古志青年部

古志青年部は、「古志」俳句会の50歳未満の会員からなります。

新天地ここよここよと小鳥かな イーブン美奈子


 プールサイドにこんな鳥がいた。

DSC_0087
2024年6月14日

 インコだろうか。白のセキセイインコというのは珍しいそうだ。3日前にチャトゥチャック市場のペットゾーンで大規模な火災があったことを思い出す。もしそこから奇跡的に脱出してきた鳥なのだったら、猫などに捕まらないで生き延びてほしいと思う。

 さて、ペットでなく野鳥となると、こんな簡単に写真に写ってはくれない。バンコクには、ムネアカゴシキドリというキツツキ目オオゴシキドリ科の鳥がたくさん生息しているのだが、声は聞こえてもなかなか姿は見られない。

SEPBlog2
2023年12月27日

 頭に赤い帽子があり、アオゲラやヤマゲラのよう。顔は白、黄色、頬被りのような黒ラインも入っている。背の羽が濃い緑。胸が赤いのは名前通りだが、腹は薄い黄緑と濃い緑の縞模様で瓜の皮みたいに見える。嘴は黒。遠目では綺麗な色の鳥なのだが、よく見ると鼻のところに毛が生えていて、おっさんくさい顔である。インドやフィリピン、インドネシアにもいるそうだ。生息地域によって、色がちょっと違う亜種もいるらしい。

SEPBlog3
2023年12月27日

 初めて見た時は、電線に止まっていた。トゥットゥットゥットゥッ……と、低めの一本調子の声で鳴いていたのだが、鍛冶屋が金属を打つ音のようだということで、英名はCoppersmith(銅細工職人)という。タイ名もノック・ティー・トーン、訳せば金を鍛える鳥、すなわち「金細工職人」だ。リズムはメトロノームみたいに正確。首を前後に振りながら何十秒も息継ぎをせず(たぶん)、10センチくらいの小さな体で一所懸命に鳴く。かなり響く声なので、家の中にいてもよく聞こえる。

SEPBlog4
2023年12月27日

 そして、木をつつく。やはりキツツキである。上の写真のドリルで空けたみたいな円形の穴は、こやつの仕業らしい。梯梧の木なのだが、大小の無数の穴ができていた。この梯梧は枯れていて、もう一枚も葉っぱを出さない。つつかれ過ぎたせいか、もともと枯れていたのかは知らない。

 キツツキなんだから穴の中に棲んでいるはず。だが、穴の直径を見るとムネアカ氏(勝手に省略)が入るには狭そうだし、巨木ではないので奥行きもなさそう……など首をひねっていたところ、ついに巣穴から出てきたところに遭遇した。

SEPBlog5
2024年2月12日

 当然、入る時も頭が先だと思うので、穴の中でよいしょと向きを変えて出てくるのだろう。こんなサイズの穴でどうやって方向転換しているのか、かなりアクロバティックな格好で回っているんじゃないかと想像してしまう。写真はピンボケだが、顔を出して様子を窺ったかと思うとすぐ飛び立っていったので、この瞬間を見られただけでラッキーだった。なんせ3か月も「追っかけ」をしていたのだ。特徴的な声をしているから、聞こえたら追っかける。時には2羽(番?)でいるところにも遭遇。梯梧にいるペアとは別に、チャイヤプルック(ジャワセンナ)の木で見かけたりもした。

 とはいえ、いかんせん野鳥である。近頃は全然姿を見せなくなり、梯梧の枯木にも来なくなってしまった。私が追っかけたせいで逃げたのか、あるいは季節によって行動範囲を変えるのか。まあ、声はしているので息災なのだろう。




