2025年4月2日、トランプ大統領は米国の貿易赤字是正を目的とした大規模な関税政策を発表しました。この政策により、ベトナムからの輸入品には46%の「相互関税(reciprocal tariff)」が課されることとなりました。ただし、この関税は2025年7月まで一時的に適用が停止されています。

 米国は長い間、ベトナムの輸出先国・地域の中で最大の輸出先国となっており、正式に上記関税が課されることとなると、輸出が経済をけん引しているベトナムにとっては大きな影響があると考えられます。なお、ベトナムから米国へ輸出される主な品目は履物、衣料品、コンピューター・電子機器及び機械設備ですが、上記発表までにこれらに課されていた関税率は約14~20%となっています。

 ベトナムは自由貿易協定(FTA)の積極的な活用を通じて、国際経済への統合を加速させています。近年ではCPTPP(包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定)やEU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)など、高水準のFTAを相次いで締結しています。これらのFTAにより、ベトナムは多くの国との間で関税の撤廃や投資環境の整備を実現し、製造拠点としての競争力を高めています。

 ベトナムが加盟するFTAはベトナム経済の持続的成長を支える基盤となっており、企業にとっても国際市場への参入機会を広げていますが、このような状況を変える可能性のある米国との関税交渉は要注目です。