ファミリーヒストリー「柳家花緑~祖父・小さんの二・二六事件、その真実~」 50分
2013/1/28(月) 22:00
★5
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内容
落語家の柳家花緑の祖父の柳家小さんの回。
小さんの父、伝之助は東京の日の出町の養蚕農家に生まれる。伝之助は成長して長野に行き、紡績工場で働く。山梨から来たてふと結婚し、4人の子を産み、末っ子が小さん。父は金融業を始めるが失敗し、浅草に移住する。
小さんは子どもの頃から話が巧みだった。兄が結核で寝ている間に面白い話を考え、それを話していた。中学時代は剣道に熱中していた。中学卒業後、法律事務所の雑用係として就職する。事務所の弁護士に寄席に連れて行ってもらい、感銘を受ける。18歳で4代目柳家小さんに入門し、落語の世界に入る。
入門3年目の昭和11年1月に徴兵で陸軍に入隊する。1ヶ月後に226事件が発生する。当日は未明に起こされ、実弾を渡され、真相を知らされず、警視庁を占拠する。午後にはクーデターだと知る。2月28日に食糧が届かなくなり、天皇の命令により鎮圧部隊が派遣された。反乱軍は混乱し、沈鬱なムードになる。その場に畑和(のちの埼玉県知事)もいた。夕方に上官が小さんに落語をやるように命令した。小さんは子ほめを一席話したが、誰も笑わなかった。29日の朝に投降勧告を受け、226事件は収束する。
歩兵第三連隊は反乱軍の汚名を着せられ、昭和11年5月に満洲送りになる。非常に厳しい生活だったが、小さんは「つらい時こそ、笑いが希望になる」と考えた。昭和14年に任期を全うし、東京に帰る。前座から二つ目に昇進し、結婚、子どもが産まれる。昭和19年に再び徴兵され、仏領インドシナに送られる。終戦後、ベトナム南部のダナンで捕虜として生活する。収容所で落語を披露する。昭和21年5月に日本に帰国する。昭和22年に真打ちに昇進。平成7年に落語界初の人間国宝になる。孫の花緑の稽古をつける。平成14年に87歳で亡くなる。

感想
小さんの笑いは軍隊生活に裏打ちされていた。226事件で上官の命令に従っただけの新入兵なのに満洲送りになり、非常に理不尽な体験をするが、「つらい時こそ笑い」と考え、それを落語の芸に昇華させたのが素晴らしい。

226事件で国会前を戦車が走る
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疲弊した兵士を前に落語を一席
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超豪華メンバー 志ん生、文楽、圓生、小さん
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「やっぱり心が汚れていると、出てくるものがみんな汚くなっちまう。ずるいやつはずるい噺になる。生意気なやつは生意気な噺になる。卑しいやつは卑しい芯のない噺になってくる。だから、全部噺の上に出てくるんだから、心は清廉潔白でなくちゃいけない」
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