1: :2017/11/12(日) 18:11:15.76 ID:qT/AyJQb0
いつの間にか、秋だ。
春が来て、桜に見惚れていたら雨が桜を流していって、晴れ上がったと思えば夏が来て、夏草に隠れるように暑さをやり過ごしていたら、秋が来ていた。
これは秋の一日。何も無い、ただの私とヴィーネの一日。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1510477875
いつの間にか、秋だ。
春が来て、桜に見惚れていたら雨が桜を流していって、晴れ上がったと思えば夏が来て、夏草に隠れるように暑さをやり過ごしていたら、秋が来ていた。
これは秋の一日。何も無い、ただの私とヴィーネの一日。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1510477875
2: :2017/11/12(日) 18:14:13.91 ID:qT/AyJQb0
ガヴリール「風が冷たい」
ヴィーネ「そうね、もう秋だからね」
金曜日、学校が終わってから、私はヴィーネに連れられて坂道を歩かされている。
行きたいカフェがあるそうで、なんで休日に行くのではなく平日を指定したのかと問えば土曜、日曜、祝日は定休日ということらしい。
そんな飲食店あるか?…でも土日祝日は休みたいよな。分かる。分かりすぎてもう何の疑問も湧いてこない。
ガヴリール「手袋するの早くない?」
ヴィーネ「もう風邪引きたくないし、予防みたいなものよ」
ガヴリール「また看病しに行くよ」
ヴィーネ「あんたがしに来るのはイタズラでしょ」
ガヴリール「宿題も持ってくるぞ」
ヴィーネ「来なくていい」
ガヴリール「風が冷たい」
ヴィーネ「そうね、もう秋だからね」
金曜日、学校が終わってから、私はヴィーネに連れられて坂道を歩かされている。
行きたいカフェがあるそうで、なんで休日に行くのではなく平日を指定したのかと問えば土曜、日曜、祝日は定休日ということらしい。
そんな飲食店あるか?…でも土日祝日は休みたいよな。分かる。分かりすぎてもう何の疑問も湧いてこない。
ガヴリール「手袋するの早くない?」
ヴィーネ「もう風邪引きたくないし、予防みたいなものよ」
ガヴリール「また看病しに行くよ」
ヴィーネ「あんたがしに来るのはイタズラでしょ」
ガヴリール「宿題も持ってくるぞ」
ヴィーネ「来なくていい」
3: :2017/11/12(日) 18:15:50.58 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネ「ガヴこそ、寒くなってきたらマフラーとか手袋するのよ」
ガヴリール「わかってるよ。私寒いの嫌いだし」
ヴィーネ「なんか、ガヴは猫みたいよね」
ガヴリール「そうか?」
ヴィーネ「うん。寒いの嫌で、朝布団から出てこないとことか」
ガヴリール「あー、出てこないな。今の時期は特に」
ヴィーネ「素直じゃないとことか」
ガヴリール「猫が素直かどうかなんてわからないもんだよ」
ヴィーネ「気まぐれなところとか」
ガヴリール「うーん」
ヴィーネ「何回言っても課題をやってこないとことか」
ガヴリール「なんか耳が痛くなってきた」
ヴィーネ「ガヴこそ、寒くなってきたらマフラーとか手袋するのよ」
ガヴリール「わかってるよ。私寒いの嫌いだし」
ヴィーネ「なんか、ガヴは猫みたいよね」
ガヴリール「そうか?」
ヴィーネ「うん。寒いの嫌で、朝布団から出てこないとことか」
ガヴリール「あー、出てこないな。今の時期は特に」
ヴィーネ「素直じゃないとことか」
ガヴリール「猫が素直かどうかなんてわからないもんだよ」
ヴィーネ「気まぐれなところとか」
ガヴリール「うーん」
ヴィーネ「何回言っても課題をやってこないとことか」
ガヴリール「なんか耳が痛くなってきた」
4: :2017/11/12(日) 18:16:30.14 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネ「昔のあなたはどこに行ったのかしら」
ガヴリール「そんなやつは初めから居ない」
ヴィーネ「可愛かったな〜、あの頃のガヴ」
ガヴリール「じゃあ今の私は可愛くないのか〜」
ヴィーネ「……そ、そんなことないけど」テレテレ
ガヴリール「照れるなら最初から言うな」
ヴィーネ「昔のあなたはどこに行ったのかしら」
ガヴリール「そんなやつは初めから居ない」
ヴィーネ「可愛かったな〜、あの頃のガヴ」
ガヴリール「じゃあ今の私は可愛くないのか〜」
ヴィーネ「……そ、そんなことないけど」テレテレ
ガヴリール「照れるなら最初から言うな」
5: :2017/11/12(日) 18:17:17.86 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネ「……」シュ~
ガヴリール「秋でよかったな。風が火照った顔を冷やしてくれる」
ヴィーネ「う、うるさいわね!」
ガヴリール「もう少し暗ければ、照れてるかどうかわからなかったのにな」
