民法213条の3


 民法(相隣関係)改正勉強ノートは第3回目を迎えます。

 本日は、前回に続き、「継続的給付を受けるための設置権等」という見出しがついた規定を確認します。

【改正後民法】
(継続的給付を受けるための設備の設置権等) ※新設
第213条の3
1 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、前条第5項の規定は、適用しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。


<<解説>>

1.継続的給付を受けるための設備の設置権等


 まずは、前回の記事のおさらいです。

 


 民法213条の3第1項でいう「継続的給付」とは、「電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付」を意味します(定義規定→民法213条の2第1項)。

 継続的給付を受けるために、他に代替手段がなければ、土地の所有者は、

A.「他の土地に設備を設置」すること
B.「他人が所有する設備を使用」すること

が可能です。

 このうち、A(設備の設置)について例外を定めるのが、民法213条の3です。

 なお、B(設備の使用)は?と気になった人は、この記事の最後↓のほうをお読みください。


<<解説>>

2.分割によって生じたとき


 民法213条の3第1項は、「分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたとき」についての規定です。

 例えば、そうですね、「紫」という一筆の土地があったとします。

 土地「紫」は、問題なく「継続的給付」が受けられる状態です。

 水道に関して言えば、土地「紫」には、付近の土地から続く立派な水道管が設置されています。

 紫は、甲さんと乙さんの二人が共有しています。

 あるとき、甲さんと乙さんが仲違いをした結果、共有物である土地「紫」を、分割することになりました。現物分割です。

(現行法上の共有物分割についての解説記事)
 


 共有物分割によって誕生したのは、土地「青」と土地「赤」です。甲さんは土地「青」を、乙さんは土地「赤」を、それぞれ取得しました。

図:土地紫

 なんと、乙さんが取得した土地「赤」は、このままでは水道が使えません。水道を使うためには、他の土地に、土地「赤」へと続く水道管を設置しないといけません。

 ・・・ついに、そのときがやってきました。

 「分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたとき」(民法213条の3第1項)が。

 乙さんは、なにしろ甲さんとは仲が悪いので、甲さんの土地に水道管を通すのは嫌です。

 では、乙さんは、お隣の土地「緑」に、水道管を設置することができるでしょうか。


<<解説>>

3.他の分割者の所有地のみに設備を設置


 民法213条の2だけを読めば、乙さんは、土地「緑」に水道管を設置することができそうだと思えます。他の土地に設備を設置しないと、継続的給付が受けられないわけですから。

 でも、土地「緑」の所有者である丙さんからすれば、迷惑な話です。「今まで問題なかったんでしょ。甲さんと乙さんの都合で水道管が必要になったんでしょ。だったら、そっちで解決してよ。」と言いたくなるでしょう。

 改正法が用意した答えは次のとおりです。

 土地「赤」の所有者である乙さんは、「継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。」のです(改正後民法213条の3第1項)。

 うーん、意味、わかりにくくない・・・?

 要するに、

 <<設備を設置できるのは、他の分割者の所有地だけだぜ!>>

っていうルールですね(言葉をひっくり返しただけだけど)。

 土地に設備を設置されてしまうという不利益は、分割の当事者で引き受けなさい、という話です。

 つまり、乙さんは、土地「緑」に設備を設置することは許されません。

 「他の分割者」である甲さんの所有地である「青」に設備を設置することができるだけなのです。


<<解説>>

4.償金の支払義務がない


 民法213条の3第1項後段は、「この場合においては、前条第5項の規定は、適用しない。」と定めています。

 前条(民法213条の2)第5項の規定は、次のとおりです。

「5 第1項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第209条第4項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。」

 もともと同じ土地だったのだから、設備の設置については、甘んじて受け入れるべきだ(お金がもらえる話じゃないよ)という価値判断ですね。


<<解説>>

5.土地の一部譲渡


 以上のルールは、「土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合」に準用されます(改正後民法213条の3第2項)。土地を分筆して、一部を贈与したり、売却したりした場合も、同様のルールが当てはまるのです。

 一応、条文に沿ってルールを確認しましょう。

 土地の一部譲渡によって、「他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたとき」には、譲り渡された土地の所有者は、継続的給付を受けるため、譲渡人の所有地のみに設備を設置することができます。この場合においては、償金の支払義務は生じません。

 とにかく、継続的給付を受けるために他の土地に設備を設置するなら、もともと同一だった土地にしなさい、ってことです。

 とくに例外規定は設けられていませんね。

 うーん・・・これ、大丈夫なのかなぁ。

 ディベロッパーさんが、郊外の広大な土地をまとめて買って、宅地にして、細かく区画して、家を建てたい人達にバラ売りするって、日本全国で結構ありますよね。

 そういう場合は、継続的給付についても配慮した上で開発するんでしょうから、普通は本条の適用が問題にならないのかもしれませんが・・・。

 もし、何らかの事情により、一部譲渡の時点で、他の土地に設備を設置することが必要になっちゃってたとすれば、どこに設備を設置すればいいんでしょうね。もともと一つだった土地のどれかっていうことなんでしょうけど、それで本当にいいのか。その「どれか」はどうやって選別するのか。うーん、悩ましい。


<<解説>>

6.設備の使用は?


 しつこいですが、前回学んだ民法213条の2では、

A.「他の土地に設備を設置」すること
B.「他人が所有する設備を使用」すること

の二つが規律の対象になっています。

 これに対し、民法213条の3は、A(設備の設置)についてだけ規定しています。

 では、共有物分割や一部譲渡によって、B(設備の使用)が必要な土地が生じたとすれば、どうなるのでしょうか。

 法務省の資料では、次のように説明されています。

【民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案のたたき台(1)】
 土地の分割又は一部の譲渡がされたとしても、既設の設備の所有者が直ちに変更されるわけではないため、土地の分割等によって他人が所有する設備を使用しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じることは想定されないことから、・・・この部分の規律を除いている。なお、土地の分割等とともに、当該土地上の既設の設備についても譲渡がされることによって、設備を使用しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じるケースは想定し得るが、この場合には、当該土地の所有者は、当該設備がその分割等がされた他方の土地上にある限りにおいて、基本的には、・・・当該設備を使用することが損害の最も少ない方法として特定され、当該設備を使用しなければならないことになると考えられる。

 要するに、普通は、共有物分割などによって、B(設備の使用)が必要になることは想定されないだろう、というお話のようです(・・・ほんとか?)。もし、必要になったとしても、民法213条の2の解釈・適用により、普通は、「損害の最も少ない方法」として、もともと同一だった土地の設備を使用することになります。




 以上、民法213条の3について学びました。

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