンだ。

手を眺める。少しだけ考えて、淡は牌を切った。リーチはしない



(リーチしてこない……)

先ほどまでも見受けられた傾向だ。手を組み替えて、高い手を作るのだろうか。磐石ではない点差を穴埋めするためか。

(でも、そこが弱点!)

そここそが、淡に食らいつくための急所だ。遅れたスタートダッシュ『六向聴』を補うため加速せんと、咲が喰らい付く。

「ポン!」

穏乃の切った牌に鳴く。鳴いて、少しでも早く。
咲は素早く不要な牌を切り出した。

「ロン」

背筋が、凍りつく。

「30符一飜だけ、だけどね。1000点」

黙聴だ。理解して、咲は思わず冷や汗をかいた。

これは、強敵だ。



570:2015/07/10(金) 08:19:34.10 ID:o1Yx03U9O

京太郎は滝のような冷や汗をかいている。
別に、先ほどの淡との会話が誰かにばれたとかではない。知ってるのはおそらく宮永照だけだ。

では、なぜかというと画面内の淡の恐ろしさに、である。

大星淡はテンパイを維持したまま、リーチをかけず黙聴という手を取り、放銃率の低い咲から直撃を奪った。
点数こそ低いが、驚異的なのは速度とその隠密性だ。

(手が遅くなるハンデを背負って、あんなのと打ち合わなきゃいけねーのかよ)

今更ながら京太郎は恐怖した。淡を焚きつけるべきではなかった。まさかこれほどまでの魔物だとは夢にも思わなかった。

(これ咲が負けたら完璧俺のせいじゃねーーーか!!)

なんとも情けない話だが京太郎は自分の保身を考えていた。ばれたらやべーなとか、土下座の美しいフォームとか、ハラキリセプクの作法を学ぼうとかだ。

しかし、画面に映る、淡の顔を見て、その煩悩も露と消えた。

(いい顔しやがって)

そこには、覚悟を決めて、しかしあの独特の愛嬌も失わない美貌が映っている。とても、いい顔だ。

(頑張れよ……二人とも)

咲に心の中で謝る。この戦いはどちらかの応援ではなく、一人の麻雀うちとして見学させてほしい。
この試合は、きっと素晴らしい試合になるだろうから。


573:2015/07/10(金) 12:28:39.58 ID:nEybMtKBO

>>571
すまんのぅ、>>1の中で最強の戦法がとにかく誰よりも早くアガることという持論がにじみ出ているのぅ
ついでにドヤ顔してないよ、この上なく真剣な顔してるよ。エクレアを食べてるテルーくらいの顔だよ。
それにしてもなんでモモのAAあんなにたくさんあるん?





ーーー
ーー



(あぁ……気が遠くなってきた……)

頭をフル回転させすぎて淡は顔がぼんやりと赤くなってきた。知恵熱を初めて実感している。
とにかく、とにかく早上がりを目指し続けた。他家は五向聴以下自分は聴牌というハンデを最大限活かして、とにかく早く流した。
全て安手であったが、相手のアガるチャンスを潰し続けた。
そして、ついに、オーラス。

(……ちくしょー)

手元を見る。配牌は確かに、聴牌、しかし役がない。

(黙聴は無理かー、でもなー、咲だっけ?相手に手を組み直してる余裕あるかなー)

対面をちらりと見る。咲の方も相当余裕がなさそうな顔をしている。じかし向こうはささっと鳴いて、ついでにリンシャン牌を掴んで五向聴を早ければ3巡で聴牌まで持ち込んでくる。なんの冗談かと思うが、自分は人のことを言えないか、と苦笑する。

(リーチ棒出したくないなー)

二位清澄との点差は、わずか2300まで迫っている。1000点の直撃ならまだギリギリで勝てるが、リー棒を出してたらもうアウトだ。

(怖いなー)

頭がボンヤリする。勝負を仕掛けるのが怖い。やはり手を組み替えるべきではないか。しかし、しかし、だがしかし……



(いや、迷うな、逃げちゃダメだ)

さすがに今ここで逃げられない、どっちみち黙聴はバレているのだから、先にアガったほうが勝ちというシンプルなルールで行こう、そうしよう。
淡、一世一代の大勝負、点箱から千点棒を取り出し、宣言。

「リーチ!」


574:2015/07/10(金) 12:38:59.93 ID:nEybMtKBO

場が張り詰める。他二校も、点差は1万程度まで迫っている。誰にでも勝機がある。

(この渾身のダブリー、振り込んでよね)

あぁ、手を伏せた後にドッと淡の背中から冷や汗が吹き出てきた。
怖い、ちょー怖い。こんなに緊張した麻雀はいつ以来だろうか。テルーに初めて順位で勝つかどうかの卓でも、これほどの緊張はなかったと思う。

(……この一勝負で考えれば私は20000以上く削られてるよね、ダメだなー、私)

しかし、しかし今自分は勝っているのだ、仲間の稼いだ点のおかげで

(よし、きめた、とりあえず控え室戻ったらみんなに謝ろう。とくに菫に……いや、菫部長って言ったほうが今はいいよね?多分)

牌が切られてゆく

(とにかく早くみんなにあって、謝ろう、そうしよう)

牌をひく、あたり牌ではない。

(で、そんでもって、うちが勝ったら、その後すぐに清澄の控え室行こう。そんでもって、きょーたろーが出てくるの待って、どうだーかったぞーって自慢してやろう、そしてすぐにアイスクリーム食べに行こう)

ツモ番が、咲へ回る

(……負けたら、そうだな、その時は)

「……カン!」

(あーーーーー)



