2013年11月

「顔の腫れ引いた?」
少し心配してくれていた。
「えっ?心配してくれてる!ビックリだ〜!やだ〜どうした?」
少し意地悪く言った。
光は手に持っていたCDで俺の左頬をペシッと叩いた。
「返しに来たんだよ。」
「ありがとうございました。
やっぱり私にはフガジとかジミヘン?あと〜サブライムだっけか?」
俺は頷いた。
「分からないな〜…」
「だから〜聴いても光の好きな曲じゃないって言っただろ。」
……しばらく沈黙。
「?」なんだろう。光がなにか言った
「えっ?なに?なんか言った?」
光は下向いたまま「だからさ、たまには帰ってくるんだろ?」小さくいつもより低い声で呟いた。
「どうかな。帰るとこ無いし。
ここ(家)、俺の居場所じゃないし。」
「うち!家に来ればっ。んな遠慮せずに。
飯は無料、宿代無し、美人の女将付き
最高じゃん。」光は下を向いて呟いた。
「ありがとう。」何故か俺はホットした。
「安心した。帰る場所あって。」
光はこっちを見て大きく頷きながら
「もちろん」
2人は少し見つめあってしばらくして笑いあった。
すると玄関の脇の透かしガラスから人影が現れた。
親父だ。今日は帰らないはず。
俺の見送りもしないやつだ。なんで今?
ガタガタとなにかにぶつかりながら親父は
ドアノブに手をかけた。
その瞬間、光がノブに手をかけドアがあかないように力み始めた。
「なっなにしてる?」小声で俺は光に言った。
「えっ?」
「っわかんないっ!」
お互い引っ張りあっていた。
ガタガタ古いドアが今にも壊れそうになってる。
「なんじゃぁぁこりゃ!
だれだ〜っおい!小僧っ!てめーまだおれの家にいやがんのか〜!」
「よしわかった〜大都会に行けないようにしたるわ。ひひひ」

親父はドアが壊れるほどに蹴りだした。
バキッ!

扉に穴が空き親父の足が飛び出した。
光は飛び出した足に膝を蹴られうずくまった。
「きゃー痛い痛い!」
膝に扉の破片も刺さった。
光の血が流れている。
親父も扉から足を抜きとったとき足を傷つけたらしく、足に血が流れていた。
扉が空きまず俺を見てにやけた。
「バカなやつ
義務なんだよ!てめーをそだてる。
やんなきゃ金もらえねーだろ。おわっちまったゆ。この先どーしりゃいいんだ?えっ?」
俺は恐怖に満ちていた。
「恩返しするんじゃねーのか?普通〜?
ババーの親戚に逃げやがって…くそっ」
少し正気に戻った顔をした。
足元でうずくまった光を見た。
「?」
「隣の娘?なにしてる??」
光をまじまじみている。なんかやばい。
「てめーか扉抑えていたのは?」
……「なんか、女になってんな…しらんあいだに。」「なぁー?」
俺に向かって話かけた。
「もういいだろ。光、怪我したんだ。医者つれてくよ。」
光のとなりに居る親父をどかそうと肩を触った。
「!!」
「どりゃ〜!」顔面を裏拳で強く殴られた
「さわんな!ボケ〜!」
俺はよたり、うずくまった。
「小僧ほっといて俺と遊べ!
いい脚してるな〜。」光の血だらけの脚を
親父は撫で回しながら光の髪を引っ張り顔を自分に向けさせた。
光は泣きそうになりながらも親父に睨みつけ「最低の父親だ!あたしが守るんだから!」
「へっ惚れてんのか?この馬鹿に?」
同じ血が流れてんだ。一緒だ。ほらキスさせろ!」