新天地ここよここよと小鳥かな イーブン美奈子




【タイ便り、イーブン美奈子さんより】



金山は人又人よ秋の蝉 安藤文

 残暑お見舞い申し上げます。暦の上では秋になりましたが、列島は厳しい暑さが続いてます。しかし、佐渡は、海に囲まれているからなのか、ものすごく暑いわけでもなく、夜には虫が鳴き出し、秋の気配を感じる日々です。
 さて、佐渡の金山が世界遺産に登録されました。島民にとってこの上ない喜びです。これを機にさらに佐渡が活気づくことを願っています。私自身、小さい頃に金山に遊びに行った記憶は何となくあるのですが、実はしっかりと見たことがありません。そこで、先日、改めて相川の史跡佐渡金山に行ってまいりました。

image7

 実際に行ってみると、お盆期間だったせいか金山はものすごい人で賑わってました。県外ナンバーの車がたくさんあり、観光客の人がほとんどだと思います。今回は時間の都合で残念ながら坑道コースを見て回ることができませんでした。外から眺めるだけでしたが、それでも十分楽しめました。

image8

 佐渡で金が採取できることは、すでに平安時代の『今昔物語集』に記されており、また室町時代に世阿弥が『金島書』で佐渡を「黄金の島」と言及してます。本格的に金の採掘が始まったのは16世紀後半です。江戸時代初期に全盛期を迎え、幕府の財源を支えますが、徐々に衰退していき、明治時代の機械による近代化などを経てのち、平成の1989年に資源の枯渇から操業を停止します。ざっと四百年の歴史があります。

image5

 相川佐渡金山のシンボル、道遊の割戸です。1601年に金鉱脈(道遊脈)が発見され、手掘りで採掘が進み、百年足らずで山が割れたようになりました。遠目からの写真なので少し分かりにくいかもしれません。坑道を抜ければもっと間近で見ることができます。

image2

 こちらは裏側から見た道遊の割戸です。これを眺めていると人間の欲望の底知れぬ深さを思い知らされます。

image6

 こちらは世界遺産からは除外されてますが、相川金山の近くにある北沢浮遊選鉱場という金を選り分けていたところです。私が佐渡で最も好きな場所です。どこかジブリに出てきそうな世界観をもっており、実際に「佐渡島のラピュタ」などと呼ばれている人気スポットです。佐渡に来る方にはまずこの場所をおすすめします。



金山は人又人よ秋の蝉 安藤文



【新潟便り、安藤文さんより】


半人半鳥灼熱の街見下ろして イーブン美奈子

 タイの国章にはガルダが描かれている。ガルダとはインド神話上の半人半鳥で、ヴィシュヌ神の乗りもの(ヴァーハナ)だ。不死の体を持ち、蛇神ナーガの天敵。ガルダという呼称はサンスクリット(梵語)で、タイ語ではクルット、英語ではガルーダという。仏教にも取り入れられ、迦楼羅(かるら)となった。日本にも、国宝「八部衆・迦楼羅像」が興福寺にある。

Garuda1
タイの国章

 この国章は、公文書に必ず刻印される。また、王室に認定された企業(銀行や病院など)には国王からガルダ像が贈られ、本社ビルなどに掲げられる。形や色に基本的な決まりはあるが、細かいところは自由である。

Garuda2
御用達企業のガルダ像

 タイの国章なのになぜインドの神様なのだろう。そのことが私には不思議だった。確かにタイに創造神話は見当たらないのだが、タイ独自の神様がいないなら、花とか動物とか別のものを国章にすればいいではないか。だが、歴史を遡ってみると理由が何となく想像できてくる。タイの現王朝は1782年に始まった新しい王統であり、『古事記』や『日本書紀』を有する日本の皇統とは違うので、シンボルにはことさらに神が必要なのだ。

 ところでガルダと一口に言っても、描かれ方はさまざまで、人間の胴体と鷲の頭部・嘴・翼・爪を持つ姿のことが多い。タイの国章になっているのは、両翼を広げた姿で、ヴィシュヌ神の乗りものとしてのガルダを表す。ヴィシュヌとはインドの最高神の一柱で、10の化身(アヴァターラ)となる。そのひとつが「ラーマ」すなわち王子なのだが、タイの現王朝の国王はラーマ1世、2世……というように「ラーマ」という名で呼ばれる(注)。また、現王朝はチャックリー王朝と呼ばれるが、チャックリーとはチャクラム、すなわち円盤型のヴィシュヌの武器のこと。このチャクラムも旧国旗などに描かれている。

 ガルダを国王の象徴としたのは現王朝が初めてではなく、アユタヤー王朝時代(1351~1767)からだそうだ。また、タイだけでなく、インドネシアでもガルダが国章になっている。課題だが、インドネシアのガルダの歴史についてももっと知りたいと思う。

