1:2013/01/09(水) 22:32:28.04 ID:Mm3eXZI40


「やったあ! ミキの勝ちなのっ!」

「やっぱり敵いませんね。ぜひまた、よろしくお願いします」



藍子「ふぅ……」

P「藍子、お疲れさま」

藍子「あ、プロデューサーさん。あはは……また、負けちゃいました」

P「うん。敵ながら圧巻だったな」

藍子「そうですね」

P「帰ろう。荷物持ったか?」

藍子「はい、今日は車ですか?」

P「いや、今日は歩いて帰ろうかと思って。藍子はその方が好きだろ?」

藍子「はいっ」

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2:2013/01/09(水) 22:35:50.48 ID:Mm3eXZI40

藍子「あっ、でも、プロデューサー、他の人は今どうしてます?」

P「どうだっけか……今は、ここから近いところだと未央と唯がイベントに参加してるかな?」

藍子「だったら、そっちに行ってあげてください。私は一人で戻れますから」

P「んー、でもなあ、あっちもう終わってるかもしれないし……それに」

藍子「?」

P「……いや、何でもない。まずは藍子を無事に送り届けないと」

藍子「無事? ……もしかして私、茜ちゃんやイヴちゃんみたいに、無事に事務所に帰れるかどうかを心配されてます?」

P「ああ、あいつらは確かにちょっと不安だよな……じゃなくって。藍子については心配いらないと思ってるよ」

P「それは関係なくてな? ……その、今日のライブはどうだった」


3:2013/01/09(水) 22:37:58.00 ID:Mm3eXZI40

藍子「今日のライブも楽しかったです」

P「そっか。それはよかった」

藍子「はい。ただ……相手の方のパフォーマンスはすごく輝いていて、思わず見とれるほどで……私じゃ到底敵いっこなかったです」

P「ああ……あの子は凄いよな」

藍子「凄かったです」

P「でも、負けっぱなしじゃいられないだろ」

藍子「……ですね。次こそは勝たないと」

P「……さしあたっては、インパクト不足をどう変えていくかが課題かな」

藍子「インパクト?」


4:2013/01/09(水) 22:41:07.28 ID:Mm3eXZI40

P「そう。藍子はトークは終始いい雰囲気なんだが、ステージに入ってもその雰囲気が変わらない傾向があるから、

  緊張感がないというか、締まらなくてどうしても印象が薄くなる。その点あっちは切り替えの差が大きかった」

藍子「ほー……」

P「だからといってメリハリをつけすぎても、藍子のせっかくの持ち味が半減するだけだし。

  難しいところだが、これをどう乗りこえるかが今後の……って、藍子、どうした?」

藍子「いえ。その、プロデューサーさん、こんな私のこともよく見てくれてるんだなって」

P「ええ? そりゃプロデューサーなんだから、当たり前だろう」

藍子「そうだけど、そういうことじゃないんですよ」

P「? よくわからないんだけど……まあいいや、ちゃんとした反省は事務所に帰ってからしよう」


5:2013/01/09(水) 22:44:25.39 ID:Mm3eXZI40

P「それにしても今日はいい天気だな」

藍子「そうですね。絶好のライブ日和でしたし、お散歩するのにもうってつけのお天気です。

   プロデューサーさんもどうですか、お休みの日に、散歩とか」

P「散歩ねえ。散歩にはちょっと寒くないか?」

藍子「風がなくて、お日様の出てる日なら、この季節でも暖かいですよ。茜ちゃんとか薫ちゃんも平気で外を走ってます」

P「うへえ。若いやつは元気なこった」

藍子「……おじさんくさいですよ、プロデューサー」

P「実際もうおじさんだしなー」

藍子「そんなことないと思います」


6:2013/01/09(水) 22:49:27.06 ID:Mm3eXZI40

P「いやー、わかんねえだよこれが、10代の女の子に20代も半ばを過ぎた野郎の気持ちはよ」

藍子「なんでちょっと訛ってるんですか?」

P「もうキャッチセールスくらいでしか『お兄さん』なんて言われなくなったし」

藍子「そうなんですか」

P「まあいいんだ、歳のことは諦めが肝心だから。世の中の男は誰しも通る道なんだ」

藍子「それじゃあ、ええと……お兄さん」

P「え?」

藍子「あ、お兄ちゃんの方が自然かな?」

藍子「お兄ちゃん、そうやって後ろ向きなことばかり言ってちゃだめだよ」

P「!?」



7:2013/01/09(水) 22:54:02.86 ID:Mm3eXZI40

P「……藍子」

藍子「はい?」

P「……いい笑顔だな」

藍子「ありがとうございますっ」

P「で、今なんて言った」

藍子「お兄ちゃん」

P「くっ」

藍子「お兄ちゃん?」


8:2013/01/09(水) 22:55:44.81 ID:Mm3eXZI40

P「…………藍子お前さあ、あのさあ」

藍子「どうしたんですか?」

P「俺の反応見て楽しんでるだろ……」

藍子「はい。まさかプロデューサーさんがこんなに反応するとは思わなくて」

P「やめてくれよもう、ドキッとするから」

藍子「プロデューサー、お兄さんとして呼ばれるのに慣れてないんですね。妹さんとかは?」

P「いたらこんな反応しないよ」

藍子「でもお兄さんとして呼ばれたいんですよね?」

P「いや、その……それはまあぶっちゃけそうなんだけど、でもなんか話の方向性がずれているような気がするんだよなー」


9:2013/01/09(水) 23:23:49.07 ID:Mm3eXZI40

藍子「冗談ですよ。プロデューサーさんはプロデューサーさんですから」

P「うん。その方がしっくりくる」

藍子「私もです」

P「藍子にお兄ちゃん呼びされても、すごく健全な兄妹って感じしかしないしな」

藍子「それは……喜んでいいんでしょうか」

P「いやだってさ、イヴにお兄ちゃん呼びされたら、何だかいかがわしい感じがするだろ」

藍子「どういうこと……」



10:2013/01/09(水) 23:44:32.27 ID:Mm3eXZI40

P「何て言ったらいいかな……。まるで、あいつの弱みを握った上で、無理矢理に兄妹プレイを強いている、みたいな」

藍子「それはたぶん、そういうことを考えるプロデューサーさんがいかがわしいだけです」

P「ぐさっ」

藍子「あとそれは、イヴちゃんと最初に出会ったプロデューサーさんだからそう感じるんだと思います」

P「そうかな」

藍子「イヴちゃん、持ち物も服も全部取られて、真冬の路上ですっぽんぽんになってたんですよね。

   ……誰の仕業か分かりませんけど、許せないですよね、そういうの」

P「……そうだな」

P(藍子はすっぽんぽんって言うのか)


