1:2013/03/01(金) 00:42:14.25 ID:N+w4N8ya0

やさぐれてるてるとクロチャーの淡々とした話

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1362066134



2:2013/03/01(金) 00:43:30.28 ID:N+w4N8ya0



「行ってきます」

誰もいない部屋にそう言い残して今日も対局場へ向かう。

何も考えずとも大抵の勝負に勝てるようになった今、プロに入ったばかりであまり勝てなかった頃の高揚感や向上心などは無く、生活費の為に惰性で麻雀を打ち続ける毎日。

仕事で麻雀をするか家で本を読むか、ただそれだけの毎日。

麻雀は楽しくない。つまり、毎日が別に楽しくない。そんな夏のある日――





3:2013/03/01(金) 00:44:38.50 ID:N+w4N8ya0



ピンポーン


玄関のチャイム。一人暮らしには広すぎるこの部屋を訪れるのは、菫以外では何らかの勧誘に来る人だけだった。

「はい」

「あの、保険のご案内に参り……って、宮永照さんですかっ!?」

ドアを開けた先に懐かしい子。

「阿知賀の」

「は、はい! 阿知賀女子で先鋒だった松実玄です! 憶えていてくれたのですね!」

私が高3の時のインターハイで対局した子。

準決勝では手痛い一撃をくれた張本人。あの頃と変わらず純粋で優しそうに笑う子。




4:2013/03/01(金) 00:45:31.75 ID:N+w4N8ya0


「保険の勧誘なんてやっているの? 旅館は?」

確か実家は旅館を経営しているって、選手紹介の時に言われていたはず。

「旅館の方は今は人手が足りているので、しばらく社会勉強をと思いまして。今は東京で働いているのです!」

ビッと敬礼みたいなポーズをとって答える。何で敬礼なんだろ? おかしな子。

しっかりしているようでどこか抜けているような、よく分らない子というのが率直な感想だった。

「入る?」

「いいのですか?」

「せっかくだから」

「で、では、失礼します」

そう緊張されるとこっちも緊張してしまう。

というか、どうして私は部屋に招き入れたんだろ? 普段なら軽く挨拶して、ただそれだけなのに。




5:2013/03/01(金) 00:46:27.46 ID:N+w4N8ya0


「とっても広いお部屋ですねぇ」

「うん。ここ、家族向けの物件だから」

「同居の方でもいるんですか? あっもしかして妹さんですか?」

この子の中では姉妹というものは仲が良いものだと決まっているみたいだ。

嬉しそうに話すその顔を歪めてやりたくなる。

「私には、妹なんていない」

「え……」

咲が高校選手権に出てきて以降血縁関係について幾度となく質問され、その度に吐いたこの言葉。

発するたびに針を心臓に突き立てられる気分に陥っていたこの言葉も、今では何の躊躇いもなく言える。

正直に言うと、私はもう咲に対して怒っていない。でもわざわざこちらから歩み寄るのも億劫だった。

だから疎遠なまま。ただそれだけ。




6:2013/03/01(金) 00:47:28.31 ID:N+w4N8ya0


「そうですか……では、他の同居人……まさか、恋人とかですか!?」

この子、メゲないな。

「恋人なんていない。ここには一人で住んでる」

「えぇーこんな広いお部屋なのに勿体無い。空いてるお部屋もいっぱいあるのではないですか?」

「何も置いていない部屋が二つある」

「やっぱり。それにしても……恋人、いないのですね。宮永さん、とっても素敵なのに」

「素敵? 私が?」

「はい! 対局中はとってもかっこいいです! それに物静かだけど、イザという時はとっても頼りになりそうで!」

「……」

そんなのあなたの勝手なイメージでしょ? 何だかイライラしてくる。
……憂さ晴らしにちょっとからかうくらいはいいよね。




8:2013/03/01(金) 00:48:35.31 ID:N+w4N8ya0


「だったら……」

「?」

「……だったら、結婚してよ」

「え!?」

「そんなに私が素敵だって言うんなら……あなたが私と結婚してよ」

「!?」

驚いてる驚いてる。顔を真っ赤にしちゃって。かわいい。
iPS細胞の発達と法改正の結果同性婚も認められるようにはなった。
それでも、未だにマイノリティであることに変わりはなかった。ましてや、私達はまともに会話するのは今日が初めて同然の仲なのだから。

「あの……今日はもう帰ります」

「ん」

顔を真っ赤にして松実さんはこの部屋から出て行った。

一人で過ごす退屈な休日が戻ってきた。





9:2013/03/01(金) 00:49:10.53 ID:N+w4N8ya0



――――
――――


懐かしい顔に会った次の日、またチャイムが鳴った。

「はい」

「お、重い……」

「松実さん!?」

昨日酷い追い払い方をした子が戻ってきた。とんでもない大荷物を抱えて……

「えっと……どういうこと?」

「照さん、結婚っていうのはものっすごく、大切なことですよ!」

照さん?