ガヴリール「いや、ヴィーネちゃんはすぐ態度に出るからわかるか」
ヴィーネ「もう!」
ヴィーネ「……」シュ~
ガヴリール「秋でよかったな。風が火照った顔を冷やしてくれる」
ヴィーネ「う、うるさいわね!」
ガヴリール「もう少し暗ければ、照れてるかどうかわからなかったのにな」
ガヴリール「いや、ヴィーネちゃんはすぐ態度に出るからわかるか」
ヴィーネ「もう!」
6: :2017/11/12(日) 18:18:08.04 ID:qT/AyJQb0
もうすぐ夜が来る、そう感じるタイミングが日に日に早くなる。まだ赤く染まりきっていない夕空も、すぐに暗闇が覆い尽くしてしまうだろう。
ヴィーネ「何見てるの?」
ガヴリール「空」
ヴィーネ「綺麗な夕空よね」
ガヴリール「うん。綺麗だ」
もうすぐ夜が来る、そう感じるタイミングが日に日に早くなる。まだ赤く染まりきっていない夕空も、すぐに暗闇が覆い尽くしてしまうだろう。
ヴィーネ「何見てるの?」
ガヴリール「空」
ヴィーネ「綺麗な夕空よね」
ガヴリール「うん。綺麗だ」
7: :2017/11/12(日) 18:18:59.75 ID:qT/AyJQb0
ガヴリール「にしても」
ガヴリール「秋ってなんでこんなに物悲しい気持ちになるんだろうな」
ヴィーネ「うーん…そうね」
ヴィーネ「夏ってほら、日数に差はあれど学生も社会人も夏休みがあるじゃない」
ガヴリール「あるな、社会人は知らないけれど」
ヴィーネ「長いお休みの間ってね、みんなどこかに遊びに行くの」
ヴィーネ「ガヴは引きこもりだけど」
ガヴリール「おい」
ガヴリール「にしても」
ガヴリール「秋ってなんでこんなに物悲しい気持ちになるんだろうな」
ヴィーネ「うーん…そうね」
ヴィーネ「夏ってほら、日数に差はあれど学生も社会人も夏休みがあるじゃない」
ガヴリール「あるな、社会人は知らないけれど」
ヴィーネ「長いお休みの間ってね、みんなどこかに遊びに行くの」
ヴィーネ「ガヴは引きこもりだけど」
ガヴリール「おい」
8: :2017/11/12(日) 18:20:42.32 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネ「そうするとね、浮き足立ったような気持ちが街を流れる空気に変わって」
ヴィーネ「毎日がとっても騒がしい日々に感じるものなのよ」
ヴィーネ「だからその反動で秋は寂しくなるの。みんな日常に戻っていくから」
ヴィーネ「あ、あと冷たくなる空気も、薄い陽の当たり具合なのもあるけどね」
ガヴリール「いや、それはおかしい」
ヴィーネ「そうかしら」
ガヴリール「ヴィーネはさっき言ったよね、私が引きこもりだって」
ヴィーネ「言ったっけ?」
ガヴリール「言ったわ!なかったことにするな!」
ヴィーネ「ふふ、ごめんね。それで?」
ガヴリール「私は確かに夏の間引きこもりだった。それは認めよう」
ガヴリール「だが、引きこもりだったということはつまり夏の空気なんかこれっぽっちも味わっていなかった証明になるんだ」
ヴィーネ「嫌な証明ね」
ガヴリール「夏の…なに?騒がしい日々なんか私は知らない。今のこの物悲しさしか知らない」
ガヴリール「だから夏と秋の差分を感じるはずはないんだ!」
ヴィーネ「ふーん。そう」
ヴィーネ「じゃあ、私個人の意見ってことで」
ガヴリール「おかしいな。ヴィーネが冷たい」
ヴィーネ「秋だから」
ガヴリール「秋は嫌な季節だ。ヴィーネの態度まで冷たくなる」
ヴィーネ「そうするとね、浮き足立ったような気持ちが街を流れる空気に変わって」
ヴィーネ「毎日がとっても騒がしい日々に感じるものなのよ」
ヴィーネ「だからその反動で秋は寂しくなるの。みんな日常に戻っていくから」
ヴィーネ「あ、あと冷たくなる空気も、薄い陽の当たり具合なのもあるけどね」
ガヴリール「いや、それはおかしい」
ヴィーネ「そうかしら」
ガヴリール「ヴィーネはさっき言ったよね、私が引きこもりだって」
ヴィーネ「言ったっけ?」
ガヴリール「言ったわ!なかったことにするな!」
ヴィーネ「ふふ、ごめんね。それで?」
ガヴリール「私は確かに夏の間引きこもりだった。それは認めよう」
ガヴリール「だが、引きこもりだったということはつまり夏の空気なんかこれっぽっちも味わっていなかった証明になるんだ」
ヴィーネ「嫌な証明ね」
ガヴリール「夏の…なに?騒がしい日々なんか私は知らない。今のこの物悲しさしか知らない」
ガヴリール「だから夏と秋の差分を感じるはずはないんだ!」
ヴィーネ「ふーん。そう」
ヴィーネ「じゃあ、私個人の意見ってことで」
ガヴリール「おかしいな。ヴィーネが冷たい」
ヴィーネ「秋だから」
ガヴリール「秋は嫌な季節だ。ヴィーネの態度まで冷たくなる」
9: :2017/11/12(日) 18:22:02.96 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネが私の2、3歩分前を歩く。拗ねるとよくこうなるんだけど、今日は特段彼女を怒らせるようなことはしていない。してないよな?
