月明かり紫


 今日は、「遺産分割審判」について説明させて頂きます。

 相続人の間で話がつかない場合の最後の砦として、家庭裁判所が「こうやって遺産を分けなさい」と命じるのが、遺産分割審判です。

【目次】
1.おさらい-遺産分割の流れ
2.そもそも家事審判とは
3.調停不成立と当然移行
4.遺産分割審判に移行した後の手続
5.寄与分を定める処分の審判との関係
6.具体的相続分の算定
7.代償金による解決-代償分割
8.遺産分割審判
9.遺産分割審判への不服申立て

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1.おさらい-遺産分割の流れ


 人が亡くなったときに、「遺産分割」という手続が必要になるのは、

 ①相続人が複数で
 ②遺言では行き先の決まらない遺産があって
 ③遺産共有の状態を解く必要がある

という場合です。

 そして、遺産分割の方法としては、法律上、

 ❶協議(当事者間で話し合う)
 ❷調停(裁判所で話し合う)
 ❸審判(裁判所が決める)

という3つが用意されています。 

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 家庭裁判所で遺産分割調停をやってみて、それでも遺産の分け方について話がつかなければ、遺産分割をあきらめるか、家庭裁判所に決めてもらうか、二つに一つです。

 後者の「家庭裁判所に決めてもらう」手続が、遺産分割審判です。

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2.そもそも家事審判とは


(1)色々な裁判手続の一種


 「審判」という字を見て、「何これ、裁判っていうこと?」「訴訟とどう違うの?」と疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。

 広い意味での「裁判」には、「訴訟」と、「そうでないもの」(非訟)があります。

 公開の法廷で、きっちり証拠を出し合って白黒をつける「訴訟」という手続が、狭い意味での「裁判」だと言えるでしょう。

 「訴訟でないもの」には、審判、調停、命令など、いろんな形式の手続があります。
裁判

 家事審判は、「訴訟」ではないものの、こういう裁判手続の一種です。

※ 家事審判の中には、さらに二種類があります。
 「相手方」が居るもの(二当事者の対立構造を予定しているもの)と、そうでないものです。
 前者は、遺産分割審判や婚姻費用分担審判などで、家事事件手続法別表の「2類」(旧家事審判法の乙類)です。家事調停の対象になるのは、2類だけです。
 後者は、後見開始などで、家事事件手続法別表の「1類」(旧家事審判法の甲類)です。
 この記事は、主に2類(旧・乙類)の審判を念頭に置いています。


(2)家事審判と訴訟の違い


 「家事審判」も「訴訟」も、「裁判所が決める」という命令の作用がある点は同じです。

 でも、違う点も色々あります。代表的なものとして、次のようなものを挙げることができます。

①家事審判は、手続が公開されないこと

②家事審判は、なるべく簡易・迅速に、弾力的な審理・判断が行われること

 一応、やや小難しい説明をしておくと、次の表のように分類されています。

訴訟と非訟


 家事審判という仕組みは、憲法上の公開の裁判を受ける権利を侵害するものではないと考えられています(最高裁判所昭和41年3月2日大法廷決定・民集20巻3号360頁等)。

【最高裁判所昭和41年3月2日大法廷決定・民集20巻3号360頁】
 遺産の分割に関する処分の審判は、民法九〇七条二、三項を承けて、各共同相続人の請求により、家庭裁判所が民法九〇六条に則り、遺産に属する物または権利の種類および性質、各相続人の職業その他一切の事情を考慮して、当事者の意思に拘束されることなく、後見的立場から合目的的に裁量権を行使して具体的に分割を形成決定し、その結果必要な金銭の支払、物の引渡、登記義務の履行その他の給付を付随的に命じ、あるいは、一定期間遺産の全部または一部の分割を禁止する等の処分をなす裁判であって、その性質は本質的に非訴事件であるから、公開法廷における対審および判決によってする必要なく、したがって、右審判は憲法三二条、八二条に違反するものではない(最高裁昭和四〇年六月三〇日大法廷決定、民集一九巻四号一〇八九頁、同昭和四〇年六月三〇日大法廷決定、民集一九巻四号一一一四頁参照)。

(3)審判では扱えないテーマもある


 相続にまつわる問題には、「審判」では扱えないものもあります。

 いくつか例を挙げます。

A.遺言の有効性


 故人の遺言によって遺産の行く末が決まっているような場合には、裁判所が遺産分割審判をすることは原則としてできません。遺産分割審判の手続の中で、遺言が有効か無効かを裁判所が判断することもできません。