大星淡は負けを悟った。


596:2015/07/10(金) 22:42:41.17 ID:Q8VlD2Zto

………

……





あぁ       脚が重い

己の脚はこんなに重かっただろうか

まるで、足首に10キロのバーベルをくくりつけているようだ



あぁ       でも

戻らなくては

控え室に







ドアノブに手をかける。
……決心がつかない。
みんなに、どんな顔をして会えばいいんだろうか

全てを、台無しにして、私はどんな顔をすれば、いいんだろう。



手が動かない、ドアノブを回せない、まるで杭が打ち込まれなように手首が動かない。

だめだ、ダメダメ、だめなんだ、謝らないと





不意にドアが開かれた。

「あっ……」

「……ん?」

その先には、テルーがいた。
あれ?戻ってきてたんだ、と言いたげな顔だ。

あぁ……心臓が潰れてしまいそうだ。


597:2015/07/10(金) 22:49:13.14 ID:Q8VlD2Zto

「……ほら、こっち」

「あう……」

手を握られて、引かれるがまま、控え室の真ん中に連れてこられた。

みんなが、私を見ている。

「……ぁ……そ、の……」

謝ろう、そう決めたはずだ。

負けたら謝ろう。精一杯謝ろう。土下座してでも、謝ろう。
そう、決めたんだ、最初の一言は、言い出しにくいけれど。

みんな、私を見ている、と、思う。
私が顔を伏せてるから、表情は、わからない。
怒ってるのか、悲しんでるのか


「……ご……ごめん……」

精一杯口にした
それで限界だった。

すいませんでした、とか、申し訳ありませんでした、とか、丁寧な口調を意識したけど、結局出てきたのはこの三文字だけ

あぁ、菫部長に怒られるなーって、おもった。



とたんに、何か温かいのに包まれた


598:2015/07/10(金) 22:56:35.37 ID:Q8VlD2Zto

「ぇ……テルー?」

「……」

テルーが、私を抱きしめてた。あったかくて、やわらかくて、お菓子の優しい香りがする。

「……いい麻雀だった、淡。私の、自慢の後輩」

「っ」

ずるい

そんなこと、いわれたら

がまんできるわけないじゃないか

「うっ……ふぇ……うえぇぇぇぇぇん……ごめんなさい……ごべんなざぃ……ごべんなざぃぃぃぃ……みんなの、みんなが、取ってくれた点数……全部、私が、私が……」

強くテルーの体を抱きしめると、強く、抱き返してくれた。

また、後ろから何かが覆いかぶさってくる。

「馬鹿……あんないい麻雀見せられて怒れるものか。チームのために、己を捨てて……頑張ったな、淡」

右から

「淡ちゃんは頑張ったよ……みんな知ってる」

左から

「私の尻拭いで大変だったろう? ……もっと、お前に楽させてやれなくて、ごめんな」



あぁ、やさしくしないで

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!!」

泣き止みどきが、わからなくなっちゃうじゃないか



そのまま、みんな、私が泣き止むまで、ずっと抱きしめててくれた。あぁ、一生分の借りを作っちゃったかもしれない。


599:2015/07/10(金) 23:13:31.03 ID:Q8VlD2Zto

ー夜ー

「ではーーーーーーーー!清澄高校の団体戦で優勝を祝ってーーーー!!」

{   `                                         /,ヽ
ヽ    \                                   _, -‐ ´ ?_
  \     ヽ                              / \ /λ ヾ 、
   \     へ                          /  |iミ V.彡} l   } ヽ
       、     ー 、                     j   |l  ノ  j| |   ゝ 〉
        >、      ` ヽィュ_                    |i   ハ ゝ,  {| ヘ   \i
        /    \       \``ゝ,                }.   / ヾ、ヽ ヽゝ `,   ヽ
      /  |    , -‐       ` ヽ \           ノ. ∠`へ, '  ノ x弋 ヾミ 、 \
    〈  ',. |    }  }        \ }´`ゝ〜 ュ _ . 〃  i'〈弋::リ`   ´{テ:::} 〉ヽハ   ,      乾っ!杯っ!
    ヽ  }. |   ´  / ,,_       ゝ,,._      \ゝ 从 ,,    ,   ` ,,, / 从  /      ですわーーーーーーーーー!!!!!!
     ′. ヽ ヘ.__, -‐ ト _ >、        ̄ ` ヽ   .\ ', ヘ  ャー― ,   . /ヘ ゙,ソ /j ゝ
      ゝ  ー,,ュ, -‐ ´ ー´,,   ` ー-  ,      }  ヘ   ` ヾ , ヽ  ノ , ´{| ゝ /ノ\ `ゝ、
        ̄            ゝー‐< ,,  _`` ‐- ´   }     ヽ ー < | f メ ? \  \  `\
                       , -‐  `>ー- ェ   〉     \ /V ,ヘー- ュ  ゝ   ゝ、  ` ,,
                      /   /´´      \  \    .`  ひ二つ ∧   `ヽ  } ー 、  \
                  , -‐ ´    /  '      / ヘ            〉 \  |  、  ノ  ヘ  ヽ   }
                /       ノ ノ         〉、       /   i  \ ',  {   〉  \  \

「「「かんぱーーーーーーーーーい!!!!」」」

「うるせー……」

マイクによってより煩くなった龍門渕透華の乾杯音頭で、宴会場に寄り集まった長野勢が一斉に飲み物を喉に流し込む。
なんとかアルコールにしてくれと透華は必死にハギヨシに頼み込んだが、流石に無理だと突っぱねられていた。
代わりというか、宴会場を盛大に貸し切ったこの優勝おめでとう会は、どこから持ってきたのか海の幸山の幸詰め込み放題の超豪華宴会である。

「ちょっと!私より目立たないでよ!なんで優勝校の部長の私よりあんたの方が目立ってんのよ!」

「やかましいですわ!こうでもしないとこのssの私の目立ちどころがないではありませんですこと!?」

「ssってなに!?」

やかましく言い争う清澄部長と龍門渕部長を捨て置き、部屋の隅で、京太郎は静かにオレンジジュースを喉に流し込んだ

(……いずれぇ)

女三人よらばなんとやら、それならば20人近く集まったこれはなんなのか。阿鼻叫喚か、地獄絵図か、少なくとも男の夢とは言い難い。

(どうしようかな……)

そんなことを京太郎が考えていると、ぽんぽんと、肩を叩かれた。

「須賀くん、よければご一緒しませんか?」

そこにはごく最近龍門渕の執事さんだったと知ったハギヨシが、グラスとワインを手ににっこりと笑っていた。




601:2015/07/10(金) 23:24:51.23 ID:Q8VlD2Zto

「さ、どうぞ」

トクトクトクと、手にしたワイングラスに濃厚な色の液体が注がれてゆく。

「いや、いいんすか?俺が飲んじゃって」

「お気になさらず、男同士の話には酒がつきものでございます」

そういいつつ、優雅にくいっとワインを喉に通すハギヨシ。
動作のひとつひとつが様になっていてまるで映画の俳優のようだ。

それに倣い、京太郎もグラスの中身を喉に流し込む。
家で親の目を盗んで飲んだビールよりも、幾分か熱く感じる。

「くぁっ熱……でも、うまいな」

「そうでしょう、なかなかいいワインでして」

笑顔を絶やさずワインを口にするハギヨシ。
結構度数が強いはずだがためらいなく飲み込んでゆく。
執事は酒にも強いのかと、京太郎は内心畏れを抱いた。

「あのような女性の花園、須賀くんには辛いでしょう」

「あはは……五人は慣れてるんすけど、あの人数はさすがに、女子校に迷い込んだみたいで」

「心中ご察しします」

暗い部屋で、ワインを交わしての話し合い。
なんとも大人っぽくて、京太郎は静かに胸躍らせた。


602:2015/07/10(金) 23:34:55.55 ID:Q8VlD2Zto

「さて……せっかくの人目に触れない酒の席……年の差は4歳程度ですが、須賀くんは何か悩み事はございますか?」

唐突に語り出したハギヨシの質問が京太郎の胸を深くえぐった。

「悩みというものは人に打ち明ければ幾分か軽くなるもの、あわよくば解決策がわかるかもしれません。須賀くんの年の頃、私は多くの悩みに打ちひしがれていまして……相談できる大人がいれば、何度もそう考えました。須賀くんが、同じような目にあっていなければ、と思いまして」