早足になって、ヴィーネの服の袖を掴んだ。
ガヴリール「なんか怒ってる?」
ヴィーネ「怒ってない」
ヴィーネ「けど…手、繋いでくれたら許してあげる」
ガヴリール「…なんだそれ」
言ってる事に繋がりがない。不器用なやつだなぁ。
ヴィーネが私の2、3歩分前を歩く。拗ねるとよくこうなるんだけど、今日は特段彼女を怒らせるようなことはしていない。してないよな?
早足になって、ヴィーネの服の袖を掴んだ。
ガヴリール「なんか怒ってる?」
ヴィーネ「怒ってない」
ヴィーネ「けど…手、繋いでくれたら許してあげる」
ガヴリール「…なんだそれ」
言ってる事に繋がりがない。不器用なやつだなぁ。
10: :2017/11/12(日) 18:24:13.07 ID:qT/AyJQb0
ガヴリール「じゃあはい、手袋外して」
ガヴリール「手、出して」
ヴィーネ「…うん」
ぎゅっと手を握りあう。暖かい体温が伝わってくる。
ガヴリール「ヴィーネの手、あったかいね」
ヴィーネ「ガヴの手は冷たいわ」
ガヴリール「そっかーまた風邪引いたら困るからな〜」
ガヴリール「…手繋ぐのやめる?」
ヴィーネ「……う」
ガヴリール「いつまで恥ずかしがり屋をしてるんだ」
ヴィーネ「い、いいでしょ別に!」
ガヴリール「じゃあはい、手袋外して」
ガヴリール「手、出して」
ヴィーネ「…うん」
ぎゅっと手を握りあう。暖かい体温が伝わってくる。
ガヴリール「ヴィーネの手、あったかいね」
ヴィーネ「ガヴの手は冷たいわ」
ガヴリール「そっかーまた風邪引いたら困るからな〜」
ガヴリール「…手繋ぐのやめる?」
ヴィーネ「……う」
ガヴリール「いつまで恥ずかしがり屋をしてるんだ」
ヴィーネ「い、いいでしょ別に!」
11: :2017/11/12(日) 18:25:06.64 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネ「…夏、一緒に遊んだじゃない」
ヴィーネ「…楽しくなかった?」
あぁ、そういうことか。
ガヴリール「ううん、楽しかったよ。きっと楽しかったから、寂しいんだ」
ヴィーネ「よかった」
不安そうだった顔から零れた安堵の笑みは、美しかった。時折するこの表情は、どうしようもなく心を痛める。
ガヴリール「……」
ガヴリール「…でもヴィーネ、私のこと引きこもりって言ってたよな」
ヴィーネ「…あっ」
ガヴリール「やめだ!手を繋ぐのおしまい!!」
ヴィーネ「ガ、ガヴ〜ごめん〜」グスッ
ガヴリール「そ、そんな顔してもダメだからな!」
ヴィーネ「…夏、一緒に遊んだじゃない」
ヴィーネ「…楽しくなかった?」
あぁ、そういうことか。
ガヴリール「ううん、楽しかったよ。きっと楽しかったから、寂しいんだ」
ヴィーネ「よかった」
不安そうだった顔から零れた安堵の笑みは、美しかった。時折するこの表情は、どうしようもなく心を痛める。
ガヴリール「……」
ガヴリール「…でもヴィーネ、私のこと引きこもりって言ってたよな」
ヴィーネ「…あっ」
ガヴリール「やめだ!手を繋ぐのおしまい!!」
ヴィーネ「ガ、ガヴ〜ごめん〜」グスッ
ガヴリール「そ、そんな顔してもダメだからな!」
12: :2017/11/12(日) 18:26:24.71 ID:qT/AyJQb0
そんなバカなやり取りをしながら随分と坂道を登ってきた。振り返ると市街を眺望できる場所まで来ていることに気づいた。
ヴィーネ「あっ!」
ヴィーネが声をあげて、目的地への到着を知らせる。
ガヴリール「ここ?」
ヴィーネ「そう!ここ!」
ガヴリール「テンションが高い」
ヴィーネ「だってずっと来たかったし!」
ガヴリール「わかったわかった、入ろう」
私たちがやって来たのは紅茶が美味しいと噂のカフェ。
でもそれ以上に人気なスイーツメニューがあるらしい。気になる。
そんなバカなやり取りをしながら随分と坂道を登ってきた。振り返ると市街を眺望できる場所まで来ていることに気づいた。
ヴィーネ「あっ!」
ヴィーネが声をあげて、目的地への到着を知らせる。