 遺言の有効性を争いたい当事者は、遺産分割審判とは別に、遺言無効確認の訴訟を起こさなければいけません。

B.預貯金払戻と不法行為・不当利得


 相続人の誰かが、被相続人の預貯金を勝手に払い戻して自分のものにしていた場合に、そうした事実の有無や払い戻した金額などについて争いになったときも、遺産分割とは別の土俵を用意する必要があります。

 不当利得返還又は損害賠償を求める民事訴訟をするわけです。

 最高裁の判例変更に伴って、相続開始後の預貯金払戻しをどんな手続で片付けるかが検討課題になっていますが、これについては下の記事で詳しく解説しています。

(関連記事)
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C.遺留分減殺


 遺留分減殺も、調停で話し合うことは可能ですが、調停がうまくいかなかった場合に、審判で結論を出してもらえるわけではありません。

 遺留分減殺請求によって形成された権利を前提に、所有権移転登記手続や不当利得返還等を求める民事訴訟を別途起こすしかないのです。

D.遺産確認請求


  「この不動産も遺産だよ」、「いや違うよ」、という風に、ある財産が被相続人の遺産かどうかについて、当事者の意見が一致しないことがあります。

 こういう場合は、「地方裁判所」で「民事訴訟」をしなければならなくなる可能性があります。

 「遺産確認請求」の訴訟をして、その財産が遺産に属するかどうかを「判決」で確定した上で、改めて遺産分割調停・審判をするわけです。

 ただし、家庭裁判所は、遺産の範囲などの前提事項について、審判手続の中で審理・判断することは理論上可能です(前掲最高裁判所昭和41年3月2日大法廷決定・民集20巻3号360頁)。でも、それだと全面的な解決に至らない可能性があるので、民事訴訟の結果を待つことが多いと思います。

【最高裁判所昭和41年3月2日大法廷決定・民集20巻3号360頁】
遺産分割の請求、したがって、これに関する審判は、相続権、相続財産等の存在を前提としてなされるものであり、それらはいずれも実体法上の権利関係であるから、その存否を終局的に確定するには、訴訟事項として対審公開の判決手続によらなければならない。しかし、それであるからといって、家庭裁判所は、かかる前提たる法律関係につき当事者間に争があるときは、常に民事訴訟による判決の確定をまってはじめて遺産分割の審判をなすべきものであるというのではなく、審判手続において右前提事項の存否を審理判断したうえで分割の処分を行うことは少しも差支えないというべきである。けだし、審判手続においてした右前提事項に関する判断には既判力が生じないから、これを争う当事者は、別に民事訴訟を提起して右前提たる権利関係の確定を求めることをなんら妨げられるものではなく、そして、その結果、判決によって右前提たる権利の存在が否定されれば、分割の審判もその限度において効力を失うに至るものと解されるからである。このように、右前提事項の存否を審判手続によって決定しても、そのことは民事訴訟による通常の裁判を受ける途を閉すことを意味しない・・・。

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3.調停不成立と当然移行


 遺産分割調停などの二類(乙類)審判事項について調停が成立しなかった場合、事件は、当然に審判手続に移行します。別途、審判の申立てをする必要はありません。

 この場合、審判の申立ては、調停申立ての時になされたとみなされます。

 移行する先の裁判所は、家事調停を処理した家庭裁判所です。

 審判事件が職権で調停に付される場合(家事事件手続法274条)もあるので、調停と審判を行ったり来たりすることが可能になるように、同じ裁判所が担当をすることになっているわけです。




実務講座 家事事件法―家事調停・家事審判・人事訴訟・民事訴訟・強制執行・渉外事件
梶村 太市
日本加除出版
2013年



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4.遺産分割審判に移行した後の手続


(1)審判事件になると


 調停から審判に移行すると、家庭裁判所の事件番号が変わります(裁判所に尋ねて番号を確認しましょう)。

 今までお世話になっていた調停委員さんは審理に立ち会わなくなり、裁判官(家事審判官)が審理の指揮をするようになります。

 担当の裁判官は、通常は同じ人です。

(2)審判期日


 家事審判では、裁判所が期日を開いて、

①当事者や関係人などの話を聴く
②関係機関に調査嘱託をする
③鑑定などの証拠調べを行う
④家庭裁判所調査官が調査をする

などなどの諸手続をします。

 これらを行う期日は、「審判期日」と呼ばれます。

 この審判期日という大きい概念の中に、「証拠調べ期日」(家事事件手続法46条)、「審問期日」(家事事件手続法68条、69条)というものがあります。

(3)陳述の聴取


 遺産分割審判などの「2類」(旧・乙類)の家事審判では、裁判所は、原則として当事者の陳述を聴取することになっています(家事事件手続法68条)。要するに、当事者の言い分をちゃんと確認するということです。