全くもっていつもの調子でハギヨシが訪ねてくるが、全くもってその通りで京太郎は悩みを抱えていた。

この悩みは、自分一人で解決すべきではないか、京太郎は、なんとなくそう考えている。少なくとも、そう考えるを得ない性質の、悩みであった。



ふと、数日前を思い出す。

『何かに迷ったときは、身近な大人を頼ること』

白い髪の女性の言葉を思い出す。今思えば、あの言葉は今この瞬間を、予期していたのではないか。



「じつは……」

京太郎は、ポツリポツリと、胸の内をハギヨシに明かし始めた


603:2015/07/10(金) 23:44:46.78 ID:Q8VlD2Zto

「最近、一人の、同い年の女の子と知り合ったんです」

「最初見たときはなんだこの妖怪とか思ったんですけど……まぁ、なんやかんやで、交流ができまして」

「一回、一緒に遊びに行って、それ以外にも、なんかの縁で出会ったりして、それ以外にも、LIMEで話をしたりして……」



「……なんでだろう、俺は、今日そいつがピンチで負けそうってときに、自分の高校の麻雀データをそいつに見せちまったんです」



「そんな気はなかったんですよ、ただ、そいつが負けて打ちひしがれてるから、俺がもっとボコボコにされてる記録見せれば元気になるかなって……」



「でも、冷静に考えれば、なんでそんなことをしたかわからないんです」

「少し考えれば相当やばいことって分かるはずなのに、俺はいつの間にかそいつのところに行って、頑張れって言ってたんです」

「そいつを応援するようなそいつを励ますような、そいつを支えるようなことを、LIMEとかでいろいろ、行っちゃったり、して」



「それで、いまは……」

「清澄が優勝して、すげー嬉しくて、でも……頭の片隅で、いま、あいつは、どうしてるんだろうって考えてる自分が、いるんです」



「これがなんなのかよくわかりません……それが、俺の悩みです」

一通り語り終わった京太郎はワインをやけになったかのように飲み込む。ハギヨシは微笑ましげにそれを眺めている。


604:2015/07/10(金) 23:57:40.92 ID:Q8VlD2Zto

「……そうです、か……須賀くん、時に、今LIMEには何か連絡は来ていませんか?」

「え?」

京太郎はそう言われて、慌てスマホを取り出して電源ボタンを押す。なんだ、何も通知はない……


とたんに通知が届いた。新着メッセージが届いたようだ。

「……」

京太郎は化け物でも見るかのような目でハギヨシを見つめるが、ハギヨシはただニコニコと笑うばかりだ。

とにかく、その通知を開いて見ると、何の因果か、件の淡から届いたメッセージのようだ。

『今、旅館の外にこれる?』

文章からして、京太郎が泊まっている旅館の外のことだろう。無論、行ける。

「須賀くん」

ハギヨシが、京太郎を呼ぶ。

「皆様のことは、私にお任せを……君は、自分の迷いを断ち切るために、自分の信じた道を行きなさい」



京太郎は、すっと立ち上がった。少なからず酒を飲んだ体はしかし、少しもふらつきを見せない。

「ありがとうございました、ハギヨシさん」

京太郎が体を翻し部屋を出て行く。
それを見送った後、ハギヨシはグラスとワインを何処へやらと片付けた。

「頑張ってくださいね、須賀くん」

そして、ハギヨシはゆっくりと立ち上がった……



懐から執殺と書かれたメンポを取り出しながら


607:2015/07/11(土) 00:06:40.70 ID:AqvgCsPyo

「はぁっ、はぁっ……」

慌てて外に出てきた京太郎は、旅館の正門付近で息を整えた。
それは厚い雲に覆われているが、町のネオンが目に眩しく、まるで暗くない。

「あ、きた」

声の方に振り向くと、塀に寄りかかっていた淡がピョコンと体を起こした。

「お前、こんな時間に……」

「いーじゃんいーじゃん!それより、あのバカ騒ぎの中に混じってなくてダイジョーブなの?」

「あぁ、あんなかにいるのは正直つらい……」

昨日までと同じ明るい笑みを浮かべる淡に拍子抜けした京太郎はほっと一息ついた。

「ふーん、そっか……ちょっと、近くの公園まで行かない?」

「おう、いいぜ」

淡の誘いに京太郎は乗った。
旅館から少し歩き、まるで人気のない公園のベンチに腰掛ける




609:2015/07/11(土) 00:15:37.33 ID:AqvgCsPyo

「……」

「……」

二人とも、無言だ。

京太郎はなんとなしに空を見上げる。この辺りな東京にしてはまだ空気が綺麗な方らしく、空にはぼんやりと星が見えたりしたのだが、今日は雲が厚く、見ることは叶わない。

「負けちゃった」

唐突に淡がぽつりと呟いた。

「あの後さ、控え室に戻ったら……みんな、私のこと慰めてくれたんだ」

下を向いたまま、淡は言葉を紡ぐ。

「私が全部のリードを台無しにしたっていうのに、みんな、私は悪くないって、自分たちがもっとリードをって、無理させて、済まなかったって……」

声の調子は変わらないが、少しづつ、途切れることが多くなってきた。

「っ……あはは……こん、な……悔しい黒星、初めてだよ……白糸台の……大星、淡なのにね……笑えないや……」

なんとか声の平成は保っているが、ノイズのように混じる嗚咽で、もう、ごまかしようはない。

「っ……悔しい……!こんなの、悔しくて……みんなに申し訳なくて……!悲しくて、情けなくて……!」

一度決壊すれば、後はもうたやすい。きつく閉じた目からホロホロと大粒の涙が流れ出し、地面の色をポタポタと濃くしてゆく。

「みんなそれでも、優しく……!それで余計辛くって……!!」

隣でただうつむいて涙を長く淡を、どうすればいいか京太郎にはわからない。ただ、なんとなく、不器用に、淡の頭を優しく撫でてやった。
サラサラでツヤツヤの金髪が指をすり抜けてゆく。

そのまま、しばらく京太郎は淡の頭を撫で続けてやった。


611:2015/07/11(土) 00:22:46.15 ID:AqvgCsPyo

やがて、淡の瞳から溢れる雨が止む。

こてんと、倒れるようにして京太郎の肩に、頭を預けた。
甘く柔らかい香りがして、京太郎の鼓動が少し早くなる。




「なぁ淡」

ぽつりと、京太郎が言葉を漏らした

「空を見てみろよ。ひでー曇天だな」

言葉を受けて、淡がゆっくりと、腫れぼったい目を空へ向ける。その先には今にも降り出しそうな黒い雲が浮かんでいる。

「俺って、あんなんだ」

京太郎の言葉の意味がよくわからず淡は首をかしげた。

「いやな、俺の麻雀の戦績ってさ、あの曇り空に似てるんだ……」

「俺の一位率って、部内で一割を超えることないんだよ、三位以下が7割くらいだ、一位取れた日なんかもう、飛び上がって喜ぶね、そんくらい負け込みで、それがなんとなーく、あの空に似てるんだ」

淡は少し笑った。あの清澄メンバーにボコボコにのされてうめく京太郎の姿が脳裏に浮かんだからだ。


614:2015/07/11(土) 00:29:33.73 ID:AqvgCsPyo

>>610
わざと!わざとです!



