令和6年11月に国税庁より「令和5事務年度における法人税、法人消費税等、源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の調査事績」を公表いたしました。
 海外取引に係る申告漏れ所得(法人税)については総額2,870億円を把握、海外取引等に係る源泉徴収漏れ(源泉所得税)については総額46億円を追徴と記されております。

 海外取引等に係る源泉徴収漏れの具体例としては、非居住者に支払った借入金に係る「遅延損害金」の源泉徴収漏れが紹介されておりますが、この事例は「遅延損害金」は「借入金の利子」に該当するものと指摘されたものになります。

 海外取引がある際には国内法だけではなく、その国との租税条約を確認することが必要になります。今回は借入金の利子に対する源泉徴収の取り扱いを、仮に日本の会社が資本関係のない中国の会社へ借入金の利子を支払った場合に置き換えて、国内法と租税条約の取り扱いを確認していきます。

1. 国内法
日本の会社が日本において非居住者や外国の法人に対して支払われる借入金の利子については20.42%の源泉徴収をする必要があります(所法7条1項四)。

2. 租税条約
一方、日中租税条約では「一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる利子に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。」とされており、その場合の利子の源泉徴収は10%を超えないものとするとされております(日中租税条約11条1項、2項)。

3. 実際の徴収方法と注意点
この場合は租税条約を優先され10%の源泉徴収を適用することができますが、「租税条約に関する届出書」に必要事項を記載の上、借入金の利子の最初の支払い日までに提出する必要がございます。

4. 源泉所得税の納付期限
源泉所得税は借入金の支払いをした翌月10日までに支払う必要がございます。

 今回は、借入金の利子を支払う場合を想定して源泉徴収の方法をご説明いたしました。非居住者や外国の法人と取引がある場合は一度源泉徴収をする必要があるか否かのご確認をお願いします。

<参考リンク>
国税庁
「令和5事務年度における法人税、法人消費税等、源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の調査事績」
「令和7年版 源泉徴収のあらまし」