1: :2018/08/20(月) 20:28:41.71 ID:AK+77CvY.net
――――――――――――――――
私と貴女は、よく喧嘩してた。
小さな、小さな、すぐに仲直りしちゃうような喧嘩。
喧嘩はするけど、私は貴女のことを嫌いじゃない。それは貴女も同じでしょ?
むしろ、その喧嘩こそが、信頼の証でもあり、私と貴女を繋ぐ「赤い糸」だと思っていた。
その赤い糸は、夜、私を眠れなくするほど、きつく、きつく―――
私を心を縛っていた―――
私と貴女は、よく喧嘩してた。
小さな、小さな、すぐに仲直りしちゃうような喧嘩。
喧嘩はするけど、私は貴女のことを嫌いじゃない。それは貴女も同じでしょ?
むしろ、その喧嘩こそが、信頼の証でもあり、私と貴女を繋ぐ「赤い糸」だと思っていた。
その赤い糸は、夜、私を眠れなくするほど、きつく、きつく―――
私を心を縛っていた―――
2: :2018/08/20(月) 20:30:38.37 ID:AK+77CvY.net
心地よいのだけど、とても苦しい赤い糸の締め付け。
私は心地よさよりも、苦しさが何よりも辛かった。
だから、私は私の気持ちを全部、貴女に伝えた。
「にこちゃんのことが好きです。付き合ってください」―――って―――
そこで、私ははじめて貴女から「拒絶」された―――
――――――――――――――――
私は心地よさよりも、苦しさが何よりも辛かった。
だから、私は私の気持ちを全部、貴女に伝えた。
「にこちゃんのことが好きです。付き合ってください」―――って―――
そこで、私ははじめて貴女から「拒絶」された―――
――――――――――――――――
3: :2018/08/20(月) 20:36:46.40 ID:AK+77CvY.net
少し、瞼が重い。
目が覚めたんだろう。
朝日は入ってこない。この光は、太陽のものではない。人工的な光だった。
にこ「ここは……?」
目を開けると、まず天井が視界に入る。
私の家の天井は木造で、白くはない。木材の茶色だったはずだ。
だけど、ここは白い。
辺りを見渡すと、天井だけではなかった。
「白」がこの部屋の、この世界の全てであるように、白一色に包まれていた。
目が覚めたんだろう。
朝日は入ってこない。この光は、太陽のものではない。人工的な光だった。
にこ「ここは……?」
目を開けると、まず天井が視界に入る。
私の家の天井は木造で、白くはない。木材の茶色だったはずだ。
だけど、ここは白い。
辺りを見渡すと、天井だけではなかった。
「白」がこの部屋の、この世界の全てであるように、白一色に包まれていた。
4: :2018/08/20(月) 20:41:27.24 ID:AK+77CvY.net
身体を起こす。
柔らかい白い布団が、私を包んでいた。
どうやら、ベッドに寝かされていたみたいだ。
この世界の「白」以外のものを意識すると、おかしな点に気づく。
にこ「この部屋、窓がない……?」
にこ「窓以外にも……本当に、何もない……?」
この世界には、私が寝ていたベッド、私を照らしているやけに明るい電気、それ以外には何もないみたいだ。
あるのは、この白い世界に不釣り合いの、茶色い扉が2つあるだけだった。
柔らかい白い布団が、私を包んでいた。
どうやら、ベッドに寝かされていたみたいだ。
この世界の「白」以外のものを意識すると、おかしな点に気づく。
にこ「この部屋、窓がない……?」
にこ「窓以外にも……本当に、何もない……?」
この世界には、私が寝ていたベッド、私を照らしているやけに明るい電気、それ以外には何もないみたいだ。
あるのは、この白い世界に不釣り合いの、茶色い扉が2つあるだけだった。
5: :2018/08/20(月) 20:44:13.13 ID:AK+77CvY.net
にこ「ここ……どこ……?」
にこ「ねぇ……!真姫ちゃん、真姫ちゃん!!いないの!?」
にこ「ねえ!!ここどこ!!真姫ちゃん……!!」
にこ「そうだ……あの2つのドア……!」
私は、真姫ちゃんを求めて、不釣り合いの2つのドアのうち、右側のドアに近づく。
そして、ドアを開ける。
ドアは簡単に開いた。
中は……なんの変哲もない……ただのトイレ……
にこ「なによ……ただのトイレじゃない……!」
にこ「ねぇ……!真姫ちゃん、真姫ちゃん!!いないの!?」
にこ「ねえ!!ここどこ!!真姫ちゃん……!!」
にこ「そうだ……あの2つのドア……!」
私は、真姫ちゃんを求めて、不釣り合いの2つのドアのうち、右側のドアに近づく。
そして、ドアを開ける。
ドアは簡単に開いた。
中は……なんの変哲もない……ただのトイレ……
にこ「なによ……ただのトイレじゃない……!」
6: :2018/08/20(月) 20:49:09.79 ID:AK+77CvY.net
にこ「もうひとつのドアは……!」
もうひとつのドアにも手をかける……しかし……
にこ「お風呂……」
トイレと同じく、ただの一般家庭に設置されているような、ただのお風呂。少し狭いくらいか……
にこ「ここ、どこなの……!?」
ガチャ
にこ「……!?」
にこ「真姫ちゃん……!!」
真姫「にこちゃん、起きたのね?」
にこ「真姫ちゃん……ここ、どこ……?」
にこ「私の家族は……?こころとここあ、虎太郎は……!?」
にこ「なんで、私は家にいないの……!?さっきまで、家に寝ていたはずなのに!」
私は、真姫ちゃんに詰め寄り、私が此処にいる理由について問いただす。
普通に考えて、真姫ちゃんが知っているはずがない。
けど、周りには真姫ちゃんしかいない。真姫ちゃんに聞くしかない。
真姫「……言えない」
にこ「え……?」
真姫「言えないの、ごめんね、にこちゃん」
もうひとつのドアにも手をかける……しかし……
にこ「お風呂……」
トイレと同じく、ただの一般家庭に設置されているような、ただのお風呂。少し狭いくらいか……
にこ「ここ、どこなの……!?」
ガチャ
にこ「……!?」
にこ「真姫ちゃん……!!」
真姫「にこちゃん、起きたのね?」
にこ「真姫ちゃん……ここ、どこ……?」
にこ「私の家族は……?こころとここあ、虎太郎は……!?」
にこ「なんで、私は家にいないの……!?さっきまで、家に寝ていたはずなのに!」
私は、真姫ちゃんに詰め寄り、私が此処にいる理由について問いただす。
普通に考えて、真姫ちゃんが知っているはずがない。
けど、周りには真姫ちゃんしかいない。真姫ちゃんに聞くしかない。
真姫「……言えない」
にこ「え……?」
真姫「言えないの、ごめんね、にこちゃん」
7: :2018/08/20(月) 20:52:00.40 ID:AK+77CvY.net
にこ「言えないって……?」
真姫「あっ……安心して?にこちゃんに何か異常があって、隔離されているわけじゃないわ」
真姫「そうだとしたら、私だって此処には来れないもの」
にこ「………」
真姫「私とにこちゃんは、ここで暮らすのよ」
にこ「………!?」
え……?
真姫ちゃんと、私がここで暮らす……?
にこ「どういう……こと……?」
真姫「………」
真姫ちゃんは何も答えない。
きっと、それも言えないんだろう……
真姫「あっ……安心して?にこちゃんに何か異常があって、隔離されているわけじゃないわ」
真姫「そうだとしたら、私だって此処には来れないもの」
にこ「………」
真姫「私とにこちゃんは、ここで暮らすのよ」
にこ「………!?」
え……?
真姫ちゃんと、私がここで暮らす……?