11:2013/01/10(木) 00:08:06.68 ID:IxvptBDU0

P「ん、自販機発見」

藍子「はい?」

P「ああ、自販機といってもタバコじゃないぞ。飲み物の方だ」

藍子「ああ、はい……プロデューサーさん、喉が渇いたんですか?」

P「いや俺じゃなくて、藍子」

藍子「私?」

P「散々歌って喉渇いてるだろ。何がいい? お茶か……スポドリもあるけど」

藍子「うーん、私は別に……大したこともしてないですから」

P「そう言うなよ」

藍子「せっかく移動にお金をかけないのに、ここでお金を使っちゃったらもったいないですし」


12:2013/01/10(木) 00:18:11.54 ID:IxvptBDU0

P「まあまあ、これは俺の奢りだから、お金のことは気にしなくていい」

藍子「そうですか……ありがとうございます。じゃあ、私は」

P「うn」

???「ぷっろでゅーさーっ!」ドーン!

P「ぐえっ!?」ピッ ガコガコン

藍子「プロデューサー!?」

P「何だ!? 何か変なモノが後ろから飛びついてきたぞ!?」

???「変なモノって言うな!」


13:2013/01/10(木) 00:26:40.97 ID:IxvptBDU0

未央「プロデューサー、私だよ私!」

P「ああなんだ、変なモノかと思ったら未央か」

未央「だから変なモノって言うなってば! 私は人間!」

P「変態かと思ったら未央か」

未央「人扱いされたけどより酷くなった!? それってアイドルに向かって言う台詞としてどうなの?」

P「何だよ、うるさいな、何が不満なんだ?」

未央「逆に何に満足しろっていうの私に。だいたいプロデューサーなら、担当アイドルの声くらい分かってよ!」

P「いやでも未央の声ってついこの前聞いたばかりだし」

未央「こらっ、メタ発言禁止!」


14:2013/01/10(木) 00:38:04.57 ID:IxvptBDU0

唯「おっすーゆいもいるよっ☆」

P「唯か、未央と二人ということは」

唯「ということはー?」

P「仕事終わりに二人揃って事務所に帰る途中ってとこか?」

未央「せいかーい!」

唯「さっすがー! 正解者へのご褒美ってことでキャンディあげよっか?」

P「いらないです」

唯「照れんな照れんな〜!」

P「U字工事みたいに言われても……別に照れちゃいないよ」


15:2013/01/10(木) 00:44:31.23 ID:IxvptBDU0

未央「ところでプロデューサーと藍子ちゃんはここで何してるの? 二人も事務所に帰る途中?」

P「まあそうだけど」

未央「だよねー。いやぁ私達が帰ってたらさー、二人で並んで歩いているところを見つけちゃってさー」

唯「おおっとぉこれはもしかして?」

未央「プロデューサーと?」

唯「藍ちゃんが?」

未央&唯「デートっ!」

藍子「ええっ」


16:2013/01/10(木) 00:50:16.97 ID:IxvptBDU0

唯「……でもしてるのかなーって思ってたんだけどにゃー」

未央「なあんだー違うんだね」

P「何言ってんだか、二人して」

藍子「ふふっ、残念でした」

P「というかお前達の年代の男と女がペアで行動しているとやたらくっつけたがる風潮って何なんだろうな」

未央「えへっ、いーじゃんいーじゃんプロデューサー、何に憤ってるのか知らないけどさー」

唯「あれ? それより、その手に持ってる謎の缶はなーにっかなぁ?」

P「ん? ああこれ? これはライブお疲れさまってことで、藍子に買ってやろうと思ったんだが」

未央「でもこれブラックコーヒーだよ」

唯「藍ちゃんブラックコーヒー飲むの?」

藍子「ううん、飲まないけど……」


17:2013/01/10(木) 01:02:24.11 ID:IxvptBDU0

P「誰かさんがいきなり後ろから飛びついてきたせいで、違うボタン押しちゃったんだよなー」

未央「ぎくっ」

P「誰かさんのせいでなー」

未央「あ、あはははは、誰のせいなんだろうねー」

P「本当はお茶の予定だったのに、誰かさんのせいで藍子にはブラックコーヒーで我慢してもらわなくちゃいけなくなったなー、

  誰かさんの せ い で 」

未央「う、うわ〜ん! わかったよう、私がお茶買うから! だからごめんなさい許して!」

藍子「気にしないで未央ちゃん、大丈夫! あとプロデューサーさん、未央ちゃんをいじめないでください」

P「あっはっは、いいよ未央、俺が出す。ついでに二人も何が飲みたいか言ってごらん」


18:2013/01/10(木) 01:13:41.53 ID:IxvptBDU0

