税理士法人名南経営 国際部ブログ

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2018年08月

 「通常、いわゆる183日ルールをクリアしていれば、ベトナムにおいて個人
所得税の納税義務はありません。ベトナムにおいて、この183日ルールの免税
適用を受けるには、ベトナム税務当局に書面申請してその適用を認めてもらう
ことが必要となります。しかし、代表者がこの免税適用を受けることは、実務
上、困難となっています。」

 この183日ルールの免税適用については、依然として、実務上、困難な状況
が続いていますが、弊社のお客様で書面申請をされたお客様のうち、口頭にて
回答があったお客様があります。
口頭での回答の後、そのお客様に対して税務調査がありましたが、その口頭で
の回答をもって、出張者(現地代表者)への個人所得税の課税はありませんで
した。

 ベトナムは、依然として不透明な部分がある国ですが、以前に比べ、より合
理的な取扱いが増えているような気がします。現在、多くの方がベトナムへご
出張されているかと思いますが、今後はベトナムでの課税リスク軽減のため、
183日ルールの免税適用申請をしてみることも考慮すべきではないでしょうか。

 海外子会社を設立する際、本来は海外子会社が負担すべき費用を日本親会社
が負担している場合があります。日本親会社としては、負担したつもりはなく
ても、税務調査において「海外子会社への支援」と認定された場合は、国外関
連者への寄附金として損金不算入となるので注意が必要です。

 では、海外子会社を設立する際の費用は、どこまでが日本親会社負担で、ど
こからが海外子会社負担なのでしょうか。もちろんケースバイケースですが、
一般的には下記のように考えられます。

(1)設立の意思決定までに要する費用
 市場調査費用、法律・規制・設立方法・税制等の調査費用、事業計画の策定
費用など

 日本親会社が海外子会社を設立するという意思決定までに要するこれらの費
用は、基本的に日本親会社自らの事業計画および事業方針の決定の一環として
行われるものであるため、日本親会社が負担すべきものと考えられます。

(2)設立までに要する費用
 法人設立申請費用、税務当局への申請費用、就労ビザの取得費用など

 海外子会社設立の意思決定後に要する設立費用は、海外子会社の事業自体に
直接関連する費用であるため、基本的には海外子会社が負担すべきものと考え
られます。ただし、海外子会社の設立が日本親会社の事業戦略の一環として、
日本親会社が負担することに合理的な理由がある場合は、日本親会社が負担す
ることも考えられます。

(3)事業開始までに要する費用
 従業員の募集費用、営業許可の取得費用など

 (2)の場合と同様に、基本的には海外子会社が負担すべきものと考えられ、
日本親会社が負担することに合理的な理由がある場合は、日本親会社が負担す
ることも考えられます。

 なお、コンサルティング会社に対して設立相談、設立手続などを依頼する場
合には、そのコンサルティング料金のうちのどこまでを日本親会社が負担すべ
きなのかという検討が必要となります。

 また、コンサルティング料金の支払いを着手金、中間金、清算金と複数回に
分けて支払う場合には、日本親会社が負担する費用の損金算入時期にも注意が
必要となります。

 中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業の平成30年予算案額が昨年末
に発表されました。内容を確認すると8月に発表された概算要求から海外EC活
用型テストマーケティング事業、事業再編等支援が外れましたが、海外展開戦
略策定支援は要求通りとなりました。

 海外展開戦略策定支援は海外展開戦略作成に繋げるため海外現地における事
業の実現可能性調査やWebサイトの外国語化等を支援することであり、具体的
な補助内容は、輸出企業の場合は補助上限が50万円で補助率が1/2、直接投資
の場合は補助上限が140万円で補助率1/2、Web支援の場合は補助上限が100万円
で補助率が1/2となっております。また、投資実行時のリスク精査を支援する
ことも記載されています。
参考 中小機構海外ビジネス戦略推進支援サイト
http://www.smrj.go.jp/sme/overseas/strategy/index.html
 
 平成26年から5年間の事業となるため平成31年予算から海外展開支援に関する
内容が大きく変わる可能性もありますので、上記の補助金制度等の利用を検討
中の事業者様はご利用いただければと思います。

 製造業のお客様でベトナム進出から数年が経過し設備投資のため、追加投
資を検討、実行されるお客様が増加しております。通常、製造業であれば会
社設立時に2年免税、4年減税の税制優遇(地域によって優遇内容は異なり
ます。)が適用可能ですが、追加投資に関しても同様の優遇を受けることが
可能です。

今回は追加投資に伴う優遇税制の適用に関してご説明いたします。

この優遇税制ですが前提として、
(1)生産規模の拡大
(2)生産能力の拡大
(3)生産技術の向上
のいずれかに伴う追加投資である必要があります。

また、追加投資の具体的な条件として
(1)200億VND(1億円相当)以上の固定資産の追加購入
(2)追加の固定資産が追加投資前の20%以上となること
(3)増資前より20%以上生産能力が向上していること
のいずれかを満たす必要があります。

税制優遇として追加投資により増加した所得に関して
(1)現状の優遇税制を適用
(2)追加投資分のみの収益に対して新たに免税・減税期間を適用
を選択することが可能です。

 なお、(2)を選択する場合、追加投資により増えた所得を他と分けて記帳
する必要がございます。場合よっては大幅な節税が可能ですので、追加投資
をご検討される際は、専門家にご相談されることをお勧めいたします。

 国外に支店を有する内国法人の国内本社が、国内において製造した製品を
国外の取引先へ販売した場合、当該取引は本社が国外の取引先へ製品を販売
し、その製品の販売時における所在が国内にあることから、本邦からの輸出
として行われる資産の譲渡に該当し、消費税法上は輸出免税取引として取り
扱われます。

 一方で、一旦国内本社から国外支店へ国内において製造した製品を移送し、
国外支店が国外の取引先へ販売した場合、当該製品の販売時における所在が
国外にあることから、国内において行われた資産の譲渡に該当せず、消費税
法上課税の対象外となります。

 上記2つの事例について、商品の流通経路等取引の実態は同じでありなが
ら消費税法上の取り扱いが異なることを避けるため、特に後者については輸
出証明を要件として、仕入税額控除の特例が設けられています。

 具体的には、後者について国外における製品の販売のために輸出した場合
には、当該製品の価額(FOB価額を使用します。)を課税売上割合の計算
上、分母及び分子の額に加算することになります。

 なお、当該製品の製造に係る課税仕入れについては、上記どちらの取引に
係る製造費用であったとしても、課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ
に該当し、仕入税額控除の対象となり、売上の面からも仕入れの面からも取
り扱いが異ならないこととなります。

 当該特例については、移送した場合における特例のため「起票する」といっ
た会計上に記録が残るものではありません。
 
 特例を適用するための書類の保存等についてはご留意いただく必要があり
ます。

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