「そ、そうだね」

「ですから、お互いの事をよく知るまで、そういう事は決めてはいけないのです!」

「ん?」

「というわけで、今日からお世話になります! 松実玄です!」

「は、はぁ」

毎日が変わってゆく、そんな気がした。





10:2013/03/01(金) 00:49:37.96 ID:N+w4N8ya0



――――
――――


松実さん、いや、玄がここに転がり込んで来て3日。今日は休日。

「〜〜〜♪」

玄は鼻歌交じりに掃除をしている。
彼女は毎日、掃除、洗濯、料理と率先してやってくれて、その出来も申し分ない。
はっきり言って、かなり役立ってくれている。私はいつもベッドに転がって読書に専念できた。

それにしても、この子は何を考えているのだろう。

「どうしてこんな所に来たの?」

「? 照さんが言いだした事ですよ?」

「あ、いや、そうだけど……」

「?」

何も考えていないのかもしれない。




11:2013/03/01(金) 00:50:18.75 ID:N+w4N8ya0


「いつもお姉ちゃんが言っていたのです」

「ん?」

「寒そうにしている人がいたら暖めてあげなさいと」

それって、物理的な意味じゃ?

「あの時の私には、照さんがとっても寒そうに見えました」

「……」

「それに、私も東京で一人暮らしを始めて数か月ですけど、何ていうか、その……」

「寂しかったんだ」

「あ、えっと……はい……」

耳まで真っ赤にして俯いている。

「何だかすいません……」

「部屋、広すぎたからちょうどいい」

「!」

「よろしく、玄」

「はい! 不束者ですがよろしくお願いします!」

不束者って……本当に変な子。

こうして奇妙な共同生活が本格的に始まった。




12:2013/03/01(金) 00:50:54.77 ID:N+w4N8ya0



――――
――――



玄がここへ来て1か月たった休日。
今日も私はベッドでゴロゴロ読書。
家事をやっている時以外は、彼女はテレビを見たり、読書中の私を眺めたり。何が楽しいのか時々ゴロゴロしている私を見てクスッと笑うことがある。

「私なんか見ててもつまらないでしょ?」

「あ、すいません。気が散りますよね」

「別にそんなことないけど……退屈でしょ? 外に遊びに行ってきてもいいのに」

「いえいえ。こういうのは慣れっこなので。家でゆっくりするほうが落ち着きます」

「慣れっこ?」

「はい。照さんが家でゴロゴロしている所はうちのお姉ちゃんにそっくりなので」

「そう?」

「はい! こたつに入っているかいないかと、おもちがあるかないか以外はそっくりです!」

おもちってなんだろ?そしてなぜか胸部に視線を感じるのはなぜだろう?




13:2013/03/01(金) 00:51:23.44 ID:N+w4N8ya0


「だから照さんは気にしないで過ごして下さい!」

そう言われても流石にこれ以上退屈な目にあわせるのもどうかと思う。

「うーん……じゃあ、玄も何か読む?」

「本ですか? 私は教科書とお料理の本くらいしか読んだことないですよ?」

「じゃあ、まずはコレ」

本棚の奥から取り出した本を見て玄が顔をしかめる。

「む。これ、子供向けじゃないですか。照さん、私の事馬鹿にしてますか?流石に怒りますよー」

「いいから。読んでみて」

「むむむ……わかりました」





14:2013/03/01(金) 00:52:08.50 ID:N+w4N8ya0



――
――――


玄に世界的に有名な児童文学の本を進めて1時間くらいたった。

「ほうほう……ブラシとリボンがこんなところで役に……」

「棒付きキャンディー食べたいなぁ」

黙々と読書する私の隣で時々声を上げる玄。私が選んだ本に熱中してくれているのは嬉しくて、かわいいんだけど、23才の女の子としてはどうなんだろう……
活字に対して慣れさせるつもりで渡したのに、こんなに真剣に読むなんて。

