2007年02月20日

今日の言葉:「朝三暮四」・・・列子篇

 この言葉は皆さんもう何回も聞かれ、ご自分でも使ったことがあると思います。『荘子』内篇・斉物論に出てきますが、同じ言葉が『列子』にもでてきます。同じ言葉を引用しながらこの二つでは違った意味を持たせています。この違いを的確に説明している辞書も引用例も極めて少ないようです。今回は『列子』の使い方をご紹介しましょう。『荘子』の使い方、両者の比較については別項でお話することにします。

『列子』黄帝篇から書き下ろし引用します;《宋に狙公[ソコウ](猿回し)なる者有り。狙(猿)を愛し、之を養って羣[ムレ]を成す。能[]く狙の意を解し、狙も亦[マタ]公の心を得たり。其の家口[カコウ](食事)を損[ヘラ]して、狙の欲を充[ミタ]せり。俄[ニワカニ]にして匱[トボシ]し(急に貧しくなった)。将[マサ]に其の食を限らん(減らそう)とす。衆狙(猿たち)の己に馴れざるを恐るるや、先ず之を[タブラ]かして[]はく、「若[ナンジ]に茅[ショ](どんぐり)を与えんに、朝に三にして暮に四にせん。足らんか(それで足りるだろう)」と。衆狙皆起って怒る。俄[ニワカ]にして曰(い)はく、「若[ナンジ]に茅を与えんに、朝に四にして暮に三にせん。足らんか」と。衆狙皆伏して喜ぶ。》・・・内容は単純なので下手な訳を付すことはないと思います。要するに、餌であるどんぐりの実を「朝に3つ、夕方に4つ」といったら猿たち一斉に怒り狂ったが、では「朝に4つ、夕方に3つでは」といったら大喜びで満足した、というお話です。

最初の部分に列子自身が書いているように、急に貧乏になってしまったので、猿たちの餌を減らさなければならなくなったのだが、猿たちに嫌われるのを恐れて一計を案じた。それは猿たちを騙すことだった、ということです。頭の良い者が、少しそれより劣るものを騙すことのたとえ話ということです。

因みに『広辞苑』では、1)目前の違いにばかりこだわって、同じ結果となるのに気がつかないこと、2)口先でうまく人をだますこと、とあります。まさにこの『列子』の使い方ですね。

現代に当てはめると、政治が国民を騙し、ちょっと頭の良い者(役人、それに経済界のリーダーたちと悪徳商人)が弱者(老人や、お金に困っている人や、欲呆けしている小金持ち)をうまく騙して金を巻き上げるといったことではないでしょうか。

毎年の「労使交渉」を見ていると、何とはなしにこの言葉を思い出しますが、私だけでしょうか・・・