1:2018/05/04(金) 19:53:44.60 ID:Miwc+2Aq.net

理亞「聴いたよ。あなた達の新曲。新しい学校でも活動できてるみたいで安心した」

ルビィ『ありがとう。理亞ちゃんの方はどう?』

理亞「順調……かな。新しいメンバーとも上手くやれてる、と思う。今はみんなで新曲作ってるところ」

ルビィ『うちは梨子ちゃんも千歌ちゃんも残ってるからいいけど、そっちは大変そうだね?』

理亞「まあね。やっぱり姉様の存在は大きい……まあ、何とかするけど」

理亞「ゴールデンウィークには姉様も帰ってくるから、作曲のコツとかいろいろ聞いておかないと」


2:2018/05/04(金) 19:55:35.66 ID:Miwc+2Aq.net

ルビィ『……聖良さん、か。……ねえ』

ルビィ『理亞ちゃんたちって、A-RISEに憧れてスクールアイドルになったんだよね? それって昔から?』

理亞「そうだけど。それがどうかした?」

ルビィ『ルビィもお姉ちゃんも、聞いたことなかったの。聖良さんの名前』

ルビィ『おかしいって思ってたんだ。作詞も作曲も、衣装までひとりで作る、歌もダンスもトップレベルのスクールアイドル……』

ルビィ『すぐに有名になってもいい筈なのに。それが何で、3年生になるまでどこのイベントにも名前が無かったんだろう、って』

理亞「……」

ルビィ『あっ。話したくないことなら、いいんだけど……』

理亞「いや、いい。別に隠すようなことじゃない」


3:2018/05/04(金) 19:57:13.16 ID:Miwc+2Aq.net

理亞「簡単だよ。姉様がスクールアイドルを始めたのが、3年生になってからだったってだけ。A-RISEへの憧れはもちろんあったけど」

ルビィ『そ、それなのにひとりで曲も衣装も作ってたの……!? たった数か月で……』

理亞「ルビィ。あなたは勘違いしてる。いくら姉様でもそんなすぐに曲や衣装を作れたりしない」

理亞「ストックがあったの。フレーズも、メロディも、デザインも。ノートを十冊以上も使い潰す膨大なストック……」

理亞「SaintSnowがすぐに活動を始められたのには、そういうカラクリがあったんだ」

ルビィ『ストック……? え、でも。さっき聖良さんの活動は3年生になってからだって』

理亞「……ちょっと待ってて」スック テクテク


4:2018/05/04(金) 19:59:52.06 ID:Miwc+2Aq.net

理亞「――お待たせ」

ルビィ『……手に持ってるの、ギター?』

理亞「うん。姉様のおさがり。作曲ために、最近練習を始めたの」ベーン、ベーン

ルビィ『聖良さん、ギター弾けたんだ』

理亞「……姉様がこのギターを買ったのは、1年生の夏。目的は作曲のため。当時、音楽はド素人。楽器の経験はなかった」

理亞「はじめて姉様が1曲作り上げたのは確か、1年生の冬だったかな」


5:2018/05/04(金) 20:02:20.29 ID:Miwc+2Aq.net

ルビィ『作曲、昔からやってたわけじゃなかったの?』

理亞「……」ベーン…

理亞「それと、衣装デザインの勉強を始めたのは1年生の春。はじめて衣装が完成したのは、2年生の春」

理亞「歌詞を書き始めたのも1年生の春。その頃のノートは見せてくれない。たぶん、私の歌詞と大差ないんだと思う」

理亞「もちろん歌とダンスも並行で練習してた」

ルビィ『ちょ、ちょっと待って。……もしかして、聖良さんは』

理亞「――SaintSnowにこだわったのは私じゃない。姉様は2年間、ずっと私を待っててくれてた」

理亞「詩も、曲も、振り付けも、衣装も。2年間、積み上げて私を待っててくれた」

ルビィ『……』


6:2018/05/04(金) 20:05:00.93 ID:Miwc+2Aq.net

理亞「ステージに立とうと思えば立てたのにね。もしかしたら、どこかでラブライブだって優勝してたかもしれない」

理亞「……それなのに」

理亞「何で私は、あんなミスしちゃったんだろう……」

ルビィ『理亞ちゃん……』

理亞「……」ベーン…

理亞「……ごめん。吹っ切れたつもりだったんだけど」

理亞「そろそろ眠る。またね、ルビィ」

ルビィ『うん……。理亞ちゃん』

ルビィ『ラブライブ決勝で会おうね』

理亞「……気が早いよ。予備予選だってまだなんだから」


7:2018/05/04(金) 20:11:51.45 ID:Miwc+2Aq.net

――――
――

理亞「さて、と。GWは姉様の誕生日もあるし、プレゼント用意しなきゃ」

理亞「この辺だとお洒落なもの買いに行くのも大変だからな……ネット通販ってホント便利」カチカチッ

理亞「でも通販の場合、選び放題すぎて逆に困る。買うもの決めてかからないと」

理亞「えっと。姉様にプレゼントするんだから、姉様の好きなものを……好きなもの」

理亞「……乗馬?」


9:2018/05/04(金) 20:12:28.94 ID:Miwc+2Aq.net

理亞『姉様! これ、誕生日プレゼント。受け取って!』

馬『ヒヒーン』

聖良『わあ、すごい。これで馬に乗って通学できますね!』

馬『ヒヒーン』


理亞「――ないな。ない。というか、いくらネット通販で何でも買えるって言っても生き物は無理だよ」


10:2018/05/04(金) 20:14:09.70 ID:Miwc+2Aq.net

理亞「生き物は無理だから、つまり……」


理亞『姉様! これ、誕生日プレゼントの 馬 刺 し !』

さくら『』

聖良『……わあ、すごい。はは。あはは……美味しそう……、ですね』ジワ…

さくら『』
 

理亞「――いじめじゃん!」

理亞「乗馬が趣味の人に馬刺しはない。いくらなんでも酷い。こんなので喜んでもらえるわけない」


11:2018/05/04(金) 20:14:55.57 ID:Miwc+2Aq.net

理亞「生き物、もとい生モノはダメ。となるとやっぱり……」


理亞『姉様! 誕生日プレゼントの乗馬マシンだよ!』

ウマ『』ウィンウィンウィン

聖良『ん……っ、ふ。す、ごい……っ! けっこう激しいですね、これ……っ、んあっ』ブルンブルンブルン

ウマ『』ウィンウィンウィン


理亞「――違うっ!」

理亞「姉様がそんなことしたら不健全なんてものじゃない! クレームが来る!」

理亞「スクールアイドルだった人にそんなことやらせられない……乗馬マシンもボツ」


12:2018/05/04(金) 20:18:32.89 ID:Miwc+2Aq.net

理亞「というか、乗馬から離れよう。たぶんこの方向だとまともなプレゼントは思い浮かびそうにないし」

理亞「うーん……姉様が喜んでくれそうなものか。歌は前に贈ったし、ワンパターンも、ね……」

理亞「そもそも前の時はルビィたちの協力もあったし。今期の活動もあるから余分な曲作りなんてしてる余裕もない」

理亞「どうしようかな。こうやって商品の写真眺めてても、なんだかチンケに見える」カチカチッ

理亞「お菓子でも作ってみようかな……。いや、お菓子は別で作ろう。出来れば形に残るものを……」

理亞「形に残るもの……喜んでもらえるもの……。だって、姉様とはもう、しばらく会えない」

理亞「うーん。うーん」






13:2018/05/04(金) 20:20:24.33 ID:Miwc+2Aq.net

――――
――

理亞「あ――、姉様!」

聖良「ん、ああ。理亞。わざわざ空港まで迎えに来てくれたの?」

理亞「東京の生活はどう?」

聖良「楽しいですよ。大変ですけどね。だからこの連休は、ゆっくり羽を休めないと」

理亞「4連休なんて短いよ。9連にすれば良かったのに」

聖良「普通に平日だから……さすがに」

理亞「まあ、誕生日くらいは帰って来てくれて嬉しいけど……」


