2015年12月16日

国際課税に関する平成28年度税制改正大綱について

 本日、与党の平成28年度税制改正大綱が公表されました。ここで国際課税に関する主な改正事項についてとりあげます。今回の改正では、大きな改正はありませんが、特に移転価格税制に係る文書化については、企業グループとしての税務会計情報等を纏めるシステム作りが必要になる場合があると思われます。

1.台湾との租税取決めに基づく国内法の整備
 相互主義を前提として、他の国との租税条約と同様の措置、例えば投資所得の軽減・非課税、資産の譲渡所得の非課税、短期滞在者の非課税等が台湾居住者の日本における所得に対して認められるようになります。
 従いまして、日本の居住者や日本の法人が台湾において稼得される所得についても同様の措置が認められますし、移転価格課税における対応的調整なども可能となります。

2.移転価格税制に係る文書化
 BEPSプロジェクトにおいて勧告されていた内容が国内法として規定されます。例えば、平成28年4月1日以後に開始する会計年度より、多国籍企業グループの親会社等は、会計年度終了の日の翌日から1年を経過する日までに、国ごとの収入金額、税引前当期利益の額、納付税額他の情報をe-Taxなどの方法により、税務署長に提出することになりました。他に事業概況報告事項や独立企業間価格を算定するために必要な書類などの作成を義務付けられるようになります。

3.外国子会社合算税制
 合算課税に伴う外国税額控除について、特定外国子会社等が子会社(持株割合25 %以上)から受ける配当等のうち、外国法人税の課税標準に含まれないものは、合算割合に係る特定外国子会社等の所得から除外されます。これは、特定外国子会社等の平成 28年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

4.国際課税原則の帰属主義への変更の円滑な実施に伴う措置
 内国法人の外税額控除に係る国外所得金額の計算について、国外事業所等帰属所得の金額が零を下回る場合には、その下回る金額である旨及び国外所得金額が零を下回る場合には零である旨が明確化されるなど、平成28年4月1日施行に向けて所要の措置が講じられます。

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2015年04月11日

国外転出時課税制度が7月から施行されます

 国外転出時課税制度が平成27年7月1日から施行されます。この制度は、居住者が国外に転出する時等において、1億円以上の有価証券や未決済の信用取引などの対象資産を所有している場合、対象資産の譲渡又は決済があったものとみなし、対象資産の含み益に対して所得税が課税される制度です。

 国外転出時課税制度が適用されるのは、国外転出時において、下記のいずれにも該当する場合です。
(1)所有している対象資産の価額の合計が1億円以上であること。
(2)原則として国外転出をする日前10年以内において国内に5年を超えて住所又は居所を有していること。

 ここで対象資産とは、有価証券(株式や投資信託など)、匿名組合契約の出資の持分、未決済の信用取引・発行日取引及び未決済のデリバティブ取引(先物取引、オプション取引など)をいいます。

 含み益等の計算は、国外転出の前に確定申告書の提出をする場合は、国外転出予定日から起算して3か月前の日の金額により、国外転出後に確定申告書の提出をする場合は、国外転出の時の金額により行います。

 本制度における確定申告は、下記のように行います。
(1)国外転出の時までに納税管理人の届出をした場合は、国外転出をした年分の確定申告期限までに、その年の各種所得に国外転出時課税の適用による所得を含めて確定申告及び納税をします。
(2)納税管理人の届出をしないで国外転出をする場合は、国外転出の時までに、その年の1月1日から国外転出の時までにおける各種所得について、国外転出時課税の適用による所得を含めて準確定申告及び納税をします。

 この制度には、国外転出の日から5年以内に帰国などした場合や納税猶予の特例の適用を受ける場合など、減額措置等が講じられていますが、納税猶予の特例の適用を受ける場合は、国外転出の時までに納税管理人の届出書を所轄税務署に提出することや担保を提供するなどの手続きが必要となります。

 なお、国外転出時課税制度には、以下の場合による課税も含められていますので注意が必要です。
(1)対象者が国外に居住する親族等(非居住者)へ対象資産の一部又は全部を贈与する時
(2)対象者が亡くなり、相続又は遺贈により国外に居住する相続人又は受遺者が対象資産の一部又は全部を取得する時 

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2014年12月31日

国際課税の平成27年度税制改正大綱について

 平成26年12月30日付で与党により平成27年度税制改正大綱が公表されました。ここでは、国際課税に関する主な改正事項について、その概要を下記します。

1.外国子会社配当益金不算入制度の見直し

(1)外国子会社の現地での所得金額計算上、支払配当について損金算入となっている場合には、益金不算入  制度の対象外となります。

(2)上記の場合、配当等に課された源泉税については、外国税額控除の対象となります。

(3)上記の改正は、平成28 年4月1日以後に開始する事業年度において、外国子会社から受ける配当等の額  について適用されます。但し、平成28 年4月1日から平成30 年3月31 日までの間に開始する各事業年度に  おいて、外国子会社から受ける配当等の額(平成28 年4月1日において有する当該外国子会社の株式等に  限定)については、従前通りの取扱いとします。

