石原壮一郎コラムニストで「大人力」をキーワードに多数の著作を持つ石原壮一郎さんに、大人の恋愛・結婚感について、「婚トレMAGAZINE」が話を聞きました。

中編からの続きです

■ほめ上手・逃げ上手が婚活における「大人」
僕が提唱している「大人力」というのは、うわべを無難に取り繕うテクニックのことだけを言っているわけではありません。たとえば自分のだめさ加減を笑う力とか、へこむようなことがあった時に、それを無理矢理に喜びに変える力も含まれます。そして、もっと大事なのは、周囲から突っ込まれやすい人になるための切り返しや、それがどんなに大事なことかを知ること。

突っ込まれやすいというのはそれだけ、その人の懐が深くないとできないことだと思います。突っ込まれやすい人のところにはいろいろなものが集まってくると思いますよ。もちろん単に間抜けなだけだとちょっと困りますけどね。

人を褒めることもそうですね。年下だったり、同僚を「あの人すごいよね」とか「あの子、すごい頑張っているよね」と言えるようになったときに人はひとつ大人になるんだと思います。

きちんと人を褒めることができるということは、それだけ周りが見えているということなんです。相手を褒めることこそが、自分の値打ちを上がるいちばんの近道と言っても過言ではありません。

それに、褒めるのと単なるお世辞は全く違います。お世辞というのは屈辱感とか義務感とかに苛まれながら、無理して相手においしいことを言うことです。そういうのが必要な場合もあるかもしれませんが、それよりも褒めて相手が喜んで、そのことで自分もともに幸せになれるということが「褒める」ということなんだと思います。

「あ、この人今日髪を切ってきたから褒めて欲しいに違いない」と思って、褒めたら相手がまんまとにやにやして、しめしめと思うとかそういうのも十分にいい意味での「褒める」に含まれます。相手に喜んで欲しいという気持ちは嘘ではないわけで、そのための一番いい方法を探した訳ですから。

こっちをよく思ってもらいたいとか、贔屓にして欲しいとかそういう気持ちがあんまり強くあるとそれはお世辞になってしまいますけど、相手に喜んで欲しいという気持ちがまず先に立って、褒め言葉が飛び交うようになると世界はもっと平和になっていくんだと思うんです。

ぜひ、婚活中の方には相手を褒めるというトレーニングをしてほしいと思います。褒めるというのは相手をしっかり観察するということです。すると人のいいところを探すという癖もつくと思うんですよね。

■丸く収める力をつけよう
「丸く収める力」は案外大事なんですよ。丸く収まってさえいればあとの事はだいたい余分なことなんじゃないかと思います。それに勝ち負けをはっきりさせることを目的に生きるのはちょっとめんどくさいですよね。丸く収める方を目的にしたほうが、何だか楽しそうじゃないですか。大人力の世界では-大人力の国というのが仮にあるとしたら、そこではみんなが競って負けたがると思うんですよ。負けるが勝ちを体現していくのが大人力の国だと思うんですよね。勝ったところでそれは新たな戦いの始まりでしかないし、何かを踏みつけた上での目先の喜びでしかないと。

それに人に頭を下げるとか謝るっていうのが苦手な人も多いですよね。確かに、それはそんなに楽しい事ではないかもしれません。ただ、謝らないことをプライドの高さみたい捉える考え方もありますけど、別に謝らなくてもいいところでもさっさと謝ってトラブルを回避できるのが、大人力の国におけるプライドの高さだと思うんですよ。

どんなときでも相手の期待外れな部分とか、自分が何度も失敗してしまうところとか、いろんな事に負けていかないといけないわけですよね。そこで負けることを認めずに、どんどん覆い隠そうとすると、亀裂が起きて収拾が付かなくなるのだと思います。「また負けちゃった、ははは」くらいに思って、負けることも醍醐味ぐらいな感じで鷹揚に構えていればいいんじゃないでしょうか。

■本当にあなたは結婚したいのか?
婚トレをするにあたっては、自分の「結婚したい度」がどれぐらいなのかというのをちゃんと振り返った方がいいかもしれないですね。それほど結婚願望がないのに、「いい年齢だから結婚しなくちゃ」とか、「今は婚活が流行だから」と流れで婚活している人もいると思うんです。

大して結婚願望がないから、いざ相手が具体的になってきたりするといろいろ難癖つけたりとか、自分の気持ちのテンションが下がったりしてしまうというケースは、けっこう多いのではないかという気がします。

結婚するもしないも人それぞれで別にいいと思うんです。ただ60歳くらいになって結果的に、これは一生このまま一人だろうなと思った時に、その人生をどう肯定するかというところに大人力が問われますよね。私はこれでよかったんだと思う力(笑)。大人の基本は自己肯定ですから。もちろん、結婚して辛い事がいっぱいあって、ロクでもない目にあったとしても、でも結婚してよかったと思うしかない……。過去起きてしまった事を後悔するのではなくて、いい勉強になったと受け止めるのが大人の欲張り方であり、人生というものに対する誠実な姿勢ではないでしょうか。


■石原壮一郎さんプロフィール
コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、93年に『大人養成講座』でデビュー。以来、大人モノの元祖&本家として、雑誌、新聞、WEB、テレビ、ラジオと各方面で活躍している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)と『大人の女力検定』(扶桑社文庫)は、ニンテンドーDSのゲームソフトにもなるなど世に「大人ブーム」を巻き起こした。『30女という病』(講談社)、『決断道』(廣済堂出版)、『大人の合コン力検定』(ソフトバンククリエイティブ)など著書多数。8月下旬に最新刊『大人の食いモン力』(扶桑社文庫)が発売! 公式HP「大人マガジン」。

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