14:2018/05/04(金) 20:23:40.96 ID:Miwc+2Aq.net

聖良「祝日連休が誕生日と言うのも、家を離れてみると便利なものよね。上京しても家で祝ってもらえるなんて」

理亞「明日になれば姉様も19歳か……」

理亞「……姉様、向こうでお酒とか飲んでないよね?」

聖良「……ふふふっ」

理亞「はぁ……。姉様はスクールアイドルの界隈じゃ有名なんだから、もうちょっと……」

聖良「他の学友よりは真面目に生きているつもりよ。本当、大学生って遊び好きが多くて」

理亞「……ダイヤさんに監視してもらうように、ルビィにお願いしないと」


16:2018/05/04(金) 20:26:36.38 ID:Miwc+2Aq.net

聖良「ダイヤさんなら手遅れですよ。大学の新歓で“いろいろ”あったらしいから」

理亞「うそっ!?」

聖良「嘘です」

理亞「」イラッ

聖良「彼女とも向こうで会ったけど、相変わらずでしたよ。むしろ、逆に心配になるくらい」

理亞「やっぱり姉様、東京に毒されてる……まあ、いいけど。それより――、」

理亞「おかえりなさい。姉様」

聖良「……ええ。ただいま、理亞」






17:2018/05/04(金) 20:28:56.17 ID:Miwc+2Aq.net

茶房・菊泉

聖良「よ、……っと。荷物はこんなものか。それにしても、変わらないですね、我が家も」

理亞「1ヶ月で変わってもらっても困る。それじゃ、私は店番してくるから。姉様はゆっくりしてて」

聖良「あ、私も行きます」

理亞「休んでてよ。旅の疲れもあるでしょ」

聖良「あの割烹着が恋しくなるんです、不思議とね。昔はお互いに仕事の押し付け合いしてたのに、どうしてなんだか」クスッ

理亞「……まぁ、いいけど」

聖良「私の割烹着、まさか捨ててないですよね?」

理亞「ちゃんと取ってあるよ。大学卒業したら戻って来てくれる予定なんだし」

理亞「だから、東京の自堕落な生活でサイズが合わない~、なんてことにならないでね」

聖良「はは……善処します……」


18:2018/05/04(金) 20:31:34.07 ID:Miwc+2Aq.net

聖良「――で、お客の入りも相変わらずね。このお店は……」ポケー

理亞「基本、常連さんしか来ないからね。たまにSaintSnowのファンだって言ってくれる人もいるけど」

聖良「そういう人も減ったんじゃないですか?」

理亞「まあ……ね。一過性ではあるかも」

聖良「千歌さんや果南さんのお店はどうなんでしょうね。ラブライブ優勝ともなれば、やっぱり違うのか……」

聖良「観光目的だった私が今では穂むらの常連になっていることを考えれば、やっぱり優勝の価値は大きいのかもしれません」

理亞「……」

理亞「穂むら。通ってるんだ?」


19:2018/05/04(金) 20:34:21.35 ID:Miwc+2Aq.net

聖良「ええ。単純に美味しいから。そうそう、お土産にほむまん買ってきてますよ」

理亞「和風茶屋やってる実家に、他の和菓子屋の饅頭ね……」

聖良「食べないんですか?」

理亞「食べる。美味しいから」

聖良「じゃあ持ってくるわね」

理亞「え。いま食べるの?」

聖良「いい時間でしょう? 他のお客さんもいないし。――あ、何ならお客さんが来たら食べてもらいましょう」

理亞「……いいけど。うちのお茶菓子より美味しいって言われたら困るな……」

聖良「ふふっ。大丈夫よ。ほむまんは美味しいけど、うちだって負けてないから」






21:2018/05/04(金) 20:38:54.44 ID:Miwc+2Aq.net

「ごちそうさま。また来るよ、聖良ちゃん」

聖良「はい。また、私がいるうちにいらしてくださいね。――ありがとうございました」ペコッ

聖良「……ふむ。甲乙つけ難し、ですか」

理亞「本当にお客さんに食べさせるなんて……」

聖良「いいでしょう。昔から通ってくれてる常連さんなんだから、お土産くらい共有しても」

聖良「――さて。もういい時間ね。そろそろ店じまいにしましょうか」

理亞「そうだね。少し早い気もするけど、いつまでも姉様に働かせられないし」

聖良「それは別に構わないけど。……よいしょ。店じまい店じまい、と」ゴソゴソ

聖良「……ねえ、理亞」

理亞「ん?」


22:2018/05/04(金) 20:41:15.93 ID:Miwc+2Aq.net

聖良「スクールアイドルの活動は、どう?」

理亞「……大丈夫。順調だよ」

聖良「そう……。それは良かったわ」

理亞「でも作曲はちょっと苦戦してる。歌いたいイメージはあるんだけど。後でアドバイスもらってもいい?」

聖良「もちろん。じゃあ、ギター持ってきてもらえる?」

理亞「店じまい終わってからにしようよ……。私たちまだ割烹着のままだし」

聖良「いいでしょう? ほら。もう外は閉めたし、何てことはないわ」

理亞「はぁ……分かった。ちょっと待ってて」トテトテ

理亞「――お待たせ。えっと、じゃあ、どうしよか」


23:2018/05/04(金) 20:44:12.64 ID:Miwc+2Aq.net

聖良「一通りのコードは覚えた?」

理亞「うん。弾けるよ。Fはまだ苦手だけど」

聖良「コードFはどうしてもね……特にあなたは手が小さいし。でも手先は器用だから、すぐに慣れますよ」

聖良「それで、歌詞はもう出来てる? 先に詩があったほうがイメージしやすいわ。好みではあるけど」

理亞「出来てる。これ」ペラッ

聖良「読んでいい? ……ふむ。やっぱりと言うべきか、SaintSnowとは違うイメージね。ラブソング? しかも悲恋ですか」

理亞「他のメンバーの意向もあるし」

聖良「ま、それはそうです。……さて。歌詞から受け取る印象は王道のバラード。この感じだと……」

聖良「……」~♪

理亞「おぉ……! すごい、もうフレーズが出来ちゃった」


25:2018/05/04(金) 20:46:26.88 ID:Miwc+2Aq.net

聖良「ありきたりなコード進行よ。あなたの曲なんだから、ちゃんとアレンジしなさい?」

聖良「ともかく、見ての通りフレーズを作ること自体は難しくない。作曲はある意味でパズルに近いんです」

聖良「コードというブロックを積み重ねる基本的なパターンを知る。それを踏襲しアレンジすれば、どんな形にも組み立てられる……」

理亞「……逆に分かりにくいよ」

聖良「あなた工作とか苦手でしたっけ?」

聖良「まあとにかく、基本骨子があるということ。コードを覚えたなら、次は代表的なコード進行を頭に叩き込むことです」

聖良「コードを読んで弾く。ただひたすら組み立てて弾く。既存の曲でも何でもいいから、弾いて弾いて弾く……」

理亞「私、ギタリストになりたいわけじゃないんだけど」


26:2018/05/04(金) 20:48:22.48 ID:Miwc+2Aq.net

聖良「私だってそうです。でも、繰り返していけば記号でしかなかったコードも、記号を読めば音が浮かぶ。音と一緒に記号が浮かぶ」

聖良「そうなったとき作曲は音を捻り出すものではなくなります。イメージ通りにコードを進行させる作業になる……」

聖良「メロディ――歌もきっと、コードと共に付いてくる」

理亞「……それが出来るようになるまでどのくらいかかるの」

聖良「たくさん、です。そしてその時間を短縮する最も効果的な方法は努力です」

聖良「その努力すら、報われるとは限らないけれど……」

理亞「姉様……」


27:2018/05/04(金) 20:51:32.93 ID:Miwc+2Aq.net

聖良「じゃあ、私は店の片付けの続きをするから。あなたは練習を続けて?」

聖良「はい、ギター……」スッ

理亞「……うん」

理亞(そう言ってギターを手放す姉様が少し寂しそうに見えたのは、きっと気のせいじゃなかったと思う)