 当事者の申出があるときは、「審問」という期日を設けて、陳述を聴取することになっています(同条2項)。逆にいうと、当事者が望まないし、裁判所も必要がないと考えれば、審問をしないこともできます。

 陳述を聴取する方法について、特に細かいルールはありません。当事者に書面を出させるだけでもかまわないのです。

 審問期日があれば、当事者から直接に口頭で陳述を聴くことになるでしょう。

 審問をするにせよしないにせよ、審判になる前の調停の段階で、お互いの言い分はだいたい出尽くしているはずです。なので、審判では、一から主張をやり直すというわけではなく、今までの主張を前提にして、「総まとめ」のような書面を出すことが多いです。

(4)審問


 審問というのは、訴訟でいう「尋問」を、フリースタイルで行うような手続です。

 もう少し学術的な言葉を使うと、審問とは、「民事訴訟法の証拠調べの一環としての当事者尋問(民事訴訟法207条以下)の手続によらない自由な方法で当事者または関係人等に質問し、その供述を証拠として用いること」です。

 当事者尋問に準じて宣誓等をして、きちっと調書を作るような重厚な方法がとられる場合もあれば、宣誓を省略して、調書の代わりに当事者に陳述書を出させるだけの場合もあります。自由です。

 審問は、家庭裁判所の「審判廷」という場所で行われます。

 裁判官や弁護士からの質問に答える形式で、事情を語ってもらうのが通常です。もう一度言いますが、訴訟でいう「尋問」を、フリースタイルで行う感じです。

 審問の期日で、当事者の陳述を聴くことによって「事実の調査」をするときは、他の当事者は、原則として期日に立ち会うことができます(家事事件手続法69条)。不意打ちを防止するためです。

※ というわけで、調停とは異なり、審判の手続では、他の当事者と顔を合わせることになる可能性が高いです。ただし、立会を認めることによって、支障を生ずるおそれがある場合には、立会を認めないこともできます(家事事件手続法69条ただし書)。

(5)証拠調べ


 家事審判手続において、家庭裁判所は、職権で「事実の調査」をしたり、証拠調べをしたりすることになっています(家事事件手続法56条)。

 公正な審判ができるように、ちゃんと事情を確認するわけです。

 遺産分割だと、調停の段階で、必要な資料があらかた出そろっていることは多いです。それらも、裁判官が審判の内容を決めるための資料にすることができます。

 証拠調べの手続については、民事訴訟法の規定が準用されます(家事事件手続法64条)。理論上は、証人尋問、当事者尋問、鑑定、書証、検証、証拠保全等の手続が活用できるわけですが、実務上は、不動産鑑定やDNA鑑定が行われる程度です。

 役場や金融機関などに問い合わせをする必要があれば、調査嘱託の申立てをすることもあります(家事事件手続法62条)。調査嘱託については、家事事件手続法に独自の規定があるわけですね。

 不動産等の財産の評価が争いになっている場合には、不動産鑑定をすることがあります。

【家事事件手続法】
(事実の調査及び証拠調べ等)
第56条
1 家庭裁判所は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをしなければならない。
2 当事者は、適切かつ迅速な審理及び審判の実現のため、事実の調査及び証拠調べに協力するものとする。
(調査の嘱託等)
第62条
 家庭裁判所は、必要な調査を官庁、公署その他適当と認める者に嘱託し、又は銀行、信託会社、関係人の使用者その他の者に対し関係人の預金、信託財産、収入その他の事項に関して必要な報告を求めることができる。
(陳述の聴取)
第68条
1 家庭裁判所は、別表第二に掲げる事項についての家事審判の手続においては、申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当事者の陳述を聴かなければならない。
2 前項の規定による陳述の聴取は、当事者の申出があるときは、審問の期日においてしなければならない。
(審問の期日)
第69条
 別表第二に掲げる事項についての家事審判の手続においては、家庭裁判所が審問の期日を開いて当事者の陳述を聴くことにより事実の調査をするときは、他の当事者は、当該期日に立ち会うことができる。ただし、当該他の当事者が当該期日に立ち会うことにより事実の調査に支障を生ずるおそれがあると認められるときは、この限りでない。
(事実の調査の通知)
第70条
 家庭裁判所は、別表第二に掲げる事項についての家事審判の手続において、事実の調査をしたときは、特に必要がないと認める場合を除き、その旨を当事者及び利害関係参加人に通知しなければならない。
(審理の終結)
第71条
 家庭裁判所は、別表第二に掲げる事項についての家事審判の手続においては、申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、相当の猶予期間を置いて、審理を終結する日を定めなければならない。ただし、当事者双方が立ち会うことができる家事審判の手続の期日においては、直ちに審理を終結する旨を宣言することができる。
(審判日)
第72条
 家庭裁判所は、前条の規定により審理を終結したときは、審判をする日を定めなければならない。