「おぉ〜、無事脱出できました!」

そろそろ読み終わるかな。次は……




15:2013/03/01(金) 00:52:55.75 ID:N+w4N8ya0


「照さん照さん! これ、続きは無いのですか!」

「全3冊だから後2冊ある」

「続きをお願いします!」

「分かった」

本当はもう少し対象年齢を上げた本にするつもりだったけど、まぁ、いいか。

「ありがとうございます!」

ひったくるようにして2冊目に取り掛かる玄。
見ていて微笑ましい気持ちが湧いてくる。

「ふふっ」

「わぁ……」

「ん?」

気付けば、玄がぽけーっとした表情で私を見ていた。




16:2013/03/01(金) 00:53:35.07 ID:N+w4N8ya0


「何?」

「うわわっ」

何故か慌てている。

「どうしたの?」

「あ、いえ、照さんも笑うんだなぁって」

「? 別に笑ってない」

「えー……絶対笑ってましたよ」

「笑ってない」

「あ、はい……」

本当におかしな子。





23:2013/03/03(日) 00:55:08.92 ID:hR6xBfp40

ちょっと更新。

>>21 児童文学で思いついたのはこれでしたw


24:2013/03/03(日) 00:55:47.94 ID:hR6xBfp40



――――
――――


「行ってくる」

「では、お気を付けて」

「ん」

玄が転がり込んで来て2か月。
家を出る時の挨拶に返事があることが普通になったある日。

「ただいま……ん?」

帰宅した私をこたつが待っていた。

「まだ冬どころか秋めいてもないのに何でこたつ?」

「あー、えーっと、そのですねー……」

珍しく歯切れが悪い。その時、誰も入っていないはずのこたつがモゾモゾ動いた。




25:2013/03/03(日) 00:56:51.65 ID:hR6xBfp40


「……」

「えっとですね……」

「うちじゃ飼えません。元いたところに返してきなさい」

「うぅ……どうしてもダメですか?」

「ここ、ペット禁止だから」

「ペット? 何の話ですか?」

「? 犬だか猫だかを拾ってきたんじゃないの?」

「ああ、なるほど! いえ、違いますよ。ほら、お姉ちゃん、挨拶して」

「あ、あの、松実宥です」

こたつから、片腕がでてきた。
裏側にまわって見ると、この時期なのに長袖でマフラーを着けた人が入り込んでいた。




26:2013/03/03(日) 00:57:57.55 ID:hR6xBfp40


「これは……?」

「お姉ちゃん、これからの時期あまり外に出たがらないので、旅館を手伝えなくて暇だから、私の所で過ごしたいんだそうです。……だめですよね?」

「……」

「……まだ一部屋余ってる」

「いいのですか?」

「うん」

あんな申し訳なさそうに言われると普通なら断るようなことでも断れなくなる。

「よかったね、お姉ちゃん」

「うん。ありがとう、照ちゃん」

「私からもありがとうございます!」

ま、いいか。
玄が来て2か月。こたつが出た。





27:2013/03/03(日) 00:58:49.26 ID:hR6xBfp40



――――
――――


松実さん、いや、宥が来て1か月。最近気づいたことがある。

「照さん、照さんの分の洗濯物、こちらに置いておきますね」

「う、うん……」

玄が洗濯機にかけたものを、玄が干して玄が畳んで、

「ごめんね、お姉ちゃん、そこ掃除機かけるから、ちょっと動いてね」

「はぁーい」

「……」

玄が掃いて、掃除機を掛けて、拭いて、

「お夕飯の買い出し行ってきますねー」

「う、うん……」

「玄ちゃん、気を付けてね〜」

玄が買い物に行って、夕飯作って、

「お風呂の準備出来ましたよー」

「はぁーい」

玄がお風呂を準備して食器を洗って……

要するに、私、何もしていない。
いくら玄が率先して家事をしてくれるからといって、毎日ずっとこの状態でいいのだろうか?