理亞(それに今日の姉様は何だかいつもよりワガママで。それは久しぶりの実家にはしゃいでる、ってわけでもなくて)

理亞(……そのワガママの理由を、私は知ってる。離れたくないんだ、音楽から)

理亞(まだ高校生で――スクールアイドルでいたいんだ、この人は)

理亞(ごめんね、姉様。そんなプレゼント、私には用意できないよ――)


42:2018/05/05(土) 19:33:40.83 ID:4Xacs/8z.net

――――
――

理亞「あれ……。おはよう、姉様。誕生日おめでとう。ずいぶん早いね」

聖良「ええ。おはよう。今から走るの?」

理亞「まぁ日課だし」

聖良「そうね。前とまったく同じ時間。規則正しくて何よりです。私も一緒に走ってもいい?」

理亞「……いいけど。体力、落ちてないよね?」

聖良「ふふっ。誰にものを言ってるつもり? さあ、行きましょうか」


43:2018/05/05(土) 19:34:33.62 ID:4Xacs/8z.net

タッタッタッタッタッタ…

「――あれ。おーいっ! 理亞ちゃーん!!」

聖良「ん……?」

理亞「あ。おはよう、二人とも」

茶髪「うん、おはよう――って、」

黒髪「うわ、聖良先輩だ……!?」

聖良「そんなお化けを見たようなリアクションしなくても。……えっと、お二人は確か理亞と一緒の」

黒髪「はい。一緒のグループやらせてもらってます。毎朝こうやって走ってるんです」


44:2018/05/05(土) 19:35:32.49 ID:4Xacs/8z.net

聖良「やっぱりそうでしたか。理亞がいつもお世話になってます」

聖良「理亞は不愛想でしょう? でもいい子なので、根気よく付き合ってあげてくださいね」

理亞「ね、姉様……///」

茶髪「あはは。大丈夫ですよ。すごく頼りになるし」

黒髪「あ。でも指導は厳し過ぎかも。聖良先輩からも言ってもらえませんか?」

聖良「そうなんですか?」

茶髪「そうなんですよー。ランニングなんて毎日15キロも走れって言うんです。ちょっと長すぎですよねぇ?」

理亞「あっ。ば、ばかっ……!」

聖良「15キロ? え、少なくないですか?」

茶髪「えっ?」


45:2018/05/05(土) 19:36:22.01 ID:4Xacs/8z.net

聖良「少ないですよ、15キロは。20キロでもまだ控えめです」

聖良「……理亞。あなたたちの練習メニュー、見せてもらっていい? 改善できるところがあるかも」

聖良「あ。何なら今日は私が練習を見ましょうか? そうしましょう、どうせお店も暇ですし」

理亞「ね、姉様。今日は姉様の誕生日パーティーだから練習もお休みなんだ。今はほら、自主練で偶然集まっただけだから……」

聖良「あれ。そうだったんですか? じゃあ、しょうがないですね。今日はゆっくり休んでもらうということで」

理亞「う、うん。そういうことで……」

理亞「……二人とも、姉様の前で練習の話は禁止! 酷いことになるっ」コソコソ

茶髪「う、うん。みたいだね……」コソコソ

黒髪「理亞ちゃんが半年で決勝まで進んだ理由が分かる気がする……」コソコソ

聖良「どうしたんです? ミーティングか何かですか?」

理亞「な、何でもないよ、何でも。あはは……」

聖良「そう? ……まあ、いいけど。とりあえずランニングの途中ですよね? そろそろ再開しましょうか」


46:2018/05/05(土) 19:37:38.63 ID:4Xacs/8z.net

タッタッタッタッタッタ…

茶髪「それで、理亞ちゃん。作曲の方は順調?」

理亞「順調……とは言えない。難しいものは難しい。やるけどね」

黒髪「ごめんね。そういうの、理亞ちゃんにばっかり押し付けちゃって。手伝えることがあったら言ってね」

理亞「いいよ。実際、私が適任だと思う。ATPの経験もあるし。その代わり、衣装は二人に任せるから」

茶髪「うん。可愛い衣装作っちゃうから、期待してて」

聖良「……」タッタッタ


47:2018/05/05(土) 19:38:39.70 ID:4Xacs/8z.net

黒髪「てことは、衣装も並行で作りはするけど、あとは曲待ち?」

理亞「そうなる。さすがに曲も無いのに振り付けは出来ないし。……早くしないとね」

茶髪「まぁ焦ることないよ。理亞ちゃんと違って私たちはダンスの基礎からやらなきゃだし」

黒髪「歌いながら踊るのって辛いよねー。まさかあんなに大変だと思わなかった」

聖良「……」タッタッタ

茶髪「理亞ちゃん、ライブ中も結構激しい動きしてたよね? なにか歌うコツとかあるの?」

理亞「どうかな。コツって言うか、やっぱり体力と肺活量は大事だよ」

黒髪「結局そこなわけね……」


48:2018/05/05(土) 19:39:23.50 ID:4Xacs/8z.net

茶髪「と言うか理亞ちゃんは体力あり過ぎだよ……バネもすんごいし。その小さな身体でどういうことなの」

黒髪「ムーンサルトで2メートル近く跳ぶって本当? 出てくるアニメ間違えてない?」

理亞「なに言ってるの……?」

聖良「……」タッタッタ

茶髪「そういえば理亞ちゃんが着替えてるところ見たことある? ヤバいよ、あれ」

黒髪「え? 何が?」

茶髪「いや筋肉。すっごい締まってるの。そりゃ跳ぶよねって感じの。正直、抱かれても良いってレベル」

理亞「ちょ……」

黒髪「ホント? うわ、それ気になる。触りたい」


49:2018/05/05(土) 19:40:16.29 ID:4Xacs/8z.net

茶髪「それに理亞ちゃん、育つところは育ってるんだよね、意外と。小柄な身体であれは衝撃的だったなぁ……脱ぐとスゴイ」

黒髪「今度、水着でPVとか撮ってみない? 反響あるかも」

茶髪「いいね、それ」

理亞「や、やめてよ、ホントにっ///」

聖良「……っ」ギリッ

聖良「――あの」

黒髪「え、ああ、はい。えっと、何ですか聖良先輩」

聖良「お喋りしながらランニングはやめた方がいいですよ。体力の無駄です」


50:2018/05/05(土) 19:41:20.20 ID:4Xacs/8z.net

聖良「あなたたちが今、こうして走っている目的は何ですか? 井戸端会議くらい、スクールアイドルでなくても出来ますよね?」

茶髪「あ、はい……すみません」

聖良「集中しなさい。勝ちたいなら」タッタッタ

黒髪「……聖良先輩って、優しい人だと思ってたけど意外と怖い人……?」コソコソ

理亞「まぁ、厳しくはある、けど……」

理亞(姉様……機嫌悪い?)