「でもな、どんな曇りでも、ほんの少しの風が、その雲を吹き飛ばしてくれるんだ」

「風?」

「うん、風。とっさの閃きとか、運とか、そう言うのだ。そういう要素で麻雀って勝敗が変わるんだ」

「お前は今日たまたま風向きが悪くて、雲に覆われちまった……でもな、きっとそんな雲、すぐに風が吹き飛ばしてくれる、万年曇り空の俺が言うんだ、間違いないぜ」

ポンっと、改めて京太郎は淡の頭に手を置いた。無抵抗のまま頭を撫でられる淡は黙って、京太郎の言葉を聞いていた。

「そっか……今みたいな曇り空でも……ちょとした風が吹けば……」

「雲の切れ間に」

「星が輝く」

「……ま、つまり麻雀なんて運ゲーってことだからそんな落ち込むなってことだよ!あー、夜更かしして眠いぜーったく……」

自分のセリフが恥ずかしくなったのか、京太郎は顔を赤くしてポンポンと淡の頭を軽く叩き、態とらしい伸びやあくびをする。
そんな京太郎をみて、淡はクスリと笑った。


616:2015/07/11(土) 00:34:52.88 ID:AqvgCsPyo

「……うん、やっぱ、きょーたろーに、相談してよかった」

「なんかいったかー?」

ハンドボール仕込みの無駄にアグレッシブな柔軟体操を披露する京太郎に、淡はいよいよ頬を緩ませ、それこそ、満天の星空のような笑顔を浮かべた。

「きょーたろーに、ありがとーっていったの!」

「は、はは!礼を言われることなんてしてないぜ!お、俺そろそろ旅館戻るわ!じゃなー!」

「あ、まってよー!ウラ若き高校100年生を送ってかないつもりー!?」

思わず走り出し公園から飛び出す京太郎を淡が慌てて追いかける。



そんな、二人は気づかない。二人の真上に位置する雲が、ちょうど揺らいで切れ間を作り、そこに、輝く夜空が広がっていた。


617:2015/07/11(土) 00:40:47.75 ID:AqvgCsPyo

須賀京太郎にとって東京という土地は、憧れと、驚きと、そして若干の嫌悪を抱かせる場所である。

この驚きというのは実に多彩な意味を持つ。
まさかの40℃越え、まさかの迷宮地下鉄、まさかの出会い、まさかのetcetc……

そんなこんなを体験しつつ、個人戦第1日目の朝、京太郎は新聞を読みながら朝食を喰らっていた。

「はー、『またも襲撃!?マフィアボスの執事がボコボコに……』なんかんだこの執事を集中的に狙った事件ってのは、ハギヨシさん大丈夫かな」

「あの人ならば暴漢に襲われても余裕で返り討ちにしそうじゃのう……」

「で、あるか」

同じく朝食をかきこむ先輩二人よりも早く、朝食のフレンチトーストを胃に収めた京太郎は、試合に出場する咲と和の荷物を肩にかけた。

「じゃあいってきまーす」

「はい、咲のお守りよろしくねー!」

「わしらも後で行くからのー」



618:2015/07/11(土) 00:46:00.59 ID:AqvgCsPyo

「お待たせしました、須賀くん」

「京ちゃん、よろしくね」

「おう、じゃあいくぞ」

蒸し暑い日差しの中、三人は旅館の外へと踏み出した。

今日は2人の個人戦第一試合がある。京太郎は2人の荷物を運ぶ兼咲のお守りだ。ちなみに荷物運びはついでであり本命は咲の見張りである。

「あっつい〜……」

早くもグロッキーになりかけている咲の頬に冷たい麦茶の入ったペットボトルを押し付けて、会場へと向かう。和はその暑さにはもう幾分か慣れたようで、うんざりしつつも順調二歩を進めていた。

「2人とも頑張れよ、今日の個人戦」

「はい!1位2位の��、両方清澄に飾ってみせますよ!」

「どっちが金かは勝負だね、和ちゃん!」

2人の満面の笑みを見て頼もしくなった京太郎は、気合を入れて会場へ到着足を進めた。


620:2015/07/11(土) 00:54:13.34 ID:AqvgCsPyo

そして、試合会場に到着した。会場内には初日に勝るとも劣らない観客が詰め寄っており、その盛り上がりはいろんな意味で団体戦を上回るかもしれない。

「じゃあ、私たちは控え室に入ってます。須賀くん、荷物ありがとうございました、重くなかったですか?」

「あんくらい軽いもんだよ!じゃあ、部長たちの席確保してくるわ、頑張れよ!」

2人から離れて、京太郎は巨大モニターの設置されたルームの中の椅子4つほどに確保を示す荷物を置いた。
そのうちの一つに腰掛けて、ふうと一息、モニターを眺める。

「部長たちが来るまで30分くらいか……」

その間、暇だ。
暇つぶしに自分の荷物から麻雀の教本を取り出し、パラパラとページをめくる。
そしてしおりを挟んでおいた『牌の透視方』の項目を開き、いざ読みふけようと気合いを入れた

「きょーたろ!」

「おわ!」

その途端、柔らかい何かが後ろからぶつかってきた。


622:2015/07/11(土) 00:59:27.41 ID:AqvgCsPyo

「あ、淡か?」

「せーかーい!むー、つまんない」

首だけで振り返るの、ぷーっとむくれているのは見間違えようもない、星のような瞳を持つ大星淡である。

「あー、お前も個人戦出場枠か?」

「そう!こっちでは雪辱をハラハラしてやるんだからー!」

メラメラと燃え上がる闘志を瞳な携える淡は傍目から見ても相当気合いが入っている。

「そうか、俺は清澄の2人の応援だけど、お前も頑張れよ」

「そんなこと言っておきながら私のことも応援してくれるきょーたろーが好きだよ〜!」

「好きってお前……」

呆れたような口調ながらも頬を少し染める京太郎をニヤニヤとチェシャ猫のような笑いで眺める淡は、すっと姿勢を正し、京太郎にビシッと指をさした

「そう、実は今日は個人戦以外にも一つ大事な用事があったのさ!」

「大事な、用事?」


623:2015/07/11(土) 01:03:37.93 ID:AqvgCsPyo

「そう、きょーたろーに一つ、挑戦状を叩きつけに来たのだー!」

「挑戦状?」

意味がわからない。強い側から弱い側に挑戦状というのは意味がわからない。
頭にクエスチョンマークを無数に浮かばせる京太郎をくすくすと笑い、淡は、告げる。

「私こと大星淡は優勝してみせます!テルーよりも!咲よりも強く!優勝してみせます!」

なんと、と京太郎は思った。こういうことを臆面なく言えるのは淡の大きな強みだと思う。

「だから、一つ京太郎に約束してほしいことがあるの」

「え、それ強制?」

「モチのロン!」

「マジかよ」

京太郎はうなだれた。この元気っこが突きつけてくる無理やりの約束が、まともなものとも思えない。


624:2015/07/11(土) 01:08:02.20 ID:AqvgCsPyo

「その約束ってのは、なんだー?」

「それはねー……京太郎、今年の冬までに、個人戦、長野枠で出場できるくらい強くなって!」

「……は?」

また、無理難題を押し付けられたものだ。第一、それで淡になんのメリットがあるのか

「私もネトマで協力するからさ!ね!頑張ろうよ!」

「なんでお前にそんなこと言われなきゃいけねーんだよ」

「だって、そうじゃないと季節ごとに絶対に会えるって保証、ないじゃん?」

「……は?」

にこやかに告げる淡に、京太郎は少し、固まった。
会えるって保証。つまり、会いたいって、こと?