28:2013/03/03(日) 00:59:59.81 ID:hR6xBfp40


「ねぇ、宥」

玄がお風呂に入っている間に宥に話しかける。

「なぁに、照ちゃん?」

「家事、玄にばっかりさせてる気がする」

「?」

「私達年上が二人して何もしなくて、家事を玄一人に押し付けるのは落ち着かない」

「照ちゃん……あったかーい」

この人、ちゃんと話を聞いてるの? こたつの感想なんて聞いていないのに。




29:2013/03/03(日) 01:00:40.23 ID:hR6xBfp40


「玄ちゃんはお世話焼きさんだから……それに、まったく苦痛だと思ってないと思うよ?」

「でも」

「どっちかと言えば嬉しいんじゃないかな?」

「嬉しい?」

「うん」

「何で?」

「誰かのために家事をするのはあったかいから」

この人の言葉もよく分らない。

「とりあえず、明日は一日、玄に休んでもらって、私達で家事を分担しよう」

「えぇー……じゃあ、私はこたつ担当でお願いね」

何だそれ。




30:2013/03/03(日) 01:01:52.89 ID:hR6xBfp40



――
――――


「あの、本当に何もしなくていいんですか?」

「私達に任せて」

「は、はい。そういう事でしたら……」

「こたつあったかーい」

何となく。玄の表情が物足りなそうに見えた。
とにかく、今日は休んでもらおう。
掃除は……掃除機だけでいいか。

「あ、あの、照さん」

「何?」

掃除機を取り出した私を玄が引き止める。




31:2013/03/03(日) 01:02:31.78 ID:hR6xBfp40


「まずは高いところのほこりをはたきとかで下に落としてからですよ」

そこまでするつもりはなかったけど……

「わかった」

ここは言われたとおりに。

「あ、あの、照さん……」

「何?」

「掃除を始める前に、洗濯機を回しておくと時間がスムーズに使えますよ」

「分かった」

「これ、私の今日の分の洗濯物です、ほらお姉ちゃんも出して」

「うう、寒いから出たくない……」

「じゃあ、私がとってくるね」

「ありがとう。玄ちゃん」

「……」





32:2013/03/03(日) 01:03:29.47 ID:hR6xBfp40



――
――――


「あ、あの、照さんそれはこうですよ」

「こたつあったかーい」

その後も玄のワンポイントアドバイスは続いた。

「干す前に一旦ババッてやって広げるんですよ」

「こたつ〜」

「こんな感じでやるといいですよ」

そのうち玄が実演するほうが多くなり……

「あったかーい」

おい、こたつ担当。お前はこたつから出ろ。




33:2013/03/03(日) 01:04:34.20 ID:hR6xBfp40


「ここは私にお任せあれ!」

結局、最終的にはほとんど玄がやってしまった。

「……」

「照ちゃん、お疲れ様」

ちょっとだけ自分の不甲斐無さを痛感したところをこたつが迎えてくれた。

「ここ、入る?」

「うん……」

一辺に二人で入るのは狭い。けど、あたたかい。




34:2013/03/03(日) 01:08:20.12 ID:hR6xBfp40


「昔ね……」

「?」

「玄ちゃんが私の世話を焼きすぎだって指摘されたことがあってね」

ああ、うん。

「それで、しばらく私が自分で自分の事をやった時期があったの」

「そしたら玄ちゃん3日目くらいに泣き出しちゃって」

「どうして?」

「お姉ちゃんのお世話は私がするのって」

「ふふっ」

昔から変な子だったんだ。




35:2013/03/03(日) 01:09:08.11 ID:hR6xBfp40


「だから、それ以来、私は素直に玄ちゃんに頼ることにしたの」

「玄ちゃんは人のお世話をするのが大好きなとっても優しい子なんだよ」

「本当は私も家事とか出来るんだけど、玄ちゃんのお仕事を奪う訳にはいかないから」

「へぇ……」

宥はこんなんでも、いいお姉さんだ。少なくとも私なんかよりはずっと。




36:2013/03/03(日) 01:10:09.81 ID:hR6xBfp40


「照さん、お姉ちゃん、夕飯出来ましたよ」

「ん、ありがと」

「はーい」

玄の代わりに家事を担当することは結局やめた。

「玄、買い出し、一緒に行こうか」

「はい!」

ただ、ちょっと手伝ってみたりするようになった。

「あったかーい」

ちなみに、玄がいない日に、二人で家事をする必要があった日、
宥はこたつから動かなかった。家事が出来る者としての余裕だろうか。





37:2013/03/03(日) 01:12:41.87 ID:hR6xBfp40



――――
――――


玄が家に来て……何日でもいいや。

「ただいま」

「照ちゃん、おかえりー」

「おかえりなさい……照さん、今日は何かいいことでもあったのですか?」

「どうして?」

「何だか嬉しそうな顔をしています」

別に、嬉しそうな顔をしていたつもりはない。
ただ――




38:2013/03/03(日) 01:13:20.44 ID:hR6xBfp40


「ただ、ちょっと変わったことがあってね」

「変わったこと、ですか?」

「ある人が、プロの世界に来た」

咲がプロの世界に来た。高校を出てこれまで何をしていたのかは知らない。
ただ、今日、咲がプロとして私の前に現れた。

「手強い人」

「照さんがそこまで言うなんてよっぽどなのですね。負けちゃったんですか?」

「勝ったけど、負けた」

「?」

単純に収支で見れば、私の勝ち。でも……
次は崩してやる。
なにはともあれ、プロの世界へようこそ、咲――




39:2013/03/03(日) 01:14:35.07 ID:hR6xBfp40


「照さん、やっぱり楽しそうですね」

「気のせい」

「そうですね。気のせいですね」

そう言って、クスクス笑う玄。