唯「……ぷっはーっ! やっぱ仕事上がりに飲むサイダーは最高っすなぁ〜!」

未央「そうだね、疲れもどっか飛んでっちゃうよ!」

P「本当に現金な奴らですこと」

未央「だってプロデューサー、私達には滅多に奢ってくれないじゃん」

P「そうかな?」

唯「そーそー! 今日だってもし藍ちゃんが一緒じゃなかったら」

未央「『あ、お前ら今から帰るの? へーえ、ふーん、お疲れさーん』」

唯「ってなってたんじゃないの〜?」

P「息ぴったりだな二人とも……」


19:2013/01/10(木) 01:18:26.59 ID:IxvptBDU0

P「まあ、否定はしないよ」

唯「否定しないのっ!?」

未央「そんなぁ!」

P「二人とも、もう少し藍子みたいに性格のいい子だったら、ばんばん奢ってやるんだけどなー」

唯「ががーんっ! ジョーダンでもそーいう辛いこと言うなよォ〜! それじゃ性格悪いのはおあいこだ!」

未央「そうだそうだ! 私達だって、お仕事頑張ってきたんだぞ!」

藍子「……」

P「そっかそっか、お疲れちゃ〜ん」

未央「インスタントジョンソン!?」

P「お、よくわかったな」


20:2013/01/10(木) 01:25:04.04 ID:IxvptBDU0

P「まあ馬鹿なトークはこのくらいにして、そろそろ事務所に戻ろうか」

未央「そうだね。体も冷えちゃうし」

唯「ゆい達はカラダが資本、だもんねー!」

P「それはその通りだけど、年頃の女の子があんまりそういう言い方をするもんじゃないよ」

唯「ええ〜っ、なんで? 別にヤラシイ意味とかないよ?」

未央「あっれあれ? 深読みしちゃうプロデューサーって……」

唯「実は……」

未央&唯「ムッツリスケベ!?」

P「何でそうなる! アイドルがムッツリスケベとか大きな声で言うな! そしてお前ら本当に息ぴったりだな!」


21:2013/01/10(木) 01:30:52.39 ID:IxvptBDU0

未央「えへへっ☆」

唯「うっしっし♪」

P「はあ、ったく……埒があかないぞ……。早く帰ろう、藍子も……藍子?」

藍子「……あ、はい? なんですか、プロデューサーさん?」

P「いや、ぼーっとしてたみたいだけど……どうした? いい加減お馬鹿な会話に呆れちゃったか?」

藍子「ううん、そんなことないですよ。楽しそうな会話だなって思ってました」

未央「なら藍子ちゃんもこっち側においでよー。プロデューサーをいじるの楽しいよ!」

P「良識人を巻き込むなっ」コツン

未央「いてっ」


23:2013/01/10(木) 22:49:09.21 ID:IxvptBDU0


 ………………………… ◇ …………………………

P「ただいま帰りましたー」

藍子「ただいまー」

唯「ただいまーっ」

未央「たっだいまーっ!」

ちひろ「あら、おかえりなさい」

P「あ、ちひろさんだけですか?」

ちひろ「ええ。あ、でも、他の子達も今から帰るって、さっき連絡が入りましたよ」

P「他の子達って」


24:2013/01/10(木) 23:19:29.80 ID:IxvptBDU0

ちひろ「薫ちゃんと、茜ちゃんと、イヴちゃん。揃って帰るそうなので……いまここにいない子全員ですね」

P「あの3人だけで?」

ちひろ「はい」

P「……今日の3人の仕事は確か、事務所からそこそこあるスタジオで……」

ちひろ「徒歩30分のところですね」

P「不安だ」

ちひろ「そんなまさか、大丈夫ですよ。迷子気質の子がいるわけでもないですし、

    薫ちゃん、茜ちゃん、イヴちゃんと3人もいるのに、事務所までたった30分の距離を帰ってこれないなんてことが……」

P「……」

ちひろ「……ちょっと不安ですね」


25:2013/01/10(木) 23:40:37.32 ID:IxvptBDU0

P「しょうがない、たぶん大丈夫でしょうけど、一応迎えに行ってきますね」

ちひろ「行ってらっしゃい、……と言いたいところですが、お仕事の方はいいんですか?」

P「う……それもそうなんですが」

ちひろ「残業したいなら止めませんけど」

P「……」

未央「あ、じゃあ私、プロデューサーの代わりに迎えに行ってくるよ!」

P「え?」

唯「おっとぉ、未央が行くならゆいも行こっかなー」

藍子「それなら私も……あっ、でも、あれ用意しておいた方がいいかな……」


26:2013/01/10(木) 23:51:18.79 ID:IxvptBDU0

未央「プロデューサーも、たまには残業ナシで帰りたいでしょ?

