税理士法人名南経営 国際部ブログ

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2024年10月

 昨今の渡航制限緩和により、日本親会社から海外子会社への出張頻度が増えているという話を耳にします。さまざまな目的の海外出張がありますが、海外子会社への出張は税務調査の対象となりやすく、追徴課税を受けた事例も増加しています。今回は海外出張費用の対価回収について取り上げたいと思います。

 海外子会社のために親会社の人員を出張させた場合、その出張の対価を外国子会社から回収する必要があります。海外子会社が負担すべき費用を日本親会社が負担していると、税務調査にて対価の回収漏れや「国外関連者寄附金」として指摘される可能性があります。

 具体的にどのような業務が対価回収の対象となるのかについては、移転価格事務運営要領3-10(企業グループ内における役務提供の取扱い)に記載があります。

<参考リンク>
国税庁HP「(別添) 移転価格事務運営要領 第3章 調査」

 判断基準としては、有償性があるものとないもののうち、有償性があるものは回収が必要とされています。よって、第三者から同様のサービスを受けた場合、対価が発生するかどうかで考えることになります。

 税務調査時には海外出張に関する資料の提出が求められます。調査に備え、事前に社内規定や書類整備が必要となってきます。具体的には、親子会社間で出張費管理基準を明確にする、出張旅費規程を作成する、出張報告書の提出をルール化することが挙げられます。また、出張にかかる最低限のコスト(人件費、旅費交通費、宿泊費、日当)だけでも回収することが望ましいです。

 以上、海外出張の費用負担とその対策に関して紹介しました。
 出張ルールが管理されているか、適宜見直しされているかなど、自社の状況をご確認いただければと思います。

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 今回はベトナムへの進出する際に抑えておきたいポイントを実際の事例を用いてお伝えいたします。また、本社で検討が必要な事項も併せてお伝えいたします。​

◆カリキュラム
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2)進出手続きと現地税務上のポイント
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 税理士法人名南経営 国際部 石田 権治

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 先日、ベトナムの税務調査についてお話する機会がありました。その中で、加算税、延滞税及び罰金のお話をさせていただきました。日本の税務調査を経験された方には、加算税及び延滞税はご理解いただけると思いますが、罰金については、なかなかご理解いただけないかと思います。

 ここで言う罰金は、所謂、行政手続の不履行等に対する行政庁(この場合、ベトナム税務局)が科すものとなります。税務の場合、申告書の不提出、申告書内容の相違及びインボイスの記載ミスなどについて、罰金が定められています。

 例えば、無申告加算税は税務申告書を法定申告期限までに提出しない場合に課せられますが、ベトナムの場合は加算税(脱税、不正行為と認められる場合、納付すべき税額の100~300%)の他、罰金も科せられます。税務の罰金の最高額は、200,000,000VND(約117万円)となっています。

 ベトナムでは、税務のほか、労働者に関する報告書等、労務関連の手続きや、ベトナム現地法人の投資登録証明書(IRC)及び企業登録証明書(ERC)の記載情報変更申請等、法務関連の手続きについて罰金が定められております。行政関連の手続き失念にはご注意ください。

 海外赴任中の社員に対して退職金支給のご予定はございますか。退職金というと退職所得控除やその所得の計算方法において、給与として受け取るよりも税制上の優遇措置がされているようにイメージをすることができますが、海外赴任中に退職金を支給する場合は日本での課税方法に注意をする必要がございます。

退職金の課税方法

 非居住者である海外赴任者が赴任中に日本から退職金を受け取る場合、その受け取る退職金のうち国内の勤務期間に対応する金額については国内源泉所得に該当します。この場合、日本の会社は一律20.42%の源泉徴収義務を負います。
 同じ条件をもとに退職金を居住者として受け取った場合と、非居住者として受け取った場合で比較すると次のようになります。

事例
1)退職金の計算の基礎となった勤務期間 30年
  そのうち居住者としての勤務期間 15年
2)退職金額 1,000万円

<居住者として受け取る場合>
  • 退職所得控除額 800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円
  • 退職所得 1,000万円<1,500万円∴退職金は退職所得控除以内のため所得0円
  • 税金 所得0円のため日本での課税なし

<非居住者として受け取る場合>
  • 国内源泉所得 1,000万円×15年÷30年=500万円
  • 税金 500万円×20.42%=102.1万円

退職所得の選択課税

 このように、非居住者として受け取る退職金については居住者として受け取る退職金の場合に比べて日本での課税方法が大幅に異なることがお分かりになるかと思います。このような退職金については、事例のように20.42%の源泉徴収をされていても、一定の手続きにより居住者として受け取った場合の税額とみなして差額を還付請求することができます。これを「退職所得の選択課税」といいます。

 退職所得の選択課税の適用を受けるには、その年の翌年1月1日以後に一定の事項を記載した「退職所得の選択課税の申告書」を納税地を所轄する税務署に提出する必要があるため、本日ご紹介したような退職金支給をご検討されている企業様は退職所得の選択課税についても一緒に検討されてはいかがでしょうか。


<参考リンク>
国税庁
「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
「退職所得の選択課税の記載例1出国後受け取った退職金」

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