 ガルダがナーガの天敵になった経緯は本家本元インドの神話に描かれており、これが大変面白い。長い話なので書くのは諦めるが、神様たちがこぞって不老不死を手に入れたがったり、騙されたから騙し返したり、ゼウスやスサノオであれガルダであれ神様というのは万国共通で人間的なものだなあと思うと愉快なのである。タイで見られるガルダ像の中には、ナーガを捕まえている姿のものもある。ワット・プラケーウ(エメラルド寺院)の有名なガルダ像もその一つなので、バンコクを観光される際にはぜひ観てほしい。

Garuda3
中央郵便局の扉のガルダもナーガを捕らえた姿。タイ近代美術の父といわれるイタリア人彫刻家シン・ピーラシーによる意匠。




半人半鳥灼熱の街見下ろして イーブン美奈子





(注)ただし、1世時代から「ラーマ」と呼ばれていたわけではない。


【タイ便り、イーブン美奈子さんより】


黒南風や屑籠に駄句たまりゆく 安藤文

 新潟・佐渡は平年よりも遅く梅雨入りしたようですが、雨があまり降ってないせいか、実感が湧きません。しかし、庭や道端に咲く紫陽花を見ると梅雨の気配を感じとることができます。先日、あじさい寺として有名な蓮華峰寺(れんげぶじ)に行ってきました。 

image1 (4)

 佐渡の南にある蓮華峰寺は、佐渡が京都の鬼門にあたるとして、806年頃に空海が開山したといわれる古刹です。7月頃に7,000株もの紫陽花が咲き乱れるので、あじさい寺と呼ばれています。

image1 (3)

 境内には色とりどりの紫陽花が咲いていました。少し時期が早かったですが、十分に紫陽花を堪能できました。

image2

 こちらは額紫陽花。紫陽花というと、手まり咲きの豪勢な花に目がいきがちですが、額咲きの花もすっきりとした趣があって私は好きです。

image4

 本尊の聖観音菩薩を祀る金堂。境内の真ん中に位置し、蓮華峰寺の中心的な仏堂です。立派な造りでした。境内には大きな池があり、蛙の鳴き声がすさまじかったです。しきりに鶯の鳴き声も聞こえました。杉の大木もたくさんありました。自然豊かで秘境的なお寺です。

image2 (1)

 時期は遡りますが、これは5月頃に佐渡の長谷寺で撮った牡丹です。長谷寺(ちょうこくじ)は、蓮華峰寺と同じく空海の開基といわれている古刹です。奈良の長谷寺を模していて、牡丹が有名です。あまりにも綺麗だったので、写真を載せておきます。



黒南風や屑籠に駄句たまりゆく 安藤文




【新潟便り、安藤文さんより】


空ひとつあれば鳥飛ぶ皐月かな イーブン美奈子

 日本における芭蕉のように、タイの国民にこよなく愛されている詩人はスントーン・プーである。1786年6月26日生まれ、1855年没。一茶の23年後に誕生し、西洋化前夜のタイを駆け抜けた人だ。

 毎年6月26日、スントーン・プーにゆかりのある地では記念行事が開かれる。「時雨忌」「一茶忌」といった命日ではなく、誕生日というところがなんだかタイらしい。生死は流れゆく大河の水のようなもの、死は黙って静かに受け容れ、一人の詩聖がこの国に生まれたことだけを祝い続ける。そういえば、タイでは寺院壁画なども人々の溢れる堂内に晒しっぱなしで、管理された空間で厳重に保護するなんてことはしない。汚れたり色褪せたりする一方だし、日本人としては惜しい気もするのだが、人間であれ文化芸術であれ流転していくもののひとつであることに変わりはない。

 昨年、列車でペッチャブリー県へ出かけた。バンコクから西へ140 kmほど。市内のペッチャブリー川のほとりに、スントーン・プーの像がある。

photo1
地元の人が毎日拝みに来ているのだろう、真新しい花飾りや水が供えられていた。


 プーは貧しい家庭に生まれたが、宮廷詩人としてラーマ1世(在位・1782~1809)から4世(在位・1851~1868)までに仕えた。ラーマ4世王が離宮を営んだペッチャブリーの地で詠まれた詩は、プーの人生最後の紀行詩といわれている。209連(1連は4句)に及ぶ長大な詩で、言葉も私には難しいのでなかなか読み切れないのだが、最初の部分はこんな感じだ(訳は筆者。以下同じ)。