2.外国子会社合算税制等の見直し

(1)著しく低い租税負担割合(トリガ−税率)が現行の20%以下から20%未満に変更されます。

(2)適用除外基準の見直し
 〇業基準の判定における被統括会社の範囲に、特定外国子会社等が発行済株式等の50%以上を有する  等の要件を満たす内国法人が含まれます。
 ∋業基準の判定における統括会社の要件のうち、二以上の被統括会社に対して統括業務を行っていること  とする要件について、二以上の外国法人である被統括会社を含む複数の被統括会社に対して、統括業務を  行っていることに改められます。
 ,亡悗靴董∋業基準の判定における事業持株会社の要件には、全ての被統括会社の保有株式の簿価に  占める外国法人である被統括会社の簿価の割合、又は全ての被統括会社に対する統括業務の対価の額に  占める外国法人である被統括会社に対する統括業務の対価の割合が50%を超えていることが加えられま   す。
 と鶸慙⊆坿霆爐糧縦蠑紂卸売業を主たる事業として営む統括会社が、内国法人である被統括会社との間   で行う取引については、関連者取引に該当します。

(3)益金不算入制度の対象外となる受取配当(損金算入配当等)との関係
 ‥該特定外国子会社等の合算対象とされる金額の計算上、控除されません。
 特定外国子会社等が他の特定外国子会社等から受ける損金算入配当等の額のうち、当該他の特定外国   子会社等の合算対象とされた金額から充てられた部分の額は、当該特定外国子会社等の合算対象とされる  金額の計算上控除されます。
 F盥駛/佑特定外国子会社等から受ける損金算入配当等の額のうち、当該内国法人の配当等を受ける日  を含む事業年度及び当該事業年度開始の日前10年以内に開始した各事業年度において、当該特定外国子  会社等につき合算対象とされた金額の合計額の範囲内で、当該内国法人の益金の額に算入されません。

(4)上記(1)(2)は、特定外国子会社等の平成27 年4月1日以後に開始する事業年度から、上記(3)´△蓮特定 外国子会社等の平成28 年4月1日以後に開始する事業年度に係る合算対象金額から適用されます。 
  なお、上記(3)の適用は外国子会社配当益金不算入制度の改正時期と同じです。

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2014年01月20日

国税庁「2013年 相互協議レポ−ト」について

 本日20日、国税庁より「2013年 相互協議レポ−ト」(英文)が公表されましたので、主なポイントについて下記します。

1.相互協議の受付件数
 2012事務年度(2012年7月から2013年6月)において、国税庁が受け付けた相互協議の件数は167件でした。うち、131件は二国間の移転価格事前確認によるもので、相互協議の約80%を占めています。

2.相互協議の合意件数
 2012年事務年度において両国間で相互協議が妥結された件数は170件で、過去最高の件数でした。国別では、アメリカ合衆国が最も多く、以下オ−ストラリア、イギリス、韓国と続いています。その結果、交渉中の残高件数が減少しています。

3.相互協議の合意までの期間
 2012年事務年度において、相互協議が合意されるまでの平均期間は29.3か月と増加しています。これは、複雑な案件があったためとしています。また、二国間の移転価格事前確認が合意されるまでの平均期間は29.6か月です。

4.事前確認で使用される移転価格算定手法
 二国間の事前確認において使用されている移転価格算定手法では、最も多いのがTNMMで全体の7割近くを占めています。以下、その他の方法、利益分割法が続いています。この三つの方法で全体の9割を超えています。その他の方法の内容は触れられていませんが、ハイブリッドの方法などがあるのではないかと推測しています。

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2013年12月13日

国際課税の平成26年度税制改正大綱について

 国際課税に係る平成26年度税制改正大綱が24日に閣議決定されましたので、主要な改正事項を下記します。

 今回の国際課税に関する改正事項は、恒久的施設に関する所得の帰属がメインになっています。これは外国法人の国内の恒久的施設(PE)に関する課税の範囲を、従前の総合主義からOECDモデル租税条約の帰属主義へ転換するものです。もっとも、日本が締結している租税条約では帰属主義が主流になっていましたが。

