古志青年部

古志青年部は、「古志」俳句会の50歳未満の会員からなります。

2015年01月

初春や神を背中に象歩む イーブン美奈子

 日本から知人が来たので古都アユタヤーを案内した。
 有名な観光地だが、バンコクから乗り合いバス(14人乗りのVAN)で1時間半ほど。通勤圏内でもある。
 旅行、と気構えるほどではないから、私は端から無計画。お客さんは初めてのタイだし、こんな雑なガイドで平気なのかと内心はらはらしたに違いないが、そして実際、色んなどたばたはあったが、無事に遺跡を回り、象にも乗れた。タイ人の友達夫婦とも合流し、世界遺産祭のショーまで観た。
 帰りは、乗り合いバスが終了している時刻だったので、タクシー会社に電話してみたが、混んでいるらしく何度かけても繋がらない。アユタヤーに流しのタクシーはないし、と困っていると、友達の奥さんが「ランシット行きのVANならあるよ」と言う。ランシットはバンコクの目と鼻の先だ。よしそれだ、とVAN乗り場まで皆で歩いた。結構遠くて、優に10分は歩く。歩きつつ、奥さんが「この時間なら、たぶん、まだ最終便があると思う」とつぶやく。たぶん? 思う? 
 半信半疑だったが、乗り場に着くと、目当てのVANが停まっている。やったあ、と喜んだのも束の間、運転手さんが出てきて「今日はお祭りだから乗り場が変更になったよ」。噴水広場へ行けと言う。えーっ、その噴水広場から延々歩いてきたのに!? 私だけならすごすご引き返すところだが、友達の奥さんは黙っていない。奥さんはタイ在住の中国人なので、タイや日本の人よりよほど気が強いのだ。交渉して、VANの経路を特別に変更させ、我々をピックアップしてもらうということになった。
 更に待つこと10分。運転手さんも一緒に待っていてくれたのだが、あまりに遅いので「じゃあ僕が広場まで送ってあげよう」と親切に自分の車を出してくれた。そして無事にVANに乗り、ランシットからタクシーで高速に乗る。
 実は、朝、お客さんには「ショーは9時には終わるから11時にはバンコクに戻れますよ(たぶん)」と伝えていた。だが、VAN騒ぎのあたりで彼はきっと「着くのは深夜過ぎだろうな」と覚悟したに違いない。「東南アジアは時間通りに進まない」「タイ人は計画を立てない」というガイドブックの教訓など思い出し、諦めてもいたかも知れない。ところが、なんと、ぴったり11時にバンコクに到着できてしまった。お客さんもびっくりしている。
 タイには「マイペンライ」という言葉がある。意味は「だいじょうぶ、何でもない」。タクシーがなくても、VANの乗り場を間違えても「マイペンライ」。タクシーがないなんて、どうやって帰るんだ! と怒っても物事は解決しないけれど、だいじょうぶ、とのんびり構えていると、意外に最終的にはうまくいってしまう。「マイペンライ」は、いかにもゆったりした南国のタイらしいやり方なのだ。

Ayutthaya
 

初春や神を背中に象歩む イーブン美奈子


【タイ便り、イーブン美奈子さんより】

鼻さきのくすぐつたくて福の笹 高角みつこ

大阪便り1回目は、おめでたい気分満載の「えべっさん」を紹介したい。
歳時記にある「十日戎」のことだ。こちらでは、戎様も親しみをこめてそう呼ぶ。
福耳のぷっくりしたお顔を見ていると、本当にいいことがおこりそうな気がしてくる。
古志大阪支部の吟行句会で、残り福の1月11日、今宮戎神社に行ってきた。

商売繁盛で笹持って来いっ

この有名な掛け声で、気分は一気に高揚する。鳴り物の早いリズムが一日中境内に響く。
金の烏帽子に水干姿の福娘が、華やかにずらりと並び、参拝する前から、ありがたい。
福娘は3000人近い応募のなかから、たった40人だけが選ばれる。本当にべっぴんさんぞろいなので、女の私も、うきうきしてくる。

えべっさんは、耳が遠いと言われていて、お願いごとをした後、念を押さないといけない。本殿の裏に回って、銅鑼を叩き、もう一度頼んでおく。他の戎神社では、二度もしないところもあるが、ずうずうしいと思わないでほしい。商売繁盛の道は厳しいのだ。

お参りの後は、縁起物の福笹を手に入れたい。笹は無料。お飾りの小判、鯛、米俵は有料。福娘に気をよくして、あれこれ飾ってもらうと、値段にびっくりすることになる。でもスカスカの福笹は寂しい。やはりたくさん欲しい。
神社の外は、果てしなく屋台が並ぶ。遠くまで、人人人でいっぱいだ。
縁起物、お菓子、串焼き、ゲーム、お店を見て回ると、あっというまに時間がたつ。

私は、かわいい福飴を見つけ、しゅうまいが評判の店「一芳亭」でお土産を買って満足。
駅に戻ってから、一度も句帳を開いていないことに気づいた。次回は冷静に吟行しよう。

良い句がたくさん生まれる一年でありますように。


鼻さきのくすぐつたくて福の笹 高角みつこ 


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         【福娘】                      【福飴】



【大阪便り、高角みつこさんより】 

「三十句競詠」完成のご報告

 この度、古志青年部の有志による「三十句競詠」が完成致しました。

 「三十句競詠」とは、各自割り振られた季語で俳句をつくり、主宰の選を受けながら、ある一定の期間内に、三十句の完成を目指すものです。

 以下が、参加者と担当題、自選5句です。

 石塚直子  「蕪」 「凩」
 
蕪摺つてかの日の雪を想ひけり
蕪に彫る直といふ字のむづかしさ
われもまた過客の一人蕪汁
木枯らしに剥がされまいと蓑の紐
木枯らしも辞典が好きか頁繰る


 市川きつね  「雪」 「海鼠」
 
指二本くはへて笛や雪日和
雪下ろし家ゆすらるる楽しさよ
ここよりは一人で歩む雪の道 
しばらくは海鼠となつてやり過ごす
日出る国の隅つこ海鼠干す


 山内あかり  「氷」 「梟」
 
 氷るものとけゆくたびに虹色に
氷の夜獣のこゑの美しき
我が俳句氷の芯の太々と
たましひのいつもどこかに氷張る
ふくろふや影には影のなかりけり

 
 なお、「三十句競詠」の全句は、本年4月に刊行予定の「古志青年部年間作品集2015(第4号)」に掲載致します。

 古志青年部全体のさらなるステップアップを目指し、今後も引き続き取り組んで参りたいと思います。 

石塚直子 

謹賀新年

 新春のお慶びを申し上げます。

 旧年中は格別のご高配を賜りましたこと、厚く御礼申し上げます。
 
 2015年も部員一同精進して参りますので、本年も古志青年部へ変わらぬご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い致します。

 皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。


石塚直子
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