コマ送りの狭間で ~漫画の感想~

読み終えた漫画について、独断と偏見に基づき評価・感想を綴るブログ。






トップページ★★★★☆ > 幽麗塔 「永遠に生まれ変わるのさ。」
完結した漫画を取り上げている。
未だ読んでいない方には、良い漫画と出会えるきっかけになると幸い。
既に読んだ方には、新たな発見や共感が得られると幸い。

幽麗塔

【タイトル】

幽麗塔
ゆうれいとう



【概要】

作者 乃木坂太郎
出版社 小学館
掲載誌 ビッグコミックスペリオール
発表期間 2011年 - 2014年
巻数 全9巻



【評価】

★★★★☆




【内容紹介】

時は昭和29年、舞台は神戸。
ニートの天野は、幽霊塔と呼ばれる時計塔で、白い何者かに襲われ死の寸前、謎の美青年・テツオに救われる。
テツオは曰く「幽霊塔の財宝探しを手伝えば、金も名誉も手に入る」
しかしテツオの正体は、男を装う女であり、その名も偽名であった・・・・・・・・
(amazon引用)



【見どころ】

謎を詰め込んだサスペンス

メインストーリーの謎もさることながら、キャラクターが持つ謎が物語をより深めていく。
原作は、あの江戸川乱歩の小説だそうだ。
しかし、さらに原作のルーツを辿ると1898年にアリス・マリエル・ウィリアムソンという著者が発表した小説「A WOMAN IN GREY(灰衣の女)」だそうだ。
様々な作家が惚れ込み、アレンジを加え、歳月を重ねた本格サスペンスのコミカライズ版である。

主人公二人の行方

謎の人物、沢村鉄雄。
如何にも怪しく、それに巻き込まれていく天野太一。
しかし、何処かお互いに惹かれく沢村鉄雄と天野太一。
それは単純な友情や恋愛とは異なり、不思議な関係に見える。
果たしてこの二人はどうなってしまうのか・・・。

リアリティを感じさせる雰囲気

キャラクターと背景が肌理細やかに描かれている。
描写としても生々しく描かれることが散見されるため、そういったのが苦手な方には勧められない。
(暴力的な描写も多くあるため、そういったシーンが苦手な方にはお勧めできない)
しかし、その画が物語と相まってサスペンス特有の不安感や緊張感を際立たせる。
























【感想(ネタバレ注意)】

兎に角、怖い。
登場人物も恐ろしく、画も恐ろしく、演出も恐ろしい。
人が死ぬシーンも割とハッキリ描かれており、性別に関する話題も堂々と描かれており生々しい。
エロスすらも恐怖を引き立たせる要素になっているように思える。
また、顔面を変えることや脳の移植についても、具体的に表すので強烈である。
それでも話が気になってしまうから読んでしまうのだ。
謎が読み手の好奇心を促し、怖いもの見たさが気持ちを逸らせる。
これこそがミステリの醍醐味なのだ。
個人的に恐ろしかったのは、最後に女装した丸部が天野を追いかけるところだ。
鬼気迫る表情と予想だにしない思考が、ただただ恐ろしかった・・・。

テツオが男装し、天野が女装をするといったことを普通に描く面白い一面もある。
作中の時代を考えると、とても考え難い話である。
しかし、そういった禁忌がキャラクターの魅力を引き立てるから不思議である。
上述した怖いもの見たさも然り、人間の心理を上手についてくる構成で作られていた。

後から読み直して思ったが、物語の最期ではメタフィクションを強く感じた。
メタフィクションは、それ自体がフィクションであることを読者に敢えて示し、リアルとフィクションの関係性を問うものである。
本作品の最後では、天野がとある小説「幽霊塔」を見つける。
そして、それは様々な著者によって何度も何度も書き直され生まれ変わっていく話であると結論付けるのだ。
まさにこの漫画もその一部であり、その解を出した天野自身も生まれ変わった物語の一部であったのだ。
(実際に江戸川乱歩が描き直した事実もある。)
最後の最後まで”物語”を楽しませてくれる、そのような作品となっている。


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