映画レビュー さ行

2023年12月16日

 1960年制作、村山新治監督の「白い粉の恐怖」を観ました。
白い粉

 川井組の麻薬密売人の井本(曽根晴美)と宮川(潮健児)を取り押さえるために、厚生省麻薬取締官たちが一台のトラックに待機していました。取締官の須川(三國連太郎)は、情報提供社の在日コリアン・金山(山茶花究)から情報を得て、密売現場に踏み込もうとします。
 宮川と麻薬中毒の娼婦・ユリ子(中原ひとみ)を捕えたものの、主犯の井本は取り逃がしました。ユリ子は妊娠を理由に釈放を求め、須川はユリ子に捜査への協力を条件に釈放します。

 翌日、井本は麻薬取締官が現場を踏み込んだことを怪しみ、金山に暴力で脅します。新宿にいられなくなった金山は、須川に大阪に移ることを伝え、最後の情報として、つるやという飲み屋で売人が出入りしている情報を与えます。須川はユリ子の客を装い、つるやに行くものの、井本は須川の正体を怪しみ、取引現場を押さえることができませんでした。そのため、ユリ子までも井本に怪しまれるようになります。

 須川は彼女を麻薬の更生病院に入れ、麻薬から足を洗わせようとします。その甲斐もあり、ユリ子の禁断症状は癒え、彼女は須川を慕うようになり、彼のために囮のしごとを始めます。彼女はパチンコ店の店主の田口(大村文武)が、大口の密売をしているのを知り、田口の周辺を探るものの、次第に孤独感に襲われ、再び麻薬の誘惑に負けて常用するようになります。

 一方、須川は、田口と太陽商事の社長佐伯(永田靖)とのつながりを突き止め、部下の桜井(今井俊二)と共に大和製薬会社の社員に偽装し、ユリ子の手引によって田口と麻薬取引の交渉にこぎつけさらに田口から佐伯へとわたりをつけます。用心深い佐伯の目をごまかしながら、なんとか取締官たちは料亭で麻薬の取引が行われる準備を勧めます。その間、須川はユリ子が再び薬に手を出していることに気づきます。須川は彼女の身を案じ、組織を一斉検挙するまで、彼女を自分の家に保護しようとします。

 やがて料亭で取引が行われ、須川は佐伯に手錠をかけます。ユリ子は須川の家で預かっていたのですが、妻・滋子(岩崎加根子)と折り合いが悪くなって、須川の家を飛び出してしまいました。須川はユリ子を探すため、奔走するのですが薬は彼女の身を蝕み、やせ細ってなくなります。
 荼毘の後、夫妻が骨を拾おうとしても、薬はユリ子の骨の髄までしのびよりボロボロになっていました。
白い粉2

 そして最後に唐突に、麻薬はいけないアピールの画面が出てきて、面食らいます。
 松竹でも余技で映画出演していた菅原通済さんは、麻薬撲滅運動にも力を入れており、この作品にも登場。それがこの最後のPRにつながっているのかなぁ。

 実際に麻薬取締官をしていた方の手記の映画化です。この時代、麻薬汚染が社会問題にまでなっていたのでしょうね。ヤク中で亡くなった中原ひとみは骨すらも残らないと、かなり麻薬の恐ろしさが伝わってきます。

 麻薬の情報屋の在日コリアン役に山茶花究さん。この方、他の映画でも在日役を何本かされていますね。情報屋が在日である必要性はないような気もしますが。

 ねこは麻薬汚染が深刻だったのは1970年代後半のイメージがあります。芸能界でも、研ナオコさんや、あの美川憲一さんでさえ捕まっていましたし。

 ねこは服用したことはありませんが、麻薬って一度使うとなかなか更生が難しいようで。だから手を出してはいけないのですが、やはりふと心にスキができてやってしまうこともあるんでしょうね。

