上海・東京・名古屋・京都を飛び回る税理士の告白

税理士法人名南経営 近藤充 公式ブログ

この3月に「営業税増値税改革の全面推進に関する通知」(財税[2016]36号)が出され、5月1日より従来営業税対象となっていた建設業、不動産業等の業種に対して増値税対象となることとなりました。

2012年から一部都市でスタートした営業税・増値税改革もこれで総仕上げということとなります。最近よくお問い合わせをいただくのが、これは減税になるの?それとも増税になるの?というものです。今回はこちらについて説明させて頂きます。

(基礎情報)

従来は、簡単にいうと、モノ⇒増値税対象、サービス⇒営業税対象となっていました。対象によって適用される税目が異なるという結果になります。計算方式もそれぞれで異なります。増値税は日本の消費税同様、売上に係る増値税から仕入に係る増値税を控除した金額を納税します。一方、営業税は売上に対して、一定税率を掛けて計算した金額を納税します。重要な点は、営業税は売上のみで計算され、控除されることはない、という点になります。

(改正の目的)

したがって、サービス業を中心とした営業税課税事業者は物品購入の際に仕入増値税を支払ったとしても、増値税事業者のように控除できず、結果的に税負担が重くなっているという現状がありました。今後の中国サービス業を発展させたい政府としては、サービス業の企業を制度整備によって支援する、という目的といえます。
 
(従前の状況)


 増値税税事業者

 売上増値税(売上×17%)-仕入増値税(仕入×17%)=納税額


 営業税事業者

 売上×5%(業種によって5~20%)=納税額


ポイント

 増値税事業者は仕入増値税が多く計上されれば、納税額が減少しますが、営業税事業者は仕入増値税が多く計上されても納税額は減少しません。

(今後の状況)

 原則として、上記増値税事業者の計算方式が採用される

(コメント)

今後は、サービス業においても、仕入増値税が控除できるようになるため、減税として説明されている状況です。

しかしながら、単純に減税とは言い切れない状況があり、その要因は下記2点となります。



 1、税率の引き上げ

 営業税の税率と、今回サービス業に導入された増値税の税率を比較すると下記のとおりとなります。


             営業税     増値税 
・金融保険業     5%         6%
・不動産リース    〃          6%    
・サービス業      〃          6%
・建設業        3%       11%
・土地使用権譲渡  5%       11%
・不動産販売     5%       11%

 2、仕入増値税の控除

   売上増値税の控除をすることができる仕入増値税は適正な発票に基づくものである必要があるため、
  中国ローカル企業との取引で相手から回収できない場合、あるいは、取引企業規模によっては、小規模納税人として3%の仕入増値税しか適用されない場合も想定されます。
   

 上記2点の要因によって、仕入増値税が控除できるといっても 仕入増値税の控除ができる状況にならず、結果的に税率が上昇している分だけ増税となってしまうケースが発生すると考えられます。

 したがって、今回の改正対象となる企業においては、自社の仕入のうち、適正な増値税発票がどれだけ回収できるかをきちんと確認する必要があります。従来のように売上だけでは税額が確定できないという点に留意頂くことが対応の第一歩となります。仕入の増値税発票の回収状況によっては、価格変更をしないと従前の利益を維持できない可能性があります。

 上海自由貿易試験区(以下、上海FTZ)において、2013年に、上海現地法人より日本本社に向け、駐在員の立替給与を送金する場合、税務局への届出が必要とする通知が出されていました。
 
 従来までは、中国によくみられる、
とりあえず規定しておいて、実効性はなし、という状況でした。しかし、昨年後半から年末にかけて上海FTZ所在現地法人に対して届出提出を促す指示が出されています。

 これは上海FTZのみならず、
他の区の税務局においても、同様の対応を迫られる可能性が高い状況ですので、今回はこれを取り上げます。


 1、種類

   ⇒ 「契約届出」と「税務届出」の2種類となります。

   ・「契約届出」
    非居住企業(日本本社)が中国国内企業(現地法人)から派遣人員の立替給与を
    受け取る場合に、届出が必要
     ⇒ 駐在員を赴任させ、以降、立替給与を受け取る場合に届出が必要