にこ「どういう……こと……?」
真姫「………」
真姫ちゃんは何も答えない。
きっと、それも言えないんだろう……
8: :2018/08/20(月) 20:55:47.90 ID:AK+77CvY.net
にこ「学校は……?家族は……?」
真姫「……ごめんなさい、会えないわ……」
にこ「………」
にこ「そっか……」
真姫「………」
にこ「真紀ちゃんは、私と一緒にいてくれるんだよね?」
真姫「ええ……!」
真姫「私とにこちゃんは、ずっと一緒よ。これからもね」
にこ「………」
家族と会えないのは、悲しい。
μ'sとして活動できないのも悲しい。真姫ちゃん以外の仲間と会えないのも、悲しい……
なのに、涙は出なかった。
真姫ちゃんがいてくれるのなら、いいのかな……って―――
思ってしまった―――
真姫「……ごめんなさい、会えないわ……」
にこ「………」
にこ「そっか……」
真姫「………」
にこ「真紀ちゃんは、私と一緒にいてくれるんだよね?」
真姫「ええ……!」
真姫「私とにこちゃんは、ずっと一緒よ。これからもね」
にこ「………」
家族と会えないのは、悲しい。
μ'sとして活動できないのも悲しい。真姫ちゃん以外の仲間と会えないのも、悲しい……
なのに、涙は出なかった。
真姫ちゃんがいてくれるのなら、いいのかな……って―――
思ってしまった―――
9: :2018/08/20(月) 21:00:27.37 ID:AK+77CvY.net
私は、さっきまで震えていたのは「恐怖」からじゃなく、「寂しさ」からなんだと、この時初めて気づいた。
いや、恐怖もあるのかもしれない。恐怖から来る孤独……それが私の不安要素だったんだ。
真姫ちゃんがいなくて、怖かったんだ―――
他の何とも変えられない―――
真姫ちゃんがいなかったから、私は怖かったんだ、寂しかったんだ―――
にこ「真姫ちゃん……!」ポロポロ
真姫「ごめんね……?ひとりにして、もう、ずっと一緒よ」
にこ「うん……!」ギュッ
私の小さな体を精一杯使って、真姫ちゃんの暖かみを分けてもらおうとする。
真姫ちゃんはそんな私を突っぱねない。受け入れてくれる……
私には、真姫ちゃん以外、いらないんだなって……
心の底から、そう思った―――
にこ「真姫ちゃん、大好き」
――――――――――――――――
いや、恐怖もあるのかもしれない。恐怖から来る孤独……それが私の不安要素だったんだ。
真姫ちゃんがいなくて、怖かったんだ―――
他の何とも変えられない―――
真姫ちゃんがいなかったから、私は怖かったんだ、寂しかったんだ―――
にこ「真姫ちゃん……!」ポロポロ
真姫「ごめんね……?ひとりにして、もう、ずっと一緒よ」
にこ「うん……!」ギュッ
私の小さな体を精一杯使って、真姫ちゃんの暖かみを分けてもらおうとする。
真姫ちゃんはそんな私を突っぱねない。受け入れてくれる……
私には、真姫ちゃん以外、いらないんだなって……
心の底から、そう思った―――
にこ「真姫ちゃん、大好き」
――――――――――――――――
10: :2018/08/20(月) 21:05:54.99 ID:AK+77CvY.net
――――――――――――――――
赤い糸が千切れるのは、早かった。
貴女が「にこはみんなのアイドルだから」って、私を拒絶したその日、私は失恋したのだ。
これも大切な青春のページ、輝く人生の思い出―――
そんなふうに、割り切ることができれば、まだ気が楽だったんだろうな―――
私の甘酸っぱい、霞むような恋心は、「割り切り」を知らない―――
現実を受け入れられなかったのだ―――
赤い糸が千切れるのは、早かった。
貴女が「にこはみんなのアイドルだから」って、私を拒絶したその日、私は失恋したのだ。
これも大切な青春のページ、輝く人生の思い出―――
そんなふうに、割り切ることができれば、まだ気が楽だったんだろうな―――
私の甘酸っぱい、霞むような恋心は、「割り切り」を知らない―――
現実を受け入れられなかったのだ―――
11: :2018/08/20(月) 21:09:04.16 ID:AK+77CvY.net
貴女のことが忘れられない。
当然よね。毎日、毎日顔を合わせるんだから。
私を捨てて、毎日自分を磨く貴女が、まぶしすぎて―――
その小さな身体で、大きく、大きく飛び跳ねようとする貴女が、本当にまぶしすぎて―――
私は学校へ行くのをやめた―――
「夢」を見続けることにした―――
――――――――――――――――
当然よね。毎日、毎日顔を合わせるんだから。
私を捨てて、毎日自分を磨く貴女が、まぶしすぎて―――
その小さな身体で、大きく、大きく飛び跳ねようとする貴女が、本当にまぶしすぎて―――
私は学校へ行くのをやめた―――
「夢」を見続けることにした―――
――――――――――――――――
12: :2018/08/20(月) 21:13:18.75 ID:AK+77CvY.net
――――――――――――――――
にこ「………」
真姫「にこちゃん、起きてる?」
にこ「うん、起きてるよ、真姫ちゃん」
真姫「にこちゃん、好き」
にこ「私も、大好き、真姫ちゃん」
真姫「私と2人だけで、寂しくない……?」
真姫「にこちゃんにも家族はいるし、μ'sのみんなだって……」
にこ「いいの」ギュッ
にこ「確かに、他のみんなや家族は大事」
にこ「私の記憶にもしっかり残ってる。仲間や家族の温かさ、大切さ……」
にこ「それでも……」
にこ「真姫ちゃんと2人っきりのほうが、嬉しい……」ギュッ
真姫「にこちゃん……」
にこ「私には、真姫ちゃんしか考えられない……」
にこ「………」
真姫「にこちゃん、起きてる?」
にこ「うん、起きてるよ、真姫ちゃん」
真姫「にこちゃん、好き」
にこ「私も、大好き、真姫ちゃん」
真姫「私と2人だけで、寂しくない……?」
真姫「にこちゃんにも家族はいるし、μ'sのみんなだって……」
にこ「いいの」ギュッ
にこ「確かに、他のみんなや家族は大事」
にこ「私の記憶にもしっかり残ってる。仲間や家族の温かさ、大切さ……」
にこ「それでも……」
にこ「真姫ちゃんと2人っきりのほうが、嬉しい……」ギュッ
真姫「にこちゃん……」
にこ「私には、真姫ちゃんしか考えられない……」
13: :2018/08/20(月) 21:17:45.34 ID:AK+77CvY.net
真姫「私も、世界で一番好きよ、にこちゃんのこと……」
真姫「にこちゃんがいないと、私……」ポロポロ
にこ「真姫ちゃん……」ギュッ
真姫「ううっ……」ポロポロ
真姫ちゃんが震えている。
私が、少しでも安心させてあげないと―――
私も、真姫ちゃんがいないと生きていけない、弱い人間だけど―――
真姫ちゃんもまた、私と大して変わらない、弱い人間なんだ―――
私の温もりを、ほんのちょっとでも真姫ちゃんに伝えたい。
そのか弱くて小さな心を、私で満たして欲しい。
それが、真姫ちゃんの為であり、私の生きる意味なんだ―――
真姫「にこちゃんがいないと、私……」ポロポロ
にこ「真姫ちゃん……」ギュッ
真姫「ううっ……」ポロポロ
真姫ちゃんが震えている。
私が、少しでも安心させてあげないと―――
私も、真姫ちゃんがいないと生きていけない、弱い人間だけど―――
真姫ちゃんもまた、私と大して変わらない、弱い人間なんだ―――
私の温もりを、ほんのちょっとでも真姫ちゃんに伝えたい。
そのか弱くて小さな心を、私で満たして欲しい。
それが、真姫ちゃんの為であり、私の生きる意味なんだ―――
14: :2018/08/20(月) 21:22:34.44 ID:AK+77CvY.net
この部屋には、外へ出るドアもない。窓もない。
さらには、時計もない―――
時間、日差し、真姫ちゃん以外の人間の関わり―――
全てを遮断されたこの白い世界―――
でも、私には何もいらない。必要ない。
真姫ちゃんさえいてくれれば―――
真姫ちゃんがいれば、あとは何もいらない―――
真姫ちゃん、大好き―――
にこ「真姫ちゃん、キスしよ」
真姫「……うん」
さらには、時計もない―――
時間、日差し、真姫ちゃん以外の人間の関わり―――
全てを遮断されたこの白い世界―――
でも、私には何もいらない。必要ない。
真姫ちゃんさえいてくれれば―――
真姫ちゃんがいれば、あとは何もいらない―――
真姫ちゃん、大好き―――
にこ「真姫ちゃん、キスしよ」
真姫「……うん」
15: :2018/08/20(月) 21:26:27.50 ID:AK+77CvY.net
真姫ちゃんとの口づけ。
初恋の味ではない―――
深い深い愛情の味―――
比喩しがたい。
でも、今まで味わったどんな味よりも、甘くて、心地よくて。