何か子供扱いを受けているみたいで恥ずかしい。

「夕飯」

居たたまれなくなって無理矢理話を切り上げる。

「はい、準備しますね」

何故かその日、玄はずっとニコニコしていた。





50:2013/03/06(水) 03:10:36.13 ID:AKCGPaML0



――――
――――

「玄、何してるの?」

「あ、照さん。ふっふっふっ」

玄があまり知的には見えない笑い方でニヤリ。

「見つけてしまいました〜」

「!? 返して」

「ああっ!?」

その手に持っていたもの、私のアルバムを急いでひったくった。

「えぇーいいじゃないですかー。というか、もう見てしまいましたよ」

「……じゃあ、いいや」

もう一度玄に返す。
あまり見られたくなかったけど、もう見られてしまったのなら。

「あの、この照さんはどうしてこんなに怖い顔をしているのですか?」

「う……」

玄が示した写真。初めて雑誌の取材が来た時の、あまり思い出したくない写真。

「その、雑誌の撮影で、笑えって言われたから……でも、撮影なんて初めてで……」

「緊張しちゃったのですか?」

「うん……」

「笑顔は笑顔でもすっごい悪役チックな笑顔ですね」

気にしていたことを突かれてちょっとむっときた。

「……やっぱり返して」

「わぁ! すいません! もう言いませんから! もう少し見せてください」

「……別にいいけど」

目を輝かせてアルバムを捲る。何がそんなに楽しいのか。




51:2013/03/06(水) 03:11:37.28 ID:AKCGPaML0


「こっちの照さんはすっごく綺麗に笑ってますね」

「そのころには慣れたから」

撮影を繰り返す内にどうすれば自然な笑顔になるのか分かった。これは、そんな一枚。笑顔を無理やり張り付けた自分じゃない自分。

「うーん……でもこっちもあんまり照さんらしくないですね」

「え?」

「普段の照さんの笑顔の方が断然いいですよ!」

また妙なことを

「笑顔なんて見せたことない」

「そうですか? 私には笑顔に見えるんですよ。 ほら、今だってちょっと笑顔になってますよ」

ダウト。別に今も笑ってない。
ただ、ちょっとだけ、玄の言葉が嬉しかった、それだけ。

その後もしばらくアルバムを眺め続けていた玄。
幼い頃の写真、つまり咲と一緒の写真、そんなのもあった。
でも、玄がそれらについて言及することはなかった





52:2013/03/06(水) 03:12:09.57 ID:AKCGPaML0



――――
――――


「何だこれ」

ちょっとした家計簿をつけている時に思わず声が出た。
光熱費が高い。

「あったかーい」

「あ、なるほど」

原因ははっきりした。まあ、別に節約が必要な家計じゃないけど。
給与明細とか通帳の残金を見て問題ない事を確認。

「照さん、家計簿ですか」

ひょこっと、私の後ろから覗き込んだ玄が、

「え……」

硬直した。

「どうしたの?」

「あ、いえ……」

「?」





53:2013/03/06(水) 03:13:08.29 ID:AKCGPaML0



――
――――


最近、玄の帰りが遅い。
なのに、家にいる間、家事は全部一人でやってしまう。
明らかにオーバーワーク。

「玄、今日はもう私達に任せて」

「うん、玄ちゃん」

宥がこたつから出て働くくらい、それくらい、玄は目に見えて消耗していた。

「大丈夫ですよ」

「いいから!」

思わず声を荒げてしまった。

「は、はい……」

「照ちゃん……」




54:2013/03/06(水) 03:13:36.41 ID:AKCGPaML0


「ごめん……」

空気が重い。

「いいから休んでおいで」

無理矢理笑顔を浮かべてみる。
ちゃんと笑えているだろうか。

「はわわわ……」

私の顔を見て宥が怯えている。
ああ。多分、ダメな時の笑顔になっている。

「では、失礼します」

とぼとぼと自分の部屋に引き返していった。

次の日、玄は高熱を出した





55:2013/03/06(水) 03:14:16.41 ID:AKCGPaML0



――
――――


「大丈夫?」

「はい! もう仕事に戻れますよ!」

「そういう事は、少しは熱が下がってから言って」

「うぅ……」

「玄ちゃん、体温計」

「宥、貸して」

「はい」

「ん……」

まだ39度以上ある。まったく下がってない。




56:2013/03/06(水) 03:14:43.48 ID:AKCGPaML0


「照さん、今日のお仕事は?」

「対局なら、キャンセルした」

「えぇ!? 今日は大事なタイトル戦では?」

「タイトルなんてまたいつかとればいい」

「照ちゃん、玄ちゃんが心配で対局どころじゃないって」

そんな事、一言も言ってない。

「すいません……」

「謝るのは今日の事じゃなくて、最近、明らかに無理してたこと」

「そうだよ、玄ちゃん?」

「あー……えっと……」

「どうして急に?」」

「……」

玄は布団にもぐりこんだ。




57:2013/03/06(水) 03:15:33.82 ID:AKCGPaML0


「……玄ちゃん、ちゃんと言わなきゃ伝わらないよ?」

もしかしたら、宥には玄がどうして無理をしたのか分かっているのかもしれない。

「その……」

玄が布団から眼だけを出した。

「照さんの給与明細を見ちゃって……」

「?」

「やっぱり」

宥には分かっていたみたいだけど、私には分からない。

「それがどうかしたの?」

「……頑張らないと、照さんと対等どころか近づくことも出来ないんですよ」

何故か、玄が泣いている気がした。

「……照ちゃん。後はお願いね」

おい、待て。どこに行く、こたつ。




58:2013/03/06(水) 03:16:28.55 ID:AKCGPaML0


「玄ちゃんを安心させてあげられるのは照ちゃんだけだから」

宥はそう言い残して部屋を出た。
私じゃなくて宥の方が玄の力に慣れるのでは?