 ねこの近所にもヤク中のおじさんがいて、なにやらラリっているのですが、まぁ本人が体を悪くするだけなので傍観するしかないのかなぁと。麻薬って使用するのが悪いというより、それが反社会勢力の資金源になるっていうのが良くないんでしょうね。おじさん、働きものなのになぁ。




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kokusaiyuko at 21:46コメント(0)

2023年09月18日

 1976年制作、瀬川昌治監督の「瀬戸はよいとこ花嫁観光船」を観ました。
瀬戸はよい
 本州と四国を結ぶ本四連絡架橋はオイルショックで一時工事が止まっていました。連絡架橋の一つ、明石ー鳴門ルートの起点、明石町で元漫才師でいまはパチンコ屋の主人である青木大作(フランキー堺)は、架橋工事が再開されるという情報をキャッチ。元相方にしていまは女房の浪江(朝丘雪路)に、橋ができた日に備えて淡路島の岩屋に一大リゾートホテルの建設を進めます。浪江は早速、淡路島の旅館兼釣宿「防人荘」の買収工作を大作に命じるのでした。
 「防人荘」の主人、山村新一(山城新伍)は、明石で進学塾を経営し、「瀬戸内の自然を守る会」のリーダーでもありました。独身の新一は、万葉集を愛読するインテリで、リーダーとして地域の婦人らを取りまとめていましたが、一方でひと目を避けてのストリップ見物に夢中。大作も「神戸三宮ミュージック」も常連で、知らずに来ていた新一と意気投合。大作はお気に入りのストリッパーと鷲羽山へ行く計画を持ちかけるのでした。
 その翌日、大作は瀬戸内海巡りの観光船「ちどり丸」のオーナー兼船長の義弟・高松二郎(財津一郎)に「防人荘」主人の調査を押し付けて新一と鷲羽山へ。
 それから数日後、新一が「防人荘」の主人だと判明し、ストリップのことで脅すのでした。そして、「瀬戸内の自然を守る会」のメンバーもストリップの件で、新一の信用は急降下。中でも好意を寄せていた観光船のガイド、ナオミ(田坂都)は激怒。大作も浪江にストリップの件がバレて家を終われ、二郎は買収工作を助けた理由で「瀬戸内の自然を守る会」のメンバーである女房の浜子(日色ともゑ)が家出します。
 大作は二郎の家に避難、そしてなぜか新一もやってきて、二郎の家で男三人が同居することに。そこで大作の娘・光子(村地弘美)と恋人の大学生・健二(夏夕介)は、大人たちの仲直りを計画。筋書きは、阿波おどりで賑わう鳴門の宿の一室で、偶然大人たちを再会させるというものでした。台本どおりにコトは進むと思いきや偶然、ストリッパーたちがやってきて場はぶち壊しに。
 女性陣は怒りに任せて宿を飛び出したのですが、泊まるところが満杯でありません。途方にくれた彼女たちが見つけたのが、二郎の観光船「ちどり丸」。ところが、この船が予期せぬ突風に煽られて沖へ沖へと流されて渦に巻き込まれようとします。それを知った男性陣は救援に向かい「ちどり丸」が渦に巻きこまれる寸前を救助したのでした。

 数日後、「ちどり丸」の船上で、新一とナオミの新婚カップル、結婚式をまだあげていなかった大作と浪江、二郎と浜子の結婚式が行われました。
瀬戸はよい2

 1970年代のオイルショックはいろんなところに影響して本四連絡架橋も工事がストップしていたんですね。 日本経済もいまのように停滞しているんだったら、リニアや万博も止めたらいいのに。いまはもう、こういう立ち止まるとかやめるという選択がすっかりなくなってしまいました。でも、あの東京の都市博は止められたのですよね。

 この時代、自然保護活動や女性の地位向上など、いまからみても先進的な考えで動いている市民らがいたのですね。女性陣も反乱を起こしても、結局は男性陣に助けられて元のサヤというのがこの時代の限界ですね。いや、松竹の作風の限界かな。
 元漫才師という設定ですが、二人とも大阪弁が妙だし、間のとり方もよろしくありません。ストリップシーンも、森崎東監督にくらべるともう一つ弾けていませんし。主婦である日色ともゑさんの何気ない黒い下着姿が艶めかしかったです。