51:2018/05/05(土) 19:42:29.51 ID:4Xacs/8z.net

聖良「――さて。こんなところですかね」

黒髪「け、結局……いつもよりだいぶ多く走った……」ゼェゼェ…

茶髪「何でこの二人、ぜんぜん息切れしてないの……?」ハァハァ…

理亞「鍛えてるから。二人だって、すぐにこのくらいの距離じゃバテなくなるよ」

聖良「お喋りをやめて、呼吸を意識して走ればもうすこしマシになりますよ。じゃあ、解散にしましょうか」

聖良「お二人とも、クールダウンは欠かさないようにしてくださいね」

黒髪「は、はーい……ありがとうございましたー……」

茶髪「そもそも、ちゃんと帰れるのかな、私たち……」フラフラ

聖良「私たちも帰りましょうか」

理亞「うん。……姉様も、本当に息切れしてないね。向こうでも走ってる?」

聖良「多少は。前より激減しましたけどね」

聖良「久しぶりに気持ちよく走れたわ。向こうの空気より、やっぱりこっちの空気の方が心地いい……」

聖良「さ。家に戻りましょう?」


52:2018/05/05(土) 19:43:18.27 ID:4Xacs/8z.net

――――
――

理亞「……」ジャーン、ジャカジャーン♪

理亞「うーん。やっぱり何だかしっくり来ない。コード、この組み合わせじゃないのかな……」

理亞(というか、姉様に店番任せちゃってるけど、いいのかな。お店はいいから作曲しててー、って)

理亞(今日は姉様の誕生日なんだけど……いや、前から何よりスクールアイドルを優先する人だったけど)

理亞「……まあ、いいか。その代わりに夕食のパーティーは盛大にやるってことで。ケーキの方ももう用意は出来てるし」

理亞「誕生日プレゼントも……うん。ちゃんと上手く出来てる、はず」

理亞(悩みに悩んで、羊毛フェルトに初挑戦。サイドテールの髪をさげた雪だるま。モチーフは、もちろん姉様)


53:2018/05/05(土) 19:43:59.28 ID:4Xacs/8z.net

理亞(試しにツインテールの雪だるまも作っちゃったけど、こっちは私が持っておこう)

理亞「喜んでくれるかな……」

理亞「……うん、大丈夫。準備は万端だし、お店は姉様がやるって言って聞かないし」

理亞「作曲、集中しよう。私は私の仕事をやらなきゃ」






54:2018/05/05(土) 19:44:48.69 ID:4Xacs/8z.net

理亞「――姉様、お誕生日おめでとう!」パンッ!

聖良「わっ……っと。ずいぶん豪勢ですね」

理亞「うん……ちょっと張り切り過ぎたかも。まあでも、いいよ。こんな時くらい」

理亞「さ、座って。ぜんぶ食べていいから。後でケーキと、プレゼントもあるからね」

聖良「ありがとう。ぜんぶは食べられないけど、楽しみね」

聖良「……ところで、お酒は置いてないの?」

理亞「はぁ……そう言う気がして、いちおう用意だけはしたよ」

聖良「え。本当ですか?」


55:2018/05/05(土) 19:45:35.84 ID:4Xacs/8z.net

理亞「でも、私は飲まないし、姉様だってまだ未成年だから。写真撮ったり、SNSで呟いたりするの禁止。あくまで秘密で」

聖良「分かってますよ。そんな愚は犯しません。――ふふっ。やっぱり理亞は優しいわね。いい妹を持ったわ」

理亞「もう、調子いいんだから……」

聖良「ふふっ。じゃあ、食べましょうか。どれも美味しそう……。いただきます」

理亞「召し上がれ。はい、飲み物のシャンメリー」

聖良「……」ショボーン

理亞「じょ、冗談だよ……これは私の。姉様のシャンパンはちゃんとあるから」






56:2018/05/05(土) 19:46:14.10 ID:4Xacs/8z.net

聖良「それでですね、ダイヤさんがそのとき言うんです、ぶっぶーですわ、って。ふふふっ、おかしいですよね。ふふふふっ」

理亞(どうしよう。笑いどころが分からない……)

聖良「そうしたらダイヤさん、なんて言ったと思います? ぶっぶーですわ、ですよ? ふふふっ、ふふふふふふっ」

理亞(しかも話題が一瞬でループしてる……)

理亞「あの、姉様? もしかして酔ってる……?」

聖良「酔ってる? 私が? 嫌ですね、理亞。このぐらい酔ったうちに入りませんよ」

聖良「あれ? 理亞、もしかして分裂しました? いつの間に増えたんです?」

理亞「酔ってるよ、それはっ! ああ、もう。お酒なんか出すんじゃなかった」


57:2018/05/05(土) 19:48:09.52 ID:4Xacs/8z.net

理亞「ケーキはもう出せないな……明日にしよう。プレゼントも、いま渡してもなぁ」

理亞「はぁ……片付けよう。日持ちするものは明日に回して……」

聖良「ふふっ。理―亞っ」ギュッ

理亞「あーもう。なに、姉様。お酒臭いんだけど」

聖良「練習、頑張ってますか」

理亞「……、うん。やってるよ」

聖良「そう。精一杯やりなさい。作詞も、作曲も、歌もダンスも。何の後悔もないように」

聖良「あなたにはまだ、次があるから……」

理亞「……姉様?」

聖良「今年も。来年も。あなたにはまだ、4回も残ってる。私と違って」

理亞「ねえ、さま」


58:2018/05/05(土) 19:49:07.87 ID:4Xacs/8z.net

聖良「ああ……いいなあ。あなたにはまだ、次の大会があって」

聖良「私だって。あなたが、……あなたがあの日、あんなミスをしなければ――」

理亞「……」

聖良「――っ、!?」ハッ

聖良「ぁ、……ち、違う。違うんです理亞、今のは……!」

理亞「……ううん。分かってるよ、姉様」

理亞「姉様が本当は、ぜんぜん納得してないってことくらい」

理亞「怒りたくても泣きたくても、私がいるからそれだって出来ないことくらい……」

聖良「違う、違います! 私は、私は満足してる。あなたとスクールアイドルが出来て……!」


59:2018/05/05(土) 19:49:38.20 ID:4Xacs/8z.net

理亞「分かってるよ。本当は姉様が、あの日からずっと」

聖良「やめて、理亞! それ以上は――」

理亞「――ずっと私を、恨んでるってことくらい」

理亞「いつも無理させて、ごめん」

聖良「……っ」

理亞「……私、部屋に戻る」

聖良「待って、理亞! 待って――、」

理亞「ごめん」タタタッ パタン…

聖良「……ああ」

聖良「私は、なんてことを」


61:2018/05/05(土) 19:50:11.76 ID:4Xacs/8z.net

チッ…チッ…チッ…チッ…

理亞「……」

理亞「私があそこでミスしなければ、か。そうしたら、Aqoursにも勝てたかな」

理亞「優勝旗、持たせてあげたかったな……こんな下手くそな羊毛フェルトなんかより。――でも」

理亞「――嬉しい。ようやく本音を漏らしてくれた……姉様が、やっと私に」ポロ…

理亞「嬉しい、よ。だって分かってた。本当は、そうなんだって……」ポロポロ

理亞「ひぐっ、うぅ……ごめんなさい……姉様」


『さあ、ラブライブ! 栄えある優勝グループは――Aqours!!』

キャーキャー、ワーキャー!


