税理士法人名南経営 国際部ブログ

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2021年02月

経産省による令和元年の外資系企業動向調査によると、日本で外資系企業が
事業展開する利点は所得水準が高くマーケットが魅力的であることがあげられ
る一方、人材確保の難しさやビジネスコストの高さといった難点もあるようで
す。
 
 外資系企業では税務上どのような点に注意をする必要があるのか今回は3つの
論点を挙げてみます。
 
 まず、中小法人向けの特例措置の適用を受けることができるのか注意をする必
要があります。例えば当社は3月決算、親会社である外国法人が12月決算の場合、
3月末の親会社の資本金額を3月末の電信売買相場の仲値により円換算した金額が
5億円以上であるかにより、大法人による支配関係があるかどうかを判定します。
日本に現地法人を設立するような外国法人は資本金の額が大きいことが多いため
注意が必要です。
 
 一方で、グループ法人税制の適用がないことにも注意が必要です。グループ法
人税制とは、100%グループ内の内国法人間で行われる一定の資産の譲渡や寄付、
配当などについて税務上は損益を認識しない税制ですが、こちらについては内国
法人間の取引が対象となりますので、外国親会社との取引については適用されま
せん。
 
 最後に、外資系企業では実質的な経営権が親会社にあることが多く、外国親会
社と現地法人との間で、独立した企業同士では通常行われないような取引が行わ
れることがあります。
こういった取引の結果、日本の税収が不当に減少することを防ぐため、同族会社
の行為計算否認既定や移転価格税制が設けられております。意図的ではないにし
ろ、利益操作につながるような取引には注意が必要となります。

 2021年1月1日以降、労働法第45/2019/QH14号(新労働法)が施行されます。
改正項目が多いため、特に重要な12点を抜粋します。

・労働契約は労働者が就労を開始する前に締結する必要がある。(第13条2項)
・労働契約の形式として書面の他、電子的方法によっても締結することが可能
 となる。(第14条)
・労働契約の種類は、無期労働契約及び有期労働契約(36か月以下)の2種類
 のみが認められる。(第20条)
・有期労働契約の更新は1度のみであるが、定年に達しているもの、外国人に
 限っては有期労働契約を何度も更新することができる。
 (第20条2項、第151条2項)
・試用期間を設ける場合、正規の労働契約のなかで試用期間について規定する
 ことも認められる。(第24条)
・賃金テーブルの当局通知義務がなくなる。ただし、作成する必要はある。
 (第93条)
・賃金、時間外労働の賃金、深夜労働の賃金、各種控除金額の明細の通知が義 
 務づけられる。(第95条3項)
・1か月あたりの残業の上限が40時間に引き上げられる。(第107条2項)
・有給休暇の賃金による清算は退職時に限定される。(第113条3項)
・従業員10名未満でも就業規則の当局への登録が義務付けられる。
 (第118条1項)
・就業規則の内容としてセクハラの予防、処分、懲戒権限を有するものについ
 て規定することが義務付けられる。(第118条2項)
・労働許可証の更新回数が1回に制限される。(第155条)

 新労働法はJETROから和訳版の確認が可能です。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/vn/business/pdf/45-2019-
QH14-jp.pdf

 新労働法に対応するため、就業規則等を見直す際は現地専門家に相談するこ
とをおすすめいたします。

  コロナウイルスの流行に伴い、海外赴任中の駐在員が一時帰国した場合の183
日ルールの適用などにより租税条約という言葉を目にする機会が増えたので
はないでしょうか。今回はその租税条約の概要について記載致します。

 原則的には、長期間の海外赴任中の駐在員は日本の非居住者に該当するため、
海外での勤務に起因する給与については、日本の所得税は課税されません。
ただし、今回のコロナウイルスなどにより一時帰国し業務を行っている場合
では、国内での勤務に起因する給与となり「非居住者に対する国内源泉所得」
として日本の所得税が課税されます。

 一方で、一般的にはその赴任先の海外では、その国の居住者であるため国内
勤務、国外勤務を問わず全世界所得課税として、その給与全額について課税さ
れます。その赴任者からすると、給与の額は変わらないのに赴任先の国でも日
本でも課税されることになり、いわゆる二重課税の状態が発生することとなり
ます。

 この二重課税の発生を排除することを目的として、両国間にて定められたも
のが「租税条約」となります。一定の要件を満たす必要はありますが、短期間
(一般的には183日以下)での滞在について課税することは、両国間にとって
も良い影響はないため、課税を免除することを「租税条約」の条項に定めてい
ます。

 今回は給与について取り上げましたが、租税条約は給与のみではなく利子や
配当、使用料についての課税権などについても定められております。

 注意すべき点としては、租税条約は両国間の取り決めであるため、国ごとに
よって締結されているということです。締結されている取り決めが異なれば、
内容も異なります。適用については画一的に判断するのではなく、必ず条約に
立ち戻って確認することが必要です。

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