2004年05月13日

kotani(uum..) 今日は野球でよく取りざたされる「キレ」や「ノビ」の正体について考えてみました。好投している投手の球を指してよく「キレがいいですねぇ」などと解説者がコメントすることがあるんですが、これっていったいどういうことなんでしょうか。
 掛布雅之さんによると「テレビ中継で表示されている速度は初速だが、この初速と終速、つまりバッターの手元でのスピードの差が少ない球をキレのいい球と言っている」とのこと。でもそれって「ノビ」のことでは?
 河野博文さんによると「キレが良いというのはどういうことか。それは腕の振りがいいから。キレが良いか悪いかというのは投げている時に自分自身で分かるもの。今日は球のキレが悪いなあと自覚したら、腕の振りをよくすればいい。さらに、試合中はコーチからももっと腕を振れと指示がある。こう言われたら球のキレが悪い証拠」と、余計にわからないことを言っています。
 おそらくこれって捉え方にそうとう個人差がありそうですね。要は回転もよくスピードもあってきちんとコントロールされている球を称して「キレがいい」と言っているんじゃないかというのが僕のとりあえずの結論です。もっと簡単にいうと結果として打者をきちんと抑えている投手の球は誰が見ても「キレがいい」ってことですかね。
 思い出すのが神宮球場で観た最盛期の今中投手。148キロのカーブの後に98キロのカーブが来る。まっすぐで2−0と負い込まれた広沢のバットは次に100キロぐらいのカーブが来ると、ボールがホームベースの5メートルぐらい前に来たところでもう一回りしていたという印象でした。試合は9−0で中日の圧勝。ああいうふうに「ストライクを取る球」「ファウルを打たせる球」「微妙にはずす球」というメリハリがはっきりしていることを指してそれぞれのボールを「キレがいい」とつい言ってしまうんじゃないかと思いますけどね。
 これに対して「ノビ」というのはかなり統一的に捉えられていると思いますが、「初速と終速の速度差が少ないボール」というのはちょっと眉唾な気がします。少し知識のある人なら「重い軽い」の論議がおかしいことぐらいご存知かと思います。物理学的にみて同じ速度で発せられた同じ質量の球のもつ運動エネルギー量が投げる人によって異なってくるなんておかしな話ですよね。初速と球速についても同じような誤解があるんじゃないでしょうか?
 回転軸を進行方向と同じにして高速回転させたいわゆる「ジャイロボール」ならば弾丸と同じ理屈で空気抵抗を周囲に散らすためにいくらか減速を妨げると想像できます。しかしバックスピンをかけたボールでは揚力こそ発生して自然な落下軌道よりも上をボールが来て見かけ上「ホップした」ように映るものの、球を落下させるのは重力、速度を落とすのはおもに空気抵抗であるわけで、実際の速度差に大きな差が出るなどというのはちょっと僕の知識では説明できません。誰か教えてください。
 そういえばカケフさんいわく「ボールを長く持てるピッチャーは初速と終速の差があまりない。やはり球離れが早いピッチャーはマウンドからホームベースまでの距離を長く使っているので球が失速しやすい」って、たかだか数センチのリリースポーイントの違いでそうなるとはとても思えないんですが。
 このあたりのことに詳しい福岡工大の溝田先生らの論文なんかも読んでみたんですけど、「そうはいっても回転のいいストレートは速度差が小さいんだ!」と説明できる方がいらしたらぜひ教えてください!

 ちなみにフォークボールというは厳密にいうと変化球じゃないそうですね。回転による浮力をつけず、ただあるがままの放物線を描かせるという意味では、それが本来の球の通る道なんだそうです。ところが回転のいい浮力つきのボールばかりいつも見ているから、ボールが落下する軌道を読み違えちゃうわけです。ということで、研究者によると「ストレートは重力に逆らった浮力をつけているという意味で最大の変化球である」ということになるそうです。
 このあたり、興味深い研究がたくさん紹介されています。

入門編はこちら
http://www.ntv.co.jp/megaten/library/date/03/06/0608.html

応用編はこちら
http://turbo.mech.iwate-u.ac.jp/forkball/forkball.html


(23:29)