「おまえ、それ、どーゆー」

「はい!約束したからね。それじゃ、これは契約の証!」

ぼーっとしてる京太郎の頬に、淡は唇を寄せて……


625:2015/07/11(土) 01:09:53.95 ID:AqvgCsPyo






ちゅっ♪







629:2015/07/11(土) 01:13:48.59 ID:AqvgCsPyo

「……は?はぁ!?はぁーーーーーーーーーーー!?!?」

椅子から飛びすさり尻餅ついて無様に交代した京太郎は声にならない声を上げた

「アハハ!キョータロー面白い!」

「おま!おま!だって!おま!!」

幸い周りに人は少ないが、その少ない人多々は全員こっちをガン見していた。

「いまのは、この淡ちゃんとの契約の証、約束破ったら、承知しないんだから!!」

そして淡は振り返り、まったねーと、去っていった。耳が、真っ赤だ。



しばらくへたり込んでいた京太郎は、顔は真っ赤のまま立ち上がった。周囲の人間の視線が、痛い、死ぬほど痛い。

「はぁ……やれやれ」

また面倒ごとが増えてしまった、と、京太郎は首を振った。



取り敢えず、今日個人戦が終わったらみんなに麻雀の指導を頼まなくてはいけない。


630:2015/07/11(土) 01:14:50.36 ID:AqvgCsPyo

カンッ!!


696:2015/07/11(土) 21:42:29.28 ID:AqvgCsPyo

ーーー京ちゃんが好きだと自覚したあわいーーー





「はいはい、呼ばれて飛び出て即参上」

たったいま、数秒前、LIMEを送ったばっかり。
それなのに、すっかり見慣れた金髪の京太郎は、そばの物陰から姿を表した。

なんでもうここにいるんだろう。
呼んだらすぐ来てくれた、まるでヒーローみたいな登場に、少しだけ、ほんの少しだけ、胸が高鳴る。

「ほれ」

何かを差し出された。
麻雀ダコだけではないその手には、チュッパチャプスくらいの棒付きキャンディーが乗っている。

「脳みそってスゲー大食いな器官でさ、しかも甘いもんしか受け付けねーらしいぜ」

「……そうなんだ」

なんとも、どうでもいい豆知識を聞かされた。

私のことを気遣って、甘いものを、持ってきてくれたのかな?

胸が高鳴る。

「……びみょー」

気恥ずかしさを隠すように、すこしだけ、尖らせた口調で言う。

「ははっ、まぁもらいもんの飴だからな、文句はその人に」

「もらったものを誰かにあげる?フツー」

何が楽しいのか、にこにこと、京太郎はわらっている。気楽そーな顔してさ。

「……なんで、送ってすぐに来たの?」

「こりゃ呼ばれるなって思って。紳士たるものレディの呼びかけには5秒以内に応じるもんだぜ」

「ストーカー?」

「ちげーよドアホ」

「アホだと〜?」

あぁ、全く、こっちの気分も知らないで
ずいぶん前から、まっていてくれたんだろう。

すこしだけ、ほんの少しだけ、罪悪感が募る。


697:2015/07/11(土) 21:49:21.12 ID:AqvgCsPyo

「なぁ、麻雀で勝つって、なんだと思う?」

すこしだけ話をして、不意に京太郎が問うてきた。

「……そんなの、点数が少しでも高ければ勝つでしょ」

「そおーだそのとーりだ!たとえ百点棒一本でも多い奴の、勝ちだ。100点でも低けりゃそいつの負けだ」

何を、当たり前のことを。京太郎は真剣な顔だ。

「そのルールのせいてで俺の部内の一年生四人の中では、トップ率はダントツドベの0.95だ。わかるか、10回やって1回目トップになれるかどーかだ。そりゃそーだ、何もかもが劣ってる俺があいつらに容易に点数合戦で勝てるわきゃないからな」

「何その自虐情けない」

「やめろ死にたくなる」

えらそーに語ってたかと思えば途端に顔を曇らせる。

……私にだって、わかる。それは私を励まそうとしてるんだ。
不器用に、どう慰めればいいかわからなくて、自分の情けない姿を見せるくらいしか、方法が思いつかないんだ。

なんだろう、そんな姿が、すこしだけ、可愛い

「まぁともかく麻雀ってのはそういうゲームだ……で、淡、聞くぜ。いま、この麻雀で勝ってるのは誰だ?」

「そんなの……私だよ。7000点、上にいる、けど……」

「そーだお前はまだ勝ってる!お前の仲間たちが、稼いでくれたおかげでな」

その言葉に、四人の顔が思い浮かぶ。

まったく、生意気だ。京太郎のクセに
きっと、私に足りないものが何かわかっててそれで、厳しい口調で私に教えてくれてるんだ。

思い込みじゃあない。その顔を見れば、真剣そのものな顔を見れば、そのくらいわかる。表情を読むのは、麻雀打ちの基本だし。


709:2015/07/17(金) 12:19:32.93 ID:EQYZl2xJO

>>697からの続き





そんでもって、京太郎に励まされた私は……まぁ、なんというか、結論から言うと負けちゃいまして。

おまけに何が悔しいって、そのあと、控え室で大泣きしてしまったことだ。
あぁ、あぁ、思い出しただけで、あぁ、あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁわぁぁぁぁぁもおおおぉぉぉぉぉ!!!

