海外展開にあたり現地法人の設立のご支援をさせていただく機会がありますが、設立前に損益予測を行い、事業計画を策定し、進出後には当初計画の進捗を追って予実管理をされている企業というのはあまり多くないのが実情です。
海外展開にあたり・・・
海外展開にあたり現地法人の設立のご支援をさせていただく機会がありますが、設立前に損益予測を行い、事業計画を策定し、進出後には当初計画の進捗を追って予実管理をされている企業というのはあまり多くないのが実情です。
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海外事業を運営する上で様々なリスクがありますが、今回は法令遵守に関す
るリスクについて取り上げたいと思います。
現地では日本では考えられないような法令や規則が存在し、その法令を遵守
することは簡単なことではありません。それは、現地法人の限られた人材の中
では一層困難となります。事例をいくつか紹介します。
1.金銭の貸付
日本親会社から海外子会社へ資金を貸し付けることは珍しくありません。ア
ジア諸国においては、外貨資金の受け払いについては、外貨管理局などへの事
前申請および承認を求めていることが多く、その申請の際には契約書の写しな
どを求められることがあります。問題となるのはこの事前申請を考慮せずに、
契約書なしで貸付をしてしまったケースです。この場合、元利金の送金ができ
ないという事態が発生し、最悪の場合はハンドキャリーで資金回収するなどの
コンプライアンス違反をしてしまうことがあります。
2.現地駐在員の個人所得税
現地駐在員への給与は、日本親会社と海外子会社の双方で支払われているこ
とがあり、この場合の現地での個人所得税の申告は、日本親会社および海外子
会社の双方で支払われた給与を申告することが通常です。しかし、稀に日本親
会社が支給した分の給与を申告が必要と知りながらも現地にて申告していない
場合があります。これは脱税ですので、日本親会社の事業にも影響を及ぼす可
能性があります。個人所得税の申告は、現地での問題と切り離すことなく、適
切に指導・管理する必要があります。
3.ビザ
現地駐在員のビザの有効期限が切れていて、不法就労とみなされるケースが
あります。ビザの管理を海外子会社へ一任するのではなく、日本親会社による
定期的なチェックが必要です。
現地法人は少ない人員の中でやりくりしていることが多く、現地法人にすべ
ての管理を任せるのは難しいのが現実です。日本親会社が能動的にチェックす
ることで、上記のようなリスクを軽減させることが望ましいのではないでしょ
うか。
企業が海外に進出する際には、いくつか検討すべき事項がございます。
代表的な検討事項について、いくつかご紹介いたします。
1.外資規制
外資規制とは、国内企業への外国資本に対する規制をいいます。自社の業種、
取り扱う製品等について、進出国の規制の確認が必要です。
2.進出地域の安定度
政治がある程度、安定している事は重要な要素となります。また、テロや民
族間紛争等のリスクを把握する事が必要です。
3.インフラ、ロジスティックの状況
電気、水、排水処理等のインフラ及び、現地運輸、倉庫等の状況について確
認が必要です。規制等が日本と異なり法整備が未熟な場合があります。
4.労働市場の状況
現地の労働市場について、進出国の状況の確認が必要です。雇用は容易でも、
解雇が困難な場合もあります。ストライキの把握は必須となります。
5.材料等の現地調達
材料等の現地調達が可能なのかの確認が必要です。
そもそも何故、海外進出をする事になったかの目的に立ち返り、進出目的を
明確にした上で、上記の事項について検討する事が必要です。
海外へ進出する企業が増加し、目的も多様化するなか、内部統制構築につい
ての考え方が変化しています。これは海外現地法人が単なる生産拠点ではなく
営業拠点として機能するなど、海外拠点の機能が変化していることと、日本人
駐在員を派遣せず、現地メンバーで事業を行うといった組織体制の企業が増加
していることが影響していると考えられます。
海外現地法人の形態が多種多様になるため、これまでの法令で決められてい
るから内部統制を行うのではなく、戦略的かつ実効性のある内部統制の構築が
求められるようになっています。日本国内のみで事業を行っていたときには理
解しがたい問題が発生します。この問題の発生を最初から全てクリアにしてお
くことは非常に難しいため、問題が発生した際に、それを避けるのではなく、
積極的に規定の文書化、ルールの周知、その運用評価を行うことによって、今
まで不可解であった海外子会社を理解し、統括することによってグループ全体
として最適な戦略を踏むことが可能になります。もう一つ重要なのは問題が発
生しているかもしれないと気付いた段階で、どれだけ早く対処するかという点
です。
内部統制構築の基本的なフェーズは「1.現状調査」「2.改善の方向性検
討」「3.改善後の業務記述書作成」「4.リスク・コントロール・マトリス
ク作成」「5.整備、運用評価」となります。
詳細については今後記載させていただきたいと思っています。
海外進出を検討している企業の方とお会いさせて頂く機会をたくさんいただ
いておりますが、最近の海外進出は目的に変化があります。
かつては、「日本の取引先から要望を受けたために進出する」(顧客ニーズ)、
「安い人件費を活用するために進出する」(原価改善)、「現地で〇〇なニー
ズがあるので進出する」(市場開拓)、といった目的が多かったのですが、最
近はこれらに加えて「人材が不足しているや人材を活用したい」という課題を
解決することを目的として海外進出を検討する企業が増えています。
海外進出は何かを達成するための手段になると考えますので、その目的のた
め手段として検討・選択することは正しいと思いますが、その手段(今回で言
う海外進出)が最適かという点を再度検討いただくとよいかと思います。海外
進出は成功している企業がたくさんある一方で、リスクも大きくあります。自
社の課題解決に何が最も有効か再度検討してみてはいかがでしょうか。