1:2014/01/03(金) 16:54:02.78 ID:Ud2Z8WAQo


目の前には仰向けで苦しむ真美。

まるで悪夢を見ているかのように
歯を食いしばりながら痛みに耐えている。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1388735642



2:2014/01/03(金) 16:55:14.09 ID:Ud2Z8WAQo


目を覆いたくなるほど、生々しく滲んだ赤い血。
どれほどの痛みが真美の細い身体に襲いかかっているのだろうか。

真美の乱れた呼吸に混じる、うめき声。
それでも俺にはどうすることも出来ない。

どんどんと荒くなる真美の呼吸が
『終わり』に向かっているのだと確信させてくれた。

俺みたいなロリコンに目を付けられなきゃ
こんな事にはならなかったのにな。



3:2014/01/03(金) 16:55:51.20 ID:Ud2Z8WAQo


真美「ねえ……兄ちゃん……兄ちゃんは覚えてる……かな……?」

P「…………?」

真美「真美は……覚えてるよ……兄ちゃんと初めて会った日のこと」

P「……どんな感じだった?」

真美「兄ちゃんは……笑って握手して、くれたんだよ……」

P「……そうだったかな」

真美「うん……絶対にトップアイドルにしてやる……って……」



4:2014/01/03(金) 16:56:33.91 ID:Ud2Z8WAQo


それ以上、真美は何も言わなかった。

いや、気を失いそうな激しい痛みで
半ば理性を失いかけているのかもしれない。

どんどんと近づいてくる終わり。

いや、双海真美としての人生はとっくの昔に終わっている。

俺が終わらせたんだ。



5:2014/01/03(金) 16:57:08.81 ID:Ud2Z8WAQo


ささやかな引退ライブを最後に
双海真美は芸能界から、その姿を消した。

それなりの知名度を得ていた真美には
当然、ゴシップ記事が大半を埋め尽くすような
三流雑誌の記者から執拗なまでの追求もあった。

真美の実家に乗り込んでくる輩も居たが
真美には俺の住むマンションに身を隠すように
指示していたので二ヶ月もすれば諦めてくれた。



6:2014/01/03(金) 16:58:23.58 ID:Ud2Z8WAQo


その間も真美は、ずっと気丈に振舞っていた。

もし俺と出会わなければ、こんな事にはならなかったのに。
全ては俺が馬鹿なせいだ。

いつも真美を泣かせて。

そして今、俺の目の前で痛み、苦しんでいる。

俺は真美を苦しめたりしない。

そう誓ったはずなのに心の底では
この状況に興奮し、歓喜に震えているのだ。



7:2014/01/03(金) 16:58:50.84 ID:Ud2Z8WAQo


どうしようもないな、俺は。

出来ることなら、もう少しだけ二人で居たかった。
だけどそれも、もう終わり。

始まりがあれば、やがて終わりが来る。



8:2014/01/03(金) 16:59:21.42 ID:Ud2Z8WAQo


真美「ねえ、兄ちゃん……真美、ずっと謝ろうと思ってたんだ……」

P「……ん?」

真美「お仕事の邪魔ばっかりして……ごめんなさい……」

P「お、おい……何もこんな時に謝らなくても……」

真美「そうだよね……でもっ……こんな時じゃないと、なかなか踏ん切りがつかなくってさ……」

P「俺の方こそ、真美に辛い思いばかりさせて、すまん」



9:2014/01/03(金) 16:59:59.11 ID:Ud2Z8WAQo


口を衝いて出たのは謝罪の言葉。

真美は少しだけ顔を歪めたあと。

柔らかく微笑んだ。

今も痛みに苦しんでいるはずなのに。

突然、ぼやけた視界に驚き
思わず手で押さえると、温かいものが指先に触れる。

溢れては、こぼれていく涙を
止める術は無かった。



10:2014/01/03(金) 17:00:37.56 ID:Ud2Z8WAQo


真美「なんで泣いてるの……? 真美の……せい?」

P「まさか」

真美「ごめんね……わがままばかり言って……いつも兄ちゃんを困らせて……真美、本当に悪い子だよね……」

P「真美……」

真美「これもワガママになっちゃうかも知れないけど兄ちゃんには……ずっと笑っていて欲しいな……」


だって、しようがないじゃないか。