幸せを感じることができる。真姫ちゃんには幸せが詰まっているんだと、そう思った。
そのまま、私は真姫ちゃんの喜捨な身体を抱きしめる。
私のほうがか弱くて、小さな身体のはずなのに―――
なぜか、真姫ちゃんのほうが、もっともっと、小さい人間のように感じてしまう―――
初恋の味ではない―――
深い深い愛情の味―――
比喩しがたい。
でも、今まで味わったどんな味よりも、甘くて、心地よくて。
幸せを感じることができる。真姫ちゃんには幸せが詰まっているんだと、そう思った。
そのまま、私は真姫ちゃんの喜捨な身体を抱きしめる。
私のほうがか弱くて、小さな身体のはずなのに―――
なぜか、真姫ちゃんのほうが、もっともっと、小さい人間のように感じてしまう―――
16: :2018/08/20(月) 21:32:22.90 ID:AK+77CvY.net
そのまま、一体何日経ったのだろう―――
時計がないから、時間がわからない。
外の状況がわからないから、何日間此処にいたのかもわからない。
ただ、真姫ちゃんと一緒にいるだけ。
お話して、どこからか出てきたゲームをして、どこからか出てきた食事を摂って―――
ベッドの中でキスをして、抱きあって、愛を確かめ合って―――
とても長い時間のように感じた。実際、どのくらいの時間が経ったのだろう。
私は、幸せだった。
矢澤にこと西木野真姫しかいない白い世界。
この世界が、ずっと続けばいい。
本気でそう思っている。
こころ、ここあ、虎太郎、お母さん、希、絵里、花陽、凛、穂乃果、ことり、海未。
大切な人はまだまだたくさんいるはずなのに―――
真姫ちゃんとの世界に、私は依存しきっていた。
それが「何故」なのかはわからない―――
きっと、真姫ちゃんが愛おしすぎるからだろうな―――
今日も……といっても日にちはわからないんだけど……
変わらない、幸せな日常なんだろう―――
時計がないから、時間がわからない。
外の状況がわからないから、何日間此処にいたのかもわからない。
ただ、真姫ちゃんと一緒にいるだけ。
お話して、どこからか出てきたゲームをして、どこからか出てきた食事を摂って―――
ベッドの中でキスをして、抱きあって、愛を確かめ合って―――
とても長い時間のように感じた。実際、どのくらいの時間が経ったのだろう。
私は、幸せだった。
矢澤にこと西木野真姫しかいない白い世界。
この世界が、ずっと続けばいい。
本気でそう思っている。
こころ、ここあ、虎太郎、お母さん、希、絵里、花陽、凛、穂乃果、ことり、海未。
大切な人はまだまだたくさんいるはずなのに―――
真姫ちゃんとの世界に、私は依存しきっていた。
それが「何故」なのかはわからない―――
きっと、真姫ちゃんが愛おしすぎるからだろうな―――
今日も……といっても日にちはわからないんだけど……
変わらない、幸せな日常なんだろう―――
17: :2018/08/20(月) 21:38:35.68 ID:AK+77CvY.net
目を覚ましたとき、大抵真姫ちゃんはそこにいない。
初めの頃は、目を覚ました後に真姫ちゃんがいないことに寂しさを感じ、泣いてしまっていた。
真姫ちゃんはこのドアのない白い世界で、どこからか食料を調達したり、ゲームやDVDを持ってきたり。
それを私が起きる前に行動に移しているみたいで、私が早起きしたとき、すれ違いになる。
そのすれ違いの時間がとてつもなく虚しい。
だから、私はなるべく真姫ちゃんよりも遅く起きるようにしていた。
でも、寝ているときに、急に愛する人の温もりが消えてしまったら、不安のせいでどうしても目が覚めてしまう。
そんなことも、多々あった。
私は今起きたばかりだけど、真姫ちゃんはいない。きっと、いつものように、今日一日分の食事を持ってきてくれているんだ。
早く帰ってこないかな―――真姫ちゃん―――
――――――――――――――――
初めの頃は、目を覚ました後に真姫ちゃんがいないことに寂しさを感じ、泣いてしまっていた。
真姫ちゃんはこのドアのない白い世界で、どこからか食料を調達したり、ゲームやDVDを持ってきたり。
それを私が起きる前に行動に移しているみたいで、私が早起きしたとき、すれ違いになる。
そのすれ違いの時間がとてつもなく虚しい。
だから、私はなるべく真姫ちゃんよりも遅く起きるようにしていた。
でも、寝ているときに、急に愛する人の温もりが消えてしまったら、不安のせいでどうしても目が覚めてしまう。
そんなことも、多々あった。
私は今起きたばかりだけど、真姫ちゃんはいない。きっと、いつものように、今日一日分の食事を持ってきてくれているんだ。
早く帰ってこないかな―――真姫ちゃん―――
――――――――――――――――
18: :2018/08/20(月) 21:41:47.59 ID:AK+77CvY.net
――――――――――――――――
もう、抜け出せない。
私の大好きな貴女が、ずっと、ずっと私と一緒にいる。
うふふ……!
何物にも変えられない、幸せ―――
貴女以外のすべてを捨てて手に入れた、幸せ―――
貴女の温もりも、愛おしさも、全て私に向けられている。
にこちゃんの家族でも、アイドルでも、μ'sのメンバーでもない。
この西木野真姫のもの―――
もう、抜け出せない。
私の大好きな貴女が、ずっと、ずっと私と一緒にいる。
うふふ……!
何物にも変えられない、幸せ―――
貴女以外のすべてを捨てて手に入れた、幸せ―――
貴女の温もりも、愛おしさも、全て私に向けられている。
にこちゃんの家族でも、アイドルでも、μ'sのメンバーでもない。
この西木野真姫のもの―――
19: :2018/08/20(月) 21:44:06.81 ID:AK+77CvY.net
今日で何日目なのかわからない。
外の世界では、私を探してくれているんだろうか。
でも、そんなことすらも、もうどうでもいい。
今はただ、この時間を大事にしたい。
貴女との時間を―――
にこちゃんとの時間を―――
ハンバーグばっかりじゃ飽きるよね。たまには、オムライスだって食べたい。
そういう考えから、私は今日のご飯をオムライスにした。
外の世界でいうところの「夕食」だ。
――――――――――――――――
外の世界では、私を探してくれているんだろうか。
でも、そんなことすらも、もうどうでもいい。
今はただ、この時間を大事にしたい。
貴女との時間を―――
にこちゃんとの時間を―――
ハンバーグばっかりじゃ飽きるよね。たまには、オムライスだって食べたい。
そういう考えから、私は今日のご飯をオムライスにした。
外の世界でいうところの「夕食」だ。
――――――――――――――――
20: :2018/08/20(月) 21:48:37.31 ID:AK+77CvY.net
――――――――――――――――
真姫「にこちゃん、お待たせ」
にこ「真姫ちゃんっ!!」ギュッ
真姫「きゃっ!!もう……///」
にこ「真姫ちゃん、遅いよ……」スリスリ
真姫「不安にさせてごめんね、にこちゃん」
真姫「今日のご飯を作っていたのよ。ご飯がないと、お腹がすくでしょ?」
にこ「うん……でも……」
にこ「ご飯なんか、最低限でいいから……」
にこ「ずっと一緒にいて欲しい……」ギュッ
真姫「……うん」ギュッ
真姫ちゃんの温もりを再確認する。
本当に温かくて、いい匂い。
離したくない。
真姫ちゃんには私がいないと駄目なように、私にも真姫ちゃんがいないと駄目なんだ―――
本当に大好き、真姫ちゃん―――
真姫「にこちゃん、お待たせ」
にこ「真姫ちゃんっ!!」ギュッ
真姫「きゃっ!!もう……///」
にこ「真姫ちゃん、遅いよ……」スリスリ
真姫「不安にさせてごめんね、にこちゃん」
真姫「今日のご飯を作っていたのよ。ご飯がないと、お腹がすくでしょ?」
にこ「うん……でも……」
にこ「ご飯なんか、最低限でいいから……」
にこ「ずっと一緒にいて欲しい……」ギュッ
真姫「……うん」ギュッ
真姫ちゃんの温もりを再確認する。
本当に温かくて、いい匂い。
離したくない。
真姫ちゃんには私がいないと駄目なように、私にも真姫ちゃんがいないと駄目なんだ―――
本当に大好き、真姫ちゃん―――
21: :2018/08/20(月) 21:50:54.26 ID:AK+77CvY.net
真姫「さ、ごはんを食べましょ、にこちゃん」
にこ「うんっ♪」
真姫「ふふっ、料理もそこまで難しくないのね」
にこ「料理で一番大切なのは愛情よ」
にこ「真姫ちゃんには私に対する愛情がたくさんあるから、料理にも出てきてるのよ」
真姫「ふふっ、そうかもね」
にこ「あはははは!」
真姫ちゃんと笑いあう。
これが、この白い世界の1日のはじまりだった。
何物にも邪魔されない。
邪魔され―――
バンッッッッッ!!!!!!