「……玄? それで、私の給料がどうかしたの?」

「私は……照さんに近づけないと、対等になれないと嫌です」

「……」

玄は、私と同じくらい稼ぎたいってことなのだろうか?

自分で言うのもあれだけど、私は仮にもトッププロだから、並の給料ではない。ただし、短い期間で一生分を稼ぐ、そんな世界。玄とは違った世界。
なのに、玄は、

「じゃないと、私は照さんの隣に居られません……」

何て事を。何と面倒な。何か嬉しい。




59:2013/03/06(水) 03:18:04.54 ID:AKCGPaML0


「玄は……」

「?」

「玄は私と対等だよ」

「え……?」

「私は玄が食事を作って、掃除洗濯をしてくれて、安心して対局に挑めている」

「だから、私の稼ぎの半分は玄が作ってる」

「照さん」

気休めにしかならない半分冗談、半分本気な言葉。

「私は対局でお金を稼ぐことが出来るけど。玄みたいに、おいしい料理は作れないし、効率よく家事もこなせない。家を綺麗にもできないから。私と玄は対等。それでいいと思う」

「……」

「……うぅっ」

「玄、泣いているの?」

「な、泣いてなんかいませんよ……グスッ」

いや、泣いているでしょ。




60:2013/03/06(水) 03:19:09.23 ID:AKCGPaML0


「グズッ……もし、私が泣いてるとしたら、それは照さんが優しく笑ってくれるせいですよ……」

「別に笑ってない」

「……だったら、私も泣いていませんよ」

でも、玄、鼻からなんか垂れてる。

「ふふっ……玄は本当におかしな子だね」

「うぅっ……照さんほどじゃないですよ」

「そうかもね」

「あ、ほら、また笑顔になってますよ!」

「笑ってない」

「はい、そうですね」

そう言って笑う玄と眼を合わせて、

「ふふっ……ふっふっふふふっ」

「照さん……思いっきり笑っているじゃないですか。ふふっ」


私達は笑いあった。

その日以降、玄の帰宅時間はこれまでよりも早くなった。





61:2013/03/06(水) 03:23:20.43 ID:AKCGPaML0

最後まで投下すると言いましたがちょっと中断します。
明日最後まで投下します。


64:2013/03/06(水) 15:50:22.42 ID:AKCGPaML0

62>>まさしくそれですw

63>>ありがとうございます。とりあえず一段落させようかと


では投下していきます。


65:2013/03/06(水) 15:51:57.43 ID:AKCGPaML0



――――
――――


「照さーん」

深夜、玄が、私の部屋に入って来た。

「どうしたの? こんな時間に」

「うぅ……」

何故か涙目になっている。

「お借りした本を読み終わったのですが……」

「それ、ちゃんと最後まで読めたの?」

「はい……」

玄もかなり活字に慣れて来たので、少し児童文学からステップアップを、と渡した本。
序盤にタイトルにもなっている機械の説明が延々と続く場所があり、読破する上で一つの鬼門となっている本。
そんな本を、最後まで玄が読んでくれた。そのことが嬉しい。

「最後まで読んだのですけど……読み終わったら怖くなってしまいまして……」

怖い?確かに全体的に暗い話ではあるけど……怖い、のかな?




66:2013/03/06(水) 15:52:45.47 ID:AKCGPaML0


「うぅ……やっぱり物語はハッピーエンドがいいですよ……」

「……玄、おいで」

取りあえず、隣に呼び寄せて、次の本を渡す。

「はい、これ」

「これは……」

「お口直し」

少年達が無人島に漂着しながらも前向きに生きていくお話。危機的な状況でも常に前向きな少年達と一緒にワクワクできて、最後はハッピーエンドで明るい気持ちになれるお話。

「あの、お隣で読んでもいいですか?」

「ん」




67:2013/03/06(水) 15:53:35.48 ID:AKCGPaML0


玄は本を読む時に感想を声に出すことが結構ある。
それを聞くのがなかなか楽しみだったりもする。

「ああっ、このままではモコさんが海に……」

「ブリアン、かっこいいのです!」

「あの、玄……」

楽しみだったりもするけど……やっぱり、大人としてはちょっと心配になる。

「何でしょう?」

ま、いいか。

「いや、さっきの本の話だけど、玄はあの機械があったら過去と未来、どっちに行きたい?」

無理矢理話題をでっち上げる。




68:2013/03/06(水) 15:54:14.95 ID:AKCGPaML0


「タイムマシンがあったらですか? ……私はやっぱり過去ですね」

「どうして?」

「……お母さんにもう一度会いたいな〜って思うので」

「……!」

そうだ。玄と宥のお母さんは確か、もう……

「一度大きくなった私を見てもらいたい……って、え?」

「……」

「あ、あの……照さん? 私はどうして抱きしめられているのでしょうか?」

「……何となく」

「そ、そうですか」

「うん……」




69:2013/03/06(水) 15:55:15.46 ID:AKCGPaML0


「……」

「あったかーい」

「なっ!?」
「お姉ちゃん!?」

いつの間に?