62:2018/05/05(土) 19:50:36.81 ID:4Xacs/8z.net

理亞『ゆ、優勝……Aqours、優勝した……!?』

聖良『すごい、すごいですよ理亞! 本当に優勝しちゃいましたよ、あの人たち!!』

聖良『まるでμ'sの再来……! 伝説に残りますよ、彼女たちは! 浦の星女学院の名前と共に……!』

理亞『うん、すごい。すごいね、姉様……!』

聖良『……』

理亞『姉様?』

聖良『……いいなぁ』ボソッ


理亞(あのとき、たった一言だけ漏らした本音。きっと姉様は、呟いたことすら覚えてない)

理亞(でも私は覚えてる。姉様の寂しそうな声。悲しそうな瞳……)

理亞(ずっと、頭から離れない。きっとこれは、あの日のミスの罰なんだ――)


67:2018/05/05(土) 22:28:34.17 ID:4Xacs/8z.net

――――
――

ダイヤ「それで。それからまともに会話も出来ず東京に戻ってきて、さらに1ヶ月が経った、と?」

聖良「……はい」

ダイヤ「何をしているのですか、あなたは……。お酒はほどほどにしろと言っておいたでしょうに」

聖良「いえ、その。……はい。すみません」

ダイヤ「わたくしに謝られても困りますわよ」

ダイヤ「で? どうしてまた、1ヶ月も放置を? 話す機会なんていくらでもあったでしょう」

聖良「何と言いますか……きっかけが。何を話せばいいかも分からないし」

ダイヤ「姉妹が話すことにきっかけが必要ですか? わたくしなんて、ルビィと毎日1時間以上は通話していますわ」

聖良「それは迷惑でしょうねぇ……」

ダイヤ「は?」

聖良「いえ。何でも」


68:2018/05/05(土) 22:29:56.32 ID:4Xacs/8z.net

聖良「……」

ダイヤ「……はぁ。分かりました、言い当てましょう。あなたが理亞さんと話が出来ない理由」

ダイヤ「図星だからですわ。理亞さんの一言が胸深く突き刺さってしまった。――あなたは、理亞さんを憎んでいる」

聖良「……そんなことは。理亞は、大切な妹です」

ダイヤ「ええ、そうでしょうとも。傍から見ても、あなたたち姉妹は仲睦まじいと思いますわ。わたくしとルビィほどではないにせよ」

ダイヤ「ですが、それはあくまで姉妹として。いちスクールアイドルとしては別です」

ダイヤ「妹を愛している。相棒を憎んでいる。まったく別種の愛憎が、同一人物に向けられてしまっている」

聖良「……人の心を知った風に」

ダイヤ「失礼。ですが相談を持ち掛けたのはあなたの方ですわ。黙ってお聞きなさいな」


70:2018/05/05(土) 22:33:05.84 ID:4Xacs/8z.net

ダイヤ「あなたはもう、自分の心を誤魔化してはならないところまで来てしまったのです。覚悟を決めるしかない」

ダイヤ「自分の心と。理亞さんと。正面から向き合わなくてはならない」

聖良「……」

ダイヤ「まあ、わたくしも人のことを言えた口ではありませんが。ずいぶんと遠回りもしました、妹に迷惑をかけたりもした……」

ダイヤ「でもだからこそ、知っています。わたくしたちは本音をぶつけ合わないと、前へ進めはしませんわ」

聖良「私は、理亞と向き合えていませんか」

ダイヤ「逃げているのでしょう? 醜い自分の心を見るのが怖くて」

聖良「……そうかもしれません」


71:2018/05/05(土) 22:34:11.21 ID:4Xacs/8z.net

ダイヤ「あなたは本当に優秀な方ですわ。自分を取り繕う術を、自分に嘘をつく術を知っている」

ダイヤ「ですが、それも限界なのでしょう。あなたのその理性の仮面、破れないほどあなたの想いは易くはない」

ダイヤ「鹿角聖良というスクールアイドルは、決して、易くなどない……姉妹の愛にも劣らぬほどに。そうでしょう?」

聖良「私は……」

ダイヤ「向き合いなさいな。理亞さんと、そして自分の想いと。高校生活のすべてと」

ダイヤ「改めて言います。――そうでなくては、ならない」

聖良「……どうすればいいんですか」

ダイヤ「その答えはあなたにしか出せませんわ。わたくしに口出し出来ることは、ここまで……」

聖良「……」

聖良「そんなこと、言われても」


72:2018/05/05(土) 22:36:21.06 ID:4Xacs/8z.net

ダイヤ「弱気ですわね、いつになく。あなたはもっとこう、不遜な方だと思っていましたが」

聖良「私自身そう思ってましたよ。……困っちゃいますね。まさか自分が、こんなにも弱いだなんて」

聖良「どうしたらいいか、何も分からないだなんて。そんなこと、初めてです」

ダイヤ「……その分では、やはり聞いていないのでしょうね」

聖良「え?」

ダイヤ「理亞さん。ゴールデンウィークの後すぐに新曲を書きあげたそうです。週末には学校で初ライブだそうですわ」

聖良「理亞が、新曲を……?」


73:2018/05/05(土) 22:37:41.29 ID:4Xacs/8z.net

ダイヤ「さあ、どうするんですの? あなたの相棒は、あなたの憎悪を知ってなお前へ進んでいますわよ」

ダイヤ「あなただけが置いていかれるつもりですの? あの、地区予選の日のままで」

聖良「でも、それは理亞がまだスクールアイドルだから」

聖良「スクールアイドルじゃない私には、もうその道は進めません……」

ダイヤ「それを決めたのは誰ですの? 時間? 学校? 大会?」

聖良「え、いや。それは、そうでしょう。だって、私はもう高校は卒業したし、ラブライブの出場資格も」

ダイヤ「――違いますわ。わたくしたちは、何かに決められてスクールアイドルだった訳ではありません」

ダイヤ「スクールアイドルであろうと決めたのは、SaintSnow自身だったはずですわよ。聖良さん……!」

聖良「っ!」


74:2018/05/05(土) 22:38:37.10 ID:4Xacs/8z.net

ダイヤ「だからこそ、決着を付けなさい。あなたたちの決着は、SaintSnowにしか付けられない」

聖良「私たちの。SaintSnowの、決着……」

ダイヤ「そう。その方法はあなたたちだけが知っていますわ」

聖良「……――ふ」

聖良「ふふっ。あはは、あははは……。バカみたいですね、困っちゃいます。本当に」

聖良「私をSaintSnowと呼ばれてしまったら。出来ることなんて、ひとつしかない」

ダイヤ「答えは決まりましたか?」

聖良「分かりません。でも、他に出来ることがないんじゃあ、ね」


75:2018/05/05(土) 22:39:33.47 ID:4Xacs/8z.net

聖良「ずいぶんと遠回りしちゃいました。そうですよね。私たちは姉妹であると同時に――SaintSnowだから」

聖良「……行ってくるとします。思い立ったが吉日ですし、それに。あの子を悩ませ続けるのも忍びない」

ダイヤ「ええ。それがいいですわ」

聖良「ありがとうございます、ダイヤさん。おかげで吹っ切れました」

ダイヤ「結構ですわ。お役に立てたのなら何より」

聖良「じゃあ、モノはついで、と言ったら何ですけど。もうひとつだけお願いしてもいいですか」

ダイヤ「ふふ……聞きましょう。このわたくしの力、必要でしたら何なりと」

聖良「――お金、貸してください。学生に何度も函館へ飛ぶ旅費はありません」

ダイヤ「あ、はい……」


76:2018/05/05(土) 22:40:29.00 ID:4Xacs/8z.net

――――