 山城新伍ちゃんが松竹に出ているのが珍しかったけれど、ちゃんとフランキーさんや財津さんのイキに合わせて芝居をしているのがよかったです。東映だったら、もっと前のめりになってたでしょうね。



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kokusaiyuko at 08:10コメント(0)

2023年08月31日

 1961年制作、佐伯清監督の「地獄に真紅な花が咲く」を観ました。
地獄に真紅の
 夜の新宿で赤谷一家の辰(花沢徳衛)は拳銃の名手ハリケーンの鉄(鶴田浩二)を探しやっと見つけたと近づくと、彼は鉄と瓜二つの海音寺孝(鶴田浩二・二役)というトランプの名手で人違いでした。一方、鉄も孝を探す博徒の野原(神田隆)に間違えられて迷惑に思うのでした。

 鉄は拳銃の腕を買われ、ナイトクラブ・カメレオンの経営者・神山(丹波哲郎)の用心棒に迎えられ、孝もトランプの腕を見込まれてカメレオンで働く事になりました。孝は鉄とは違って、気弱で女性ドライバーゆかりと恋愛中でした。孤児院出身で、将来は孤児院を設立すべくイカサマをしながら資金を貯めようとします。

 一方、きざで赤いカーネーションを胸にさす鉄は瓜二つの孝が気に入りませんが、自分の不幸な生い立ちを振り返り、孝の夢に自分の夢を重ねようと協力を決心します。

地獄に真紅の2
 鉄は神山から賭博の売上の2割を要求しますが、約束は反故にされます。鉄は怒りにまかせて、札束を抱え、孝とともに神山のもとを飛び出すのでした。そのお金で孤児院の計画は着々と進み、地鎮祭を行うまでにいたりました。

 この一件を知った博多のホテルのオーナー宮脇(伊藤雄之助)は、孝を拉致しようとします。それに気づいた鉄は孝になりすまし博多へ。しかし、すぐに正体はバレて脱出します。その間に、孝はカメレオンの地下に監禁され、建築中の孤児院は神山らに放火されました。東京に戻った鉄は孝を救いに行き、そこで神山らと銃撃戦となり、なんとか警察官がかけつけますが、真っ赤なカーネーションを胸にさしたまま、鉄は相手の銃弾に倒れたのでした。

 ウリ二つということで、鶴田浩二が二役を演じるのですが、孝役が気弱な設定なので、困惑したり、情けない表情をする珍しい鶴田浩二が見られます。孝の親友役で渥美清が出演しているのですが、要所で活躍していて結構いい役どころです。寅さん役が定着する以前は、演じる役柄も広かったんですね。

 悪役も丹波哲郎をはじめ、安部徹、伊藤雄之助、神田隆、花沢徳衛と申し分なし。任侠映画が台頭する前の鶴田浩二が東映で脂が乗っていた時期の一本でした。主題歌も歌って、美声も披露しています。



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kokusaiyuko at 09:36コメント(3)

2023年08月21日

 1958年制作、田畠恒男監督の「女性についての103章より 新妻と女秘書」を観ました。
新妻と女

 貿易会社の秘書を勤める須藤圭子(小山明子)は、社長・原田(上原謙)から能力も認められて気に入ってもらっています。しかし、会社が結婚後の勤続を認めないので、じつは証券会社の安サラリーマン・毛利信夫(三橋達也)と結婚しているのですが内緒にしています。

 ある日、わがままな社長の娘・桃子がスーツケース一つで圭子のところに家出してやってきます。とっさの機転で信夫を兄として紹介しますが、同居しづらくなります。そのため信夫は学生時代に下宿していた旅館・津賀本にいまなお居候を続ける親友・荒井(菅佐原英一)のところに転がり込むハメに。こうして別居を強いられてしまいました。

