
私は、新しいサービスなどが好きで、いろいろなサービスをみては、「これは便利!」と絶賛したり、「イマイチ〜」と勝手にダメ出しをさせていただいたりしながら、日々を楽しんですごしております。そんな中で、インターネットを使ったり、デジタル技術を用いたサービスは、本当に日々進化をとげていて、職業柄、これはどう考えたら良いのかしら・・・と気になってしまうものもあります。
その中で、気になっている言葉の一つが「デジタル遺品」です。
なんとなくのイメージはわかりますが、よくよく聞くと、いろんな意味で使われているようです。
◆オンライン口座やオンライン証券などの紙媒体の書類がなく財産的価値を有するもの
インターネットバンキングやオンライン証券など、最近は店舗にいかずに、インターネットを利用して使える金融サービスが増えており、このようなものをデジタル遺品と呼ぶこともあるようです。
ネット等では、「ログインできなければ、残高の確認ができない」との記載をよく見かけますが、通帳はなくても、国内の金融機関であれば、きちっと残高証明書も相続の手続きも可能です。通帳といった見えやすいものがないと、利用している金融機関を探すのは困難ですし、窓口がわかりにくい分不便ではありますが、相続人として手続きをすることはそんなに困難ではありません。
また、株式が保有されている金融機関(証券会社や信託銀行)を調べることも可能です。PCなどでメールなどを確認できる状況であれば、メールを手掛かりに利用していた証券会社などを探し出すことはさらに容易になるでしょう。
これらの口座や証券会社にある株式などは、間違いなく相続財産にあたりますので、従来通りの方法で、遺産分割協議書なり、遺言書なりに基づき手続きをすることは可能です。
◆新しいサービス
財産的価値があるものは、遺産になり手続きを行えます!と上で述べましたが、ITなどを利用した新しいサービスが登場するにつれて、自信がないものも出てきました。
新しいサービスなどで換価できそうだけど、その価値の評価に困ったり、実際に換価が本当にできるのかがわからないものです。
(1)仮想通貨等
例えばビットコインです。財産的価値を有するものではありましたが、どのように扱うのか、国でもビットコインの性質について、議論をされておりました。現在は「仮想通貨」として定義され、平成29年4月1日からは、仮想通貨を扱う業者(仮想通貨交換所)については、登録が必要とされるようになりました。
登録業者は、随時ホームページなどで公表されますので、交換所を通じて入手したビットコインについては、状況の把握はしやすくなるかもしれません。
ただ、登録が義務付けられているのは、業として行なっている場合のみですので、個人的に売買したなどや、「採掘」した場合などは、把握が困難であることは依然変わりません。家探ししたところで、タンスの中や、ベッドの下などから発見できるものではないからです。
ちなみに、ビットコインは一般的には交換所などの業者さんを利用して購入する方がほとんどだと思いますが、「採掘(マイニング)」することもできるそうです。といっても、どうやら、このビットコインの仕組みを維持するための手伝いをして、その見返りにビットコインを新しくもらう・・・というイメージのようです。こちらも、興味はありますが、またの機会にいたします。
従来はモノとして消費税が課税されていたビットコインですが、「仮想通貨」と位置付けられ、平成29年税制大綱では通貨であることや他国の動向を配慮して消費税については非課税として扱うという形になりました(ビットコインで得た利益が非課税になるというわけではありません)。平成29年7月1日から行う取引に適用されるようです。ただ、実際に使い方に親しんでいる人はまだまだ少なく、遺産分割時、あるいは、相続税の申告の際に、流動的なビットコインの評価をどのように考えるのか、この点も今後問題になってきそうです。
(2)ゲーム内通貨など
それから、ゲームの中で用いられている仮想通貨やレアアイテムなども、もし相続人に同じゲームをしている人がいたら、他のものはいらないから、このアイテムがほしい!!と思うかもしれませんね。私はゲームをあまりしないので、利用規約などは熟読したことがありませんが、どうなっているのでしょう。いろいろと気になります。相続人が換金する手段の有無や、法律の枠組みの中でのゲーム会社のスタンスなど、新しいサービスや仕組みであるほど、扱いが難しそうです。

・SNS、ブログ、ホームページ、ゲームなど、クラウド上のアカウントにログインをして利用するもので、何らかのデータが掲載、保管されているもの
ご年配の方でも、スマホやタブレットなどを使いこなす方は、どんどん増えております。お孫さんの写真をみたり、町内会の活動に利用したり、若者だけのものではありません。
これらの各種アカウントを利用したサービスの中には、ほっておけば、自動的に一定期間後にデータも含めてアカウントを削除されるものがあるかもしれません。削除前に家族写真など、ダウンロードやバックアップをしてほいた方が良いケースもあれば、一方、サービスの利用に一定の費用が有料であり速やかに解約の手続きをした方が良いもの、放置しておくと悪意のある第三者にのっとられてデータが改ざんやスパムの発信など他人に迷惑が及ぶ場合などもあり得ます。
フェイスブックなどは、死後に最後のメッセージ等を掲載する「追悼アカウント管理人」を選んでおいたり、アカウントの削除など、事前に設定可能になっております。また、ツイッターなども、家族などからアカウントの削除依頼が可能なようです。
ただ、どのようなSNSを利用していたのか、それぞれ死後にどのような手続きを取れるのかなど、現実的には、把握がとても困難になるかと思います。
いずれにしても、個人的なデータについても、日頃から家族に機会を見つけてサービス名を伝えておくと良いかもしれません。
また、もし、趣味に関するSNSや、家族には知られたくないデータなどがある場合・・・、その場合には、趣味仲間や信頼できる知人に託すなどをしておいた方が良いかもしれません。そんなとき、自分の死後にメッセージを送れるサービス(すまいるポスト)なども利用できそうです。
すまいるポストを運営している株式会社アートプラスの代表の道本さんとは、私も懇意にさせていただいており、アドバイザーとして登録させていただいております。
いずれにしても、規約等もあり、サービスによってできることとできないことがあるかと思いますが、大事なデータ等を預けているサービスであれば、最後についてどうすればいいのか、意識しておいた方が良いでしょう。
◆その他
ちなみに、従来から遺品であるパソコンでも、クラウド上のデータでも同様ですが、知人・友人、あるいは、個人事業主の方は取引先のデータなども、デジタル管理をしているケースが多くなっております。アドレス帳や携帯電話のバックアップなどのデータをもっている人も多いと思います。
そういう場合、パソコンのデータを消さずに他人に売却したり、クラウド上のデータの放置をしておいたりして、万が一、名簿業者などにデータがわたってしまうと、故人の知人や取引先に迷惑がかかることなどもありえます。
なので、相続人としても、パソコン等の処理をする際には、きちっと必要な情報蒐集をした上で、全てのデータを消去して売却、あるいは廃棄処分をするなどの配慮が必要となるでしょう。
◆最後に・・・
遺品は、相続といった手続きだけでなく、故人の生前を偲ぶことができるものでもあります。それこそ、SNSやメールなどで、親子でも知らなかった生前の活動を垣間みたり、みたこともない表情の写真を見つけたり、場合によっては、深刻な悩みを初めて知ったりということもあるかもしれません。
私自身、SNSなどでライフログをつけ続けておりますが、自分自身がどのようにこの世界を去っていくのか、また、相続人として、デジタル遺品の「相続手続」はもちろんすると思うものの、それらのデジタル遺品と気持ちの面でどのように向き合っていけるのか、など、まだまだ思い悩むことはいろいろありそうです。
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