11:2014/01/03(金) 17:01:20.10 ID:Ud2Z8WAQo


溢れて止まらないんだ。


真美への想いが。

真美との思い出が。


いつも、気づくと視界の隅に
真美のポニーテールが揺れていた。


いつも仕事の邪魔をしにきてくれて、ありがとう。



12:2014/01/03(金) 17:01:50.17 ID:Ud2Z8WAQo


悲鳴の様な真美の声が聞こえ慌てて涙を拭う。

俺に向かって精一杯、その手を伸ばす真美。
言葉も無く、すがる様な眼差しを向けられ瞬時に理解した。

しっかりと両手で握り締めた真美の手は。


初めて出会った時と、変わらぬ大きさのままだった。



13:2014/01/03(金) 17:02:51.21 ID:Ud2Z8WAQo


真美「真美ね……ホント言うと、もう少しだけアイドル続けたかったんだ……」

P「すまん。俺のせいだ……俺が……」


P「真美の人生を滅茶苦茶にしてしまった」


P「本当なら今頃、きっとトップアイドルとして有名になって」

P「TVにも引っ張りだこで―――」

真美「兄ちゃん!!」

P「―――っ!?」



14:2014/01/03(金) 17:03:42.47 ID:Ud2Z8WAQo


真美「真美、後悔なんかしてないよ!」

真美「そりゃ今は、痛くって苦しくって辛いけど……」

真美「真美が望んだ事だし……だから―――」


真美「絶対に、元気な赤ちゃん産むかんね!!」


いつまでたっても子供のままだと思っていたのに。



15:2014/01/03(金) 17:04:19.66 ID:Ud2Z8WAQo


俺は生粋のロリコンだと思っていたけど、違うのかもしれない。

今なら分かる。

きっと、真美だから好きになったんだ。

さあ、もうすぐだ。

終わりが訪れ、新しい日々が始まる。

今まで二人で過ごしてきた日々を懐かしむと同時に。

真美の頑張る姿を見て
ようやく、新しい命を迎える決心が付いた気がする。



17:2014/01/03(金) 17:05:18.50 ID:Ud2Z8WAQo


頑張れ、真美。

いつだって、俺は応援する事しか出来ないけど。

真美の悲痛な叫びが分娩室に響き
次に大きな産声が響き渡った。

だけどこれで終わりじゃない。

苦しみが二倍なら、喜びも二倍。



18:2014/01/03(金) 17:05:50.65 ID:Ud2Z8WAQo


遅れること数十分。

産まれ落ちた愛の結晶がもう一人に負けない様に泣いた所で。


俺も。


真美も。


我慢しきれずに泣いた。


初めて、家族四人で泣いた。


これからは四人で歩いて行こう。




19:2014/01/03(金) 17:06:41.64 ID:Ud2Z8WAQo


P「お疲れ様、真美。よく頑張ったな」

真美「んじゃあ、ご褒美ちょ→だい?」

P「何がいい?」

真美「……真美の頭……撫でて?」

P「やっぱり真美は子供だな」

真美「子供じゃないよ! もうお母さんだもん!」



20:2014/01/03(金) 17:07:31.39 ID:Ud2Z8WAQo


ひとしきり真美の頭を撫でたあと。

二人の我が子を抱く真美を
そっと包み込むように抱きしめる。

この腕の中にある温もりだけは
何があっても守り抜こうと思った。



21:2014/01/03(金) 17:07:59.57 ID:Ud2Z8WAQo



真美「ねえ、兄ちゃん……?」


P「うん?」


真美「真美は今、無茶苦茶幸せだよ」




【P「真美の人生を無茶苦茶にしてしまった」】改め。

【P「真美の人生を滅茶苦茶幸せにしてしまった」】終わり。



22:2014/01/03(金) 17:08:47.62 ID:Ud2Z8WAQo

以上で投下終了です。
ここまで読んで戴いた方が居ましたらありがとうございました。


24:2014/01/03(金) 17:12:52.18 ID:tYewFY9d0


いい意味で予想を裏切られたわ


26:2014/01/03(金) 17:13:20.58 ID:EdWk+3AGo


血を吐くかとおもったら砂糖を吐いていた

良かったです(小並)


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