ベース音紫

 法律の畑を散歩してみると、「親子」と「親子じゃないもの」の境界は、存外、あいまいなものなんだと気付かされます。

 「あなた達は親子です。」と決めるときのルールも、「あなた達は親子じゃなかったんですね。」とひっくり返すときのルールも、なかなか分かりにくい上に、あまり柔軟ではありません。良い意味でも、悪い意味でも。

 今回からは、①嫡出推定(ちゃくしゅつすいてい)、②嫡出否認(ちゃくしゅつひにん)、③親子関係不存在確認といったテーマについて、できる限り簡単な説明をしていきたいと思います。


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1.実子と養子


 法律上の「親子」の関係には、A:実親子関係と、B:養親子関係の二種類があります。

 Bの養親子関係は、養子縁組によって生まれる親子関係です。こっちは、今日の記事とはあまり関係がないので、詳しい説明は割愛します。なお、養子縁組の解消等については、下の記事をご覧ください。

(関連記事)
離婚と離縁離縁(りえん)と離婚


 今日の記事は、A:
実親子関係に関わるお話です。

 実親子関係というのは、文字通り、実の親(実親-じっしん)と、実の子(実子-じっし)の関係のことです。

 これが、必ずしも血のつながりを意味するとは限らないので、色んなトラブルが生まれてしまっています。

 もちろん、ほとんどの場合、実親子関係=血縁関係と言って構わないのですが、中には、

☑ 血縁がないのに、法律上は実の親子として扱われる

☑ 血縁があるのに、法律上は実の親子として扱われない

ということもありえるのです。


実子と血縁

(点線の〇=血縁関係)

 そのようなズレが生まれる大きな理由は、下の3.で説明する「嫡出推定」(嫡出子であることの推定)という仕組みがあることです。


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2.嫡出子と非嫡出子


 「嫡出推定」について話を進める前に、「嫡出子」という言葉の意味などについて確認しておきます。

(1)「嫡出子」かどうかは、生まれてすぐ問題になる


 今日も、日本中で、多くの新しい命が産声をあげていることでしょう。おめでとうございます。ようこそ。

 法制度として正しいことなのかは分かりませんが、生まれてきた子ども達は、「嫡出子」と、「嫡出でない子」(非嫡出子)の二種類に区別されることになっています。

 この区別を実感するタイミングは、早々と訪れます。

 役場に出生の届出をするときは、出生届という書類(→e-GovのWebページ)に、「嫡出子又は嫡出でない子の別」を記載しないといけないのです(戸籍法49条2項1号)。

出生届の右上欄


※ 例えば産婦人科でお産を迎えた場合、産後、お母さんが退院するまでの間に、医師の作成した「出生証明書」を渡してもらえます。この出生証明書を添えて、子どもが生まれてから14日以内に、役場で出生の届出をしないといけません(戸籍法49条)。出生証明書と出生届が、一枚の紙になっていることもあります。


 実際に出生届を手に取ってみて、「嫡出子って何?どんな意味?」と疑問に思った経験がある人も多いんじゃないでしょうか。

【戸籍法】
第49条
1 
出生の届出は、14日以内(国外で出生があつたときは、三箇月以内)にこれをしなければならない。
2 届書には、次の事項を記載しなければならない。
一 子の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別
二 出生の年月日時分及び場所
三 父母の氏名及び本籍、父又は母が外国人であるときは、その氏名及び国籍
四 その他法務省令で定める事項
3 医師、助産師又はその他の者が出産に立ち会った場合には、医師助産師、その他の者の順序に従ってそのうちの一人が法務省令・厚生労働省令の定めるところによって作成する出生証明書を届書に添付しなければならない。ただし、やむを得ない事由があるときは、この限りでない。