 この改正によって影響を受けるのは外国法人が主になりますが、日本企業にとっても問題となる事項がありますので、ここでは主に日本企業に関係する改正事項をとりあげます。

1.外国税額控除について
(1)国外所得金額の範囲について
 従前では国外所得は国内源泉所得以外の所得と定義されていましたが、今回の改正により国外所得金額を積極的に定義することになります。国外のPEに帰せられる所得、国外資産の運用保有所得、国外資産の譲渡所得、外国法人の発行する債券の利子及び外国法人から受ける配当等などです。

(2)国外所得金額の計算について
 国外PEに帰属する所得の計算については、独立企業間価格による内部取引を勘案する等、原則として外国法人のPEに帰属する所得の計算に準じて行います。

(3)外国税額控除の対象とならない外国法人税
 国外PEから本店等に対する内部支払利子等のみなし支払について、国外PEの所在地国において源泉課税された場合、その源泉税は外国税額控除の対象となりません。

(4)文書化
 外国税額控除の適用を受ける場合には、国外PEに帰属する所得の明細や本店等との内部取引等に関する文書を作成し、税務当局からの求めに応じて提出または呈示する必要があります。

2.国外PEの範囲
 国外の事務所や支店等がPEに該当するかどうかについては、その所在地国等が租税条約締結国等である場合には租税条約、そうでない場合には日本の国内法によって判断します。特に後者については、現地の税法と異なる場合には注意が必要です。

3.移転価格税制
 移転価格税制の対象となる非関連者を通じた取引の範囲に役務提供取引等が加えられます。

上記1.2.の改正は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税から適用されます。

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2013年01月25日

平成25年度税制改正大綱(国際課税関係)について

 国際課税に係る平成25年度税制改正大綱が29日に閣議決定されましたので、主要な改正事項を下記します。今回の国際課税に関する改正事項は、過去に新制度の導入が相次いだためか、小幅になっている印象があります。

1.外国子会社合算税制
 無税国に所在する特定外国子会社等に係る外国子会社合算税制の合算所得につき、本店所在地国以外の国で課税される場合には、当該合算所得は、外国税額控除の適用上、非課税国外所得に該当しないこととなります。

2.移転価格税制
 独立企業間価格を算定する際の利益水準指標に、営業費用売上総利益率(いわゆるベリー比)が加えられます。この指標は主に販売会社を検証対象とする場合に使用されるものです。 

3.上場株式等の配当等に係る租税条約の適用手続
 上場株式等の配当等に係る源泉徴収義務等の特例の適用がある場合、租税条約の適用手続について、支払の取扱者(銀行、証券会社等)を通じて支払を受ける配当等につき、条約の適用を受けようとする非居住者等は、非居住者等に関する事項を記載した条約届出書(以下「特例届出書」という。)を提出することができます。特例届出書は、配当等に関する事項の記載を要しないこととし、一定の場合には、3年ごとに提出することとなります。

 この改正は、平成26 年1月1日以後に支払を受ける上場株式等の配当等について適用されます。

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日米租税条約の改正議定書が署名されました

 本日25日(金)に財務省より日米租税条約の改正議定書が署名された旨が公表されました。今回の議定書は、2004年発効の現行租税条約の一部が改正されたものです。

 改正事項のポイントは下記の通りです。

1.投資所得の税率改訂
(1)配当所得の免税範囲の拡大
 現行は、持株割合50%超かつ保有期間12ヶ月以上の配当に関して免税となっていますが、改正後は、持株割合50%以上かつ保有期間6ヶ月以上の配当が免税となり、免税範囲が拡大されます。

(2)利子所得の免税
 現行は、金融機関等の受取利子(免税)を除いて源泉税率が10%となっていますが、改正後は原則として免税となります。 

2.仲裁条項の導入
 相互協議手続に関して、両国の税務当局間の協議により2年以内に事案が解決されない場合には、納税者からの要請に基づき、第三者から構成される仲裁委員会の決定により事案を解決することになります。
 特に移転価格税制などの二国間解決に資することが期待されます。

3.今後の手続き 
 改正議定書は発効日(批准書の交換日)より、以下のものに適用されることになります。
(1)源泉徴収される租税に関しては、発効日の3ヶ月後の日の属する月の初日以後に支払われる額
(2)その他の租税に関しては、効力を生ずる年の翌年の1月1日以後に開始する各課税年度

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2012年12月28日

非居住者等への支払に係る源泉徴収について:来年より復興特別所得税が適用されます

 復興特別所得税の創設に伴い、平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間に生ずる所得について源泉所得税を徴収する際、復興特別所得税を併せて徴収し、源泉所得税の法定納期限までに、その復興特別所得税を、源泉所得税と併せて国に納付することとなります。

 この取扱いは非居住者や外国法人への支払に係る源泉所得税についても同様ですので、来年の1月1日より源泉徴収する場合は税率を間違えないよう注意が必要です。

 ただし、支払を受ける非居住者等の居住地国と我が国との間に租税条約が締結されている場合には、その条約で定められている税率(限度税率)に軽減することになりますので、租税条約の適用により、限度税率が国内法に規定する税率以下となるものについては、復興特別所得税を併せて源泉徴収する必要はありません。