   ちっちゃい子達の面倒は私達が見るから、プロデューサーはお仕事! ね?」

P「ちっちゃい子達って、お前より年下なの薫だけだろうよ……」

P「……悪いな未央達、頼んでいいか?」

未央「任せたまえ! ちゃーんと連れて帰ってくるよっ。それじゃっ♪」ダッ

唯「思い立ったが吉日っ!」ダッ

P「おいおい何も走ることないぞー!」

P「……ってあいつらもう行っちゃったし。ちゃんと聞こえてたかな……」

ちひろ「ふふふっ、元気でいいことじゃないですか。お茶、淹れましょうか?」

P「あ、お願いします」


27:2013/01/11(金) 00:09:47.71 ID:UFENIQIR0


 ………………………… ◇ …………………………

P「…………」

ちひろ「……あら」

P「…………うーん」

ちひろ「プロデューサーさん、どうしたんですか? 何だか元気がないみたいですけど、エナドリ十本いっときます?」

P「え、あー……そこにおいといてください」

ちひろ「えっ」

P「…………」

ちひろ「あの、プロデューサーさん、本当にどうしたんですか?」

P「え? いや、どうもしないですよ」


28:2013/01/11(金) 00:17:35.00 ID:UFENIQIR0

ちひろ「珍しいじゃないですか、いつもならプロデューサーさんが『クソッ、また搾取かよ……! 鬼! 悪魔! ちひろ!』と投げて

    私が『そこらの低級怪異ごときと同列に見てくれるなよ』と返す流れなのに」

P「今そんな茶番を演じる余裕はないです」

ちひろ「そうですか、えーとなになに? ……あ、これ、活動報告書……」

P「そうです」

ちひろ「ライブバトルの成績というと……」

P「……」

ちひろ「……藍子ちゃんですか」

P「……そうです」


29:2013/01/11(金) 00:28:23.97 ID:UFENIQIR0

ちひろ「これは、プロデューサーさんも頭を悩ませるわけですね……」

P「ええ。本人にやる気がないわけでは決してないんですが、今ひとつ積極性に欠けるというか……」

ちひろ「なるほど。ガンガンいこうぜって子じゃあないからなあ……藍子ちゃん」

P「藍子は争いごとが苦手ですし、アイドルを目指す理由が理由ですから、あまり勝ち負けに拘らないんでしょうね。

  それが悪く出ちゃっているみたいです」

ちひろ「他の子は伸びているんですよね」

P「はい。未央も唯も薫も、ほんの少しですがぽつぽつと向こうから仕事の依頼が来るようになりましたし、

  茜やイヴはいないと困るレベルでうちの事務所の大事な稼ぎ頭です。なんですけど」

ちひろ「藍子ちゃんは横一線ですね……」

P「はい……」


30:2013/01/11(金) 00:44:25.85 ID:UFENIQIR0

ちひろ「むしろ下がってます?」

P「そんなことはない……とも、言えないんですよね。悩ましいことに」

ちひろ「ふむ……ところでプロデューサーさん」

P「はい」

ちひろ「話のついでで何ですが、我が社の経営状態について、聞く気はありませんか?」

P「えーと」

ちひろ「今ならお得な粗茶がついてきますけど」

P「その話、面白いですか?」

ちひろ「恐ろしいですよ」


31:2013/01/11(金) 00:52:48.46 ID:UFENIQIR0

ちひろ「有り体に言ってピンチです」

P「ピンチですか」

ちひろ「パッションフルーツピンチ」

P「ちひろさん」

ちひろ「ごめんなさい。でも、冗談でも交えないと……これが結構笑えないんです」

P「そうですね、パッションフルーツピンチは面白くなかったです。で、何が恐ろしいんですか?」

ちひろ「赤字です」

P「……」


32:2013/01/11(金) 01:00:50.64 ID:UFENIQIR0

ちひろ「事務所の収入を仮に100としましょう」

ちひろ「収入からみんなの分の給料を引いて、レッスン代、光熱費、その他事務所の経営にかかる費用を引くと、残りは20ほどです。

    交通費、会場代などの諸経費が30〜40ですので、この時点でもう足りません」

ちひろ「みんなの送迎のためにプロデューサーさんに車を出してもらって、私達もいくらか給料を減らして、

    とことん節約して、それでようやく看過ライン、というところですね。当然ながら事務所の蓄えはないに等しいです」

P「……なるほど」

ちひろ「これはプロデューサーさんの方が詳しいと思いますが、ライブバトルの勝率もあまり高くありませんし……。

    勝てなければお金にならず、お金がなければ新しい衣装も曲も用意できず、それでは勝てないといった有様です」

ちひろ「ですから本当に、アリの体って3分の1インチです」

P「マジで笑えないことになってますね」


33:2013/01/11(金) 01:12:11.97 ID:UFENIQIR0

P「うーん……俺の給料をもう少し減らすというわけには……」

ちひろ「プロデューサーさん、死ぬ気ですか?」

P「死んでもみんなの面倒を見られるならそれでもいいんですけどねえ」

ちひろ「みんなの悲しむ顔を見ることになっちゃいますよ」

P「この話、みんなには?」

ちひろ「していませんけど、どうでしょうね。歳が上の子達は薄々感づいていると思います。たとえば藍子ちゃんなんかは、特に」

P「……」

ちひろ「藍子ちゃんは聡いですから……ね。聡い子ですから、その」

P「ちひろさん」

ちひろ「気づいていると思いますよ、自分が事務所の、……足枷になっていることも」

P「……それ、藍子の前で絶対に言わないでくださいね」

ちひろ「……」


34:2013/01/11(金) 01:30:39.24 ID:UFENIQIR0