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1. ノビとキレ  [ About ]   2005年03月06日 23:45
ストレートの威力は速さだけで決まるわけではない。ノビ。キレ。重さ。球質。そーゆうのがあるんだよ。そーゆーことになっている。「ある派」と呼ぼう。新聞界もテレビ界も雑誌界も基本的に「ある派」の支配下にある。一方、圧倒的少数派ながら、それに疑義を表明する人もい

この記事へのコメント

1. Posted by マンガウルフ   2004年05月14日 00:37
大変勉強になりました。

だいたい野球に限らず、経験者による解説というのは専門用語が当然のようにでてきて、しかも人によって定義がバラバラとくれば初心者にはとっつきにくいです。

たとえば「ノビ」と「キレ」もそうですよね。
解説者に「変化球のキレ」と言われれば、まあなんとなくわかります。
「ものすごく鋭く曲がるのだろうな」などとイメージがしやすい。
しかし「ストレートのキレ」という言葉では「変化球のキレ」という定義まで怪しくなってきます。
「曲がらないのにキレてるってなんだ?」という風に。

しかし「ストレートは重力に逆らった浮力をつけているという意味で最大の変化球である」という見解があれば、とりあえず説明できますね。

う〜ん、なんでも突き詰めると奥が見えなくなりますね。
2. Posted by こたに   2004年05月14日 00:54
 江川卓さんはそういうインチキな表現が嫌いだからか、あるいは素人ファンに配慮してか、「キレのいいカーブ」などという言い方はしませんね。「曲がりの大きいカーブ」と表現しています。これはこれで立派。
 要するに「キレ」とは本来そのボールがいちばんいい状態で投げられたときに備わっているであろう「球速」「軌道」「回転」という要素を備え持っているときに感覚的に使われる言葉であるように思えます。
 ですから「キレのいい」ストレートとは腕も手首も使い切ってまっすぐバックスピンがかかった状態で絶妙なコースへ飛んでいくボールのことなんでしょう。そういうボールにはシーム(繋ぎ目)が回転によって引き起こす気流でボールの上に進行方向から後ろへ流れる気流が下より速くなって気圧が薄くなり、結果として浮力が働きます。この度合いが大きいほど、ボールは重力に逆らって落下点を遠くする、つまり手元にきてもなかなか沈まなくなるわけです。そうなると打者としては経験値による予想よりもはるかに手前まで沈まないボールに対処するため、バットはボールの下を通りがちで、結果としてフライを上げやすくなる。しかし一つ間違えば田かだかとスタンドまで持っていかれるので、こういう回転のいいボールを「軽い」などと言ったりする。整理するとそういうことですね。

3. Posted by Honeywar   2004年05月14日 01:50
> 経験者による解説というのは専門用語が当然のようにでてきて
 掛布さんの場合、専門用語どころか「バットの外側に目があるように振る」などとおっしゃるわけですから、ますますワケわかりませんよね。

 球のキレとノビ、というのは確かに興味深い話題ですよね。
たぶん「鋭く曲がる変化球、鋭く浮き上がるストレート」なのでしょうが。
 僕など、実際にやったことあるのは、シロウトの軟式野球がせいぜいで、最近ではソフトボールばかり。「キレ」とか「ノビ」なんてあるわけなくて。
 プロの選手たちが生きている世界には、確かに「キレ」とか「ノビ」としか表現できない現象が存在しているのでしょう....
4. Posted by Honeywar   2004年05月14日 01:59
 たびたびすみません。そういえば、こたに様の新しい似顔絵でしょうか。
 昨日ネットラジオを聴いていたら、ちょうどこたに様の対談番組で、「ネットで知り合った凄腕イラストレーター」というような話題が出ていましたが、この「Zutatan」さんのことなんでしょうね。
 後ろに白い壁があって、影が映って。それで非常にきれいな立体感が出ている面白い芸風ですね。
5. Posted by こたに   2004年05月15日 15:00
 ずたたんさんの画風はアドビのレイヤーを見事に生かしたすばらしいものです。小谷もいくつか描いていただきましたが、ホンモノよりホンモノらしいと評判になっています(笑)。
6. Posted by 翔太   2005年09月26日 15:11
カーブの変化を大きくしたいんべすが。どうすれば?いいですか?



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