税理士法人名南経営 国際部ブログ

国際税務やグローバルビジネスに関する情報をタイムリーに提供します!

2019年12月

 中国の自動車産業は現在過渡期にあるといわれ、2018年の新車販売台数の前
年割れについては、日本でも大きく報道されました。2019年においても、現状
から予測すると、2018年の新車販売台数2,808万台に対し、2,400~2,500万台
になると見込まれるなど、中国の新車製造販売の推移を不安視する声が多く
なっています。

 そこで、中国での新車販売台数の落ち込みを中古車がカバーしているのでは
ないかと仮説を立て検証を行う一方、中古車の価格調査を行い、日系中古車に
ついて市場での優位性があるのか確認してみました。

 検証内容の構成については、下記のとおりです。

1.中国自動車業界の現状について
2.中国の新エネルギー自動車推進政策について
3.中国の中古車市場の現状で発展の歴史について
4.中国の中古車市場での各国メーカー車の価格比較
5.検証結果を踏まえた今後の予測

 4の価格比較では、総計5,291件のデータ検証を行い、結果から日系中古車
は他国中古車と比較し、新車比50%の価格となる時期(半減期)の到来が最も
遅く、中古車市場において比較的優位性が見られました。

 中古車市場の優位性が、新車販売にも好影響を与えると考えられる一方で、
他国自動車メーカーに部品販売を行っていたサプライヤーが、日本自動車メー
カーに売り込みをかけてくることも考えられるため、日系自動車関連企業はそ
れを踏まえた戦略を立てることが必要と考えられます。

 検証内容については、下記アドレスより確認することが可能です。
http://www.meinan-partners.com/files/1128.pdf

 「外国税額控除」と聞くと、法人税法や所得税法に規定する外国税額控除を
思い浮かべる方が多いかと思います。法人税法に規定する外国税額控除は、一
定の要件に該当する場合に海外において納付した税金について、日本の法人税
から控除すると同時に、当該納付額は損金不算入となります。

 この「外国税額控除」という規定については、実は法人税法や所得税法のみ
でなく、相続税法における相続税や贈与税についても規定が存在し、海外で納
付した相続税や贈与税に相当する税金について、日本の相続税や贈与税から控
除することを認めています。本稿では、相続税についての外国税額控除の規定
を見ていきましょう。

 以前にも記載させていただいた通り、海外財産を取得した場合でも、居住無
制限納税義務者又は非居住無制限納税義務者については、その海外財産に対し
て日本の相続税が課されることとなります。一方で、海外では海外の相続税の
考え方があるため、その財産の所在地や被相続人の状況によっては、その財産
の所在している国において相続税に相当する税が課されることもあります。一
つの財産に対して日本と海外において課税されることとなることから、この二
重課税を調整するために認められている制度が相続税の外国税額控除という規
定です。

 ただし、海外で課された相続税相当額全額が外国税額控除の対象となるとは
限らず、その上限が定められています。その上限は下記算式により計算する事
になります。

                海外に所在する財産の価額  
 日本の相続税額 × ―――――――――――――――――――――
            課税価格に算入された財産の価額の合計額

 海外で課された相続税相当額が、上記算式により計算された金額を上回る場
合には、その上回る部分の金額は外国税額控除の対象とはなりません。

 海外ではその国特有の相続税の考え方があり、また相続税という概念が存在
しない国もあります。外国税額控除の適用を受ける場合には、必ず現地の状況
等をご確認の上、適用いただけますようお願いします。

 海外事業を運営する上で様々なリスクがありますが、今回は法令遵守に関す
るリスクについて取り上げたいと思います。

 現地では日本では考えられないような法令や規則が存在し、その法令を遵守
することは簡単なことではありません。それは、現地法人の限られた人材の中
では一層困難となります。事例をいくつか紹介します。

1.金銭の貸付
 日本親会社から海外子会社へ資金を貸し付けることは珍しくありません。ア
ジア諸国においては、外貨資金の受け払いについては、外貨管理局などへの事
前申請および承認を求めていることが多く、その申請の際には契約書の写しな
どを求められることがあります。問題となるのはこの事前申請を考慮せずに、
契約書なしで貸付をしてしまったケースです。この場合、元利金の送金ができ
ないという事態が発生し、最悪の場合はハンドキャリーで資金回収するなどの
コンプライアンス違反をしてしまうことがあります。

2.現地駐在員の個人所得税
 現地駐在員への給与は、日本親会社と海外子会社の双方で支払われているこ
とがあり、この場合の現地での個人所得税の申告は、日本親会社および海外子
会社の双方で支払われた給与を申告することが通常です。しかし、稀に日本親
会社が支給した分の給与を申告が必要と知りながらも現地にて申告していない
場合があります。これは脱税ですので、日本親会社の事業にも影響を及ぼす可
能性があります。個人所得税の申告は、現地での問題と切り離すことなく、適
切に指導・管理する必要があります。

3.ビザ
 現地駐在員のビザの有効期限が切れていて、不法就労とみなされるケースが
あります。ビザの管理を海外子会社へ一任するのではなく、日本親会社による
定期的なチェックが必要です。

 現地法人は少ない人員の中でやりくりしていることが多く、現地法人にすべ
ての管理を任せるのは難しいのが現実です。日本親会社が能動的にチェックす
ることで、上記のようなリスクを軽減させることが望ましいのではないでしょ
うか。

↑このページのトップヘ