相続


・親族が亡くなったとき、その遺産をどうやって分けるか。

・家族が借金を残してこの世を去ったとき、どうすればいいか。

・納得のいかない遺言を目の当たりにしたとき、何ができるか。

などなど、「相続」に関わるお悩みは、世の中にたくさんあります。

 超高齢化社会を迎えるこれからの時代、相続に関するお困りごとは、もっと増えていくかもしれません。

 この「やさしい相続」シリーズでは、

 ☑ 相続人(そうぞくにん)

 ☑ 遺言(いごん/ゆいごん)

 
☑ 遺産分割
(いさんぶんかつ)

 ☑ 
遺留分減殺
(いりゅうぶんげんさい)

 
☑ 相続放棄
(そうぞくほうき)

などについて、やさしい解説をさせてもらいます。


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 1.登場人物の紹介


 このシリーズでは、ある一家を題材にして、「相続」に関する問題について説明をさせてもらいます。

 実在する人物とは一切関係ありませんが、なんとなく親しみを感じることはあるかもしれません。

 家系図(ジェノグラム)↓ を下に貼ります。

ジェノグラム02(基本)


 簡単に、登場人物の紹介をします。この内容を覚えなくても、困ることは多分ありません。

    N:一家の大黒柱。
    H:Nの後妻。一家をやさしく見守る。
    S:快活な性格の主婦。健脚の持ち主。
    K:Sの年の離れた弟。ムードメーカー。よく野球に誘われる。
    W:まじめな末っ子。ファッショナブル。
    M:エリート会社員。ジャムおじさんのモノマネが秀逸。
    T:Sの長男で、Nの唯一の孫。
   ▲ 猫:ダンスが得意。

 ちなみに、Nには前妻が居ましたが、その人はSを産んだ後に亡くなりました。


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 2.相続開始時にまず確認すること


 「やさしい離婚」シリーズと同じように、まずは全体像を見てもらいましょう。

 ご家族や、親しい人が亡くなったとき、チェックしたほうがいい事柄(ことがら)として、次のようなものを挙げることができます。

 頭の整理や、心の準備をするために、ご活用ください。

やさしい相続チェック表

 上の表に掲げていることを、必ず全部確認しなければいけないわけではありません。よく問題になる「代表選手」をピックアップしているだけです。

 上の表の項目のうち、1~2個だけを確認すれば済む可能性もあります。

 反対に、上の表に書いていないようなことが、重要な分岐点になることも結構あります。例えば、寄与分(民法904条の2)とか。

 それと、上の表に挙げている順番どおりにチェックをしていく必要もありません。


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 3.用語の説明


 上の表に書いてある用語のうち、とくに大事なものについて、おおまかな意味をご紹介します。

 詳しくは、これから、第2回以降の個別の記事でご紹介させて頂く予定です。

(1)遺言


 自分(遺言者)がこの世を去った後の財産のゆくえ等を決める意思表示のことを、遺言(いごん・ゆいごん)といいます。

 「自筆証書(じひつしょうしょ)」、「公正証書(こうせいしょうしょ)」といった種類があります。

 一家の大黒柱のNさんが亡くなる場合を例にとると、Nさんは、遺言で、

ジェノグラム03(父の相続・原則)

 ①相続人の相続分を指定したり(民法902条)
遺言書01

 ②遺産分割の方法を指定したり(民法908条)
遺言書02

 ③「遺贈」(遺言による財産の移転)をしたり(民法964条)
遺言書03

と、亡くなる前に、いろんなことを決めておくことができます。

 遺言があるときは、それが遺産のゆくえを左右するのが原則です。遺言があると、遺産分割等をする必要はなくなる可能性があります。

 ですので、人が亡くなったときは、まず遺言があるかどうかを確認してもらうのが通常だといえます。

(2)法定相続人


 法律上、亡くなった人(被相続人)の財産を受け継ぐことが決まっている人のことを「法定相続人」といいます。ちなみに、相続が始まる前(被相続人が亡くなる前)は、「推定相続人」と呼ばれることがあります。

 遺言がないときは、法律に定めてあるとおりに、「法定相続人」が遺産を継ぐことになります。

 遺言があるときでも、例えば、遺産の一部のゆくえしか決められていないなら、残りの部分については法定相続人が遺産をもらうことになります。

 遺言や生前贈与などによって遺産のゆくえが全部決められているときでも、兄弟姉妹(+甥姪)以外の「法定相続人」は、後で説明する「遺留分」を受けられる可能性があります。

 法定相続人になる可能性があるのは、次のような人です。

① 配偶者
② 直系卑属=子(さらにその下の世代)
③ 直系尊属=親(さらにその上の世代)
④ 兄弟姉妹
⑤ 甥姪


 詳しくは次回ご説明しますが、とりあえずダイジェストでお伝えすると、

① 亡くなった人に配偶者が居れば、どんなときも配偶者は
 「法定相続人」になる

② 亡くなった人に子が居るときは配偶者+子が相続人になる

③ 亡くなった人に子が居なければ、直系尊属(親、祖父母・・・)
 +配偶者が相続人になる

④ 亡くなった人に子も直系尊属も居なければ、兄弟姉妹(その子)
 +配偶者が相続人になる

というのが基本ルールです。

(3)法定相続分


 法定相続人が財産をもらえる割合です。

 例えば、一家の大黒柱のNさんが亡くなったケースだと、配偶者のHさんの相続分は2分の1になります。子3名は6分の1ずつ(3人で合計2分の1)です。

ジェノグラム04(父の相続・相続分割合)