P「……わかってますよ、俺はこれでも、腐ってもプロデューサーですから。

  藍子がアイドルとしての自分を……少し、諦めかけていることは知ってます。今日も一緒に帰っていて感じました」

P「でも俺は、他の誰にもないほどの、人を笑顔にする力が藍子にあることも知ってます。

  藍子には、格別何かしなくたって、ただ藍子が笑顔でいるだけで皆を幸せにする力があるんです。

  俺は藍子の魅力を、もっと大勢の人に届かせる手伝いをしてやりたい」

ちひろ「……ええ、そうですね。私もそう思います」

P「すいません、ちひろさんだって思っていることは同じですよね。なのに、俺」

ちひろ「ですがそんなプロデューサーさんに、残酷なお知らせがあります」

P「はい?」


35:2013/01/11(金) 01:46:56.00 ID:UFENIQIR0

ちひろ「藍子ちゃんを移籍する話が出ているんです」

P「!? そ、それって」

ちひろ「とはいってもまだ確定ではないですよ。本人の意向もありますから、こっちで勝手に決められることではないですが」

P「ちょっと待ってください、移籍って、そんな突然」

ちひろ「ですからまだ決まっていないんですって、プロデューサーさん、落ち着いてください」

P「落ち着いてなんかいられませんよ! 藍子が? 移籍? ……どこに?」

ちひろ「……身も蓋もない言い方をすれば、私達のような弱小事務所でも抱えられないようなアイドルを引き取るほどの、

    超弱小事務所……ということに」


36:2013/01/11(金) 01:58:56.40 ID:UFENIQIR0

P「そんなことできるわけないじゃないですか! いや、その超弱小事務所を悪く言うつもりはないですが、でも!」

ちひろ「プロデューサーさん!」

P「っ」

ちひろ「落ち着いてください、私も気持ちは分かります。……痛いほどよく分かります」

ちひろ「けれど、なあなあのままで勝ち残っていけるほど、この世界は甘くないんです。765プロ……ご存じですよね。

    あの事務所のように、所属アイドルがみんな揃って有名になれることの方が稀です。というか、奇跡です。

    765プロと同じ形を目指したところで、着実に上へ進んでいる他の子を巻き込んで、共倒れになる可能性もあります」

ちひろ「誰かを追い抜いて上へ行くには、その人を蹴落とすしかない。余計なものは切り捨てて。……わかりますよね?」

P「…………はい。……わかっています」


37:2013/01/11(金) 02:03:56.10 ID:UFENIQIR0

ちひろ「私達では開花させることができなかった藍子ちゃんの才能、弾けさせることができなかった藍子ちゃんの魅力を、

    移籍先の事務所ならうまく引き出せる……そういう可能性もあるんですよ」

P「……」

ちひろ「もちろん、最初にも言いましたが、藍子ちゃんの意思が最優先です。

    私だって藍子ちゃんとお別れしたいとは思わないですし、ほら、私達が頑張れば、まだまだ挽回の余地はありますから!」

P「……でも、事務所としては、藍子を切った方が助かるということですよね」

ちひろ「……」

P「今まで藍子に回していた分を他に使える……それで経営がどれだけ楽になるかも、想像できます。

  藍子はかなりのマイナスでしたから……そうですよね。

  元が優しい藍子は引け目を感じて、言われたら断れないことも織り込み済みというわけだ」

ちひろ「……」


38:2013/01/11(金) 02:18:15.99 ID:UFENIQIR0

P「……はあ、すいません、ちひろさんに当たるようなことじゃないのに……」

P「ああ、でもやっぱり、理屈でわかってもだめです。藍子のプロデューサーをやめたくはないし、

  藍子の、みんなを幸せにできる笑顔を、一番近くで見ていたい。……俺は相当熱烈なファンになっちゃったんでしょうね、あいつの」

ちひろ「……こんなときに不謹慎かもしれませんが」

ちひろ「プロデューサーさんのようなプロデューサーを支えることができて、私は幸せだと思います」

P「は?」

ちひろ「いえいえ、こちらの話です」

ちひろ「……もう少し、様子を見ます? 藍子ちゃんにこの話をするのは、もう後に引けなくなってから、ということに」

P「…………そうですね」


39:2013/01/11(金) 17:57:30.45 ID:UFENIQIR0

「「ただいまーっ!」」

ちひろ「あっ、みんなが帰ってきたみたいですね」

ちひろ「おかえりなさ……ってえっちょっと茜ちゃん、その格好どうしたの!? 衣装のままじゃない!」

茜「はい!! 何かおかしいですか!?」

唯「だからさっきから言ってんじゃんよっ! そんな寒そうなカッコしてたら風邪引いちゃうってば!」

薫「ねぇねぇせんせぇ聞いて、茜おねえちゃん、衣装のまんまで走って帰ってきたんだよ!」

イヴ「ダメですよぉ、寒いのって最初は平気ですけど、だんだん寒さを感じなくなって、体が動かなくなっちゃうんですから〜!」

未央「経験者の言葉重っ」

藍子「まあまあ、とにかく帰ってきたんだから……。はい茜ちゃん、タオル。汗拭いてね」

P「……」


40:2013/01/11(金) 18:14:51.56 ID:UFENIQIR0

P(今もこうして、藍子はみんなのために気を回してくれている)

P(藍子のことだ、事務所のための移籍と聞いたら、いいえなんて絶対に言うはずがない。そんなことはさせたくない)

P(かといって事務所の経営状態は最悪……。最悪ここにいるアイドル達、全員の芽を潰すことになる)

P(くそっ、俺がもっとみんなを、藍子を上手くプロデュースすることができていたら、こんなことには……)

