本書『成長の限界』の第犠呂遼粗(P-13)に次の話が載っています。「現在,人々は,五人の息子をもつことは多すぎないと考えている。そして息子もまた,五人の息子を持つ。かくて祖父が死ぬ前に,すでに二十五人の跡継ぎがいる。それゆえ,人はますます増え,富はますます少なくなる。かれらは一生懸命に働き,ほんのわずかしか得ることがない。」これは『韓非子』からの引用です。中国古代で既に人口問題を取り上げている例として載せたのでしょうか。著者もなかなか教養がありますね。『韓非子』を読んでいる西洋人というのは珍しいのではないでしょうか。
『韓非子』は中国の戦国時代(前5世紀から前3世紀,秦の始皇帝が統一するまで)末期に書かれたもので,法によって国を統一するべきとする政治哲学の書といえるでしょう。
原文は次のとおりです(太字の部分が本書に引用された部分に対応します):古者丈夫不耕,草木之實足食也;婦人不織,禽獸之皮足衣也。不事力而養足,人民少而財有餘,故民不爭。是以厚賞不行,重罰不用而民自治。今人有五子不為多,子又有五子,大父未死而有二十五孫,是以人民眾而貨財寡,事力勞而供養薄,故民爭,雖倍賞累罰而不免於亂。――『韓非子』の五翥篇(ゴトヘン)にあります。この「翥」というのは古い漢字で「樹木の芯を食い破る虫」ということで「物事を損ない破る」ということのようです(漢字源による)。要するに昔は人口が少なかったのでお互いに相争うこともなく人民も平和に暮らしていたが,今や人口が増えて持分が少なくなり,争うようになってしまった,ということです。・・・今も昔も変わらないということでしょうか。もっともその程度が今は地球規模で,というところが違いますが。
以上,このBlogとしては本論から離れえた余談でした。まあ,ティーブレイクということでご勘弁ください。