2007年10月05日

「令」の書き方・「就」の書き方

みなさまから温かいコメントをいただき、ほんとうに励みに思っております。ありがとうございます。

お返事申し上げられず、本当に申し訳ありませんが、ご質問いただいたことについて、記事にてお話できればと思っております。

「令」の書き方について、「てん」+「マ」と教えることになっているけれども…というご質問がありましたので、漢字の書き方についてお話します。

ご存じのように漢字にはいろんな書体がありますが、実生活では、どう書こうが、要は、読む人にちゃんと伝わればいいわけで、まちがっていなければそれでいいのです。

が、教育現場では、そうも言ってはいられません。

こういう字体で教えましょう、というお手本がなければ、教師によって教える字体がばらばらになってしまいます。

そこで、学習指導要領の漢字配当表の書体、いわゆる「教科書体」が、指導の基準となっているわけです。

指導要領には、この字のこの画ははねるとか、ここの点の向きはこちらとか、そんな指示は一切ありません。

学習指導要領17ページに「漢字の指導においては、学年別漢字配当表に示す漢字の字体を標準とすること。」と書いてあるのみです。

漢字テキストなどに書かれている、「とめ」「はね」などのアドバイスはすべて後付けで、お手本の字体を分析した人が、説明しているにすぎません。

だから、実際のところ、入試でどこまで厳しくチェックされるかは、その学校の先生次第ということになります。

「はね」や「とめ」などは、誰が見てもわかりやすいところなので、これは当然チェックされるものと思われます。私たちの行うテストでも、そこは採点基準になっています。

また、「令」なども文科省が「てん」+「マ」の形で学びなさいと指示している以上は、明朝体の「令」にしたものは×にせざるをえません。

一般社会では明朝体がスタンダードで、教科書体など、ワープロソフトにも入っていないのにと思ってしまいますが、仕方ありません。(国語という教科の特性上、私は、教材を作るときには教科書体を使用していますが、どのフォントで作るよりも、品よく、優しい感じに仕上がるようで、個人的には大好きです。教科書体を無料でダウンロードできるサイトなどもあるようです。)

さて、困るのが、人によって見え方に微妙な差がある部分です。

教科書体が手書き風の書体であるがために、「筆の入り」みたいな部分が、曲がって角になっているように見えてしまうところがあります。

典型的なのが「就」です。

この右側は、「いぬのまげあし」「だいのまげあし」といわれるもので、小山鉄郎編『白川静さんに学ぶ漢字は楽しい』(共同通信社)によれば、死んでいる犬の形を表すそうです。

となると、成り立ちからいって、右側の3画めは、「大」の字を書くのと同じように筆を入れるのが正しい書き方ということになります。

でも、教科書体の書体を見ると、筆の入りがくっきりしているため、「風」の2画めのように横に伸ばしてから角をつけて下に筆を進めるように書く人がほとんどです。

そのように指導する先生もたくさんいます。

入試で採点を担当する先生も、角をつけて書くのが正しいと考えている可能性もあります。あるいは、「犬」の字の変形ととらえ、角のあるものをよしとしないかもしれません。
実際のところはどちらでも○になっているものと思われますが、こればかりは、先生個人の考え方によるので、なんともいえません。

仕方ないので、私は、この字を指導するときには、どちらにも見えるように、ほんの1ミリくらい、微妙に横ななめ下にひっぱるような書き方をするといいよと言っています。

低学年のお子さんを悩ますのが「さんずい」の三画めです。

「レ」のように書きなさいと指導されたり、反対にそう書くと×にする先生もいたり…。

筆の入りがくっきり表れているだけのことなのだから、こんなことに○だの×だのと言っていること自体が、ナンセンスです。

要は、見苦しくなく、きちんと書けていればいいのです。

それから、「比」の字。

これは、明朝体の書体でも、左側を3画に書くように見えてしまいますが、2画で書くのが正しく、総画数は4画です。

そのほか、「天」の横画は下を短くしなくては×なのかとか、いろいろ質問を受けます。(「天」はともかく、「末」「未」は、横画の長さの差がいのちですから、長さに対する意識は持っていた方がいいです。)

どこまで許容されるかは、採点者次第です。(業者テストでは基準がちゃんとあります。)

とするならば、どんなにうるさい人が見ても文句をつけられないように、お手本の通りに書けるようにしておけばいい、ということになります。

新しい字を覚えるのだから、ぞんざいに書かず、一画一画、きちんと正確にきれいに書こうという心がけをもって臨むことが大事でしょう。

そうすれば、自然に、字そのものが上手になるはずです。

毎回4年生、3クラス(約80人)分の漢字を、宿題、テストの両方でチェックしています。

直線であるべきところがくにゃっと曲がっている字、角をつけるべきところが丸くなっている字、一画一画ごとに鉛筆を紙から離さずに書くために行書のようにつながってしまっている字。

これらは、採点者に悪い印象を与えます。

多少バランスは悪くても、以上のような「キメどころ」をしっかり守れていれば、心証はぐっとよくなります。

「幸」の横画のどこを一番長く書くのか、というようなことも、×にされるから、点数が…ということのために気をつけるのではなく、「かっこいい字を書く」ために意識できれば、それがいちばんいいと思います。

むしろ、漢字で大事なのは「意味」がわかっているかどうかということ。

書き方の細かいところに神経質になって、お子さんを漢字嫌いにしてしまわないように、気をつけてもらえればと思います。



この記事へのコメント
 先生のファンと言う方に教えていただき読ませていただいております。本が大好きな娘が6年生になる頃から、物語文でつまずくようになり、「お話読むのは楽しくて好きなのに、どうして駄目なのかな…」と本人も気にするようになったので、先生のブログをプリントアウトして読み聞かせていました。先日ご本があることを知り、さっそく拝読いたしました。最後のほうは胸がぎゅーっと痛くなり、涙が出てしまいました。夫も「ドキドキする。」と言いながら読んでおりました。
 受験まであと少し、後悔のないよう、応援していこうと思います。(すぐ後に4年生の次女が待ったなしで控えているのですが、こちらは癒し系ですので、やはり先生のブログを参考に心を壊さない受験を目指します。)
Posted by 本の虫っ子の母 at 2007年10月11日 19:04
ありがとうございました。
悩んでいたことが解決しました。
これからは、なるべくかっこいい字を目指して書こうと思います。
Posted by S.F at 2007年11月27日 21:30
S.F君へ

コメントありがとう!
もう6年生も目の前ですね。

漢字は、はねるところや、角をつけるところなどをはっきりさせるだけで、だいぶかっこよくなります。
あとは、くねくね書かないで、まっすぐ書くべきところはしっかり直線にすれば、印象のいい字になります。
がんばってね。
応援しています!
Posted by ダメ母 at 2007年12月01日 22:59
昨年から先生のHPをのぞいていますが、10月からの更新がなくどうしたのだろうと心配しています。お忙しいのでしょうけれど、閉鎖でなければ今年の受験傾向など教えて頂けたら嬉しいです。
Posted by 親子の夢 桜蔭 at 2008年03月11日 07:58