 法定相続人と法定相続分について、↓早見表を作ってみたので、よかったらご確認ください。

被相続人死亡時の法定相続分

 上の表では省略していますが、ほかにも色々とルールがありますので、詳しくは次回ご説明します。

 例えば下の図のケースで、Kさんが夭逝したとき、同じきょうだいでも、SさんとWさんは平等ではない、というちょっと意外な結末が待っています。

ジェノグラム(異母兄弟の相続分割合)

(関連記事)
月明かり橙法定相続分かんたん計算

(4)遺産


 「遺産」(相続財産)は、亡くなった人(被相続人)の財産です。

 積極財産(プラスの財産)だけではなく、消極財産(マイナスの財産)も遺産に含まれます。

 離婚に伴う財産分与と似たような話になりますが、遺産としてリストアップできるものには、例えば次のようなものがあります。◇=プラスの財産、◆=マイナスの財産です。

   ◇ 不動産(土地建物)
   ◇ 預貯金
   ◇ 有価証券
   ◇ 退職金
   ◇ 自動車等の高価な動産
   ◆ 借金
   ◆ 損害賠償債務
   ◆ その他の負債

 演奏をする債務など、「被相続人じゃないとダメ」な権利や義務は、遺産にならないことがあります。

 契約者や契約内容によりますが、生命保険の保険金は、遺産にはならないことが多いです。

 遺産の中には、当然に分割されるものと、「遺産分割」をしないと分けられないものがあります。

 詳しくは、以下の記事を確認してみてください。

(関連記事)
雨上がり黄「遺産」と「遺産分割の対象」の違い

(5)遺産分割


 文字通り、遺産を分ける手続です。

 ①遺言がない場合や、②遺言では遺産の一部のゆくえしか決められていない場合には、遺産分割をしなければいけなくなる可能性があります。

 もちろん、法定相続人が1人しか居ないのであれば、その人が遺産を全部もらえばいいので、遺産分割は基本的に問題になりません。

 法定相続人が2人以上居る場合に、

  ☑ 「何を、どう分けるか」

  ☑ 「誰が、何をもらうか」

が問題になってくるわけですね。

 法定相続人どうしの話し合いで解決できるならば、「遺産分割協議」で遺産を分けます(民法907条1項)。

 協議がうまくいかないときは、家庭裁判所を間に入れて話し合う、「遺産分割調停」という手続を利用することになります。

 調停をしても折り合いがつけられないときは、家庭裁判所が分割の方法を決める、「遺産分割審判」という手続で決着をつけることになります。

  家庭内の紛争を解決するための手続として、協議調停審判という段階が用意されていることは、「やさしい離婚」シリーズでも何度かご紹介させてもらいました。

(関連記事)
月明かり緑遺産分割協議
雨上がり水色遺産分割調停
月明かり紫遺産分割審判


 ややこしいのですが、法定相続人みんなが「これを遺産分割の対象にしよう」と合意できなければ、遺産分割の対象にできない財産もあります。

 これも、詳しくは、第3回に詳しく説明しています。

(関連記事)
雨上がり黄「遺産」と「遺産分割の対象」の違い

(6)遺留分


 遺言生前贈与などによって、本来もらえるはずだった遺産をもらえなくなったとき、兄弟姉妹以外の法定相続人は、「遺留分」として、一定の範囲までは権利を主張できます。

 遺族の生活を守るために、ある程度までは財産を取り戻せる仕組みになっているのです。

 基本的には、法定相続分の2分の1まで、遺留分が認められることになります(民法1028条2号)。

 相続人が直系尊属(親とその上の世代)だけのときは、遺留分は3分の1です(民法1028条1号)。

 ぜひ注意して頂きたいのは、遺留分減殺請求にはタイムリミットがあるという点です。

 下の期間内に請求をしなければ、権利が消滅します。

  ☑ 相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを
   知った時から1年間

  ☑ 相続の開始の時から10年間

(7)相続放棄


 「相続放棄」は、「プラスの財産もマイナスの財産も全部要らない」という風に、相続を拒む行為です。

 ①被相続人の財産が負債ばっかりである場合や、②とにかく遺産争いと関わりたくないんだという場合などには、相続放棄をするという手があります。なお、②の場合には、気の合う人に相続分の譲渡をするという方法もあり得ます。

 相続放棄をする場合、他の相続人や債権者などの関係者に、「相続放棄する」と伝えるだけでは不十分です。

 家庭裁判所に「申述」をして、受理してもらう必要があります。家庭裁判所の「許可」は必要ありません。

 原則として、相続が開始したことを知った時から3か月以内に手続をしなければいけません。

(8)祭祀主宰者


 民法では、系譜、祭具、墳墓などを承継するのは、「祖先の祭祀を主宰すべき者」だとされています(民法897条)。

 遺産分割とは別に、お墓などを守っていく人を決めることになっているわけですね。

 祭祀主宰者は、次のどれかの方法で決めることになっています。

 ①被相続人が指定する
 ②慣習で決める
 ③家庭裁判所で決める


(第2回)
月明かり橙法定相続分かんたん計算
に つづく