ガヴリール「ここ?」
ヴィーネ「そう!ここ!」
ガヴリール「テンションが高い」
ヴィーネ「だってずっと来たかったし!」
ガヴリール「わかったわかった、入ろう」
私たちがやって来たのは紅茶が美味しいと噂のカフェ。
でもそれ以上に人気なスイーツメニューがあるらしい。気になる。
13: :2017/11/12(日) 18:27:42.98 ID:qT/AyJQb0
「お好きな席へどうぞ」
迎え入れてくれたのはちょうどいいくらいの暖房と、想像以上に若い店主と、紅茶の香り…ではなくキャラメルの香りだった。
店内は教室二つ分くらいの広さで、落ち着いた雰囲気の中に小粋なジャズがBGMとして流れている。先客はいないらしく、この空間を二人で独占する事に罪悪感を覚えてしまいそうだった。
「お好きな席へどうぞ」
迎え入れてくれたのはちょうどいいくらいの暖房と、想像以上に若い店主と、紅茶の香り…ではなくキャラメルの香りだった。
店内は教室二つ分くらいの広さで、落ち着いた雰囲気の中に小粋なジャズがBGMとして流れている。先客はいないらしく、この空間を二人で独占する事に罪悪感を覚えてしまいそうだった。
14: :2017/11/12(日) 18:28:42.41 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネ「これ!」
店内に入ってメニューをもらってヴィーネが指し示したのは、パンケーキだった。
ガヴリール「“究極のパンケーキ”…?」
キャラメルの香りはこれだったか。
ヴィーネ「そう!これがも〜とっても美味しそうなのよ!」
ガヴリール「へー、究極なんて書かれるとむしろ興味が湧くな」
ガヴリール「紅茶は…メインがフレーバーティーなのか」
ガヴリール「“抹茶ロイヤル紅茶”、“薔薇と桃”、“京都四条の香り”、“京都祇園の香り”…色々あるけど」
ガヴリール「……京都推し?」
ヴィーネ「京都が好きなのよ、きっと」
ガヴリール「京都に店出せばいいのに」
ヴィーネ「そういうのとは違うんでしょ」
ガヴリール「そういうもんか?」
ヴィーネ「わかんないけど」
ヴィーネ「これ!」
店内に入ってメニューをもらってヴィーネが指し示したのは、パンケーキだった。
ガヴリール「“究極のパンケーキ”…?」
キャラメルの香りはこれだったか。
ヴィーネ「そう!これがも〜とっても美味しそうなのよ!」
ガヴリール「へー、究極なんて書かれるとむしろ興味が湧くな」
ガヴリール「紅茶は…メインがフレーバーティーなのか」
ガヴリール「“抹茶ロイヤル紅茶”、“薔薇と桃”、“京都四条の香り”、“京都祇園の香り”…色々あるけど」
ガヴリール「……京都推し?」
ヴィーネ「京都が好きなのよ、きっと」
ガヴリール「京都に店出せばいいのに」
ヴィーネ「そういうのとは違うんでしょ」
ガヴリール「そういうもんか?」
ヴィーネ「わかんないけど」
15: :2017/11/12(日) 18:29:29.01 ID:qT/AyJQb0
ガヴリール「パンケーキ、大きめと小さめがあるけれどどっちにする?」
ヴィーネ「お……小さめで」
ガヴリール「無理しなくていいんだぞ」
ガヴリール「パンケーキ、大きめと小さめがあるけれどどっちにする?」
ヴィーネ「お……小さめで」
ガヴリール「無理しなくていいんだぞ」
16: :2017/11/12(日) 18:31:35.66 ID:qT/AyJQb0
私は小さめパンケーキ、紅茶は京都祇園のやつ。
ヴィーネは大きめパンケーキ、紅茶は“薔薇と桃”を注文した。
ヴィーネ「ガヴさ」
ガヴリール「ん?」
ヴィーネ「京都に遊びに行きたいの?」
ガヴリール「なんだ急に」
ヴィーネ「だってそのフレーバー選んだし」
ガヴリール「そのイコールおかしいでしょ。別にそういうつもりでは頼んでない」
ヴィーネ「そう」
ガヴリール「…行きたいんだろ」
ヴィーネ「べ、別に」
ガヴリール「そっか」
ガヴリール「……」
ヴィーネ「……」ムー!