――――――――――――――――
にこ「うんっ♪」
真姫「ふふっ、料理もそこまで難しくないのね」
にこ「料理で一番大切なのは愛情よ」
にこ「真姫ちゃんには私に対する愛情がたくさんあるから、料理にも出てきてるのよ」
真姫「ふふっ、そうかもね」
にこ「あはははは!」
真姫ちゃんと笑いあう。
これが、この白い世界の1日のはじまりだった。
何物にも邪魔されない。
邪魔され―――
バンッッッッッ!!!!!!
――――――――――――――――
22: :2018/08/20(月) 21:54:48.43 ID:AK+77CvY.net
にこ「!!!?」
真姫「!!!?」
にこ「な、なに……?」
この音は、何の音だったかな……?
以前までは、何度も何度も聞いたことがあるような音。
そうだ、この音は―――
ドアを激しく開けたときの音だ―――
誰かが激しくドアを開けたんだ。私と真姫ちゃん以外の、誰かが―――
誰かが、この世界に侵入した―――
私はその音がした方を見る。いつもそこにある、白い壁の一部だ―――
でも、そこには白い壁はなくて―――代わりに、「外の世界」と―――
私が毎日鏡で見ている見知った顔があった―――
にこ「え―――?」
にこ?「真姫ちゃん……どういうこと……?なんで、にこが2人……?」
真姫「!!!?」
にこ「な、なに……?」
この音は、何の音だったかな……?
以前までは、何度も何度も聞いたことがあるような音。
そうだ、この音は―――
ドアを激しく開けたときの音だ―――
誰かが激しくドアを開けたんだ。私と真姫ちゃん以外の、誰かが―――
誰かが、この世界に侵入した―――
私はその音がした方を見る。いつもそこにある、白い壁の一部だ―――
でも、そこには白い壁はなくて―――代わりに、「外の世界」と―――
私が毎日鏡で見ている見知った顔があった―――
にこ「え―――?」
にこ?「真姫ちゃん……どういうこと……?なんで、にこが2人……?」
23: :2018/08/20(月) 21:57:30.48 ID:AK+77CvY.net
侵入者を許した大きな音。
そして、その音のした方には、薄暗い外の世界と―――
もうひとりの「矢澤にこ」―――
どういうこと……?
私が二人……?
にこ「真姫ちゃん……?」
真姫「………」
にこ「ねぇ、真姫ちゃん……?」
私は、真姫ちゃんの方を見る。
真姫ちゃんの顔は青い。何かに怯えているみたいだ。
その不安をすぐに拭ってあげたい。でも、いまはきっと無理だ。
私だって、何がなんだかわからないから―――
そして、その音のした方には、薄暗い外の世界と―――
もうひとりの「矢澤にこ」―――
どういうこと……?
私が二人……?
にこ「真姫ちゃん……?」
真姫「………」
にこ「ねぇ、真姫ちゃん……?」
私は、真姫ちゃんの方を見る。
真姫ちゃんの顔は青い。何かに怯えているみたいだ。
その不安をすぐに拭ってあげたい。でも、いまはきっと無理だ。
私だって、何がなんだかわからないから―――
24: :2018/08/20(月) 22:00:07.46 ID:AK+77CvY.net
にこ?「ねぇ、どういうことよ、真姫ちゃん……!」
にこ?「急に私たちの前から姿を消したと思ったら……!」
にこ?「なんで、なんで私がもうひとりいるのよ……!」
にこ?「どういうこと!?」
真姫「………!」
にこ「あ、あんたこそ……誰よ……!」
にこ「私がにこよ……!あなたは誰……!?」
にこ?「私だってにこよ……!」
にこ?「今だって、驚いてる……何がなんだかわからない……!」
にこ?「どういうこと、真姫ちゃん……!」
真姫「………」
にこ?「急に私たちの前から姿を消したと思ったら……!」
にこ?「なんで、なんで私がもうひとりいるのよ……!」
にこ?「どういうこと!?」
真姫「………!」
にこ「あ、あんたこそ……誰よ……!」
にこ「私がにこよ……!あなたは誰……!?」
にこ?「私だってにこよ……!」
にこ?「今だって、驚いてる……何がなんだかわからない……!」
にこ?「どういうこと、真姫ちゃん……!」
真姫「………」
25: :2018/08/20(月) 22:03:33.88 ID:AK+77CvY.net
真姫「………さい」
にこ?「え……?」
真姫「うるさいうるさい、うるさいっ!!!!!」バンッ
にこ?「!!?」
にこ「!!?」
真姫「あんたなんか、にこちゃんじゃないっ!!!!」
真姫「私のにこちゃんは此処にいる……!私のにこちゃんは、此処にちゃんといる……!」
真姫「あなたなんか、本物じゃない……!偽物よ……!!」ポロポロ
にこ「ま、真姫ちゃん……」
にこ?「………」
真姫ちゃんは、私のほうを見ていってはいない。
目の前にいる、私の「偽物」の方を見て、怒りを露わにしているんだ。
その怒りの矛先が「私」じゃないことに安心するのもつかの間。結局状況は何も変わっていないことを悟る。
にこ?「え……?」
真姫「うるさいうるさい、うるさいっ!!!!!」バンッ
にこ?「!!?」
にこ「!!?」
真姫「あんたなんか、にこちゃんじゃないっ!!!!」
真姫「私のにこちゃんは此処にいる……!私のにこちゃんは、此処にちゃんといる……!」
真姫「あなたなんか、本物じゃない……!偽物よ……!!」ポロポロ
にこ「ま、真姫ちゃん……」
にこ?「………」
真姫ちゃんは、私のほうを見ていってはいない。
目の前にいる、私の「偽物」の方を見て、怒りを露わにしているんだ。
その怒りの矛先が「私」じゃないことに安心するのもつかの間。結局状況は何も変わっていないことを悟る。
26: :2018/08/20(月) 22:06:30.02 ID:AK+77CvY.net
にこ?「………」ポロポロ
私の偽物は、泣いていた。
真姫ちゃんから怒りを向けられているからだろうか、偽物と言われたからだろうか。
偽物の私が泣こうが、本物は私なのだ……
この「矢澤にこ」は一体誰……?
真姫「帰って……!!偽物……!!私のにこちゃんは此処にいるのよ……!!」
真姫「貴方なんか知らない……!!貴女なんか……にこちゃんじゃない!!!」
にこ「真姫ちゃん、落ち着いて」ギュッ
怒りに身を任せている真姫ちゃんの手をギュッと握る。
少しでも、不安が消えてくれればいいと思っていたけど、その手の「熱さ」から、すぐには消えないんだなと肌で感じる。
にこ?「何よ……」ポロポロ
私の偽物は、泣いていた。
真姫ちゃんから怒りを向けられているからだろうか、偽物と言われたからだろうか。
偽物の私が泣こうが、本物は私なのだ……
この「矢澤にこ」は一体誰……?
