自死関連事案当番弁護士


 2017年2月25日に開かれた大分県弁護士会の定期総会で、「自死関連事案当番弁護士制度」の規程が承認されました。

 もう5年も前から、医師会と協議をさせて頂いたり、自殺問題について研修会を催したりと、準備を進めてきた経緯があるので、「ついにここまで来ることができたのか」と、感無量です。

 この制度は、大分県弁護士会の「貧困と人権に関する委員会」が企画したものです。私も数少ない委員の一人です。

 私が知る限り、全国で初めて導入される仕組みです。ありがたいことに、マスコミの方々も関心をお寄せくださっています。



 大分県弁護士会(と福岡県弁護士会)といえば、全国で初めて刑事被疑者の当番弁護制度を導入した弁護士会です(最高裁判所平成5年10月19日第三小法廷決定(刑集47巻8号67頁)の大野正男補足意見参照)。

 この自死関連事案当番弁護士制度も、各地の弁護士会に広めていけるようなものにしたいです。大分が出鼻をくじくことがないよう、真摯に取り組んでいきたいです。


<<解説>>

1.自死関連事案当番弁護士制度の概要

自死関連事案当番弁護士制度・概要

 自死関連事案当番弁護士制度は、自死が心配される方や、自死遺族、病院等の関係機関から申込みを頂いたときに、弁護士が速やかに電話相談等のご対応をさせて頂く仕組みです。

 概要を以下に記載します。

(1)申込みができる人

 以下のいずれかに該当する人(大分県内に居られる人に限定させて頂きます。)は、この制度の利用申込みをして頂くことができます。

① 自殺未遂者その他の自殺のおそれがある人(自死遺族を含む)
② 上記①の親族その他の関係者(友人・知人も可)
③ 医療機関、福祉施設等の関係機関の職員

(2)申込みの方法


 A 弁護士会に申込書をFAXする方法(097-538-0462)

    又は

 B 弁護士会に電話をする方法(097-536-1458)


のどちらでも、申込みが可能です。

 当分は、受付時間は平日の営業時間=毎週月曜日から金曜日まで(休日を除く)の9:00~17:00とさせて頂きます。

※ 大変恐縮ですが、平日17:00より後や休日にFAXを頂いていた場合には、次に到来する平日9:00に受付をした扱いになります。


(3)担当弁護士の決定


 大分県弁護士会内で、名簿を作成しています。

 この名簿順に、担当弁護士を決定します。


(4)弁護士からの連絡


 担当弁護士は、弁護士会が申込みを受け付けてから24時間以内に、申込者に電話で連絡をします。

 この電話のときに、そのまま無料電話相談をして頂いても結構ですし、この電話ではとりあえず日程調整だけしておいて、後でゆっくり時間がとれるときに無料相談の機会を設けることも可能です。

(5)相談の方法


 相談の方法として、次の3つを想定しています。

① 電話相談 
② 事務所での面接相談 
③ 入院先等への出張相談

 このどれかについて、初回相談に限り無料で対応をさせて頂きます。

 ただし、出張相談については、相談料は頂きませんが、旅費等がかかる可能性があります。

 出張相談をご希望される方は、ひとまず①の電話相談をご利用頂き、別途、この制度の枠外で、法テラス(日本司法支援センター)の承認を得て無料出張相談を受けるという方法も考えられます。

※ 法テラスの援助が受けられるのは、法テラスが定める資力要件を充たす場合に限られます。

(6)相談後の対応


 引き続き法的支援が必要な場合は、事件の受任、相談継続、出張相談等のご対応に努めさせて頂きます。

 初回の無料相談より後の相談等のご対応は、原則として有料になりますが、法テラスの相談援助、代理援助等が利用できることもありますので、詳しくは担当弁護士にお尋ねください。


(7)チラシ、申込書の書式



 チラシ・申込書のデータをダウンロード頂けます。ぜひご活用ください。

① チラシ

自死関連事案当番弁護士制度チラシ

② 申込書式

自死関連事案当番弁護士制度申込書式


<<解説>>

2.なぜ自死関連事案に当番弁護士が必要なのか


(1)制度の趣旨・目的


 制度の趣旨・目的について、今回の規程では、 ⇩ 次のとおり定めています。


 この規程は、近年、我が国において自殺による死亡者数が高い水準で推移していることに鑑み、自殺のおそれがある者又はその親族等が希望する場合に、速やかに弁護士に相談する機会を確保することにより、自殺の防止を図り、併せて自殺のおそれがある者及びその親族等に対する支援の充実を図ることを目的とする。