(2)嫡出子とは


 このように、子どもが生まれてすぐに確認が必要な「嫡出子」という言葉ですが、法律にきちんとした定義規定が用意されているわけではありません。

 民法などの法律にちりばめられた色んな規定から、嫡出子ってこういう意味だろうな、と解釈されています。

 一般的な定義を書いておくと、「嫡出子」とは、婚姻している(していた)夫婦間に生まれた子のことです。ここでいう婚姻は、事実婚(内縁)を含みません。法律婚だけです。

 「嫡出でない子」(非嫡出子)は、まさに「嫡出子」ではない子のことで、つまり、婚姻外の男女間に生まれた子です。

 ここで注意が必要ですが、「嫡出でない子」(非嫡出子)は、法律上の親(実親)が居ない子、という意味ではありません。

 二つの違いは、あくまでも婚姻している(婚姻していた)男女間の子であるかどうかなのです。


(3)どちらも、出産をしたお母さんが実母(じつぼ)になる


 「嫡出子」も「嫡出でない子」も、大変な苦労をしてお産を終えたお母さんが、実親になる点は共通しています。

 お母さんと子どもの親子関係は、分娩という事実によって明確になるので、母子間の親子関係の有無が問題になることは、ものすごく珍しいです。

 なお、子どもが「嫡出でない子」であっても、母のほうは、「認知」をするまでもなく、当然に親になります(最高裁昭和37年4月27日判決・民集16巻7号1247頁)。

※ 認知:認知者(つまり父親)が、子との間に法的な親子関係を発生させる身分上の法律行為です。
 父が自発的に認知をする場合(任意認知)と、裁判で認知をさせる場合(強制認知)があります。
 胎児のうちでも、認知は可能です。ただし、胎児については、任意認知の仕組みしか用意されていません。なので、父が認知に応じないときは、胎児の段階だと、一般調停(生まれたら認知をしてねと求める調停)くらいしかできません。



 というわけで、「実親子関係」があるかどうかが問題になるのは、通常、父と子です。


※ お母さんすら誰か分からない事例として、「棄児(何らかの事情で置き去りにされた赤ちゃんなど)が見つかった」という場合が考えられます。
 棄児を発見した人や、その申告を受けた警察官は、24時間以内に市町村長に申出をしなければいけません(戸籍法57条1項)。市町村長は、その子に氏名を付け、本籍を定めるなどの対応をします(戸籍法57条2項)。


(4)誰が実父(じっぷ)になるのか


 法律上、どんな風に実の父親が決まるのかという点で、「嫡出子」と「嫡出でない子」には大きな違いがあります。

 「嫡出子」であれば、母親の結婚相手にあたる人物(=夫)が、いってみれば自動的に、実父になります。

 「嫡出でない子」は、父親が「認知」をしない限り、法律上の父親が居ない状態です。父親が認知をしたとき、はじめて法律上の父親が定まることになります。

 父親の側から見ると、❶妻(あるいは離婚後300日以内の元妻)が産んだ子は、嫡出子になるので、法律上、自分の子です。❷奥さんが産んだ子でなくても、自分が認知をした子は、法律上、自分の子です。

父にとっての実子=嫡出子+認知された非嫡出子


 ややこしいことに、父が認知をしただけで、「嫡出でない子」が「嫡出子」になるわけではありません。「嫡出でない子」が嫡出子になるのは、後で父母が婚姻したこと等によって、「準正」(民法789条)の効果が生まれたときです。


※ 昔は、嫡出子と非嫡出子とで、相続分に違いがありましたが、最高裁が「そろそろ、そんなのは違憲よ」と判断したので(最高裁判所平成25年9月4日大法廷決定・民集67巻6号1320頁)、最近になって法改正が行われました。今では、嫡出子も非嫡出子も、相続分は同じになっているので、「嫡出子」になれるかどうかは、さほど大きな問題ではありません。
 現状だと、「嫡出子」と「非嫡出子」の大きな違いは、認知なしに父親が決まるかどうか、という点です。


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3.嫡出子になる要件-嫡出推定と推定されない嫡出子


 上の2.で、まず「嫡出子」という言葉の意味を説明しました。途中を読み飛ばしている人のために繰り返しますが、「嫡出子」とは、法律婚をしている(していた)夫婦の間の子です。