ああ、日は翳り
黄昏に露がきらめく
風神ヴァーユがそっと吹き抜ける
うそ寒に身を捧げ
ペッチャブリーの街へ赴いていく

 訳はひどいかもしれず申し訳なくなってくるのだが、原文は大変美しいタイ語である。プーの目に映ったペッチャブリーの樹々や花々、動物、食べ物、人々の生活が豊かに描かれている。この地はプーの母の故郷らしいともいわれている。

樹々には花が咲きこぼれ
チャムパー、サーラピーの香が満ちわたる
菩提樹、ガジュマルは石の間を芽吹き
インタニンは光を縫って開花する
(チャムパーはキンコウボク、サーラピーはマメーア・シアメンシス、インタニンはオオバナサルスベリの仲間)


photo2
インタニン

 ちなみに、スントーン・プーというのは姓名ではなく、スントーンが称号、プーが名。権中納言定家とか、和歌集の作者名表記にどこか似ている。最終の称号はプラ・スントーンウォーハーンというのだが、スントーン・プーと親しみを込めて呼ぶのが一般的である。




空ひとつあれば鳥飛ぶ皐月かな イーブン美奈子





【タイ便り、イーブン美奈子さんより】


 

食欲はあつて良きもの田螺鳴く 安藤文

 佐渡は春もたけなわ、冬の曇り空が嘘のように消え、晴天が続く日々です。この春は、佐渡中の桜を巡る旅をしたいと思っていました。しかし、運が悪いことに長年乗ってきた車が壊れ、廃車となった上、新潟から新車が来るのが遅れて、佐渡中の桜を見に行くことができませんでした。このブログで桜の写真をたくさん載せようとしていたのですが、残念です。そのため、時期は過ぎましたが、今回は身近にある佐渡の桜を紹介しようと思います。

image0

 家のすぐ近くにある安照寺というお寺の桜です。ものすごく立派な桜で壮観でした。住職さんの話では、この桜の木は樹齢百年くらいだそうです。以前から家の二階から見えていたのですが、今回はじめて境内に入り、間近で見ました。

image1

 住職さんは、うちの神社(諏方神社)と関係が深いらしいです。安照寺は、大相撲の佐渡ケ嶽部屋の元祖、佐渡ケ嶽猪之助の菩提寺であり、過去帳等が残っています。お寺の中に上がり、相撲好きの住職さんのコレクションをいろいろと見せてもらいました。

image1 (1)

 こちらは庭の白木蓮。台所の窓から見えるこの花が満開になると、春を感じます。

image3

 佐渡に黄砂が降りました。黄砂で山々がかすんでいます。あまり見ない珍しい光景です。


image1 (2)

 おまけです。四月上旬に念願の奈良の吉野山に一人旅に行ってきました。俳句をやっている身としては、一度は行っておくべきだと思っていました。生憎の花曇りでしたが、十分に桜を楽しめました。京都にも行き、素晴らしい旅になりました。




食欲はあつて良きもの田螺鳴く 安藤文




【新潟便り、安藤文さんより】


なかんづく大きな春日沈みけり イーブン美奈子

 蝶はタイ語で「ピースア」という。「スア」はシャツなど洋服の意、「ピー」はお化けや幽霊のことだが、おどろおどろしい化け物だけでなく、悪さをしない精霊なんかも含まれる。タイの蝶は色彩も豊かなので、なるほど綺麗な洋服が化けたという想像を誘ったのだろう。

 バンコクでよく見かける蝶に、リュウキュウアサギマダラがいる。海を超えて飛行するアサギマダラとは別の種で、そこまで遠くへは行かないらしい。翅のシアンが美しい。下の写真の白い花は、ウォータージャスミンという爪の先ほどの小さな花で、生垣全体にびっしり咲き、夜間に甘い香りを漂わせる。

1
2
(2022年11月、バンコク)

 次も色がきれいな、ベニモンシロチョウ。正式な和名はヒパレーテカザリシロチョウというそうだが、ちょっと覚えにくい。ウォータージャスミンにも、やはり香りのよいプルメリアや印度紫檀にも集まる。大変元気のいい蝶でなかなかじっとしてくれないのだが、寒季に凍ててガラス窓に貼りついていたところをゆっくり撮った。