真姫「帰って……!!偽物……!!私のにこちゃんは此処にいるのよ……!!」
真姫「貴方なんか知らない……!!貴女なんか……にこちゃんじゃない!!!」
にこ「真姫ちゃん、落ち着いて」ギュッ
怒りに身を任せている真姫ちゃんの手をギュッと握る。
少しでも、不安が消えてくれればいいと思っていたけど、その手の「熱さ」から、すぐには消えないんだなと肌で感じる。
にこ?「何よ……」ポロポロ
27: :2018/08/20(月) 22:11:38.08 ID:AK+77CvY.net
にこ?「あんた……私に振られたことを根に持ってるんでしょ……!」
真姫「違うっ!!!!!私はにこちゃんに振られてなんかない……!!」
真姫「そうでしょう!!にこちゃん!!」ギュッ
今度は、私に向かって、真姫ちゃんは言う。涙ながらに、痛々しく……
にこ「……当然じゃない……!私も、真姫ちゃんのこと大好き……!」
にこ「私が真姫ちゃんのこと、振るわけないじゃない……!」
真姫「ほら見なさい……!!」
真姫「早く帰ってよ……偽物!!私とにこちゃんの世界を邪魔しないでっっ!!!」
真姫ちゃんの怒りは最もだ。私だって、状況理解が追い付かないにしろ、この偽物の私には怒りを感じている。
侵入されたからだ。
真姫ちゃんと私の世界に、土足で上がり込んだのだから―――
にこ?「西木野真姫……あんたの目を覚まさせてやるため、私はあんたをずっと探してた……!」
にこ?「言ってやるわよ、西木野真姫、あんたがなんでこんなことになってるのか……!」
真姫「やめて……!」
真姫「聞きたくない……!」
真姫「違うっ!!!!!私はにこちゃんに振られてなんかない……!!」
真姫「そうでしょう!!にこちゃん!!」ギュッ
今度は、私に向かって、真姫ちゃんは言う。涙ながらに、痛々しく……
にこ「……当然じゃない……!私も、真姫ちゃんのこと大好き……!」
にこ「私が真姫ちゃんのこと、振るわけないじゃない……!」
真姫「ほら見なさい……!!」
真姫「早く帰ってよ……偽物!!私とにこちゃんの世界を邪魔しないでっっ!!!」
真姫ちゃんの怒りは最もだ。私だって、状況理解が追い付かないにしろ、この偽物の私には怒りを感じている。
侵入されたからだ。
真姫ちゃんと私の世界に、土足で上がり込んだのだから―――
にこ?「西木野真姫……あんたの目を覚まさせてやるため、私はあんたをずっと探してた……!」
にこ?「言ってやるわよ、西木野真姫、あんたがなんでこんなことになってるのか……!」
真姫「やめて……!」
真姫「聞きたくない……!」
28: :2018/08/20(月) 22:16:18.68 ID:AK+77CvY.net
にこ?「あんたは……1ヵ月前、私に告白してきた―――」
真姫「やめて!!!聞きたくないのっ!!!」ポロポロ
にこ「真姫ちゃん……!ねぇ、もう帰ってよ!!!」
にこ「なんで私と真姫ちゃんの世界を脅かそうとするの……!!」
にこ「わけわかんないわよ!!確かに、真姫ちゃんとはこうして愛し合うことができているけど……!!」
にこ「知ったようなこと言わないで……!!」ポロポロ
にこ?「いいえ、聞きなさい、西木野真姫……!」
にこ?「あんたは、私に告白した、そして、私はあんたをフった……!」
真姫「違う……!!振られていないっ!!」ポロポロ
真姫「ここにいる……にこちゃんは、此処に……!」
真姫が、私を抱きしめる。そして、偽物から逃げるかのように、私を盾にして隠れた。
にこ?「……その子は誰なのよ……少なくとも、私は此処にいる……」
にこ?「そこにいる「偽物」の私は誰なのよ……!!」
真姫「やめて!!!聞きたくないのっ!!!」ポロポロ
にこ「真姫ちゃん……!ねぇ、もう帰ってよ!!!」
にこ「なんで私と真姫ちゃんの世界を脅かそうとするの……!!」
にこ「わけわかんないわよ!!確かに、真姫ちゃんとはこうして愛し合うことができているけど……!!」
にこ「知ったようなこと言わないで……!!」ポロポロ
にこ?「いいえ、聞きなさい、西木野真姫……!」
にこ?「あんたは、私に告白した、そして、私はあんたをフった……!」
真姫「違う……!!振られていないっ!!」ポロポロ
真姫「ここにいる……にこちゃんは、此処に……!」
真姫が、私を抱きしめる。そして、偽物から逃げるかのように、私を盾にして隠れた。
にこ?「……その子は誰なのよ……少なくとも、私は此処にいる……」
にこ?「そこにいる「偽物」の私は誰なのよ……!!」
29: :2018/08/20(月) 22:21:02.22 ID:AK+77CvY.net
にこ「私が……?偽物……?」
そんなはずない……
だって、私は、今までずっと、矢澤にことして、生きてきた。
真姫ちゃんのことがずっと好きな、矢澤にこ……それが私だった。
にこ「デタラメ言うんじゃないわよ!!!」
にこ「私が偽物なんだってんなら、私は誰なのよ!!えぇ!?」
私は、偽物の私に喰ってかかりたかった。
今すぐこいつを追い出して、真姫ちゃんとの2人きりの時間を過ごしたかった。
けど、今、この真姫ちゃんから離れたら、本当に真姫ちゃんはどこか遠くに行ってしまいそうで。
できなかった―――
にこ?「あなたが誰かはわからない、いや「何」かもわからない……!」
にこ?「けどね……真姫……あなたのことは言えるわよ……!」
にこ?「私にフラれた後、あんたは私を避けるようになった……」
にこ?「そして、ついに行方をくらませたのよ……」
にこ?「まさか、所有してる熱海の別荘にいるとは思わなかったわ」
そんなはずない……
だって、私は、今までずっと、矢澤にことして、生きてきた。
真姫ちゃんのことがずっと好きな、矢澤にこ……それが私だった。
にこ「デタラメ言うんじゃないわよ!!!」
にこ「私が偽物なんだってんなら、私は誰なのよ!!えぇ!?」
私は、偽物の私に喰ってかかりたかった。
今すぐこいつを追い出して、真姫ちゃんとの2人きりの時間を過ごしたかった。
けど、今、この真姫ちゃんから離れたら、本当に真姫ちゃんはどこか遠くに行ってしまいそうで。
できなかった―――
にこ?「あなたが誰かはわからない、いや「何」かもわからない……!」
にこ?「けどね……真姫……あなたのことは言えるわよ……!」
にこ?「私にフラれた後、あんたは私を避けるようになった……」
にこ?「そして、ついに行方をくらませたのよ……」
にこ?「まさか、所有してる熱海の別荘にいるとは思わなかったわ」
30: :2018/08/20(月) 22:24:49.91 ID:AK+77CvY.net
真姫「違う……!違う……!」ガクガク
にこ?「あんたは1ヵ月間行方をくらましたまま。今も、μ's全員で必死に探してたところよ」
にこ「………」
にこ?「真姫……わたしがあんたをフったから、あんたが行方をくらましたのだとしたら、謝るわ……」
真姫「違う……!にこちゃんは此処に……!」
にこ?「聞きなさい……!西木野真姫!」
にこ?「現実逃避じゃない……!そんなの……!」
にこ?「なんで私があんたをここまで探しに来たかわかる……!」
にこ?「確かに私はあんたを振った!けど……!」
にこ?「仲間だとも……思ってたのよ……」ポロポロ
にこ「………」
真姫「………」
この目の前の偽物が、何を言っているのかわからない。
真姫ちゃんは否定しているのに、こいつは何を言っているんだ―――
にこ?「あんたは1ヵ月間行方をくらましたまま。今も、μ's全員で必死に探してたところよ」
にこ「………」
にこ?「真姫……わたしがあんたをフったから、あんたが行方をくらましたのだとしたら、謝るわ……」
真姫「違う……!にこちゃんは此処に……!」
にこ?「聞きなさい……!西木野真姫!」
にこ?「現実逃避じゃない……!そんなの……!」
にこ?「なんで私があんたをここまで探しに来たかわかる……!」