ヴィーネ「ガヴのいじわる!」
ガヴリール「はっきり言わないヴィーネが悪い」
ヴィーネ「もう、そこは察しなさいよ!」
ガヴリール「はいはいじゃあ冬休みあたりに京都に行こうか」
ガヴリール「……そんな金ある?」
ヴィーネ「…………」
私は小さめパンケーキ、紅茶は京都祇園のやつ。
ヴィーネは大きめパンケーキ、紅茶は“薔薇と桃”を注文した。
ヴィーネ「ガヴさ」
ガヴリール「ん?」
ヴィーネ「京都に遊びに行きたいの?」
ガヴリール「なんだ急に」
ヴィーネ「だってそのフレーバー選んだし」
ガヴリール「そのイコールおかしいでしょ。別にそういうつもりでは頼んでない」
ヴィーネ「そう」
ガヴリール「…行きたいんだろ」
ヴィーネ「べ、別に」
ガヴリール「そっか」
ガヴリール「……」
ヴィーネ「……」ムー!
ヴィーネ「ガヴのいじわる!」
ガヴリール「はっきり言わないヴィーネが悪い」
ヴィーネ「もう、そこは察しなさいよ!」
ガヴリール「はいはいじゃあ冬休みあたりに京都に行こうか」
ガヴリール「……そんな金ある?」
ヴィーネ「…………」
17: :2017/11/12(日) 18:32:50.47 ID:qT/AyJQb0
キャラメルの匂いを上書きするように甘い桃の香りがする。香りがする方向へ目を向けると、店主が紅茶を運んできた。
紅茶はポットサービスで、冷めないようにウォーマーが被せられてる。
ヴィーネ「わーすっごく良い匂い。こっちが“薔薇と桃”ね」
ガヴリール「薔薇の匂いはほとんどしないな」
ヴィーネ「ちょっと飲んでみる?」
ガヴリール「ありがと。でもあとで。私はまず京都をいただく」
ヴィーネ「侵略者みたいね」
ガヴリール「似たようなもんだ」
キャラメルの匂いを上書きするように甘い桃の香りがする。香りがする方向へ目を向けると、店主が紅茶を運んできた。
紅茶はポットサービスで、冷めないようにウォーマーが被せられてる。
ヴィーネ「わーすっごく良い匂い。こっちが“薔薇と桃”ね」
ガヴリール「薔薇の匂いはほとんどしないな」
ヴィーネ「ちょっと飲んでみる?」
ガヴリール「ありがと。でもあとで。私はまず京都をいただく」
ヴィーネ「侵略者みたいね」
ガヴリール「似たようなもんだ」
18: :2017/11/12(日) 18:33:42.82 ID:qT/AyJQb0
京都祇園の香り、なんて言われても想像がつかないから興味本位で私はこの紅茶を注文した。抹茶の香りでもするのか?でも抹茶は別でメニューあったよな。
口につけて、香りと共にいただく。
ガヴリール「…!!京都だ。ここに京都がある」
ヴィーネ「うそ」
ガヴリール「高貴な香りがする」
ヴィーネ「なにそれ!?」
ガヴリール「ちょっと飲んでみて」
ヴィーネ「……いただきます」ゴクッ
ガヴリール「…どう?」
ヴィーネ「……今、口の中に京都があるわ」
ガヴリール「何言ってんだこいつ」
叩かれた。
京都祇園の香り、なんて言われても想像がつかないから興味本位で私はこの紅茶を注文した。抹茶の香りでもするのか?でも抹茶は別でメニューあったよな。
口につけて、香りと共にいただく。
ガヴリール「…!!京都だ。ここに京都がある」
ヴィーネ「うそ」
ガヴリール「高貴な香りがする」
ヴィーネ「なにそれ!?」
ガヴリール「ちょっと飲んでみて」
ヴィーネ「……いただきます」ゴクッ
ガヴリール「…どう?」
ヴィーネ「……今、口の中に京都があるわ」
ガヴリール「何言ってんだこいつ」
叩かれた。
19: :2017/11/12(日) 18:37:36.66 ID:qT/AyJQb0
ガヴリール「ご、ごめんって。感想を聞く側に回るとつい…」
ヴィーネ「ふん!」
ガヴリール「ヴィーネちゃ〜ん、機嫌なおしてよ」
ヴィーネ「ダメ」
ガヴリール「ヴィーネくん」
ヴィーネ「くんでもダメ」
ガヴリール「ヴィーネ様」
ヴィーネ「呼び方の問題じゃないわよ!?」
ガヴリール「ご、ごめんって。感想を聞く側に回るとつい…」
ヴィーネ「ふん!」
ガヴリール「ヴィーネちゃ〜ん、機嫌なおしてよ」
ヴィーネ「ダメ」
ガヴリール「ヴィーネくん」
ヴィーネ「くんでもダメ」
ガヴリール「ヴィーネ様」
ヴィーネ「呼び方の問題じゃないわよ!?」
20: :2017/11/12(日) 18:40:06.38 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネが頰を膨らませてそっぽを向く姿を何度見ただろう。愛おしくて、鼓動が高鳴る。