「!」
ドッ

俺は玄関にあった工具箱からマイナスドライバーを手にしてその手を親父の首に刺していた。
時間が止まっていた。
近所の公園からは5時を告げる音楽が流れていた。

顔の腫れも引いた二日後、荷物の整理も終わえ旅立ちを明日に控えていた。
俺には、東京へ行ってなにかをやりたいとかは何も無い。ただ何も無いこの町を出たいだけだった。俺が幼い頃母親は酒乱の親父に愛想尽かし家を出た。残された俺は幼く無力で毎日を耐えていた。
逃げる場所はカーテンに包まること。
母親の祖母が近くに居てくれたことが救いだった。
危険を感じると隣の家の人が祖母を呼び
俺を連れて行ってくれた。
隣りの家は家族三人。
娘は俺と同級生だ。あいつは何かと世話を焼いてくる口うるさいほどに。
(ピーンポーン。)
ん?誰かきた。
親父は昨日からいないみたいだ。
「はい?」
「おはよ」隣りの光(ひかり)だ。

目の前に青や黄色の発光が走った。
左頬を蹴られた。
ちょうどしゃがみ込んでいたせいで蹴りやすかったんだろうか、自分がサッカーボールのように感じた。
その瞬間は痛みは無かった。が数秒後激しい痛みがきた。
ぐっ〜!っ!いてぇ〜!
唸っていると後ろに2人が回り込み羽交い締めにされた。
そして角刈りの一重まぶたのガタイの良い
いかにも野球部上がりのやつが俺の前髪を掴み、お前マジ粋がってんじゃね〜ぞ。
さっきと同じ左頬を右フック!
がっ!いてぇ〜マジいてぇ。同じ所。
そして三人目、四人目と殴る蹴るで
もう痛みは無かった。羽交い締めで動けずただやられるだけだった。

気がつけば一人暗闇の中ドラム缶のそばで
へばっていた。 生きてた。最悪だ。最悪だ。こんなん最悪だ。
痛みが顔中にあった。しかもアンパンマン並みに顔が大きく感じた。
そっか俺腫れやすい体質なんだ、とか血が出てないからチョットカッコ悪いななんて少し冷静な自分を作っていた。
こんな最悪な卒業式。中学校。終わって良かった〜…
ポケットからタバコを取り出し火を点けた。そして卒業証書を筒から取り出しライターの火を点けた。
燃えている卒業証書を見つめながら俺は泣いた。
少しだけ。

数学、英語、歴史、国語。
とりあえず嫌いな順で燃やしていった。
次に学ラン。次に鞄。
卒業アルバム…!!えっ!
わっやばっ!……
慌ててドラム缶から卒業アルバムを取り出すと
少しビニールカバーの角が溶けて黒くなりプスプスといっていた。
いいんだ。終わったんだ。
と言いつつまたドラム缶へそれを放り出した。
夕方になると、ある程度燃え切っていた
下着姿じゃ帰れない。そして仕方なく、ジャージに着替えていると、おい!
振り向くと、同じ学年…だよな確か…くらいな
奴ら5人がこっちへバットやら竹刀を振り回し肩で風を切るような切らないような感じで歩いてきた。
うわっ、だっさっ、なにあの歩き方。ガン飛ばしてるし。しかもバット…終わりだ。これビーバップの映画で観たやつじゃん。
とその瞬間、

1990年春。僕は中学時代を終了し東京にいる親戚の家へ居候しそこで働くことを決めた。
もうとにかく義務教育が嫌いであった。制服、みんなと同じ鞄、靴。それらを身に着けているとなんだか吐き気がしてきて脱ぎ捨てたくなっていた。だけど学校では脱げない。
当たり前だ。
だから、第1ボタンを外し襟のカラーを外し少し
周りとは違くしていた。
ちっさな抵抗だった。
よくまぁ卒業できたもんだわ。と思う位授業へは
出て居なかった。屋上で昼寝、タバコ、学校の裏は山だったんで先生から逃げる為に山へ逃げたり
はぁー、想い出?
なんだったんだろうか?
なにも感じない…卒業式が終わった後第一ボタン
下さいって!女の子が来た。
どーぞ。ってブチッ!
あっ!勘違いしないでね。
集めたいだけだから。
…。
期待した俺。だよな。だよな。
なんか余計制服がムカついてきた。鞄が、教科書がー!!
そのまま校庭脇にある焼却炉へダッシュ。
そこには焼却炉とドラム缶がおいてあり、既にドラム缶にはゴミが燃やされたあとのようで、
小さい煤がゆらゆら揺れていた。
そこへ教科書から燃やしはじめた。

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