藍子「……プロデューサー?」

P「ん? ああ、藍子、おかえり。何か用か?」

藍子「いえ、用ってわけじゃなくて……。プロデューサーさん、ロダンの考える人みたいになってたから」

P「そうか? ……別に大した悩みじゃないよ。俺って昔から優柔不ロダンでさ」

藍子「ふふっ、それ、面白くないですよ」


42:2013/01/11(金) 18:29:17.72 ID:UFENIQIR0

薫「せんせぇー!」

P「おう薫、どうした?」

薫「かおるね、お仕事先の人にほめられたよ! 元気いっぱいだねって!」

P「それはよかったなあ。薫は元気だもんな」

薫「うん! せんせぇもほめて!」

P「よしよし、偉いぞ薫」

薫「えっへへー♪」

茜「プロデューサーは本物の学校の先生みたいですね!」withタオル

P「まあ……やってることは似てるしなあ」


43:2013/01/11(金) 18:52:07.17 ID:UFENIQIR0

薫「えー……?」

P「ん? なんだよ薫、何か言いたそうだな」

薫「せんせぇと先生はぜんぜん似てないよ! だってせんせぇはかおるのこと怒らないけど、先生はすぐ怒るもん!」

P「ごめんこんがらがった。なんだって?」

薫「だからー、せんせぇはすぐ怒るけど、先生は怒らないでしょ!」

P「ん?」

薫「……あれぇ?」

P「……俺は?」

薫「せんせぇ!」

P「薫の学校の先生は?」

薫「先生!」


44:2013/01/11(金) 19:03:31.52 ID:UFENIQIR0

P「……つまり薫は、俺が薫のことを怒らないから先生じゃないって言いたいわけだな?」

薫「うん! そうだよー!」

P「その判断基準は一旦おいといて、薫、お前学校で何をやらかしてるんだ?」

薫「かおる何もわるいことしてないよ!」

P「好きなことしてるだけ?」

薫「?」

P「ごめん、薫には伝わるわけなかったな。じゃあ、悪いことしてないなら、どうして先生に怒られるんだよ」

薫「ちがうよ! かおるね、この前、池がこおってたから割ってあそんだの! それでその氷をひろったの!」

P「ああ、それ俺もよくやったなあ。それで?」

薫「教室にもってったら、先生が怒るんだよ! 氷なんか学校にもってきちゃダメ! って」

P「……小学校の先生って大変だなー」


45:2013/01/11(金) 19:17:43.67 ID:UFENIQIR0

茜「プロデューサー!!」

P「今度は茜か。何だ?」

茜「私の手って温かいですかね!!?」

P「は?」

茜「私の手って温かいですかね!!? どう思いますか!!?」

P「茜の手? 見た感じじゃわからないけど……いきなりどうしたんだ」

イヴ「プロデューサー、今、私と茜ちゃんで、手の温かさの比べっこをしたんです〜。外が寒かったので」

P「比べ……ああ、そういうこと」

イヴ「そうしたら、茜ちゃんの手はすごく温かくて、私の手はすごく冷たいんですぅ〜……。

   ひーん、これって私が心の冷たい人間だってことなんでしょうか〜……」


46:2013/01/11(金) 19:28:20.79 ID:UFENIQIR0

P「……手が冷たい人は、心があったかい人だってよく言うけど」

イヴ「そうなんですかぁ〜。あっ! それなら私、心があったかいってことですね☆ 嬉しいですねぇ〜」

P「うん、まあ、実際関係ないと思うよ。……試してみようか?」

P「ほら、イヴ……じゃついでに茜も、俺の手ひらの上に手を置いてごらん」

茜「はい!! なんだか『お手』みたいですね!!」

P「その例えは何とかならないかなあ……お、茜の手って本当に温かいな。熱いくらいだ」

イヴ「は、はい……こうですかぁ?」

P「そしてイヴの手は本当に冷たいな……」

薫「せんせぇかおるも! かおるもやりたい!」

P「はいはい、イヴのあとな。……と、どうだ、三人とも、俺の手は冷たかっただろう」

茜「はい!!」

イヴ「プロデューサーも心があったかいってことですねぇ〜」


47:2013/01/11(金) 19:34:49.53 ID:UFENIQIR0

P「ところがだ、俺がこうやって………………」スリスリスリスリ

薫「?」

イヴ「?」

茜「参拝ですか?」

P「事務所で参拝はしない、ちょっと待ってな。……こうやって、両手を擦りあわせてからもう一度手を置いてみると」

薫「あ! せんせぇの手、あったかくなってるね!」

イヴ「プロデューサーが心の冷たい人になっちゃいましたぁ〜!」

P「ちがうって」

茜「すごいですね!! 魔法ですか!? 気合ですか!? 参拝の結果ですか!!?」

P「……えっと、気合が一番近いかな」


48:2013/01/11(金) 19:43:15.51 ID:UFENIQIR0

P「とまあこんな風に、手の温かさなんて簡単に変わるんだよ。心が温かいか冷たいかが簡単に変わったらおかしいだろ?」

薫「へー……」

イヴ「なるほどぉ〜……」

茜「プロデューサーは物知りですね!! さっすがプロデューサーです!!」

P「おい、この程度のことで物知りなんて言われたら逆に恥ずかしいぞ」

P「……それにな、お前達はアイドルなんだ。

  アイドルやるような子は、手が温かいか冷たいかなんて関係なく、熱い心を持ってるに決まってるさ」

薫「!」

茜「あ!! 今、格好いいこと言いましたね!!」

P「それは言われると普通に恥ずかしいからやめてくれ」

イヴ「プロデューサー、かっこいいですぅ〜! ブリッツェンにも教えてあげなくちゃ!」

P「やめてくださいお願いします!」


49:2013/01/11(金) 19:56:14.08 ID:UFENIQIR0

P「はー……」

藍子「お疲れさまです」

P「ああ、藍子…………なんでちょっと笑ってるんだ?」

藍子「いえ、プロデューサーさん、格好いいこと言ってたなーと思って」

P「やめろよ……藍子までそんなことを言うようになったら、俺の安息の地がなくなっちゃうだろ」

藍子「安息の地? ですか、私が?」

P「うん。みんなももうちょっと藍子を見習ってほしいんだけどなあ」

藍子「……」

P「ん、藍子、どうしたんだ、急に黙って」

藍子「いえ……その、プロデューサーさん、ちょっとお話ししたいことがあるんですけど、いいですか?」

P「いいけど、何のことで?」

藍子「……」

P「……?」

藍子「……ここじゃ何なので……他の人に聞かれないところ、行きましょう」


50:2013/01/11(金) 20:06:32.27 ID:UFENIQIR0

P「それで、話って?」

藍子「……プロデューサー」

P「ん、何だ?」

藍子「……私に、移籍の話があるそうですね」

P「!? ど、どうして藍子、それを」