私はこの顔が見たくて彼女をからかっている節がある。これは悪い癖だ。
ヴィーネが頰を膨らませてそっぽを向く姿を何度見ただろう。愛おしくて、鼓動が高鳴る。
私はこの顔が見たくて彼女をからかっている節がある。これは悪い癖だ。
21: :2017/11/12(日) 18:40:51.15 ID:qT/AyJQb0
ガヴリール「え、えと、ヴィーネの紅茶も飲みたいな〜…なんて」
ヴィーネ「どうぞお飲みになってください」
ガヴリール「い、いただきます」ゴクッ
ガヴリール「…おぉ、飲む前は桃だったのに、飲んだら薔薇の香りが口に広がるな」
ヴィーネ「それは良かったですね」
ガヴリール「ん〜すごく壁を感じる」
ガヴリール「え、えと、ヴィーネの紅茶も飲みたいな〜…なんて」
ヴィーネ「どうぞお飲みになってください」
ガヴリール「い、いただきます」ゴクッ
ガヴリール「…おぉ、飲む前は桃だったのに、飲んだら薔薇の香りが口に広がるな」
ヴィーネ「それは良かったですね」
ガヴリール「ん〜すごく壁を感じる」
22: :2017/11/12(日) 18:41:58.54 ID:qT/AyJQb0
ほどなくして甘いキャラメルの匂いと共にパンケーキもやってきた。どんどん香りが上書きされていくのに、頭が痛くなるような不快感が襲ってこないことに驚く。
ガヴリール「おぉ…これが究極のパンケーキか」
ヴィーネ「はぁ〜〜!これが食べたかったの!」キラキラ
あっ、機嫌がなおった。ありがとうパンケーキ様。究極と名が付くだけあるな。
ガヴリール「…すごいな、絵本に出てくるようなパンケーキじゃん」
ヴィーネ「そうなの!それでこのキャラメルシロップをかければ…」
ヴィーネ「すごい!美味しそう!」キラキラ
ガヴリール「なんだこいつ…」
ヴィーネ「ガヴもはい!キャラメルかけて!」
ヴィーネ「お先にいただきます!」
ガヴリール「はえーよ…てかお前、それかなりデカいけど食べれるの?」
ヴィーネ「キャー!おいしー!」モグモグ
ガヴリール「大丈夫そうだな」
ほどなくして甘いキャラメルの匂いと共にパンケーキもやってきた。どんどん香りが上書きされていくのに、頭が痛くなるような不快感が襲ってこないことに驚く。
ガヴリール「おぉ…これが究極のパンケーキか」
ヴィーネ「はぁ〜〜!これが食べたかったの!」キラキラ
あっ、機嫌がなおった。ありがとうパンケーキ様。究極と名が付くだけあるな。
ガヴリール「…すごいな、絵本に出てくるようなパンケーキじゃん」
ヴィーネ「そうなの!それでこのキャラメルシロップをかければ…」
ヴィーネ「すごい!美味しそう!」キラキラ
ガヴリール「なんだこいつ…」
ヴィーネ「ガヴもはい!キャラメルかけて!」
ヴィーネ「お先にいただきます!」
ガヴリール「はえーよ…てかお前、それかなりデカいけど食べれるの?」
ヴィーネ「キャー!おいしー!」モグモグ
ガヴリール「大丈夫そうだな」
23: :2017/11/12(日) 18:42:36.81 ID:qT/AyJQb0
パンケーキの生地はしっとりふんわりとしていて、やさしい味わいがする。その生地にシロップがうまく染み込んでいて絶妙だ。
結構な量のキャラメルシロップをかけたのに、甘すぎない。こんなに甘い香りがするのに、ほろ苦い。
パンケーキの生地はしっとりふんわりとしていて、やさしい味わいがする。その生地にシロップがうまく染み込んでいて絶妙だ。
結構な量のキャラメルシロップをかけたのに、甘すぎない。こんなに甘い香りがするのに、ほろ苦い。
24: :2017/11/12(日) 18:43:29.56 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネ「ごちそうさまでした!美味しかったー!」
ガヴリール「ごちそうさまでした。…お腹いっぱいになったんだけど」
ヴィーネ「え?」
ガヴリール「え?なってない?」
ヴィーネ「………」
ガヴリール「いつから大食いキャラになったんだお前?」
ヴィーネ「し、失礼ね!美味しかったし!お腹空いてたんだもん!」
ガヴリール「よしよし、美味しかったし、お腹も空いてたもんな」
ヴィーネ「ううっ…いいじゃない」シクシク
ヴィーネ「ごちそうさまでした!美味しかったー!」
ガヴリール「ごちそうさまでした。…お腹いっぱいになったんだけど」
ヴィーネ「え?」
ガヴリール「え?なってない?」
ヴィーネ「………」
ガヴリール「いつから大食いキャラになったんだお前?」