――

茶髪「――え? ちょ、待ってください。その日って、私たちが講堂でライブする日ですよね」

生徒会長「その通りです。大丈夫、その予定に変更はありません」

生徒会長「ただ、ちょっとだけイベントの内容が変わるというだけ」

黒髪「イベントの内容?」

理亞「……」

生徒会長「ええ。うちの学校の、あるOGの方から連絡が来て。ぜひその日にライブをさせてほしい、って」

黒髪「ラ、ライブ!?」

茶髪「じゃ、じゃあ私たち、その人と一緒にライブするってことですか!? 断ってくださいよ、そんなの!」


77:2018/05/05(土) 22:41:49.90 ID:4Xacs/8z.net

生徒会長「それは無理ですね。この学校にあの人のお願いを断れる人はいませんよ」

生徒会長「あの、函館聖泉の英雄からのお願いを断るなんて、ね。私もファンだし」

茶髪「英雄……?」

理亞「! ……まさか」

生徒会長「さすが。やはり姉妹だと共感する部分もあるんですかね。そのまさかですよ」

生徒会長「そのOGは鹿角聖良。昨年度、ラブライブ全国決勝8位の実績を残すSaintSnowのメンバーのひとり」

生徒会長「その聖良先輩が、あなたたちとライブを――いいえ」

生徒会長「――勝負がしたいと。そう申し出がありました。もちろん、OKしましたよ。二つ返事で」






78:2018/05/05(土) 22:42:59.15 ID:4Xacs/8z.net

茶髪「あぁぁぁ……。まさか初ライブが聖良先輩と一緒だなんて。何だよぉ、それぇ……」

黒髪「食われる、ってレベルじゃないよね……。実際、あちこちでもう話題になってて、私たちはおまけみたいになってるし」

茶髪「理亞ちゃん、このことで聖良先輩、何か言ってた?」

理亞「……何も。と言うか、ここのところ話も出来てないし」

黒髪「じゃあサプライズってやつ? 頑張る後輩を応援しますーって」

茶髪「過激すぎだよ……」

理亞「違う。生徒会長、勝負って言った。あれは姉様の言葉だよ」

茶髪「勝負って、なに? 私たち嫌われてるの……?」

理亞「……かもね」


79:2018/05/05(土) 22:44:05.31 ID:4Xacs/8z.net

黒髪「嫌いだから叩き潰しちゃおうって? 勘弁してよ……理亞ちゃん、何とか出来ないの?」

理亞「どうにもならない。姉様が勝負するって言った以上、避けられないよ。そういう人だから」

茶髪「そんなぁ……」

理亞(……嫌われてる、か。そっか。そうすることに決めたんだ)

理亞(自信をくじくつもりなんだ。その、圧倒的なくらいの実力で。私たち新鋭のスクールアイドルを)

理亞(ライブでの借りはライブで返す、か……姉様らしいな)


80:2018/05/05(土) 22:44:54.09 ID:4Xacs/8z.net

黒髪「どうする? 何か策はある?」

理亞「策なんて。全力でやる、私たちに出来ることはそれだけ」

茶髪「うわ、脳筋……」

理亞「しょうがないでしょ。曲も衣装もひとつだけ。ライブまでにアレンジするだけの余裕もない」

理亞「だったら、ぶつかるだけぶつかろう」

理亞(そう、全力でぶつかろう。それで終わるなら、それでいい。姉様もきっとそれを望んでる)

理亞(ごめんね、二人とも。変なことに巻き込んじゃったな……)

理亞「――さ。練習しようか。悔いのないように」

理亞(これもあと、数日の活動だから……)


81:2018/05/05(土) 22:45:52.63 ID:4Xacs/8z.net

――――
――

「お久しぶりです、聖良先輩っ。今日のライブ楽しみにしてます!」

聖良「ええ。ありがとうございます。ぜひ、楽しんでいってくださいね」

「東京の生活は大丈夫ですか!? 彼氏できたとか言われたら、私、死にますよ!?」

聖良「生きてください。大丈夫、まだそういうのは無いですから」

キャーキャーキャー

茶髪「聖良先輩、すっごい人気……」

黒髪「というか、本当に来たんだ……」

理亞「来るよ。勝負って言ったら来る。そういう人だし」スタスタ


82:2018/05/05(土) 22:47:22.23 ID:4Xacs/8z.net

理亞「――姉様」

聖良「ん、ああ、理亞。久しぶり。曲、出来たのね」

理亞「うん。連休明けすぐに出来た。……姉様のおかげだよ。不思議とね、すごく簡単に曲が弾けたんだ」

理亞「姉様のこと考えてたら、勝手に指が動いた」

聖良「あの曲は確か、悲恋の歌だった気がしたけど」

理亞「間違ってないよ。私は姉様に恋してて、フラれちゃったから」

聖良「……そう」

理亞「それにしても、今日は急だね。キャリーバッグ引きずったままだし。家、寄ってないの?」


83:2018/05/05(土) 22:48:25.90 ID:4Xacs/8z.net

聖良「急だったのはごめんなさい。いろいろと強行軍になってしまって。これが終わればすぐに帰るから」

理亞「私に復讐しに来たの?」

聖良「……ふふ。復讐、ね。あなたはこの勝負、そう受け取ったんですか」

聖良「逆に聞くけど。今日のライブがどうして復讐になんかなるの? 私はただ勝負としか言ってないはずだけど」

理亞「とぼけないで。私たちを叩き潰しに来たんでしょ。もう二度とスクールアイドルやりたいなんて、思わないように」

聖良「……とぼけているのは、そっちよ理亞。すべてを圧倒するライブ――それは私たちSaintSnowの命題だったはず」

聖良「叩き潰す? ええ、その通りです。どんな相手も叩き潰す覚悟で、私たちはステージに立っていた」

聖良「それなのにあなた――自分が叩き潰されると思ってステージに立とうとしているの?」

理亞「……!」

聖良「全力で来なさい。大丈夫、あなたを圧倒することが簡単でないことくらい、私は他の誰より知っていますから」

聖良「スクールアイドル鹿角理亞の実力を、一番よく知っている……」


84:2018/05/05(土) 22:49:41.81 ID:4Xacs/8z.net

理亞「……姉様は、いったい何をしに来たの。私が憎いから、ここに戻って来たわけじゃないの……?」

聖良「……ええ。そうね、認めます。確かに私は、あの日のあなたのミスを根に持っている」

聖良「今日はそれを清算しに来た。それも、あなたの考えている通り」

理亞「じゃあ、やっぱり……!」

聖良「でも。復讐なんかじゃない。これは勝負なんです。私たちのための。私と、あなたたちとの」

理亞「……どういうこと」

聖良「あなたには分かりませんか。……そうかも知れませんね。あなたは私を、何でも出来る姉と思っているようだから」

聖良「私自身、そうあろうと努めてきたつもりだけど……ふふっ。どうにもこうにも。不器用な人間みたいなんです、私」

聖良「私にはこれしかない。これしか知らないの――勝負しか……!」

聖良「スクールアイドルとしての私は、それ以外にあなたと向き合う術を知らないんです、理亞――!」


85:2018/05/05(土) 22:50:50.81 ID:4Xacs/8z.net





生徒会長「えー、みなさん。部活に学業にと忙しい中、お集まり頂いてありがとうございます。って、よく見ると先生もいますね……」

生徒会長「本日の催しはみなさんご存知かと思います。あえて説明はしませんが、僭越ながら司会進行は私が務めさせて頂きます」

聖良「……」

理亞(……復讐じゃあ、ない。この勝負は、私と向き合うため)