にこ?「確かに私はあんたを振った!けど……!」
にこ?「仲間だとも……思ってたのよ……」ポロポロ
にこ「………」
真姫「………」
この目の前の偽物が、何を言っているのかわからない。
真姫ちゃんは否定しているのに、こいつは何を言っているんだ―――
31: :2018/08/20(月) 22:27:50.42 ID:AK+77CvY.net
にこ「真姫ちゃん……真に受けなくていいのよ……」
にこ「こいつは、わけわからないことを言ってにこと真姫ちゃんのことを引きはがそうとしているだけ……!」
真姫「………」
にこ「……真姫ちゃん……?」
真姫ちゃんは、にこの方を見ない。見てくれない。
にこ「ねぇ……!」ギュッ
手を握っても、反応はない。ただ、下を向いているだけだった。
にこ?「真姫ちゃん……」
にこ「!!?」
にこ「寄らないで!!」
にこ「私の真姫ちゃんを取らないで!!」
偽物が真姫ちゃんに近寄ろうとする、それが、とてつもなく怖くて、私は偽物から真姫ちゃんを守るように、立ちふさがった。
にこ「帰って……!もう帰って……!!」
にこ?「真姫……!目を覚ましなさい!!」
にこ「こいつは、わけわからないことを言ってにこと真姫ちゃんのことを引きはがそうとしているだけ……!」
真姫「………」
にこ「……真姫ちゃん……?」
真姫ちゃんは、にこの方を見ない。見てくれない。
にこ「ねぇ……!」ギュッ
手を握っても、反応はない。ただ、下を向いているだけだった。
にこ?「真姫ちゃん……」
にこ「!!?」
にこ「寄らないで!!」
にこ「私の真姫ちゃんを取らないで!!」
偽物が真姫ちゃんに近寄ろうとする、それが、とてつもなく怖くて、私は偽物から真姫ちゃんを守るように、立ちふさがった。
にこ「帰って……!もう帰って……!!」
にこ?「真姫……!目を覚ましなさい!!」
32: :2018/08/20(月) 22:33:27.30 ID:AK+77CvY.net
にこ?「あなたは、西木野真姫……!」
にこ?「μ'sの作曲家で、私の大切な大切な仲間の、西木野真姫……!」
にこ?「わかってるんでしょ?本当は……!」
にこ?「みんな、あんたの帰りを待っている……!」
にこ?「μ'sはこれからも大人気スクールアイドルで居続けるためにも、私のためにも、あんたにはいてもらわないと困るのよ……!」
にこ?「確かにあんたのこと、フったよ?フったけど……!」
にこ?「本当は……あんたのこと、大好きなんだから……」ポロポロ
にこ?「アイドルじゃなかったら……付き合っていたのよ……?」
私のことを無視して、私の偽物は真姫に語りかける。
その口調に、感情がこもっている。
とても「偽りの言葉」とは思えない。これがもし、「私の偽物」以外の人間の弁明なら、彼女の声に納得したかもしれない。
でも、「本物の私」は、そんな思い出はない。
真姫ちゃんをそんな辛い思いにさせるなんて、考えられない。
だから、この矢澤にこは偽物。私が本物なんだ。
今まで生きてきた18年間が、そう言っている。
そう言っているのに―――
なんで、真姫ちゃんは今―――
私の手を放した―――?
にこ?「μ'sの作曲家で、私の大切な大切な仲間の、西木野真姫……!」
にこ?「わかってるんでしょ?本当は……!」
にこ?「みんな、あんたの帰りを待っている……!」
にこ?「μ'sはこれからも大人気スクールアイドルで居続けるためにも、私のためにも、あんたにはいてもらわないと困るのよ……!」
にこ?「確かにあんたのこと、フったよ?フったけど……!」
にこ?「本当は……あんたのこと、大好きなんだから……」ポロポロ
にこ?「アイドルじゃなかったら……付き合っていたのよ……?」
私のことを無視して、私の偽物は真姫に語りかける。
その口調に、感情がこもっている。
とても「偽りの言葉」とは思えない。これがもし、「私の偽物」以外の人間の弁明なら、彼女の声に納得したかもしれない。
でも、「本物の私」は、そんな思い出はない。
真姫ちゃんをそんな辛い思いにさせるなんて、考えられない。
だから、この矢澤にこは偽物。私が本物なんだ。
今まで生きてきた18年間が、そう言っている。
そう言っているのに―――
なんで、真姫ちゃんは今―――
私の手を放した―――?
33: :2018/08/20(月) 22:36:02.63 ID:AK+77CvY.net
真姫「にこちゃん……」
にこ「……なに、真姫ちゃ……」
気づく……
その「にこちゃん」が―――
私に向けて言っている「にこちゃん」ではないことに―――
そして―――
私の目の前にいる「偽物」に向けて、そう言っていることに―――
にこ「真姫……ちゃん……?」
真姫「にこちゃん……」ポロポロ
にこ?「真姫ちゃん……」ポロポロ
真姫「ごめんなさい……」ポロポロ
にこ「……なに、真姫ちゃ……」
気づく……
その「にこちゃん」が―――
私に向けて言っている「にこちゃん」ではないことに―――
そして―――
私の目の前にいる「偽物」に向けて、そう言っていることに―――
にこ「真姫……ちゃん……?」
真姫「にこちゃん……」ポロポロ
にこ?「真姫ちゃん……」ポロポロ
真姫「ごめんなさい……」ポロポロ
34: :2018/08/20(月) 22:39:19.47 ID:AK+77CvY.net
にこ?「……うん」
真姫「うう……ごめんなさい……!ごめんなさい……!!」ポロポロ
にこ?「………ギュッ」ポロポロ
真姫「うわぁああああああ!!!」ポロポロ
偽物の私に縋りつくように、真姫は泣いた。
大泣きだった。
私の前でも何度か泣いていたのだけれど、それらの涙を全て否定するかのような、激しい激しい涙だった。
後悔と、目覚め、色々な感情が、混ざり合った涙のように感じた。
にこ「ちょ、ちょっと待ってよ……真姫ちゃん……!」ポロポロ
にこ「にこは私よ……!真姫ちゃん!!なんで、偽物に抱きついてるの……!」
にこ「どういうことよ……!!今まで一緒に過ごしてきたでしょ……?」ポロポロ
真姫「うう……ごめんなさい……!ごめんなさい……!!」ポロポロ
にこ?「………ギュッ」ポロポロ
真姫「うわぁああああああ!!!」ポロポロ
偽物の私に縋りつくように、真姫は泣いた。
大泣きだった。
私の前でも何度か泣いていたのだけれど、それらの涙を全て否定するかのような、激しい激しい涙だった。
後悔と、目覚め、色々な感情が、混ざり合った涙のように感じた。
にこ「ちょ、ちょっと待ってよ……真姫ちゃん……!」ポロポロ
にこ「にこは私よ……!真姫ちゃん!!なんで、偽物に抱きついてるの……!」
にこ「どういうことよ……!!今まで一緒に過ごしてきたでしょ……?」ポロポロ
35: :2018/08/20(月) 22:44:11.74 ID:AK+77CvY.net
にこ?「ねぇ……真姫ちゃん……私も気になる……」
にこ?「『これ』は、なんなの……?」
真姫「ううっ……グスッ……」ポロポロ
にこ「答えてよ……真姫ちゃん……!!」ポロポロ
にこ「私は矢澤にこよ……!真姫ちゃんの大好きな、にこなのっ!!」ポロポロ
にこ「でも、今この偽物が言ったこと、私はなんのことかわからない!真姫ちゃんが失踪したことも、私が真姫ちゃんのことをフったってことも……!」
にこ「何も、何も知らないっ!!!!」
にこ「どういうことなの……!!」ポロポロ
怖い……
真姫ちゃんがそこにいるのに、とてつもなく怖い……
真姫ちゃんが、偽物の私にすがりついて泣く姿を見て、「まさか」と思ってしまう―――
その不安を拭ってくれる一言と、「私のことが好き」という真姫の一言がほしい―――
でも、その「言葉」が、ものすごく遠く感じる。
とてつもなく、とてもとても、手に届かないような距離に、その言葉が置かれているのではないかと錯覚してしまう。
それは錯覚なのだろうか―――
もし、錯覚でないのだとしたら―――?