ヴィーネ「し、失礼ね!美味しかったし!お腹空いてたんだもん!」
ガヴリール「よしよし、美味しかったし、お腹も空いてたもんな」
ヴィーネ「ううっ…いいじゃない」シクシク
25: :2017/11/12(日) 18:44:45.32 ID:qT/AyJQb0
会計を済ませて店を出た。外はもう夕闇に包まれていて、空気も随分冷たくなった。
ガヴリール「良いお店だった。また来たい」
ヴィーネ「また来ましょう」
ガヴリール「次は“京都四条の香り”を飲みたいな」
ヴィーネ「何が違うのか、確かに気になるわ」
ガヴリール「…じゃあ帰ろっか」
ヴィーネ「そうね」
会計を済ませて店を出た。外はもう夕闇に包まれていて、空気も随分冷たくなった。
ガヴリール「良いお店だった。また来たい」
ヴィーネ「また来ましょう」
ガヴリール「次は“京都四条の香り”を飲みたいな」
ヴィーネ「何が違うのか、確かに気になるわ」
ガヴリール「…じゃあ帰ろっか」
ヴィーネ「そうね」
26: :2017/11/12(日) 18:46:40.38 ID:qT/AyJQb0
私たちは坂道を下りはじめる。家々から漏れる暖色の明かりや街灯の光、車のヘッドライトが、暗闇を押し退けるようにして輝きはじめていた。
ガヴリール「やっぱり日が暮れるのが早いな」
ヴィーネ「その分夜が長いわよ。ガヴはその方が好きなんじゃない?」
ガヴリール「なんで?」
ヴィーネ「うーん…答えにはなってないけど、いつも遅くまでゲームしてるから?」
ガヴリール「まぁそうだな。夜が長い方が、沢山ゲームしている気がしなくもない」
ガヴリール「…でも最近は、一日がすぐ終わっちゃう気がして、なんだか嫌だな」
ヴィーネ「私も、日が出ている時間が好きだから同じ事を思うわ」
ガヴリール「悪魔は夜の方が好きそうだけどな」
ヴィーネ「そんなことないわよ」
ガヴリール「ヴィーネは夜になったら人の生き血を吸いに行きそう」
ヴィーネ「しないから!」
私たちは坂道を下りはじめる。家々から漏れる暖色の明かりや街灯の光、車のヘッドライトが、暗闇を押し退けるようにして輝きはじめていた。
ガヴリール「やっぱり日が暮れるのが早いな」
ヴィーネ「その分夜が長いわよ。ガヴはその方が好きなんじゃない?」
ガヴリール「なんで?」
ヴィーネ「うーん…答えにはなってないけど、いつも遅くまでゲームしてるから?」
ガヴリール「まぁそうだな。夜が長い方が、沢山ゲームしている気がしなくもない」
ガヴリール「…でも最近は、一日がすぐ終わっちゃう気がして、なんだか嫌だな」
ヴィーネ「私も、日が出ている時間が好きだから同じ事を思うわ」
ガヴリール「悪魔は夜の方が好きそうだけどな」
ヴィーネ「そんなことないわよ」
ガヴリール「ヴィーネは夜になったら人の生き血を吸いに行きそう」
ヴィーネ「しないから!」
27: :2017/11/12(日) 18:47:21.25 ID:qT/AyJQb0
ガヴリール「お」
ヴィーネ「どうしたの?」
ガヴリール「良いとこあるじゃん」
ヴィーネ「この公園?」
ヴィーネ「…遊びたいの?滑り台?鉄棒?ボールは持ってないわよ」
ガヴリール「子どもか!ちがうわ!」
ガヴリール「お」
ヴィーネ「どうしたの?」
ガヴリール「良いとこあるじゃん」
ヴィーネ「この公園?」
ヴィーネ「…遊びたいの?滑り台?鉄棒?ボールは持ってないわよ」
ガヴリール「子どもか!ちがうわ!」
28: :2017/11/12(日) 18:50:12.12 ID:qT/AyJQb0
ガヴリール「ほら、あそこのベンチ、街が一望できそうじゃない?」
ガヴリール「少し休んで行こうよ」
ヴィーネ「いいわよ」
ベンチに腰かけて、私たちは日の暮れた街並みを眺めている。遠くに見える山にまだ残った濃い夕焼けが、闇へと溶けていく。
ヴィーネ「綺麗ね」
ガヴリール「ああ」
ガヴリール「…なんとなく思ったんだけど、イルミネーションってあるじゃん」
ヴィーネ「うん」
ガヴリール「あれってさ、夜が長くなるのを人が嫌うから出来たんじゃないかな」
ガヴリール「すぐ暗くなって消えそうになる一日に明かりを灯して、少しでも長く留めておくみたいにさ」
ガヴリール「あっという間に流れていく日々に、しがみ付こうとしたんじゃないかな」
ヴィーネ「…そう、かもね。」
ガヴリール「ほら、あそこのベンチ、街が一望できそうじゃない?」
ガヴリール「少し休んで行こうよ」
ヴィーネ「いいわよ」
ベンチに腰かけて、私たちは日の暮れた街並みを眺めている。遠くに見える山にまだ残った濃い夕焼けが、闇へと溶けていく。