理亞(どういうことだろう……)

理亞(別に私たちは姉妹だし、今までもずっと同じスクールアイドルだったし。今さら、向き合うなんてこと)

理亞(姉様の考えがよく、分からない)


86:2018/05/05(土) 22:51:59.89 ID:4Xacs/8z.net

生徒会長「とは言っても進行することはほとんどありません。本日ステージに上がる方々を、みなまで紹介するまでもないでしょう」

生徒会長「と言いますか、私も待ちきれませんので業務連絡はここまで! 早速始めさせていただきましょう――!」

聖良「ふふ。まったく。ずいぶんと巻で進行しますね、彼女も」

理亞「……」

聖良「……理亞。ステージの前に、ひとつだけあなたに伝えることがあるの」

理亞「伝えること?」


87:2018/05/05(土) 22:52:48.66 ID:4Xacs/8z.net

聖良「悔いはある。とても悔しくて、悲しかった。それを根に持ってもいる。――けれど」

聖良「あなたとSaintSnowだったことを。あなたを相棒に選んだことを後悔した日は、一度だってありません」

聖良「姉としても。スクールアイドルとしても。ただの一度だって……!」

理亞「え……?」

聖良「証明してみせますよ、このライブで。――行ってきます」ザッ

生徒会長「本日限りの英雄の復活……! SaintSnow。鹿角、聖良――!!」

キャー!キャーキャー!
ワーーー!!


88:2018/05/05(土) 22:53:42.63 ID:4Xacs/8z.net

茶髪「うわっ。聖良先輩、やっぱり人気すごい……!?」

黒髪「聖良先輩が着てた衣装、確か前の地区予選のだよね? ってことは、曲は――」

~♪

茶髪「このイントロ……!」

理亞「DROPOUT!?、だね」

理亞(あの時の、私たちSaintSnowが終わった日の曲……)


聖良「ここまで来ても答えが 分からない迷いの中♪」

聖良「掴んだはずの光は 本物じゃなかった…… 闇に飲み込まれて♪」


89:2018/05/05(土) 22:54:30.61 ID:4Xacs/8z.net

茶髪「うわぁ、レベル高……」

黒髪「こうしてスクールアイドルになって改めて見ると、すごいね。本当に……」

黒髪「――って、あれ?」

聖良「……」~♪

理亞「っ!?」

茶髪「理亞ちゃんのパート、まるまる抜けてる!?」

黒髪「ダンスもそのままだ……ソロアレンジ出来なかったの?」

理亞「まさか。それが出来ない人じゃない。やろうと思えば出来たはず……あの人は、一人でも出来るはずなのに」


90:2018/05/05(土) 22:55:28.82 ID:4Xacs/8z.net

黒髪「じゃあ何で?」

理亞「何で、って……」

――あなたとSaintSnowだったことを。あなたを相棒に選んだことを後悔した日は、一度だってありません。

理亞「ああ……そうか。あの人が、今も。――ううん、今だって」

理亞「SaintSnowだから……!」


聖良「必ず手に入れるはずの 輝きはどこにある♪」

聖良「それでもGo to the world! 止められない 出口のない夢の先を♪」

聖良「探そうGo to the world! 孤独がただ 今を歪めるなら♪」

聖良「誰を呼びたいの……♪」


91:2018/05/05(土) 22:56:12.93 ID:4Xacs/8z.net

キャーキャー!キャー!!

理亞「姉様……」

理亞(あぁ、本当に凄い人だ。半分欠けた曲で、ここまでステージを沸かせられる、魅了できる)

理亞(やっぱり姉様は凄い。かっこいい)

理亞(私、こんな人と一緒にスクールアイドルやってたんだ……。私なんかが)


聖良「いつでも意味を求めて 叫んでる心の鼓動♪」

聖良「確かなものが見たくて 走り続けてたら…… 闇に愛されてた♪」チラッ

理亞(! ……姉様いま、こっちを見て――、)

聖良「――理亞ぁ、カモンっ!!」

理亞「……!?」


92:2018/05/05(土) 22:57:00.47 ID:4Xacs/8z.net

茶髪「り、理亞ちゃん呼ばれたよ!?」

黒髪「ど、ど、どうするの? ……あぁ、曲が。理亞ちゃんのソロパート、終わっちゃうよ!?」

理亞「え、えぇ……!? ね、姉様……?」

聖良「……」ニコッ

理亞「――あ」

理亞(そうか。また、私を待っててくれるんだ、姉様……。そうだよね、だって私たち、SaintSnowだから――!)

理亞「……ごめん。二人とも。……行ってくる!」

茶髪「うん、頑張って!」 黒髪「ファイト!」


93:2018/05/05(土) 22:57:40.13 ID:4Xacs/8z.net

理亞「――それは嫌だって block your imitation!!」

キャーーーー!!! リアーー!!

理亞「……!」

理亞(す、すごい歓声……さっきまでより! 姉様が一人で歌ってた時より、ずっと……!)

聖良「ふふっ。――空の色が 見えないのに 輝きを感じてる♪」

聖良「行くわよ、理亞」

理亞「……う、うんっ」

「「痛みでOut of the world! 胸が裂ける 零れ落ちた夢の欠片♪」」

「「拾えばOut of the world! 嘆きのあと いつか動き出せる♪」」

「「だから 顔あげて……♪」」

理亞(すごい、すごい……! 歓声が、どんどん大きくなっていく……っ!)

理亞(みんな姉様のファンだから? 違う、違うよ……!)

理亞(これは、SaintSnowに向けられた歓声だ! SaintSnowが作る歓声だ。私と、姉様が――!)


94:2018/05/05(土) 22:58:29.11 ID:4Xacs/8z.net

理亞(この間奏の後は――、)

理亞「聖良、カモン……っ!」

聖良「……っ」ニッ

聖良「抑えることなど 出来ない力 持て余してるこの想い♪」

理亞「明日が描けない 時も夢は 熱く蠢いてる♪」

聖良「」チラッ

理亞「っ」コクッ

「「それでもGo to the world! 止められない 出口のない夢の先を♪」」

「「探そうGo to the world! 孤独がただ 今引き裂いてる♪」」

「「誰を 呼びたいの …… 呼べば いいよ――――!!」」


95:2018/05/05(土) 23:00:29.24 ID:4Xacs/8z.net

キャアアアアアア!! ワー、ワー、ワー!!