 では、生まれたときに、具体的にどんな条件がそろっていれば、子どもは「嫡出子」になれるのでしょうか。

 以下では、嫡出推定によって「嫡出子」になる場合と、推定はないけれど「嫡出子」になれる場合について説明します。


(1)婚姻中に懐胎した子は、嫡出子


 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子だと推定されます(民法772条1項)。

 この「推定」は、「強い推定」と呼ばれていて、裁判でしか覆(くつがえ)せません。

 結婚している間に、奥さんのお腹の中に子どもが宿ったのであれば、その子どもは夫の子だと一律に決めてしまうわけです。これが、「嫡出推定」というルールです。

※ 民法上、嫡出子になるかどうかを振り分ける基準は、出産ではなく、懐胎(妊娠)になっています(懐胎主義)。


 というわけで、婚姻中に懐妊した子どもについて、生まれた後に出生届を書くときは、「嫡出子」の欄に☑チェックをすることになります。

 実父になるのは、実母の結婚相手=戸籍上の夫なので、出生届の「父」の欄には、その人の氏名を書き込めばOKです。というか、そう書くしかありません

※ 戸籍実務では、婚姻成立から200日以内に生まれた子(推定されない嫡出子→(4)参照)については、選択により、非嫡出子としての出生届も可能です。しかし、嫡出推定が働く場合は、原則として、嫡出子としての出生届しか受け付けてもらえません。役場としても、法律に従った運用しか、やりようがないのです。

【民法】
(嫡出の推定)
第772条
1 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

 こういう強力なルールは、次のような驚きの結果をもたらします。

 たとえ妻が夫とは別の男性の子どもを身ごもっていたとしても、結婚している間に妊娠をしている以上、その子どもの実父は、お母さんの結婚相手=戸籍上の夫になってしまうのです。夫とは別の男性の氏名を、出生届の「父」の欄に書くことはできません。

 あえて繰り返しますが、裁判をしない限り、「夫の子」だという推定は覆せないのです。

 嫡出推定によって父と定められた人物(お母さんの夫)が、「この子は私の子じゃありません」と嫡出否認の裁判を始めているときでも、役場に出生を届け出る義務は免除されません(戸籍法53条)。


(2)婚姻から200日経過後に生まれた子は、婚姻中に懐胎した子と推定


 婚姻が成立した日から200日経った後に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定されます(民法772条2項)。

婚姻から200日以内に生まれれば嫡出子=婚姻中に懐胎

 そして、上の(1)でお伝えしたとおり、婚姻中に懐胎した子は、嫡出子だと推定されることになります(民法772条1項)。

 つまり、結婚してから200日経った後に生まれた子は、嫡出子です。当然、実父になるのは、お母さんの戸籍上の夫です。

 結婚から出産までに200日も経っているのであれば、普通は、お相手は夫であるはずだ、と考えられているわけです。


(3)離婚等から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したと推定


 これはとくに批判の多いルールなのですが、離婚などによって婚姻を解消した後も、それから300日以内に子どもが生まれれば、やっぱりその子は婚姻中に懐胎したんだと推定されます。

離婚から300日以内に生まれれば嫡出子=婚姻中に懐胎

 婚姻中に懐胎したということになると、(1)のとおり、嫡出推定がはたらくので、お母さんの戸籍上の夫が、実父になります。

 普通はお母さんのお腹の中に300日超は居るだろう→だから婚姻解消から300日以内に生まれた赤ちゃんは婚姻中に身ごもった子だろう→それならお父さんは夫だろう、という考えが前提になっているわけです。


【コラム-無戸籍の問題】
 出産が早まった結果、婚姻解消後に懐胎した子が、婚姻解消から300日以内に生まれてくる可能性は十分にあります。

 また、正式に離婚等をするまでの間に、生活の実態が変わって、お母さんが別の男性の子どもを身に宿している例は少なくありません。

 そういう事情があっても、一律に、嫡出推定がはたらく子どもは、(元)夫の子になってしまいます。

 こういう強力なルールが設けられたのは、子どもの法的地位・身分を早く安定させるためだと説かれてきました。

 ですが、残念ながら、「無戸籍児」「無戸籍者」という存在を作りだすことで、かえって子どもの法的地位を不安定にしてしまうという事態も起きてしまっています。(元)夫の子として届け出ることを避けたいあまり、出生届自体をしないという選択をする人も居たのです。

 「無戸籍」の人が世の中に居るという重い重い社会問題を受け止めて、国も対策に乗り出しています。

 平成19年5月1日付けの法務省通達では、医師が作成した「懐胎時期に関する証明書」によって婚姻解消の後に懐胎したことが分かるのであれば、前夫を父としない内容の出生届ができるとされました。ですが、離婚等の前に懐胎した事案は、この制度では救済されません。