にこ?「『これ』は、なんなの……?」
真姫「ううっ……グスッ……」ポロポロ
にこ「答えてよ……真姫ちゃん……!!」ポロポロ
にこ「私は矢澤にこよ……!真姫ちゃんの大好きな、にこなのっ!!」ポロポロ
にこ「でも、今この偽物が言ったこと、私はなんのことかわからない!真姫ちゃんが失踪したことも、私が真姫ちゃんのことをフったってことも……!」
にこ「何も、何も知らないっ!!!!」
にこ「どういうことなの……!!」ポロポロ
怖い……
真姫ちゃんがそこにいるのに、とてつもなく怖い……
真姫ちゃんが、偽物の私にすがりついて泣く姿を見て、「まさか」と思ってしまう―――
その不安を拭ってくれる一言と、「私のことが好き」という真姫の一言がほしい―――
でも、その「言葉」が、ものすごく遠く感じる。
とてつもなく、とてもとても、手に届かないような距離に、その言葉が置かれているのではないかと錯覚してしまう。
それは錯覚なのだろうか―――
もし、錯覚でないのだとしたら―――?
36: :2018/08/20(月) 22:46:33.80 ID:AK+77CvY.net
急にこの白い世界に、真姫ちゃんと住むようになって―――
本当にかけがえのない時間。そして、何者にも代えられない時間―――
楽しかった、本当に真姫ちゃんが大好きだった―――
その時間は―――
もしかしたら、全て「偽り」―――?
いや、時間が偽りなのではない―――?
私が、「偽り」―――?
本当にかけがえのない時間。そして、何者にも代えられない時間―――
楽しかった、本当に真姫ちゃんが大好きだった―――
その時間は―――
もしかしたら、全て「偽り」―――?
いや、時間が偽りなのではない―――?
私が、「偽り」―――?
38: :2018/08/20(月) 22:48:28.72 ID:AK+77CvY.net
違う―――!
私には、ちゃんと記憶がある―――!
真姫ちゃんのこと以外にも――――!
私の家族との思い出―――!
μ'sとの思い出―――!
全て、鮮明に覚えている―――!
私は、生きている―――!
生きているんだ――――
にこ「そうでしょう……真姫ちゃん……」ポロポロ
真姫「………」ポロポロ
真姫「貴女は……」ポロポロ
私には、ちゃんと記憶がある―――!
真姫ちゃんのこと以外にも――――!
私の家族との思い出―――!
μ'sとの思い出―――!
全て、鮮明に覚えている―――!
私は、生きている―――!
生きているんだ――――
にこ「そうでしょう……真姫ちゃん……」ポロポロ
真姫「………」ポロポロ
真姫「貴女は……」ポロポロ
39: :2018/08/20(月) 22:50:37.39 ID:AK+77CvY.net
にこ「貴女……?」
にこ「違うでしょ……?」
にこ「真姫ちゃんは……にこのことを「貴女」なんて言わない―――!」
にこ「「にこちゃん」って、呼んでよ……!!!」ポロポロ
真姫「貴女は……」ポロポロ
真姫「私のことを「愛している」、他の事は「どうでもいい」って」
真姫「そういう、プログラムを入れ込んだ―――ー」
真姫「クローンよ―――」
にこ「違うでしょ……?」
にこ「真姫ちゃんは……にこのことを「貴女」なんて言わない―――!」
にこ「「にこちゃん」って、呼んでよ……!!!」ポロポロ
真姫「貴女は……」ポロポロ
真姫「私のことを「愛している」、他の事は「どうでもいい」って」
真姫「そういう、プログラムを入れ込んだ―――ー」
真姫「クローンよ―――」
40: :2018/08/20(月) 22:53:26.11 ID:AK+77CvY.net
真姫ちゃんは、私の方を向いてくれない。
ずっと、偽物の私の胸に、まるで怯える小動物のように―――
きっと、泣いているのだろう。
その涙を、慰めてあげることができる。それは私の役目だったはずだ。
でも―――
その真姫ちゃんは、こう言った―――
にこを……目の前にいる、突如私と真姫ちゃんの世界を壊した、偽物に言ったのではなく、私に言った―――
『クローン』だって―――
ずっと、偽物の私の胸に、まるで怯える小動物のように―――
きっと、泣いているのだろう。
その涙を、慰めてあげることができる。それは私の役目だったはずだ。
でも―――
その真姫ちゃんは、こう言った―――
にこを……目の前にいる、突如私と真姫ちゃんの世界を壊した、偽物に言ったのではなく、私に言った―――
『クローン』だって―――
41: :2018/08/20(月) 22:55:35.53 ID:AK+77CvY.net
にこ「嘘よ……!」
にこ「嘘……嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!!!!」ポロポロ
にこ「私がクローンなら……!私が今まで生きてきた記憶は一体なんなのよっ!!!」
にこ「そんなことができるわけないでしょ……!!」
にこ「作り込まれたクローンだなんて……!!」
にこ「そんな話、あるわけない……!!」
にこ「だって私は……!!」
にこ「生きている……!思い出だって、ちゃんとある……!!」
にこ「この思い出も、全部……」
にこ「偽物だって、言うの―――?」ポロポロ
にこ「嘘……嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!!!!」ポロポロ
にこ「私がクローンなら……!私が今まで生きてきた記憶は一体なんなのよっ!!!」
にこ「そんなことができるわけないでしょ……!!」
にこ「作り込まれたクローンだなんて……!!」
にこ「そんな話、あるわけない……!!」
にこ「だって私は……!!」
にこ「生きている……!思い出だって、ちゃんとある……!!」
にこ「この思い出も、全部……」
にこ「偽物だって、言うの―――?」ポロポロ
42: :2018/08/20(月) 22:57:31.02 ID:AK+77CvY.net
真姫「……全部、本当よ……」
にこ「いや……いや……」ポロポロ
にこ?「………」
にこ「嘘……」
にこ?「嘘よ……!」
「嘘よ……!」ポロポロ
にこ「………」
真姫「にこちゃん、ここで待ってて」
にこ「……うん」
「嘘よ……」ポロポロ
真姫「……ついてきて」
真姫「今から、証拠を見せるから―――」
にこ「いや……いや……」ポロポロ
にこ?「………」
にこ「嘘……」
にこ?「嘘よ……!」
「嘘よ……!」ポロポロ
にこ「………」
真姫「にこちゃん、ここで待ってて」
にこ「……うん」
「嘘よ……」ポロポロ
真姫「……ついてきて」
真姫「今から、証拠を見せるから―――」
43: :2018/08/20(月) 23:01:09.69 ID:AK+77CvY.net
――――――――――――――――
真姫ちゃんに手を引かれて、私は外の世界へ連れていかれる―――
その手は、温かくはなかった―――
冷たい、冷たい―――
まるで、違う世界の人間が、真姫ちゃんに化けているんじゃないかってくらい、冷たい―――
真姫ちゃんは、一度も振り返らない―――
私に、声をかけようともしない―――
外の世界は、普通の家の中そのもの―――
白くもない、どこか生活感がある―――
厨房がある―――
ここで、真姫ちゃんは、料理を作っていたのだろうか―――
真姫ちゃんに手を引かれて、私は外の世界へ連れていかれる―――
その手は、温かくはなかった―――
冷たい、冷たい―――
まるで、違う世界の人間が、真姫ちゃんに化けているんじゃないかってくらい、冷たい―――
真姫ちゃんは、一度も振り返らない―――
私に、声をかけようともしない―――
外の世界は、普通の家の中そのもの―――
白くもない、どこか生活感がある―――
厨房がある―――
ここで、真姫ちゃんは、料理を作っていたのだろうか―――
44: :2018/08/20(月) 23:05:23.71 ID:AK+77CvY.net
階段があった―――
昇る階段ではなく、降りる階段。つまり、地下なのか、それとも、ここが1階ではないのか―――
その階段を真姫ちゃんと一緒に降りる―――
「一緒に」降りているはずなんだけど、その心地よさは一切感じない―――
逆に、「恐ろしさ」まで感じる―――
螺旋階段ではないのだが、階段が長く感じる―――
一歩一歩が、重たい―――