理亞「はぁ……はぁ……はぁ……っ!」

聖良「ふぅ……はぁー……」

聖良「あぁ、良い歓声……。私の負けね。一人じゃあ、この歓声は聞けなかった……」

聖良「なんて、心地のいいステージ。楽しかった――」

理亞「姉様……」

聖良「あなたも感じる? この歓声は、私たち二人のものよ」

聖良「あなたと一緒じゃなければ、聞こえなかった声。辿り着けなかった場所……。あぁ、とても、素敵な景色」

聖良「あなたと一緒にスクールアイドルが出来て、本当に良かった……」

理亞「……っ」ウルッ…

聖良「ふふっ。泣くのは早いわよ。これからは、あなたたちのステージなんだから」


96:2018/05/05(土) 23:01:23.59 ID:4Xacs/8z.net

茶髪「せ、聖良先輩っ。お疲れ様です、あの、タオル!」

聖良「ええ。ありがとうございます」

黒髪「理亞ちゃんも、お疲れ様! すごかったよ……!」

理亞「う、うん。ありがとう」

茶髪「あー、でも。私たち、この後やるんだよね……この空気で」

黒髪「うわぁ、キツ……」

理亞「ご、ごめん。勝手なことして……」

茶髪「あ、いいよいいよ。会場が温まったとは思うから。……温まり過ぎだけど」

黒髪「まぁ私たち二人は最初から聖良さんには敵わないしね」

理亞「ごめん。私が何とかするから」

聖良「……理亞?」

理亞「え。あ、なに?」


97:2018/05/05(土) 23:01:56.67 ID:4Xacs/8z.net

聖良「あなた今まで、ライブで隣を見たことってあった?」

理亞「え――?」

聖良「思えば、あなたは私の背中ばかり見ていた気がする……」

聖良「――隣を見なさい、理亞。あの日の敗因はきっと、あなたにそう言ってあげられなかったこと。それに今日、気が付いた」

聖良「本当のあなたはとても強い。誰にも負けない。でも、自分を追い込みすぎる癖がある」

聖良「だから必要以上に怖がる。どうしても足がすくんでしまう……」

理亞「……」


98:2018/05/05(土) 23:02:32.37 ID:4Xacs/8z.net

聖良「何も恐れることはないのよ。あなたばかりが頑張る必要なんて、ない。だって、あなたの隣には――」

聖良「誰かの背中じゃない、仲間の肩がそこにあるから」

理亞「姉様……」

生徒会長「――さあ、会場の熱気も最高潮! 続きましては本日のメイン!」

生徒会長「SaintSnowのあとを継ぐ、我らが函館聖泉の新生スクールアイドル――、」

茶髪「行こうか、理亞ちゃん」

黒髪「よし。もうこうなったら開き直る! 思いっきりやろう!」

聖良「行ってらっしゃい、理亞」


99:2018/05/05(土) 23:03:04.53 ID:4Xacs/8z.net

理亞「みんな。姉様……」

理亞「――うん! 最高のライブにしよう、姉様に負けないくらい!」

茶・黒「「おー!!」」

キャアアアア!!

聖良「……ふふ。いいグループね」

聖良「さあ、そろそろ行きましょうか」

ワー、ワー…!!






100:2018/05/05(土) 23:03:39.65 ID:4Xacs/8z.net

ガラガラガラ…
――ブーッ、ブーッ、ブーッ

聖良「おっと着信が。はい、もしもし?」

生徒会長『もしもしじゃありませんよ! 聖良先輩、あなた今どこにいるんですか!?』

聖良「どこって。ステージも終わったし、帰ってますよ。ちょっと実家に寄るところです」

生徒会長『帰ったぁ!? ちょ、正気ですかあなた! これが聞こえないんですか!?』――アンコール、アンコール!!

聖良「すごいアンコールですね。ふふ。途中までしか見なかったけど、いいライブでしたからね」

生徒会長『あなたも応えるんですよ、このアンコールに! 何で急に帰ったりするんですか!?』

聖良「ちょっと実家に忘れ物があって。はじめは寄るつもりはなかったから、飛行機の時間がギリギリなんです」

聖良「――あ。実家に着きました。それじゃ、これで」

生徒会長『ま、待ってください! このアンコールはどうしたら……!?』


101:2018/05/05(土) 23:04:06.72 ID:4Xacs/8z.net

聖良「彼女たちに任せれば大丈夫ですよ。あの子たちも、もう立派なスクールアイドルだから」

聖良「あなたにもお世話になりましたね。急なお願いを聞いてくれて、ありがとうございます。それじゃあ」

生徒会長『ちょ、待って! 聖良先輩、待ってくだ――、』

聖良「――さて。ごめんなさい、理亞。あなたの部屋、勝手にお邪魔しますね」ガチャッ

聖良「えぇと。あの子のことだから多分この辺に……」ゴソゴソ

聖良「あった。しっかりラッピングしてるあたり、あの子らしいわね。開けていっちゃいましょうか」

聖良「これは――雪だるまの羊毛フェルト? ふふ、可愛い……このサイドテール、もしかして私?」

聖良「素敵なプレゼントね。ありがたく受け取っておかないと――って。あれは……?」






102:2018/05/05(土) 23:04:37.71 ID:4Xacs/8z.net

理亞「つ、疲れた……。姉様、勝手に帰っちゃうなんて。私、アンコール含めて何曲連続でやったの……?」

理亞「持ち歌も1曲しかないのに。ちょうど3人だからA-RISEのカバーで誤魔化したけど……」

理亞「あぁ疲れた。早く寝よう。シャワーは、明日でいいや……ただいまー……」ガチャ

理亞「――っ!?」ギョッ

理亞「ちょ、な、何で姉様のプレゼントの袋がベッドの上に置いてあるの!? え、包装開かれてる!?」

理亞「……あれ。中身はそのまま……」

理亞「おかしいな。いったい誰がこんなこと――あ」

理亞「……は。あはは。本当、敵わないな。あの人には」

理亞「1ヶ月遅れちゃったけど――お誕生日、おめでとう……姉様。喜んで、くれたかな」


103:2018/05/05(土) 23:05:10.26 ID:4Xacs/8z.net

――――
――

聖良「――ふふふ。そういった訳で、理亞はあのステージでさらなる高みへ至りました。ラブライブ優勝は貰いですね」

ダイヤ「はっ。戯言を……。ルビィはわたくしの妹とは思えないほど鈍臭いですが、曲がりなりにも黒澤の娘」

ダイヤ「ラブライブで勝利を手にするのは、申し訳ありませんがあの子たちに決まっています」

聖良「くふふふっ。根拠のない自信と言うものは、何ともまぁ滑稽に映りますね」

ダイヤ「うふふふ。虚勢よりはマシかと思いますわ」

聖良「……もしかしてケンカ売ってます?」

ダイヤ「あなたがそう思うのなら否定しませんわよ?」

聖良「上等です……! 理亞がどれだけ優れたスクールアイドルか、思い知らせてあげますよ……!」

ダイヤ「片腹痛し、片腹痛しですわ! わたくしから自立したルビィに勝るスクールアイドルなど、この世に存在しませんわ!」


104:2018/05/05(土) 23:05:44.69 ID:4Xacs/8z.net

ダイヤ「吠えるのならば、まずはわたくしへの借金をさっさと返してからにして欲しいものですわね……!」

聖良「それはあと2週間待ってください、バイト代が入るので……っ!」

聖良「取り急ぎ、まずは肩でも揉ませてもらっていいですか……! 理亞たちのPVでも眺めながら!」

ダイヤ「その後にルビィたちのライブ映像を流すなら受けて立ちますわ……!」

聖良(理亞――元気でやっていますか。ツインテ雪だるまの羊毛フェルト、カバンにつけてストラップにしてるんです)

聖良(大学でも評判なんですよ。可愛い、って。みんなに自慢しちゃってます)

聖良(素敵なプレゼントをありがとう……。いろんなことがどうでも良くなるくらい、本当に素敵な一日でした)

聖良(理亞。あなたがどこまで納得できたか分からないけれど。でも私は)

聖良(今が結構、楽しいです――あなたのおかげ、ね)


おしまい


107:2018/05/05(土) 23:12:49.61 ID:cVw3utry.net

乙乙