 信夫をすっかり圭子の兄と信じた桃子は、次第に信夫に惹かれるようになり、遂には親の言う見合いを蹴ります。社長夫婦も娘が落ち着くならと、信夫を受け入れます。そんな時、信夫の父で住職の卓造(笠智衆)が息子に会いに上京してきました。卓造は古い考え方の持ち主なので、働く女性は気に入らないだろうと圭子に会社を休ませて、専業主婦ということにしてその場をつくろいました。また、圭子の方も、会社の取引先相手の息子からプロポーズをされて困ります。

小山明子
 そうして、桃子の誕生パーティーの席上、圭子と信夫はそれぞれの相手とともに出席するはめに。たまりかねた信夫は、圭子が妻であることを一方的に発表してしまいました。勤めをやめなければならなくなった圭子は怒り、仲違いに。しかし、何もかもお見通しだった卓造の機転で元のさやに戻るのでした。

 社長夫人をやらせたら右にでないのが藤間紫さん。あやしげな新興宗教に凝った役です。上流婦人なのに、そういうのにハマってしまうのかなぁ。昔の映画を見ると、よく新興宗教に信心するシーンがあるのだけれど、そういう人って多かったのかな。

 大島渚夫人になる前の小山明子さんがかわいらしい。いままで渚の映画でしか観たことなかったのだけれど、こういう予定調和な松竹映画もしっかりとこなしていたんですね。この時代は、結婚すると職場をやめなければならないという会社も結構あったので、設定も不自然ではありません。

 信夫が元いた下宿屋でいっしょにいた居候がとても態度がでかいというのも不思議だけれど、これも映画を観ていると居候はたいがいは気を使わない。住まわせてもらっている立場なのにねぇ。別に親戚でもなんでもなく、かといって下宿屋に勤めているというのでもなく、なんでそこにいるんだろうという。そういう「居候」という言葉もいまでは死語ですね。

 個人的には以前、証券会社に勤めていたので、昔の証券会社で働いている様子が牧歌的でした。いまの証券会社はこの当時と違ってかなり高給取りだと思います。




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kokusaiyuko at 08:05コメント(0)

2023年07月25日

 1968年制作、和田嘉訓監督の「ザ・タイガース 世界はボクらを待っている」を観ました。
タイガース

 はるか遠い宇宙のアンドロメダ星の王女シルビィ(久美かおり)は、婚約者のナルシス殿下(三遊亭圓楽)。から逃げるためヘラクレス(天本英世)とベス(浦島千歌子)を従えて宇宙をさまよっていました。地球に近づき、日本の日劇上空にさしかかると、そこではザ・タイガースのライブの真っ最中。その音楽にすっかり夢中になって、地球に不時着してしまいました。そして、シルビィはタイガースに殺到するファンの渦に巻き込まれて失神。そんな彼女を助けたのは親切なザ・タイガースのボーカル、ジュリーでした。早速シルビィを入院させると、忙しい合間をぬって、メンバーとともにお見舞いにかけつけるのでした。 
タイガース2

 一方、主人とはぐれてしまったヘラクレスとベスは王女探しに奔走、やっと彼女の居所を突き止めます。しかし、タイガースのメンバーにさえぎられ、宇宙船に引き戻すことができませんでした。罰として凍らされてしまうヘラクレスの天本英世がなんともいえません。
 業を煮やしたアンドロメダ星の主人は秘密警察員を地球に派遣します。ザ・タイガースの
ファンの嫉妬もあり、シルビィを男装させて必死で守ろうとするのでした。ところが、ファンのリーダー格の雅子(松本めぐみ)は、シルビィのことを見破ります。シルビィのことが週刊誌にもすっぱ抜かれ、ゴシップ記事になってしまい悩むタイガースのメンバー。シルビィは優しかったジュリーに惹かれながらも、宇宙船に戻るのでした。
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 まぁ、いわゆるGSのアイドル映画。GSブームのときに、タイガース以外でもこの手の映画は何本かつくられていました。ストーリーより、ときおり挟まる音楽がもちろんメイン。ねこはなぜか、流れてくるほとんどの曲を知っていたのですが、唯一「イエローキャット」という曲を知りませんでした。ねことしたことが、猫に関する曲を知らなかったなんてうかつだ。そういえばタイガーもネコ科だなぁ。写真はねこんちのイエローキャット。

