税理士法人名南経営 国際部ブログ

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2019年06月

 日本における相続税の納税義務を負う者については、被相続人が国内に住所
を有しているか、相続人が国内に住所を有しているか、また日本国籍を有して
いるか、などにより区分され、その区分に応じて相続税が課税される財産の範
囲を定めています。この区分の判定について一昨年より変更がされております。
入国管理法の改正により新たな在留資格が創設され、日本で働く外国人の増加
が予想されます。改めて相続税の改正についても見ていきましょう。

◆居住無制限納税義務者について
相続や遺贈により財産を取得した者が、居住無制限納税義務者に該当する場合
には、その取得した財産が国内であろうと海外であろうと日本の相続税が課さ
れることとなります。以前は、財産を取得した者がその財産を取得した時点で
日本に住所を有していた場合、例外なく居住無制限納税義務者となっていまし
たが、一昨年よりこちらは次のような場合について変更されております。

・その財産を取得した者が一時居住者(注1)であり、かつ被相続人が一時居
 住被相続人(注2)又は非居住被相続人(注3)のいずれかに該当する場合
 には、居住無制限納税義務者から除外。

(注1)の一時居住者とは、「相続開始の時において在留資格を有する者で、
その相続の開始前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が
10年以下であるもの」とされています。

(注2)の一時居住被相続人とは、「相続開始の時において在留資格を有し、
かつ日本国内に住所を有していた被相続人であってその相続の開始前15年以内
において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの」とさ
れています。

(注3)の非居住被相続人とは、「相続開始の時において日本国内に住所を有
していなかったその相続に係る被相続人であって、その相続の開始前10年以内
のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがあるもののうち、
そのいずれの時においても日本国籍を有していなかったもの、又はその相続の
開始前10年以内のいずれの時においても日本国内に住所を有していたことがな
いもの」とされています。

 改正前は、「出向などにより日本で働く外国人が、母国に居住する親を亡く
したことにより、その親の財産を相続」した場合に、日本の相続税法の規定上、
その親の母国にある財産に対して日本の相続税が課される法体系となっていま
したが、当改正によりその基準が緩和されることとなりました。

 また、「親が日本で働くため親と一緒に日本に居住していた子供が、その親
が日本で亡くなったことにより母国にあった財産を相続」した場合についても、
その母国にあった財産に対して日本の相続税が課されることとなっていました
が、こちらについてもその基準が緩和されることとなりました。

 上記2例については、「海外にある財産について日本の相続税が課税されな
い」こととなりますが、日本国内にある財産を取得した場合には引き続き日本
の相続税は課税されることとなります。相続があった時点における状況を整理
し、相続税の対象となる財産の範囲を整理いただくことが重要です。

 2018年3月に財政部・税務総局・税関総署より「増値税改革の深化に関する
政策の公告」(財政部 税務総局 税関総署(2019年)39号)が発表されまし
た。前回はこのうち、税率変更について報告させていただきました。

 今回は交通費の取扱についても変更されていますので、この点を報告させて
いただきます。

・交通費に係る仕入税額控除の導入
 従来は交通費に係る増値税の仕入税額については、増値税の売上税額と明確
な相関関係が認められないとして相殺できなかったところ、2019年4月1日以降、
一定条件を満たす場合には相殺することが認められることとなりました。

具体的な条件は下記のとおりです。

納税人が増値税専用発票を未取得の場合、以下の規定により仕入税額を確定す
る。

1.増値税電子普通発票の場合、発票上に明記された税額;

2.旅客の識別情報が記載された航空運輸電子行程表の場合、以下の公式により
仕入税額を計算する。

 航空旅客運輸仕入税額=(チケット代+燃油サーチャージ)÷(1+9%)×9%

3.旅客の識別情報が記載された鉄道車両チケットの場合、以下の公式により仕
入税額を計算する。

 鉄道旅客運輸仕入税額=チケット額面金額÷(1+9%)×9%

4.旅客の識別情報が記載された道路、水路輸送等のその他チケットの場合、以
下の公式により仕入税額を計算する。

 道路、水路輸送等その他旅客運輸仕入税額=チケット額面金額÷(1+3%)×3%


 ポイントは「4月1日以降」「旅客の識別情報が記載された」という2点とな
ります。出張旅費等、上記交通費の多い企業においては、上記規定に沿って管
理・計算することで増値税の納税負担を軽減することが可能です。