藍子「お二人の話、聞いちゃいました」

P「お二人って……俺と、ちひろさんが話してたときか?」

藍子「はい」

P「……」

藍子「……」


51:2013/01/11(金) 21:37:50.62 ID:UFENIQIR0

P「……そうか、聞かれちゃったか」

藍子「はい、聞いちゃいました」

藍子「だから、事務所の経営が相当苦しいってことも知ってます。

   私が足枷になっていることも、他の人から聞いて、改めて思い知りました」

藍子「私、移籍します」

P「……」

藍子「それか、アイドルをやめます。せっかくスカウトしてもらったのに、今更こんなこと言うのもどうかと思いますけど、

   元々、私みたいな取り柄のない子には向いてなかったんですよ」

P「……藍子は、それでいいのか?」

藍子「……事務所の、みんなのためなら、本望です」


52:2013/01/11(金) 21:49:28.26 ID:UFENIQIR0

P「…………藍子」

藍子「はい」

P「藍子は、ライブバトルで負けたとき、どう思った?」

藍子「は、はい?」

P「ライブバトル。言っちゃ何だけど、勝ったことの方が珍しいだろ。今日のことでもいいや。

  ……そのライブが終わったとき、藍子はどう思った」

藍子「ええと、楽しいライブ……今日も、楽しかったなって」

P「それだけ?」

藍子「……」

P「もっと他に考えたこととか、なかった?」

藍子「……他って」


53:2013/01/11(金) 22:01:43.99 ID:UFENIQIR0

P「俺は別に、藍子が虚勢を張ってるとは思ってない。これだけ一緒に過ごしてきたんだ、藍子がどういう子かも分かってきたし、

  勝っても負けてもライブは楽しかったって思えるのは、本当のことなんだろう」

P「でも、それ以外に何か思うことはなかったか?」

藍子「……」

P「バレているなら隠さないけど、今の事務所は火の車だそうだ」

P「……お前達の誰かのせいじゃない。

  俺が後先考えずに、いいと思った子をどんどん連れてきたせいだよ。イヴなんかその最たる例だし」

藍子「……あれは私も、びっくりしました」

P「業績はまだまだ振るわない。みんなもこれからが伸び盛り、いくらでも育っていく頃合いだ。

  なのに事務所の経営はパッションフルーツ」

藍子「パッションフルーツ?」

P「あ……いや、こっちの話だ。気にしないで」


54:2013/01/11(金) 22:09:45.00 ID:UFENIQIR0

P「そんな中で藍子の移籍の話が出た。この時期に引き取りじゃなくて移籍だなんて、

  あくまで事務所的なものの見方をすれば、願ってもない話だと思う」

藍子「……」

P「だから、もし藍子が、移籍することになっても、本心から、向こうでも笑顔で頑張れるって言ってくれていたら、

  俺はいつもみたいにそれに甘えていたかもしれない」

P「でも藍子はそうじゃないだろう。移籍したら、たぶん笑顔じゃいられない」

藍子「……」

P「藍子、今自分がどんな顔してるか分かるか?」


55:2013/01/11(金) 22:19:13.37 ID:UFENIQIR0

P「笑顔ってのは人から人に移っていくものだろ。与える側が笑顔じゃなくちゃ、相手を笑顔にすることはできない」

P「藍子の気持ちの問題だけじゃない、俺だって藍子に移籍してほしくない」

P「それに申し訳ないんだ。今まで散々世話させて、苦労かけて、最後に経営不振の尻拭いなんて」

藍子「尻拭いじゃないです、プロデューサー」

P「……」

藍子「違います。私は今まで、何の役にも立っていなかったんですよ。事務所の役に立つどころか、傾かせるばっかりで」

藍子「他のみんなはお仕事もして、ちょっとずつ上を目指しているのに、私は足掛かりも見えなくて」

藍子「だから決めました。私は、移籍したい」

P「……」

藍子「それが私にできる精一杯の罪滅ぼしだと思うんです。もうこれ以上、みんなに迷惑を」

P「俺は藍子に迷惑をかけられた覚えはない!」

藍子「じゃあ私もプロデューサーに苦労をかけられた覚えはありませんっ!」


56:2013/01/11(金) 22:27:27.32 ID:UFENIQIR0

P「……」

藍子「……」

P「……藍子、いいか」

P「俺は藍子にはものっすごい魅力があると信じてる。藍子には関わった人を幸せにできる、何かがあるんだ。

  初めて藍子に会ったときに直感して、しばらく一緒に過ごして確信したよ。藍子には藍子にしかない魅力がある!」

藍子「……」

P「お前、自分の笑顔がどんなにすごいか気づいてないだろ! どれだけの人が藍子の笑顔で幸せになれるか!

  どれだけの人が藍子の笑顔から笑顔を分けてもらえるか、分かってないだろう!」


57:2013/01/11(金) 22:38:41.98 ID:UFENIQIR0

藍子「……」

P「俺はさ、そんなお前の笑顔を曇らせたくないんだ。お前には常に笑顔でいられる場所にいてほしい。

  それに、これは俺の我が侭だけど、できれば藍子がたくさんの人に笑顔を届けるところを、一番近くで見ていたい」

藍子「……っ」

P「頼む! 藍子、どうか移籍するなんて言わないで、自分の魅力を諦めないでくれ!

  それにみんな! 勝手なことを言って本当にごめん、この埋め合わせは俺の命と健康を懸けて絶対に何とかする!」

P「だから、お前のとびっきりの笑顔、みんなに――俺達に、届けてくれ!」


58:2013/01/11(金) 22:48:37.89 ID:UFENIQIR0

藍子「……」

P「……」

藍子「……」

P「……」

藍子「……なに」

藍子「何、言って……」

P「……ごめん、自分でもなに言ってるのかよく分からなくなって」

藍子「違いますよっ、そうじゃなくてっ」


59:2013/01/11(金) 22:53:58.51 ID:UFENIQIR0

P「え?」

藍子「なんで……」

藍子「どうしてそういうこと言うんですか……!」

P「……藍子?」

藍子「私も考えたんです、アイドルのこととか、これからどうしたらいいかとか、色々……移籍のことも、覚悟を決めたのに……」

藍子「笑顔でいられるように頑張ろうって思ってたのに、

   プロデューサーさんにそんなこと言われたら……が、我慢できないじゃないですかあっ!」

P「……」


60:2013/01/11(金) 23:02:03.88 ID:UFENIQIR0

藍子「私だって、本当は、移籍したくないです!」

藍子「もっ、もっとみんなと、この事務所で過ごしたいです! プロデューサーさんともお散歩したいですっ!」

P「……」

藍子「ライブバトルだって!」

藍子「もう、負けたく、ないですっ……!

