古志青年部

古志青年部は、「古志」俳句会の50歳未満の会員からなります。

2012年10月

すいと来てすいと帰りし秋の蚊ぞ  石塚直子

「蚊」も歳時記を持っているのだろうか。
夏の蚊は夏という大看板を背にどうどうと動き、羽音も大きい。
一方で、季節がかわり秋の蚊は、少々ひかえめのように感じる。
そのひかえめさを「すいと」がうまく表現している。
秋の蚊を瞬間的に写真機で撮ったような一句。
蚊の手には小さな歳時記がみえるような気がする。(山本純人)

【9月2日、青年部句会出句より】

珈琲を飲める極楽浄土に蚊  竹下米花

これは本当に共感できて、笑ってしまった。作者の困惑ぶりが目に浮かぶ。
お気に入りの珈琲豆を挽いて、ゆっくり香りを楽しみ、音楽もかけて、まさに至福のひと時。それなのに、そんなときに「蚊」。この後、どんな騒動がおきるのか。モノクロ映画のコメディを連想したくなる一場面。
(高角美津子)

【9月2日、青年部句会出句より】

庭ぢゆうの水ふるはせて秋の蝉  市川きつね

秋になっても力強く鳴き、その力強さが、庭園の水を揺らしているという蝉の生命力をうまく描いたすばらしい一句です。通り雨が過ぎると、待っていたように一斉に鳴き出し、うるさいばかりの大声で残暑を引きたて、涼しい水も途端に温ませてしまう秋の蝉と、それに震える雫、あるいは湖の水。まさに上五の「庭ぢゆう」は今回の吟行にふさわしい言葉です。(泉 裕隆)

【9月2日、青年部句会出句より】

大胆に切つて楽しき西瓜かな  西村麒麟

叩いてみたところで甘味の保証はなく、自転車の籠に入らず、やたら重く、台所のどこに置くか考えさせられ、ゴロゴロして場所をとり、冷えるまで待たされる。そんな西瓜を“もの”にする一瞬をとらえた一句。切り分けられる西瓜を待つ人たちの目がすでに笑っている。(泉 経武)

【9月2日、青年部句会出句より】
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