 一方で、事務負担の増加という側面もあるので、社内の管理状況を把握し適
切な対応が求められます。

 ベトナムに法人及び駐在員事務所を設立し従業員に給与を支給する場合、賃
金テーブルを作成し、管轄の社会保険機関に登録する必要があります。政令49
号(49/2013/ND-CP)の第7条には賃金テーブルについておおよそ、以下のとお
り規定しています。

・すべての給与受給者のためにつくられるものであること。
・規定されるそれぞれの給与は、担当する仕事に対するレベル及び要求される
 高い専門性により異なるものであること。ただし、給与間の金額格差は最低
 5%以上なければならないこと。
・企業は、その企業の最低賃金について、業務の複雑性、その業務に対する義
 務、必要な能力及びその業務実施に必要な経験などを考慮して決定しなけれ
 ばならないこと。
・職業訓練を受けた従業員に対する賃金は、政府が定める最低賃金を7%上回る
 必要があること。
・重労働等の環境で従事する従業員は5%、過度に重労働等の環境で従事する従
 業員に対しては7%、同等の業務を行う従業員の給与を上回る必要があること。

 賃金テーブルは、日本本社では当然に作成されているものであっても、ベト
ナムで法人を立ち上げた場合、当然、一から作成する必要があり、上記の要求
及び現地の人事事情を考慮して作成するとなると、なかなかシンドイ業務とな
ります。

 なお、2018年11月より、労働者10名未満の法人及び駐在員事務所は、賃金テ
ーブルの登録義務がなくなっています(121/2018/ND-CP)。
 しかし、登録義務がなくなっても、依然として作成義務はあります。法人等
設立後、賃金テーブルを作成されていないベトナム現地法人や駐在員事務所が
あれば、早急に作成することをお勧めいたします。

 最近は海外進出が大企業・中堅企業に限らず中小企業まで広がりをみせ、進
出の目的・方法も多様化されており、現地での視察も目的・方法にあった形を
とる必要がでてきます。

 そこで重要なことは、国内で事前に調査すべき事項を洗い出し、その項目に
ついて調べることを優先させることです。残念ながら進出の相談を頂く際にこ
の事前検討がないままに現地調査を何度か行っているケースが多くあります。
現地調査で行うべきは以下の通りになります。

1.国内事前調査内容が現地で合致しているかのチェック
2.国内で調べられなかった細かな事項の調査
3.現地事情を体験・確認
4.取引先・同業者・パートナーとの面談・打合せ

 まずは国内で調べた内容がいざ現地で確認したら、全く違っていたというこ
とも珍しくありませんので、合致しているかのチェックをします。事前調査で
仮定したことが、現地でも同じ結果が出るだろうと推測すると危険です。比較
対照を行うことが重要です。

 そして概略しか調べることのできなかった内容については、現地で細かい情
報を得ましょう。なるべく幅広い職種の方にお会いすることをお勧めします。
現地で活躍されている方だからこそ得られる情報があります。さらに、それら
の内容に合わせて現地事情を自らの五感を使って確認します。他人から聞いて
いるより、実際に体験することは新たな気づきを与えてくれます。

 次は、実際一緒に事業を行う取引先・パートナーとの打合せです。現地では
どういったニーズがあるのか等々、実際に自ら事業を行うことをイメージしま
す。初めての現地調査は内容が盛りだくさんになることが多くあります。優先
順位を決めて予定をたてましょう。また、現地へ行ってから調べるべき内容が
出てくることがあります。予備日を作っておくことをお勧めします。

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