「ふっはははははは、どうした淡、普段の態度が影も形も見当たらないぞ」

「やめて!スミレやめて!忘れて!私泣いてないもん!高校100年生は泣かないもん!」

「ふふ、淡ちゃんの泣き顔、写真撮っちゃった」

「タカミー!?」

「あっはははは、淡〜、ちょっとイケてないんじゃなーい?」

「うわああぁぁぁぁぁ!!」

もうダメだ、私はこのメンバーにこのネタで一生からかわれ続けるだろう。想像するだけで頭の中がすっからかんになる程に恐ろしい。

でも、まぁ、いやじゃ、ない。





「淡」

そのあと、珍しくテルーが気を使って私を控え室の外に連れ出してくれた。
テルーは私をからかってこないからなんとかかんとか、一息つくことができた。

「あぁ……ありがとテルー……あー……はずかしー……」

「気にすることはない」

テルーは何やら口に白い棒を咥えてピコピコと揺らしている。みたところ棒付きキャンディーの棒の部分か。
先程きょーとろーからもらった、ベトつく飴を思い出す。


710:2015/07/17(金) 12:28:45.46 ID:EQYZl2xJO

きょーとろー……?どういう……ことだ……

×先程きょーとろーからもらった、ベトつく飴を思い出す。

◯先程きょーたろーからもらった、ベトつく飴を思い出す。





「淡、あの男子は、清澄の生徒?」

ビクッと、思い切り体が震えた。
この状況からして、あの男子、というのはどう考えても……

「テルー……見てたの?」

「うん」

「……どの、あたりから?」

「脳みそってスゲー大食いってあたり。彼のおかげで私のお菓子好きが間違いではないことが証明された」

「ああぁぁぁぁぁほぼぜんぶじゃぁぁぁぁん!!」

またも撃沈、もうやめて、とっくに淡ちゃんの点棒はゼロだ。
つまりボロボロ泣きながらつぶやいたあのつぶやきもこのつぶやきも……あああわあわあわあわぁぁぁぁぁぁぁ!!!

「彼のおかげで、淡は変われた。本当は私たちの役割だっただけに、ちょっと悔しい」

ポンっと頭に手を置かれた。そのままなすがままに撫でられる。抵抗する気はない、気力がない。

「淡、あの男子の前では素直だったね」

「ちがうもーん……あの時だけだもーん……気の迷いだったんだもーん……」

「淡」

テルーは、ポンっと私の頭を軽く叩いた。
じっと、目を見つめてくる。


「ちょっとゴメンね」

「え?」

「照魔鏡!!」

「アワァァァァァァァ!!!??」


712:2015/07/17(金) 12:39:17.94 ID:EQYZl2xJO

突然なんだと言うのだ、慌てて壁にもたれかかっていた体を起こすと、テルーはこちらを見て、にっこりと笑った。

「うん。うんうん。淡、青春だね」

「なにそのよく雑誌で作る作り物笑顔!?」

「大丈夫、私は全部わかってる」

「覗いたからでしょ!なに!?なにを覗いたの!?」

「淡の淡い恋心、彼への」

「……へぇ、恋心、へぇ……へえあ!?」

「ふぅん、淡はあの彼に抱きしめて欲しいんだね、それで……あれ、それだけだ。それ以上は想像できない?キスとか浜辺で追いかけっことか××××とか『イリアステルに削除されました』とか歯磨きプレイとか」

「なにいってんの!?何言ってんの!?」

もうテルーの大暴走は止まらない、超絶営業スマイルで私も知らない私の心の内を暴くだけだ、もう絶対楽しんでる。

「ふふ……淡」

「ぎぎぎぃ……なによぉ……」

もうスクラップ寸前の私の肩を、ポンっと叩くと、やっと普段通りの無表情……に、少しだけ笑みを浮かべた。

「叶うと、いいね」

「……ふんっ」

散々からかわれた私は、ツンっとそっぽを向いてやった。それでもクスクス笑うテルーが鬱陶しい。

でもまぁ、そのテルーのおかげで、私は京太郎への想いに気づくことができた。



でもやっぱ納得いかないのでそのあとテルーのお菓子を奪って食べてやった。バレた。これは……面倒なことになっちゃった……


726:2015/07/17(金) 22:17:28.09 ID:0QpFn/flo

時系列を気にしたら負け

「海に行こう!」

「……うん?」

唐突であった。
本当、本当に唐突であった。
第1巡目で不要牌を切ったら人和されちゃいましたーってくらい唐突だった。
りんりんらんらんと真横で鼻歌を歌っている淡をスルーし麻雀指導本『これであなたも神域の打ち手』を読みふけっていた京太郎は思わず聞き返してしまった。

「あ、いまうんっていったね!いいましたね!はい、確かに言いました!」

「まて、何もかもをお前の中で進めていくな」

とうっと、淡の頭にハエも殺せないチョップをかます。いった〜いと、オーバーなリアクション。

「だって、せっかくの夏だよ!?麻雀だけで終わらせたらアラフィフになっちゃうよ!」

「お前その麻雀だけで終わらせる奴がこの東京に今何人いると思ってんだ」

「そいつらは全員アラカンになればいーの!私とキョータローは違う!」

ミャーミャーとやかましい猫のように騒ぎ立てる淡を前に、京太郎は深く、深海より深く、地球のコアくらい深くため息を吐いた。
短い付き合いだが、こう言い始めた淡が頑固だというのは重々承知している。ちうしれ、にもらずいぶん困らされたものだ。

「はいはいわかったわかったいってやるよ」

「やたー!じゃあ早速水着買いに行こう!」



「え?」

「だって持ってきてないでしょ?買わなきゃじゃん」

「あー……うん、そうか、そうだよな、変なことないよ……な?」

「ないない、ないよ、全然ない。すごく自然!」


727:2015/07/17(金) 22:27:05.21 ID:0QpFn/flo

というわけで、二人は仲良く連れ立って近くの水着専門店へとやってきた。

「水着、専門店……か。長野にこんなものはなかったな」

「え?マジ?」

「長野は内陸の土地だぞ」

「あっ……」

何かを察した淡はそれ以降何も言わず、そのまま店内へ徒歩を進めた。男女合わせて置いてあるらしく、カップルも少なくない…が、金髪コンビの二人は結構目立つ。

「じゃあ先に京太郎えらんじゃってよ!」

「そうか?じゃあ……予算的に……うん」

京太郎はどんな水着を選ぶのか、と目を輝かせる淡を背に、京太郎はドンドンと買い物カゴの中に商品を放り込んで行く。

「こんなもんかな……」

・麦わら帽子
・サングラス
・アロハシャツ
・真っ黒なトランクスタイプ
・サンダル
・ボディタオル

「……キョータロー……」

「な、なんだよ」

「ヤクザ?」

「ちがわい!」

しかしすでに淡の頭の中には浜辺のレディ達に恐れ慄かれる金髪長身でサングラスをかけた威圧感満載の筋肉モリモリマッチョマンしか浮かばなかった。


730:2015/07/17(金) 22:37:45.20 ID:0QpFn/flo

さて、今度は淡の番……となって、焦るのは京太郎である。
淡に手を引っ張られるままに連れてこられたが、女性用水着が木々のように辺りにそびえる女性水着コーナーは、なかなか近寄りがたいものがある。
これどうかしらとか彼氏に聞いてたりしてる人もいるから問題はないだろうが……

「あ、これかわいい!どうどうみて!」

と、声のほうを向くと淡は一つの商品に目をつけたらしく京太郎に見せびらかしている。

「あー……首の後ろで結ぶ奴か」

「そうそう!ホルターネックって奴!ビキニだよビキニ!」

どうどう〜?と胸の辺りに水着を当てて見せびらかしてくる淡。その涼しげな水色の水着は淡によく似合うように思える。特に、こう、なかなかに豊満な淡のバストを持ち上げるように強調するビキニ姿を想像すると……