「今日は寒いから……玄ちゃんのお部屋に行ったけど居なくって、それで、こっちかなって……よいしょっと」

なぜベッドに乗るのか。

「照ちゃん、私も今日はここに居てもいい?」

「う、うん」

答える前から布団に入りこんでいる……




71:2013/03/06(水) 15:55:53.93 ID:AKCGPaML0


「ありがとう。おやすみなさ〜い。あ、二人はさっきの続きをどうぞ〜」

続きって何だ。

「あ、あの、照さん」

「?」

「私も、今日はここで……ダメですか?」

「別にいい……」

「ありがとうございます!」

その日……胸部あたりに両側から謎の圧迫感を一晩中感じた。
心地よかったはずなのに、何故か不快感、敗北感を味わった。





73:2013/03/06(水) 15:59:37.54 ID:AKCGPaML0



――――
――――


「あの、照さん……何故、こんな高そうなお店に?」

「大事な話があるから」

「だ、大事な話ですか?」

「うん」

今日は玄に大切な事を告げようと決心していた。宥に事前に相談して、わざわざ二人きりにさせてもらってまで。

「あのね……玄」

「は、はいっ!」

玄も緊張しているみたい。もしかしたら私が何を言おうとしているのか薄々感づいているのかもしれない。

受けてくれるといいけど……




74:2013/03/06(水) 16:00:53.87 ID:AKCGPaML0


「玄……私……その、私のマネージャーになって欲しいの」

「わわっ!?……て、え? マネー……ジャー……?」

「う、うん」

言った。言ってやった。
多分、玄は二つ返事で受けてくれるはず。

「マネージャー……ですか……」

あれ? もっと喜んでくれるかと思ったのに?

「すいません……あの、少し、考えさせてください……」

予想外の答え。

どうして?

「あの……用事を思い出したので、失礼しますね」

「う、うん……」

どうしてそんなに悲しそうな顔をする?





75:2013/03/06(水) 16:01:41.17 ID:AKCGPaML0



――
――――


「ただいま……」

「おかえりなさ〜い。照ちゃん。どうだった……って、え?」

どうやって帰って来たのか覚えてない。

「宥。玄に嫌われた」

「そんな……」

「……」

「……照ちゃん、ここ、入る?」

「うん……」

いつ以来か。こたつの一辺に宥と一緒に入る。
涙が出そうになるくらいあたたかい。




76:2013/03/06(水) 16:02:37.85 ID:AKCGPaML0


「照ちゃんは大切な話を玄ちゃんにしたんだよね?」

「うん」

「それなら玄ちゃんは喜ぶはずなんだけど……」

「私もそう思って、マネージャーになってってお願いしたのに」

「は……!?」

宥が固まった。

「照ちゃん、大事な話って……まさか?」

「うん。玄にマネージャーになって欲しいって話」

「はい、こたつ没収〜」

「え?」




77:2013/03/06(水) 16:03:21.80 ID:AKCGPaML0


宥に両脇を抱えられてこたつから引きずりだされた。
なぜかマフラーでグルグル巻きにもされた。

「あの、宥、マフラーが」

「照ちゃん、そこに座って」

「だからマフラーが……」

「こういう時の座るっていうのは正座だよ? 照ちゃん」

「は、はい」

あれ? 何か怒ってる? 何で?




78:2013/03/06(水) 16:04:59.23 ID:AKCGPaML0


「それで、どうしてマネージャーなの?」

「だって……マネージャーって言うのは――」

「――――」
「――――」

「――だから、私は玄になって欲しかった」

「照ちゃん。今言った事全部、メールに書いて玄ちゃんに送ろうね」

「え……それは恥ずかしいからやだ……」

「送ろうね」

「はい」





79:2013/03/06(水) 16:05:32.93 ID:AKCGPaML0



――――
――――


「はぁ……」

ひとまず落ち着いて帰ってきたものの、私は未だに玄関のドアを開けることができずにいます。

大事な話がある。照さんにそう言われて勝手に舞い上がった自分がとっても恥ずかしいです。
勝手に期待して、勝手に落ち込んで、勝手に帰って。
照さんにはとっても悪いことをしてしまいました。

ピロピロピロロ

「メール? あ、照さんから?」

何だか文字数が凄い。




80:2013/03/06(水) 16:07:05.19 ID:AKCGPaML0


「何だろ?」

ピッピッ

“玄、私が玄にマネージャーになって欲しいと思った理由、ちゃんと書く。
今まで私がマネージャーをつけなかったのは条件に合う人が居なかったから。
私にとってマネージャーに必要な条件は、
・きっちり仕事のスケジュールを把握して調整してくれる人
・体調管理に気を配ってくれる人
・取材の応対とかをやってくれる人
・仕事中ずっと傍にいてくれる人”

照さん……やっぱりそんなのはただの仕事上の関係ですよ。私はもっと……

ピッピッ

“・仕事以外でも一緒に居たいと思える人”

え?