 無戸籍の方が自分を戸籍に記載するための方法については、法務省のWebページに詳しくまとめられています。



(4)推定されない嫡出子


 いわゆる「授かり婚」「できちゃった結婚」のような場合、子どもの懐胎より後に婚姻が成立することになります。つまり、婚姻中には懐胎していません。

 また、上の(1)・(2)から分かるとおり、結婚から200日以内に生まれた子は、民法772条の嫡出推定の対象にはなりません。

推定されない嫡出子

 ですが、そういう場合でも、子どもを「嫡出子」として、出生の届出をすることは可能です。

 「民法772条の嫡出推定はされないけれど、この子は嫡出子だ」という扱いをするわけです。

 こういう子どもは、「推定されない嫡出子」と呼ばれます。混乱しやすいですが、「嫡出子」の一種です。

 これは、昔々、昭和15年の大審院(最高裁の前身)が決めたことです。内縁関係が先行していた夫婦の間に生まれた子は、認知なしに、当然に嫡出子の身分を有するというのです(大審院昭和15年1月23日連合部判決・民集19巻1号54頁)。

大審院昭和15年1月23日連合部判決・民集19巻1号54頁
(家督相続回復等請求事件)
「内縁ノ妻カ内縁関係ノ継続中其ノ夫ニ因リテ懐胎シ適法ニ婚姻ヲ為シタル後ニ出生シタル子ハ夫ノ否認スルト否トニ拘ラス出生ト同時ニ当然ニ嫡出子タル身分ヲ有スルモノトス」

 この大審院判決の内容からすると、内縁関係がもともとは無くて、たまたま子どもを授かったというケースは、本当は射程に入らない(当然に嫡出子の身分を有するわけじゃない)のですが、戸籍の窓口で、婚姻前に内縁関係があったかどうかを審査することはありません。

 母が適法に婚姻をしていて、嫡出子として届け出られているのであれば、そのとおり受理するしかないのです。

 結局のところ、子どもが生まれた時点で、両親が法律上の婚姻をしている夫婦であれば、その子は「嫡出子」になれると判断してもらっていいです。

※ 上でも紹介したとおり、戸籍実務では、婚姻成立から200日以内に生まれた子(推定されない嫡出子)については、選択により、非嫡出子としての出生届も可能です。


 さらに、戸籍法62条は、婚姻前に生まれた子でも、婚姻届と同時に出生届をするときは、いきなり嫡出子として父の戸籍に載せることを認めています。認知→婚姻による「準正」(民法789条)→父の氏への変更(民法791条)、という手続をスキップして、はじめから嫡出子として記載できるという、かなり寛容な仕組みです。


(5)嫡出子になる要件についてのまとめ


 以上の(1)~(4)を図にまとめると、次のようになります。

嫡出子と非嫡出子


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4.関連する話題-再婚禁止期間


 嫡出推定と深く関わりがある法律の規定として、女性の再婚禁止期間について定めた民法733条があります。

 つい最近まで、女性は、前婚の解消から6か月を経過した後でなければ、再婚できないことになっていました(改正前民法733条1項)。6か月が経つより前に再婚できるのは、前婚の解消より前から懐胎していた場合だけでした(その場合は出産の日から再婚が可能でした)。

 この制度については、なんで結婚を禁止するのか、6か月は長いんじゃないか、と批判も多々ありました。

 平成27年(2015年)の最高裁大法廷判決は、女性の再婚後に生まれた子どもについて、父性の推定が重複するのを回避するために、女性の再婚を禁止することは合理性があるとしつつも、禁止することができるのは100日だけだ、それを超える部分は憲法14条・憲法24条違反だと判断しました。数少ない違憲判決の一つです。