「ふふーん、これ気に入ったっぽいね、じゃあとりあえず保留!」

おもわずぼーっとしてたら悟られたらしく、淡はそれを買い物カゴに放り込んでしまった。どうやら好みを悟られたようだ……

「じゃあこれは?どう?真っ赤なパレオ!」

次に取り出されたのは、やはりというか、なかなか大胆に胸を露出するパレオタイプのビキニだ。下半身には長めのスカートのようなものがついているため、必然的に肌色の多い上半身に目がいってしまう。情熱的な赤色もまた、淡には似合うだろう。

「なるほど〜、きょーたろーは正直さんだね!じゃあ次は〜」

と、ドンドンと淡は水着を漁る。


732:2015/07/17(金) 22:51:27.69 ID:0QpFn/flo

ふと、淡の買い物カゴに大量の水着が積み重なった頃、ふと京太郎の視界に白い水着が目に映った。それを見逃さなかった淡はその視線の先の水着をバッと手に取る

「ふんふん、モノキニかぁ〜」

取り出された純白のモノキニ。
ヘソの辺りにレースで編まれた花弁のような部位があり、そこから四方向に花弁が開いたようなデザインだ。胸の谷間、脇腹など、なかなかに挑発的なデザインをしている。

「ふふ〜ん……こういうの、好きなの?」

「どうだか」

ニヤニヤと笑いながらたずねる淡に京太郎はそっけなく顔を背けた

……耳まで真っ赤だが

「ふふふふ〜ん……ほんっとーに嘘つけないねーきょーたろーはさ!じゃあこれに決めた!サイズは〜……」

「い、いや別に好きとは」

「あれ?嫌い?」

「いや、別に、どっちでも……その……」

「あ〜もーかわいーなー!」

んーっと背伸びして淡は京太郎の頭を撫でてやった。

「ななっな、なにすんだよっ」

「うんうん、かっこいいきょーたろーもかわいーきょーたろーもいいね!じゃあ買ってきまーす!」

そのまま、選考落ちした水着を一瞬で元の場所に戻すと、他の幾つかの商品と一緒に淡はレジへとかけて行った。

「……知られてはいけないことを、知られた気がする」

周囲の生暖かい視線をこらえながら、よろよろと京太郎もレジへと這っていった。

淡のお買い物
・モノキニ
・ラッシュガード
・麦わら帽子


736:2015/07/17(金) 23:02:22.34 ID:0QpFn/flo

そして、そのまま淡に引っ張られるがままに電車を乗り継いで、ついに二人は海へと到着した!

「海だ〜〜!やったーーーー!!ジャカジャン!」

「せーかい中をぼーくらのー……何言わすかこら」

すでに体力をほぼ削られた京太郎は、元気よく飛び跳ねる淡についていくのがやっとである。

暑い、すんごく、暑い。午後1時くらいだろうか、もう日差しは生命ある全てを焼き尽くさんとするほどサンサンと降り注いでくる。いや、惨々と言うべきか。

「じゃあ早速着替えてこよう!海の家の前で待っててね!」

元気よく更衣室へ飛び込んでいく淡を見て、まぁ、せっかくなら楽しむか、と、苦笑いしながら京太郎も男性更衣室へと足を運んだ。





「……」

海の家の前のベンチの一つ。一人の男が腰かけている。

その長身は、どうやら足の長さが理由らしく腰の低いベンチのせいでなかなかに窮屈そうだ。
短めの金髪は麦わら帽子に収められ、鋭い眼光は真っ黒なサングラスに隠されている。
アロハシャツの隙間から覗く分厚い胸板や割れた腹筋、トランクスタイプの水着から覗く引き締まった太もも。

それは、誰が、どう贔屓目に見ても、近寄り難いくらい、怖かった。おまけにそれがはるか虚空を眺めているのである。尚更だ。


737:2015/07/17(金) 23:11:00.55 ID:0QpFn/flo

>>734
ロン(フィジカル



「おっまたせ〜〜〜!」

すると、そんな人々が思わず振り向くくらいかわいらしい声が響く!男どもはその声の主人を見て鼻の下を伸ばし、女どもは嫉妬に目を細めた!

その恐ろしい金髪男とお揃いの麦わら帽子からは、しかに長く、艶やかに、きらめく金色の髪が揺れている。
顔は喜色に染まり、クリーム色のラッシュガードに覆われた体躯はしかし、でるとこは出て、締まるところは締まったボディを隠しきれていない。
肌は日本人離れして白く、シミ一つもない。そして、それより何より、帽子の影に隠れているはずの瞳が、何よりも魅力的に輝いていた。

だれだ!!?この美女におっまたせ〜と言われたのは誰だ!?と男たちが視線を走らせる!果たしてその美少女の向かった先には……



「きょーたろー!」

「ダアアアバカ!!抱きつくんじゃぁねえ!!!」

「イージャンイージャン!役得でしょ!」

「こっちは命がけなんだ馬鹿野郎!!!」

あの、おっかない男であった。

男たちは血の涙で砂浜を染めた。


738:2015/07/17(金) 23:18:53.17 ID:0QpFn/flo

「えっへへへ〜、じゃあ早速泳ごう!」

「はいはい……」

淡にひかれるがまま、海辺の方へと向かって行く。砂浜を濡らして、引いてまた濡らし、を繰り返している浅瀬へと足首をつからせる。

「ひゃーつめたい!」

「あぁ……すずしいな……」

アロハシャツと帽子はベンチの近くに置いてきた。もう濡れるのは怖くない。だんだんとテンションが上がってきた京太郎は、手首を掴む淡の手を外すと、ぐっと身をかがめ、そして跳ねた!

「わ!」

「イヤーっ!」

そのまま、ダッシュ、そしてバク転、派手に着水。周囲に盛大に水しぶきが飛び散った。

「す、すごーいきょーたろー!」

「へへ、昔取った杵柄ってな」

頭の先まですっかりずぶ濡れた京太郎は、警戒心なく駆け寄ってくる淡に、一気に水をかけた!

「ひゃっ!」

「どうだ!お前も濡れろ!」

「やったなこの〜!どりゃー!くらえすたーすぷらっしゅ!!」

「ただの水かけじゃねーか!」

そのままギャーギャーと、色気も何もないまま二人は盛大に水を掛け合う。
ついた当初感じていた疲れは、すっかり京太郎から消え去っていた。


740:2015/07/17(金) 23:30:33.96 ID:0QpFn/flo

「むぐむぐ……ぷはっ」

「どうだ」

「ちょっとはやいよー……」

暫くはしゃいだ後、少し離れた場所で二人は泳いでいた。淡は浮き輪装着、京太郎は立ち泳ぎである。

「お前がそんなのつけてるからだろ」

「むー、きょーたろーにはレディーを待つっていう精神がないんだね」

「お前以外にはあるよ」

「なにそれ!」

ギャーギャーと喚いてくる淡におもわず京太郎は笑ってしまった。それにつられて、少し遅れて淡も笑いだす。

「あははははっ!……ふー。ねー、京太郎」

「ん?」

急に真面目トーンになった淡に、京太郎も少しだけ真剣になる。

「……来年の夏も、その次の夏も、こうやって、二人で遊びたいな」

「……」

「もちろん夏だけじゃないよ。春は桜、秋はもみじ、冬は……雪、ないんだよなぁ……でも、インハイ出れば、こっちに来れるんだから……その……」

「……頑張って、麻雀」

「……おう」

こっぱずかしくなって、京太郎は浅瀬の方へとくるっと向いた。

「さあさあのろまな大星さん。浅瀬まで競争と行こうぜ。買った方がコーラ奢りな!」

「え、ちょ!」

「ヨーイドン!」

「ま、まってよー!きょーたろーのばかー!」

後ろで喚く淡を放って凄まじい勢いで京太郎は泳ぎ始めた。今日は散々やられっぱなしなのだから、このくらいの仕返しは、許してもらいたい





カン!