81:2013/03/06(水) 16:07:35.80 ID:AKCGPaML0


ピピピッ

“・傍にいると落ち着く人
・おいしい料理を作ってくれる人
・丁寧に文句ひとつ言わず家事をこなしてくれる子
・お姉さんを大切にしている子
・隣で笑ってくれる子
・笑顔にさせてくれる子
・私が一緒に居たい子 “

何なのですか、これ?

ピピッ

“・松実玄という子”

ねぇ、照さん?

気付いた時には玄関のドアを開けてしまっていました。





82:2013/03/06(水) 16:08:21.61 ID:AKCGPaML0



――――
――――


ガチャッとドアが開く音がした。

「玄……」

「ほんとうに……照さんはしょうがないですね」

玄が帰ってきた。その手に携帯を持って。
あのメールを見ているなら……恥ずかしいから逃げたい……けど

「照ちゃん、ちゃんと向き合おうね」

マフラーに囚われている。




83:2013/03/06(水) 16:08:56.59 ID:AKCGPaML0


「あんな事書かれたら……あんな事言われたら、私がマネージャー引き受けるしかないじゃないですか」

「え……受けてくれるの?」

「はい……でも、条件があります!」

条件。何だろ? 私のお給料の半分をお給料としてあげるつもりだったけど、8割くらいあげるべき? それとも、まさか……豊胸手術っていくらぐらいだっけ……




84:2013/03/06(水) 16:09:24.73 ID:AKCGPaML0


「その条件は……」

「う、うん」

「妹さんと一緒にうちの旅館に来て暮らして下さい」

「え……」

「知っているのですよ。妹さんがプロになっているのも、ほんとは仲直りしたいというのも。アルバムにも大切に妹さんの写真、残していましたもんね」

「だから、お二人が仲直りして、うちの旅館で私達と一緒に暮らしていただけるのであれば、喜んでマネージャー、お引き受けします!」

……この期に及んで、自分の事じゃなくて、私達姉妹の事なの?

「分かった」

この変な子には多分、この先もずっとかなわないだろう。





85:2013/03/06(水) 16:12:33.54 ID:AKCGPaML0



――――
――――


「咲」

久しぶりにこちらから声をかけたら、咲はビクッと肩を震わせた。

「……お、お姉ちゃん?」

「今日の対局、本気で来てくれ」

「う、うん……?」

「それで、もし、私が勝ったら、一つ私のお願いを聞いてもらう」

「え?」

勝って、咲を連れて行く。
今まで散々無視しておいて、急に無理やり一緒に暮らさせるなんて、我ながら勝手が過ぎるとは思う。
でも、もうこれくらい強引な手段じゃないときっかけが掴める気がしなかった。




86:2013/03/06(水) 16:13:17.08 ID:AKCGPaML0


「じゃ、じゃあ、お姉ちゃん、私が勝っても一つお願い聞いてくれる?」

「……お願い?」

「うん……私が勝ったら……お姉ちゃんと、一緒に暮らしたい」

「!?」

……今まで散々冷たい態度を取ったのに、まだそんなことを言ってくれるのか。




87:2013/03/06(水) 16:14:00.71 ID:AKCGPaML0


「……分かった」

「ほんと?」

「ああ」

私が勝ったら咲を玄達の所に連れて行って一緒に暮らす。咲が勝てば、私が居る玄達の所で一緒に暮らす。最早賭けになっていなかった。

「咲、勝つつもり?」

「う、うん……私、またお姉ちゃんと一緒に暮らしたいから……お姉ちゃんにだって勝つよ!」

私だって、まだ咲に負けるつもりは毛頭ない。

「やってみろ」

対局の結果……私達は一緒に暮らすことになった。





88:2013/03/06(水) 16:14:35.57 ID:AKCGPaML0



――――
――――


「照さん、咲ちゃん、そろそろ出発しないと」

「今行く」

「待って、お姉ちゃん!」

「二人とも、行ってらっしゃ〜い」

「咲、準備出来た?」

「うん」

「今日も全力で。私達は」

「この旅館の広告塔、でしょ!」

「ああ」

「そろそろ行こうか」




89:2013/03/06(水) 16:15:37.37 ID:AKCGPaML0


相変わらず、仕事で麻雀をするか家で本を読むかの毎日。

「では、参りましょう、咲ちゃん、照さん!」

「はい!」

「ん」

麻雀の楽しさは普通。だけど、

「今日もがんばりましょうね、照さん!」

「ああ」

「? どうして笑っているのですか?」

「別に笑ってない」

「そうでした」

「さ、行こ」

毎日は悪くない。そんな毎日――


カン!


90:2013/03/06(水) 16:16:39.45 ID:AKCGPaML0

あ、終わりです。

ありがとうございました。


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