2011年03月21日
「いいえ、誰でも。」
「これ、いいよね。」
とあっちゃんが言った。ACのCMを見た後に。「いいえ、誰でも。」のナレーションが終わってから、ちょっと待っててと私は本棚に向かった。
紺色の背表紙に白文字の「睫毛の虹」。忘れていたわけではないけれど、久しぶりに手に取った。ぎゅうううんと世界が縮まった。
18歳の私が笑った。がりがりに痩せたたセーラー服姿の私が笑った。
「絵本っていうか。でも、コマチはきっと好きになると思う。」
ナナミちゃんはそう言って私に渡してくれた。東京へ行くすぐ前に。わざわざうちまで来てくれた。いや、うんありがとお。私は曖昧に笑った。第一志望の大学に見事落ちた私に対して、ナナミちゃんは早々と推薦で音大に進学を決めていた。そんな彼女に私は少なからず劣等感と嫉妬心を持っていた。
彼女の贈り物の封を開けたのは東京に来てからだった。ナナミの進学した音大には私のずっと好きだった人も進学が決まっていた。ナナミはそれを知っていたのに、決して私に言わなかった。私がまだその人のことを好きだったのを知っていて気を遣っているのは分かった。でも知ってるよって言いたかった。そうやっていいオンナ気取り?って思っていた。腹立たしくて悔しくてでも泣けなかった。私は泣き虫だったけど、ナナミには絶対泣きたくなかった。そういう場所が自分にあるところを許したくなかった。
絵本の間には「頑張ってね」という小さな手紙が入っていた。何を頑張るのよと思ったけれど、その絵本の「みんなちがって、みんないい」というくだりを読んで、わんわん泣いた。なによなによ、なんだってのよって泣いた。そんなことされたら私は絶対に勝てない。私のことしか考えていない考えられない私は絶対に勝てない。
「はい、これ。昔友だちから貰った。入ってるよ、ACのCMのんも。」
そう言いながら、あっちゃんに渡した。あっちゃんはおーと言いながら手を伸ばした。その指の形を久しぶりにまじまじと見た。丸い爪長い指大きなけれど決して厚くはない掌。
あっちゃんは「睫毛の虹」をまじまじと読んでいた。私は漫画に集中するふりをしながら盗み見していた。あっちゃんは真剣に読んでた。不思議な気持ちだった。
私とあっちゃんは好きなものが違う。笑う所も感動する所も違う。違う人間だから当たり前だとは思う。納得の上結婚した。でも、ああ、そうかあ。こうやって繋がっていくことが出来るんだなあ。
「このさ、『目に見えなくても』ってのいいね。みんなわかりやすいことばで書いてあるのがいいね。さすが童謡。」
「そうだねえ、基本子どもにわかるようにってのだから。それってでも凄いことだよね。」
「うん、CMの『いいえ、誰でも』ってのに持ってかれたからー。うん、いいよ、これ贈ってくれた友だち、いいセンスしてるね。」
あ、と思った。繋がった。と思った。
私たちは他人だ。別々の時間を別々に過ごした。だから一緒になれた。わかってたけどわかってなかった。こんな時だから。こんな時だからこそ。私たちは一緒にいる。一緒にい続ける。選んで望んで。大丈夫、私といる限りあなたは死なない、絶対に。と思う。
とあっちゃんが言った。ACのCMを見た後に。「いいえ、誰でも。」のナレーションが終わってから、ちょっと待っててと私は本棚に向かった。
紺色の背表紙に白文字の「睫毛の虹」。忘れていたわけではないけれど、久しぶりに手に取った。ぎゅうううんと世界が縮まった。
18歳の私が笑った。がりがりに痩せたたセーラー服姿の私が笑った。
「絵本っていうか。でも、コマチはきっと好きになると思う。」
ナナミちゃんはそう言って私に渡してくれた。東京へ行くすぐ前に。わざわざうちまで来てくれた。いや、うんありがとお。私は曖昧に笑った。第一志望の大学に見事落ちた私に対して、ナナミちゃんは早々と推薦で音大に進学を決めていた。そんな彼女に私は少なからず劣等感と嫉妬心を持っていた。
彼女の贈り物の封を開けたのは東京に来てからだった。ナナミの進学した音大には私のずっと好きだった人も進学が決まっていた。ナナミはそれを知っていたのに、決して私に言わなかった。私がまだその人のことを好きだったのを知っていて気を遣っているのは分かった。でも知ってるよって言いたかった。そうやっていいオンナ気取り?って思っていた。腹立たしくて悔しくてでも泣けなかった。私は泣き虫だったけど、ナナミには絶対泣きたくなかった。そういう場所が自分にあるところを許したくなかった。
絵本の間には「頑張ってね」という小さな手紙が入っていた。何を頑張るのよと思ったけれど、その絵本の「みんなちがって、みんないい」というくだりを読んで、わんわん泣いた。なによなによ、なんだってのよって泣いた。そんなことされたら私は絶対に勝てない。私のことしか考えていない考えられない私は絶対に勝てない。
「はい、これ。昔友だちから貰った。入ってるよ、ACのCMのんも。」
そう言いながら、あっちゃんに渡した。あっちゃんはおーと言いながら手を伸ばした。その指の形を久しぶりにまじまじと見た。丸い爪長い指大きなけれど決して厚くはない掌。
あっちゃんは「睫毛の虹」をまじまじと読んでいた。私は漫画に集中するふりをしながら盗み見していた。あっちゃんは真剣に読んでた。不思議な気持ちだった。
私とあっちゃんは好きなものが違う。笑う所も感動する所も違う。違う人間だから当たり前だとは思う。納得の上結婚した。でも、ああ、そうかあ。こうやって繋がっていくことが出来るんだなあ。
「このさ、『目に見えなくても』ってのいいね。みんなわかりやすいことばで書いてあるのがいいね。さすが童謡。」
「そうだねえ、基本子どもにわかるようにってのだから。それってでも凄いことだよね。」
「うん、CMの『いいえ、誰でも』ってのに持ってかれたからー。うん、いいよ、これ贈ってくれた友だち、いいセンスしてるね。」
あ、と思った。繋がった。と思った。
私たちは他人だ。別々の時間を別々に過ごした。だから一緒になれた。わかってたけどわかってなかった。こんな時だから。こんな時だからこそ。私たちは一緒にいる。一緒にい続ける。選んで望んで。大丈夫、私といる限りあなたは死なない、絶対に。と思う。
komachi_ijb at 23:02│Comments(3)│
この記事へのコメント
1. Posted by suvalu 2011年03月28日 14:16
>大丈夫、私といる限りあなたは死なない、絶対に。と思う。
「大丈夫、あなたといる限り私は死なない、絶対に。」
と想うことも多分必要。
んでもって
「大丈夫、貴女が貴女でいる限り貴女は死なない、絶対に。」
僕に言えることはこれくらい。
2. Posted by コマチ 2011年04月17日 19:12
ああ、すごいタイムラグ。
ありがとう。
私何だか死なないような気がするんですよって言うたのは宇野千代。
相変わらず死ぬ気がしない。
やり残したこともないのだが。
GWのどっかで遊びにこない?
カラオケいきたい(はあと)
あ、いまモンに噛まれた。痛い。
ありがとう。
私何だか死なないような気がするんですよって言うたのは宇野千代。
相変わらず死ぬ気がしない。
やり残したこともないのだが。
GWのどっかで遊びにこない?
カラオケいきたい(はあと)
あ、いまモンに噛まれた。痛い。
3. Posted by 腑緇≧イ腓堺 2011年07月23日 12:49
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