 なお、上場株式の配当(税率7.147%)など、国内法の税率の方が租税条約上の限度税率よりも低いため、国内法の税率を適用するものについては、復興特別所得税を併せて源泉徴収する必要があります。

 よって、非居住者や外国法人に支払う場合の源泉徴収は以下のようになります。

(1)非居住者等の居住地国が租税条約締結国でない場合
 国内法が適用されますので、復興特別所得税と併せて所得税の通常税率の102.1%の税率で源泉徴収します。
[例]非上場株式の配当、貸付金利子、使用料等・・・源泉税率20.42%(20%×102.1)

(2)非居住者等の居住地国が租税条約締結国である場合
a)租税条約上の税率が国内法より低い場合、租税条約上の税率で源泉徴収します。復興特別所得税は含みません。
b)租税条約上の税率が国内法より高い場合、上記(1)の国内法上の税率で源泉徴収します。あくまでも、どちらか有利な税率で源泉徴収することに留意する必要があります。

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2012年11月25日

国税庁「租税条約に基づく情報交換事績について」

 22日に国税庁より「平成23年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」が公表されました。企業としても、課税庁側が海外取引についてどのような情報収集の仕組みを用いているかを知ることは重要です。いままで、税務調査で指摘されなかった事由についも、今後は情報交換により取引が把握され、否認につながる事も生じる可能性がありますので、海外取引の適正化に注意が必要です。

1.情報交換の実績について
 国税庁から外国税務当局への要請件数は1,006件となり、前年度(646件)から大幅に増加しました。地域別には、アジア・大洋州の国・地域向けの要請が668件となり、全体の約7割を占めています。
 逆に外国税務当局から国税庁への要請件数は299件となり、前年度(84件)の3倍超に増加しています。

2.情報交換の種類
(1)要請に基づく情報交換
 これは条約等締結相手国・地域の税務当局に必要な情報の収集・提供を要請するものです。

(2)自発的情報交換
 これは自国の納税者に対する調査等の際に入手した情報で、外国税務当局にとって有益と認められる情報を自発的に提供するものです。当年度では国税庁より354件の税務情報が提供されています。

(3)自動的情報交換
 これは法定調書等から把握した非居住者への支払等に関する情報を、支払国の税務当局から受領国の税務当局へ送付するものです。当年度では国税庁より約37万5千件の情報が提供されています。 

3.情報交換実施例
(1)タックスヘイブン国に設立された海外子会社の実態が不明であったので、タックスヘイブン国に対し当該海外子会社に関する登記情報、財務諸表等に関する情報提供を要請し、回答を受領した。

(2)海外法人との輸出入取引に係る債務残高が異常に高額であり、不審であったことから、海外法人における経理処理が分かる帳簿の写し、当該取引に係る契約書、インボイス等の証拠書類の写しについて情報提供を要請し、回答を受領した。

(3)国内法人が、海外取引先に対する支払の一部を、日本国内の銀行の海外取引先代表者名義の口座に送金しており、海外取引先における申告漏れが想定されたことから、この事実を取引先の所在地国・地域の外国税務当局に自発的に情報提供した。

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2012年10月15日

国税庁「平成23事務年度の相互協議の状況について」

 先日11日に国税庁より「平成23事務年度の相互協議の状況について」が公表されましたので、簡略ながらそのポイントを下記します。

(1)相互協議事案の発生件数について
 平成23事務年度(7月1日から翌年6月30日)は、143件の相互協議事案が発生し、うち移転価格の事前確認に係るものは112件と、全体の発生件数の約80%を占めています

(2)処理事案の地域別内訳
 処理事案の地域別内訳は、件数の多い順に、米国、豪州、英国となっています。英国が三番目というのは意外な感じがします。

(3)一件当たりの処理期間
 事案の処理に係る期間は、平均すると1件当たり25.1か月となっています。そのうち、事前確認に係る相互協議事案の処理に係る期間は、同様に1件当たり23.6か月となっています。事前確認の処理期間が前年より短縮されており、2年を切っているというのは実務上、望ましい限りです。

(4)対象取引別内訳と移転価格算定方法別内訳
 対象取引の内訳としては、棚卸資産取引が45.6%を占め一番多い取引となっており、次に役務提供取引29.6%、無形資産取引が24.8%となっています。
 また、移転価格算定方法の内訳としては、取引単位営業利益法が半数を超えており、多国間の事前確認における営業利益指標の有用性の高さを伺わせます。次が利益分割法、その他の方法が続いています。

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