ヴィーネ「綺麗ね」
ガヴリール「ああ」
ガヴリール「…なんとなく思ったんだけど、イルミネーションってあるじゃん」
ヴィーネ「うん」
ガヴリール「あれってさ、夜が長くなるのを人が嫌うから出来たんじゃないかな」
ガヴリール「すぐ暗くなって消えそうになる一日に明かりを灯して、少しでも長く留めておくみたいにさ」
ガヴリール「あっという間に流れていく日々に、しがみ付こうとしたんじゃないかな」
ヴィーネ「…そう、かもね。」
29: :2017/11/12(日) 18:56:34.45 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネの肩にもたれかかって、そっと指を絡める。
ヴィーネ「眠たい?」
ガヴリール「ううん。大丈夫」
ガヴリール「なんか、前もこんなことしてたな」
ヴィーネ「そうね。あれはいつだったかしら」
ガヴリール「…覚えてないな。暑かった、そんな気がする」
ヴィーネ「…私も、そんな気がするわ」
ヴィーネの肩にもたれかかって、そっと指を絡める。
ヴィーネ「眠たい?」
ガヴリール「ううん。大丈夫」
ガヴリール「なんか、前もこんなことしてたな」
ヴィーネ「そうね。あれはいつだったかしら」
ガヴリール「…覚えてないな。暑かった、そんな気がする」
ヴィーネ「…私も、そんな気がするわ」
30: :2017/11/12(日) 18:57:45.58 ID:qT/AyJQb0
ガヴリール「ヴィーネは…今さ」
言い淀んで、視線は絡めた手に剥がれ落ちる。
力が抜けて行き場を失っている指先を、そっと元の場所へ還す。
ヴィーネ「………」
ヴィーネ「…私は今、楽しいわ」
ヴィーネ「…ガヴは?」
ガヴリール「…楽しいよ、私も」
力なく笑った。
私たちの幸福の証明は、不幸の証明でもある。楽しい、くらいがちょうどいいんだ。
ガヴリール「ヴィーネは…今さ」
言い淀んで、視線は絡めた手に剥がれ落ちる。
力が抜けて行き場を失っている指先を、そっと元の場所へ還す。
ヴィーネ「………」
ヴィーネ「…私は今、楽しいわ」
ヴィーネ「…ガヴは?」
ガヴリール「…楽しいよ、私も」
力なく笑った。
私たちの幸福の証明は、不幸の証明でもある。楽しい、くらいがちょうどいいんだ。
31: :2017/11/12(日) 19:01:00.52 ID:qT/AyJQb0
冬の足音がする。
季節が巡って、巡って、手を離す時、私はこの冷たい季節を乗り越えることができるだろうか。乗り越えたとして、春になって、雪とともに溶けてしまわないだろうか。
ガヴリール「風が冷たいな」
ヴィーネ「秋だからね」
ガヴリール「もう冬だ」
ヴィーネ「もう少しだけ、秋よ」
遠くに見える夕暮れが溶けきって、夜が訪れる。忘れ難い今日が暮れる。
ガヴリール「…ねぇ」
ヴィーネ「わ!何?ちょっ、ちょっと」
慌てふためく声を抑え込む。ほんの僅かにする、ほろ苦いキャラメルの味。
夜の闇が何者からも私たちを隠して、染まる頰も、重なる唇も、消してしまう。
そして私たちは今日の日の事など、忘れてしまう。
忘れてしまえ、と言うのだろう。
『It was a good day to forget』 完
季節が巡って、巡って、手を離す時、私はこの冷たい季節を乗り越えることができるだろうか。乗り越えたとして、春になって、雪とともに溶けてしまわないだろうか。
ガヴリール「風が冷たいな」
ヴィーネ「秋だからね」
ガヴリール「もう冬だ」
ヴィーネ「もう少しだけ、秋よ」
遠くに見える夕暮れが溶けきって、夜が訪れる。忘れ難い今日が暮れる。
ガヴリール「…ねぇ」
ヴィーネ「わ!何?ちょっ、ちょっと」
慌てふためく声を抑え込む。ほんの僅かにする、ほろ苦いキャラメルの味。
夜の闇が何者からも私たちを隠して、染まる頰も、重なる唇も、消してしまう。
そして私たちは今日の日の事など、忘れてしまう。
忘れてしまえ、と言うのだろう。
『It was a good day to forget』 完
32: :2017/11/12(日) 19:02:02.58 ID:qT/AyJQb0
以上となります。
気持ちと行動の矛盾、時間の有限性、その他諸々、掬い上げてくださると幸いです。
気持ちと行動の矛盾、時間の有限性、その他諸々、掬い上げてくださると幸いです。
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