【韓非子】守株



宋人有耕田者。
[書き下し]宋人に田を耕す者有り。
[口語訳]宋の国の人に、田を耕して(暮らして)いる者がいた。
  • 「宋人」の読みはよく問われます。「国名 + 人」のとき「人」は「ひと」と読みます。
  • ~: ~有り(~がいる)は「有リ無シ構文」ですので、訓点付けや書き下しの問題をよく問われます。


田中有株。
[書き下し]田中に株有り。
[口語訳]畑に木の切り株があった。
  • ここでの「田」は、どちらかというと「畑」。
  • ~: ~有り(~がいる)は「有リ無シ構文」ですので、訓点付けや書き下しの問題をよく問われます。

兔走触株、折頸而死。
[書き下し]兔走りて株に触れ、頸を折りて死す。
[口語訳]ウサギが走って行って、木の切り株に接触し、首を折って死んでしまった。
  • 「而」は、ここでは順接の置き字です。読む必要はないのですが、「……折り 死す」の接続助詞「て」を導きます。

因釈其耒而守株、冀復得兔。
[書き下し]因りて其の耒を釈てて株を守り、復た兔を得んことを冀ふ。
[口語訳]そこで自分の鋤を放り出して木の切り株を見守り、また兔を手に入れることを待ち望んだ。
  • 「因」「復」「冀」読みはよく問われます。
  • 「冀復得兔」の部分は、訓点付け、書き下しの問題でよく問われます。書き下しの問いはすべてひらがなで書き下せるようにもしておきたいところです。

兔不可復得、而身為宋国笑。
[書き下し]兔復た得べからずして、身は宋国の笑ひと為れり。
[口語訳]ウサギは二度と手に入れることができなくて、その身は宋の国の笑いものとなった。
  • 不可復~」: 復た~べからず(二度と~できない) の否定の句形を含みますので、訓点付け、書き下し、口語訳はいずれもできるようにしておきたい箇所といえます。
  • 「身為宋国笑」については、書き下し、口語訳のどちらもよく問われます。

今欲以先王之政、治当世之民、皆守株之類也。
[書き下し]今先王の政を以て、当世の民を治めんと欲するは、皆株を守るの類なり。
[口語訳]今、昔の聖王の政治のやり方で、現代の民衆を治めたいと思うのは、すべて株を守るのと同じようなことなのである。
  • ~」~(せ)んと欲す(~したい)、「以~」~を以て(~を使って、~で) はいずれも重要。
  • 書き下し、口語訳を確実にできるようにしたいところです。

[テキスト以外で問われそうなこと]
  • 故事成語「守株」の意味はよく問われます。
  • 昭和の詩人、北原白秋の「待ちぼうけ」がこれを翻案した詩なのですが、授業で触れていると出題されることがあります。これは童謡になっており、作詞者はもちろん彼ですが、作曲者が山田耕筰(昨年のNHK連続テレビ小説『エール』で志村けんが演じた「小山田耕三」は彼がモデル)というのも頭の片隅に留めておきたいところです。





[テキスト]
宋人有耕田者。田中有株。兔走触株、折頸而死。因釈其耒而守株、冀復得兔。兔不可復得、而身為宋国笑。今欲以先王之政、治当世之民、皆守株之類也。