 この頃のジュリーは痩せていて、芸能人としてもとても美しい。そらぁ、あれだけの人気を誇るわなぁ。ねこは冷めた子どもで、アイドル等に熱狂したり肩入れしたりしたことはないのだけれど、タイガース解散後のジュリーの活躍は傍目からみてもすごい勢いだと思っていました。
 もともと太りやすいタイプで、年齢とともにふっくらとはしてきたけれど、それはそれで本人もファンも受け入れていましたね。見かけは変われど、ジュリーはジュリーなのだと。

 そして、先日の6月25日に行われたジュリーのバースデーコンサートがすごかった。その日で75歳を迎え、世間でいうと後期高齢者です。しょっぱなにタイガー着ぐるみでの登場で、もうツカミはOK!歌も肝心の声もちゃんと出ていました。
 ここまでくると、芸能人として前人未到の世界を切り開いていています。何歳まで第一線でコンサートができるのか。全然、過去の人がリバイバルで登場という感じじゃないんですよね。
 コンサートでは、マイナ保険証の廃止についても言及。何歳になってもとんがってほしい。そういうジュリーの姿を同時代で見届けられるというのは、なかなか幸せですね。





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kokusaiyuko at 20:53コメント(8)

2023年04月18日

しなの川

 1973年制作、野村芳太郎監督の「しなの川」を観ました。

 昭和初期、信濃川上流の山間集落に小作人の息子として育った朝田竜吉(仲雅美)は、十日町の高野家に丁稚奉公していた。十七歳で男子特有の自分を持て余す時期に、同じ年頃の高野家の一人娘・雪絵(由美かおる)は全裸になって川遊びをして挑発するのでした。

 思わずできそうになったのですが、主人の淳三郎(仲谷昇)に咎められて追い出されそうになると、雪絵の母は昔、番頭と駆落ちしたということを暴露すると逆に脅します。淳三郎はやはり二人を引き離そうと、遠くの女学校に転校させます。

 転校したものの、雪絵は国語教師・沖島雄介(岡田裕介)に急速に接近。沖島は結婚を申し込みに十日町まで来たが、拒否されます。思い切って二人は駆け落ちし、結ばれるのですが、一夜をともにすると急に雪絵は冷めて帰郷するのでした。

 しかし実家に帰ると、高野家では金融恐慌のあおりで莫大な借金を背負っていることを知ります。強引に裕福な家に嫁がされようとすることに反発した雪絵は、竜吉と心中しようと二人で信濃川に身を投げました。が、奇跡的に二人とも助かります。

 そして雪絵は、幼いときに捨てられた母(岩崎加根子)を訪ねて行きます。なぜ出て行ったかと聞くと、父は同性愛者で女性として寂しかったと告白するのでした。「人にはふさわしい生き方がある」と母から聞かされ、雪絵は家のため、父のために嫁ぐことを決心するのでした。

ゆみかおる

 自然の景色を撮らせたら上手い川又昂さんなので、さすがに信濃川の雄大さが堪能できます。その中で、不自然に裸でいる由美かおる。これはサービスだなぁというのがありありなのですが、バレエで鍛えられた身体は整えすぎてあまりエロスを感じることができません。でも、西野式呼吸法、やってみようかなと思います。