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5.寄与分を定める処分の審判との関係


 被相続人の財産の維持・形成のために特別の貢献をした人は、「寄与分」があることを主張して、本来の法定相続分よりも多めに遺産を取得できる可能性があります。

 遺産分割調停の中で、寄与分について話し合うことは、とくに制限されていません。寄与分があることを前提に遺産分割調停を成立させることも可能です。

 しかし、寄与分について、当事者の間で話がまとまらなかった場合には、裁判所に寄与分を定めてもらわなければいけません。

 意外に思われる人も居るかもしれませんが、「遺産分割」の調停・審判では、裁判所が寄与分を定めることはできません。

 寄与分を定めるためには、寄与分を定める調停・審判という別の手続が必要です。

 ある家庭裁判所に遺産分割調停が申し立てられているときは、寄与分を定める調停も同じ家庭裁判所に申し立てられなければいけません(家事事件手続法191条)。一緒に処理する必要性が高いので、遺産分割調停と寄与分を定める調停は、併合されます(同法192条)。

 遺産分割審判をいよいよ出そうというときに、急に寄与分を定める審判を申し立てられても困るので、家庭裁判所は、「寄与分について申し立てるならいついつまでにやってよ」とお尻を決めることができます。すなわち、家庭裁判所は、遺産の分割の審判の手続において、1か月を下らない範囲内で、当事者が寄与分を定める処分の審判の申立てをすべき期間を定めることができるのです(家事事件手続法193条)。

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6.具体的相続分の算定


 最終的に、遺産をどのように分けるかを判断するときに大切なのが、「具体的相続分」です。

 具体的相続分とは、法定相続分(又は被相続人が指定した相続分)に、特別受益と寄与分を考慮して修正をした上で算定する最終的な相続分率です。

 法定相続分が「3分の1」で、遺産総額が4000万円、特別受益の額(生前贈与を受けた額)が500万円の人を例にとると(他の相続人は特別受益なし、寄与分は全員なし)、

みなし相続財産(本当ならこのくらいあったはずだよねという遺産)は、4000万円に500万円をプラスした4500万円です。

②その3分の1にあたる1500万円が、本来の相続分に対応する額です。

③ただし、生前贈与で500万円を受け取っているので、その分はもうもらえません。

④というわけで、この人の具体的相続分の額は1000万円です。

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7.代償金による解決-代償分割


 現存する遺産を分けるだけでは、公平な解決ができない場合は少なくありません。

 例えば、誰か一人が取得を希望している不動産の価値が高くて、他のわずかな預貯金を分け合うだけでは、法定相続分に見合った遺産の配分ができないような場合です。

 こういう場合、価値の高い不動産を取得する相続人に「代償金」を支払わせることで、平等な状態を作り出すことがしばしば行われています。これが「代償分割」というものです。

 預貯金でうまく調整できる場合でも、とりあえず相続人のうち誰か一人が預貯金を取得するという形をとっておいて、その人が単独で預貯金の払戻手続をして、「代償金」をみんなに配ったほうが、便利なときもあります。そういうときにも代償分割は行われます。

 このように、いろんな場面で潤滑油として機能するので、代償分割という方法は、実務では結構よく利用されています。

 代償金を支払う側は、審判の前に、代償金の支払能力があることが分かる資料を裁判所に示すことが望ましいです。

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8.遺産分割審判


(1)裁判をするのに熟したら


 審判事件が裁判をするのに熟したとき、裁判所は、審判をします(家事事件手続法73条1項、258条)。

 事件の一部や、併合事件の一部についてだけ審判をすることも可能です(同法73条2項、258条)。

(2)審判書


 審判をするときは、原則として裁判書(審判書)が作られます(家事事件手続法76条)。

 遺産分割審判の審判書は、もつれにもつれた相続争いを解決するために作られるので、当事者が納得できるように、かなり詳細に理由や計算過程が書いてあります。


(3)審判の告知


 裁判所が判断した内容は、当事者等に、相当な方法で告知されることになっています(家事事件手続法74条1項、258条1項)。

 告知の方法は厳密には決まっていませんが、書記官が審判書を交付送達したり、郵便業務従事者によって交付送達したりすることが多いです。

(4)審判書が手に入ったら


 審判には、法律関係を形成する効力(形成力)や、強制執行を可能にする効力(執行力)があります。

 「金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずる審判は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する」(家事事件手続法75条)という定めのとおり、「執行力」がもう備わっていることになっているので、確定さえしていれば、改めて執行文の付与を受ける必要はありません。