【最高裁判所平成27年12月16日大法廷判決】
(民集69巻8号2427頁)
 本件規定(※民法772条)の立法目的は,女性の再婚後に生まれた子につき父性の推定の重複を回避し,もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解するのが相当であり(最高裁平成7年12月5日第三小法廷判決・裁判集民事177号243頁参照),父子関係が早期に明確となることの重要性に鑑みると,このような立法目的には合理性を認めることができる。
 ・・・民法772条2項は,「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は,婚姻中に懐胎したものと推定する。」と規定して,出産の時期から逆算して懐胎の時期を推定し,その結果婚姻中に懐胎したものと推定される子について,同条1項が「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する。」と規定している。そうすると,女性の再婚後に生まれる子については,計算上100日の再婚禁止期間を設けることによって,父性の推定の重複が回避されることになる。夫婦間の子が嫡出子となることは婚姻による重要な効果であるところ,嫡出子について出産の時期を起点とする明確で画一的な基準から父性を推定し,父子関係を早期に定めて子の身分関係の法的安定を図る仕組みが設けられた趣旨に鑑みれば,父性の推定の重複を避けるため上記の100日について一律に女性の再婚を制約することは,婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものではなく,上記立法目的との関連において合理性を有するものということができる。・・・本件規定のうち100日超過部分については,民法772条の定める父性の推定の重複を回避するために必要な期間ということはできない

 この大法廷判決を受けて、民法733条は次のとおり改正されています。

【民法】
(再婚禁止期間)
第733条
1 女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合
二 女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合

 注意が必要なのは、上の最高裁判決も、新しい民法733条も、

父性の推定の重複を回避すること>

<子どもの法的地位を明確にすること>

に重きを置いているだけであるという点です。

 血縁関係と親子関係を合致させることまで、意図しているわけではありません。

 どういうことかというと、図で示したほうが分かりやすいでしょうね。結構びっくりするかもしれません。

再婚禁止期間と嫡出推定

 前の夫と離婚してから300日以内に生まれた子どもは、民法772条2項があるので、前の婚姻中に懐胎したと推定されます。前の婚姻中に懐胎した子どもは、前の夫の子と推定されます。

 離婚から100日経ってすぐ再婚して、新しい夫が居る状態でも、「離婚後300日」という推定は、しっかりと働いてしまうのです。

 再婚してから200日経った後になってやっと、新しい夫の子だという推定が働きます。

 上でもお伝えしたとおり、民法は、「懐胎」したときに婚姻しているかどうかを基準にしているわけですね。


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5.出生の届出義務があるのは誰か


(1)嫡出子の出生届


 通常だと、子どもが嫡出子の場合、出生の届出は、父又は母がしなければいけません(戸籍法52条1項)。

 同じ嫡出子でも、子どもが生まれる前に両親が離婚をした場合には、母が出生の届出をします(戸籍法52条1項)。その場合、下の記事で詳しく説明しているとおり、親権者は原則として母になります(民法819条3項)。

(関連記事)
親権者変更親権者の指定

(2)非嫡出子の出生届


 「嫡出でない子」(非嫡出子)の出生届は、母が行います。

【戸籍法】
第52条
1 
嫡出子出生の届出は、父又は母がこれをし、子の出生前に父母が離婚をした場合には、がこれをしなければならない。
2 嫡出でない子の出生の届出は、がこれをしなければならない。
3 前二項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合には、左の者は、その順序に従つて、届出をしなければならない。
第一 同居者
第二 出産に立ち会つた医師、助産師又はその他の者
4 第一項又は第二項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合には、その者以外の法定代理人も、届出をすることができる。

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6.嫡出否認と親子関係不存在確認


 ここまで確認してきたように、「あなた達は親子です。」と決めるときのルールは、あまり柔軟ではありません。上でも述べたとおり、子どもの地位・身分を早期に安定させるために、あえてそうしてあるのです。

 とはいっても、そのような仕組みが、かえって不都合を招く可能性があるのは、古くから心配されていました。民法起草者の一人・梅謙次郎氏が、「臭い物にフタをする主義」と表現したほどです(法務大臣官房司法法制調査部監修・宝典調査会民法議事速記録6(日本近代立法資料叢書6)514頁〔梅謙次郎発言〕)。

 そういうわけで、嫡出推定は、絶対にひっくり返せないという仕組みにはなっていません。

 色々と制約はありますが、「あなた達は親子じゃなかったんですね。」とひっくり返すための裁判手続は、一応用意されています。

 次回は、「親子じゃありません。」と、親子関係を否定する裁判手続として、「嫡出否認」、「親子関係不存在確認」の二つについて説明をします。


(次回)
嫡出否認、親子関係不存在確認嫡出否認と親子関係不存在確認

へ続く   COMING SOON!