 雪絵は結局は家のために嫁ぐということで、因習に絡め取られる女性の話かというと、望まない結婚をしても同性愛を貫くお父さん、そしてやはり女性としての情愛を全うしようとするお母さんと、自我を持った登場人物はなかなか先進的な気もします。そして、一夜をともにすればあっけなく冷めるという勝手さもいいなぁと。
 由美かおるは、そんなに上手い女優さんではないし、同棲時代に続いてヌードで持たそうとしている映画だと期待していなかったのですが、仲谷昇さんの存在感、そして、やっぱり岩崎加根子が出るだけで画面が引き締まって釘付けになってしまいました。予想したよりは悪くない作品だと思いました。



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kokusaiyuko at 23:19コメント(6)

2022年08月13日

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 1957年制作、マキノ雅弘監督の「純情部隊」を観ました。
 舞台は太平洋戦争末期の郊外のとある兵営。集まっているのは召集ホヤホヤでいまだにまげを結っている力士出身の光田二等兵(力道山)、元・会社社長の安永二等兵(進藤英太郎)、浪曲師の虎沢(広沢虎造)、流行歌手の谷村(ディック・ミネ)、漫才師の小島(堺駿二)、安永の社員だった塩見一等兵(杉狂児)というどうも戦力としては頼りないんじゃないかと思われる面々です。
 新兵たちを岩本軍曹(駿河海)と山添伍長(杉義一)は、徹底的に虐め抜くのでした。そんな彼らを、宇野見習士官(東千代之介)だけは何かとかばうのでした。

 親方が焼夷弾を浴びてケガで療養中ということで、外出を許された光田は、病院で弟弟子(山本麟一)と親方の娘(星美智子)から、親方には輸血が必要だと言われました。そこで力道山は大量の献血をして、フラフラになってしまい、あやうく門限破りをしそうになるが、汐見が気を効かせてことなきを得ます。

 やがて、部隊全員前線に送られる事になり、光田は相撲への未練を断ち切るために、仲間と断髪式を行います。しかし、その翌日に終戦を迎えるのでした。親方の元へ帰ろうとした光田であったが、親方は部屋を廃業して行方知れず。
 軍隊仲間達は、5年後のクリスマスの夕方5時に、日本橋で再会しようと誓いあって別れました。

 やがて5年が過ぎた約束の日。
元の社長と部長の関係に戻った安永と塩見、人気俳優になっていた小島は、待ち合わせた料亭で、意外な人に出会う。人気俳優の東千代之介となっていた宇野見習士官であった。
彼らは再会を喜ぶと同時に、リキさんこと光田と連絡が取れない事を案じながらも、芸者を連れて、クラブ歌手に戻って歌っていた谷村の店にくり出します。

 光田は戦後も定職につけず、谷村の店のサンドイッチマンをしていました。彼の姿を見かねた安永は光田に「マゲが結えるまで待ってはいられないから、プロレスラーになれ」と奨めました。みんなの後押しで厳しいトレーニングに耐えた光田は破竹の連勝を続けます。

 一方で、かつての岩本軍曹も、柔道7段の腕を買われ、戦後、プロレスラーになっていて、リングの上で光田と対峙することに。光田は日本チャンピオンを賭けて彼と戦いついに勝利するのでした。

OIP[1]
 マキノ雅弘、こんな作品も監督していたのですね。進藤英太郎と杉狂児さん以外、みんな本人役みたいなもんなのが、現実と映画がシンクロしておもしろいです。そういえば、進藤英太郎さんも、東映で「社長シリーズ」をしていたので、やはり社長なんでしょうね。力道山も元関取で、プロレスラーに転向していますし、マゲを結ったままの入隊というのもおかしい。
  戦時中のエピソードはコミカルに、そして戦後はペーソスあふれる展開はさすがのマキノ雅弘監督の職人芸。力道山に演技力を求めるのはヤボなのですが、それでもタレント性はあるので、映画出演も見応えは十分です。もちろん、プロレスシーンは迫力ありますし。
 戦争映画に対して娯楽性を求めるのは本当は好きではないのですが、やはりマキノ監督だからここは許そう。

 


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kokusaiyuko at 09:03コメント(0)
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ねこむすめ

にゃんこと昔の日本映画が大好きな道楽者です。
にしなり在住。

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