 自殺対策基本法1条を参考にした規定です。

 自殺者の数は、年間3万人を下回るようになったとはいえ、依然として高い水準です。死因の分からない方が少なからずいらっしゃることを考えると、自殺者の数はもっと多いかもしれません。とても深刻な状況だと受け止めています。

(参考)



(2)自死の背景に法律トラブルがひそんでいることも


 弁護士として日々仕事をしている中で、自死遺族から相談を頂く機会は少なくありません。

 ひどく思い悩んだ顔の相談者に、「死にたいと思ってらっしゃいませんか。」とお尋ねしたとき、そうだ、という答えが返ってくることもあります。

 相談者や依頼者が命を絶ってしまった、という経験を持っている弁護士も一人や二人ではありません。

 そのような経験から、自殺の背景に、法律トラブルがひそんでいることは、決して少なくないと私たち弁護士は考えています。

 自殺の原因の最たるものは健康、病気だそうですが、背後には、法律トラブルからくる経済的負担がのしかかっている場合もあるのではないかと推測しています。

 法律トラブルとしては色んなものを想定することができますが、いくつか例を挙げるならば、借金労働離婚いじめなどがあります。

 こうした問題について、弁護士が支援をさせて頂くことで、解決につながることは十分期待できます。

弁護士が対応できること-自死関連事案当番弁護士制度


 自死遺族が抱える法律トラブルもあります。

 例えば、相続放棄、賃貸借、鉄道事故、保険金などです。


弁護士が対応できること-自死遺族の場合


 以上のような法律トラブルについて、弁護士が早期に対応できるようにして、ご本人たちを支援させて頂く仕組みとして、今回、この制度を考えた次第です。


(3)なぜ「24時間以内」の連絡なのか


 「24時間以内」の対応をさせて頂く理由としては、次の3つを挙げることができます。

① 早期に弁護士と話ができる安心感
② 「次の約束」をすることによる自殺防止効果
③ 早期アドバイスの有効性

 恥ずかしながら、弁護士は、一般的には、まだまだ近寄りがたい存在だと思います。早めに弁護士から連絡をさせて頂くという形態をとることで、不安の解消につながることを期待しています。

 また、上に挙げた法律トラブルの中には、早期に法的な知識を得ておいたほうがいい事柄も多いです。

 例えば、相続放棄ができる期間には限定がありますし、被相続人が亡くなった後に遺産を処分したりすると相続放棄できなくなることもあります。

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 本当は債務が時効消滅しているのに、よかれと思って弁済をすることで、時効が援用できなくなることもあります。

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 このように、早めに相談して頂くことは、解決の糸口をつかむためにとても大切なのです。


<<解説>>

3.シンポジウムの開催(終了※)


 自死関連事案当番弁護士制度発足を記念して、シンポジウムを開催させて頂きました。日弁連貧困問題対策本部の全国キャラバンの一環です。

【日時】 2017年3月25日14:00~17:00
【場所】 大分県弁護士会館4階(大分市中島西1-3-14)
※ 入場無料

 医師・臨床心理士・弁護士が、自死問題に関する専門家の連携の在り方等についてパネルディスカッションをしました。

 私も、冒頭に、制度の概要等について報告をさせて頂きました。

 ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。


(以下、記事から引用)

 借金が原因で自殺しようとした患者を治療したという医師は、「自殺は個人だけの問題ではなく社会全体の問題だと感じている」とした上で、関係機関が連携を深めていくためにも当番弁護士制度を設ける意義は大きいと述べました。

 これに対し弁護士からは当番弁護士制度では、法律の視点だけで相談に応じるのではなく、心のケアなどにも当たれるよう担当する弁護士は幅広い準備をしておくことが必要だと訴えていました。

制度を担当


 制度を担当する巨瀬慧人弁護士は「医者や臨床心理士などとも連携を図って、解決の糸口が見えなくて思い悩んでいる人を少しでも少なくしていきたい」と話していました。