3
(2021年1月、バンコク)

 ベニモンシロチョウは私の住む4階の窓を過ぎっていくこともよくある。蝶だからヒラヒラはしているものの意外とスピードが速い。翅をたたむと後翅(こうし)が上になる形で重なるため、黄色とオレンジ色が目立つが、その下に隠れている前翅(ぜんし)は、ほとんど白一色で黒い筋が入っているだけ。翅を大きく広げて飛んでいると、真っ白にも見える。

 続いて、マダラチョウの仲間。この写真も凍蝶。摂氏25度程度だったので日本の蝶なら凍てないんじゃないかと思うのだが、暑い国の蝶だからだろうか、涼風に吹かれて動けなくなっていた。カバマダラだと思う。

4
(2023年11月、バンコク)

 下の写真は、名前がわからない。ベランダから入ってきたらしく、部屋の床にいた。羽化したばかりなのか、全然動かず。動けない相手ばかり狙い撮りしているので、だんだん申し訳ない気分になってくる。

5
(2022年10月、バンコク)

 同じく名前不明。枯葉そっくり。動かないと思って近づいたら、驚いてバタバタ飛び回ったので難儀した。廊下にいた。

6
(2023年12月、バンコク)

 アゲハチョウの仲間も多い。下の写真はオナシアゲハだと思う。

7
(2023年11月、ラーチャブリー県)

 昨今のスマホカメラは性能が良くなり、画像検索で名前もある程度は調べられ、簡単にバタフライ・ウォッチングができるようになった。ただ、私がど素人であることに変わりはないので、間違いがあればご教示頂けましたら幸いです。




なかんづく大きな春日沈みけり イーブン美奈子




【タイ便り、イーブン美奈子さんより】


春愁や話しあひ手は野良の猫 安藤文


image1

 初めまして。安藤文と申します。今回は「新潟便り」初回ということで、私が住んでいる佐渡島を軽く紹介していこうと思います。私は佐渡で生まれたのですが、生まれてすぐ東京に移り、東京で育ちました。そして4年ほど前に再び佐渡に戻ってきて、今に至ります。私が住んでいるのは、両津港佐渡汽船がある両津というところです。新潟に行く佐渡汽船があるので、島民が新潟に行く際は、大体は両津までやって来ます。佐渡の玄関口です。 もう一つ、島の南端に小木というところがあり、新潟の直江津に繋がる、小木〜直江津航路もありますが、今の時期は運休してます。

 佐渡汽船ターミナルです。佐渡の冬は大体天気が悪く、どんよりとした曇り空が広がってます。暦の上ではもう春ですが、まだいつもこんな感じです。

image0

 ときわ丸という大型船で、比較的新しい船です。もう一つ、おけさ丸という年季の入った船もあります。新潟まで2時間半かかります。ジェットフォイルという高速船もあります。1時間で新潟に着きます。運賃は高いですが、早く着くので、最近、島外に行く時は、私はジェットフォイルを使ってます。

image0 (1)

 私の実家は、両津港から歩いて15分くらいのところにあります。実家は、代々、神社を家業としています。父が神主をやっています。かつては名家であったらしいです。かの尾崎紅葉が佐渡に旅行に来たとき、宿がどこも空いてなかったので、諏方神社の宮司、安藤氏のもとに一泊したと紀行文『煙霞療養』にあります。私もこの話を聞いた時は驚きました。俳句をやっている身としては、誇らしいことです。ちなみに、普通は「諏訪」ですが、うちの神社は「諏方」と書き、言偏がありません。これは全国的に珍しいようです。

image3

 まだ山々には雪が残っています。北に大佐渡山地、南に小佐渡山地がある佐渡は、海だけでなく、山も魅力的です。佐渡金山も有名ですね。今年は佐渡金銀山が世界遺産に登録されるかどうか注目されてます。紆余曲折ありましたが、私としても登録されることを祈ってます。佐渡は、人口減少、少子高齢化、観光客減少など問題が山積してます。佐渡金銀山が世界遺産に登録され、少しでも島が活気付けば、この上なく喜ばしいです。

image0 (2)





春愁や話しあひ手は野良の猫 安藤文




【新潟便り、安藤文さんより】

【新潟便り】担当者交代いたします

2022年8月~2023年12月の計7回、市川きつねさんにご担当いただきました「新潟便り」ですが、今月より安藤 文さんへ交代することとなりました。

市川さんには7回の連載の中で、十日町を中心とした雪国での暮らしや『越佐俳句歳時記』などを出典に地域ならではの句をたくさん紹介いただき、充実した「お便り」を届けていただきました。

今月からは安藤さんより、佐渡ならではの「お便り」を皆様にお届けいたします。
安藤さんは2023年に「古志新鋭賞」を受賞されました。俳句も注目です!