   私も、かっ、勝って、たくさんの人に、笑顔をとっ、届けられるような、アイ、ドルになっ、てっ!」

P「……うん」

藍子「誰よりもっ、プロでゅ……ぅくっ、サー、さんの、笑顔を見たい、ですっ」

P「うん」

藍子「わっ、私は、プロデューサー、と」

藍子「あなたといっ、一緒に、トップアイドルになりたいですっ!」


61:2013/01/11(金) 23:29:20.44 ID:UFENIQIR0

P「……藍子、ほら、ハンカチ」

藍子「ありがとう、ござっ、ま……」

P「ああ、無理して喋らなくていいよ。……なあ、藍子」

藍子「……」

P「この事務所で……ここでアイドルを続けたいか?」

藍子「……」コクッ

P「もっと上を目指したいと思うか?」

藍子「はい……」

P「どんなことがあっても?」

藍子「はいっ……!」


62:2013/01/11(金) 23:39:09.93 ID:UFENIQIR0

P「うん、それだけの気概があれば大丈夫。それだけ見せてくれたら、俺も安心してプロデュースできるよ。

  絶対に、お前の笑顔、届けさせてみせるから……全人類に」

藍子「それは大袈裟、ですよっ」

P「目標はそれくらいの方がいいって。なんてったって、事務所が潰れる危機から何とかしなきゃいけないんだから」

P「……ああでも、今は全人類に届くほどの笑顔には程遠いなぁ」

藍子「誰の……せいだと思ってるんですか」

P「ははは」

藍子「もう……」



???「話は聞かせてもらったァー!」ドッバーン


63:2013/01/11(金) 23:47:06.74 ID:UFENIQIR0

未央「プロデューサー!」

P「み、未央!?」

未央「ったくもう、プロデューサー! これはいったいどういうことなのさ!」

P「どういうことって何、いやちょっと未央近い近い顔が近い」

未央「藍子ちゃんが移籍するとかしないとか! そんな大事な話、どうして私達に黙ってるの!?」

P「……あー」

薫「そうだよせんせぇ!」

P「薫?」


64:2013/01/11(金) 23:58:53.69 ID:UFENIQIR0

薫「こそこそ話はいけないんだよ! 事務所のことなんだから、かおるたちにもかんけいあるよっ!」

イヴ「大事な仲間のことでもありますからね〜」

薫「ねー!」

P「イヴまで……。まあ……そうだな、その通りだ」

唯「はい! はい! ゆいも言いたいことがありまーす」

唯「まずねー、事務所が火の車だとか、きちんと教えてほしいな。そしたらゆい達もイロイロ協力したよ?」

P「うん、ごめん」

茜「そうですよ! 事務所が熱く燃え上がって走り出しそうだとしても、私達にできることはあるはずです!!」

P「えーと、火の車ってそういう意味じゃないんだけど」


65:2013/01/12(土) 00:14:25.66 ID:Wrwwkycl0

薫「せんせぇ、火の車ってどういう意味?」

P「経営が危ないってことだよ」

茜「あ、そうですか!! そういえばそうでしたね!! ……ってええっ!? 危ないんですか!!?」

P「……うん、実は」

未央「だからねプロデューサー。素直にそれを話してくれたら、私達も給料を減らすぐらい、どうってことないわけですよ」

薫「アイドルやるのが、いーっちばん、楽しいし!」

唯「それにゆい達、お給料で生活してるわけじゃないしね。何ならゼロでもぜんっぜん平気!」

イヴ「あ、私はゼロになっちゃうとちょっと困りますぅ〜! で、でも頑張りますよっ、私も!」


67:2013/01/12(土) 00:29:17.14 ID:Wrwwkycl0

未央「ね? 事務所の経営とやらが何とかなるまで、私達、しっかり協力するからさっ」

茜「ただでさえ!! プロデューサーと藍子には日頃からお世話になってますからね!!」

P「……お前ら……」

ちひろ「プロデューサーさん♪」

P「あ、ちひろさん」

ちひろ「今の『……お前ら……』、まるでヤンクミみたいでしたね、うふふ」

P「空気読んでください」

ちひろ「えー」


68:2013/01/12(土) 00:41:25.65 ID:Wrwwkycl0

唯「藍ちゃんも同じだよっ」

藍子「え、わ……私?」

唯「何にも言わないで一人で決めちゃうなんて水臭いぞー?

  移籍なんてビッグでシリアスな話になったら、ゆい達にも相談してちょ!」

未央「まあ私達、普段からこんな感じでぱっぱらぱーだから、頼りにならないかもしれないけど……。

   でも、仲間のことは大切にするよ!」

薫「ともだちは大事にしなさいって、かおる、お父さんによく言われてるよ!」

イヴ「アイドルのお仕事も、その、ちょっとしたアドバイスならできますよ〜☆」

茜「もちろん、迷惑じゃなければ!!」

藍子「みんな……」

藍子「うん……ありがとうっ……!」


69:2013/01/12(土) 00:48:39.33 ID:Wrwwkycl0

P「……藍子」

藍子「あ、はい?」

P「こういうときはさ、そんな顔じゃなくて」

P「とびっきりの笑顔でお礼を言うとしたもんだろ?」

藍子「!」


藍子「はいっ! みんな、ありがとう!」ニコッ


70:2013/01/12(土) 01:01:46.78 ID:Wrwwkycl0


 ―――――――――― ◇ ――――――――――

「……ふんっ! アンタ、なかなかやるじゃない! でも次は絶対負けないんだから!」

「勝った……? 嬉しい……あ、すみません、ありがとうございますっ!」



藍子「プロデューサーっ!」

P「藍子、お疲れさま」

藍子「勝ちました! 私勝ちましたよっ! やった!」

P「うん、見てた見てた。これで一歩前進ってところだな」

藍子「ふふっ、でもまだまだこれからですよね。みんなに笑顔を届けるために、私の目指す場所はもっと上、です!」

P「上機嫌だな……うん、藍子の笑顔が見られるのはいいことだ」

藍子「あ、プロデューサーさん、今日は歩きですか?」

P「うん。まだまだ無駄遣いはできないし、それに藍子は歩きの方が好きだしな」

藍子「それじゃあ、今日もプロデューサーさんとお散歩ですね!」


71:2013/01/12(土) 01:11:29.92 ID:Wrwwkycl0

藍子「ちょっとずつ、暖かくなってきましたね」

P「そうだなあ……俺にはまだ寒いけど」

藍子「ええっ……」

P「いやほら、確かに前よりはマシになったと思うよ。でも何の防寒もしてないから、耳も手もカチンコチンなんだよ」

藍子「……」

P「うー、さぶさぶ。やっぱカイロでも持ってこようかな……」

藍子「そ、それじゃあプロデューサーさんっ」

P「うん?」

藍子「手、つないで歩きませんか……? 温かいですよっ」

P「え……」

藍子「……どうでしょう?」

P「……ま、まあいいけども……」


72:2013/01/12(土) 01:20:23.36 ID:Wrwwkycl0

藍子「じゃあ……」

P「はい」

藍子「……」ギュッ

藍子「……ふふっ♪」

P「……どうした、藍子? にこにこして」

藍子「何でもありませんよーっ」





 ――アイドル、向いていないって思った日もあったんです。

 ――私みたいな普通の子じゃダメかなって。


 ――でも、今は続けてよかったと思ってます!



 おわり


73:2013/01/12(土) 01:28:06.50 ID:Wrwwkycl0

72で終わらせることができました。
お付き合いいただきありがとうございました。

藍子ちゃんがいい絵のSRになりますように。


75:2013/01/12(土) 02:00:38.62 ID:X3r/fUa5o

最近になって藍子のこと好きになったときにこのSSが来て、もっと好きになった

モバマスはPのタイプにこだわらずに好きなキャラを育てるべきだと思うの


77:2013/01/12(土) 19:29:49.08 ID:Wrwwkycl0

あっしまった72じゃねえ

本当にごめんなさい藍子ちゃん


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