   ・「税務届出」
    中国国内企業(現地法人)が非居住企業(日本本社)に対して、派遣人員の立替
    給与を支払う場合に、届出が必要
     ⇒ 立替給与支払いの都度、届出が必要    
 
 2、留意事項

     
現状
 
    








    弊社が問い合わせたところ、上海市長寧区、黄浦区においても、上記届出の提出は
  必要とのことでした。
   ただし、その回答の中には、「届出は必要であるが、(煩雑であるため)毎月提出
  されても受理しない。届出が必要な日本本社への送金を止め、個人口座へ給与として
  送金してほしい。」というものがありました。
   (下記、税務局提案事例参照ください。)

税務局提案事例
 












  3、今後の対応

    STEP1 まずは、立替給与の支払いについて、本社及び現地法人で上記届出が
         必要であることを共有認識として頂く。

    STEP2 上記税務局提案のように、送金先の変更が可能か、検討頂く。
         また、毎月送金している場合は、3ヶ月等の定期的な送金へ変更する
         事もあわせて検討頂く。

    STEP3 所轄税務局に問い合わせを行い、届出実施。


    仮に、STEP2の段階で、方法変更が不可能である場合、手続き懈怠リスクを
   考慮して今後の対応を検討する必要があります。
具体的には、届出をしないまま、
    現状通り、本社向け立替給与送金の継続、ということもありうるかもしれません。
   
    現状では、手続き懈怠について、具体的な罰則規定は記載されておりません。


        

 2016年に入り、上海市では個人所得税の申告システムが変更されています。今回は個人所得税の申告を取り上げたいと思います。

 

 個人所得税の申告に際しては、パスポートNo、収入金額、免税項目、社会保険情報、等の情報を入力して進めていくこととなります。(※現在、上海においては、外国籍従業員の社会保険加入は強制されておりません)

 その入力が必要な情報の中に、中国での活動状況を選択する欄が設けられました。この選択により個人所得税の計算公式が決定される、という流れになります。具体的な選択肢及び計算公式は下記のとおりです。

 

活動状況「1、(中国滞在日数が)90日或いは183日を超えない」

 ⇒ 計算公式 

(当月国内外給与総額に係る課税所得×適用税率-速算控除)×(国内支払給与/国内外給与総額)×(国内業務日数/当月日数)

活動状況「2、(中国滞在日数が)90日或いは183日以上1年」

 ⇒ 計算公式

   (当月国内外給与総額に係る課税所得×適用税率-速算控除)×(国内業務日数/当月日数)

活動状況「3、(中国滞在日数が)1年から5年」

 ⇒ 計算公式

   (当月国内外給与総額に係る課税所得×適用税率-速算控除)×(1-国外支払給与/国内外給与総額×国外業務日数/当月日数)

活動状況「4、(中国滞在日数が)居住満5年以上」

 ⇒ 計算公式

    当月国内外給与総額に係る課税所得×適用税率-速算控除

活動状況「5、外国籍高級管理職で(中国滞在日数が)90日或いは183日を超えない」

⇒ 計算公式

  (当月国内外給与総額に係る課税所得×適用税率-速算控除)×国内支払給与/当月国内外給与

 

 この中で注目すべきは活動状況「5、外国籍高級管理職で90日或いは183日を超えない」のパターンです。この活動状況に該当する可能性があるのは、出張ベースで総経理をされる方です。このような場合、業務のベースは日本にあり、中国での業務はあくまでも出張という位置づけとなり、中国現地法人からの給与支給はされないことがよくあります。
 その状況で、この計算公式を適用すれば、国内支払給与がゼロであるため、納税額もゼロとなります。
 実は従来から通知には記載されているもので目新しいものではありません。但し、実務上は、この計算公式の適用を認めてくれないような税務局の徴収姿勢があり、納税を余儀なくされることがよくありました。実務の運用がどのようになっていくかは今後の推移を見守るよりありませんが、このように活動状況によって適用される計算公式が明確になったことは望ましいことであることは間違いありません。

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