石原壮一郎コラムニストで「大人力」をキーワードに多数の著作を持つ石原壮一郎さんに、大人の恋愛・結婚感について、「婚トレMAGAZINE」が話を聞きました。

■自分を振り返って現実を知る
今は結婚に関する情報がものすごく溢れているので、結婚までのシミュレーションは完璧にできると思うんです。ただそれをいくら重ねたところで、実際の結婚には大して役に立たないんですよね。逆にシミュレーションを重ねれば重ねるほど、こんなに難しいことが自分にやっていけるんだろうかと結婚することが怖くなる。

それに情報が多いと相手に対する要求も細かくなっていきます。雑誌を見ると、「こういう行動をする人は危ない」という情報が山ほどあります。それも煙草を吸う人はこう、とかそういったわかりやすいものならまだいいのですが、これは関係ないだろうという行動まで結びつけていたりする記事も多いですよね。

そういう情報ばかりをずっと見ていると、相手が何をやっても「この人はやばい」というサインにみえてきてしまう。すると結婚について一生懸命考えたり、完璧な結婚をしようと思って努力すればするほど、ゴールから遠ざかっていくという矛盾した結果になってしまうんです。

そもそも結婚というのがちゃんとした男性とちゃんとした女性がちゃんとした家庭を作ると思うところに、大きな間違いがあるのだと思います。結婚ってどこかだめな男性と、どこかだめな女性が、何かだめなところがある家庭を作っていくものだと思うんですよ。人間が行なうほかのあらゆる行為と同じように。

相手にしたって自分が完璧じゃないことはわかっているはずなのに、完璧じゃない自分がどうやったら完璧な異性をつかまえられるのかと考えるのはずうずうしい話ですよね。完璧じゃない男性と女性が、完璧な相手を求めてうろうろしていても出会うわけがありません。「この人なら何とかやっていけるんじゃないか」と思える人を探さないと形にはならないんです。

だからまず、「結婚はダメな人間同士がするものだ」という覚悟を決めることが実りある婚活なり婚トレに重要なことだと思います。

■あなたの理想に無茶はないか?
理想の結婚を描くのは楽しいことだと思います。ただし結婚には、進学や就職と違って締切がないという大きな罠があります。「今年しなくても、来年でもいいか」となりやすい。でも締切もなく理想ばかりを描いていると、「俺は役者になるんだ」と夢ばかり語って何もしないだめな人のようになってしまいます。夢を語る自分がまず一番大事で、現実やその夢に近づくために何をするかということは後回しにしてしまうような人です。

もちろんイメージは大事です。ですが地に足のついてない妄想とイメージとは、まったくの別ものです。

でも「結婚」という、どんな人にも無限のチャンスがありそうなこととなると、自分の抱いている結婚像、恋愛像がどれだけ現実離れしていて実現しづらいものか、なかなか気づきづらいかもしれません。しかも困ったことに、他人も指摘しづらい部分です。

「俺はいつかオリンピックにでるんだ」という人間にはつっこめますけど、「私はいつかこんなタイプでこんな肩書きの彼をつかまえる」という人に、それは無理だ、とはなかなか言えません。そうなると本人も気が付くことができないまま、どんどん理想だけ図にのってくるという悪循環にはまる危険性があります。

※以上前編、来週の中編「結婚を遠ざけるワード『私らしさ』」に続きます。

■石原壮一郎さんプロフィール
コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、93年に『大人養成講座』でデビュー。以来、大人モノの元祖&本家として、雑誌、新聞、WEB、テレビ、ラジオと各方面で活躍している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)と『大人の女力検定』(扶桑社文庫)は、ニンテンドーDSのゲームソフトにもなるなど世に「大人ブーム」を巻き起こした。『30女という病』(講談社)、『決断道』(廣済堂出版)、『大人の合コン力検定』(ソフトバンククリエイティブ)など著書多数。8月下旬に最新刊『大人の食いモン力』(扶桑社文庫)が発売! 公式HP「大人マガジン」。

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