本当に長い時間、この階段を降りているような気がする―――
もしかしたら、そのほうが幸せなのかもしれない―――
どんなに冷たくなろうとも、どんなに温もりを貰えないとわかっていても―――
好きな人と一緒にいることができるのだから―――
でも、終わりは来てしまう―――
私と真姫ちゃんは、階段を降り、ある一室に辿り着いた―――
昇る階段ではなく、降りる階段。つまり、地下なのか、それとも、ここが1階ではないのか―――
その階段を真姫ちゃんと一緒に降りる―――
「一緒に」降りているはずなんだけど、その心地よさは一切感じない―――
逆に、「恐ろしさ」まで感じる―――
螺旋階段ではないのだが、階段が長く感じる―――
一歩一歩が、重たい―――
本当に長い時間、この階段を降りているような気がする―――
もしかしたら、そのほうが幸せなのかもしれない―――
どんなに冷たくなろうとも、どんなに温もりを貰えないとわかっていても―――
好きな人と一緒にいることができるのだから―――
でも、終わりは来てしまう―――
私と真姫ちゃんは、階段を降り、ある一室に辿り着いた―――
45: :2018/08/20(月) 23:07:00.33 ID:AK+77CvY.net
真姫「ドア……見えないでしょ……?」
「………」
真姫「そういう風にプログラムしたの」
真姫「万が一、プログラムが暴走して、逃げ出したりしないように」
真姫「だから、あの部屋には、ドアがないように……」
「やめて……」
「聞きたくない」
真姫「………」
真姫「………」
真姫「ついたわ」
「………」
真姫「そういう風にプログラムしたの」
真姫「万が一、プログラムが暴走して、逃げ出したりしないように」
真姫「だから、あの部屋には、ドアがないように……」
「やめて……」
「聞きたくない」
真姫「………」
真姫「………」
真姫「ついたわ」
46: :2018/08/20(月) 23:09:38.84 ID:AK+77CvY.net
「ここは………」
まるで、研究室―――
見たことのない機械がたくさんある―――
真姫「貴女は、ここで生まれた―――」
真姫「作り出したのは、私」
真姫「現実ではこんなことは不可能だけど、私はわけあって、貴女を作り出すことに成功した」
「……本当、なの……?」
真姫「……ええ」
真姫「本当に、ごめんなさい……」
「ねえ、真姫ちゃん」
真姫「………」
「なんで……」
「なんで私には……」
「感情があるのよ―――」
まるで、研究室―――
見たことのない機械がたくさんある―――
真姫「貴女は、ここで生まれた―――」
真姫「作り出したのは、私」
真姫「現実ではこんなことは不可能だけど、私はわけあって、貴女を作り出すことに成功した」
「……本当、なの……?」
真姫「……ええ」
真姫「本当に、ごめんなさい……」
「ねえ、真姫ちゃん」
真姫「………」
「なんで……」
「なんで私には……」
「感情があるのよ―――」
48: :2018/08/20(月) 23:13:18.73 ID:AK+77CvY.net
真姫「………」
「あなたと過ごした時間、本当に楽しかった、生きがいだと思った、ずっと、こうしていたいと思ってた」
「だけど、その時間を失ってしまったら」
「やっぱり、悲しいのよ」
「ねえ……!」
「なんで、なんで……!」
「私に感情を与えたのよ……!」ポロポロ
「辛いよ……!自分が「偽物」だって言われて……!大好きな真姫からも……「偽物」だって言われて―――!」ポロポロ
「あんたのこと、本当に、好きなのよ―――!」
「それが、いかに作られた偽りの感情だとしても―――」
「此処にいる「私」にとっては、本当の感情よ―――!」ポロポロ
「私は、今でも「偽物」である実感が、全くない―――ー!!」ポロポロ
「あんたが、私に感情と記憶を植え付けたから―――ー!!」ポロポロ
真姫「………」
「あなたと過ごした時間、本当に楽しかった、生きがいだと思った、ずっと、こうしていたいと思ってた」
「だけど、その時間を失ってしまったら」
「やっぱり、悲しいのよ」
「ねえ……!」
「なんで、なんで……!」
「私に感情を与えたのよ……!」ポロポロ
「辛いよ……!自分が「偽物」だって言われて……!大好きな真姫からも……「偽物」だって言われて―――!」ポロポロ
「あんたのこと、本当に、好きなのよ―――!」
「それが、いかに作られた偽りの感情だとしても―――」
「此処にいる「私」にとっては、本当の感情よ―――!」ポロポロ
「私は、今でも「偽物」である実感が、全くない―――ー!!」ポロポロ
「あんたが、私に感情と記憶を植え付けたから―――ー!!」ポロポロ
真姫「………」
49: :2018/08/20(月) 23:15:48.32 ID:AK+77CvY.net
「ねえ―――」
真姫「………」
「……そのスイッチ、なに―――?」
真姫「………」
「あんたが手に持っている、そのスイッチは何って言ってんのー――ー!」
真姫「………」
「………」
「もし……そのスイッチが、私を動かす原動力なのだとしたら―――」
「そのスイッチを押したら、私はどうなるの―――?」
真姫「………」
真姫「………」
「……そのスイッチ、なに―――?」
真姫「………」
「あんたが手に持っている、そのスイッチは何って言ってんのー――ー!」
真姫「………」
「………」
「もし……そのスイッチが、私を動かす原動力なのだとしたら―――」
「そのスイッチを押したら、私はどうなるの―――?」
真姫「………」
50: :2018/08/20(月) 23:18:52.51 ID:AK+77CvY.net
「……言わないわけね」
真姫「………」
きっと、私が言ったことは正解なんだろう―――
真姫ちゃんが目を逸らしているから、きっと後ろめたいんだ―――
怖くないって言ったら、嘘になる。すごく怖い―――
もし、スイッチを押されて、私が「動作停止」したら―――
感情を持っている私は一体どうなる―――?
そんなの、痛みの感じない「死」のようなものだろう―――
そして、真姫ちゃんは二度と私を「起動」してくれない―――
今日の真姫ちゃんを見て、それは明確だった―――
真姫「………」
きっと、私が言ったことは正解なんだろう―――
真姫ちゃんが目を逸らしているから、きっと後ろめたいんだ―――
怖くないって言ったら、嘘になる。すごく怖い―――
もし、スイッチを押されて、私が「動作停止」したら―――
感情を持っている私は一体どうなる―――?
そんなの、痛みの感じない「死」のようなものだろう―――
そして、真姫ちゃんは二度と私を「起動」してくれない―――
今日の真姫ちゃんを見て、それは明確だった―――
51: :2018/08/20(月) 23:24:51.84 ID:AK+77CvY.net
「これだけは覚えておきなさい」
真紀「………」
「私がここで作られて、あの白い世界で生まれたのだとしても―――」
「私の記憶も、私のあんたに対するこの想いも、「偽り」なのだとしても―――」
「あの白い部屋であんたを愛したのは、間違いなく「私」と「真姫ちゃん」の時間―――」
「私にとっても、あんたにとっても―――」
「「偽りじゃない」か―――」
ポチッ
――――――――――――――――
真紀「………」
「私がここで作られて、あの白い世界で生まれたのだとしても―――」
「私の記憶も、私のあんたに対するこの想いも、「偽り」なのだとしても―――」
「あの白い部屋であんたを愛したのは、間違いなく「私」と「真姫ちゃん」の時間―――」
「私にとっても、あんたにとっても―――」
「「偽りじゃない」か―――」
ポチッ
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52: :2018/08/20(月) 23:25:38.10 ID:AK+77CvY.net
END
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53: :2018/08/20(月) 23:33:56.93 ID:KT3RF/Cf.net
鳥肌立った 乙
54: :2018/08/20(月) 23:50:39.45 ID:Ze9b4KKI.net
後味含めて素晴らしい