引き続き応援よろしくお願いいたします。

石塚直子


プルメリア樹下は蝶々湧き出でて イーブン美奈子

 年末年始、外国人観光客を多く見かけた。コロナの影響も薄らいできたと実感する。タイへの渡航者が主に使うのは、スワンナプーム国際空港。ターミナルビルを彩るタイ芸術の数々でも有名だ。中でも目をひくのは、巨大な「ヤック」像である。

1Yak

 ヤックの語源は「ヤクサ」というサンスクリットで、インド神話の中の鬼神のこと。タイ仏教の世界では護持神とされ、王室寺院であるワット・プラケーウ(エメラルド寺院)に像が建てられている。これを模したのが空港のヤックたちだ。迷信といわれようと何であろうと、どうか空路の安全を護ってくださいと願ってやまない。

 ヤックは、大叙事詩『ラーマキエン』(インドの『ラーマーヤナ』のタイ版)にも登場する。この物語は舞踏劇、人形劇、影絵芝居などで演じられ、寺院壁画にも描かれていて、タイの人には大変馴染み深い。一番人気のヤックは「トッサカン」という名の王。緑色の顔と体を持つ十面の鬼神だ。空港では、このトッサカンを含む全12体の像が見られる。

2Yak
トッサキーリーワン。トッサカンと象の間の子。双子の兄で、緑色。



3Yak
トッサキーリートン。双子の弟。赤茶(空港の像は赤で表現されている)。

 ところで、本来の「ヤクサ」というサンスクリットには、「夜叉(やしゃ)」「薬叉(やくしゃ)」の漢訳がある。ただ、今の日本語に訳すとすれば、タイのヤックは「夜叉」というより「鬼」だろう。イメージとしては、もちろん幽鬼の方ではなく、虎のふんどしの赤鬼・青鬼の方。というのも、タイ語の「ヤック」と日本語の「鬼」という言葉は、実によく似た使い方がされるのである。

 日本語では、鬼やんま、鬼蓮、鬼教師など「鬼」の付く語は枚挙にいとまがないが、タイでも巨大なものや恐ろしげなものの形容によく「ヤック」を使う。たとえば、タイ語で「蛸」はプラームック・ヤック。直訳すると「鬼烏賊」だ。キンカー・ヤック(鬼蜥蜴)は「恐竜」のこと。「鬼のような心」の「鬼」はそのまま「ヤック」に言い換えてもいい。また、ジャンボラーメンなど大盛りメニューが目玉の店はタイにもよくあるが、この「ジャンボ」にあたる言葉が「ヤック」。なんとかヤック、という名前が付いていたら、とにかくジャンボなのだ。日本人が「鬼」好きなのと同じくらい、タイ人も「ヤック」好きなのである。
 さらに、「ヤック」には感動詞的な用法もある。私がもし、明日までに俳句を百句作れと先生に言われたら思わず「おにっ!」と叫んでしまいそうだが、タイ人も「うわっ」とか「やばっ」の代わりによく「ヤック!」の語を発する。

 こんな風に「ヤック」も「鬼」も日常の中で同じように親しまれている。違う国の違う言語なのに用法が共通している、という不思議は妙に嬉しい。最近では、日本の若者が「おにかわ!」など言っているのを聞き、思わず頬をゆるめてしまった。「おにかわ」とは、「鬼可愛い=極めて可愛い」のことだそうだ。鬼って怖いはずなのに、逆のものにまで付いてしまうなんて、おにかわ(!?)、じゃなくて「ヤック!」である。

4Yak



5Yak





プルメリア樹下は蝶々湧き出でて イーブン美奈子




【タイ便り、イーブン美奈子さんより】


月別アーカイブ
プロフィール

koshi_seinennbu

QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