 審判書と、その確定証明書を得て、法務局で不動産の登記手続をしたり、金融機関で預貯金の払戻しをしたりすることになります。

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9.遺産分割審判への不服申立て


 家事審判に納得がいかない人のために、不服申立ての手続が用意されています。

(1)即時抗告


 即時抗告は、審判の告知を受けた日の翌日から、2週間以内にしなければいけません(家事事件手続法86条)。

 即時抗告をするためには、「抗告状」という書類を、原裁判所=その家事審判をした家庭裁判所に提出する必要があります(87条)。

 具体的な抗告の理由=原審判(もとの審判)の取消又は変更を求める事由を記載しないまま、取り急ぎ抗告状を提出することも可能です。

 その場合には、即時抗告の提起後14日以内に、原審判の取消又は変更を求める事由を具体的に記載した書面を原裁判所に提出します(家事事件手続規則55条)。この書面は、「抗告理由書」という体裁にすることが多いです。

【家事事件手続法】
(即時抗告をすることができる審判)
第85条
1 審判に対しては、特別の定めがある場合に限り、即時抗告をすることができる。
2 手続費用の負担の裁判に対しては、独立して即時抗告をすることができない。
(即時抗告をすることができる審判)
(即時抗告期間)
第86条
1 審判に対する即時抗告は、特別の定めがある場合を除き、二週間の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。
2 即時抗告の期間は、特別の定めがある場合を除き、即時抗告をする者が、審判の告知を受ける者である場合にあってはその者が審判の告知を受けた日から、審判の告知を受ける者でない場合にあっては申立人が審判の告知を受けた日(二以上あるときは、当該日のうち最も遅い日)から、それぞれ進行する。

【家事事件手続規則】
(原審判の取消事由等を記載した書面)
第55条
1 審判に対する即時抗告をする場合において、抗告状に原審判の取消し又は変更を求める事由の具体的な記載がないときは、抗告人は、即時抗告の提起後14日以内に、これらを記載した書面を原裁判所に提出しなければならない。
2 前条の規定は、前項の書面について準用する。

(2)即時抗告却下に対する即時抗告


 細かい話ですが、家事審判に対する即時抗告自体が、不適法だという理由で却下されたときは、その却下の審判に対して、1週間以内に即時抗告することができます。


(3)特別抗告


 家庭裁判所の審判で不服を申し立てることができないものや、高等裁判所の家事審判事件についての決定に対しては、特別抗告をすることができます。不服申立ての理由は、「憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があること」に限定されています(家事事件手続法94条)。

 特別抗告については、民事訴訟法の規定が準用されているので、審判の告知を受けた日の翌日から5日間以内にする必要があります(家事事件手続法96条2項、民事訴訟法336条2項)。

 5日以内に言い分をまとめるのは難しいので、抗告理由書は後で出すことができます。

 即時抗告の抗告理由書は「即時抗告の提起後14日以内」に出すことになっていますが(家事事件手続規則55条)、特別抗告の抗告理由書は「抗告提起通知書の送達を受けた日から14日」で出すことになっています。


【家事事件手続規則】
(特別抗告の抗告理由書の提出期間・法第九十四条等)
第63条
 特別抗告の抗告理由書の提出の期間は、抗告人が前条の規定による抗告提起通知書の送達を受けた日から14日とする。

(4)許可抗告


 特別抗告とは別に、許可抗告という不服申立てをすることも可能です。どちらかだけを申し立てることも、両方を同時に申し立てることもできます。

 許可抗告は、高等裁判所の許可を得て、最高裁の判断を仰ぐ仕組みです。

 抗告審の裁判所が、即時抗告をはねのけておいて、最高裁へお伺いを立てることは許してやる、という特殊な手続です。なので、そう簡単に許可されるわけではありません。

 許可ができるのは、「最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは抗告裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合」です。


 遺産分割とは関係ありませんが、私は、連れ子養子と養育費の問題について、この高等裁判所からの許可を得たことがあります。

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