744:2015/07/17(金) 23:42:29.78 ID:0QpFn/flo

エピローグ

須賀京太郎にとって東京という土地は、憧れと、驚きと、そして若干の嫌悪を抱かせる場所であった



あった。過去形であって、もちろん今は違う。
須賀京太郎にとって東京という土地は、もはや長野についで二番目に長い時間を過ごした場所であり、もはや憧れや驚きなどとっくに枯れ果て、いまや臭い空気と濁った空と、蒸し暑い温度に嫌悪を抱くばかりである。

だが、それでも、ここには魅力がある。

「春のIH以来だな……」

去年の冬の頃に買ったキャリーバッグをどかっと地面に下ろし、京太郎は一息ついた。
予算を節約するために、交通手段は深夜バス。本来なら新幹線でひとっ飛びなのだが、個人的な理由により、夏休みに入ってから速攻で課題を終わらせた京太郎は一足早く東京入りしていた。
そのため、大会期間に入るまでは安ホテルで節約生活だ。財布の中にはバイト代が詰まっているが、無駄遣いは避けたい。

「……さて、あいつは……」

バスの止まる場所は教えてあったはずだ。
人で賑わう辺りを見回してみる。すると、見当違いの方向を向いてピョンピョンと跳ねている見慣れた金髪が目に映った。
ばれないよう、そろりそろりと近づいてみる。



「うーどこだろどこだろ……」

「……あーわい!」

「あわわわっ!」

後ろから、そいつを抱きすくめてやった。一瞬身を縮ませたものの、こちらの正体に気づいたそいつは、パアッと顔を明るくして無理やり振り向きこちらに抱きついてくる。

「きょーたろー!」

「春以来だな」

「うん!うん!長野県一位おめでとう!」

「おう!」

須賀京太郎。清澄高校二年生。
長野県男子個人一位である。


745:2015/07/17(金) 23:50:16.37 ID:0QpFn/flo

そのまま近くのカフェになだれ込んだ二人は、テーブルを挟んで、淡は紅茶を、京太郎は珈琲を口に運んでいた。

「いやー、本当に京太郎はすごいよ!」

「お前に散々叩き潰された成果が出たな」

「ふふーん、高校101年生の淡ちゃんのおかげだね!」

「お前それまだやってんのかよ」

苦笑いとともにブラックコーヒーを啜る。その好みだけは理解不能だと淡に突っ込まれた。眠いのだから仕方がない。

「で、京太郎……次の目標わかってるよね」

「おう、勿論……」

少し溜めて、宣言。

「次の目標は、俺とお前、揃って個人戦で優勝すること」

「そのとーり!二位なんてちゃちいことは言わないよ、やるんなら優勝!」

「そしてその後に……」

「エキストラマッチ!」

そう、今年の夏は、昨今さらに加速した麻雀旋風に乗るように、インターハイに新たな目玉が追加された。
それは、男子女子個人戦の1.2位を集めたエキストラマッチである。

「そこで戦うのが私たちの目標!忘れないでよね!」

「あったりまえだろ!お前こそ咲にやられんじゃねーぞ」

二人は、お互いの目標を再確認し、そして、お互いを激励しあった。


746:2015/07/17(金) 23:55:25.23 ID:0QpFn/flo

          /   /     |   | |   | |  :       l :l   |  |   :|   | |
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       /   |  :.八   _/ {::{:::刈`|  |  l:  /´{::{:::刈\,_|  イ  /ー―‐ ..__
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.    /:.:.:.:.:.:.:.::′ ::|:.:.|\圦                       / j/l/.:.:′:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.∧
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.         i |   j/,    /イ`メ、   |  小 ||   ト.!
          j .|  ∨/    / |/ ヽ  |  ァT丁l   | |
         ノ i|  V    j 抖竿ミ    ノ ノ ,ノイjノ   | i
___ ____彡' , i|  i| j   八|:x:x:    /ィ竿ミ 刈    | }
 ̄¨ え≠  / 八 i|/l   |  |        :x:x:/ ノ    | ′
 /  -‐ '    ハ  八  ト、  ヘ.__ `  厶 イ   ノ
/    __,.斗‐=≠衣  ヽ八\ 丶.__ソ  . イ(⌒ソ  イく     きょーたろーこそ!
     jア¨¨^\   \   \ >-=≦廴_  ア /ノヘ\
  斗ァ'′     \   \   ヾ. \___ ⌒ヾく<,_ `ヽ )ノ
/圦 |       、\   ヽ   、∨tl  `ヽ . ∨ V\ i
 { `|           Vi:\  ハ  i } |    } i }  ∨,} }
≧=- |         辻_V\`i}  i } |  /} iハ}   辻ノ
   ノ          ¨〕V//リ  iノ ////V〔    ¨〕



747:2015/07/17(金) 23:56:25.05 ID:0QpFn/flo

もいっこ!カン!


749:2015/07/18(土) 00:02:26.03 ID:ojKRXrYlo

         n∧
         i /
         | | 
         | .| 
         | | 
         |  w    .| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
         J( 'ー`)し   |  かんけつ |  
        .ノ†:::( ⌒\  |_____|
       (:::::::::::ヽへ \    .|
        i::::::::/   \\ . |   
       .|::::::(       \\、|    
        i:::ノ ヽ       ヽ、っ) 
        .i/   ノ        |
        /  / \
        /  ./ \ ヽ、_ 
        / /   ヽ、_ \ 
       / (       ヽ、\_ 
      /  ノ        \ ヽ 
     / /          ヽ ( 
     / /             ヽ)
   / )
  ./ / 
  .し' 

それでは依頼をしてきます。いやあ初ssはやっぱりグダグダだったね、死にたい

次スレ立てたらここにリンクはるかんね


750:2015/07/18(土) 00:03:05.99 ID:hQBYM2KWO

おつあわー!


753:2015/07/18(土) 00:13:15.85 ID:ojKRXrYlo

憧「憧れた夢に」京太郎「立ちはだかる現実」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1437145811/

ヘイ


SS速報VIPに投稿されたスレッドの紹介です。
元スレ:
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1426167617/